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明細書 :ヒドロキシケトン化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3883972号 (P3883972)
公開番号 特開2004-262826 (P2004-262826A)
登録日 平成18年11月24日(2006.11.24)
発行日 平成19年2月21日(2007.2.21)
公開日 平成16年9月24日(2004.9.24)
発明の名称または考案の名称 ヒドロキシケトン化合物の製造方法
国際特許分類 C07C  45/72        (2006.01)
C07C  45/75        (2006.01)
C07C  49/173       (2006.01)
C07C  49/497       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 45/72
C07C 45/75
C07C 49/173
C07C 49/497
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 26
全頁数 20
出願番号 特願2003-054697 (P2003-054697)
出願日 平成15年2月28日(2003.2.28)
審査請求日 平成15年3月3日(2003.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】斎藤 進
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 特開2002-275118(JP,A)
特公昭41-009769(JP,B1)
特開平03-058952(JP,A)
特表平10-502913(JP,A)
特開平06-211723(JP,A)
特開2000-042404(JP,A)
特開平10-251190(JP,A)
特開2004-238313(JP,A)
特開2004-217619(JP,A)
特開昭59-184142(JP,A)
調査した分野 C07C 45/00-49/92
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I)
【化1】
JP0003883972B2_000018t.gif
(式中、Zは、未置換又は置換基を有する員環を表す。)で示されるテトラゾール誘導体を含有する触媒を用い、二つのカルボニル基質を結合させることを特徴とするヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
テトラゾール誘導体が、式(II)
【化2】
JP0003883972B2_000019t.gif
で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項3】
少なくとも一つのカルボニル基質が、一般式(III)
【化3】
JP0003883972B2_000020t.gif
(式中、R、Rは、独立して水素原子、又は、未置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基若しくはアリール基を表し、相互に結合して環を形成していてもよい。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項4】
カルボニル基質が、水和物形成容易性及び/又は水溶性であることを特徴とする請求項1~3記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項5】
一つのカルボニル基質が、一般式(IV)
【化4】
JP0003883972B2_000021t.gif
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Rはパーハロゲノアルキル基を表す。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項6】
一つのカルボニル基質が、一般式(IV)で示される化合物の水和物であることを特徴とする請求項5記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(IV)で示される化合物の水和物が、一般式(V)
【化5】
JP0003883972B2_000022t.gif
(式中、Rはパーハロゲノアルキル基を表す。)で示されるアルデヒド・一水和物であることを特徴とする請求項6記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項8】
一つのカルボニル基質が、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物であることを特徴とする請求項7記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項9】
ヒドロキシケトン化合物が、β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項1~8のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項10】
β-ヒドロキシケトン化合物が、γ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項9記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項11】
溶媒が、水を含有することを特徴とする請求項1~10のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項12】
水の含有量を変化させることにより、アンチ体とシン体の収率比又はエナンチオ選択率を調整することを特徴とする請求項1~11のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項13】
溶媒が、アセトニトリルを含有することを特徴とする請求項1~12のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項14】
カルボニル基質、触媒及び/又は溶媒の脱水処理工程を含まないことを特徴とする請求項1~13のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項15】
空気中で行うことを特徴とする請求項1~14のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項16】
0~60℃の温度で行うことを特徴とする請求項1~15のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項17】
2つのカルボニル基質を結合させるヒドロキシケトン化合物製造用触媒であって、一般式(I)
【化6】
JP0003883972B2_000023t.gif
(式中、Zは、未置換又は置換基を有する員環を表す。)で示されるテトラゾール誘導体を含有することを特徴とするヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項18】
テトラゾール誘導体が、式(II)
【化7】
JP0003883972B2_000024t.gif
で示される化合物であることを特徴とする請求項17記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項19】
少なくとも一つのカルボニル基質が、一般式(III)
【化8】
JP0003883972B2_000025t.gif
(式中、R、Rは、独立して水素原子、又は、未置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基若しくはアリール基を表し、相互に結合して環を形成していてもよい。)で示される化合物であることを特徴とする請求項17又は18記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項20】
カルボニル基質が、水和物形成容易性及び/又は水溶性であることを特徴とする請求項17~19のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項21】
一つのカルボニル基質が、一般式(IV)
【化9】
JP0003883972B2_000026t.gif
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Rはパーハロゲノアルキル基を表す。)で示される化合物であることを特徴とする請求項17~20のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項22】
一つのカルボニル基質が、一般式(IV)で示される化合物の水和物であることを特徴とする請求項21記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項23】
一般式(IV)で示される化合物の水和物が、一般式(V)
【化10】
JP0003883972B2_000027t.gif
(式中、Rはパーハロゲノアルキル基を表す。)で示されるアルデヒド・一水和物であることを特徴とする請求項22記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項24】
一つのカルボニル基質が、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物であることを特徴とする請求項23記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項25】
ヒドロキシケトン化合物が、β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項17~24のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
【請求項26】
β-ヒドロキシケトン化合物が、γ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項25記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬や、生理活性を有する有機材料や、液晶等の鍵原料となるヒドロキシケトン化合物の製造方法や、これに使用する触媒に関し、詳しくは、反応系の脱水操作を不要とすることができるヒドロキシケトンの製造方法や、これに使用する触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ヒドロキシケトン化合物は、生理活性物質の天然物の部分骨格構築のために最も重量な炭素、炭素結合を有する化合物であり、特に、β-ヒドロキシケトン化合物は、α-ヒドロキシカルボン酸やα-アミノ酸の合成等価体であり、種々の生理活性物質や、医薬、液晶材料の合成の中間体となり得る極めて重要な合成ビルディングブロックである。かかるヒドロキシケトン化合物は2種のカルボニル基質を混ぜ合わせて、直接クロスカップリングさせることにより、効率的に炭素、炭素結合を生成する不斉アルドール反応によって生成される。かかる不斉アルドール反応に用いられる触媒として、不斉ランタニド触媒(例えば、非特許文献1参照。)や、2核亜鉛触媒(例えば、非特許文献2参照。)等の金属触媒が挙げられるが、いずれも、反応系の脱水処理が不可欠であり、環境上も問題がある。これに対し、今後ますます重要性が増加することが予測される環境調和型の非金属触媒として、プロリン触媒がある(例えば、非特許文献3参照。)。また、液体二酸化炭素または超臨界二酸化炭素中、特定の一分子内にエーテルユニット及びアルコールユニットを有する化合物と酸触媒下でアルドール化合物を製造する方法(例えば、特許文献1参照。)等があった。しかしながら、プロリンは触媒活性が比較的低いため基質適用範囲が狭く、水を加えた反応ではその量に応じて不斉収率が減少することが報告されている(例えば、非特許文献4参照。)。
一方、アルドール反応は水の存在により進行が妨げられるため、水溶性アルデヒドはアルドール反応によって製造することができず、また、アルドール反応を適用したアルドール化合物の製造においては、使用される原料、触媒、溶媒等は脱水処理により精製された後に使用されている。これらの脱水処理等の精製を回避することができれば、有利にアルドール化合物の合成を行うことができ、更に、水溶性アルデヒドを出発物質として水中で反応を進行させることができれば、製造上極めて有利であるところから、アルドール反応において水中で進行させることが長い間懸案事項とされていた。このような水中で行うアルドール反応として、不斉銅触媒を使用する方法(例えば、非特許文献5参照。)や、ホウ素酸、界面活性剤、ブレーンステッド酸の存在下、水媒体中で反応を行う方法(例えば、特許文献2参照。)や、トリフルオロメタンスルホン酸ランタニドとキラルなクラウンエーテル触媒を使用する方法(例えば、特許文献3参照。)等が明らかにされている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002-284729号公報
【特許文献2】
特開2002-275120号公報
【特許文献3】
特開2002-200428号公報
【非特許文献1】
Shibazaki、et all著「Angew.Chem.35」1996年p.1668
【非特許文献2】
Trost著「J.Am.Chem.Soc.122」2000年p.12003
【非特許文献3】
List、Barabs、Lerner著「J.Am.Chem.Soc.122」2000年p.2396
【非特許文献4】
List、Barabs、Lerner著「J.Am.Chem.Soc.3」2001年p.573
【非特許文献5】
Kobayashi著「Tetrahedron 55」1999年p.8739
【非特許文献6】
「Synlett」2001年p.1245
【0004】
しかしながら、水中で行うアルドール化合物の製造方法としては金属触媒を使用し、あるいは金属触媒を使用しない環境負荷に有利な方法でも反応温度、圧力等の反応条件が過酷であり、また、これらはいずれの場合もシリルエノールエーテルとカルボニル化合物を用いる向山アルドール反応を使用しており、金属触媒を使用せずに、穏やかな条件で水のもつ正の効果を証明し、水を積極的に使用して、直接的にアルドール化合物を製造する方法は知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生理活性を有し、医薬や、液晶材料等の合成において重要な原料となり得るヒドロキシケトン化合物を、金属を含有しない触媒を用いグリーンケミストリーの観点からも優れ、反応に使用する原料、触媒や溶媒の脱水処理を不要として、カルボニル基質から、それが、例えば、ホルムアルデヒド等の水溶性あるいは水と容易に水和物を形成するものであっても、直接的にヒドロキシケトン化合物を製造することができ、しかも、溶媒として水を用いても、ジアステレオ選択的、エナンチオ選択的に高収率で、過酷な条件を必要とせず効率よく生成物を得ることができるヒドロキシケトン化合物の製造方法や、これに用いる触媒を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ジアミン-プロトン酸不斉触媒がプロリンをはるかに凌ぐ反応活性を有することを既に報告しており、式(VI)に示すプロリン(a)等の天然アミノ酸、非天然ジアミンから誘導したジアミン型化合物(b)~(d)が、必要に応じて比較的強いプロトン酸を1:1の混合比で併用することによりアルドール付加反応に有用な触媒となることを見い出した。
【0007】
【化11】
JP0003883972B2_000002t.gif
【0008】
特に、プロトン酸の酸性度が増加するにつれて反応速度が速く、エナンチオ選択性が向上することを明らかにし、第二-第三ジアミン触媒は速い反応速度での反応進行に寄与し、しかも第三アミンを含む部分が嵩高くないものの方が反応速度が速く、第二-第二ジアミン触媒は大量の脱水生成物を伴うとはいうものの、収率、エナンチオ選択性において優れていることを明らかにし、更に、第一-第三ジアミン触媒は脱水を回避できる点で優れていることを明らかにした(例えば、非特許文献6参照。)。更に、本発明者は研究を推進し、プロリンから誘導したテトラゾール誘導体がアルドール反応に対して顕著な触媒活性を有し、テトラゾール誘導体を触媒として使用することにより、プロリンでは反応しないケトン基質にも適用できることを見い出した。加えて、式(VII)に示すように、テトラゾール誘導体(1)(5mol%)を触媒として、アセトニトリル中、シクロペンタノン(2)(2等量)と、クロラール(3)(1等量)とを基質として反応を試みたところ、生成体の収率と時間との関係(図1)に示すように、アルドール付加体(4)は24時間後でも得られなかった(○)が、24時間放置した未反応溶液に水(1等量)を加えると、反応が開始し(×)、更に、クロラールの替りに、クロラール・一水和物(5)との反応を検討したところ、水を添加した場合と類似の反応速度が観測された(□)だけでなく、生成物(4)の収率(99%)とエナンチオ選択性(83% ee)においても、極めて似た結果が得られたことから、主たる水の効果はアルデヒドから一水和物への基質の変化によるものだと考えられる。
【0009】
【化12】
JP0003883972B2_000003t.gif
【0010】
更に、加える水の量を1等量から2等量、5等量と変化させても反応の加速が同様に見られるが、水の量の増加に伴いアンチ/シン生成比の減少とアンチ体のエナンチオ選択性の増加が認められた。即ち、2等量の水を加えた場合、化学収率は84%、アンチ/シン生成比は88:12、アンチ体において92%eeの収率でエナンチオマーが得られたが、5等量の水を加えた場合、化学収率は76%、アンチ/シン生成比は68:32、アンチ体において94%eeの収率でエナンチオマーが得られた。
また、式(VIII)に示すように、テトラゾール誘導体(1)(5mol%)を触媒として、アセトニトリル中、シクロヘキサノン(6)(2等量)と、クロラール(3)(1等量)とを基質として反応を試みたところ、生成体の収率と時間との関係(図2)に示すように、アルドール付加体(4)がゆっくりとした初速で得られた(▲)が、水(1等量)を加えると、著しい反応の加速が見られ(◆)、化学収率は78%、アンチ/シン生成比は96:4、アンチ体において98%eeの収率でエナンチオマー(7)が得られた。
【0011】
【化13】
JP0003883972B2_000004t.gif
【0012】
そして、種々のカルボニル基質について、クロラール(3)又はクロラール・一水和物(5)との反応を検討したところ、クロラール(3)を用いた方が反応速度の上昇が見られる場合もあり、クロラール(3)又はクロラール・一水和物(5)のいずれかを用いると反応速度が速くなり、化学収率の向上、エナンチオ選択性の向上はケトンの構造に大きく依存することの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、一般式(I)
【0014】
【化14】
JP0003883972B2_000005t.gif
【0015】
(式中、Zは、未置換又は置換基を有する員環を表す。)で示されるテトラゾール誘導体を含有する触媒を用い、二つのカルボニル基質を結合させることを特徴とするヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項1)に関し、テトラゾール誘導体が、式(II)
【0016】
【化15】
JP0003883972B2_000006t.gif
【0017】
で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項2)や、少なくとも一つのカルボニル基質が、一般式(III)
【0018】
【化16】
JP0003883972B2_000007t.gif
【0019】
(式中、R1、R2は、独立して水素原子、又は、未置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基若しくはアリール基を表し、相互に結合して環を形成していてもよい。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項3)や、カルボニル基質が、水和物形成容易性及び/又は水溶性であることを特徴とする請求項1~3記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項4)や、一つのカルボニル基質が、一般式(IV)
【0020】
【化17】
JP0003883972B2_000008t.gif
【0021】
(式中、R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R4はパーハロゲノアルキル基を表す。)で示される化合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項5)や、一つのカルボニル基質が、一般式(IV)で示される化合物の水和物であることを特徴とする請求項5記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項6)や、一般式(IV)で示される化合物の水和物が、一般式(V)
【0022】
【化18】
JP0003883972B2_000009t.gif
【0023】
(式中、R4はパーハロゲノアルキル基を表す。)で示されるアルデヒド・一水和物であることを特徴とする請求項6記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項7)や、一つのカルボニル基質が、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物であることを特徴とする請求項7記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項8)や、ヒドロキシケトン化合物が、β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項1~8のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項9)や、β-ヒドロキシケトン化合物が、γ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項9記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項10)や、溶媒が、水を含有することを特徴とする請求項1~10のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項11)や、水の含有量を変化させることにより、アンチ体とシン体の収率比又はエナンチオ選択率を調整することを特徴とする請求項1~11のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項12)や、溶媒が、アセトニトリルを含有することを特徴とする請求項1~12のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項13)や、カルボニル基質、触媒及び/又は溶媒の脱水処理工程を含まないことを特徴とする請求項1~13のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項14)や、空気中で行うことを特徴とする請求項1~14のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項15)や、0~60℃の温度で行うことを特徴とする請求項1~15のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項16)に関する。
【0024】
また本発明は、2つのカルボニル基質を結合させるヒドロキシケトン化合物製造用触媒であって、一般式(I)
【0025】
【化19】
JP0003883972B2_000010t.gif
【0026】
(式中、Zは、未置換又は置換基を有する員環を表す。)で示されるテトラゾール誘導体を含有することを特徴とするヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項17)に関し、テトラゾール誘導体が、式(II)
【0027】
【化20】
JP0003883972B2_000011t.gif
【0028】
で示される化合物であることを特徴とする請求項17記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項18)や、少なくとも一つのカルボニル基質が、一般式(III)
【0029】
【化21】
JP0003883972B2_000012t.gif
【0030】
(式中、R1、R2は、独立して水素原子、又は、未置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基若しくはアリール基を表し、相互に結合して環を形成していてもよい。)で示される化合物であることを特徴とする請求項17又は18記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項19)や、カルボニル基質が、水和物形成容易性及び/又は水溶性であることを特徴とする請求項17~19のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項20)や、一つのカルボニル基質が、一般式(IV)
【0031】
【化22】
JP0003883972B2_000013t.gif
【0032】
(式中、R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R4はパーハロゲノアルキル基を表す。)で示される化合物であることを特徴とする請求項17~20のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項21)や、一つのカルボニル基質が、一般式(IV)で示される化合物の水和物であることを特徴とする請求項21記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項22)や、一般式(IV)で示される化合物の水和物が、一般式(V)
【0033】
【化23】
JP0003883972B2_000014t.gif
【0034】
(式中、R4はパーハロゲノアルキル基を表す。)で示されるアルデヒド・一水和物であることを特徴とする請求項22記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項23)や、一つのカルボニル基質が、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物であることを特徴とする請求項23記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項24)や、ヒドロキシケトン化合物が、β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項17~24のいずれか記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項25)や、β-ヒドロキシケトン化合物が、γ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物であることを特徴とする請求項25記載のヒドロキシケトン化合物製造用触媒(請求項26)に関する。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法としては、一般式(I)(式中、Zは、未置換又は置換基を有する4~10員環を表す。)で示されるテトラゾール誘導体を含有する触媒を用い、2つのカルボニル基質を結合させる方法であれば、特に制限されるものではない。
【0036】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法において用いられるテトラゾール誘導体は一般式(I)で示され、式中、Zは、未置換又は置換基を有する5~10員環を表し、テトラゾール環の炭素原子に窒素原子をβ位に有する4~10員の複素環が結合した化合物である。かかる複素環は酸素原子を含んでいてもよく、複素環の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基や、複素環に縮合した縮合環等のアリール基等を挙げることができるが、置換基を含めた複素環部分が嵩高いものは、収率を下げるため、置換基として嵩高くないものが好ましい。
【0037】
かかるテトラゾール誘導体としては、5-(2´-ピロリジン)-4H-1,2,3,4-テトラゾール、5-(4H,5H-2´-オキサゾール)-4H-1,2,3,4-テトラゾール、5-(2´-ピペリジン)-4H-1,2,3,4-テトラゾール、5-(ベンゾ[c]-2´-ピペリジン)-4H-1,2,3,4-テトラゾール等を例示することができ、特に、式(II)で示される5-(2´-ピロリジン)-4H-1,2,3,4-テトラゾールであることが好ましい。
【0038】
かかるテトラゾール誘導体は、天然又は合成品のプロリンから調製することができる。一般式(II)で示されるテトラゾール誘導体は、文献(J.Med.Chem.1985、28、1067-1071)記載の方法により調製することができる。即ち、ベンジルオキシカルボニル基で窒素原子が保護されたプロリンのカルボン酸として市販されているN-(ベンジルオキシカルボニル)-L-プロリンを、アンモニアと反応させアミドに変換した後、塩化ホスホリルで脱水してニトリルを合成し、このニトリルとナトリウムアジトを反応させテトラゾールを得、最後に、N-ベンジルオキシカルボニル基を臭化水素/酢酸又はPd/C,H2で脱保護し、一般式(II)で示されるテトラゾール誘導体を生成することができる。
【0039】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法におけるカルボニル基質としては、カルボニル基を有するカルボニル化合物を挙げることができ、カルボニル化合物としては、具体的にはアルデヒド化合物やケトン化合物である。カルボニル基質として、少なくとも一つがカルボニル化合物から選択され、二つのカルボニル化合物を基質として用いる場合は、同種であっても異種であってもよい。また、本発明に使用するカルボニル基質は、水和物形成容易性及び/又は水溶性であってもよい。水和物形成容易性とは、カルボニル基と水とが容易に結合して水和物を形成する性質をいい、水和物形成容易性を有するカルボニル基質は、一の水分子と結合した一水和物であるオルトカルボン酸や、二以上の水分子と結合した水和物等を容易に形成し、かかるカルボニル基質の水和物は反応の妨げにならず、反応を促進させ得る。また、水溶性のカルボニル基質としては、例えば、ホルムアルデヒドを挙げることができ、水溶性カルボニル基質を溶解した水溶液、例えば、ホルマリン水溶液も直接反応に用いることができる。
【0040】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法におけるカルボニル基質としては、一般式(III)(式中、R1、R2は、独立して水素原子、又は、未置換若しくは置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基若しくはアリール基を表し、相互に結合して環を形成していてもよい。)で示される化合物であることが好ましい。一般式(III)中、R1、R2が表すアルキル基としては、直鎖状又は環状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等や、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等C1~C30のアルキル基を挙げることができる。一般式(III)中、R1、R2が表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキシニル等の炭素数1~30のアルケニル基を挙げることができる。
【0041】
また、一般式(III)中、R1、R2が表すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基等の炭素数1~30のアルコキシ基を挙げることができ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基等のC1~C30のアルコキシカルボニル基を挙げることができ、アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、ベンジル基、フェネチル基等のC1~C30のアリール基を挙げることができる。
【0042】
かかる一般式(III)中、R1、R2が示すアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のアルキル基や、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基等のアルケニル基や、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、ベンジル基等のアリール基や、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基や、その他、水酸基、カルボキシ基、アシル基、アミノ基、チオ基、ニトロ基等を挙げることができる。また、R1、R2が結合して形成する環としては、環状アルキル基、芳香族環であってもよく、具体的に、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等や、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等を例示することができる。
【0043】
かかる一般式(III)で示される化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、バレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミスチリンアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒド、グリオキサール、スクシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒド、ベンズアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンアムアルデヒド、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類を挙げることができる。
【0044】
更に、一般式(III)で示される化合物として、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、2-ウンデカノン、メチルビニルケトン、メシチルオキシド、フルオロアセトン、クロロアセトン、1,1,1-トリクロロアセトン、3-クロロペンタンジオン、ジシクロヘキシルケトン、メトキシカルボニルメチルケトン、エトキシカルボニルメチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、パーフルオロシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、シクロデカノン、2-ノルボルナノン、7-ノルボルナノン、3-クロロ-2-ノルボルナノン、ショウノウキノン、2-アダマンタノン、ベンジルアセトン、2-フェニルシクロヘキサノン、1-インダノン、2-インダノン、α-テトラロン、β-テトラロン、7-メトキシ-2-テトラロン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンジルフェニルケトン、3,4-ジメチルアセトフェノン、2-アセトナフトン、2-クロロアセトフェノン等のケトン類等が挙げられる。
【0045】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法におけるカルボニル基質としては、その一つが、一般式(IV)(式中、R3は、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R4はパーハロゲノアルキル基を表す。)で示される化合物であってもよい。一般式(IV)中、R3が表すアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、上記一般式(III)におけるR1、R2が表すアルキル基、アルケニル基、アリール基と同様のものを挙げることができ、また、これらの置換基としても上記一般式(III)のR1、R2における置換基と同様のもの具体的に例示することができる。
【0046】
かかる一般式(IV)中、R4が表すパーハロゲノアルキル基としては、総ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等で置換されたアルキル基であればよく、直鎖状、分枝状、環状いずれであってもよい。かかるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等を具体的に例示することができる。このうちR4が表すパーハロゲノアルキル基としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基を好ましい具体例として挙げることができ、かかる置換基を有する一般式(IV)で示される化合物としては、クロラール、トリフルオロアセトアルデヒド等を例示することができる。
【0047】
また、本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法におけるカルボニル基質としては、その一つが、上記一般式(IV)で示される化合物の水和物であってもよい。上記一般式(IV)で示される化合物の水和物としては、一般式(IV)で示される化合物に1以上の水分子が結合したものであり、いわゆるオルトアルデヒドである一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物を例示することができる。一般式(V)中、R4は一般式(IV)におけるR4と同様のものを挙げることができ、かかる一般式(IV)で示される化合物の水和物としては、クロラール・一水和物、トリフルオロアセトアルデヒド・一水和物、ペンタクロロプロピオンアルデヒド・一水和物、ペンタフルオロプロピオンアルデヒド・一水和物を具体的に挙げることができる。かかる水和物はもう一方のカルボニル基質によって反応を促進させることができる。一般式(IV)で示される化合物の水和物は、一般(V)で示される化合物に、水を加え攪拌することにより調製することができ、一水和物を調製するには、一般式(V)で示される化合物と等モル量の水を加え、水和物における水分子の数に相当する当量の水を加え、攪拌して得ることができる。添加する水の量が、2当量、・・5当量と多くなるに伴い、アンチ体とシン体の収率比は低下するが、アンチ体におけるエナンチオ選択性を向上させることができる。このため、水の含有量を変化させることにより、アンチ体とシン体の収率比又はエナンチオ選択率を調整することもできる。
【0048】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法におけるカルボニル基質としては、その一つが、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物であってもよい。一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物としては、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、n-ブチルエーテル等のモノエーテルを挙げることができ、このうち一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエチルエーテルを具体的に例示することができる。かかる一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物は、一般式(IV)で示されるアルデヒドをアルコールに溶解すると、容易に生成することができる。
【0049】
本発明のヒドロキシケトンの製造方法において使用する上記カルボニル基質としては、水溶性であっても、また、水和物を容易に形成するものであってもよく、双方とも一般式(III)で示されるカルボニル化合物から選択した同種(▲1▼)又は異なるカルボニル基質(▲2▼)、一方を一般式(III)で示される化合物から選択したカルボニル基質と、他方を一般式(IV)で示される化合物(▲3▼)、一般式(IV)で示される化合物の水和物(▲4▼)、一般式(V)で示されるアルデヒド・一水和物のモノエーテル化合物(▲5▼)から選択したカルボニル基質との組合せとすることができる。このとき、カルボニル基質の使用量は、▲2▼の場合は、1~2モル量、▲3▼の場合は、一般式(III)で示される化合物に対して、0.3~2モル量、▲4▼の場合は、一般式(III)で示される化合物に対して、0.7~5モル量、▲5▼の場合は、一般式(III)で示される化合物に対して、1モル量以上等とすることができる。
【0050】
本発明のヒドロキシケトンの製造方法は、上記同種又は2種のカルボニル基質を反応させるいわゆるアルドール反応を利用した方法であって、2種のカルボニル基質を選択することにより、β-ヒドロキシケトン化合物を生成するいわゆる不斉アルドール反応を利用する方法とすることができる。本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法としては、同種又は2種のカルボニル基質を一般式(I)で示されるテトラゾール誘導体存在下、好ましくは式(II)で示されるテトラゾール誘導体存在下、溶媒中で、0~60℃、好ましくは室温~40℃で、10~100時間等、空気中で攪拌する方法を挙げることができる。触媒の使用量としては、カルボニル基質に対して、1~30モル%とすることができる。使用する溶媒としては、水、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、酢酸エチル等のエステル系、アセトニトリル等のニトリル系等を挙げることができ、このうち、アセトニトリルが好ましいが、無溶媒でも反応は進行する。水の使用量としては、カルボニル基質に対して、1~7当量等とすることができ、また、有機溶媒としては、15~30当量とすることができ、カルボニル基質や、テトラゾール誘導体の触媒は脱水処理を行なわずに使用することができる。このとき、水の使用量を変化させることにより、得られる生成物のアンチ体/シン体の収率比と、アンチ体の光学活性率を調整することもできる。反応終了後、酢酸エチル等で生成物を抽出し、公知の方法により乾燥、精製することができる。
【0051】
本発明のヒドロキシケトンの製造方法によって製造されるヒドロキシケトン化合物は、従来の方法においては使用できなかったメチルイソプロピルケトンや、アセトフェノン等のカルボニル基質を用いて、また、水溶性や容易に水和物を形成するホルムアルデヒド等のアルデヒドも基質とすることができるため、広い範囲に亘り、例えば、1-ヒドロキシプロピルメチルケトン、1-ヒドロキシプロピルエチルケトン、ブチル-1-ヒドロキシプロピルケトン、1-ヒドロキシシクロペンタノン、1-ヒドロキシシクロヘキサノン等のα-ヒドロキシケトン化合物や、2-ヒドロキシイソプロピルケトン、2-ヒドロキシプロピルケトン、2-ヒドロキシメチルシクロペンタノン、2-ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、2-(ヒドロキシプロピル)シクロペンタノン等のβ-ヒドロキシケトン化合物や、3-ヒドロキシプロピルメチルケトン、3-ヒドロキシプロピルエチルケトン、3-ヒドロキシシクロペンタノン、3-ヒドロキシシクロヘキサノン等のヒドロキシケトンや、2-(2´,2´,2´,-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピル)シクロペンタノン、2-(2´,2´,2´-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピル)シクロヘキサノン、2´,2´,2´-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピルイソプロピルケトン、2´,2´,2´-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピル-4-メチルペンタ-3-イルケトン、2,2,2-トリクロロ-1-ヒドロキシプロピルブチルケトン、2,2,2-トリクロロ-1-ヒドロキシプロピルエトキシカルボニルケトン、2,2,2-トリクロロ-1-ヒドロキシプロピルフェノン、2´,2´,2´-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピル-p-ブロモフェノン、2´,2´,2´-トリクロロ-1´-ヒドロキシプロピルナフトン等のγ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物を具体的に挙げることができる。
【0052】
また、これらのγ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物を公知の方法、例えば、文献記載の方法に準じた方法(H. Wynberg, et. al., J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1984, 1181)により脱ハロゲン化し、β—ヒドロキシケトンを生成することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1
式(II)で示されるテトラゾール触媒3.5mg(0.025mmol)のアセトニトリル溶液1.0mLに、シクロペンタノン88.5μL(1mmol)とクロラール・一水和物(3)82.7mg(0.5mmol)とを加えてセプタムラバーで密封した。30℃で50時間攪拌した後、反応溶液に塩化ナトリウム水溶液5.0mLを注ぎ、酢酸エチル5.0mLで抽出する操作を3回行なった。抽出に用いた有機層を集めて、硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで減圧下溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒エーテル/ヘキサン=1:5)で精製し、生成物(4)を得た。収率は99%であった。アンチ体の化学収率は88%、ee%は、83%であった。生成物(4)の構造は、IR分析、元素分析、1HNMR及び13CNMRで決定した。
【0054】
同様にして、種々のカルボニル基質について、反応を行なった。結果を表1に示す。表中、1,3,5,7,9についてはクロラールと、その他はクロラール・一水和物との反応を行なった。
【0055】
【表1】
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【0056】
実施例2
式(VIII)に示すように、カルボニル基質として、シクロヘキサノン0.5mmlと、ホルマリン水溶液をホルムアルデヒド0.5mmolとして用いて、実施例1と同様にして、6日間反応を行なった。得られた2-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノンの収率は36%、アンチ体の光学活性は90%eeであった。
【0057】
【化24】
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【0058】
実施例3
式(IX)に示すように、カルボニル基質として、シクロヘキサノン1.0mmolと、トリフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール0.5mmolを用いて、実施例1と同様にして、48時間反応を行なった。得られた2-(2´,2´,2´トリフルオロ-1´-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノンの化学収率は48%、アンチ/シンは90:10、アンチ体の光学活性は93%eeであった。
シクロペンタノンについても同様にして反応を行なった。得られた2-(2´,2´,2´トリフルオロ-1´-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノンの化学収率は50%、アンチ/シンは90:10、アンチ体の光学活性は98%eeであった。
【0059】
【化25】
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【0060】
【発明の効果】
本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法は、生理活性を有し、医薬や、液晶材料等の合成において重要な原料となり得るヒドロキシケトン化合物を、金属を含有しない触媒を用いて環境破壊を抑制し、反応系の脱水処理を不要として、従来の方法では反応が起こり得なかったメチルイソプロピルケトンや、アセトフェノンのケトン等のカルボニル基質から、それが、例えば、ホルムアルデヒド等の水溶性であっても、直接的にヒドロキシケトン化合物を製造することができ、しかも、溶媒として水を用いても、ジアステレオ選択的、エナンチオ選択的に高収率で、過酷な条件を必要とせず効率よく生成物を得ることができる。特に、得られたγ-トリハロゲノ-β-ヒドロキシケトン化合物はα-ヒドロキシカルボン酸やα-アミノ酸の合成等価体であり、種々の生理活性物質等の中間体となるβ-ヒドロキシケトン化合物を直接的に、ジアステレオ選択的、エナンチオ選択的に高収率で得ることができるため、生理活性を有する化合物、医薬、液晶材料等の合成へ直結させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒を用いたクロラール・一水和物とシクロペンタノンとの反応時間と収率の関係を示す図である。
【図2】本発明の触媒を用いたクロラール・一水和物とシクロヘキサノンとの反応時間と収率の関係を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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