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明細書 :n型熱電特性を有する複合酸化物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4292390号 (P4292390)
公開番号 特開2005-051103 (P2005-051103A)
登録日 平成21年4月17日(2009.4.17)
発行日 平成21年7月8日(2009.7.8)
公開日 平成17年2月24日(2005.2.24)
発明の名称または考案の名称 n型熱電特性を有する複合酸化物
国際特許分類 H01L  35/22        (2006.01)
C01G  45/00        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI H01L 35/22
C01G 45/00
H01L 35/34
H02N 11/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 17
出願番号 特願2003-282552 (P2003-282552)
出願日 平成15年7月30日(2003.7.30)
審査請求日 平成18年6月14日(2006.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】寺崎 一郎
【氏名】小林 航
【氏名】舟橋 良次
【氏名】三上 祐史
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
審査官 【審査官】▲高▼橋 英樹
参考文献・文献 特開2003-142742(JP,A)
特開2002-224568(JP,A)
調査した分野 H01L 35/22
C01G 45/00
H01L 35/34
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
組成式:Ca1-xMn7-yM’
(式中、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。)で表される組成を有し、一定温度以上において負のゼーベック係数を有する複合酸化物。
【請求項2】
低温域において正のゼーベック係数を有し、温度上昇とともにゼーベック係数が負に反転する特性を有する請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
973K(絶対温度)において、絶対値20μV/K以上の負のゼーベック係数を有する請求項1又は2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
973K(絶対温度)において、150mΩcm以下の電気抵抗率を有する請求項1~3のいずれかに記載の複合酸化物。
【請求項5】
一般式:(Ca1-xMn(III)3-yM’)(Mn(III+δ))O
(式中、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。また、Mn(III)は、3価のマンガン元素を示し、Mn(III+δ)は、平均原子価が3+δ(0.2≦δ≦1.0)のマンガン元素を示す。)で表される請求項1~4のいずれかに記載の複合酸化物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の複合酸化物からなるn型熱電変換材料。
【請求項7】
請求項6に記載のn型熱電変換材料を含む熱電発電モジュール。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一定温度以上において負のゼーベック係数を有する複合酸化物、該複合酸化物からなるn型熱電変換材料、及び熱電発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、一次供給エネルギーからの有効なエネルギーの得率、は30%程度しかなく、約70%ものエネルギーを最終的には熱として大気中に廃棄している。また、工場やごみ焼却場などにおいて燃焼により生ずる熱も、その殆どが他のエネルギーに変換されることなく大気中に廃棄されている。このように、我々人類は、非常に多くの熱エネルギーを無駄に廃棄しており、限りある化石燃料の燃焼などの行為からは僅かなエネルギーしか獲得していない。
【0003】
エネルギーの得率を向上させるためには、大気中に廃棄されている熱エネルギーを利用できるようにすることが有効である。そのための有効な一つの技術手段として、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電変換がある。この熱電変換とは、ゼーベック効果を利用したものであり、熱電変換材料の両端に温度差を発生させることにより、電位差を生じさせて発電を行うエネルギー変換法である。熱電発電では、熱電変換材料の一端を廃熱により生じた高温部に配置し、もう一端を大気中(室温部)に配置して、それぞれの両端に導線を接続するだけで電気が得られるので、一般的な発電に必要なモータやタービンなどの可動装置は不要である。このため、設備コストも安く、燃焼などによるガスの排出もなく、熱電変換材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる。
【0004】
このように、熱電発電は今後予測されるエネルギー資源の枯渇という重大な問題に対する解決策の一端を担う技術して期待されているが、熱電発電を実現するためには、高い熱電変換効率を有し、耐熱性、化学的耐久性などに優れた熱電変換材料を大量に供給することが必要となる。
【0005】
現在、高い熱電変換効率を有する物質としては、金属間化合物が知られている。しかしながら、金属間化合物の熱電変換効率は最大でも10%程度であり、空気中では約300℃(573K)以下の温度でしか利用できない。また、金属間化合物は、その種類によっては毒性元素や希少元素を構成元素とするものもある。このため、廃熱を利用する熱電変換は未だ実用化されるには至っておらず、毒性が少なく現存量の多い元素により構成され、耐熱性、化学的耐久性などに優れ、しかも高い熱電変換効率を有する材料の開発が要望されている。
【0006】
近年、400℃(673K)以上の温度で高い熱電変換効率を有する材料として、Ca、Bi、Sr、Naなどを含有するCo系複合酸化物が報告されている(例えば、下記非特許文献1,2等参照)。これらの複合酸化物は、全て電荷担体が正孔であるp型物質であり、金属イオンは一般に高酸化数の状態である。このため、これらのp型酸化物は、高温の空気中において安定であり、優れた熱電特性を発揮することができる。
【0007】
一方、一般にn型物質では、電荷担体は電子であり、金属酸化物の場合、負のゼーベック係数を有するn型物質の金属イオンは低酸化数状態にあることが多い。このため、n型酸化物は、高温の空気中で用いると酸化により金属の酸化数が増加しやすく、特性が劣化しやすいという欠点がある。このため、400℃(673K)以上の高温の空気中で優れた性能を発揮できるn型酸化物は、未だ見出されるには至っていない。
【0008】
従って、高温廃熱からの熱電発電を実現するためには、耐熱性、化学的耐久性に優れ、しかも高い熱電変換効率を有するn型物質の開発が必要不可欠である。

【非特許文献1】I. Terasakiら、Phys. Rev. B 56, R12685 (1997).
【非特許文献2】R. Funahashiら、Jpn. J. Appl. Phys. 39, L1127 (2000).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高温の空気中において優れた熱電特性を発揮できるn型熱電変換材料であって、毒性が少なく存在量の多い元素により構成され、耐熱性、化学的耐久性等に優れた新規な材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、CaとMnを含む特定組成を有する複合酸化物は、電荷担体が正孔であるにも関わらず、高温域において負のゼーベック係数を有するものとなり、n型物質としての特性を示すことを見出した。そして、この様な酸化物は、耐熱性、化学的耐久性などの特性にも優れたものであり、高温の空気中において、n型の熱電変換材料として有効に利用できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の複合酸化物、該複合酸化物からなるn型熱電変換材料、及び熱電発電モジュールを提供するものである。
1. 組成式:Ca1-xMn7-yM’
(式中、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。)で表される組成を有し、一定温度以上において負のゼーベック係数を有する複合酸化物。
2. 低温域において正のゼーベック係数を有し、温度上昇とともにゼーベック係数が負に反転する特性を有する上記項1に記載の複合酸化物。
3. 973K(絶対温度)において、絶対値20μV/K以上の負のゼーベック係数を有する上記項1又は2に記載の複合酸化物。
4. 973K(絶対温度)において、150mΩcm以下の電気抵抗率を有する上記項1~3のいずれかに記載の複合酸化物。
5. 一般式:(Ca1-xMn(III)3-yM’)(Mn(III+δ))O
(式中、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。また、Mn(III)は、3価のマンガン元素を示し、Mn(III+δ)は、平均原子価が3+δ(0.2≦δ≦1.0)のマンガン元素を示す。)で表される上記項1~4のいずれかに記載の複合酸化物。
6. 上記項1~5のいずれかに記載の複合酸化物からなるn型熱電変換材料。
7. 上記項6に記載のn型熱電変換材料を含む熱電発電モジュール。
【0012】
本発明の複合酸化物は、組成式:Ca1-xMn7-yM’
(式中、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。)で表されるものである。
【0013】
上記した組成式で表される複合酸化物は、電荷担体が正孔であるにも関わらず、一定温度以上において負のゼーベック係数を示すものである。
【0014】
本発明の複合酸化物の内で、後述する実施例1及び実施例2で得られた複合酸化物のX線回折図を図1に示す。また、図2に本発明の複合酸化物の結晶構造を模式的に示す。
【0015】
図2に示すように、本発明の複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有し、AサイトにCa、M、Mn又はM’が位置し、BサイトにMnが位置する。Ca及び置換元素であるMは立方体の体心位に位置し、酸素はBサイトのMnに六配位して八面体を形成する。
【0016】
本発明の複合酸化物は、この様なABO3型ペロブスカイト構造において、Aサイトに位置するMnは3価のマンガン元素であり、Bサイトに位置するMnは3価のマンガン元素と4価のマンガン元素が混在した状態と考えることができる。
【0017】
この様な結晶構造を考慮すると、本発明の複合酸化物は、
一般式:(Ca1-xMn(III)3-yM’)(Mn(III+δ))O
で表すことができる。ここで、M、M’、x、y及びzは、上記組成式に同じである。即ち、Mは、Sr,Ba,La,Pr,Nd,Sm,Na及びKからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素、M’は、Cu及びCaからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、0≦x≦1;0≦y≦1.5;11≦z≦13である。
【0018】
また、Mn(III)は、3価のマンガン元素を示し、Mn(III+δ)は、4価のマンガン元素と3価のマンガン元素が混在するものであって、添字を付したマンガン元素の平均原子価が、3+δであることを示すものである。δの値は、通常、0.2≦δ≦1.0程度の範囲となる。
【0019】
上記した組成式で表される複合酸化物は、電荷担体が正孔であるにも関わらず、一定温度以上において負のゼーベック係数を示すものである。図3は、後述する実施例1及び2で得た複合酸化物についてのゼーベック係数の温度依存性を示すグラフである。図3から明らかなように、これらの複合酸化物のゼーベック係数は、低温では正の値であり、温度の上昇に伴って減少する。そして、ゼーベック係数の符号は実施例1では773K、実施例2では200Kを境に反転してその後は負のゼーベック係数となり、その絶対値は、温度の上昇とともに増加する傾向を示す。
【0020】
この現象は、電荷担体が正孔でありながら、負のゼーベック係数を発現する機構の特徴であり、後述する全ての実施例で観察される。この様な現象が生じる理由については、次のように考えることができる。
【0021】
即ち、電荷担体が正孔である本発明の複合酸化物は、その両端に温度差をつけると、電荷担体である正孔が高温部から低温部へと移動する。この現象がゼーベック効果であり、正孔が低温部へ移動することで低温部の電位が高温部よりも高くなる。ゼーベック係数の極性は低温部が高電位の場合を正と定義するため、上記のように正孔が低温側へ移動する物質は、正のゼーベック係数を有するp型物質となる。
【0022】
一方、本発明の複合酸化物では、電荷の移動方向とは逆方向に電子エントロピーの移動が生じる。これは、Bサイトにおいて、4価のマンガン元素と3価のマンガン元素が混在することに起因するものと考えることができる。
【0023】
そして、低温では電子エントロピーが小さく、正孔の移動によるゼーベック効果がゼーベック係数を支配するが、温度上昇に従って正孔の移動によるゼーベック効果が小さくなり、相対的に電子エントロピーが増加し、特定の温度以上では電子エントロピーが、物質のゼーベック係数を決定するようになり、ゼーベック係数の符号が反転して、負のゼーベック係数となると考えられる。
【0024】
この際、具体的な複合酸化物の組成によって、ゼーベック係数の反転温度に相違が生じるが、これは、電荷担体の濃度に起因するゼーベック効果の大きさが異なることによるものと考えることができる。
【0025】
以上の通り、本発明の複合酸化物は、低温では正のゼーベック係数を有し、温度の上昇と共にその値が減少し、特定の温度において符号が反転し、その後は負のゼーベック係数となり、その絶対値は温度の上昇とともに増加する傾向を示す。ゼーベック係数の符号が反転する温度は組成によって異なるが、本発明の複合酸化物は、全て973Kでは、絶対値が20μV/K以上の負のゼーベック係数を有するものとなる。
【0026】
また、本発明の複合酸化物は、温度上昇に従って電気抵抗率が減少する半導体的な挙動を示すものであり、後述する全て実施例においてこの様な傾向が示された。図4は、後述する実施例1及び2の複合酸化物について、電気抵抗率の温度依存性を示すグラフであり、全ての実施例において、約973Kで150mΩcm以下の値となった。
【0027】
次に、本発明の複合酸化物の製造方法を説明する。
【0028】
本発明の複合酸化物は、例えば、目的とする複合酸化物の元素成分比率と同様の元素成分比率となるように原料物質を混合し、焼成することによって製造することができる。
【0029】
原料物質としては、焼成により酸化物を形成し得るものであれば特に限定されず、元素単体、酸化物、各種化合物(炭酸塩等)等を使用できる。例えば、Ca源としては、カルシウム(Ca)、酸化カルシウム(CaO)、過酸化カルシウム(CaO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、塩化カルシウム(CaCl2)およびその水和物、アルコキシド化合物(ジメトキシカルシウム(Ca(OCH3)2)、ジエトキシカルシウム(Ca(OC2H5)2)、ジプロポキシカルシウム(Ca(OC3H7)2)等)等を使用でき、Mn源としては、マンガン(Mn)、酸化マンガン(MnO、MnO2、Mn2O3、Mn3O4)、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)、塩化マンガン(MnCl2)、アルコキシド化合物(ジプロポキシマンガン(Mn(OC3H7)2等)等を使用できる。その他の元素についても同様に元素単体、酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシド化合物等を用いることができる。また本発明の複合酸化物の構成元素を二種以上含む化合物を使用しても良い。上記した原料物質は、各元素源の物質について、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0030】
焼成温度及び焼成時間については、目的とする複合酸化物が形成される条件とすれば良く、特に限定されないが、例えば、800~1000℃(1073~1273K)程度の温度範囲において、20~40時間程度焼成すれば良い。尚、原料物質として炭酸塩や有機化合物等を用いる場合には、焼成する前に予め仮焼きして原料物質を分解させた後、焼成して目的の複合酸化物を形成することが好ましい。例えば、原料物質として炭酸塩を用いる場合には、600~900℃(873~1173K)程度で10時間程度仮焼きした後、上記した条件で焼成すれば良い。焼成手段は特に限定されず、電気加熱炉、ガス加熱炉等任意の手段を採用できる。焼成雰囲気は、通常、酸素気流中、空気中等の酸化性雰囲気中とすればよいが、原料物質が十分量の酸素を含む場合には、例えば、不活性雰囲気中で焼成することも可能である。生成する複合酸化物中の酸素量は、焼成時の酸素分圧、焼成温度、焼成時間等により制御することができ、酸素分圧が高い程、上記一般式における酸素比率を高くすることができる。但し、酸素比率の変化が熱電特性に与える影響は観察されなかった。
【0031】
以上の方法で得ることができる本発明の複合酸化物は、その組成によって決まる一定温度以上で負のゼーベック係数を有し、その絶対値は温度と共に増加し、973Kにおいて絶対値が20μmV/K以上の負のゼーベック係数となる。さらに電気抵抗率は、973Kにおいて100mΩcm程度であり、導電性も良好である。更に、該複合酸化物は、耐熱性、化学的耐久性等が良好であって、毒性の少ない元素により構成されており、熱電変換材料として実用性の高いものである。
【0032】
従って、本発明複合酸化物は、上記した特性を利用して、空気中において高温で用いるn型熱電変換材料として有効に利用することができる。
【0033】
本発明の複合酸化物からなる熱電変換材料をn型熱電変換素子として用いた熱電発電モジュールの一例の模式図を図5に示す。該熱電発電モジュールの構造は、公知の熱電発電モジュールと同様であり、高温部用基板、低温部用基板、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料、電極、導線等により構成される熱電発電モジュールであり、本発明の複合酸化物はn型熱電変換材料として使用される。
【発明の効果】
【0034】
以上の通り、本発明の複合酸化物は、一定温度以上で負のゼーベック係数を有し、更に、導電性が良好であって、耐熱性、化学的耐久性などにも優れた物質である。
【0035】
該複合酸化物は、この様な特性を利用して、従来の金属間化合物や酸化物では得られていない、高温の空気中で使用可能なn型熱電変換材料として有効に利用することができる。よって、該複合酸化物を熱電発電モジュールのn型熱電変換素子としてシステム中に組み込むことにより、これまで大気中に廃棄されていた熱エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
Ca源として炭酸カルシウム(CaCO3)、Mn源として酸化マンガン(Mn3O4)を用いて、Ca : Mn(元素比)= 1.0 : 7.0となる様に原料物質を十分に混合した後、アルミナ坩堝に入れ、電気炉を用いて空気中870℃(1143K)で12時間仮焼きして、炭酸塩を分解した。この仮焼物を粉砕し、加圧成形後、空気中930℃(1203K)で12時間焼成して複合酸化物を合成した。
【0037】
得られた複合酸化物は、組成式: CaMn12で表されるものであった。
【0038】
得られた複合酸化物のゼーベック係数の温度依存性を表すグラフを図3に示す。図3から、この複合酸化物は773K以上の温度において負のゼーベック係数を有し、973Kではゼーベック係数が-20μV/Kとなることが判る。この結果から、該複合酸化物は、n型熱電変換材料として有効に利用できることが確認できた。
【0039】
なお、後述する全ての実施例においても、実施例1と同様の傾向であり、973Kにおけるゼーベック係数は、絶対値20μV/K以上の負の値であった。
【0040】
また、上記複合酸化物について、電気抵抗率の温度依存性を示すグラフを図4に示す。図4から、該複合酸化物は、温度上昇に従って電気抵抗率が減少する半導体的な挙動を示し、973Kにおいて113mΩcmという低い値であることが判る。尚、後述する全ての実施例において同様の傾向であり、973Kにおいて150mΩcm程度以下の値であった。
実施例2
実施例1で用いたCa源及びMn源に加えて、Cu源として酸化銅(CuO)を用い、Ca : Mn : Cu(元素比)= 1.0 : 6.5 : 0.5となる様に原料混合物を混合し、それ以外は実施例1と同様にして複合酸化物を製造した。
【0041】
得られた複合酸化物は、組成式:CaMn6.5Cu0.512.2で表されるものであった。
【0042】
図3は、得られた複合酸化物のゼーベック係数の温度依存性を示すグラフである。図3から、この複合酸化物が、200K以上の温度では負のゼーベック係数を有し、973Kではゼーベック係数が-30μV/Kとなることが判る。この結果から、該複合酸化物は、n型熱電変換材料として利用できることが確認できた。
【0043】
また、図4は、該複合酸化物について電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。図4から、該複合酸化物は、温度上昇に伴って電気抵抗率が減少する半導体的な挙動を示し、973Kにおいて67mΩcmという低い電気抵抗率であることが判る。
実施例3~127
組成式:Ca1-xMn7-yM’において、M、M’の種類と、x値及びy値が、下記表1~8に示すものとなるように原料物質を混合し、実施例1と同様にして複合酸化物を合成した。
【0044】
原料物質としては、実施例1及び2で用いた原料以外に、Sr源として炭酸ストロンチウム(SrCO3)、Ba源として炭酸バリウム(BaCO3)、La源として酸化ランタン(La2O3)、Pr源として酸化プラセオジミウム(Pr2O3)、Nd源として酸化ネオジミウム(Nd2O3)、Sm源として酸化サマリウム(Sm2O3)、Na源として炭酸ナトリウム(Na2CO3)、K源として炭酸カリウム(K2CO3)、Ca源として炭酸カルシウム(CaCO3)、を用いた。
【0045】
焼成温度については、目的とする複合酸化物に応じて、800~1000℃(1073~1273K)の範囲で設定した。
【0046】
得られた各複合酸化物について、973Kにおけるゼーベック係数及び電気抵抗率を各表に示す。
【0047】
【表1】
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【0048】
【表2】
JP0004292390B2_000003t.gif

【0049】
【表3】
JP0004292390B2_000004t.gif

【0050】
【表4】
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【0051】
【表5】
JP0004292390B2_000006t.gif

【0052】
【表6】
JP0004292390B2_000007t.gif

【0053】
【表7】
JP0004292390B2_000008t.gif

【0054】
【表8】
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【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1で得られた複合酸化物と実施例2で得られた複合酸化物のX線回折図。
【図2】本発明の複合酸化物の結晶構造を模式的に示す図面。
【図3】実施例1で得られた複合酸化物と実施例2で得られた複合酸化物の空気中でのゼーベック係数の温度依存性を示すグラフ。
【図4】実施例1で得られた複合酸化物と実施例2で得られた複合酸化物の空気中での電気抵抗率の温度依存性を示すグラフ。
【図5】本発明の複合酸化物をn型熱電変換材料として用いた熱電変換モジュールを模式的に示す図面。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4