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明細書 :電界効果トランジスタ及び単一電子トランジスタ並びにそれを用いたセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4669213号 (P4669213)
公開番号 特開2005-079342 (P2005-079342A)
登録日 平成23年1月21日(2011.1.21)
発行日 平成23年4月13日(2011.4.13)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 電界効果トランジスタ及び単一電子トランジスタ並びにそれを用いたセンサ
国際特許分類 G01N  27/00        (2006.01)
G01N  27/414       (2006.01)
H01L  29/80        (2006.01)
H01L  29/06        (2006.01)
H01L  29/66        (2006.01)
FI G01N 27/00 J
G01N 27/30 301N
G01N 27/30 301U
G01N 27/30 301V
G01N 27/30 301W
H01L 29/80 A
H01L 29/06 601N
H01L 29/66 S
請求項の数または発明の数 11
全頁数 29
出願番号 特願2003-307798 (P2003-307798)
出願日 平成15年8月29日(2003.8.29)
審査請求日 平成18年4月5日(2006.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
発明者または考案者 【氏名】松本 和彦
【氏名】小島 厚彦
【氏名】長尾 哲
【氏名】加藤 尚範
【氏名】山田 豊
【氏名】長池 一博
【氏名】井福 康夫
【氏名】三谷 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100092978、【弁理士】、【氏名又は名称】真田 有
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 国際公開第02/048701(WO,A2)
特公平05-072979(JP,B2)
特表2003-507889(JP,A)
特開2000-187017(JP,A)
特公昭58-019984(JP,B2)
カーボンナノチューブを用いた量子効果ナノデバイスの集積化技術を開発,インターネット,2002年 9月13日,http://www.aist.go.jp/aist_j/press_relea,http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020913/pr20020913.html
Alexander Star et al.,Electronic Detection of Specific Protein Binding Using Nanotube FET Devices,NANO LETTERS,2003年 3月 5日,Vol.3 No.4,pp.459-463
松本和彦,位置制御成長カーボンナノチューブの作成とデバイス応用,応用物理,2003年 3月10日,Vol.72 No.3,pp.331-332
上村崇史 他,位置制御成長カーボンナノチューブへの欠陥誘起による電気特性変化,信学技報,2003年 2月,Vol.102 No.641,pp.7-11
松本和彦,カーボンナノチューブの新展開,生産研究,2003年 4月,Vol.55 No.4,pp.358-365
調査した分野 G01N 27/00-27/24
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた電界効果トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、
該電界効果トランジスタが、
該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、
該相互作用を該電界効果トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、
該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、
該他のゲートが、該基板の表面側に設けられたトップゲート又は該基板表面のチャネル側面に設けられたサイドゲートであり、
該チャネルが、カーボンナノチューブで構成され、
該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、
該チャネルが絶縁性部材で被覆されている
ことを特徴とする、センサ。
【請求項2】
基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた電界効果トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、
該電界効果トランジスタが、
該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、
該相互作用を該電界効果トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、
該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、
該他のゲートが、裏面側に設けられたバックゲートであり、
該チャネルが、カーボンナノチューブで構成され、
該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、
該チャネルと該相互作用感知ゲートとの間に、低誘電率の絶縁性材料の層が形成されている
ことを特徴とする、センサ。
【請求項3】
該カーボンナノチューブの電気特性が半導体的性質を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた単一電子トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、
該単一電子トランジスタが、
該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、
該相互作用を該単一電子トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、
該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、
該他のゲートが、該基板の表面側に設けられたトップゲート又は該基板表面のチャネル側面に設けられたサイドゲートであり、
該チャネルがカーボンナノチューブで構成され、
該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、
該チャネルが絶縁性部材で被覆されている
ことを特徴とする、センサ。
【請求項5】
基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた単一電子トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、
該単一電子トランジスタが、
該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、
該相互作用を該単一電子トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、
該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、
該他のゲートが、裏面側に設けられたバックゲートであり、
該チャネルがカーボンナノチューブで構成され、
該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、
該チャネルと該相互作用感知ゲートとの間に、低誘電率の絶縁性材料の層が形成されている
ことを特徴とする、センサ。
【請求項6】
該カーボンナノチューブに欠陥が導入されている
こと特徴とする、請求項4または5に記載のセンサ。
【請求項7】
該カーボンナノチューブの電気特性が金属的性質を有する
ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
該チャネルが、該基板から離隔した状態で上記のソース電極及びドレイン電極間に装架されている
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項9】
該基板が、絶縁性基板である
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項10】
該チャネルと該電圧を印加されるゲートとの間に、高誘電率の絶縁性材料の層が形成されている
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項11】
該相互作用感知ゲートに、該特定物質を固定化した
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタ及び単一電子トランジスタ、並びにそれを用いたセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(FET)及び単一電子トランジスタ(SET)は、ゲートに入力される電圧信号を、ソース電極あるいはドレイン電極から出力される電流信号に変換する素子である。ソース電極とドレイン電極との間に電圧を加えると、チャネルに存在する荷電粒子がソース電極とドレイン電極との間を電界方向に沿って移動し、ソース電極あるいはドレイン電極から電流信号として出力される。
【0003】
この際、出力される電流信号の強さは荷電粒子の密度に比例する。絶縁体を介してチャネルの上方、側面、あるいは下方などに設置したゲートに電圧を加えると、チャネルに存在する荷電粒子の密度が変化するため、これを利用して、ゲート電圧を変化させることにより電流信号を変化させることができる。なお以下、電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとを区別せずに述べる場合、単に「トランジスタ」という。
【0004】
現在知られている、トランジスタを用いた化学物質検出素子(センサ)は上に述べたトランジスタの原理を応用したものである。具体的なセンサの例としては、特許文献1に記載されているものが挙げられる。特許文献1には、トランジスタのゲートに検出すべき物質と選択的に反応する物質を固定化した構造を有するセンサが記載されている。検出すべき物質とゲートに固定化された物質との反応によるゲート上の表面電荷の変化により、ゲートにかかる電位が変化するため、チャネルに存在する荷電粒子の密度が変化する。これによって生じるトランジスタのドレイン電極あるいはソース電極からの出力信号の変化を読み取ることによって、検出すべき物質を検出することができる。
【0005】

【特許文献1】特開平10-260156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのようなセンサは、例えば極めて高感度の検出感度を要する抗原-抗体反応を利用した免疫センサなどへの応用を考えた場合、検出感度に技術的制限があり実用化に至っていない。
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、高感度の検出感度が要求される検出対象物質の検出を可能としたセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、トランジスタを用いて検出対象物質を検出するためのセンサにおいて、該トランジスタが、ソース電極、ドレイン電極、及びチャネルのほかに、該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、該相互作用を該トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有することにより、該検出対象物質を高感度に検出することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明のセンサは、基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた電界効果トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、該電界効果トランジスタが、該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、該相互作用を該電界効果トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、該他のゲートが、該基板の表面側に設けられたトップゲート又は該基板表面のチャネル側面に設けられたサイドゲートであり、該チャネルが、カーボンナノチューブで構成され、該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、該チャネルが絶縁性部材で被覆されていることを特徴とする(請求項1)。
また、本発明の別のセンサは、基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた電界効果トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、該電界効果トランジスタが、該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、該相互作用を該電界効果トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、該他のゲートが、裏面側に設けられたバックゲートであり、該チャネルが、カーボンナノチューブで構成され、該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、該チャネルと該相互作用感知ゲートとの間に、低誘電率の絶縁性材料の層が形成されていることを特徴とする(請求項2)。
これらのセンサによれば、トランジスタの伝達特性が最高感度となる状態で該相互作用の検出を行なうことができるので、センサを高感度にすることができる。
【0009】
また、本発明の別のセンサは、基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた単一電子トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、該単一電子トランジスタが、該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、該相互作用を該単一電子トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、該他のゲートが、該基板の表面側に設けられたトップゲート又は該基板表面のチャネル側面に設けられたサイドゲートであり、該チャネルが、カーボンナノチューブで構成され、該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており該チャネルが絶縁性部材で被覆されていることを特徴とする(請求項)。また、本発明の別のセンサは、基板と、該基板に設けられたソース電極及びドレイン電極と、上記のソース電極及びドレイン電極間の電流通路になるチャネルとを備えた単一電子トランジスタを有し、検出対象物質を検出するためのセンサであって、該単一電子トランジスタが、該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定するための相互作用感知ゲートと、該相互作用を該単一電子トランジスタの特性の変化として検出するべく電圧を印加されるゲートとを有し、該相互作用感知ゲートが、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであり、該他のゲートが、裏面側に設けられたバックゲートであり、該チャネルがカーボンナノチューブで構成され、該カーボンナノチューブが、室温において該ソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられており、該チャネルと該相互作用感知ゲートとの間に、低誘電率の絶縁性材料の層が形成されていることを特徴とする(請求項5)。これらのセンサによれば、トランジスタの伝達特性が最高感度となる状態で該相互作用の検出を行なうことができるので、センサを高感度にすることができる。
【0010】
また、該チャネルは、カーボンナノチューブで構成されることにより、センサの感度をより向上させることができる
【0011】
また、上記の電界効果トランジスタが有するカーボンナノチューブの電気特性は、半導体的性質を有することが好ましい(請求項)。
また、上記の単一電子トランジスタが有するカーボンナノチューブは、欠陥が導入されていることが好ましい(請求項)。これにより、カーボンナノチューブ中に量子ドット構造を形成することができる。
また、上記の単一電子トランジスタが有するカーボンナノチューブの電気特性は、金属的性質を有することが好ましい(請求項)。
【0012】
上記センサでは、該相互作用感知ゲート、電圧を印加されるゲートとは異なる他のゲートであることより、簡単な構成でトランジスタを構成することができる。
【0013】
また、上記センサでは、上記の他のゲートは、該基板の表面のチャネル上面に設けられたトップゲート、該基板表面のチャネル側面に設けられたサイドゲート、及び裏面側に設けられたバックゲートのいずれかであることから、検出時の操作簡単に行なうことができる。
【0014】
また、該チャネルは、該基板から離隔した状態で上記のソース電極及びドレイン電極間に装架されていることが好ましい(請求項)。これにより、相互作用感知ゲートとチャネルとの間の誘電率が低くなり、相互作用感知ゲートの電気容量を小さくできるため、感度よく検出することが可能となる。
【0015】
また、該チャネルは、室温において上記のソース電極及びドレイン電極の間に弛んだ状態で設けられていることにより、温度変化によってチャネルが破損する可能性を小さくすることができる。
【0016】
また、該基板は、絶縁性基板であることが好ましい(請求項9)。
また、該チャネル、絶縁性部材で被覆されている上記センサでは、トランジスタ内の電流が確実にチャネルを流れるようにすることができ、安定して検出をおこなうことができる。
【0017】
また、該チャネルと該相互作用感知ゲートとの間に、低誘電率の絶縁性材料の層が形成されているセンサでは、相互作用感知ゲートで生じる相互作用による電荷の変化が、より効率的にチャネルに伝達されるので、センサの感度を高めることができる。
【0018】
該チャネルと該電圧を印加されるゲートとの間には、高誘電率の絶縁性材料の層が形成されていることが好ましい(請求項10)。これにより、ゲートのゲート電圧により、トランジスタの伝達特性をより効率よく変調させることができ、センサの感度を高めることができる。
また、本発明のセンサは、該相互作用感知ゲートに、該特定物質を固定化したものも含む(請求項11)。
【発明の効果】
【0031】
本発明のセンサによれば、検出対象物質を高感度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。なお、後で詳細に説明するが、以下の第1~第5実施形態において単に「トランジスタ」と記載した場合、電界特性トランジスタと単一電子トランジスタとを区別せずに指す用語であるとする。また、下記の各実施形態間において、実質同一の部分には同じ符号を付して説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1(a),(b)は、本発明の第1実施形態としてのセンサを説明する図である。
図1(a)に示すように、トランジスタ1Aの基板2は絶縁性の素材で形成されていて、その上面(図中上側の面)には、全面に渡って絶縁性で且つ低誘電率の酸化シリコンの層(以下適宜、「低誘電層」という)3が設けられている。また、低誘電層3の表面には、金で形成されたソース電極4及びドレイン電極5が設置されていて、ソース電極4及びドレイン電極5の間にはカーボンナノチューブで形成されたチャネル6が装架されている。
【0034】
チャネル6は、ソース電極4とドレイン電極5との間を繋ぐ橋渡し状に設置されることによりソース電極4とドレイン電極5との間に装架され、低誘電層3表面から隔離されている。つまり、チャネル6はソース電極4との接続部及びドレイン電極5との接続部の2点でトランジスタ1Aに固定され、他の部分は空中に浮いた状態とされている。さらに、図1(b)に示すように、チャネル6は所定角度だけ弛んだ状態で装架されている。ここで、チャネル6が弛んだ所定角度とは、例えば温度変化により基板2が変形するなどによりソース電源4及びドレイン電極5の間の距離が変動した場合に、その変動によりチャネル6にかかる引張応力又は圧縮応力を吸収できる程度である。なお、通常は、センサを使用する温度条件下においてチャネル6が所定角度だけ弛むようにされ、センサを使用する温度周辺での温度変化により生じる応力を吸収できるようにする。ただし、本実施形態では室温においてチャネル6が所定角度だけ弛むよう設定されている。
【0035】
低誘電層3表面のチャネル6に対向する位置には、金で形成されたサイドゲート7が設置されている。サイドゲート7はチャネル6にゲート電圧を印加するために設置されたものである。ソース電極4、ドレイン電極5、及び、サイドゲート7は、図示しない外部電源に接続されていて、この外部電源から電圧が印加されるよう設定されている。さらに、ソース電極4、ドレイン電源5、及び、サイドゲート7それぞれを流れる電流及びそれぞれに印加される電圧は、図示しない測定器によって測定されている。
【0036】
本実施形態のセンサに用いるトランジスタ1Aでは、さらに、基板1Aの裏面(図中下側面)、即ち、低誘電層3と逆側の面に、相互作用感知ゲートとして金で形成されたバックゲート(他のゲート)9が全面に亘って設置されている。このバックゲート9には、本実施形態のセンサを用いて検出する検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質(本実施形態では、抗体)10が固定化されている。
また、バックゲート9には、外部からなんら電圧が印加されないようになされている。
【0037】
本実施形態のセンサは以上のように構成されているので、測定の開始前、あるいは測定の最中に、サイドゲート7に印加するゲート電圧を調整して、トランジスタ1Aの伝達特性が最高感度を有する最適なゲート電圧を調べる。最適なゲート電圧が判明すれば、サイドゲート7に印加するゲート電圧を最適なゲート電圧に設定する。
【0038】
その後、ゲート電圧を最適なゲート電圧、若しくは最適なゲート電圧の近傍に保ちながら、検出すべき検出対象物質を含む試料を特定物質と相互作用させる。なお、最適なゲート電圧の近傍とは、検出対象物質の検出に際し、トランジスタの特性値の変動が検出対象物質を検出するために充分な大きさになるものと期待できる程度の範囲をいう。試料が検出対象物質を含んでいれば、特定物質と検出対象物質との相互作用によってバックゲート9の電位が変動するので、ソース電極とドレイン電極間に流れる電流の電流値、しきい値電圧、ドレイン電圧のゲート電圧に対する傾き、また次に挙げるものは単一電子トランジスタ特有の特性であるが、クーロン振動のしきい値、クーロン振動の周期、クーロンダイアモンドのしきい値、クーロンダイアモンドの周期などのトランジスタの特性値にその相互作用に起因する変動が生じる。この変動を検出することにより、検出対象物質と特定物質との相互作用を検出することができ、ひいては試料中の検出対象物質を検出することが可能となる。
【0039】
以上のように、本実施形態のセンサによれば、サイドゲート7を用いてトランジスタ1Aの伝達特性が最高感度を有する状態となるように、即ち、トランジスタ1Aの相互コンダクタンスが最大となる状態になるようにトランジスタ1Aを設定することができる。これにより、特定物質と検出対象物質との間の相互作用によって生じるゲート電位の変化がチャネル6の荷電粒子の密度変化へ与える効果を最大にすることが可能となる。その結果、特定物質と検出対象物質との間の相互作用を、トランジスタ1Aの特性の大きな変化として測定することが可能となる。即ち、本実施形態のセンサによれば、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用に起因するトランジスタの特性の変化量を増幅させて、センサを高感度にすることができるのである。
【0040】
また、チャネル6としてナノチューブ状構造体であるカーボンチューブを用いたので、更に高感度に検出対象物質を検出することができる。一般に、トランジスタを用いたセンサの検出感度の限界は、トランジスタのゲートの電気容量(以下適宜、「ゲート容量」という)に関係している。ゲート容量が小さいほど、ゲートの表面電荷の変化を大きなゲート電位の変化として捉えることができ、センサの検出感度が向上するのである。ゲート容量はチャネルの長さLとチャネルの幅Wとの積L×Wに比例するので、ゲート容量の減少にはチャネルの微細化が効果的である。本実施形態に用いたようなナノチューブ状構造体は非常に微細であるので、上記の理由により、非常に高感度に検出対象物質を検出することができる。
【0041】
また、相互作用感知ゲートとしてバックゲート9を用い、バックゲート9に抗体を固定しているので、簡単な構成で、高感度な検出を行なうことができる。特に、バックゲート9は基板1Aの裏面に設けられているので、検出時の操作を簡単に行なうことができる。
【0042】
また、チャネル6がソース電極4とドレイン電極5との間に弛んで装架されているので、検出時や保存時に温度変化があっても、チャネル6が温度変化による変形によって破損する可能性を低くすることができる。
【0043】
また、基板2を絶縁性基板とすることにより、バックゲート9における相互作用を確実に検出することができる。
【0044】
また、チャネル6とバックゲート(相互作用感知ゲート)9との間に、低誘電層3が形成されているので、これにより、バックゲート9における相互作用による表面電荷の変化が、より効率的にチャネル6内の電荷密度の変化として伝達され、トランジスタ1Aの特性の大きな変化として現れる。これにより本実施形態のセンサの感度をより向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態のセンサを用いれば、実時間測定も可能であり、物質間相互作用のモニタリングできる。
【0046】
また、例えば、従来の他の検出原理に基づく免疫反応を利用した検出機器は、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイなど標識体を用いたものは、検出感度としてはほぼ満足のできる状態にあった。しかしながら、それらは専用の施設、機器システムが必要であり、検査センターや病院の検査室で専門家である臨床検査技師が測定しなければならなかった。したがって開業医等では、検査センターへの外注により検査を実施しているため迅速な検査結果を得ることはできない。また、反応時間が長いため緊急検査に対応できるものは少ない。これらは、現在の免疫測定法が標識体を用いるものであるため、反応工程に洗浄等の複雑な操作を必要することによる。
【0047】
また、非標識法による免疫センサとしては、表面プラズモン共鳴(SPR)など種々の検出原理に基づくものが開発されているが、いずれも研究機器として利用されているにすぎず、臨床検査用途には感度が充分ではなく実用化には至っていない。また、上記の免疫センサは光学的検出法を用いるため、装置全体が大型であるという課題もあった。
しかし、本実施形態のセンサを用いれば、センサの小型化、検出の迅速化、操作の簡便等の利点を得ることができる。
【0048】
[第2実施形態]
図2(a),(b)は、本発明の第2実施形態としてのセンサを説明する図である。
図2(a)に示すように、本発明の第2実施形態としてのセンサを構成するトランジスタ1Bは、第1実施形態において説明したトランジスタ1Aと同様の構成を有している。
【0049】
さらに、本実施形態のトランジスタ1Bは、低誘電層3表面の全面に亘って、絶縁性且つ高誘電率の感光性樹脂の層(以下適宜、「高誘電層」という)11が形成されている。この高誘電層11は、チャネル6の全体と、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7の側面とを覆うように形成されているが、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7の上側(図中上方)の面は被覆していない。なお、図2(a),(b)中では、高誘電層11は二点鎖線で示す。
【0050】
本実施形態のセンサは上記のように構成されているので、第1実施形態のセンサと同様にして、トランジスタ1Bの伝達特性が最高感度を有する状態となるよう設定することにより、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用を、トランジスタ1Bの特性の大きな変化として測定することができる。これにより、本実施形態のセンサの感度を向上させることが可能になる。
【0051】
また、上記第1実施形態と同様に、次のような効果を奏することができる。即ち、チャネル6としてカーボンナノチューブを用いたので、センサをさらに高感度にすることができる。また、相互作用感知ゲートとしてバックゲート9を用いているので、簡単な構成、及び、簡単な操作で、高感度な検出を行なうことができる。また、基板2が絶縁性基板であるので、検出対象物質と特定物質との相互作用を確実に検出することができる。また、チャネル6とバックゲート9との間に、低誘電層3が形成されているので、これにより、バックゲート9における相互作用による表面電荷の変化を、より効率的にチャネル6に伝達することができ、センサの感度をより向上させることができる。また、チャネル6が弛んでいるため、温度変化等による長さの変化に起因する破損を防ぐことができる。なお、本実施形態ではチャネル6の周囲には高誘電層11が充填されているが、高誘電層11を構成する感光樹脂(フォトレジスト)はチャネル6の変形を許容できる程度に柔らかい物質であるので、上記のように破損を防ぐことができるのである。
【0052】
さらに、本実施形態では、チャネル6とサイドゲート7との間に、高誘電率の絶縁性材料の層である高誘電層11を有しているので、サイドゲート7のゲート電圧印加により、トランジスタ1Bの伝達特性をより効率よく変調させることができ、センサの感度をより向上させることができる。
【0053】
また、チャネル6が絶縁性の高誘電層11で被覆されているので、チャネル6内の荷電粒子がチャネル6外部に漏れること、及び、ソース電極やドレイン電極以外からチャネル6外部の電荷粒子がチャネル6に侵入することを防止することができる。これにより、特定物質と検出対象物質との相互作用を安定して検出することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態のセンサを用いれば、実時間測定も可能であり、物質間相互作用のモニタリングできる。さらに集積化が容易なため、同時多発的に起こる物質間相互作用の現象を1度に測定ができる。
また、本実施形態のセンサを用いれば、センサの小型化、検出の迅速化、操作の簡便等の利点を得ることができる。
【0055】
[第3実施形態]
図3(a),(b)は、本発明の第3実施形態としてのセンサを説明する図である。
図3(a)に示すように、第1実施形態と同様、本実施形態のセンサを構成するトランジスタ1Cは、絶縁性の素材で形成された基板2、絶縁性で且つ低誘電率の低誘電層3、金で形成されたソース電極4及びドレイン電極5を有していて、ソース電極4及びドレイン電極5の間にはカーボンナノチューブで形成されたチャネル6が装架されている。
【0056】
基板2の裏面には、トランジスタ1Cにゲート電圧を印加するバックゲート12が全面に形成されている。また、バックゲート12は図示しない電源に接続され、その電源により電圧を印加される。なお、バックゲート12に印加される電圧は、図示しない測定器によって測定可能となっている。
【0057】
低誘電層3表面の、チャネル6中間部から図中奥方向の縁部にかけて、低誘電率の絶縁材である酸化シリコンの膜(絶縁膜)13が形成されている。
チャネル6はこの絶縁膜13を横方向に貫通していている。言い換えれば、チャネル6の中間部は絶縁膜13によって被覆されている。
【0058】
また、絶縁膜13の上側表面には、金で形成された相互作用感知ゲートであるトップゲート14が形成されている。即ち、トップゲート14は絶縁膜13を介して低誘電層3上に形成されていることになる。トップゲート14には、外部から電圧は印加されないよう構成されている。さらに、トップゲート14の上側表面には特定物質である抗体10が固定されている。
【0059】
低誘電層3の表面には、全面に亘って、絶縁体21が形成されている。この絶縁体21は、チャネル6の絶縁膜13に被覆されていない部分全体と、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁膜13、及び、トップゲート14のそれぞれの側面とを覆うように形成されているが、ソース電極4、ドレイン電極5、及びトップゲート14の上側の面は被覆していない。なお、図3(a),(b)中、絶縁体21は二点鎖線で示す。
【0060】
本発明の第3実施形態としてのセンサは、上記のように構成されているので、第1実施形態のセンサと同様に、トランジスタ1Cの伝達特性が最高感度を有する状態となるよう設定することにより、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用を、トランジスタ1Cの特性の大きな変化として測定することができ、センサを高感度にすることができる。
また、上記第1実施形態と同様に、チャネル6としてカーボンナノチューブを用いたので、センサをさらに高感度にすることができる。また、基板2が絶縁性基板であるので、検出対象物質と特定物質との相互作用を確実に検出することができる。
【0061】
本実施形態では、相互作用感知ゲートとしてトップゲート14を用いているので、簡単な構成、及び、簡単な操作で、高感度な検出を行なうことができる。
また、チャネル6とトップゲート14との間に、低誘電率の絶縁膜13が形成されているので、これにより、トップゲート14における相互作用による表面電荷の変化を、より効率的にチャネル6に伝達することができ、センサの感度をより向上させることができる。
【0062】
また、チャネル6が絶縁体21で被覆されているので、チャネル6内の荷電粒子がチャネル6外部に漏れること、及び、ソース電極やドレイン電極以外からチャネル6外部の電荷粒子がチャネル6に侵入することを防止することができる。これにより、特定物質と検出対象物質との相互作用を安定して検出することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態のセンサを用いれば、実時間測定も可能であり、物質間相互作用のモニタリングできる。さらに集積化が容易なため、同時多発的に起こる物質間相互作用の現象を1度に測定ができる。
また、本実施形態のセンサを用いれば、センサの小型化、検出の迅速化、操作の簡便等の利点を得ることができる。
【0064】
[第4実施形態]
図4(a),(b)は、本発明の第4実施形態としてのセンサを説明する図である。
図4(a)に示すように、第1実施形態と同様、本実施形態のセンサを構成するトランジスタ1Dは、絶縁性の素材で形成された基板2、絶縁性で且つ低誘電率の低誘電層3、金で形成されたソース電極4及びドレイン電極5を有していて、ソース電極4及びドレイン電極5の間にはカーボンナノチューブで形成されたチャネル6が装架されている。また、サイドゲート7を有している。
【0065】
さらに、本実施形態のトランジスタ1Dは、低誘電層3上におけるサイドゲート7に対して反対側の縁部に、相互作用感知ゲートとしてサイドゲート15を備えていて、その表面には抗体10が固定されている。また、サイドゲート15は、外部から電圧が印加されないよう構成されている。
【0066】
また、図4(b)に示すように、本実施形態のトランジスタ1Dは、低誘電層3の表面が全面に亘って、絶縁体21が形成されている。この絶縁体21は、チャネル6の全体と、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7,15のそれぞれの側面とを覆うように形成されているが、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7,15の上側(図中上方)の面は被覆していない。なお、図4(a),(b)中では、絶縁体21は二点鎖線で示す。
【0067】
本実施形態のセンサは、上記のように構成されているので、第1実施形態のセンサと同様にして、トランジスタ1Dの伝達特性が最高感度を有する状態となるよう設定することにより、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用を、トランジスタ1Dの特性の大きな変化として測定することができる。これにより、本実施形態のセンサの感度を向上させることが可能になる。
【0068】
また、上記第1実施形態と同様に、次のような効果を奏することができる。即ち、チャネル6としてカーボンナノチューブを用いたので、センサをさらに高感度にすることができる。また、相互作用感知ゲートとしてサイドゲート15を用いているので、簡単な構成で、高感度な検出を行なうことができる。また、基板2が絶縁性基板であるので、検出対象物質と特定物質との相互作用を確実に検出することができる。
【0069】
また、チャネル6が絶縁性の絶縁体21で被覆されているので、チャネル6内の荷電粒子がチャネル6外部に漏れること、及び、ソース電極4やドレイン電極5以外からチャネル6外部の電荷粒子がチャネル6に侵入することを防止することができる。これにより、特定物質と検出対象物質との相互作用を安定して検出することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態のセンサを用いれば、実時間測定も可能であり、物質間相互作用のモニタリングできる。さらに集積化が容易なため、同時多発的に起こる物質間相互作用の現象を1度に測定ができる。
また、本実施形態のセンサを用いれば、センサの小型化、検出の迅速化、操作の簡便等の利点を得ることができる。
【0071】
[第5実施形態]
図5(a),(b)は、本発明の第5実施形態を示す図である。
図5に示すように、本発明の第5実施形態としてのトランジスタ1Eは、バックゲート9及び抗体10を有していないことのほかは、第1実施形態で説明したトランジスタ1Aと同様の構成となっている。
【0072】
即ち、図5(a)に示すように、トランジスタ1Eの基板2は絶縁性の素材で形成されていて、その上面(図中上側の面)には、全面に渡って絶縁性で且つ低誘電率の酸化シリコンの層(低誘電層)3が設けられている。また、低誘電層3の表面には、金で形成されたソース電極4及びドレイン電極5が設置されていて、ソース電極4及びドレイン電極5の間にはカーボンナノチューブで形成されたチャネル6が装架されている。
【0073】
チャネル6は、ソース電極4とドレイン電極5との間を繋ぐ橋渡し状に設置されることによりソース電極4とドレイン電極5との間に装架され、低誘電層3表面から隔離されている。つまり、チャネル6はソース電極4との接続部及びドレイン電極5との接続部の2点のみでトランジスタ1Aに固定され、他の部分は空中に浮いた状態とされている。さらに、図5(b)に示すように、チャネル6は所定角度だけ弛んだ状態で装架されている。ここで、チャネル6が弛んだ所定角度とは、例えば温度変化により基板2が変形するなどによりソース電源4及びドレイン電極5の間の距離が変動した場合に、その変動によりチャネル6にかかる引張応力又は圧縮応力を吸収できる程度である。なお通常は、センサを使用する温度条件下においてチャネル6が所定角度だけ弛むようにされ、センサを使用する温度周辺での温度変化により生じる応力を吸収できるようにする。ただし、本実施形態では室温においてチャネル6が所定角度だけ弛むよう設定されている。
【0074】
低誘電層3表面のチャネル6に対向する位置には、金で形成されたサイドゲート7が設置されている。サイドゲート7はチャネル6にゲート電圧を印加するために設置されたものである。ソース電極4、ドレイン電極5、及び、サイドゲート7は、図示しない外部電源に接続されていて、この外部電源から電圧が印加されるよう設定されている。
【0075】
本実施形態のトランジスタ1Eは、以上のように構成されているので、チャネル6がソース電極4とドレイン電極5との間に弛んで装架されていることにより、検出時や保存時に温度変化があっても、チャネル6が温度変化による変形によって破損する可能性を低くすることができる。
【0076】
また、本実施形態では基板2が絶縁性基板であるので、基板2の誘電率を低くすることができ、ゲート容量を低下させることができるので、トランジスタ1Eの感度を向上させることができる。
【0077】
[第6実施形態]
図6(a),(b)は本発明の第6実施形態を示す図である。
図6に示すように、本発明の第6実施形態としてのトランジスタ1Fは、バックゲート9及び抗体10を有していないことのほかは、第2実施形態で説明したトランジスタ1Bと同様の構成となっている。
【0078】
即ち、図6(a)に示すように、本発明の第6実施形態としてのセンサを構成するトランジスタ1Fは、第5実施形態において説明したトランジスタ1Eと同様の構成を有している。
【0079】
さらに、本実施形態のトランジスタ1Fは、低誘電層3の表面が全面に亘って、絶縁性且つ高誘電率の感光性樹脂の層(高誘電層)11が形成されている。この高誘電層11は、チャネル6の全体と、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7の側面とを覆うように形成されているが、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート7の上側(図中上方)の面は被覆していない。なお、図6(a),(b)中では、高誘電層11は二点鎖線で示す。
【0080】
本実施形態のセンサは上記のように構成されている。したがって、本実施形態では、チャネル6とサイドゲート7との間に、高誘電率の絶縁性材料の層である高誘電層11を有しているので、サイドゲート7のゲート電圧印加により、トランジスタ1Eの伝達特性をより効率よく変調させることができる。
【0081】
また、チャネル6が絶縁性の高誘電層11で被覆されているので、チャネル6内の荷電粒子がチャネル6外部に漏れること、及び、ソース電極やドレイン電極以外からチャネル6外部の電荷粒子がチャネル6に侵入することを防止することができる。これにより、トランジスタ1Eの挙動を安定させることができる。
【0082】
[その他]
以上、第1~第6実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、適宜変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態を任意に組み合わせて実施しても良い。
また、ソース電極、ドレイン電極、ゲート、チャネル、及び、相互作用感知ゲートは、それぞれ適宜、複数形成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態ではセンサにおいてトランジスタが露出した構成で説明したが、上記トランジスタを適当なハウジング内に設けたり、他の装置に設置したりしてもよい。
また、上記実施形態ではセンサに特定物質を固定した例を示して説明したが、上記センサは製造段階や出荷段階では特定物質を固定されず、ユーザが特定物質を固定化するようなものであってもよい。即ち、本発明の実施形態としてのセンサは、特定物質が固定化されていないものも含むものとして理解すべきである。
また、上記実施形態では相互作用感知ゲートとしてトップゲート、サイドゲート、及び、バックゲートを用いたが、相互作用感知ゲートを上記ゲート以外の他のゲートで形成してもよく、また、さらにゲート以外の他の部材で構成してもよいことは言うまでも無い。
【0084】
また、上記実施形態ではチャネル6を弛ませて形成したが、もちろん弛ませず柱状に形成しても良い。
また、上記実施形態ではチャネル6はソース電極4とドレイン電極5との間に装架されているが、チャネル6は基板2や低誘電層3などに接触して設けられても良い。また、基板2や低誘電層3にチャネル6が接触している状態であっても、チャネル6が弛んだ状態であれば、温度変化による破損の可能性を低下させることは可能である。
なお、相互作用感知ゲートには電圧を印加することもできる。
【0085】
[構成要素]
続いて、上記の各実施形態の構成要素について、詳細に説明する。
上述したように、上記実施形態において、「トランジスタ」とは、電界効果トランジスタ及び単一電子トランジスタのいずれかのことを指す。
【0086】
電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとは、その基本構造は共通しているが、両者は、電流通路となるチャネルが異なっている。具体的には、単一電子トランジスタのチャネルは量子ドット構造を有し、電界効果トランジスタのチャネルは量子ドット構造を有さない。したがって、両者は構造的には量子ドット構造の有無により区別することができる。
【0087】
<基板>
基板(上記実施形態では、符号2で示したもの)は、絶縁性基板、あるいは絶縁された半導体基板であれば他に制限は無く、任意の素材で形成されたものを用いることができる。但し、センサとして用いる場合、絶縁性基板、あるいは、表面を絶縁性基板を構成する素材で被覆した基板であることが好ましい。絶縁性基板を用いた場合、半導体基板に比べ、誘電率が低いために浮遊容量を低減することができ、そのためバックゲートを相互作用感知ゲートとした場合に相互作用の検知感度を高めることができる。
【0088】
絶縁性基板は、絶縁体で形成された基板である。なお、本明細書においては、特に断らない限り電気絶縁体のことを意味するものとする。絶縁性基板を形成する絶縁体の具体例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウム、アクリル樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)等が挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いても良い。
【0089】
半導体基板は、半導体で形成された基板である。半導体基板を形成する半導体の具体例としては、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、インジウム燐、炭化シリコン等が挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いても良い。
さらに、半導体基板の上に絶縁膜を形成して絶縁する場合は、絶縁膜を形成する絶縁体の具体例としては、上記の絶縁性基板を形成する絶縁体と同様のものが挙げられる。この場合、半導体基板は後述するゲートとしても作用させることができる。
【0090】
基板の形状は任意であるが、通常は平板状に形成する。また、その寸法についても特に制限は無いが、基板の機械的強度を保つため100μm以上であることが好ましい。
【0091】
<ソース電極,ドレイン電極>
ソース電極(上記実施形態では、符号4で示したもの)は、上記トランジスタのキャリアを供給できる電極であれば他に制限は無い。また、ドレイン電極(上記実施形態では、符号5で示したもの)は、上記トランジスタのキャリアを受け取ることができる電極であれば、他に制限は無い。
ソース電極及びドレイン電極はそれぞれ任意の導体で形成することができ、具体例としては、金、白金、チタン、炭化チタン、タングステン、アルミニウム、モリブデン、クロムケイ化タングステン、窒化タングステン、多結晶シリコンなどが挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いても良い。
【0092】
<ゲート>
ゲート(上記実施形態では、符号7,12で示したもの)は、上記トランジスタのチャネル内の荷電粒子の密度を制御できるものであれば制限は無く、任意のものを用いることができる。通常、ゲートはチャネルから絶縁された導体を有して構成され、一般的には導体および絶縁体から構成される。
ゲートを構成する導体の具体例としては、金、白金、チタン、炭化チタン、タングステン、ケイ化タングステン、窒化タングステン、アルミニウム、モリブデン、クロム、多結晶シリコンなどが挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いても良い。
【0093】
ゲートを配置する位置は、チャネルに対してゲート電圧を印加することができる位置であれば他に制限は無く、例えば基板の上方に配設してトップゲートとしてもよく、基盤のチャネルと同じ側の面上に配設してサイドゲートとしてもよく、基板の裏面に配設してバックゲートとしてもよい。
【0094】
さらに、ゲートの中でもトップゲート及びサイドゲートは、チャネルの表面に絶縁膜を介してゲートを形成してもよい。ここでいう絶縁膜としては、絶縁性の素材であれば特に制限は無いが、具体例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウムなどの無機材料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)などの高分子材料が挙げられる。
【0095】
<相互作用感知ゲート>
相互作用感知ゲート(上記実施形態では、符号9,14,15で示したもの)は、検出対象物質と相互作用をする特定物質を固定することができるものであればよいため、固定部材ということができる。また、相互作用感知ゲートは外部から電圧を印加されないものが好ましい。したがって、相互作用感知ゲートは、電圧非印加型固定部材ということもできる。また、相互作用感知ゲートは、例えば、導体、半導体、絶縁体など、様々なものを用いることができる。但し通常は、ソース電極やドレイン電極と同様に導体を用いる。したがって、相互作用感知ゲートは電極構造部材ということもでき、電圧が印加されないことと併せて電圧非印加型電極構造部材ということもできる。相互作用感知ゲートを形成する導体の具体例としては、金、白金、チタン、炭化チタン、タングステン、ケイ化タングステン、窒化タングステン、アルミニウム、モリブデン、クロム、多結晶シリコンなどが挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いても良い。
【0096】
また、相互作用感知ゲートとしては、トランジスタにおいてゲート電圧の印加に用いられていないゲートを用いることが好ましい。具体的には、トップゲート、サイドゲート、及びバックゲートから選ばれるいずれかであることが好ましく、トップゲート及びバックゲートのいずれかであることがより好ましい。トップゲートを相互作用感知ゲートとすると、一般にチャネルとトップゲートとの距離はチャネルと他のゲートとの距離に比べて近いため、センサの感度を高めることができる。また、バックゲートを相互作用感知ゲートとした場合は、相互作用感知ゲートに特定物質を簡単に固定することができる。
【0097】
<チャネル>
チャネル(上記実施形態では、符号6で示したもの)は、ソース電極及びドレイン電極の間の電流の通路となりうるものであり、公知のチャネルを適宜用いることができる。
【0098】
チャネルは、絶縁性部材により被覆して、パッシベーションあるいは保護することが望ましい。この絶縁性部材としては、絶縁性の部材であれば任意の部材を用いることが可能であるが、具体例としては、フォトレジスト(感光性樹脂)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)などの高分子材料、アミノプロピルエトキシシランなどの自己組織化膜、PER-フルオロポリエーテル、フォンブリン(商品名)などのルブリカント、フラーレン類化合物、あるいは酸化シリコン、弗化ケイ酸塩ガラス、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)、MSQ(Methyl Lisesquioxane)、多孔質シリカ、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウム、ダイヤモンド薄膜などの無機物質を用いることができる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いてもよい。
【0099】
また、相互作用感知ゲートとチャネルとの間には、絶縁性であってかつ低誘電率の材料の層(低誘電率層)が設けられていることが好ましい。さらに、相互作用感知ゲートからチャネルまでの間が全体に(即ち、相互作用感知ゲートからチャネルまでの間にある層がすべて)低誘電率の性質を有することがより好ましい。ここで、低誘電率とは、比誘電率が4.5以下であることを意味する。
【0100】
低誘電率層を構成する材料は、上記のように絶縁性であり低誘電率の材料であれば他に制限は無い。その具体例としては、二酸化シリコン、弗化ケイ酸塩ガラス、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)、MSQ(Methyl Lisesquioxane)、多孔質シリカ、ダイヤモンド薄膜などの無機材料、ポリイミド、Parylene-N、Parylene-F、弗化ポリイミドなどの有機材料が挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いてもよい。
【0101】
つまり、チャネルから相互作用感知ゲートにかけての間が絶縁性で且つ低誘電率であることにより、相互作用感知ゲート上で生じた表面電荷の変化が、チャネル内の電荷密度の変化としてより効率的に伝達されるのである。これにより、上記相互作用をトランジスタの大きな出力特性の変化として検出することができるので、上記のトランジスタをセンサに用いた場合に、センサの感度をより向上させることができる。
【0102】
また、トランジスタにゲート電圧を印加するゲートとチャネルとの間には、絶縁性であってかつ高誘電率の材料の層(高誘電層)が形成されていることが好ましい。さらに、ゲートからチャネルまでの間が全体に(即ち、ゲートからチャネルまでの間にある層がすべて)高誘電率の性質を有することがより好ましい。ここで、高誘電率とは、比誘電率が4.5以上であることを意味する。
【0103】
高誘電層を形成する材料は、上記のように絶縁性を有して且つ高誘電率のものであれば他に制限は無い。その具体例としては、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの無機物質、高誘電率特性を有する高分子材料などが挙げられる。また、これらは任意の種類及び比率で組み合わせて用いてもよい。
つまり、ゲートからチャネルにかけての間が絶縁性で且つ高誘電率であること高誘電層を形成することにより、ゲートの電圧印加により、トランジスタの伝達特性をより効率よく変調させることができるのである。これにより、上記のトランジスタをセンサとして用いた場合、センサとしての感度をより向上させることができる。
【0104】
次に、電界効果トランジスタのチャネル(以下適宜、「FETチャネル」という)と、単一電子トランジスタのチャネル(以下適宜、「SETチャネル」という)とについて、それぞれ説明する。なお、上述のように電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとはチャネルによって区別することができ、上記各実施形態において説明した各トランジスタが、FETチャネルを有する場合はそのトランジスタは電界効果トランジスタであり、SETチャネルを有する場合はそのトランジスタは単一電子トランジスタと認識すべきである。
【0105】
FETチャネルは、電流の通路となりうるものであり、公知のチャネルを適宜用いることができるが、通常はその大きさが微細であることが好ましい。
このような微細なチャネルの例としては、例えばナノチューブ状構造体が挙げられる。ナノチューブ状構造体とは、チューブ状の構造体であって、その長手方向に直交する断面の直径が0.4nm以上50nm以下のものをいう。なお、ここでチューブ状、とは、構造体の長手方向の長さと、これに垂直な方向のうち最も長い一方向の長さとの比が10以上10000以下の範囲にある形状を指し、ロッド状(断面形状が略円形)、リボン状(断面形状が扁平な略方形)等の各形状を含む。
【0106】
ナノチューブ状構造体は電荷輸送体として用いることができ、直径が数ナノメートルの一次元量子細線構造を有するため、従来のセンサに用いられていた電界効果トランジスタの場合に比べてゲート容量は著しく低減する。したがって、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用により生じるゲート電位の変化は極めて大きくなり、チャネルに存在する荷電粒子の密度の変化は著しく大きくなる。このことにより検出物質の検出感度は劇的に向上する。
【0107】
ナノチューブ状構造体の具体例としては、カーボンナノチューブ(CNT)、ボロンナイトライドナノチューブ、チタニアナノチューブ等が挙げられる。従来の技術では、半導体微細加工技術を用いても、10nm級のチャネルの形成は困難であり、それによりセンサーとしての検出感度も制限されていたが、これらのナノチューブ状構造体を用いることにより、従来よりも微細なチャネルを形成することができる。
【0108】
ナノチューブ状構造体は、そのカイラリティに応じて半導体的な電気的性質及び金属的な電気的性質の両方を示すが、半導体的FETチャネルに用いる場合、ナノチューブ状構造体は、その電気的性質として半導体的性質を有することがより望ましい。
【0109】
一方、SETチャネルもFETチャネルと同様、電流の通路となりうるものであり、公知のチャネルを適宜用いることができ、また、通常はその大きさが微細であることが好ましい。さらに、SETチャネルもFETチャネルと同様に、ナノチューブ状構造体を用いることができ、具体例としてカーボンナノチューブ(CNT)、ボロンナイトライドナノチューブ、チタニアナノチューブ等を使用することができることも同様である。
【0110】
しかし、FETチャネルと異なる点としては、SETチャネルは量子ドット構造を有する点が挙げられる。SETチャネルは量子ドット構造を有する公知の物質を任意の用いることができるが、通常は、欠陥を導入したカーボンナノチューブを用いる。具体的には、欠陥と欠陥との間に通常0.1nm以上4nm以下の量子ドット構造を有するカーボンナノチューブを用いる。これらは、欠陥を有さないカーボンナノチューブに水素、酸素、アルゴンなどの雰囲気ガス中での加熱、あるいは酸溶液等中での煮沸などの化学的処理を施すことによって作製することができる。
【0111】
即ち、ナノチューブ状構造体に欠陥を導入することにより、ナノチューブ状構造体内に欠陥と欠陥の間に領域が数ナノメートルの大きさの量子ドット構造が形成され、さらにゲート容量は低減する。量子ドット構造を有するナノチューブ状構造体においては量子ドット構造内への電子の流入が制限されるクーロンブロッケイド現象が生じるため、そのようなナノチューブ状構造をチャネルに用いれば単一電子トランジスタが実現される。
【0112】
例えば従来のシリコン系MOSFET(メタル・オキサイド・セミコンダクター・電界効果トランジスタ)のゲート容量は10-15F(ファラッド)程度であり、これに対して上記の欠陥を導入したナノチューブ状構造体を用いた単一電子トランジスタのゲート容量は10-19F~10-20F程度である。このように、単一電子トランジスタでは従来のシリコン系MOSFETに比べて、ゲート容量が1万~10万分の一程度にまで減少する。
【0113】
その結果、このようなナノチューブ状構造体をチャネル用いた単一電子トランジスタを形成すれば、従来のナノチューブ状構造体を用いない電界効果トランジスタに比べ、ゲート電位の変化を極めて大きなものとすることができ、チャネルに存在する荷電粒子の密度の変化は著しく大きくなる。このことにより、検出物質の検出感度を大きく向上させることができるのである。
【0114】
また、SETチャネルがFETチャネルと異なるもう一つの点としては、ナノチューブ状構造体をSETチャネルとして用いる場合、それらは電気的特性として金属的性質を有することが好ましい。なお、ナノチューブ状構造体が金属的か半導体的かを確認する手法の例としては、ラマン分光法でカーボンナノチューブのカイラリティを決定することにより確認する手法や、走査トンネル顕微鏡(STM)分光法を用いてカーボンナノチューブの電子状態密度を測定することにより確認する手法が挙げられる。
【0115】
<検出対象物質及び特定物質>
検出対象物質については特に制限は無く、任意の物質を用いることができる。また、特定物質(上記実施形態では、符号10で示したもの)は、検出対象物と選択的に相互作用できるものであれば特に制限は無く、任意の物質を用いることができる。それらの具体的としては、酵素、抗体、レクチン等のタンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウィルス若しくは、細胞、生体組織やこれらを構成する物質などが挙げられる。
【0116】
タンパク質としては、タンパク質の全長であっても結合活性部位を含む部分ペプチドでもよい。またアミノ酸配列、及びその機能が既知のタンパク質でも、未知のタンパク質でもよい。これらは、合成されたペプチド鎖、生体より精製されたタンパク質、あるいはcDNAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、精製したタンパク質等でも標的分子として用いることができる。合成されたペプチド鎖は、これに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。これらのうち好ましくは、アミノ酸配列が既知の精製されたタンパク質か、あるいはcDNAライブラリー等から適当な方法を用いて翻訳、精製されたタンパク質を用いることができる。
【0117】
核酸としては、 特に制限はなく、DNAあるいはRNAも用いることができる。また、塩基配列あるいは機能が既知の核酸でも、未知の核酸でもよい。好ましくは、タンパク質に結合能力を有する核酸としての機能、及び塩基配列が既知のものか、あるいはゲノムライブラリー等から制限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いることができる。
【0118】
糖鎖としては、その糖配列あるいは機能が、既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。好ましくは、既に分離解析され、糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
低分子化合物としては、相互作用する能力を有する限り、特に制限はない。機能が未知のものでも、あるいはタンパク質と結合もしくは反応する能力が既に知られているものでも用いることができる。
【0119】
上記の通り、相互作用感知ゲート上には数多くの特定物質を固定化できる。特定物質が固定化された相互作用感知ゲートは、その機能性物質と相互作用する物質を検出するバイオセンサーに好適に使用できる。また、検出されるシグナルの増幅や特定を目的として、特定物質と相互作用した物質と更に相互作用する物質を酵素あるいは電気化学的反応や発光反応を有する物質、荷電を有する高分子及び粒子等で標識することも可能であり、これらはイムノアッセイやインターカレーター等を利用したDNA解析の領域では標識化測定法として広く用いられている方法である。(参考文献:今井一洋 生物発光と化学発光 昭和64年 廣川書店、P.TIJSSENエンザイムイムノアッセイ 生化学実験法 11 東京化学同人、Takenaka, Anal. Biochem.,218,436 (1994) 等多数)
【0120】
これら特定物質と検出対象物質との「相互作用」とは特に限定されるものではないが、通常は、共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる分子間に働く力による作用を示す。ただし、本命最初に言う「相互作用」との用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合としては、配位結合、双極子結合を含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
【0121】
相互作用の具体例としては、抗原と抗体間の結合及び解離、タンパク質レセプターとリガンドの間の結合及び解離、接着分子と相手方分子の間の結合及び解離、酵素と基質の間の結合及び解離、アポ酵素と補酵素の間の結合及び解離、核酸とそれに結合するタンパク質の間の結合及び解離、核酸と核酸の間の結合及び解離、情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合と解離、糖タンパク質とタンパク質との間の結合及び解離、あるいは糖鎖とタンパク質との間の結合及び解離、細胞及び生体組織と蛋白質の間の結合及び解離、細胞及び生体組織と低分子化合物の間の結合及び解離、イオンとイオン感応性物質間の相互作用等が挙げられるが、この範囲に限られるものではない。例えば、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab')2、Fab'、Fab、レセプターや酵素とその派生物、核酸、天然あるいは人工のペプチド、人工ポリマー、糖質、脂質、無機物質あるいは有機配位子、ウィルス、細胞、薬物等が挙げられる。
【0122】
また、相互作用感知ゲートに固定化される特定物質と他の物質との「相互作用」として、物質以外にもpHやイオン、温度、圧力等の外環境の変化に対するゲートに固定化される機能性物質の関与する応答も挙げられる。
【0123】
[トランジスタの作製方法]
次に、チャネルとしてカーボンナノチューブを用いた場合を例にとり、上記実施形態で説明したトランジスタの作成方法の一例を図7を用いて説明する。
【0124】
カーボンナノチューブを用いたトランジスタの作製は以下のように行なう。
トランジスタに使用するカーボンナノチューブは、その位置と方向とを制御して形成しなければならない。このため、通常はフォトリソグラフィー法などによりパターニングした触媒を利用して、カーボンナノチューブの成長位置と方向とを制御して作製する。
具体的には次に述べる工程でカーボンナノチューブを形成する。
【0125】
(工程1)図7(a)に示すように、基板2上にフォトレジスト16をパターニングする。
カーボンナノチューブを形成しようとする位置及び方向に応じて形成するパターンを決定し、そのパターンに合わせて基板2上にフォトレジスト16でパターニングを行なう。
【0126】
(工程2)図7(b)に示すように、金属の触媒17を蒸着する。
パターニングを行なった基板2面に、触媒17となる金属を蒸着する。触媒17となる金属の例としては、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属、あるいはそれらの合金などが挙げられる。
【0127】
(工程3)図7(c)に示すように、リフトオフを行ない、触媒17のパターンを形成する。
触媒17の蒸着後、リフトオフを行なう。リフトオフにより、フォトレジスト16は基板2から除去されるため、フォトレジスト16表面に蒸着された触媒17もともに基板2から除去される。これにより、工程1で形成したパターンに合わせて触媒17のパターンが形成される。
【0128】
(工程4)図7(d)に示すように、CVD(化学気相堆積法)炉18で、高温においてメタンガスやアルコールガスなどの原料ガスを流し、触媒17と触媒17との間にカーボンナノチューブ19を形成する。
高温においては、金属触媒17は直径数nmの微粒子状になり、これを核としてカーボンナノチューブが成長する。なお、ここで通常、高温とは300℃以上1200℃以下を指す。
【0129】
以上、工程1~工程4によってカーボンナノチューブ19を形成した後、そのカーボンナノチューブ19の両端にソース電極及びドレイン電極を形成する。ここではソース電極及びドレイン電極はオーミック電極を形成したものとする。この際、ソース電極やドレイン電極はカーボンナノチューブ19の先端に取り付けてもよいし、側面に取り付けてもよい。また、ソース電極やドレイン電極の電極形成の際に、よりよい電気的接続を目的として、例えば300℃~1000℃の範囲の熱処理を行ってもよい。
さらに、適当な位置にゲート及び相互作用感知ゲートを設けて、トランジスタを作製する。
【0130】
以上の方法を用いれば、位置及び方向を制御しながらカーボンナノチューブ19を形成して、トランジスタを作製することができる。しかし、上記の方法では触媒である金属間にカーボンナノチューブ19が形成される確率は小さい(発明者らの試験では、10%程度)。そこで、図8に示すように、触媒17の形状を先端が急峻な形状とし、カーボンナノチューブ19の成長中にこの2つの触媒間に電荷を印加する。これにより、急峻な触媒間の電気力線に沿ってカーボンナノチューブ19が成長することが期待できる。
【0131】
触媒17間に電荷を印加することによって、上記のように電気力線に沿ってカーボンナノチューブ19が成長する理由は定かではないが、次の2通りが推察される。一方の考えは、電極(ここでは、触媒17)から成長を開始したカーボンナノチューブ19は大きな分極モーメントを有しているために、電界に沿った方向に成長する、という考えである。もう一方の考えは、高温で分解したカーボンイオンが電気力線に沿ってカーボンナノチューブ19を形成していく、という考えである。
【0132】
また、カーボンナノチューブ19の成長を阻害する要因として、基板2とカーボンナノチューブ19との間に働く大きなファンデルワールス力の影響でカーボンナノチューブ19が基板2に密着し、方向制御が困難になることが考えられる。このファンデルワールス力の影響を小さくするため、上記のトランジスタの作成方法において、図9に示すように、触媒17と基板2との間に酸化シリコン等で形成したスペーサ層20を設け、カーボンナノチューブ19を基板2から浮かして成長を行なうようにすることが好ましい。
【0133】
以上の作製方法により、電界特性トランジスタを作成することができる。
さらに、作製した電界特性トランジスタのカーボンナノチューブ19に水素、酸素、アルゴンなどの雰囲気ガスでの加熱、酸溶液中での煮沸などの化学処理を行ない、欠陥を導入して量子ドット構造を形成させることにより、単一電子トランジスタを作製することができる。
【0134】
[相互作用感知ゲートへの特定物質の固定化方法]
相互作用感知ゲートへの特定物質の固定化方法としては、相互作用感知ゲートに特定物質を固定することができる方法であれば特に制限は無い。例えば、相互作用感知ゲートに直接物理吸着で結合させることも可能であるが、予め相互作用感知ゲート上にアンカー部を有するフレキシブルスペーサーを介して結合させても良い。
【0135】
相互作用感知ゲートに金等の金属を用いた場合、フレキシブルスペーサーは構造式(CH2n(nは1から30までの自然数を表すが、2から30までが望ましく、2から15までがさらに望ましい)のアルキレンを含有することが望ましい。スペーサー分子の一端は、金等の金属への吸着として適しているアンカー部としてチオール基やジスルフィド基を使用し、スペーサー分子の相互作用感知ゲートから離れた方を向いている他端には固定化したい特定物質を結合しうる結合部を1個または複数個含有する。このような結合部は、例えばアミノ基やカルボキシル基、ヒドロキシル基、スクシミド基等種々の反応性官能基やビオチン及びビオチン誘導体、ジゴキシン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、および誘導体、テオフィリン等のハプテンやキレートを用いても良い。
【0136】
また相互作用感知ゲートに直接またはこれらスペーサーを介して導電性高分子、親水性高分子、LB膜等やマトリックスを結合させ、その導電性高分子、親水性高分子、LB膜等やマトリックスに固定化したい特定物質を1または複数種結合または包括/担持させても良いし、予め導電性高分子、親水性高分子やマトリックスに固定化したい物質を1または複数種結合または包括/担持させた後に相互作用感知ゲートに結合させても良い。
【0137】
導電性高分子としてはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等が使用され、親水性高分子としてはデキストラン、ポリエチレンオキシド等電荷を持たない高分子でも良いし、ポリアクリル酸、カルボキシメチルデキストラン等電荷を持った高分子でも良く、特に電荷を持った高分子の場合固定化したい物質と反対の荷電を持つ高分子を使用することにより電荷濃縮効果を利用して結合または担持させることができる。(引用:ファルマシア特許 特許第2814639号)
【0138】
特に、特定のイオンを検出する場合は、相互作用感知ゲート上に特定のイオンに対応するイオン感応膜を形成させることができる。さらにイオン感応膜の代わりにあるいは一緒に酵素固定膜を形成させることにより検出対象物質に対して酵素が触媒として作用した結果生じる生成物を測定することにより検出対象物質を検出することもできる。
【0139】
また、固定化したい特定物質を固定化した後、牛血清アルブミン、ポリエチレンオキシドまたは他の不活性分子により表面を処理したり、UF膜で被覆することにより非特異的反応を抑制したり、透過することのできる物質を選択したりすることもできる。
【0140】
また、相互作用感知ゲートとして、金属以外に薄い絶縁膜を使用してもよい。絶縁膜としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウムなどの無機材料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)などの高分子材料を用いることができる。
【0141】
H+、Na+等のイオンを測定する際は更に必要であればこの絶縁膜上にそれぞれ測定対象となるイオンに対応するイオン感応膜を形成させることができる。さらにイオン感応膜の代わりにあるいは一緒に酵素固定膜を形成させることにより検出対象物質に対して酵素が触媒として作用した結果生じる生成物を測定することにより検出対象物質を検出することもできる。(参考文献 鈴木周一:バイオセンサー 1984 講談社、 軽部ら:センサーの開発と実用化、第30巻、第1号、別冊化学工業 1986)
【0142】
[利用分野]
本発明のセンサは、任意の分野で適宜用いることができるが、例えば、次のような分野で用いることができる。
【0143】
相互作用を応用したバイオセンサーとして用いる場合には、血液や尿などの臨床検査用センサーが挙げられ、pH、電解質、溶存ガス、有機物、ホルモン、アレルゲン、薬物、抗生物質、酵素活性、蛋白質、ペプチド、変異原性物質、微生物細胞、血液細胞、血液型、血液凝固能、遺伝子解析の測定が可能となる。測定原理としてイオンセンサー、酵素センサー、微生物センサー、免疫センサー、酵素免疫センサー、発光免疫センサー、菌計数センサー、血液凝固電気化学センシング及び各種の電気化学的反応を利用した電気化学センサー等が考えられるが、最終的に電気的シグナルとして取り出せる原理を全て含む。(参考文献 鈴木周一:バイオセンサー 講談社(1984) 軽部ら:センサーの開発と実用化、第30巻、第1号、別冊化学工業(1986))
【0144】
更に、生体内でのその場(in situ)測定も可能であり、これらの例としてはカテーテルに装着した挿入型マイクロセンサーの他にも埋込型マイクロセンサーや医用カプセルを利用したカプセル搭載型マイクロセンサー等が考えられる。(参考文献 軽部ら:センサーの開発と実用化、第30巻、第1号、別冊化学工業 1986)
【実施例】
【0145】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
カーボンナノチューブをチャネルとした電界効果トランジスタの作製は以下のように行った。
【0146】
[1.センサの作製]
(基板の準備)
n-型Si(100)基板2を、体積比で硫酸:過酸化水素=4:1となるよう混合した酸に5分間浸して表面を酸化した後、流水で5分間すすぎ、その次に体積比でフッ化水素酸:純水=1:4となるように混合した酸で酸化膜を除去し、最後に流水で5分間すすぎSi基板表面を洗浄した。洗浄したSi基板2表面を酸化炉を用いて1100℃、30分間、酸素流量3L/min.の条件で熱酸化し、厚さ約100nmのSiO2を絶縁膜20として成膜した。
【0147】
(チャネルの形成)
次に絶縁層20表面にカーボンナノチューブ成長触媒を形成するために、フォトリソグラフィー法によりフォトレジスト16をパターニングした{図10(a)}。まず絶縁層20上に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を500rpm,10秒間、4000rpm,30秒間の条件でスピンコートし、その上にフォトレジスト(シプレイ・ファーイースト社製microposit S1818)を同条件でスピンコートした。
【0148】
スピンコートした後、Si基板2をホットプレート上に置き、90℃,1分間 の条件でベークした。ベーク後、モノクロロベンゼン中にフォトレジスト16をコートしたSi基板2を5分間浸し、窒素ブローで乾燥させた後、オーブンに入れ85℃,5分間の条件でベークした。ベーク後、アライナーを用い触媒パターンを露光し、現像液(クラリアント社製 AZ300MIFデベロッパー(2.38%))中で4分間現像した後、流水で3分間リンスし、窒素ブローで乾燥させた。
【0149】
フォトレジスト16をパターニングしたSi基板2上に、EB真空蒸着機を用いSi、MoおよびFe触媒17を、厚さがSi/Mo/Fe=100Å/100Å/30Åとなるよう、蒸着レート1Å/sec.で蒸着した{図10(b)}。蒸着後、アセトンを煮沸しながらリフトオフし、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間試料を洗浄し、窒素ブローで乾燥させた{図10(c)}。
【0150】
触媒17をパターニングしたSi基板2をCVD炉に設置し、Arを用いてバブリングしたエタノールを750cc/min.および水素を500cc/min.流しながら900℃,20分間 の条件で、チャネルとなるカーボンナノチューブ19を成長させた(図11)。この際、昇温および降温はArを1000cc/min.流しながら行った。
【0151】
(ソース電極、ドレイン電極、及びサイドゲート電極の形成)
カーボンナノチューブの成長後、ソース電極、ドレイン電極、及びサイドゲート電極をそれぞれ作製するために、再度前述したフォトリソグラフィー法により、Si基板2上にフォトレジスト16をパターニングした{図12(a)}。
【0152】
パターニング後、EB蒸着により、TiおよびAuの順にTi/Au=300Å/3000Å、Tiの蒸着レートが0.5Å/sec.、Auの蒸着レートが5Å/sec.の条件で、Si基板2にソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート電極7を蒸着した{図12(b)}。蒸着した後、前述と同様に、アセトンを煮沸しながらリフトオフし、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間試料を洗浄し、窒素ブローで乾燥させた{図12(c)}。
【0153】
ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート電極7をパターニングした後、素子を保護するために、Si基板2表面にHMDSを500rpm,10秒間、4000rpm,30秒間の条件でスピンコートし、その上に前述したフォトレジストを同条件でスピンコートした。その次に、オーブンにて110℃、30分間の条件でフォトレジストを焼き固め素子保護膜を形成した。
【0154】
(バックゲート電極の作成)
Si基板2裏面のSiO2膜20をRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)装置を用いてドライエッチングし除去した。このとき、使用したエッチャントはSF6で、RF出力100Wのプラズマ中で6分間エッチングを行った。裏面のSiO2膜20を除去した後、EB蒸着によりPtおよびAuの順にPt/Au=300/2000Å、Ptの蒸着レートが0.5Å/分間、Auの蒸着レートが5Å/分間の条件で、Si基板2にバックゲート電極(相互作用感知ゲート)9を蒸着した(図13)。
【0155】
(チャンネル層の形成)
次にSi基板2表面に形成した素子保護膜を、煮沸したアセトン、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間洗浄し、除去した。次に、カーボンナノチューブ19を保護するために、ソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート電極7をパターニングする際のフォトリソグラフィー法と同様にして、フォトレジストを素子表面のソース電極4、ドレイン電極5、及びサイドゲート電極7以外の部分にパターニングしチャンネル保護層16とした(図14)。以上の工程を経て完成したカーボンナノチューブ-電界効果トランジスタ(以下適宜、「CNT-FET」という)の概略図を図15に示す。
【0156】
[2.センサを用いた特性測定]
作製したCNT-FETを用いて、以下の手法により、抗体固定化前後の特性測定を行なった。
バックゲート電極9に、酢酸バッファー溶液で希釈した濃度100[μg/mL]のマウスIgG抗体を50μL滴下し、湿度90%の湿潤箱で約15分間反応させ、純水で表面を洗浄し、抗体の固定化を行った。固定化の結果、図16のようにバックゲート電極9に特定物質として上記IgG抗体10が固定された。なお、図16ではチャネル保護層16は二点鎖線で示す。
【0157】
CNT-FETの電気特性評価は、Agilent社製 4156C半導体パラメータアナライザーを用いて行なった。抗体を固定化する前後で電気特性の1種である伝達特性(VSG-ISD特性)を測定し、測定値を抗体固定化の前後で比較することで行なった。その測定結果を図16に示す。このとき、サイドゲート電圧VSG=-40~40V(0.8Vステップ)でスイープさせ、その各点においてソース電圧VS=0V、ドレイン電圧VD=-1~1V (0.02Vステップ)をスイープさせた時にソース電極・ドレイン電極間に流れる電流(ソースドレイン電流)ISD Aを測定した。なお、図17においてソースドレイン電流が負の領域のグラフがVSD=-1.0Vにおける測定結果を示し、ソースドレイン電流が正の領域のグラフがVSD=+1.0Vにおける測定結果を示す。
【0158】
図17のソースドレイン電流が5μAの部分に注目すると、抗体固定化後のサイドゲート電圧は、固定化前のサイドゲート電圧と比較して+47Vと非常に大きく変化していた。この測定結果から、抗体固定化前後でCNT-FETの伝達特性が極めて大きく変化し、バックゲート表面近傍で起こる抗体固定化による相互作用を直接測定ができることがわかった。このことから、本発明によるセンサーが極めて高感度の化学物質検出能力を有していることが示され、検出対象物質-特定物質間の相互作用の検出に利用できることが推察される。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、化学分析、物理分析、生物分析などの分析に広く利用することができ、例えば、医療用センサやバイオセンサとして用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1実施形態としてのセンサを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図2】本発明の第2実施形態としてのセンサを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図3】本発明の第3実施形態としてのセンサを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図4】本発明の第4実施形態としてのセンサを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図5】本発明の第5実施形態としてのトランジスタを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図6】本発明の第6実施形態としてのトランジスタを示すもので、(a)はトランジスタの斜視図、(b)はトランジスタの側面図である。
【図7】(a)~(d)はいずれも、本発明の一実施形態にかかるトランジスタの製造方法の一例を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるトランジスタの製造方法の一例を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかるトランジスタの製造方法の一例を説明する図である。
【図10】(a)~(c)はいずれも、本発明の実施例を説明する図である。
【図11】本発明の実施例を説明する図である。
【図12】(a)~(c)はいずれも、本発明の実施例を説明する図である。
【図13】本発明の実施例を説明する図である。
【図14】本発明の実施例を説明する図である。
【図15】本発明の実施例を説明する図である。
【図16】本発明の実施例を説明する図である。
【図17】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0161】
1A~1F トランジスタ
2 基板
3 低誘電層
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 チャネル
7 サイドゲート
9 バックゲート(電圧非印加電極構造部材)
10 抗体
11 高誘電層
12 バックゲート
13 絶縁膜
14 トップゲート(電圧非印加電極構造部材)
15 サイドゲート(電圧非印加電極構造部材)
16 フォトレジスト(チャネル保護層)
17 触媒
18 CVD(化学気相堆積法)炉
19 カーボンナノチューブ
20 スペーサ層(絶縁層)
21 絶縁体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16