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明細書 :パルスレーザ加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4333836号 (P4333836)
公開番号 特開2004-337917 (P2004-337917A)
登録日 平成21年7月3日(2009.7.3)
発行日 平成21年9月16日(2009.9.16)
公開日 平成16年12月2日(2004.12.2)
発明の名称または考案の名称 パルスレーザ加工装置
国際特許分類 B23K  26/08        (2006.01)
B23K  26/073       (2006.01)
B23K  26/12        (2006.01)
H01S   3/00        (2006.01)
FI B23K 26/08 K
B23K 26/073
B23K 26/12
H01S 3/00 B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 17
出願番号 特願2003-137611 (P2003-137611)
出願日 平成15年5月15日(2003.5.15)
審査請求日 平成18年2月2日(2006.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
発明者または考案者 【氏名】東 孝憲
【氏名】青島 紳一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100114270、【弁理士】、【氏名又は名称】黒川 朋也
【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
審査官 【審査官】青木 正博
参考文献・文献 特開平08-206869(JP,A)
特表2002-511801(JP,A)
特開平08-054538(JP,A)
特開2003-200286(JP,A)
特開平09-174270(JP,A)
特開平11-023878(JP,A)
特開2001-004354(JP,A)
調査した分野 B23K 26/00-26/42
H01S 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
5ps以下のパルス幅を有するパルスレーザ光を、光伝送媒体で伝送して被加工物に照射し前記被加工物を加工するパルスレーザ加工装置であって、
前記パルスレーザ光を出射し前記光伝送媒体の一端側に入射させるパルスレーザ光源と、
前記光伝送媒体の他端側から出射される前記パルスレーザ光を前記被加工物に集光する集光手段とを備えており、
前記光伝送媒体は、
コア及びクラッドを備える本体部と、
前記本体部の一端側に設けられて前記光伝送媒体の一端側に入射される前記パルスレーザ光を通過させる第1屈折率変化部、及び前記本体部の他端側に設けられて前記光伝送媒体の他端側から出射される前記パルスレーザ光を通過させる第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方とを含み、
前記光伝送媒体において、前記本体部の一端側から前記パルスレーザ光が入射され、前記本体部の他端側から前記パルスレーザ光が出射されるようになっており、
前記第1屈折率変化部は、前記第1屈折率変化部から前記本体部に向かう方向に沿って、屈折率が前記第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも前記本体部の前記コアの屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有し、
前記第2屈折率変化部は、前記本体部から前記第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が前記本体部の前記コアの屈折率よりも前記第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有する、
ことを特徴とするパルスレーザ加工装置。
【請求項2】
前記被加工物を浸漬する液体を収容するための液体収容槽を更に備えており、前記光伝送媒体における前記パルスレーザ光の出射側端部が前記液体に浸漬されていることを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項3】
前記光伝送媒体が前記第1屈折率変化部及び前記第2屈折率変化部を有する場合において、前記第1屈折率変化部における屈折率が、前記第1屈折率変化部から前記本体部に向かう方向に沿って大きくなっており、前記第2屈折率変化部における屈折率が、前記本体部から前記第2屈折率変化部に向かう方向に沿って小さくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項4】
前記光伝送媒体に入射される前記パルスレーザ光の時間波形を所定の波形に変換するパルス波形変換装置を更に備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第2屈折率変化部及び前記集光手段が一体化されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項6】
前記被加工物を移動させる被加工物移動手段を更に備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項7】
前記光伝送媒体から出射される前記パルスレーザ光のビーム断面の形状を変換するビーム断面変換手段を更に備えることを特徴とする請求項6に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項8】
前記被加工物の加工状態をモニタする加工状態モニタ手段を更に備えていることを特徴とする請求項7に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項9】
前記集光手段は、前記光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を反射させて前記被加工物に照射する反射型光学系から構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項10】
前記光伝送媒体を複数本束ねてなる光伝送媒体束を備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項11】
前記被加工物にレーザ誘起プラズマを発生させるレーザ誘起プラズマ発生手段を更に備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のパルスレーザ加工装置。
【請求項12】
5ps以下のパルス幅を有するパルスレーザ光を光伝送媒体で伝送し、前記光伝送媒体から出射される前記パルスレーザ光を用いて被加工物を加工するパルスレーザ加工装置であって、
前記パルスレーザ光を出射し前記光伝送媒体の一端側に入射させるパルスレーザ光源と、
前記光伝送媒体の他端側から出射される前記パルスレーザ光を所定の点に集光する集光手段と、
前記パルスレーザ光を前記所定の点に集光する時に誘起される超音波を前記被加工物に照射する超音波照射手段とを備えており、
前記光伝送媒体は、
コア及びクラッドを備える本体部と、
前記本体部の一端側に設けられて前記光伝送媒体の一端側に入射される前記パルスレーザ光を通過させる第1屈折率変化部、及び前記本体部の他端側に設けられて前記光伝送媒体の他端側から出射される前記パルスレーザ光を通過させる第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方とを含み、
前記光伝送媒体において、前記本体部の一端側から前記パルスレーザ光が入射され、前記本体部の他端側から前記パルスレーザ光が出射されるようになっており、
前記第1屈折率変化部は、前記第1屈折率変化部から前記本体部に向かう方向に沿って、屈折率が前記第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも前記本体部の前記コアの屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有し、
前記第2屈折率変化部は、前記本体部から前記第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が前記本体部の前記コアの屈折率よりも前記第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有する、
ことを特徴とするパルスレーザ加工装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高出力フェムト秒パルスレーザ光を用いて被加工物を加工するパルスレーザ加工装置に関する。
【0002】
【従来技術】
パルスレーザ光を用いて被加工物を加工する場合、加工効率を向上させるためには、高出力で短パルスのパルスレーザ光を用いることが望ましい。
【0003】
このような高出力で短パルスのレーザ光を用いたパルスレーザ加工装置として、従来、パルスレーザ光を、光ファイバにより水中の被加工物に照射して被加工物を加工するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このレーザ加工装置によれば、被加工物に照射されるパルスレーザ光が光ファイバを通して伝送されることにより、被加工物に対して、低損失且つ高強度でのレーザ光照射が図られる。
【0004】
【特許文献1】
特開平8-206869号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の公報に記載のパルスレーザ加工装置は、以下に示す課題を有していた。
【0006】
即ち従来のパルスレーザ加工装置は、パルスレーザ光を光ファイバに入射させた場合、パルスレーザ光の高い出力により、光ファイバの端面を損傷させてしまうおそれがある。また、光ファイバが損傷しなくても、空気と、光ファイバのコアとの界面でパルスレーザ光の反射率が大きくなり、レーザ光源から出射されて被加工物に到達するレーザ光の光量が減少し、レーザ光が被加工物の加工に十分に利用されなくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に、光伝送媒体の損傷を十分に防止できるパルスレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、上記のように光ファイバの端面で損傷が生じる原因が空気又は水と光ファイバ間の屈折率差によって生じる光の反射にあるという考えに到達し、更に鋭意検討を進めた結果、光ファイバの端面と空気又は水との間に、これらの屈折率差による光の反射を低減することが可能な媒体を設けることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、5ps以下のパルス幅を持つパルスレーザ光を、光伝送媒体により伝送して被加工物に照射し被加工物を加工するパルスレーザ加工装置であって、パルスレーザ光を出射し光伝送媒体に入射させるパルスレーザ光源と、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を被加工物に集光する集光手段とを備えており、光伝送媒体が、コア及びクラッドを備える本体部と、本体部の一方の側に設けられる第1屈折率変化部、及び本体部の他方の側に設けられる第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方とを含み、光伝送媒体において、本体部の一端側からパルスレーザ光が入射され、本体部の他端側からパルスレーザ光が出射されるようになっており、第1屈折率変化部は、第1屈折率変化部から本体部に向かう方向に沿って、屈折率が第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも本体部のコアの屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有し、第2屈折率変化部は、本体部から第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が本体部のコアの屈折率よりも第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有することを特徴とする。
【0010】
このパルスレーザ加工装置によれば、パルスレーザ光源から出射されるパルスレーザ光が光伝送媒体に入射される。光伝送媒体が第1屈折率変化部を含む場合、光伝送媒体に入射されるパルスレーザ光は、第1屈折率変化部から本体部に入射される。ここで、光伝送媒体の第1屈折率変化部は、第1屈折率変化部から本体部に向かう方向に沿って、屈折率が第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも本体部のコアの屈折率に近づくよう変化する屈折率分布を有するため、光が第1屈折率変化部に接する媒質から本体部のコアに入射されるときの光の反射率が、第1屈折率変化部が無い場合に比べて十分に低減される。また、光伝送媒体が第2屈折率変化部を含む場合、第2屈折率変化部は、本体部から第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が本体部のコアの屈折率よりも第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有するため、光が本体部のコアから第2屈折率変化部に接する媒質に出射されるときの光の反射率が、第2屈折率変化部が無い場合に比べて十分に低減される。そして、光伝送媒体が第1屈折率変化部及び第2屈折率変化部の両方を含む場合、光伝送媒体全体としても、本体部の両側に第1及び第2屈折率変化部が設けられていない場合に比べて、光のトータルの反射率を十分に低減することが可能となる。よって、本発明のパルスレーザ加工装置によれば、光伝送媒体が第1屈折率変化部及び第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方を含むことにより、反射率に起因する本体部の損傷を十分に防ぐことが可能となる。また光伝送媒体において光のトータルの反射率が十分に低減されるため、光伝送媒体における光の損失が十分に低減される。このため、光伝送媒体から出射されたパルスレーザ光を集光手段により被加工物に集光して被加工物を加工するときに、パルスレーザ光源から出射されたパルスレーザ光の加工への利用率を十分に向上させることができる。
【0011】
上記パルスレーザ加工装置は、被加工物を浸漬する液体を収容するための液体収容槽を更に備えており、光伝送媒体におけるパルスレーザ光の出射側端部が液体に浸漬されている。
【0012】
液体の屈折率は通常、空気より大きいため、光伝送媒体の出射側端部を液体に浸漬することで、本体部のコアの屈折率との液体との屈折率差を十分に低減することができる。このため、光が本体部のコアから出射側端部に接する媒質に出射されるときの光の反射率がより十分に低減される。
【0013】
光伝送媒体が前記第1屈折率変化部及び第2屈折率変化部を有する場合、光伝送媒体における本体部のコアの屈折率は通常、第1及び第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも大きい。このため、上記パルスレーザ加工装置においては通常、第1屈折率変化部における屈折率が、第1屈折率変化部から本体部に向かう方向に沿って大きくなっており、第2屈折率変化部における屈折率が、本体部から第2屈折率変化部に向かう方向に沿って小さくなっている。
【0014】
上記パルスレーザ加工装置は、光伝送媒体に入射されるパルスレーザ光の時間波形を所定の波形に変換するパルス波形変換装置を更に備えることが好ましい。この場合、パルス波形変換装置により、パルスレーザ光の時間波形を所定波形に変換することが可能であり、パルスレーザ光のピーク強度が小さくなるようにパルスレーザ光を波形変換することも可能である。このため、パルスレーザ光による光伝送媒体の損傷をより十分に防止することが可能となる。
【0015】
上記パルスレーザ加工装置においては、第2屈折率変化部及び集光手段が一体化されていることが好ましい。この場合、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光が集光手段を経て被加工物に照射されるようにパルスレーザ光の光軸調整が行われる場合に、その調整が極めて容易となる。
【0016】
上記パルスレーザ加工装置は、被加工物を移動させる被加工物移動手段を更に備えてもよい。この場合、被加工物移動手段で被加工物を移動させることが可能であるため、パルスレーザ光の光軸を固定したまま、被加工物に対して所望の加工を行うことができる。
【0017】
上記パルスレーザ加工装置は、上記被加工物移動手段のほか、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光のビーム断面の形状を変換するビーム断面変換手段を更に備えることが好ましい。この場合、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光のビーム断面の形状を、ビーム断面変換手段により変換することが可能となり、被加工物の表面上に集光する際に、光伝送媒体及び集光手段で生じるビーム断面形状の歪みを補正して、集光強度を向上させたり、集光点でのスポット径を大きくして被加工物の材料に適した強度に調整したりすることが可能となる。
【0018】
上記パルスレーザ加工装置は、上記ビーム断面変換手段及び上記被加工物移動手段のほか、被加工物の加工状態をモニタする加工状態モニタ手段を更に備えていることが好ましい。加工状態モニタ手段により被加工物の加工状態がモニタされる。従って、モニタされた加工状態に基づいて、上記ビーム断面変換手段及び上記被加工物移動手段を制御することが可能となり、被加工物に対する加工を的確に行うことが可能となる。
【0019】
上記パルスレーザ加工装置において、集光手段は、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を反射させて被加工物に照射する反射型光学系から構成されていることが好ましい。光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を反射型光学系で反射させることにより、被加工物に照射されるパルスレーザ光の波形を精密に制御することが可能となる。
【0020】
上記パルスレーザ加工装置は、光伝送媒体を複数本束ねてなる光伝送媒体束を備えてもよい。この場合、光伝送媒体束の各光伝送媒体によりパルスレーザ光が伝送され、このパルスレーザ光が集光手段により被加工物に照射される。これにより、被加工物を、より多くの光量で加工することが可能になる。
【0021】
上記パルスレーザ加工装置は、被加工物にレーザ誘起プラズマを発生させるレーザ誘起プラズマ発生手段を更に備えることが好ましい。
【0022】
この場合、パルスレーザ光源から出射されるパルスレーザ光により被加工物に対してレーザ加工を行うときに、レーザ誘起プラズマ発生手段により被加工物においてレーザ誘起プラズマを発生させると、レーザ誘起プラズマにより、パルスレーザ光を被加工物に吸収させやすくすることができ、レーザ誘起プラズマが無い場合に比べてレーザ加工を容易に行うことができる。即ちレーザ誘起プラズマによってレーザ加工が促進されることとなる。またレーザ誘起プラズマ発生手段により被加工物においてレーザ誘起プラズマが発生すると、そのレーザ誘起プラズマだけでもレーザ加工を行うことができる。
【0023】
また本発明は、5ps以下のパルス幅を有するパルスレーザ光を光伝送媒体で伝送し、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を用いて被加工物を加工するパルスレーザ加工装置であって、パルスレーザ光を出射し光伝送媒体に入射させるパルスレーザ光源と、光伝送媒体から出射されるパルスレーザ光を所定の点に集光する集光手段と、パルスレーザ光を所定の点に集光する時に誘起される超音波を被加工物に照射する超音波照射手段とを備えており、光伝送媒体が、コア及びクラッドを備える本体部と、本体部の一端側に設けられる第1屈折率変化部、及び本体部の他端側に設けられる第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方とを含み、光伝送媒体において、本体部の一端側からパルスレーザ光が入射され、本体部の他端側からパルスレーザ光が出射されるようになっており、第1屈折率変化部は、第1屈折率変化部から本体部に向かう方向に沿って、屈折率が第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも本体部のコアの屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有し、第2屈折率変化部は、本体部から第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が本体部のコアの屈折率よりも第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有することを特徴とする。
【0024】
このパルスレーザ加工装置によれば、パルスレーザ光源から出射されるパルスレーザ光が光伝送媒体に入射される。光伝送媒体が第1屈折率変化部を含む場合、光伝送媒体に入射されるパルスレーザ光は、第1屈折率変化部から本体部に入射される。ここで、光伝送媒体の第1屈折率変化部は、第1屈折率変化部から本体部に向かう方向に沿って、屈折率が第1屈折率変化部に接する媒質の屈折率よりも本体部のコアの屈折率に近づくよう変化する屈折率分布を有するため、光が第1屈折率変化部に接する媒質から本体部のコアに入射されるときの光の反射率が、第1屈折率変化部が無い場合に比べて十分に低減される。また、光伝送媒体が第2屈折率変化部を含む場合、第2屈折率変化部は、本体部から第2屈折率変化部に向かう方向に沿って、屈折率が本体部のコアの屈折率よりも第2屈折率変化部に接する媒質の屈折率に近づくように変化する屈折率分布を有するため、光が本体部のコアから第2屈折率変化部に接する媒質に出射されるときの光の反射率が、第2屈折率変化部が無い場合に比べて十分に低減される。そして、光伝送媒体が第1屈折率変化部及び第2屈折率変化部の両方を含む場合、光伝送媒体全体としても、本体部の両側に第1及び第2屈折率変化部が設けられていない場合に比べて、光のトータルの反射率を十分に低減することが可能となる。よって、本発明のパルスレーザ加工装置によれば、光伝送媒体が第1屈折率変化部及び第2屈折率変化部の両方又はそのいずれか一方を含むことにより、反射率に起因する本体部の損傷を十分に防ぐことが可能となる。また光伝送媒体において光のトータルの反射率が十分に低減されるため、光伝送媒体における光の損失が十分に低減される。そして、光伝送媒体から出射されたパルスレーザ光は、集光手段により所定の点に集光され、そのときに誘起される超音波が超音波照射手段により被加工物に照射され、これにより被加工物が加工される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明のパルスレーザ加工装置の第1実施形態を示す概略図である。図1に示すように、パルスレーザ加工装置100は、パルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源1と、パルスレーザ光源1から出射される光パルスの時間波形を所定の波形に変換するパルス波形変換装置2と、パルス波形変換装置2により波形変換された光パルスを伝送する光伝送媒体3と、光伝送媒体3から出射されるパルスレーザ光を被加工物4に集光して照射する集光光学系(集光手段)5と、被加工物4を浸漬する液体6を収容するための液体収容槽7とを備えている。
【0027】
パルスレーザ光源1は、5ps以下、好ましくは200fs以下のパルス幅を有するパルスレーザ光を出射することが可能である。このようなパルスレーザ光源1としては、例えばチタンサファイヤレーザ光源が用いられる。またパルス波形変換装置2としては、例えばプリズム対、回折格子対、あるいは精密な波形制御が可能な波形整形器が用いられる。
【0028】
パルスレーザ光源1及びパルス波形変換装置2は光源ボックス8内に収容され、光伝送媒体3の入射端3aは光源ボックス8に挿入固定されている。光源ボックス8内には、パルス波形変換装置2で波形変換されたパルスレーザ光を光伝送媒体3の入射端3aに集光する集光レンズ(図示せず)が設けられている。
【0029】
光伝送媒体3の出射端3bは液体収容槽7に固定され、液体収容槽7に収容される液体6中に浸漬されている。本実施形態では、液体6として、水が用いられる。
【0030】
また、液体収容槽7内の液体6中には、集光光学系5及び被加工物4が浸漬されている。そして、出射端3bから出射されるパルスレーザ光が集光光学系5により被加工物4に集光されるようになっている。
【0031】
集光光学系5は、光伝送媒体3の出射端3bから出射されるパルスレーザ光を反射する放物面鏡9と、放物面鏡9で反射されるパルスレーザ光を反射して被加工物4に照射する反射鏡10とで構成されている。即ち集光光学系5は、反射型光学系のみで構成されている。このように集光光学系5が反射型光学系のみで構成されることにより、被加工物4に照射されるパルスレーザ光の波形を精密に制御することが可能となる。また集光光学系5が放物面鏡9を有することにより、被加工物4にパルスレーザ光を照射するときに、球面鏡を用いる場合に比べてその照射スポットを小さくすることが可能となる。
【0032】
液体収容槽7内には、被加工物4を支持するステージ11と、ステージ11を図1のX、Y、Z方向に移動させる移動機構12とが配置されている。この移動機構12で被加工物4を移動させることが可能であるため、パルスレーザ光の光軸を固定したまま、被加工物4に対して所望の加工を行うことができる。
【0033】
またパルスレーザ加工装置100は、被加工物4の加工状態をモニタする加工状態モニタ装置13を備えている。加工状態モニタ装置13は、例えば被加工物4からの光を受光して伝送する光ファイバ14と、光ファイバ14によって伝送された光を分光する分光器15とで構成されている。加工状態モニタ装置13により被加工物4の加工状態がモニタされる。従って、モニタされた加工状態に基づいて、移動機構12を制御することが可能となり、被加工物4に対する加工を的確に行うことが可能となる。尚、光ファイバ14の先端部は、被加工物4の加工部位からの光を受光できるように被加工物4の近傍に配置され、基端部は分光器15に接続されている。
【0034】
更にパルスレーザ加工装置100は、加工状態モニタ装置13の分光器15で得られた信号に基づいて、移動機構12及びパルス波形変換装置2を制御する制御装置16を備えている。
【0035】
図2は、光伝送媒体3を示す側面図、図3(a)は、光伝送媒体3の入射端3aを示す断面図、図3(b)は、(a)の一点鎖線A上の位置と屈折率との関係を示すグラフであり、一点鎖線Aは、光伝送媒体3の中心を通る線である。
【0036】
図2に示すように、光伝送媒体3は、光ファイバ(本体部)20と、光ファイバ20の端面20a側に設けられ端面20aに接する第1屈折率変化部21と、光ファイバ20のもう一方の端面20b側に設けられ端面20bに接する第2屈折率変化部22とを含む。ここで、パルスレーザ光源1から出射されたパルスレーザ光は、光伝送媒体3の第1屈折率変化部21に入射され、第2屈折率変化部22から出射されるようになっている。
【0037】
図3(a)に示すように、光ファイバ20は、その長手方向に沿って一定の屈折率を有するコア23と、コア23の屈折率より小さい屈折率を有するクラッド24とから構成され、第1屈折率変化部21は、光ファイバ20の端面20aに隣接する第1ブロック25と、光ファイバ20と反対側で第1ブロック25に隣接する第2ブロック26とで構成されている。
【0038】
そして、第1屈折率変化部21の端面21aに接する媒質が空気である場合、図3(b)に示すように、第2ブロック26は、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有し、第1ブロック25は、第2ブロック26の屈折率よりも大きく且つ光ファイバ20のコア23の屈折率より小さい屈折率を有する。ここで、第1ブロック25及び第2ブロック26の屈折率はそれぞれ一定となっている。従って、第1屈折率変化部21は、屈折率が、第1屈折率変化部21の端面21aから光ファイバ20の端面20aに向かう方向に沿って、空気の屈折率よりも光ファイバ20のコア23の屈折率に段階的に近づくように変化する屈折率分布を有している。言い換えるならば、第1屈折率変化部21においては、光ファイバ20のコア23の屈折率が空気の屈折率より大きいため、屈折率が、第1屈折率変化部21の端面21aから光ファイバ20の端面20aに向かう方向に沿って段階的に大きくなっている。
【0039】
このように光ファイバ20に上記構成の第1屈折率変化部21を設けることによって、光が第1屈折率変化部21に接する媒質、即ち空気から光ファイバ20のコア23に入射されるときの光の反射率を、第1屈折率変化部21が無い場合に比べて十分に低減することが可能となる。
【0040】
尚、本実施形態では、光ファイバ20のコア23は、例えば石英で構成され、その屈折率は1.45である。また第1ブロック25は例えばMgF2で構成され、その屈折率は1.38であり、第2ブロック26は例えばNaFで構成され、その屈折率は1.34である。
【0041】
図4(a)は、光伝送媒体3の出射端3bの断面図、図4(b)は、(a)の一点鎖線B上の位置と屈折率との関係を示すグラフであり、一点鎖線Bは、光伝送媒体3の中心を通る線である。
【0042】
図4(a)に示すように、第2屈折率変化部22は、第1屈折率変化部21と同様に、第1ブロック25と第2ブロック26とで構成されており、第1ブロック25は、光ファイバ20の端面20bに隣接し、光ファイバ20と反対側で第1ブロック25に隣接する第2ブロック26とで構成されている。また第2屈折率変化部22の端面22aは、液体6としての水中に浸漬されている。
【0043】
図4(b)に示すように、第2ブロック26は水の屈折率より大きい屈折率を有し、第1ブロック25は、第2ブロック26の屈折率より大きく且つ光ファイバ20のコア23の屈折率より小さい屈折率を有する。また、上述したように、第1ブロック25及び第2ブロック26の屈折率はそれぞれ一定となっている。従って、第1屈折率変化部21は、屈折率が、光ファイバ20の端面20bから第2屈折率変化部22の端面22aに向かう方向に沿って、光ファイバ20のコア23の屈折率より水の屈折率に段階的に近づくように変化する屈折率分布を有している。言い換えるならば、第2屈折率変化部22においては、光ファイバ20のコア23の屈折率が水の屈折率よりも大きいため、屈折率が、光ファイバ20の端面20bから第2屈折率変化部22の端面22aに向かう方向に沿って段階的に小さくなっている。
【0044】
このように光ファイバ20に上記構成の第2屈折率変化部22を設けることによって、第2屈折率変化部22に入射されて第2屈折率変化部22を経て端面22aから水に出射されるときの光の反射率を、第2屈折率変化部22が無い場合に比べて十分に低減することが可能となる。
【0045】
次に、上述したパルスレーザ加工装置100を用いたレーザ加工方法について説明する。
【0046】
まずパルスレーザ光源1からパルスレーザ光を出射する。このとき、出射されるパルスレーザ光のパルス幅は、5ps以下、好ましくは200fs以下とする。これは、パルス幅が5psを超えると、パルス幅が長くなって精密な加工ができなくなり、加工部周辺に好ましくない盛上がりが生じる傾向があるからである。またパルスレーザ光の出力は、1パルスあたり5nJ以上、好ましくは10μJ以上とする。パルスレーザ光の出力が1パルスあたり5nJ未満では、被加工物の材料が著しく限定されるからである。
【0047】
出射されたパルスレーザ光は、パルス波形変換装置2により波形変換されて、集光レンズにより光伝送媒体3の第1屈折率変化部21に入射される。このとき、パルス波形変換装置2によりパルスレーザ光の時間波形を、ピーク強度が小さくなる形状(チャープパルス波形)に変換することが好ましい。これにより、光伝送媒体3の第1屈折率変化部21の損傷をより十分に防ぐことが可能となる。尚、パルス波形変換装置2により、パルスレーザ光に対し光伝送媒体3及び液体6のような分散媒質が逆の分散特性を示すようにパルスレーザ光の波形を変換してもよい。この場合、光伝送媒体の持つ逆分散特性を利用して、パルスレーザ光のパルス幅を、光伝送媒体3の入射端で長パルスとし、出射端で短パルスとすることができる。ここで、パルスレーザ光源1から出射されるパルスレーザ光のパルス幅を5ps以下にすることが好ましい。この場合、スペクトル幅を比較的広くすることができる。言い換えると、パルス幅を短くすることができる。このため、パルスレーザ光のパルス幅を、光伝送媒体3の入射端で長パルスとし、出射端で短パルスと使用としようとする場合に、パルス幅が5psを超える場合に比べて、光伝送媒体3をより短くすることができる。
【0048】
このとき、上述したように、第1屈折率変化部21は、第1ブロック25及び第2ブロック26から構成され、且つ第1屈折率変化部21においては、屈折率が、第1屈折率変化部21の端面21aから光ファイバ20の端面20aに向かう方向に沿って、空気の屈折率よりも光ファイバ20のコア23の屈折率に段階的に近づくように変化している。
【0049】
このため、パルスレーザ光は、第1屈折率変化部21の端面21aに入射されてから光ファイバ20のコア23の端面20aに到達するまでにいくつかの界面、即ち空気とNaFとの界面、NaFとMgF2との界面、MgF2と石英との界面を通過する。
【0050】
ここで、各界面を形成する両媒質間の屈折率差は、空気と石英との間の屈折率差に比べて十分に小さくなっている。このため、各界面における光の反射率を十分に低減することが可能であり、第1屈折率変化部21の端面21aに入射されてから光ファイバ20の端面20aに入射されるまでの光の反射率を、光ファイバ20の端面20a側に第1屈折率変化部21を設けない場合に比べて十分に低減することが可能となる。
【0051】
ここで、第1屈折率変化部21の端面21aに入射されてから光ファイバ20の端面20aに入射されるまでの光の反射率を具体的に算出する。ここでは、第1屈折率変化部21に接する媒質を空気(n=1)として説明する。
【0052】
まず屈折率の異なる材質界面での反射率Rは、それぞれの材質の屈折率をn1、n2とすると、下記式:
R=[(n1-n2)/(n1+n2)]2 ・・・(1)
で表される。
【0053】
従って、空気とNaFとの界面、NaFとMgF2との界面、MgF2と石英との界面での反射率はそれぞれ、2.11%、0.022%、0,061%であり、第1屈折率変化部21の端面21aに入射されてから光ファイバ20の端面20aに入射されるまでの光のトータルの反射率は2.192%となる。これに対して空気と石英との界面での光の反射率は3.374%である。これより、光伝送媒体3が光ファイバ20の端面20a側に第1屈折率変化部21を有することで、光の反射率が十分に低減されることが分かる。
【0054】
このように、第1屈折率変化部21において、光の反射の生じる界面を複数に分担させつつ個々の界面での反射率を十分に小さくすることにより、第1屈折率変化部21が無い場合に比べて、入射端3aにおける光のトータルの反射率を十分に低減することが可能となる。このため、光の反射による界面の損傷を十分に防ぐことが可能となる。
【0055】
こうして光伝送媒体3の第1屈折率変化部21を通過したパルスレーザ光は、光ファイバ20のコア23において全反射により伝送され、第2屈折率変化部22を通過した後、その端面22aから出射される。
【0056】
このとき、上述したように、第2屈折率変化部22は第1ブロック25及び第2ブロック26で構成され、水6中に浸漬されている。また、第2屈折率変化部22においては、光ファイバ20の端面20bから第2屈折率変化部22の端面22aに向かう方向に沿って屈折率が段階的に小さくなり、光ファイバ20のコア23の屈折率よりも水6の屈折率に近づいている。
【0057】
このため、パルスレーザ光は、光ファイバ20のコア23から第2屈折率変化部22の一方の端面に入射された後、第2屈折率変化部22の他方の端面22aから出射されるまでに、いくつかの界面、即ち石英とMgF2との界面、MgF2とNaFとの界面、NaFと水(n=1.3)との界面を通過する。
【0058】
ここで、各界面を形成する両媒質間の屈折率差は、水と石英との間の屈折率差に比べて十分に小さくなっている。このため、各界面における光の反射率を十分に低減することが可能となり、光ファイバ20のコア23の端面20bから第2屈折率変化部22を経て端面22aから出射されるまでの光のトータルの反射率を、光ファイバ20の端面20b側に第2屈折率変化部22を設けない場合に比べて十分に低減することが可能となる。
【0059】
ここで、光ファイバ20のコア23の端面20bから第2屈折率変化部22を経て端面22bから出射されるまでの光の反射率を具体的に算出する。ここでは、水6の屈折率を1.3として説明する。尚、第2ブロック26をNaF(n=1.34)、第1ブロック25をMgF2、光ファイバ20のコア23を石英(n=1.45)とする点は、上記第1屈折率変化部21の場合と同様である。
【0060】
上記式(1)に従って、石英とMgF2との界面、MgF2とNaFとの界面、NaFと水との界面における反射率Rを求めると、反射率Rはそれぞれ、0.061%、0.022%、0.023%であり、光ファイバ20のコア23から第2屈折率変化部22の端面に入射された後、第2屈折率変化部22の端面22aから出射されるまでの光のトータルの屈折率は0.106%となる。これに対して水と石英との界面での光の反射率は0.298%である。これより、光伝送媒体3が光ファイバ20の端面20b側に第2屈折率変化部22を有することで、光の反射率が十分に低減されることが分かる。
【0061】
このように、第2屈折率変化部22により、光の反射の生じる界面を複数に分担させつつ個々の界面での反射率を十分に低減することが可能となり、第2屈折率変化部22が無い場合に比べて、出射端3bにおける光のトータルの反射率を十分に低減することが可能となる。このため、光の反射による界面の損傷を十分に防ぐことが可能となる。
【0062】
以上より、光伝送媒体3全体としても、光ファイバ20の両端20a,20b側に第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22が設けられていない場合に比べて、光伝送媒体3における光のトータルの反射率を十分に低減することが可能となる。よって、反射率に起因する光ファイバ20の端面20a、20bにおける損傷を十分に防ぐことが可能となる。また光伝送媒体3において光のトータルの反射率が十分に低減されるため、光伝送媒体3における光の損失が十分に低減されることになる。
【0063】
具体的には、パルスレーザ光を空気、光ファイバ、水と伝播させた場合、光のトータルの反射率は3.661%となるのに対し、パルスレーザ光が光伝送媒体3を伝播するようにした場合、光のトータルの反射率は2.296%となる。
【0064】
こうして光伝送媒体3から出射されたパルスレーザ光は、放物面鏡9及び反射鏡10で順次反射された後、被加工物4に集光されて照射される。これにより、被加工物4の加工が行われる。このとき、光伝送媒体3においては、第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22が無い場合に比べて、光伝送媒体3における光の損失が十分に低減される。このため、被加工物4に照射されるパルスレーザ光の光量が多くなり、パルスレーザ光源1から出射されたパルスレーザ光の被加工物4の加工への利用率を十分に向上させることができる。
【0065】
また被加工物4の加工中は、被加工物4で散乱された光が光ファイバ14で受光されて分光器15で分光され、この分光スペクトルの結果に基づいて被加工物4の加工状態がモニタされる。
【0066】
このとき、被加工物4における加工状態が所望の加工状態でない場合には、制御装置16が、分光器15から出力される信号に基づいて、移動機構12を介してステージ11を移動させるように制御したり、光パルスの時間波形が所望の波形に変換されるようにパルス波形変換装置2を制御する。こうして制御することにより被加工物4の加工状態を所望の加工状態にすることができる。
【0067】
尚、パルス波形変換装置2を制御する場合、その制御は次のようにして行うことが好ましい。即ち、パルスレーザ光が伝播される光伝送媒体3や水は分散媒質であり、パルスレーザ光の伝播に伴って光パルスの波形が変化する。このため、パルスレーザ光のピーク強度を小さくしすぎると、被加工物4の加工効率が低下してしまう。そこで、光伝送媒体3及び水を通過して被加工物4に到達するまでの光パルスのピーク強度の変化量を予め測定しておき、このパルスレーザ光のピーク強度が被加工物4に照射される時に最大となるようにパルス波形変換装置2を制御してパルス波形を変換することが好ましい。このようにすることで、被加工物4の加工を効率よく行いながら、光伝送媒体3の損傷をより十分に防ぐことが可能となる。
【0068】
次に、本発明のパルスレーザ加工装置の第2実施形態について図5を参照して説明する。
【0069】
図5は、本発明のパルスレーザ加工装置の第2実施形態を示す概略図である。図5に示すように、本実施形態のパルスレーザ加工装置200は、第2屈折率変化部22、放物面鏡9及び反射鏡10を固定するケース201を更に備える点で、第1実施形態のパルスレーザ加工装置100と相違する。パルスレーザ加工装置200がケース201を更に備えることにより、第2屈折率変化部22、放物面鏡9及び反射鏡10がケース201に固定されることとなる。このため、光軸の調整に際して、反射鏡10で反射された光が被加工物4に照射されるように光軸調整を行えばよく、第2屈折率変化部22から出射された光が放物面鏡9及び反射鏡10を経て被加工物4に照射されるように光軸調整を行う必要が無い。従って、光軸調整が容易となる。
【0070】
ケース201の材質は、第2屈折率変化部22、放物面鏡9および反射鏡10を固定することができる材質であればよく、例えばプラスチック、金属等で構わない。但し、集光光学系5によって反射されたパルスレーザ光を被加工物4に照射することができるように、ケース201には、パルスレーザ光を通過させるための穴が形成されるか、あるいは、ケース201がパルスレーザ光に対して透明であることが必要である。
【0071】
本発明は、前述した第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態では、第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22のそれぞれにおいて、屈折率が段階的に変化しているが、屈折率は、連続的に変化することが好ましい。
【0072】
この場合、入射端3a及び出射端3bのそれぞれにおける光の反射率をより十分に低減することが可能となり、光伝送媒体3全体としても、光の反射率をより十分に低減することが可能となる。従って、反射による光伝送媒体3の界面の損傷をより十分に防ぐことが可能となる。また、光伝送媒体3において光のトータルの反射率がより十分に低減されるため、光伝送媒体3における光の損失がより十分に低減される。このため、パルスレーザ光源1から出射されたパルスレーザ光の加工への利用率を十分に向上させることができる。
【0073】
また上記第1及び第2実施形態では、光伝送媒体3が、光ファイバ20の両端面20a,20bにそれぞれ、第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22を設けているが、第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22を設けず、光ファイバ20のコア23の両端部において光の伝播方向に沿って屈折率を変化させるようにしてもよい。この場合、第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22はいずれもコアおよびクラッドを有することになる。ここで、屈折率は、例えば光ファイバ20のコア23の長手方向に沿ってGe等のドーパント濃度を変化させることにより変化させることが可能である。
【0074】
更に、上記第1及び第2実施形態では、光伝送媒体3が、光ファイバ20の両端に第1屈折率変化部21及び第2屈折率変化部22を有しているが、第1屈折率変化部21又は第2屈折率変化部22のいずれか一方を有していればよい。この場合でも、パルスレーザ光による光伝送媒体3の損傷を十分に防ぐことが可能である。但し、光伝送媒体3は、特に、第1屈折率変化部21を含むことが好ましい。光伝送媒体3の入射端側では、パルスレーザ光の強度が出射端側の強度に比べて大きく、特に光伝送媒体3の損傷が起こり易いところ、光伝送媒体3がその入射側に第1屈折率変化部21を含むことにより、パルスレーザ光による光伝送媒体3の損傷をより十分に防止することができる。
【0075】
更に上記第1及び第2実施形態では、光ファイバ20として、シングルモード光ファイバを用いているが、フェムト秒パルス波形の厳密な制御が不要な加工においては、光ファイバ20は、マルチモード光ファイバであってもよい。
【0076】
更にまた、微小スポット径による精密な加工ではなく、光量を多く必要とする加工を行う場合には、パルスレーザ加工装置は、光伝送媒体3を複数本束ねてなる光伝送媒体束を有してもよい。
【0077】
また液体収容槽7に収容する液体6として、上記第1及び第2実施形態では、水が用いられているが、水に代えて食塩水等の他の液体を用いてもよい。
【0078】
更に、本発明のパルスレーザ加工装置は、被加工物4においてレーザ誘起プラズマを発生させるレーザ誘起プラズマ発生装置を更に備えることが好ましい。
【0079】
この場合、パルスレーザ光源1から出射されるパルスレーザ光により被加工物4に対してレーザ加工を行うときに、レーザ誘起プラズマ発生装置により被加工物4においてレーザ誘起プラズマを発生させると、レーザ誘起プラズマにより、パルスレーザ光を被加工物4に吸収させやすくすることができ、レーザ誘起プラズマが無い場合に比べてレーザ加工を容易に行うことができる。即ちレーザ誘起プラズマによってレーザ加工がアシストされることとなる。またレーザ誘起プラズマ発生装置により被加工物4においてレーザ誘起プラズマが発生すると、そのレーザ誘起プラズマだけでもレーザ加工を行うことができる。
【0080】
ここで、レーザ誘起プラズマ発生装置は、パルスレーザ光源1から出射されるパルスレーザ光の波長と重畳する波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されるレーザ光を被加工物4に導く光学系とにより構成される。例えばパルスレーザ光源1として、チタンサファイヤレーザが用いられる場合には、レーザ誘起プラズマ発生装置のレーザ光源としては、例えばKrFエキシマーレーザ光源が用いられる。
【0081】
なお、本発明のパルスレーザ加工装置は、図6に示すように、光伝送媒体3から出射されたパルスレーザ光を集光光学系(図示せず)により被加工物4に直接集光するのではなく、空間上の所定の点202に集光し、そのとき誘起される超音波を超音波照射手段203により反射して被加工物4上の加工予定部位204に照射するものであってもよい。この場合でも、被加工物4を加工することが可能である。
【0082】
超音波照射手段203は、超音波を被加工物4の加工予定部位204に照射できるものであればよいが、超音波照射手段203としては、内面203aを楕円放物面とした超音波反射体を用いることが好ましい。この場合、パルスレーザ光を集光させる空間上の所定の点202を楕円放物面の2つの焦点のうちの一方の焦点と一致させ、被加工物4の加工予定部位204を他方の焦点と一致させれば、所定の点202でパルスレーザ光によって誘起された超音波が楕円放物面で反射され、加工予定部位204に集中的に照射される。このため、加工予定部位204において超音波の照射強度を十分に大きくすることが可能となり、被加工物4の加工を効率よく行うことができる。なお、超音波反射体としては、例えば金属が挙げられる。また超音波反射体は、所定点202にパルスレーザ光を集光するため、パルスレーザ光を通過させるための開口205を有することが好ましい。
【0083】
更に本発明のパルスレーザ加工装置は、光伝送媒体3から出射されるパルスレーザ光のビーム断面の形状を変換するビーム断面変換手段を更に備えることが好ましい。この場合、光伝送媒体3から出射されるパルスレーザ光のビーム断面の形状を、ビーム断面変換手段により変換することが可能となり、被加工物4の表面上に集光する際に、光伝送媒体3及び集光光学系5で生じるビーム断面形状の歪みを補正して、集光強度を向上させたり、被加工物4における集光点でのスポット径を大きくして被加工物4の材料に適した強度に調整したりすることが可能となる。
【0084】
なお、ビーム断面変換手段としては、例えばデフォーマブルミラー、空間光変調器等が用いられる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のパルスレーザ加工装置によれば、光伝送媒体全体として、光のトータルの反射率を、本体部の両端側に第1及び第2屈折率変化部が設けられていない場合に比べて十分に低減することが可能となる。よって、反射率に起因する本体部の損傷を十分に防ぐことが可能となる。また光伝送媒体において光のトータルの反射率が十分に低減されるため、光伝送媒体における光の損失が十分に低減される。このため、特に、光伝送媒体から出射されたパルスレーザ光を被加工物に照射して被加工物を行う場合には、パルスレーザ光源から出射されたパルスレーザ光の加工への利用率を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルスレーザ加工装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】光伝送媒体を示す側面図である。
【図3】(a)は、光伝送媒体の入射端を示す断面図、(b)は、(a)の一点鎖線上の位置と屈折率との関係を示すグラフである。
【図4】(a)は、光伝送媒体の出射端を示す断面図、(b)は、(a)の一点鎖線上の位置と屈折率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明のパルスレーザ加工装置の他の実施形態を示す概略図である。
【図6】本発明のパルスレーザ加工装置の更に他の実施形態の一部を示す概略図である。
【符号の説明】
1…パルスレーザ光源、2…パルス波形変換装置、3…光伝送媒体、4…被加工物、5…集光光学系(集光手段)、6…液体、7…液体収容槽、9…放物面鏡(集光手段)、10…反射鏡(集光手段)、11…ステージ(被加工物移動手段)、12…移動機構(被加工物移動手段)、14…光ファイバ(加工状態モニタ手段)、15…分光器(加工状態モニタ手段)、20…光ファイバ(本体部)、21…第1屈折率変化部、22…第2屈折率変化部、23…コア、24…クラッド、25…第1ブロック(第1屈折率変化部)、26…第2ブロック(第2屈折率変化部)、100,200…パルスレーザ加工装置、203…超音波照射手段。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5