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明細書 :ポリウレタン共重合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4056408号 (P4056408)
公開番号 特開2004-263063 (P2004-263063A)
登録日 平成19年12月21日(2007.12.21)
発行日 平成20年3月5日(2008.3.5)
公開日 平成16年9月24日(2004.9.24)
発明の名称または考案の名称 ポリウレタン共重合体の製造方法
国際特許分類 C08G  71/04        (2006.01)
FI C08G 71/04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2003-054457 (P2003-054457)
出願日 平成15年2月28日(2003.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)「高分子学会予稿集」51巻7号(高分子化学)(平成14年9月18日発行)、第1412頁の記載として刊行物に発表
特許法第30条第1項適用 (2)上記(1)刊行物を文書として「第51回高分子討論会」(九州工業大学戸畑キャンパスにて開催)平成14年10月2日に発表
審査請求日 平成17年4月22日(2005.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】榧木 啓人
【氏名】井畑 理
【氏名】碇屋 隆雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】久保田 英樹
参考文献・文献 特開昭50-041996(JP,A)
調査した分野 C08G 71/00-04
C08G 18/00-87
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0004056408B2_000006t.gif
(R,R,R,Rは、各々、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、また、RおよびRは、相互に結合して炭素環を形成していてもよい)で表わされるアジリジン類を、二酸化炭素の圧力を3.0~30MPaの範囲とし、加熱温度を50~200℃の範囲とした亜臨界もしくは超臨界の状態にある二酸化炭素中で加熱して、次式
【化2】
JP0004056408B2_000007t.gif
(R,R,R,Rは前記のものを示し、mおよびnは、単位構造の比を示す)で表わされるポリウレタン共重合体を製造することを特徴とするポリウレタン共重合体の製造方法。
【請求項2】
上記アジリジン類を超臨界状態にある二酸化炭素中で加熱することを特徴とする請求項1のポリウレタン共重合体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ポリウレタン共重合体の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、触媒を使用することなしに高分子量の生成物の合成が容易であって、しかもポリウレタン構造の構造規制によって特徴のある機能性の発現とその制御が可能である新しいポリウレタン共重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウレタン構造を有する高分子であるポリウレタンは化学的、熱的に安定な材料であるため発泡材料、断熱材、塗料として広く利用されている。ポリウレタンを合成する一般的な反応はジイソシアネートとジオール、ジアミン、ジカルボン酸など活性水素を複数有する分子との付加交互共重合である。この付加重合では、副反応としてウレタン構造のN-Hへイソシアネートが付加するアロファネート結合生成反応が並行して起こり、得られる生成物は架橋構造の高分子となる。これは材料の安定性に寄与する一方、ポリウレタンにおいて構造規制を試み、新たな機能性を開拓するには大きな問題となっていた。
【0003】
また、従来の合成法で同一の構造を有するポリウレタンを合成するには脂肪族ジイソシアネートを用いる必要があるが、炭素数が小さいジイソシアネートは不安定でありポリウレタン合成反応において低収率であることが報告されている。一般に脂肪族ジイソシアネートでは一方が反応した後に残ったイソシアネート基の反応性は大きく低下するため、高分子量の生成物を得ることが難しい。
【0004】
以上のような問題点を解消するために、プロピレンイミンを出発物質とし、ウレタン構造を形成することが試みられており、具体的には、二酸化炭素加圧下でプロピレンイミンを加熱して固体生成物を得たことが報告されている(文献1)。また、触媒を用いた環状ウレタンの開環重合によるポリウレタン合成も報告されている(文献2)。
【0005】
しかしながら、プロピレンイミンの二酸化炭素との反応ではプロピレンイミンによる単一重合生成物であるポリアミンが得られやすく、ウレタン構造の比率は低い。また、生成物の特性にも特徴がない。
【0006】
一方、環状ウレタンからの合成の場合には、その合成および精製が容易ではなく、スズなどの有機金属触媒を使用する必要がある。これらのことから、以上の試みも実際的な、しかも新しい機能特性として特徴のある、ポリウレタンの製造方法として実現されていないのが実情である。
【0007】
【文献】
(1)K. Soga, W. Y. Chiang and S. Ikeda, J. Polym. Sci.: Polym. Chem. Ed., 1974, 12, 121; S. Ikeda, K. Soga, US Patent No.4,209,628
(2)S. Neffgen, H. Keul and H. Hoecker, Macromol. Rapid. Commun., 1996, 17, 373
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は、上記のとおりの従来の問題点を解消し、有機金属等の触媒を使用することなしに、高分子量の生成物としての合成が容易であって、しかもポリウレタン構造の構造規制によって特徴のある機能性の発現とその制御が可能である新しいポリウレタン共重合体の製造方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式
【0010】
【化3】
JP0004056408B2_000002t.gif(R,R,R,Rは、各々、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、また、RおよびRは、相互に結合して炭素環を形成していてもよい)で表わされるアジリジン類を、二酸化炭素の圧力を3.0~30MPaの範囲とし、加熱温度を50~200℃の範囲とした亜臨界もしくは超臨界の状態にある二酸化炭素中で加熱して、次式
【0011】
【化4】
JP0004056408B2_000003t.gif(R1,R2,R3,R4は前記のものを示し、mおよびnは、単位構造の比を示す)
で表わされるポリウレタン共重合体を製造することを特徴とするポリウレタン共重合体の製造方法を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第2には、上記方法において、上記アジリジン類を超臨界状態にある二酸化炭素中で加熱することを特徴とするポリウレタン共重合体の製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0015】
この出願の発明のポリウレタン共重合体の製造は、三員環イミンであるアジリジン類を出発物質としており、このアジリジン類は前記の一般式によって示される。式中の符号R1,R2,R3,R4は前記のとおりのものであるが、炭化水素基としては、鎖状または環状の、飽和または不飽和の、脂肪族、脂環式、あるいは芳香族や複素環の各種のものであってよい。たとえばこの炭化水素基が鎖状、飽和のものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が示される。R1およびR2は、相互に結合して、炭素環を形成していてもよい。
【0016】
このようなアジリジン類の具体例としては、たとえば、アジリジン、2-メチルアジリジン、2-エチルアジリジン、2,2-ジメチルアジリジン、2,3-ジメチルアジリジン、2-フェニルアジリジン、シクロヘキセンイミン等を例示することができる。
【0017】
この出願の発明においては、このようなアジリジン類を触媒を用いることなく、亜臨界から超臨界の状態にある二酸化炭素中で加熱して前記式のとおりのポリウレタン共重合体を製造する。
【0018】
この場合の二酸化炭素の圧力については、3.0~30MPa、加熱温度については50℃~200℃、より好適には60~140℃の範囲を目安とすることができる。そして加熱時には攪拌することが有効でもある。
【0019】
この出願の発明の方法においては、上記の加圧加熱によって、触媒を添加しなくても開環重合が進行し、対応するポリウレタン共重合体が得られる。
【0020】
ポリウレタンを合成する従来の一般的な反応はジイソシアネートと活性水素を複数有する分子を加熱する付加重合であり、その主鎖内のウレタン部位は、たとえば次式(1)に例示したように、頭-頭の組み合わせ構造となる。一方、この出願の発明によれば、次式(2)に例示したように、反応はイミンへの二酸化炭素の求核攻撃によって進行するためウレタン部位は常に頭-尾の組み合わせであり、構造規制された高分子が得られる。
【0021】
【化5】
JP0004056408B2_000004t.gifたとえばこの出願の発明においては、アジリジンを二酸化炭素3.0~30MPa、60~140℃の条件で加熱攪拌を行い精製すると、固体生成物が10~35%の収率で得られる。
【0022】
この固体生成物は元素分析、1H-NMR分析によってウレタン構造を有することが確認される。圧力の上昇に伴って生成物中のウレタン構造は増加し、たとえば、100℃、22MPaの条件でウレタン単位構造の比率は60%以上に達する。
【0023】
さらにこの固体生成物の水溶液は、加熱によって白濁し冷却によって清澄化する温度応答挙動を示す。相転移を生じる臨界温度は生成条件を変化させることによってたとえば、20~93℃の広い範囲で調節することが可能である。
【0024】
従来の合成法で同一の構造を有するポリウレタンを合成するには脂肪族ジイソシアネートを用いる必要があるが、たとえば前記の式(1)のように、炭素数が小さいジイソシアネートは不安定でありポリウレタン合成反応において低収率であることが報告されている。一般に脂肪族ジイソシアネートでは一方が反応した後に残ったイソシアネート基の反応性は大きく低下するため、高分子量の生成物を得ることが難しいがこの出願の発明の合成法ではこの欠点が無い。
【0025】
さらに、この出願の発明の反応で得られるポリウレタン共重合体は三員環の開環反応が成長反応であるため、前記のとおり、従来法とは異なる頭-尾の組み合わせのウレタン部位を有する高分子となる。生成したアミド結合への二酸化炭素の求核攻撃は起こりにくいため架橋生成の副反応も減少する。
【0026】
また、この出願の発明の反応生成物においては、単独のポリウレタンでは報告されていない温度応答性の発現が確認されている。
【0027】
これはこの出願の発明の反応の生成物が架橋ポリウレタンではなく、分子鎖は独立して熱運動するためであり、従来の付加重合によって得られるポリウレタンで同様の機能の発現は困難であると考えられる。
【0028】
一般的な温度応答性高分子において臨界温度の調節を行うには用いるモノマーの修飾、共重合仕込み比の調節、生成高分子の化学的な後処理が必要であるのに対して、この出願の発明の反応で得られる生成物は温度、圧力などの反応条件を調節するだけで臨界温度を広範囲に調節することが可能である。
【0029】
この出願の発明の生成物としてのポリウレタン共重合体は、一般的な温度応答性材料としての利用法が想定されるが、その他の特色としてはポリウレタンの高い生体親和性が挙げられる。したがって温度応答機能と組み合わせるドラッグデリバリーシステムなど生体内での利用が可能であると考えられる。また本生成物は親水性を持つ極性高分子であるため、温度応答性の高分子電解質としての応用も期待される。
【0030】
そこで以下に合成に係わる実施例を説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0031】
【実施例】
反応は内容量50mLのステンレス製オートクレーブ中で行う。オートクレーブをアルゴン充填し、2-メチルアジリジン(8.8mmol)をシリンジで注入する。系内を二酸化炭素で置換しポンプで22MPaに調節した後、100℃に設定したオーブン内で24時間攪拌する。反応後はメタノール(2mL)で生成物を溶解し、ジエチルエーテル(300mL)中へ再沈殿して面体生成物を分離精製し、真空乾燥を行った。得られたポリウレタン共重合体の収率は25%であった。
【0032】
このものが、前記式のとおりのウレタン構造を有する共重合体であることは元素分析、1H-NMR分析によって確認した。元素分析の結果、そして重量平均分子量は次のとおりであった。
【0033】
【表1】
JP0004056408B2_000005t.gifまた、図1には、生成物の1H-NMRの分析値を示した。そして、単位構造の比率(m/n)は、62/48であった。
【0034】
また、このものには、70~75℃の温度において相転移を生じる温度応答挙動性が認められた。
【0035】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、有機金属等の触媒を使用することなしに、高分子量の生成物としての合成が容易であって、しかもポリウレタン構造の構造規制によって特徴のある機能性の発現とその制御が可能である新しいポリウレタン共重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における生成物の1H-NMRの値を例示したものである。
図面
【図1】
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