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明細書 :走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3753701号 (P3753701)
公開番号 特開2004-279349 (P2004-279349A)
登録日 平成17年12月22日(2005.12.22)
発行日 平成18年3月8日(2006.3.8)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
発明の名称または考案の名称 走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法
国際特許分類 G01N  13/16        (2006.01)
G01N  13/12        (2006.01)
G12B  21/04        (2006.01)
G12B  21/08        (2006.01)
FI G01N 13/16 C
G01N 13/12 D
G12B 1/00 601B
G12B 1/00 601D
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2003-074375 (P2003-074375)
出願日 平成15年3月18日(2003.3.18)
審査請求日 平成15年3月18日(2003.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】新井 豊子
【氏名】富取 正彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】小野 忠悦
参考文献・文献 特開平6-275190(JP,A)
特開2003-156425(JP,A)
特開2000-346781(JP,A)
特開平9-288115(JP,A)
特開平2-228503(JP,A)
特開平4-66802(JP,A)
特開平5-332713(JP,A)
特開昭63-265102(JP,A)
特開2004-181538(JP,A)
Takahito Ono,Si nanowire growth with ultrahigh vacuum scanning tunneling microscopy,Appl. Phys. Lett.,米国,1997年 4月 7日,Vol. 70, No. 14,p. 1852
調査した分野 G01N 13/10-13/24
G12B 21/00-21/24
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡で用いられる探針先端を融点未満に加熱した原料基板の表面に接触させた後、探針先端を基板表面から引き離す方向に動かし、探針と基板間に引力が働いている状態で保持して、加熱した原料基板から探針の先端部への該原料の原子移動によって該原料からなる微結晶のナノピラーを、ナノピラーの成長点が細くなり、ナノピラーと基板との接触が切れるまで探針先端に成長させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項2】
探針がシリコン単結晶であり、原料基板としてシリコン又はゲルマニウムを用いて、シリコン又はゲルマニウムのナノピラーを成長させることを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項3】
原子間力顕微鏡、非接触原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡等の探針と試料間の相互作用力を検知できる走査型プローブ顕微鏡装置を用い、該走査型プローブ顕微鏡装置の試料設置位置に原料基板を配置し、該基板を加熱した状態で、該走査型プローブ顕微鏡装置により探針と基板との間に働いている力をモニターしながら探針の先端を基板の表面に接触させた後、探針先端を基板表面から引き離す方向に動かことを特徴とする請求項1又は2記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項4】
ナノピラーの成長時に、探針と基板との間に電圧をかけることによって、基板にプラス又はマイナスのバイアスを印加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方法で製造した探針をそのまま走査型プローブ顕微鏡装置において試料観察用の探針として用いることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の使用方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)用探針先端に微小な先端突起(以下、「ナノピラー」とも言う)を成長させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型プローブ顕微鏡用探針は、SPMの分解能や安定性の向上のために、先端が原子レベルで鋭く、先端のプローブ原子が安定であることが要求される。従来の走査型プローブ顕微鏡用の探針は、主に走査型トンネル顕微鏡で用いられるタングステンなどの金属探針では、機械研磨、化学研磨、電解研磨、電界イオン顕微鏡内における電界蒸発などにより先端を先鋭化し安定化する処理が行われている。
【0003】
また、原子間力顕微鏡や非接触原子間力顕微鏡で用いられる探針は、力を検出するカンチレバーと呼ばれる「微小てこ」の先端に形成された探針が用いられることが多く、このカンチレバーと探針はシリコンのマイクロリソグラフィー技術などにより作られる。カンチレバー及び探針の素材はシリコン単結晶や窒化シリコンなどである。シリコン単結晶や窒化シリコン探針は化学エッチングにより先鋭化されている。
【0004】
また、SPMの分解能や安定性の向上のためにSPM探針先端にカーボンナノチューブを接着したり、カーボンを析出させたりする技術はすでにある。さらに、走査型トンネル顕微鏡用の探針先端の原子を処理するいくつかの方法が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7-221077号公報
【特許文献2】
特開平8-178935号(特許第3364817)公報
【特許文献3】
WO 00/70325号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
SPM像の観察において、用途により探針先端材料は最適なものを選定することにより高分解能な観察を実現できる。探針は、その全体が単結晶又は最先端が微結晶であり、最先端部分が、表面エネルギーの低い面で覆われ、最先端がその低エネルギー面の頂角になっている。
【0007】
SPM像の分解能を決定する鍵はその探針の先鋭さ、安定度である。従来の市販探針を用いてもSPM像は取得できるが、その像の分解能を向上させ、再現性良く像を取得するためには探針を安定な形状で原子レベルで先鋭化しなければならない。
【0008】
探針先端に結晶学的に、不安定な(表面エネルギーが高い)面が出ていると、何らかのエネルギーが加わると、より安定な面になるために表面を構成していた原子が動く。また、最先端に単に原子が吸着しているような探針構造では直ぐに吸着原子が脱離したりする。探針に適した探針構造とは、最先端部分には原子が1つ存在し、その周囲が表面エネルギーの低い微小面で囲まれ、その頂角が最先端になることが望ましい。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の技術とは全く異なる手段によって、探針の最先端部分に原子が1つ存在し、その周囲が表面エネルギーの低い微小面で囲まれ、その頂角が最先端になった走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)走査型プローブ顕微鏡で用いられる探針先端を融点未満に加熱した原料基板の表面に接触させた後、探針先端を基板表面から引き離す方向に動かし、探針と基板間に引力が働いている状態で保持して、加熱した原料基板から探針の先端部への該原料の原子移動によって該原料からなる微結晶のナノピラーを、ナノピラーの成長点が細くなり、ナノピラーと基板との接触が切れるまで探針先端に成長させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法、である。
【0011】
また、本発明は、(2)探針がシリコン単結晶であり、原料基板としてシリコン又はゲルマニウムを用いて、シリコン又はゲルマニウムのナノピラーを成長させることを特徴とする上記(1)の走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法、である。
【0012】
また、本発明は、(3)原子間力顕微鏡、非接触原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡等の探針と試料間の相互作用力を検知できる走査型プローブ顕微鏡装置を用い、該走査型プローブ顕微鏡装置の試料設置位置に原料基板を配置し、該基板を加熱した状態で、該走査型プローブ顕微鏡装置により探針と基板との間に働いている力をモニターしながら探針の先端を基板の表面に接触させた後、探針先端を基板表面から引き離す方向に動かことを特徴とする上記(1)又は(2)の走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法、である。
【0013】
また、本発明は、(4)ナノピラーの成長時に、探針と基板との間に電圧をかけることによって、基板にプラス又はマイナスのバイアスを印加することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかの走査型プローブ顕微鏡用探針の製造方法、である。
【0014】
また、本発明は、(5)上記(3)又は(4)の方法で製造した探針をそのまま走査型プローブ顕微鏡装置において試料観察用の探針として用いることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の使用方法、である。
【0015】
なお、本明細書において、「ナノピラー」は、ナノ=ナノメータ、ピラー=pillar(柱、柱状のもの)の意味であり、換言すれば、探針先端に形成される「ナノメーター尺度又は原子尺度で微小な突起」の意味である。本発明の製造方法で製造されるこのような形状のナノピラーは、全体又は最先端部は微結晶であり、低エネルギー面で覆われている。ナノピラーの2つの面の稜線が交わった頂点が探針の最先端になる。
【0016】
従来、例えば、シリコン清浄表面の観察にはシリコンの清浄ピラー、すなわちシリコンナノピラーが最適であると推論されている。しかし、従来、シリコンのナノスケールのピラーを走査プローブ顕微鏡用探針として成長させる技術はなかった。本発明によれば、例えば、加熱したシリコン基板に市販又は自作探針を接触させ、張力を掛けて引き上げ、探針先端にシリコンのナノスケールのピラーを成長させることができる。
【0017】
ナノピラーを形成する原料は、シリコンに限らず、ゲルマニウム、金、銀、タングステンなどの金属や、それらの合金でもよい。
【0018】
本発明の製造方法によって走査型プローブ顕微鏡用探針の先端に形成されたナノピラーの先端曲率半径は非常に小さく、それを用いて取得されたAFMの画像化条件から算出した推定先端曲率半径は数ナノメータ以下である。
【0019】
本発明のナノピラー成長方法はナノスケールの清浄なピラーを超高真空SPM中で成長させることができる。そのため、成長させたナノピラーを大気で汚染することなく、SPM探針として使用可能である。
【0020】
超高真空非接触原子間力顕微鏡(ncAFM)内で、市販シリコンカンチレバーの探針上にナノピラーを形成し、そのナノピラー探針は同一高真空チャンバー内で、ncAFM用探針として用いられ、高分解能ncAFM像の取得を可能にする。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の探針製造方法を概念的に示す模式図である。
まず、原子間力顕微鏡、非接触原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡等の探針と試料間の相互作用力を検知できる走査型プローブ顕微鏡装置(図示せず)を用い、該走査型プローブ顕微鏡装置の3軸微動機構1上の観察試料設置位置にシリコン、ゲルマニュウムなどのナノピラーを成長させるための原料用基板2を配置する。
【0022】
なお、走査型プローブ顕微鏡とは走査型トンネル顕微鏡及び、走査型トンネル顕微鏡から派生した、原子間力顕微鏡、非接触原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡、走査型キャパシタンス顕微鏡等の総称である。また、これらは複合的になっている装置もある。本発明の探針の製造方法においては、「試料の相互作用力を検知する」ことが必要条件であるが、それにより作成された探針は全ての走査型プローブ顕微鏡で使用可能である。走査型トンネル顕微鏡は、探針と試料間の相互作用力を検知する能力はない。しかし、走査型トンネル顕微鏡と非接触原子間力顕微鏡、原子間力顕微鏡との複合機の場合は、原子間力顕微鏡で本発明の方法により探針を製造し、走査型トンネル顕微鏡用探針として使用可能である。
【0023】
基板2のサイズは任意であり、その表面形状は原子レベルで平坦である方が望ましいが、100ナノメートル程度までのステップなどの凹凸は存在しても構わない。実施例では、基板2として単結晶シリコンウェハーを用いたが単結晶である必要はない。単結晶シリコンウェハーを試料フォルダーのサイズに切り、表面の有機汚染物を除去するため、有機溶剤による洗浄及び紫外線照射とオゾンによる有機汚染物を除去した後、走査プローブ顕微鏡の超高真空チャンバーに導入すればよい。
【0024】
さらに、10-8 Pa(パスカル)程度の超高真空環境でシリコンウェハーを1250℃程度まで加熱し、有機汚染物及び表面酸化層を完全に除去し、清浄なシリコン基板を準備することが好ましい。ゲルマニュウム基板も同様の方法で準備できる。金属基板の場合は大気中でシリコンの場合と同様に有機溶剤による洗浄及び紫外線照射とオゾンにより有機汚染物を除去するとよい。超高真空チャンバー導入後にイオンスパッタリングにより表面の汚染物及び酸化層を除去し、融点以下の温度に加熱してスパッタリングによる表面荒れを平坦化するとともに、汚染層、酸化層を除去することが好ましい。これらの処理は汚染状況により何度か繰り返され、清浄な基板を準備する。
【0025】
基板2は基板加熱機構3上に載置する。基板がシリコンやゲルマニウムの場合は600~700℃程度に加熱できればよいが、タングステンなどの高融点金属は表面原子が動きやすくなる温度も高いため、加熱温度を高くする必要がある。
【0026】
基板2の加熱はヒーターでも良いし、基板2が半導体又は薄い金属の場合は基板2に直接電流を流して通電加熱できる。一般に真空チャンバー内で任意の物体を加熱するとガスを放出して真空度が悪くなる。基板2を加熱ししていても真空チャンバー内は10-6Pa台かそれよりも良い真空度が保たれていた方がよい。原子間力顕微鏡のカンチレバー取り付け機構4の所定位置にカンチレバー5を取り付ける。ナノピラー成長時に探針6は基板2よりも低温に設定される。探針6は室温でもよく、また、探針加熱機構機構(図示せず)を用いて基板2よりも低温であるが室温よりは高い温度に保持されていてもよい。
【0027】
図2は、探針6へのナノピラー9の成長過程を概念的に示す模式図である。基板2を設定温度に加熱し、装置全体の熱ドリフトが安定した後、該走査型プローブ顕微鏡装置により探針6と基板2間に働いている力を図1に示すカンチレバー歪検出機構7でモニターしながら探針6を降下させて探針6の先端を基板2の表面に接触させる(図2のA)。基板2は加熱されて基板2内の原子同士の結合が切れて動きやすくなっている。探針6と基板2の接触後、すぐに、基板2から探針6の先端部への原料の原子移動が開始し、探針6の先端が種結晶となって微結晶のナノピラーの成長が始まる(図2のB)。
【0028】
基板2は融解液(液体)になるまで高温に加熱しなくても、加熱された固体状態でも室温に比べて基板2内の原子の結合が切れやすくなるため、探針6の先端側に接触部から原料の原子が移り、基板2よりも低温に保持されている探針6を種結晶としてその上で原料が再結晶化する。また、原料基板2が固体状態の場合は、融解液から成長させるよりも少量しか原子は探針6側に移らないため、微小な突起を作るにはより都合が良い。また、融点にあまり近くなると基板2が部分的に溶けてしまったりして、機構上不具合がある。よって、加熱温度は融点以下の温度、好ましくは融点未満である。
【0029】
次いで、探針6の先端を基板2の表面から引き離す方向に動かし、探針6と基板2間に一定の引力が働いて引っ張った状態で保持して、探針6の先端にナノピラー9を成長させる(図2のC)。成長した部分は先端ほど細くなっていく。この時の探針6を保持する引力を小さくすると、太く長いピラーになり、引力を大きくすると短いピラーになる。最大引力は探針6の先端の径及び基板2との接触面積に依存し、探針6の先端の径が20ナノメーター程度の場合は、最大引力は100ナノニュートン程度になり、探針6の先端の径が5ナノメーター程度の場合は、最大引力は10ナノニュートン程度になる。ナノピラー9の成長点が細くなると、あるところでナノピラー9と基板2との接触が切れる(図2のD)。この過程を繰り返して、ナノピラー9を長く成長させることもできる。
【0030】
成長させるピラーは、その成長条件により径や長さが制御できる。SPMで主に用いられている市販のシリコンカンチレバー上のシリコン単結晶探針先端に成長させれば、その結晶方向を保存しながら結晶が成長する。また、シリコン上にゲルマニュウムが成長すれば、その格子歪みから特定のファセット面で囲まれた、安定な探針が形成される。
【0031】
ナノピラーの成長時に、図1に示すように、探針6と基板2との間に電源8により電圧を加えることによって、基板2にプラス又はマイナスのバイアスを印加することが好ましい。基板2の表面の動きやすくなっている原子すなわち一部結合が切れている原子は電気的に中性である場合、プラス又はマイナスに電荷を持つ場合がある。結合が切れている原子の帯電状態は元素及び表面状態によって異なる。基板2の表面上の一部結合が切れている原子がプラスに帯電している場合は探針6側にマイナスのバイアスを印加し、表面原子がマイナスに帯電している場合は探針6側にプラスのバイアスを印加することで、探針6側に表面の原子が移動しやすくなる。また、探針6と基板2との間にバイアスが印加されると、先鋭化されている探針6の先端付近に高い電界が生じるため、表面原子が中性であっても、表面原子は分極しその高い電界方向に引き寄せられるため、探針6と基板2との間にバイアスを印加することによって表面原子を探針6方向に動き易くすることができる。
【0032】
図3は、カンチレバー5と基板2の相対位置(横軸)とその時に基板2とカンチレバー5の相互作用力により探針6が受ける力(縦軸)の変化を表した、一般にフォースカーブと呼ばれている図である。横軸は探針が付いているカンチレバーの根本の移動距離を示す。
【0033】
探針と試料(ここでは基板)間に力が働くとカンチレバーが撓んでそれを検知するため、引力が働くとカンチレバーは試料に近づく方向に撓み、斥力が働けば試料から離れる方向に撓む。図3では、カンチレバーの撓み量は横軸には反映させていないので、横軸は探針先端と試料との距離ではない。
【0034】
図3中の数字はカンチレバー5の動きの順番を示し、図2の●位置でカンチレバー5を保持する。図中の数字の意味は、下記のとおりである。
1:離れていた探針を試料(ここでは基板)に近づけていく。
2:探針と試料間に引力が働き探針と試料が接触する。
3:カンチレバーをより試料側に近づけると探針と試料間には斥力が働く。ここで斥力を大きくしすぎると試料及び探針の結晶が歪み接触面積が大きくなる。接触面積が大きくなると結果として成長させるナノピラーが太く大きくなるので、好ましくない。数ナノニュートン(nN)程度の斥力まで押し込み、止める。
4:徐々に探針を試料から引き離していく。
5:探針先端のナノピラー成長点が基板から切れる。
【0035】
【実施例】
実施例1
市販のシリコン単結晶製の探針を用いた。軸方向は<001>方向である。この探針を超高真空AFMチャンバーに導入し、イオンスパッタにより探針先端の有機汚染物や酸化層を除去し、AFMの探針取り付け位置に取り付けた。ナノピラーを成長させるための原料基板としては、単結晶シリコンウェハーを用いた。単結晶シリコンウェハーを試料フォルダーのサイズに切り、表面の有機汚染物を除去するため、有機溶剤による洗浄及び紫外線照射とオゾンによる有機汚染物を除去した後、超高真空AFMチャンバーに導入した。
【0036】
さらに、10-8Pa(パスカル)程度の超高真空環境でシリコンウェハーを1250℃まで加熱し、10秒間1250℃で保持し、有機汚染物及び表面酸化層を完全に除去した。この間の真空度は10-8Pa台であった。
【0037】
この様にして準備された清浄なシリコン基板をAFMの試料位置に配置し、500℃に加熱した。基板を加熱することによりAFM全体が熱伝導及び輻射により暖まる。温度ドリフトによる探針と基板間の相対位置の変動をなくすため、AFM全体の温度が平衡温度になるまで1時間程度の時間をおいた。AFMの目標斥力を1ナノニュートンとして探針を基板に粗動接近させた。探針は、探針と基板との間に1ナノニュートンの斥力が働いた状態で粗動接近を停止した。
【0038】
探針と基板間の相互作用力を検出しながら探針を基板から引き離し、最大引力を検知した。再度、探針を基板に近づけ、1ナノニュートンの斥力で止め、探針を基板から引き離し、最大引力よりもわずかに小さな引力(引力1)が探針と基板間にかかった状態で探針を保持した。ここで、AFMの制御機構により「引力1」の力が一定になるように探針位置は制御された。ナノピラーが成長し、成長点が徐々に細くなると、一定引力「引力1」では探針と基板は離れた。この時、探針の先端にはナノピラーが成長していた。最大引力が100ナノニュートン以上では形成されたナノピラーの径は10ナノメートル程度以上になる。最大引力が小さい方が形成されるナノピラーの径は細くなる。
【0039】
探針の接触・引き離しを繰り返すと、繰り返すたびに最大引力は小さくなる。よって、より細い先端径のナノピラーを成長させるため最大引力が10ナノニュートン以下になるまで探針の接触・引き離しを繰り返した。上記の方法により、10回接触と引き離しを繰り返し、探針先端が種結晶となって100ナノメートル程度の長さの微結晶のナノピラーが成長した。ナノピラーは<111>方向に成長した。
【0040】
図4(A)は、ナノピラーを成長させる前の探針、図4(B)はその先端にナノピラーを成長させた探針の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。実際に使用する探針は非常に微小であるため、この高分解能SEMでも成長前後の差ははっきりしない。このナノピラー探針を用いて、シリコン表面の原子分解能ncAFM観察に成功した。
【0041】
実施例2
ナノピラーを成長させるための原料基板を実施例1のシリコンウェハーに代えてゲルマニュウムウエハとした他は実施例1と同じ条件により、ゲルマニュウムのナノピラーを探針先端に成長させた。シリコンとゲルマニュウムとの格子定数の違いから格子歪みが起こり、ピラミッド状のナノピラーが形成された。
【0042】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって得られた探針を用いることによりSPMの分解能の向上や探針の安定性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の探針製造方法を概念的に示す模式図である。
【図2】図2は、探針へのナノピラーの成長過程を概念的に示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の方法において、カンチレバーと基板との相対距離とその時探針が受ける力の変化を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例1の方法により製造した探針の長さ方向の断面構造(A:ナノピラーの成長前、B;ナノピラーの成長後)を示す図面代用走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3