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明細書 :トンネルジャンクション素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4133687号 (P4133687)
公開番号 特開2005-072436 (P2005-072436A)
登録日 平成20年6月6日(2008.6.6)
発行日 平成20年8月13日(2008.8.13)
公開日 平成17年3月17日(2005.3.17)
発明の名称または考案の名称 トンネルジャンクション素子
国際特許分類 H01L  43/08        (2006.01)
H01F  10/30        (2006.01)
H01F  10/32        (2006.01)
H01L  43/10        (2006.01)
FI H01L 43/08 M
H01L 43/08 Z
H01F 10/30
H01F 10/32
H01L 43/10
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2003-302614 (P2003-302614)
出願日 平成15年8月27日(2003.8.27)
審査請求日 平成15年8月28日(2003.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】十倉 好紀
【氏名】川崎 雅司
【氏名】山田 浩之
【氏名】小川 佳宏
【氏名】金子 良夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】川村 裕二
参考文献・文献 特開2001-320108(JP,A)
特開平11-274597(JP,A)
特開2002-092824(JP,A)
調査した分野 H01L 43/08
H01F 10/30
H01F 10/32
H01L 43/10
特許請求の範囲 【請求項1】
1-x x MO3-δ型酸化物(0≦x≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた下部強磁性導電性電極(2,12)及び上部強磁性導電性電極(4,14)と、前記下部強磁性導電性電極(2,12)と前記上部強磁性導電性電極(4,14)に挟まれた電気的絶縁層からなる中心を構成する第2の膜(3B,13B)と該第2の膜(3B,13B)の上下に電荷を供給できるような第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)とからなる3層構造を有する非磁性膜からなるトンネル膜をもつトンネルジャンクション素子。
【請求項2】
請求項1記載のトンネルジャンクション素子において、前記3層構造を有する非磁性膜からなるトンネル膜の厚みの合計が3単位層から10単位層である構造を有するトンネルジャンクション素子。
【請求項3】
請求項2記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)の膜厚はそれぞれ1単位層から3単位層である構造を有するトンネルジャンクション素子。
【請求項4】
請求項2記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)はMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属酸化膜を用いたトンネルジャンクション素子。
【請求項5】
請求項4記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)はA1-x x MO3-δ型酸化物(0≦x≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いたトンネルジャンクション素子。
【請求項6】
請求項5記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜を構成する3層の中心の第2の膜(3B,13B)がSrTiO3-δ(δは酸素欠損量)であるトンネルジャンクション素子。
【請求項7】
請求項6記載のトンネルジャンクション素子において、前記SrTiO3-δ(δは酸素欠損量)を挟む前記第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)がLaMnO3-δδは酸素欠損量であるトンネルジャンクション素子。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極はLa1-x Srx MnO3-δ酸化物(0.2≦x≦0.5、δは酸素欠損量)を用いたトンネルジャンクション素子。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極はA2 MM´O6-δ型酸化物(δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MはMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素、M´としてM以外のMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素を用いたトンネルジャンクション素子。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極と前記トンネル膜を構成する膜材料の少なくとも一つはレーザーアブレーション法にて製造されたトンネルジャンクション素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルジャンクション素子に係り、磁化によって記憶された情報を読み出すのに必要な磁気ヘッドに利用される。またさらにこの技術は磁気メモリ素子に展開するであろうTMR(tunnel magnetoresistive)素子に関する技術に応用できる。
【背景技術】
【0002】
情報産業技術の肥大化、また画像等の記憶等、現在の記憶容量増大の要求は止まる事を知らない。その為に、メモリサイズに関して限りない微小化要求が発生している。現在の予測では、2004年には100Gbpsiのメモリ容量を磁性材料サイズ30nm(300Å)で、2007年には1000Gbpsiのメモリ容量を磁性材料サイズ10nm(100Å)程度で実現できると言われている。
【0003】
このような記憶を担う磁性材料の微細化、高密度化に対応するために、再生ヘッド、もしくは磁気センサーの感度の向上も必須である。この感度はMR比として表現される。再生ヘッドの微小化はこれを構成するセンサー素子のMR比の向上によって実現されてきた。
【0004】
このMR比に関しては、1994年頃からMR比が4%であるGMR(giant magnetoresistive)素子が開発され、実用化されつつある。現在ではMR比10%程度のものが登場しつつある。しかし、100Gビット/(インチ)2 以上の記憶密度になるとGMR素子のMR比では足りず、10から数10%レベルのMR比が必要となる。
【0005】
そこで、2000年に、開発段階でMR比が10%以上のTMR素子が登場し、このTMR素子により従来のGMR素子で難しかったより高いMR比が実現できることが示された(下記非特許文献1参照)。
【0006】
TMR素子は磁気センサーとしての応用だけでなく、磁気メモリとしての応用展開も可能である。すでにIBMが2004年に256Mbit-MRAMを市場に投入するための共同開発計画を発表した事もあり、さらに重要性を帯び始めている。

【特許文献1】特開2003-86863号公報
【非特許文献1】Ohashi et al,NEC“Low Resistance Tunnel Magnetoresistive Head”,“IEEE Transaction on Magnetics,Vol.36,No.5,pp.2549-2553,2000
【非特許文献2】M.Brownet al.App.Phys.82(2003)233
【非特許文献3】M.Kawasaki,Y.Tokura et al,J.Appl.Phys.Vol.42(2003)L369-L372
【非特許文献4】U.Pustogowa et al Phys.Rev.B49(1994)10031
【非特許文献5】Th.Rasing et al Phys.Rev.Lett.74(1995)3692(J.Appl.Phys.79(1996),6181)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TMR素子は、強磁性トンネル接合(ジャンクション)におけるスピン分極トンネル磁気抵抗効果を利用する素子である。強磁性トンネル接合は、鉄などの遷移金属を強磁性金属層とし、これにAl2 3 などの十分に薄い絶縁体膜を挟み込んだサンドイッチ構造をしている。TMRの基本的な物理現象は上下の強磁性層のスピンの向きによって、伝導電子が絶縁層の障壁をトンネルできる確立が変化することに起因している。TMR素子を構成する強磁性金属層にペロブスカイト型酸化物を使用すると、通常の遷移金属を使ったものよりさらに大きなMR比が得られることが示されている(上記非特許文献2参照)。この素子のMR比は実に4Kにおいて、1800%を超える。このようなTMR素子をCMR(colossal magnetoresistive)素子と呼ぶ。
【0008】
ペロブスカイト型酸化物を強磁性金属層に使用したCMR素子においては、従来のTMR素子特性を大きく凌駕する特性が期待できるが、一方、室温下においてはMR比が小さいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、室温下においても、MR比を向上させることができるトンネルジャンクション素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らはCMR素子が室温下で期待ほどのMR比を示さない理由を以下のように示した(上記非特許文献3参照)。CMR素子の実用化にあたって、絶縁膜をペロブスカイト型強磁性導電性酸化物で挟む構造にすると、そのペロブスカイト型酸化物が単一状態で示す強磁性転移温度Tcより、トンネルジャンクションの強磁性転移温度TC が低下する問題が発生する。この強磁性転移温度Tcの低下は、絶縁層と強磁性金属材料での界面におけるスピン状態が単一強磁性金属層のスピンと異なることによる。界面でのスピン方位は、強磁性金属層内でのスピン間での強磁性的結合を促す二重交換相互作用と層間反強磁性(A-type layered antiferromagnetism)との競合により決定される。
【0011】
従って、本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕トンネル膜をもつトンネルジャンクション素子において、A1-x x MO3-δ型酸化物(0≦x≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた下部強磁性導電性電極(2,12)及び上部強磁性導電性電極(4,14)と、前記下部強磁性導電性電極(2,12)と前記上部強磁性導電性電極(4,14)に挟まれた電気的絶縁層からなる中心を構成する第2の膜(3B,13B)とこの第2の膜(3B,13B)の上下に電荷を供給できるような第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)とからなる3層構造を有する非磁性膜からなるトンネル膜をもつ。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記3層構造を有する非磁性膜からなるトンネル膜の厚みの合計が3単位層から10単位層である構造を有する。
【0013】
〔3〕上記〔2〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)の膜厚はそれぞれ1単位層から3単位層である構造を有する。
【0014】
〔4〕上記〔2〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)はMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属酸化膜を用いた。
【0015】
〔5〕上記〔4〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)はA1-x x MO3-δ型酸化物(0≦x≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた。
【0016】
〔6〕上記〔5〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜を構成する3層の中心の第2の膜(3B,13B)がSrTiO3-δ(δは酸素欠損量)である。
【0017】
〔7〕上記〔6〕記載のトンネルジャンクション素子において、前記SrTiO3-δ(δは酸素欠損量)を挟む前記第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)がLaMnO3-δδは酸素欠損量である。
【0018】
〔8〕上記〔1〕から〔7〕の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極はLa1-x Srx MnO3-δ酸化物(0.2≦x≦0.5、δは酸素欠損量)を用いた。
【0019】
〔9〕上記〔1〕から〔7〕の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極はA2 MM´O6-δ型酸化物(δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MはMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素、M´としてM以外のMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素を用いた。
【0020】
〔10〕上記〔1〕から〔9〕の何れか一項記載のトンネルジャンクション素子において、前記強磁性導電性電極と前記トンネル膜を構成する膜材料の少なくとも一つはレーザーアブレーション法にて製造された。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0022】
本発明によれば、CMR素子の課題である室温で十分なMR比を示す磁気センサーを提供することができる。例えば、100Gビット/(インチ)2 もしくは1000Gビット/(インチ)2 の記録密度に対応できる磁気ヘッドを供給することができる。また、DRAM、FeRAMと肩を並べる磁気メモリの構成素子としての特性を示すCMR素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
トンネル膜をもつトンネルジャンクション素子であって、下部強磁性導電性電極と上部強磁性導電性電極との間に3層構造の非磁性膜からなるトンネル膜を形成し、上記強磁性導電性電極は、A1-x x MO3-δ型酸化物(0≦≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた下部強磁性導電性電極(2,12)及び上部強磁性導電性電極(4,14)と、前記下部強磁性導電性電極(2,12)と前記上部強磁性導電性電極(4,14)に挟まれた電気的絶縁層からなる中心を構成する第2の膜(3B,13B)とこの第2の膜(3B,13B)の上下に電荷を供給できるような第1の膜(3A,13A)と第3の膜(3C,13C)とからなる3層構造を有する。
【実施例】
【0024】
(1)図1は本発明にかかるトンネルジャンクション素子の断面模式図である。
【0025】
この図において、1は下部金属電極、2はその上に形成されるA1-x x MO3-δ型酸化物膜(0≦x≦1、δは酸素欠損量)〔下部強磁性導電性電極〕、3は非磁性膜からなるトンネル膜であり、このトンネル膜は電荷を供給できるような第1の膜3A,電気的絶縁層である第2の膜3B、電荷を供給できるような第3の膜3Cからなる。4は第3の膜3C上に形成されるA1-x x MO3-δ型酸化物膜(0≦x≦1、δは酸素欠損量)〔上部強磁性導電性電極〕、5はその上部強磁性導電性電極4上に形成される上部金属電極である。
(2)ここで、上記トンネルジャンクション素子において、下部強磁性導電性電極2と上部強磁性導電性電極4とで挟まれる3層からなるトンネル膜3、つまり、第1の膜3A,第2の膜3B,第3の膜3Cの厚みの合計が3単位層から10単位層である構造を有する。
(3)また、上記トンネルジャンクション素子において、下部強磁性導電性電極2と上部強磁性導電性電極4とで挟まれる3単位層からなるトンネル膜3を構成する上下の膜、つまり、第1の膜3Aと第3の膜3Cの膜厚はそれぞれ1単位層から3単位層である構造を有する。
(4)また、上記トンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A)と第3の膜(3C)はMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属酸化膜を用いる。
(5)また、上記トンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜の3層構造を構成する第1の膜(3A)と第3の膜(3C)はA1-x x MO3-δ型酸化物(0≦x≦1、δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いる。
(6)また、上記トンネルジャンクション素子において、前記トンネル膜を構成する3層の中心の第2の膜(3B)がSrTiO3-δ(δは酸素欠損量)である。
(7)また、上記トンネルジャンクション素子において、トンネル膜を構成する3層の中央の膜、つまり、第2の膜3BはSrTiO3-δ(δは酸素欠損量)で、それを挟む上下の膜、つまり第1の膜3A、第3の膜3CがLaMnO3-δδは酸素欠損量である。
(8)また、上記トンネルジャンクション素子において、下部強磁性導電性電極2、上部強磁性導電性電極4はLa1-x Srx MnO3-δ酸化物(0.2≦x≦0.5、δは酸素欠損量)を用いる。
(9)また、上記トンネルジャンクション素子において、下部強磁性導電性電極2、上部強磁性導電性電極4はA2 MM´O6-δ型酸化物(δは酸素欠損量)で、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素、YやBiからなる元素、MはMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素、M´としてM以外のMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属元素を用いる。
(10)さらに、上記トンネルジャンクション素子において、強磁性導電性電極とトンネル膜を構成する膜、つまり第1の膜3A,第2の膜3B,第3の膜3Cの膜材料として少なくとも一つはレーザーアブレーション法にて製造するようにした。
【0026】
図2は本発明の具体例を示すトンネルジャンクション素子の断面図である。
【0027】
この図において、11は下部金属電極、12は下部金属電極11の上に形成される下部強磁性導電性電極としての強磁性金属材料La0.6 Sr0.4 MnO3 、13はトンネル膜であり、このトンネル膜13は、電荷を供給できる第1の膜13Aとしての2単位層積層した単一単位層膜のLaMnO3 、電気的絶縁層である第2の膜13Bとしての5単位層のSrTiO3 と、電荷を供給できる第3の膜13Cとしての2単位層のLaMnO3 からなる。14は第3の膜13C上に形成される上部強磁性導電性電極としての強磁性金属膜材料La0.6 Sr0.4 MnO3 、15は上部金属電極である。
【0028】
このように、強磁性金属材料La0.6 Sr0.4 MnO3 12の上に非磁性膜(トンネル膜)として2単位層積層した2単位層膜のLaMnO3 13Aと5単位層のSrTiO3 13Bとその膜と強磁性金属膜材料La0.6 Sr0.4 MnO3 14との界面に2単位層のLaMnO3 13Cを挿入したLaMnO3 /SrTiO3 /LaMnO3 の3層構造のトンネル膜を構成した。これらのトンネル膜13、強磁性金属層12,14はレーザーアブレーション法で積層する。このときの成膜条件は850-900℃、0.1-1mTorrである。なお、SrTiO3 13Aの1単位層の膜厚は3.905Å、LaMnO3 13Cの1単位層の膜厚は3.960Åである。これらの膜の積層数は、RHEED(反射高エネルギー電子線回折)観察により決定した。
【0029】
入射エネルギー1.55eV、入射角度26°、試料温度50Kから350Kの場合の第2高調波(SHG)3.1eV反射強度の偏向角度の測定例を示す。SHG光は、光学フィルターと分光器で励起光から切り離し光電子増倍管、ボックスカー積分器で測定した。
【0030】
図3は第2高調波を使った界面スピン状態の観察方法〔MSHG(magnetic second harmonic generation)法〕の原理図である。
【0031】
この図に示すように、このとき構成する材料が非磁性透明膜101(この非磁性透明膜は従来の例としてはSrTiO3 を用い、本発明の例としてはSrTiO3 /LaMnO3 を用いる)と強磁性膜102(この強磁性膜は従来の例、本発明の例ともに、La0.6 Sr0.4 MnO3 を用いる)からなる界面で構成されているとする。そこで、このMSHG法は振動数ωのレーザー光103を入射角ωで入射し、その反射光104ωの振動数2ωの光の偏光面の回転を調べればよい。
【0032】
かかる配置のときの第2高調波の感受率χ(2)は、χ(2)=αMxPzと表現される。界面の存在により分極率Pzが存在し、x軸方向の磁化Mxによりχ(2)が発生する。偏光面の回転角度は発生した界面磁化の大きさに比例する。磁性界面からの第2高調波の偏向面が回転することはPustogowaらがFe磁性金属薄膜にて理論的に予測し(上記非特許文献4参照)、Rasingらがスパッター膜で形成したFe/Cr膜において第2高調波の偏光面の回転を観察した(上記非特許文献5参照)。
【0033】
図4に従来からCMR素子に用いられているSrTiO3 をトンネル膜として用いていた場合のB=+500Gaussの場合とB=-500Gaussの場合のSHG光の偏向度を示す〔図4(a)〕。また、本発明のトンネルジャンクション素子におけるSrTiO3 /LaMnO3 トンネル膜の場合のSHG光の偏向度を示す〔図4(b)〕。明らかにSrTiO3 /LaMnO3 トンネル膜の場合にSHG光の偏向度は高温まで発生していることが分かる。これを50Kから350KまでSHG光の偏向度を示したものが図5である。
【0034】
トンネル膜がSrTiO3 の場合(図5のグラフa) は、SHG光がなくなるのに対して、本発明の場合(図5のグラフb)は、室温以上の300KにおいてもSHG光が50Kの低温に対して40%も存在している。これは低温(たとえば4.2K)でのMR比に対して40%のMR比を示すCMR素子が実現できることを示したことになる。すなわち、MR比=1800%が4. 2Kで実現できることから、この40%、すなわち室温で720%のMR比が実現できることを示したことになる。このような従来のトンネル膜の上下に電荷供給層を1から2単位層形成し、上下導電性電極間の層間反強磁性(A-type layered antiferromagenetism)の発生を抑え込むことに成功したことを示す。LaMnO3 /SrTiO3 /LaMnO3 トンネル膜の場合においては、室温で、十分なMR比700%以上の値をもつことが期待できることを示した。
【0035】
本発明によれば、新CMR素子は室温動作し、MR比で700以上の値を示す高性能の磁気センサーを可能にする。このことにより、100Gビット、テラビット領域の巨大な磁気メモリデバイスを提供する事が可能になり、今後の巨大情報量を扱う情報通信を担うにふさわしい巨大メモリを提供することが可能となる。また、この発明に基づく新CMR素子は磁気センサーへの応用にとどまらない。この新CMR素子は現在、急速に開発されようとしている磁気メモリ素子に応用展開することが可能である。また、強磁性導電性電極材料のスピンの向きが反並行状態に保持した場合、酸化膜を通過するトンネル電流の劇的な低減に寄与することができることからDRAM素子の容量用酸化膜に応用展開をはかることも可能であろう。また、微小領域の磁場を敏感に検知することが可能であるから、たとえば微小磁石を一方に配置し、他方にここで提案された磁気センサーを搭載すれば、開閉センサー(たとえば携帯電話の開閉センサー)としての応用も可能である。このように磁気メモリ用にとどまらず、広範な情報ネットワークの基本素子としての発明の応用が考えられる。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のトンネルジャンクション素子は、MR比で700以上の値を示し、室温動作する高性能の磁気センサーに適している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかるトンネルジャンクション素子の断面模式図である。
【図2】本発明の具体例を示すトンネルジャンクション素子の断面図である。
【図3】第2高調波を使った界面スピン状態の観察方法の原理図である。
【図4】超格子CMR素子構成要素膜とレーザー光との配置関係を示す図である。
【図5】超格子CMR素子構成要素膜の第2高調波の偏光面の回転(データ)角度を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1,11 下部金属電極
2 A1-x x MO3-δ型酸化物膜(0≦x≦1、δは酸素欠損量)〔下部強磁性導電性電極〕
3,13 トンネル膜(非磁性膜)
3A 第1の膜(電荷供給膜)
3B 第2の膜(電気的絶縁膜)
3C 第3の膜(電荷供給膜)
4 A1-x x MO3-δ型酸化物膜(0≦x≦1、δは酸素欠損量)〔上部強磁性導電性電極〕
5,15 上部金属電極
12 下部強磁性導電性電極としての強磁性金属材料La0.6 Sr0.4 MnO3
13A 2単位層のLaMnO3
13B 5単位層のSrTiO3
13C 2単位層のLaMnO3
14 上部強磁性導電性電極としての強磁性金属膜材料La0.6 Sr0.4 MnO3
101 非磁性透明膜
102 強磁性膜
103 レーザー光
104 反射光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4