TOP > 国内特許検索 > 改良されたATPの増幅方法およびその利用 > 明細書

明細書 :改良されたATPの増幅方法およびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431334号 (P4431334)
公開番号 特開2005-046010 (P2005-046010A)
登録日 平成21年12月25日(2009.12.25)
発行日 平成22年3月10日(2010.3.10)
公開日 平成17年2月24日(2005.2.24)
発明の名称または考案の名称 改良されたATPの増幅方法およびその利用
国際特許分類 C12Q   1/48        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N   9/12        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/48 ZNAZ
C12Q 1/04
G01N 33/50 P
C12N 9/12
C07K 19/00
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2003-202992 (P2003-202992)
出願日 平成15年7月29日(2003.7.29)
審査請求日 平成17年3月10日(2005.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】黒田 章夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100104673、【弁理士】、【氏名又は名称】南條 博道
審査官 【審査官】長谷川 茜
参考文献・文献 特開2001-299390(JP,A)
特表2002-530087(JP,A)
特表2002-543798(JP,A)
下村耕平他著,連鎖的ATP増幅反応による微量ATPの検出技術開発,化学工学会年会研究発表講演要旨集,2001年,Vol.66th,p.647
Brune M. et al.,Cloning and sequencing of the adenylate kinase gene (adk) of Escherichia coli.,Nucleic Acids Res.,1985年,Vol.13, No.19,p.7139-7151
Akiyama M. et al.,The Polyphosphate Kinase Gene of Escherichia coli.,J. Biol. Chem.,1992年,Vol.267, No.31,p.22556-22561
調査した分野 C12Q 1/48
C12N 15/00-15/90
PubMed
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
医学・薬学予稿集全文データベース
特許請求の範囲 【請求項1】
ATP、AMPおよびポリリン酸化合物を含有する混合物に、N末端側から順にポリリン酸キナーゼ-アデニレートキナーゼを有しかつADP除去処理が施された融合タンパク質を作用させる工程を含み、該ADP除去処理が、アピラーゼ処理およびピロリン酸処理を含む、ATPの増幅方法。
【請求項2】
ATP、AMPおよびポリリン酸化合物を含有する混合物に、N末端側から順にポリリン酸キナーゼ-アデニレートキナーゼを有しかつADP除去処理が施された融合タンパク質を作用させて、ATPを増幅する工程;および、該増幅したATPを検出する工程;を包含し、該ADP除去処理が、アピラーゼ処理およびピロリン酸処理を含む、ATPの検出方法。
【請求項3】
微生物の存在を迅速に検出する方法であって、
微生物含有試料を処理して、ATP含有試料を調製する工程;
該ATP含有試料をATP増幅系に添加してATPを増幅する工程;および、
該増幅したATPを検出する工程;を包含し、
該ATP増幅系がAMP、ポリリン酸化合物、およびN末端側から順にポリリン酸キナーゼ-アデニレートキナーゼを有しかつADP除去処理が施された融合タンパク質を含み、
該ADP除去処理が、アピラーゼ処理およびピロリン酸処理を含む、方法。
【請求項4】
微生物の存在を迅速に検出するためのキットであって、AMP、ポリリン酸化合物、およびN末端側から順にポリリン酸キナーゼ-アデニレートキナーゼを有しかつADP除去処理が施された融合タンパク質、を含有するATP増幅試薬と、ATPを検出するATP検出試薬とを包含し、該ADP除去処理が、アピラーゼ処理およびピロリン酸処理を含む、キット。
【請求項5】
さらに細胞溶解用試薬を備える、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
N末端側から順にポリリン酸キナーゼ-アデニレートキナーゼを有しかつADP除去処理が施された融合タンパク質であって、該ADP除去処理が、アピラーゼ処理およびピロリン酸処理を含む、融合タンパク質。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ATPの増幅方法および該方法を用いて微生物の存在を迅速に検出する方法、並びのそのためのキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
迅速かつ高感度で微生物を検出する方法は、例えば、食中毒予防のための食品製造工場における微生物の検出などの環境微生物の制御、食品(例えば、ミルクなどの乳製品)における微生物の混入の検査など、食品業界、酪農業界などにおいて非常に重要である。従来の栄養培地を用いて生細胞を検出する方法においては、生存微生物をカウントするまでに数日を要する。
【0003】
このような微生物の検出に、全ての生物に存在するATPを利用する方法が検討されている。ATPを検出する方法として、ホタルルシフェラーゼを用いる生物発光アッセイが知られている。この方法は、ATPを測定する確立された方法であり(非特許文献1参照)、迅速な衛生学的なモニタリングとして用いられている(非特許文献2)。さらに、最近ではバイオテロに対する対抗技術として、ATPアッセイが提案されている(非特許文献3)。
【0004】
しかし、従来のATPのアッセイ法には検出限界(例えば、約10大腸菌コロニー形成単位(CFU)/アッセイ)がある。この感度では、工業的な応用には充分な感度とはいえない。
【0005】
コンピューターシュミレーションでは、アデニレートキナーゼ(ADK)およびピルビン酸キナーゼ(PVK)を用いるATP増幅は、高感度の光度計を用いなくとも、非常に低いレベルのATPを検出し得る可能性があることが示唆されている(非特許文献4)。しかし、この方法は、実際に行われていない。
【0006】
微量のATPをアッセイするために、ATPを増幅させる方法が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に示される方法を図1で説明する。図1において、ADKはアデニレートキナーゼ(adenylate kinase)、polyPはポリリン酸(polyphosphate)、PPKはポリリン酸キナーゼ(polyphospate kinase)を意味する。以下、本明細書においても、この略号を使用するときがある。図1aは、ATPの非存在下では、理論的には、AMPとポリリン酸とからはATPが生成しないことを示している。図1bに示すように、ATPが存在すると、ADKによって、ATPからAMPへのリン酸基転移反応が起こり、2分子のADPが生成する(第1反応)。この第1反応で生じた2分子のADPは、PPKの作用により、ポリリン酸からリン酸基を受け取り、2分子のATPを生じる(第2反応)。この第2反応で生じた2分子のATPは、再度、第1反応に使用され、4分子のADPを生成し、この4分子のADPはPPKによって4分子のATPに変換される。
【0007】
このように、特許文献1では、過剰のAMPとポリリン酸を存在させて、ADKとPPKの平衡状態をそれぞれ、ADP生成方向(第1反応)およびATP生成方向(第2反応)に向かわせるようにし、第1反応と第2反応を1つの反応系として、n回この反応系を繰り返すことにより、1個のATPが2個に増幅される。従って、この方法は、優れたATPの増幅方法である。
【0008】
この特許文献1の方法は、従来のレベルよりも高い感度で、細胞の存在を検出し得る点では優れた方法であるが、この方法では、理論的には起こらないATP非存在下でのATPの増幅が、低いレベルであるが、時折見られることが判明し、外因性の(外部から添加した)ATPのみを増幅し、検出するという確実性に欠けるという問題がある。すなわち、細胞1個のレベルのATPを増幅し、検出し得るまでの感度を確実に提供できないという問題がある。さらに、ADKとPPKとの活性の調整などの問題もある。
【0009】
【特許文献1】
特開2001-299390号公報
【非特許文献1】
デルカおよびマッケルロイ(DeLuca, M. and W. D. McElroy. )「Kinetics of the firefly luciferase catalyzed reactions」 Biochemistry 26巻、921-925頁(1974年)
【非特許文献2】
バウティスタ(Bautista, D. A.)ら、「Adenosine triphosphate bioluminescence as a method to determine microbial levels in scald and chill tanks at a poultry abattoir」 Poult. Sci. 73巻、1673-1678頁(1994年)
【非特許文献3】
スペンサーおよびライトフット(Spencer, R. C. and N. F. Lightfoot) 「Preparedness and response to bioterrorism」 J. Infect. 43巻104-110頁(2001年)
【非特許文献4】
チトック(Chittock, R. S.)ら、「Kinetic aspects of ATP amplification reactions」 Anal. Biochem 255巻、120-126頁(1998)
【非特許文献5】
アキヤマ(Akiyama, M.)ら、「The polyphosphate kinase gene of Escherichia coli. Isolation and sequence of the ppk gene and membrane location of the protein」 J. Biol. Chem. 267巻、22556-22561頁(1992年)
【非特許文献6】
ブルーン(Brune, M.)ら、「Cloning and sequencing of the adenylate kinase gene (adk) of Escherichia coli」 Nucleic Acids Res. 13巻、7139-7151頁(1985年)
【非特許文献7】
ニューハード J、およびY.ニガード(Neuhard, J., and Y. Nygaard) 「Purines and pyrimidines」 445-473頁、ネイドハルト(F. C. Neidhardt)ら編、 Escherichia coli and Salmonella typhimurium: cellular and molecular biology, ASM press, Washington, D. C. (1987年)
【非特許文献8】
ネイドハルト(F. C. Neidhardt) 「Chemical composition of Escherichia coli」 3-6頁、ネイドハルト(F. C. Neidhardt)ら編、 Escherichia coli and Salmonella typhimurium: cellular and molecular biology」 ASM press, Washington, D. C.(1987年)
【非特許文献9】
ベルト(Bert, F.)ら、「Multi-resistant Pseudomonas aeruginosa outbreak associated with contaminated tap water in a neurosurgery intensive care unit」 J. Hosp. Infect. 39巻、53-62頁(1998年)
【非特許文献10】
オルソン(Olsson, T.)ら、「Extraction and determination of adenosine 5'-triphosphate in bovine milk by the firefly luciferase assay. Biotech」 Appl. Biochem 8巻、361-369頁(1986)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、外因性のATPの効率的な増幅方法が望まれており、特に、外因性のATPのみを増幅させる方法およびこの方法を用いて1個の細胞の存在を検出し得る高感度の検出方法が望まれている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決することを目的として行われたものであり、本発明のATP増幅方法により、極微量のATPが検出され、さらに、1個の細胞の存在さえも検出し得る。
【0012】
本発明は、ATP、AMPおよびポリリン酸化合物を含有する混合物に、ポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質を作用させる工程を含む、ATPの増幅方法を提供する。
【0013】
好ましい実施態様においては、前記ポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質が、ADPを含まない融合タンパク質である。
【0014】
また、本発明は、ATP、AMPおよびポリリン酸化合物を含有する混合物に、ポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質を作用させて、ATPを増幅する工程;および、該増幅したATPを検出する工程;を包含するATPの検出方法を提供する。
【0015】
好ましい実施態様においては、前記ポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質が、ADPを含まない融合タンパク質である。
【0016】
さらに、本発明は、微生物の存在を迅速に検出する方法であって、微生物含有試料を処理して、ATP含有試料を調製する工程;該ATP含有試料をATP増幅系に添加してATPを増幅する工程;および、該増幅したATPを検出する工程;を包含し、該ATP増幅系がAMP、ポリリン酸化合物、およびADPを含まないポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質を含む方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、微生物の存在を迅速に検出するためのキットであって、AMP、ポリリン酸化合物、およびADPを含まないポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質、を含有するATP増幅試薬と、ATPを検出するATP検出試薬を包含するキットを提供する。
【0018】
好ましい実施態様においては、さらに細胞溶解用試薬を備えるキットである。
【0019】
本発明は、さらに、ATP、AMP、およびポリリン酸化合物の混合物に、アデニレートキナーゼ、およびADPを含まないポリリン酸キナーゼを作用させてATPを増幅する方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、ポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質、並びに、ADPを含まないポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
(融合タンパク質)
本発明に用いられるポリリン酸キナーゼとアデニレートキナーゼとの融合タンパク質(以下、PPK-ADKということがある)は、PPK活性およびADK活性を有していれば、結合状態に特に制限はない。N末端側にPPKを、C末端側にADKを含む融合タンパク質であることが好ましい。この融合蛋白質は、PPKとADKとが直接結合されていてもよいが、スペーサーを介して結合されていてもよい。また、融合タンパク質のC末端には、それぞれの酵素の発現に影響を与えないタグを付着させることが、融合タンパク質の精製に有用である。
【0022】
PPKをコードする遺伝子ppkおよびADKをコードする遺伝子adkは、これらの遺伝子配列が特定されていれば、その由来に特に制限はない。大腸菌の配列が好ましく用いられる。これらの遺伝子配列に基づいて適切なプライマーを調製し、PCRを行うことにより、それぞれの遺伝子配列を得ることができる。
【0023】
ppk遺伝子を調製するための適切なプライマーとして、例えば、以下のプライマーの組合せが好ましい:(1)ppk遺伝子の5’末端の上流に適切な制限酵素認識配列を導入するための配列を有するプライマー;および(2)スペーサー(例えば、グリシン)配列、およびスペーサー部位またはその下流に適切な制限酵素認識配列を導入するための配列を有するプライマー。この2つのプライマーをセットにしてPCRを行うと、C末端にスペーサーを有するPPKを発現するppk遺伝子を含む断片が容易に回収される。
【0024】
adk遺伝子を調製するための適切なプライマーとしては、ppk遺伝子と同様、以下のプライマーが好ましい:(1)adk遺伝子の5’末端の上流に適切な制限酵素認識配列を導入するための配列を有するプライマー;および(2)C末端タグ(例えば、ヒスチジン)配列を有し、かつC末端タグの下流に適切な制限酵素認識配列を導入するための配列を有するプライマー。この2つのプライマーをセットにしてPCRを行うと、C末端にタグを有するADKを発現するadk遺伝子を含む断片が容易に回収される。
【0025】
上記プライマーの制限酵素は、ppkあるいはadkの遺伝子配列、組込むベクターのクローニング部位を考慮して、決定すればよい。
【0026】
大腸菌の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーを用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、それぞれ、制限酵素で切断し、ppk遺伝子を含む断片、およびadk遺伝子を含む断片を回収する。得られたそれぞれの遺伝子を含む断片を、ppk-adkの順となるように適切なベクターに組み込むことにより、PPK-ADKの融合タンパク質を発現する組換えベクターが得られる。
【0027】
得られたベクターを適切な宿主(例えば、大腸菌)に導入し、組換えベクターを発現させることにより、PPK-ADK融合タンパク質が生産される。ヒスチジンタグ(Hisタグ)を有するように設計された融合タンパク質は、ハイトラップキレートカラム(Hitrap chelating column)を用いることにより、容易に精製、回収される。
【0028】
得られた融合タンパク質であるPPK-ADKは、このまま、ATP増幅反応に用いることができる。しかし、後述のように、外因性のATPのみを測定する場合、不都合があることが判明した。この原因として、ADPがPPKと結合した状態で存在することが考えられる。このPPKに結合しているADPは、ポリリン酸化合物の存在下、PPKの基質とされ得、このADPがPPKによりATPに変換され得る。すなわち、図1に示すような反応系において、ATP非存在下であっても、まず第2反応であるADPからATPへの反応が生じ、このATPが第1反応で使用されることにより、自動的にATP増幅反応が開始すると考えられる。従って、外因性のATPのみを測定するためには、PPKに結合したADPを予め除去しておくことが必要である。
【0029】
PPKに結合している不純物であるADPの除去は、例えば、アピラーゼ処理により行われる。アピラーゼは、ATPまたはADPからリン酸基を除去し、AMPを生成する。アピラーゼ処理は、適切な量のピロリン酸存在下で行うことが好ましい。ピロリン酸により、PPK-ADKに結合したADPの遊離が促進され、ADPがアピラーゼによるアタックを受けやすくなる。アピラーゼ処理したPPK-ADKは、再び、ハイトラップキレートカラムを用いて、回収される。回収されたPPK-ADKは、アピラーゼ処理によっても、それぞれの活性(すなわち、PPK活性およびADK活性)を維持している。
【0030】
(PPK-ADKを用いるATPの増幅)
本発明のPPK-ADKを用いるATPの増幅は、ATP、過剰のAMP、および過剰のポリリン酸化合物にPPK-ADKを作用させることによって行なわれる。すなわち、AMP、ポリリン酸化合物およびPPK-ADPの混合物にATPを添加することにより、あるいは、ATP、AMP、およびポリリン酸化合物の混合物にPPK-ADKを添加することにより、行なわれる。反応形式は、図1と同じであり、図1に示す第1反応および第2反応が繰り返されて、ATPが増幅される。
【0031】
ATPの増幅は、適切な緩衝液中で、適切な温度(例えば、30~40℃)で、適切な時間(例えば、5分~2時間)行われる。ATPの存在が微量と思われる場合は、1時間ほど増幅反応を行うことが好ましい。
【0032】
なお、ポリリン酸化合物としては、ポリリン酸あるいはその塩が用いられる。好ましくは、10~1000個、好ましくは10~100個のリン酸が直鎖状に重合したものが好ましく用いられる。ポリリン酸は、バクテリア由来でもよく、化学合成で得られたものでもよい。あるいは、ポリリン酸合成酵素を用いてATPから合成してもよい。
【0033】
(ATPの検出)
増幅されたATPの検出方法には、当業者が通常用いる方法が使用されるが、特に制限がない。一般には、ルシフェラーゼとATPとの反応による蛍光発光量を測定することにより行われる。例えば、市販のルシフェラーゼを用いるATP測定キットが用いられる。
【0034】
(微生物の存在を迅速に検出する方法)
この方法は、すべての生物の細胞にはATPが含まれることに着目して、微生物含有試料からATPを含む試料を調製し、上記ATP増幅方法を用いて、ATPを増幅し、検出する方法である。ADP除去処理を行ったPPK-ADKを用いることにより、外因性ATPのみを測定することが可能となる。例えば、1個の細胞に含まれるATPを測定可能なレベルまで増幅できることから、微生物の存在を検出することができる。従来の方法では、1アッセイあたり、10個のコロニー形成ユニット(CFU)の大腸菌が検出限界であったことを考慮すると、検出感度が少なくとも10,000倍に上昇する。
【0035】
なお、微生物には、ADPも含まれる。ADP除去処理を行ったPPK-ADKを用いる場合、本発明の増幅系にADPを加えると、ADPがATPに変換され、ATP増幅反応が開始される。従って、微生物を検出するための前処理中にATPがADPに分解されても、本発明の感度に影響しない点で、本発明の増幅方法は優れている。以下、微生物の検出において、測定するATPの試料について言及するときは、試料中にADPが含まれる場合も意図する。
【0036】
微生物含有試料からのATP含有試料の調製方法には、特に制限はない。細胞を溶解してもよいが、その細胞に含まれるPPK、ADKなどの酵素の影響を考慮すると、加熱処理を行って、ATPを溶出させるか、細胞を溶解して、ATPを溶出させ、そして他の酵素を失活させる加熱処理を行う方法が最も好ましく用いられる。加熱処理は、例えば、100℃、1~5分行われる。細胞溶解処理は、例えば、市販のATPアッセイキットに附属しているような、溶解緩衝液を用いて、行うことができる。
【0037】
このような、ATP溶出処理を行って得られるATPを含むと思われる試料を、AMP、ポリリン酸化合物およびPPK-ADKの混合物に添加して、ATP増幅反応を行い、例えばルシフェラーゼを用いるATP検出方法を用いて、ATPの存在を検出する。試料中にATPが含まれていれば、ルシフェラーゼと反応して蛍光が観察される。なお、ATPが増幅されているので、高感度の発光分析器は必ずしも要求されない。
【0038】
本発明では、また、このような微生物の存在を迅速に検出するためのキットを提供する。すなわち、AMP、ポリリン酸、およびADPを含まないPPK-ADKを含有するATP増幅試薬と、ATPを検出するATP検出試薬を包含するキットが提供される。このキットには、さらに、細胞溶解用試薬が含まれる。細胞溶解用試薬は、対象となる細胞(例えば、微生物、体細胞など)に応じて、その組成を変化させ得る。
【0039】
微生物を含有すると思われる試料を加熱処理し、このキットのATP増幅試薬に添加して、適切な時間、増幅反応を行い、ついで、ATP検出試薬で、ATPの存在を確認することによって、微生物の存在が迅速に確認できる。この方法は、ADP除去処理を行って得られたPPK-ADKを用いることによって、外因性のATPのみを検出できることが可能になったことにより、達成された。なお、ATP検出試薬としては、ルシフェラーゼ-ルシフェリン反応系を用いる試薬が一般的であり、用語「ATP検出試薬」は生物発光(蛍光)測定器をも含む概念で使用する。
【0040】
(ADKおよびADPを含まないPPK用いるATP増幅)
また、本発明は、ATP、AMP、およびポリリン酸を含む混合物に、ADKおよび、ADPを含まないPPKを作用させてATPを増幅する方法をも提供する。ADPを含まないPPK遺伝子は、例えば、上記融合タンパク質の調製と同様の方法で調製される。簡潔に述べると、ppk遺伝子の5’末端の上流に適切な制限酵素認識配列を有するプライマーと、Hisタグ配列を有し、かつその下流に適切な制限酵素認識配列を有するプライマーとを用いて、His-タグを有するPPKを発現するppk遺伝子を含むDNA断片を回収する。得られたDNAを適切なベクターに導入して組換えプラスミドを得、これを大腸菌に導入して、PPKを発現させる。PPKを、ハイトラップキレートカラムを用いて生成し、ピロリン酸存在下、アピラーゼ処理を行い、再びハイトラップキレートカラムにかけて、ADPを除去したPPKを回収する。このPPKを、図1に示す反応系に用いることにより、外因性ATPのみを増幅し、検出する方法が提供される。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されることはない。
【0042】
この実施例において、AMPおよびATPは和光純薬(大阪)およびシグマから、それぞれ購入して用いた。AMPは、TSHゲルSAXカラム(トーソー)を用いて0.2M KClおよび1%EDTA(pH10)を溶媒として用いて、さらに精製して用いた。ポリリン酸は、平均鎖長65のポリリン酸(シグマ)を用いた。生物発光アッセイキット(CLSII)はルシフェリンとルシフェラーゼを含み、ロシュから購入して用いた。アピラーゼはシグマから購入して用いた。
【0043】
(実施例1:PPK-ADKの調製)
大腸菌(E.coli)のポリリン酸キナーゼをコードする遺伝子(ppk)(非特許文献4参照)を取得するためのプライマーは、以下の通りである:
GGATCTAGATGAATAAAACGGAGTAAAAGT(配列番号:1)、および
GGAGGATCCGCCGCCGCCGCCTTCAGGTTGTTCGAGTGATTT(配列番号:2)。
【0044】
配列番号1のプライマーはppk遺伝子の5’末端側に制限酵素XbaI認識配列を導入するための配列を有する。配列番号2は、4つのグリシンがPPKのC末端に付着するように設計され、さらに3’末端側に制限酵素BamHI認識配列を導入するための配列を有している。
【0045】
大腸菌のアデニル酸キナーゼ遺伝子をコードする遺伝子(adk)(非特許文献5)を取得するためのプライマーは、以下の通りである:
GGAGGATCCATGCGTATCATTCTGCTTGGC(配列番号:3)および
GGAAAGCTTGCCGAGGATTTTTTCCAG(配列番号:4)。
【0046】
配列番号3のプライマーはadk遺伝子の5’末端側に制限酵素BamHI認識配列を導入するための配列を有する。配列番号4のプライマーは、C末端タグであるヒスチジンがADKのC末端に付着するように設計され、さらに3’末端側に制限酵素HindIII認識配列を導入するための配列を有する。
【0047】
大腸菌の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーを用いて、常法によりPCRを行い、それぞれppk遺伝子およびadk遺伝子を含むDNA断片を取得した。得られたppk遺伝子を含むDNA断片を、pGEMTベクター(プロメガ)に導入し、pGEMTppkを得た。得られたadk遺伝子を含むDNA断片を、pGEMTベクター(プロメガ)に導入し、pGEMTadkを得た。
【0048】
pGEMTppkをXbaI-BamHI処理して得られた2.1kbの断片、およびpGEMTadkをBamHI-HindIII処理して得られた0.6kb断片を、pETベクター(ストラタジーン)のXbaI-HindIII消化物に連結させることによって、プラスミドpETppkadkを構築した。このプラスミドは、PPKとADKとが4つのグリシンを介して結合され、C末端にHisタグを有するような融合タンパク質をコードする遺伝子を含有している。
【0049】
このプラスミドpETppkadkを大腸菌(E.coli BL21)に導入し、得られた形質転換体を2時間培養し、ついで、1mMのIPTGを生育培地に添加した。4時間培養後に、形質転換体を遠心分離して集め、0.5M NaClを含有する20mMリン酸緩衝液(pH7)に懸濁した。細胞をB-PER溶液 (ピアース)を用いて溶解し、ついで1mM PMSF存在下、DNaseおよびRNaseで処理した。遠心分離により上清を得、0.2μmのフィルターを用いて濾過し、ついで、ハイトラップキレートカラム(Hitrap chelating column) (Amersham Bioscience)にロードした。カラムを0.1M ピロリン酸、20mM リン酸、0.5M NaCl、50mM イミダゾール、および20%グリセロール(pH7.4)を用いて洗浄した。PPK-ADK融合タンパク質は、0.1M ピロリン酸、20mM リン酸、0.5M NaCl、0.5M イミダゾールおよび20%グリセロール(pH7.4)で溶出した。
【0050】
得られたPPK-ADK融合タンパク質は、ADK(43U/mg)およびPPK(38U/mg)の活性を有しており、AMPとポリリン酸からATPを生成した。なお、1ユニットのPPKは、37℃で、ADPおよびポリリン酸から1.0μmol/分のATPを合成する。1ユニットのADKは、37℃で、ADPから1.0μmol/分のATPを合成する。
【0051】
0.16μgのPPK-ADK、10μM AMP、400μM ポリリン酸、8mM MgClおよび60mM Tris-HCl(pH7.4)を含む混合液50μlを調製し、5μlの反応混液をサンプリングして、40μlのATP生物発光アッセイ試薬(ロシュ)と混合し、直ちに、マルチプレート蛍光測定計(アルボ、ワラス)を用いて、発光を測定した。
【0052】
図2のPPK-ADKに示すように、このATPを含まない反応系で、ATPの増幅が起こり、蛍光が観察された。この原因を検討したところ、ADPがPPKに結合しており、このADPがPPKに利用されて、最初に図1に示す第2反応が起こってATPが生成し、このATPが増幅された可能性が示唆された。
【0053】
(実施例2:PPK-ADKに結合したADPの除去)
実施例1で取得したPPK-ADKに結合している不純物のADPを除くために、60mM Tris-HCl(pH8)および8mM MgCl、および10mM ポリリン酸の存在下、180μgのPPK-ADKとアピラーゼ(apyrase)(200U)とを1時間反応させた。反応終了後、再度、ハイトラップキレートカラムを用いて、ADPが除去されたPPK-ADKを回収した。以下、このPPK-ADKを、アピラーゼ処理したPPK-ADKという。なお、1ユニットのアピラーゼは、ATPまたはADPから、30℃で、1μmolのリン酸を遊離する。
【0054】
0.16μgのアピラーゼ処理したPPK-ADK、10μM AMP、400μM ポリリン酸、8mM MgClおよび60mM Tris-HCl(pH7.4)を含む混合液50μlを調製し、5μlの反応混液をサンプリングして、40μlのATP生物発光アッセイ試薬(ロシュ)と混合し、直ちに、マルチプレート蛍光測定計(アルボ、ワラス)を用いて、発光を測定した。
【0055】
図2に示すように、アピラーゼ処理したPPK-ADKを用いた反応では、60分間反応させた後でも、蛍光が観察されなかった。なお、図示していないが、この混合液にATPを添加したところ、蛍光が観察された。このことから、アピラーゼ処理は、PPK-ADKのADK活性およびPPK活性に影響を与えないこと、およびアピラーゼ処理により不純物のADPが除去された結果、内因性のATP増加が認められなかったことが判明した。従って、ATP添加による蛍光の観察は、純粋に外因性のATPによると考えられる。従って、アピラーゼ処理した(ADKを含まない)PPK-ADKは、外因性ATPのアッセイに極めて有用である。
【0056】
なお、アピラーゼ処理に際して、ハイトラップキレートカラムへのPPK-ADKの吸着および同カラムからの溶出に際し、洗浄緩衝液および溶出緩衝液にピロリン酸を添加することが好ましい。0.1Mのピロリン酸は、PPK-ADKからADPを遊離させる効果があり、ADPの除去をより効果的に行うことができる。
【0057】
(実施例3:超高感度生物発光アッセイ)
0.16μgのアピラーゼ処理したPPK-ADK、10μM AMP、400μM ポリリン酸、8mM MgClおよび60mM Tris-HCl(pH7.4)を含む混合液48μlを調製し、ついで、2μlのATPサンプルをこの混合液に添加し、ATPを増幅した。5μlの反応混液を経時的にサンプリングして、40μlのATP生物発光アッセイ試薬と混合し、直ちに、マルチプレート蛍光測定計を用いて、蛍光を測定した。なお、ATPの増幅を行わず(PPK-ADKを添加せず)、そのまま、蛍光を測定したものを比較とした。蛍光値は、それぞれ異なった3回の測定の平均値±標準偏差を表す。蛍光の経時的増加を図3に、60分後のATP増幅の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
JP0004431334B2_000002t.gif
【0059】
図3に示すように、アピラーゼ処理したPPK-ADKは、外因性のATPがないときは、60分の増幅処理にもかかわらず、全くATPの増幅がないことがわかった。さらに、図3および表1に示すように、ATPの初期濃度が低いにもかかわらず、蛍光測定可能な程度まで増幅できることがわかった。この結果は、このATP増幅反応が、超高感度生物発光アッセイに応用可能であることを示している。すなわち、0.0033フェムトモル(fmol:10-15mol=3.3アトモル:10-18mol)濃度のATPを含む試料を、60分間ATP増幅処理を行うことにより、検出可能なレベルまで、ATPを増幅できることが示された。すなわち、数アトモル(amol:10-18mol)濃度のATPが検出可能となった。これに対して、従来の生物発光は、数十フェムトモル(fmol:10-15mol)のATPが、その発光を測定するために必要である(表1)。このように、本発明のATP増幅法を用いることにより、生物発光の感度が、少なくとも10,000倍向上したことを示している。
【0060】
(実施例4:単一微生物の検出における超高感度生物発光アッセイの応用)
大腸菌の培養液(2×10CFU/ml)を、純水を用いて適切な濃度に希釈した。細胞懸濁液(500μl)を溶解緩衝液500μl(生物発光アッセイキット、ロシュ)に加えて、100℃、2分間加熱して、細胞からATPを放出させた。加熱サンプル2μlをATP増幅アッセイにかけ、生物発光を測定した。
なお、ATP増幅を行わず(PPK-ADKを添加せず)、そのまま、蛍光を測定したものを比較とした。蛍光値は、それぞれ異なった3回の測定の平均値±標準偏差を表す。蛍光の経時的増加を図4に、60分後のATP増幅の結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
JP0004431334B2_000003t.gif
【0062】
表2および図4に示すように、アッセイに用いた大腸菌の数に依存して、蛍光量が変化した(図4)。表2に示すように、ATP増幅を行わなかった場合に比べ、ATP増幅を行った場合の蛍光発色は著しく増強された。ATP増幅がない場合、表2の10,000CFUの場合でも蛍光発光の程度は極めて低く、有意な生物発光のレベルに達するには、数万CFUの大腸菌が必要であった。これに対して、本発明のATP増幅技術を用いた場合、単一の大腸菌(1CFUの大腸菌のレベル)という、最も低レベルでも、明確な蛍光が観察された。このことは、ATP増幅をしなかった場合に比べて、10,000倍以上の感度があることを示している。
【0063】
大腸菌生細胞の細胞内ATPレベルは、約7μmol/g乾燥菌体と報告されている(非特許文献7)。大腸菌1個の乾燥重量は約2.8×10-13gである(非特許文献8)から、大腸菌は、細胞1個あたり、約2アトモルのATPを含有している。このレベルのATPは、この超高感度生物発光アッセイの検出限界の値とほとんど同じである。
【0064】
(実施例5:衛生学上のモニタリングへの超高感度生物発光アッセイの応用)
本発明の方法が、大腸菌のスワブモニタリングに応用できるか否かについて検討した。大腸菌の細胞懸濁液をポリスチレン製ペトリ皿にひろげ、空気乾燥して市販の綿棒で拭き取った。市販の綿棒は有意な量のATPを含有しているので、予め121℃、75分のオートクレーブ処理を行い、ATPをAMPとリン酸に分解した。4cmの表面積から拭き取ったサンプルを400μlの溶解緩衝液に浸漬し、ついで100℃、2分間加熱した。加熱サンプル(10μl)をATP増幅反応溶液(40μl)に添加し、60分間、ATP増幅反応を行った。そのうちの25μlを生物発光アッセイに用いた。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
JP0004431334B2_000004t.gif
【0066】
このスワブモニタリングにより、約12大腸菌CFU/cmのレベルでの測定が可能となった。本発明の方法が大腸菌のスワブモニタリングに応用できることが判った。
【0067】
(実施例6:飲料水中のバクテリアの検出)
本発明の方法が、飲料水中のバクテリアの検出に有効か否かを検討した。加熱した水サンプル(2μl)を、ATP増幅反応溶液(50μl)に添加し、60分間、ATP増幅反応を行った。表4に結果を示す。表4において、水道水(1)は、広島市の上水道から得られたものである。水道水(2)は、広島大学内で再生された水である。ボトル詰めの水は、市販品を購入した。滅菌水は、蒸留水をオートクレーブして、調製した。池水は、広島大学の池の水である。コロニー数(CFU)は、1mlの水のサンプルをニュートリエント寒天培地(1.6gのトリプトン、1gのイーストエキス、0.5gのNaCl、15gの寒天、水1L)に塗布し、28℃、3日間培養後、形成されたコロニーをカウントして、求めた。
【0068】
【表4】
JP0004431334B2_000005t.gif
【0069】
この結果は、従来の生物発光アッセイでは検出できないレベルでも、バクテリアが検出できたことを示している。表4の結果が示すように、本発明の方法を用いて、水サンプルについて60分間のATP増幅処理を行うことにより、1CFU/mlのバクテリアが検出可能であることがわかる。従来の栄養培地を用いる方法は、バクテリアの混入を検出するのに、典型的には数日を要した(表4)。病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が水道水で検出されたとの報告がある(非特許文献9)が、本発明により、このような微生物の存在が容易にかつ迅速に、検出される。
【0070】
(実施例7:ミルク中のバクテリアの検出)
酪農業における応用について検討した。バクテリアの混入は、ミルク業界に大きなダメージを与えるため、ミルク中のバクテリアを検出するための、迅速で信頼のおけるテストが開発されている。本発明者は、さらに、ミルク中の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を検出する感度の高いアッセイを検討した。黄色ブドウ球菌の培養液を適切な濃度に希釈し、ミルク中に加えた。ミルク中に含まれる乳腺および体細胞からの非バクテリア性ATPを除去するために、0.5mlのミルクを、0.45μmのメンブランを用いて濾過した。このメンブランを0.2%TritonX-100、100mM Tris-HCl(pH7.8)および2mM EDTAを含む10mlの溶液(非特許文献10)で洗浄した。洗浄後、このメンブランを200μlの溶解緩衝液に浸漬し、100℃、5分加熱した。加熱サンプル(20μl)を60分間のATP増幅にかけた。次いで、生物発光アッセイに供した。結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
JP0004431334B2_000006t.gif
【0072】
アッセイの結果、75CFU(黄色ブドウ球菌)/0.5mlミルクが検出できた。黄色ブドウ球菌の検出感度は大腸菌の検出感度より低いが、ミルク中の黄色ブドウ球菌を検出する感度は、従来の生物発光アッセイを用いた場合の感度の約10,000倍に増大した。本発明の微生物の存在を迅速に決定する方法は、環境中の微生物のみならず、幅広い範囲の衛生学上のモニタリングに応用可能である。
【0073】
【発明の効果】
本発明のPPK-ADK融合タンパク質は、ATP、AMPおよびポリリン酸化合物の混合物に作用して、ATPを増幅する。特に、不純物であるADPを含まないPPK-ADKを用いることによって、外因性ATPのみを増幅することが可能となり、細胞1個のレベルの微生物のATPを増幅できる。増幅したATPは、ルシフェラーゼアッセイなどで、検出できる。従って、従来、数日間かかってやっと検出できた微生物を、極めて迅速に検出でき、しかも、たった1個の細胞でも検出可能である。
【0074】
【配列表】
JP0004431334B2_000007t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】ADKおよびPPKを用いるATP増幅機構を示す模式図である。
【図2】PPK-ADKおよびアピラーゼ処理したPPK-ADKを用いるATP増幅の結果を示す図である。
【図3】極微量のATPを含有するサンプルについて、ATP増幅反応を行った結果を示す図である。
【図4】所定の細胞濃度を含有するサンプルについて、ATP増幅反応を行った結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3