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明細書 :チロソール高生産性酵母変異株及び該酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3898652号 (P3898652)
公開番号 特開2004-215644 (P2004-215644A)
登録日 平成19年1月5日(2007.1.5)
発行日 平成19年3月28日(2007.3.28)
公開日 平成16年8月5日(2004.8.5)
発明の名称または考案の名称 チロソール高生産性酵母変異株及び該酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造法
国際特許分類 C12N   1/16        (2006.01)
C12G   3/02        (2006.01)
FI C12N 1/16
C12G 3/02 119G
請求項の数または発明の数 7
微生物の受託番号 FERM BP-8297
全頁数 8
出願番号 特願2003-048313 (P2003-048313)
出願日 平成15年2月25日(2003.2.25)
優先権出願番号 2002336791
優先日 平成14年11月20日(2002.11.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年2月26日(2003.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593022021
【氏名又は名称】山形県
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小関 敏彦
【氏名】工藤 晋平
【氏名】松田 義弘
【氏名】石垣 浩佳
【氏名】安食 雄介
【氏名】村岡 義之
【氏名】和田 弥寿子
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100118957、【弁理士】、【氏名又は名称】岡 晴子
【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 特開平05-049465(JP,A)
J.Brew.Soc.Japan.,1981,Vol.76,No.9,p.629-634
調査した分野 C12N 1/00-7/08
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CA/REGISTRY(STN)
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
サッカロミセス・セレビシエに属し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有することを特徴とする、チロソール高生産性酵母変異株。
【請求項2】
サッカロミセス・セレビシエに属し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有するチロソール高生産性酵母変異株が、サッカロミセス・セレビシエTY24株(受託番号:FERM BP-8297)であることを特徴とする請求項1記載のチロソール高生産性酵母変異株。
【請求項3】
自然変異或いは人工変異処理したサッカロミセス・セレビシエに属する酵母を、2-フルオロ-L-チロシンを含有する培地で培養し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有する酵母変異株を分離することを特徴とするサッカロミセス・セレビシエに属するチロソール高生産性酵母変異株の取得方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のサッカロミセス・セレビシエに属するチロソール高生産性酵母変異株を用いて発酵を行うことを特徴とする発酵アルコール飲料の製造法。
【請求項5】
発酵アルコール飲料が、清酒であることを特徴とする請求項4記載の発酵アルコール飲料の製造法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の発酵アルコール飲料の製造法によって製造されたチロソール高含有発酵アルコール飲料。
【請求項7】
チロソール高含有発酵アルコール飲料が、発泡性を有する清酒及び/又は甘味及び酸味を多量に含有する清酒であることを特徴とする請求項6記載のチロソール高含有発酵アルコール飲料。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、苦味成分であるチロソールを特異的に高生産する、チロソール高生産性酵母変異株、該酵母を用いた個性のある酒質を有する清酒等の発酵アルコール飲料、及び、その製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発酵アルコール飲料の製造には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisie)に属する清酒酵母、焼酎酵母、ビール酵母、ワイン酵母等が用いられるが、該発酵アルコール飲料の製造に用いられる酵母については、その発酵性能や発酵特性、或いは香味等の改善のために、古くから改良が行われてきた。
【0003】
近年においても、発酵アルコール飲料の香気や味の改良のために、新規酵母の開発が行われている。例えば、特開平5-317034号公報には、清酒酵母701号と清酒酵母901号由来の一倍体株同士の交雑により育種される芳香性清酒酵母新菌株について、特開平7-79766号公報には、カプロン酸エチル成分のような香気エステルを多量生産するサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開平7-184638号公報には、吟醸香の豊かな酒類を製造するための、酢酸イソアミル成分を多量生産するミコナゾール及び/又はエコナゾール耐性のサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開平7-184639号公報には、同じく吟醸香の豊かな酒類を製造するための、酢酸イソアミル成分を多量生産するアンホテリシンB耐性のサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、及び、特開平8-173147号公報には、カプロン酸エチル及び酢酸イソアミルをバランスよく高生産し、発酵力の強い酵母として、カプロン酸感受性で、カプロン酸エチル高生産であり、かつアルコール耐性の改善されたサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、それぞれ開示されている。
【0004】
また、特開平9-248178号公報には、もろみ末期において自己消化を起こしにくく、かつ発酵性能の優れた、エチルアルコール耐性及びジオキサン類耐性を有するサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開平10-262653号公報には、有機酸が少なく、後味の軽いまろやかな酒質の清酒を製造するための酵母として、エタノールの生成速度が速く、有機酸とアミノ酸の生成が少なく、かつ気泡付着性がないサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開2001-128664号公報には、2-フルオロエタノールを含有する選択培地、或いは、更にイソアミルアルコールを含有する選択培地を用いて分離した高アルコール耐性を有し、高アルコール生産性を有するサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開2001-103958号公報には、有機酸及び香気成分を高生産する酵母として、2-オキソグルタル酸のようなクエン酸シンターゼの阻害剤に耐性を示し、有機酸を高生産するサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、及び、特開2002-253210号公報には、コクのある低アルコール清酒を製造するための酵母として、アルコール感受性を有し、2~10%のアルコール濃度の培地では増殖できないサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、それぞれ開示されている。
【0005】
更に、特開平10-75770号公報には、ビールの製造等に用いる新規な吟醸香を有する酵母として、清酒酵母由来の単胞子分離株とビール酵母由来の単胞子分離株とを交雑することによって得たサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、特開2000-350575号公報及び特開2001-321159号公報には、ワインのような酒類の製造において、重要な呈味成分の一つであるアミノ酸含有量を改善するための酵母として、アミノ酸の取込みに関与する遺伝子を変異させたサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母について、それぞれ開示されている。
【0006】
前記のとおり近年においても、発酵アルコール飲料等の製造に用いる酵母について、その発酵性能・発酵特性や香味等の改善のために、多くの新規な酵母の開発が行われているが、その中で、最近、香りが高く苦味成分を高含有するアルコール飲料等の製造のために、香気成分としてβ-フェネチルアルコール及びその酢酸エステルを、苦味成分としてチロソールを多く生成する変異酵母を用いた方法が開発されている(特開平5-49465号公報;Journal of Fermentation and Bioengineering 69, 2, 125-128, 1990)。この方法に用いられる酵母は、具体的には、酵母に突然変異を起こし、β-(2-チエニル)アラニンを選択培地に添加し耐性株を分離してβ-フェネチルアルコールやその酢酸エステル及びチロソールの生産に特徴を持つ変異酵母を分離・取得したものである。この変異酵母の分離・取得方法は、選択培地の成分からβ-フェネチルアルコールやその酢酸エステル及びチロソール等の多量生産に重きを置いた分離・取得方法になっている。しかし、本発明者らも酢酸イソアミルや有機酸を多量に生産する酵母を開発し製品化を行ったが(Journal of Society Japan 90, 3, 217-221, 1995)、製品として販売する場合、それぞれの成分で表される酒の特徴を多量に含む酒質のものが必ずしも好ましいものではないという評価を得ている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5-49465号公報。
【非特許文献1】
Journal of Fermentation and Bioengineering 69, 2, 125-128, 1990
【非特許文献2】
Journal of Society Japan 90, 3, 217-221, 1995
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来、清酒のような発酵アルコール飲料は、和食に合う飲料であり、淡麗辛口に代表されるような薄い綺麗な酒質のものが良いとされてきた。また、清酒中の苦味や酸味等はネガティブファクターとして考えられ、如何にしてそれらが少ない清酒を造るかが重要とされてきた。しかし、一方で、食生活の多様化により中華料理や西洋料理のような動物性蛋白質や脂肪などの使用量が多く味の濃い料理にも適応する酒質が求められる中、単に綺麗で薄い酒質ではなくそれらの料理に負けないような強い酒質のものが求められ始めている。中華料理に対する老酒や西洋料理に対する赤ワインに代表されるように、食中酒にある適度の苦味は口中において味の濃い料理の洗浄効果があり、料理との相性が良いとされている。
【0009】
このような現状の中から、清酒のような発酵アルコール飲料中の苦味成分をより強く出し、酒質に強い個性を与える発酵アルコール飲料が求められるところであり、そのための技術の開発が望まれるところである。
すなわち、本発明の課題は、発酵アルコール飲料に用いられる酵母を改変し、他成分の生成などに影響が少なく、苦味成分として、チロソールだけを多く生産する酵母を開発し、それを用いてチロソール含量の高い清酒等の個性のある酒質を有する発酵アルコール飲料を製造する方法、及びそれによって製造された新規発酵アルコール飲料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、チロソールだけを多く生産する酵母の開発に注力した結果、芳香族アミノ酸生合成系回路のチロシンに注目し、チロシン生合成系を活性化するためのチロシンのアナログである2-フルオロ-L-チロシンを選択培地に使用し、この選択培地を利用することにより、チロシン生合成系以外の芳香族アミノ酸生合成系の活性が励起されることなく、効率良くチロソール高生産株を取得できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、自然変異或いは人工変異処理した酵母を、2-フルオロ-L-チロシンを含有する培地を選択培地として培養し、2-フルオロ-L-チロシンに耐性を有する酵母株を分離することにより、チロソールだけを多く生産する酵母変異株を取得するものである。本発明の酵母変異株としては、2-フルオロ-L-チロシンに耐性を有し、チロソール高生産性を有するサッカロミセス・セレビシエ TY株が挙げられる。該サッカロミセス・セレビシエ TY株は、サッカロミセス・セレビシエ TY24株(FERM BP-8297)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。本発明は、更に、本発明のチロソール高生産性酵母変異株を用いて、清酒等のチロソール含量の高い、個性のある酒質を有する発酵アルコール飲料を製造することよりなるものである。
【0012】
具体的には、本発明は、サッカロミセス・セレビシエに属し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有することを特徴とする、チロソール高生産性酵母変異株(請求項1)や、サッカロミセス・セレビシエに属し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有するチロソール高生産性酵母変異株が、サッカロミセス・セレビシエTY24株(受託番号:FERM BP-8297)であることを特徴とする請求項1記載のチロソール高生産性酵母変異株(請求項2)や、自然変異或いは人工変異処理したサッカロミセス・セレビシエに属する酵母を、2-フルオロ-L-チロシンを含有する培地で培養し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有する酵母変異株を分離することを特徴とするサッカロミセス・セレビシエに属するチロソール高生産性酵母変異株の取得方法(請求項3)からなる。
【0013】
また本発明は、請求項1又は2記載のサッカロミセス・セレビシエに属するチロソール高生産性酵母変異株を用いて発酵を行うことを特徴とする発酵アルコール飲料の製造法(請求項4)や、発酵アルコール飲料が、清酒であることを特徴とする請求項4記載の発酵アルコール飲料の製造法(請求項5)や、請求項4又は5記載の発酵アルコール飲料の製造法によって製造されたチロソール高含有発酵アルコール飲料(請求項6)や、チロソール高含有発酵アルコール飲料が、発泡性を有する清酒及び/又は甘味及び酸味を多量に含有する清酒であることを特徴とする請求項6記載のチロソール高含有発酵アルコール飲料(請求項7)からなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有する、チロソール高生産性酵母変異株からなる。本発明のチロソール高生産性酵母変異株は、チロソールは多量に生成するが、β-フェネチルアルコールの量は、例えば、従来(特開平5-49465号公報)の酵母と比較すると、従来酵母と同程度しか生成しないという特徴を有する。
【0015】
本発明のチロソール高生産性酵母変異株を取得するには、自然変異或いは人工変異処理した酵母を、2-フルオロ-L-チロシンを含有する培地で培養し、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有する酵母株を分離することにより行うことができる。本発明のチロソール高生産性酵母変異株を取得するために用いる酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisie)に属する清酒酵母、焼酎酵母、ビール酵母、ワイン酵母等を挙げることができる。本発明の方法により、該酵母から、相当する酵母のチロソール高生産性変異株を取得することができ、該酵母変異株を用いて、チロソールの苦味に特徴のある各種発酵アルコール飲料を製造することができる。本発明のチロソール高生産性変異株の取得方法により、変異株はポジティブに得られるものであり、2-フルオロ-L-チロシン耐性株は自然変異或いは人工的な変異誘発のいずれによっても取得できる。使用菌株としては1倍体あるいは2倍体いずれにおいても耐性株を取得することが可能である。
【0016】
本発明のチロソール高生産性酵母変異株を取得するに際しての酵母の人工変異処理手段としては、適宜公知の変異手段を用いることができ、例えば、物理的手段としては、紫外線照射、放射線照射等があり、化学的手段としては、エチルメタンスルホネート、N-メチル-N´-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン系色素などの変異剤がある。
本発明により取得した2-フルオロ-L-チロシン耐性を有する酵母の変異株は、液体培養において親株の数倍量のチロソール生成能を有することが確認されている。
本発明により取得された、2-フルオロ-L-チロシン耐性を有し、チロソール高生産性を有する酵母の変異株としては、サッカロミセス・セレビシエ TY株を挙げることができる。該サッカロミセス・セレビシエ TY株は、サッカロミセス・セレビシエ TY24株(FERM BP-8297)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
【0017】
本発明のチロソール高生産性酵母変異株を用いて、常法により発酵アルコール飲料を製造することにより、チロソール含量の高い、個性のある酒質を有する発酵アルコール飲料を製造することができる。
本発明により取得したチロソール高生産性酵母変異株を使用して製造した清酒は、通常、親株の約3倍量のチロソールを含んでおり、官能的には十分な苦味があるものを製造することができる。例えば、本発明のチロソール高生産性酵母変異株を、清酒製造に用いることにより、そのチロソール量をコントロールすることも可能であり、その酒質を苦味の利いたものからコク(苦味とまで認識しないレベル)を感じるものまで広い範囲で表現することが可能である。したがって、本発明のチロソール高生産性酵母変異株を用いることにより、特徴のある清酒の製造が可能となる。
【0018】
本発明のチロソール高生産性酵母変異株を用いた発酵アルコール飲料の製造法は、例えば高リンゴ酸生成酵母による発酵アルコール飲料の製造法等、他の発酵アルコール飲料の製造法との複合的な製造法としての製品開発が可能であり、該方法により、酒質の調整された特徴のある発酵アルコール飲料を製造することがが可能である。また、本発明のチロソール高生産性酵母変異株を用いた発酵アルコール飲料の製造法は、例えば、清酒の製造法に適用して、発泡性の清酒や甘味や酸味を通常の清酒より多量に含有する清酒等、種々の発酵アルコール飲料の製造法に適用することが可能である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1(チロソール高生産性酵母変異株の取得)
山形県工業技術センター保存酵母菌株KA株をYPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)10mlに30℃で1日間振とう培養後、培養液1μlをYPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)10mlに30℃で1日間培養した。集菌、洗浄後0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5ml、EMS(エチルメタンスルフォネイト)0.15ml添加する。30℃で45分間振とう培養後、集菌、洗浄を行い0.5mMの2-フルオロ-L-チロシンを含む最小平板培地(2%グルコース、0.67%イーストナイトロジェンベース(w/o amino acids)、2%寒天)に塗布した。これを30℃で7日間培養後出現するコロニーを2-フルオロ-L-チロシン耐性株として単離した。
【0020】
耐性株を最小培地(2%グルコース、0.67%イーストナイトロジェンベース(w/o amino acids))20mlにて、20℃で15日間静置培養し、遠心分離により上清と菌体とを分離した。分離した上清10mlを酢酸エチル10mlで2回抽出後GCによりによりチロソールの定量を行った。GCの条件及び結果を表1、2に示す。この中からチロソール高生産株の3株(TY5、TY19、TY24)を選抜した。
【0021】
【表1】
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【0022】
【表2】
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【0023】
実施例2(チロソール高生産株を用いた清酒の製造)
実施例1で取得したチロソール高生産株3株を用いて表3に示す配合で清酒の小仕込み試験を行った。BriX6.5の麹汁培地で25℃4日間静置培養した酵母を初添えの水麹に添加した。品温は留めを6℃で行い、その後1℃/日ずつ品温を上昇させ15℃を最高品温とした。もろみは18日目に上槽し、その生成酒の分析結果は表4に示す。この3株の中でもTY24株が最もチロソールの生産量が多く、生成酒中に親株の約3倍の生産量が確認された。また、β-フェネチルアルコールの生成量は親株とほぼ同程度であった。
【0024】
【表3】
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【0025】
【表4】
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【0026】
2-フルオロ-L-チロシン耐性株のTY24株はアルコール生成量から見ると親株と同程度の発酵力を有し、十分な実用性があると思われ、生成酒も十分な苦味があった。
【0027】
実施例3(チロソール高生産株を用いた総米100Kg仕込み清酒の製造)
実施例1で取得したチロソール高生産株(TY24株)を用いて、表5に示す配合で、実施例2の製造方法に準じて、総米100Kg仕込みの清酒の製造試験を行った。もろみは18日目に上槽し、その生成酒の分析結果を表6に示す。実施例2の場合と同様に、生成酒中に親株の約3倍の生産量のチロソールが確認され、β-フェネチルアルコールの生成量は、親株とほぼ同程度であった。
以上のように、本発明で新たに取得した菌株の清酒製造への利用は、清酒の多様化に対応するための有効な手段と考えられる。
【0028】
【表5】
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【0029】
【表6】
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【0030】
【発明の効果】
本発明の酵母変異株の取得方法を発酵アルコール飲料に用いられる酵母に適用して、他成分の生成などに影響が少なく、苦味成分として、チロソールだけを多く生産する酵母変異株を取得することができる。該酵母変異株を用いて、発酵アルコール飲料を製造することにより、例えば、チロソール含量の高い清酒等の個性のある酒質を有する発酵アルコール飲料を製造することができる。