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明細書 :固体表示素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3809910号 (P3809910)
公開番号 特開2005-121687 (P2005-121687A)
登録日 平成18年6月2日(2006.6.2)
発行日 平成18年8月16日(2006.8.16)
公開日 平成17年5月12日(2005.5.12)
発明の名称または考案の名称 固体表示素子
国際特許分類 G02F   1/01        (2006.01)
FI G02F 1/01 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2003-353164 (P2003-353164)
出願日 平成15年10月14日(2003.10.14)
審査請求日 平成15年10月14日(2003.10.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】十倉 好紀
【氏名】木村 剛
【氏名】初田 幸輔
【氏名】金子 良夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 Journal of Applied Physics,2001年,Vol.89,No.11,6857-6862
調査した分野 G02F 1/01
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)固体を構成する原子の電子軌道が整列状態を示す固体材料と、
(b)前記電子軌道の整列状態の相転移を制御するための電圧が印加される電極と、
(c)前記固体材料の外部から入射して、透過もしくは反射した光の偏光面の回転を生じさせる光制御手段とを具備することを特徴とする固体表示素子。
【請求項2】
請求項1記載の固体表示素子において、前記固体材料における電子軌道の整列状態を示す電子軌道がd電子からなることを特徴とする固体表示素子。
【請求項3】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料はペロブスカイト型構造でAn+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなることを特徴とする固体表示素子。
【請求項4】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料はペロブスカイト型構造で(A、B)n+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなることを特徴とする固体表示素子。
【請求項5】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料はペロブスカイト型構造でNd1-xSr1+xMnO4-δ(δは酸素欠損量)であって、xが0.75≦x≦0.82である材料からなることを特徴とする固体表示素子。
【請求項6】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料は多層薄膜からなり、その構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造でAn+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなる薄膜であることを特徴とする固体表示素子。
【請求項7】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料は多層薄膜からなり、その構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造で(A、B)n+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなることを特徴とする固体表示素子。
【請求項8】
請求項2記載の固体表示素子において、前記固体材料は多層薄膜からなり、その構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造でNd1-xSr1+xMnO4-δ(δは酸素欠損量)であって、xが0.75≦x≦0.82である材料からなることを特徴とする固体表示素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体表示素子に係り、特に、液晶と同じ機能を固体材料によって実現する、耐環境特性に優れ、信頼性の高い画像表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として液晶表示素子が、パソコン表示画面、家庭用テレビ表示画面、携帯電話表示画面など広範な用途に使われている。
【0003】
しかし、この液晶表示素子は剛直な高分子を溶液に拡散させて使用するため、液晶注入工程では表示むらを発生させないように十分なる注意を要する。これを改善するための様々な提案がなされている(下記特許文献1)。また、この液晶注入工程は液晶の寿命に直接影響を与え、表示素子の劣化を引き起こす。さらに、液晶封止工程は複雑で、コストアップを引き起こす。また、液晶表示素子の使用環境は室温付近に限られ、かつ大気圧中に限定される。
【0004】
一方、液晶表示部分が固体材料であれば、原理的に表示材料を保持する封止セルを無くして機能を実現できるため、封止用材料も不要になり、使用環境も低温から高温までと拡大する。更に、高圧力環境下や真空環境下においても表示が可能となる。また、固体材料であれば、その光制御素子としての性質も安定性が高く、デバイスの寿命の長時間安定化にも寄与する。更に、固体材料形状を、薄膜形状で実現すれば、印加電圧が数Vと小さくても光の偏光方向の制御が可能になり、低消費電力化も見込める。

【特許文献1】特開平7-128673号公報
【特許文献2】EP公開公報第185495号
【非特許文献1】T.Kimura,K.Hatsuda,Y.Ueno,R.Kajimoto,H.Mochizuki,H.Yoshizawa,T.Nagai,Y.Matsui,A.Yamazaki,and Y.Tokura,Phys.Rev.B65,020407(R)(2002).
【非特許文献2】T.Nagai,T.Kimura,A.Yamazaki,T.Asaka,K.Kimoto,Y.Tokura,and Y.Matsui,Phys.Rev.B65,060405(R)(2002).
【非特許文献3】R.Kajimoto,H.Mochizuki,H.Yoshizawa,T.Kimura,and Y.Tokura,Physica B 312-313,760(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示技術は、情報伝達手段として人々の生活に多大なインパクトを与える。画像表示素子は、一方では高解像度をもった大画面化を、もう一方では携帯電話に象徴されるように持ち運び可能な画像素子としての機能を要求されている。この持ち運び可能な画像素子の要求を満たすものとして液晶表示素子が有力であり、その開発競争は激しい展開を見せている。
【0006】
そこで、本発明の第一の目的は、固体形状において電子の軌道状態の整列状態を外部からの電界によって制御するようにし、液晶に代わる画像表示素子として、省電力化され、高い性能を有する固体表示素子を提供することにある。
【0007】
本発明の第二の目的は、固体の軌道整列状態を用いることで、液体を封止する工程を不要にし、生産性の向上に寄与することである。
【0008】
本発明の第三の目的は、固体形状とすることで耐環境特性に優れ、液体表示素子では実現できない高温や低温下、もしくは高圧力、真空下での画像表示を可能にすることである。
【0009】
本発明の第四の目的は、固体形状とすることで、その劣化が小さく信頼性の高い固体表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、液晶表示素子の多くの課題を解決するために、多くの優位性を持つ固体表示素子を実現するにあたって、固体を構成する原子の電子軌道が整列状態を示す固体材料と、その電子軌道の整列状態の相転移を制御するための電極と、前記固体材料の外部から入射して透過もしくは反射した光の偏光面の回転を生じさせる光制御手段とを有することを特徴とする固体表示素子(請求項1)を発明した。この固体表示素子は、固体材料を構成する原子の電子軌道がd電子からなる固体材料を用いた固体表示素子(請求項2)であってもよい。
【0011】
また、この固体材料が、ペロブスカイト型構造でAn+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなる固体表示素子(請求項3)であってもよいし、あるいは、ペロブスカイト型構造で(A、B)n+1n3n+1-δ型酸化物酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなる固体表示素子(請求項4)であってもよい。ここで、An+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)は、n=1の場合A2MO4-δ、n=2の場合A327-δ、n=∞の場合AMO3-δを示す。
【0012】
また、この固体材料が、ペロブスカイト型構造でNd1-xSr1+xMnO4-δ(δは酸素欠損量)であって、xが0.75≦x≦0.82である材料からなる固体表示素子(請求項5)であってもよい。
【0013】
さらに、固体材料が多層薄膜からなり、その構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造でAn+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなる薄膜形状の固体表示素子(請求項6)であってもよいし、あるいはその構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造で(A、B)n+1n3n+1-δ型酸化物(n=1,2,…,∞、δは酸素欠損量)であって、AとしてCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素、Laなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、BとしてA以外のCa,Sr,Baなどのアルカリ土類元素もしくはLaなどの希土類元素またはYやBiからなる元素、MとしてMn,Fe,Co,Ni,Cuなどの遷移金属を用いた化合物からなる固体表示素子(請求項7)であってもよい。
【0014】
また、その構成薄膜の少なくとも一つがペロブスカイト型構造でNd1-xSr1+xMnO4-δ(δは酸素欠損量)であって、xが0.75≦x≦0.82である材料からなる固体表示素子(請求項8)であってもよい。
【0015】
本発明によれば、固体材料を構成する電子の軌道状態を制御することによって得られる固体表示素子を用いることにより、現在生産されている液晶表示素子の持っている課題を解決することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の液晶表示素子と同じ機能を固体材料で実現することができる。従来の液晶とは異なり、固体形状で液晶と同じ機能が実現できれば、その効果や適用範囲が大きく拡大することは明らかである。後述するスイッチ現象は光の偏光方向を制御することだけでなく、電場の印加によってこの材料の高抵抗状態と低抵抗状態の制御をなし得ることから、現在活発に研究開発が進みつつある抵抗メモリ素子としての展開も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の固体表示素子は、固体を構成する原子の電子軌道が整列状態を示す固体材料と、その電子軌道の整列状態の相転移を制御するための電圧が印加される電極と、前記固体材料の外部から入射して、透過もしくは反射した光の偏光面の回転を生じさせる光制御手段とを備え、液晶に代わる信頼性の高い固体表示素子である。
【実施例】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例を示す固体表示素子の全体構成を示す模式図、図2はその固体表示素子の拡大断面模式図である。
【0020】
これらの図において、1は固体表示素子、2はその固体表示素子1の固体材料、3は透明電極である表面電極、4は透明電極である裏面電極、5は透明表面保護膜、6は透明裏面基板、7は固体表示素子1の電極に印加される電圧源、8はその固体表示素子1の表面側に配置される偏光子、9はその固体表示素子1の裏面側に配置される偏光子である。
【0021】
なお、ここでは透過型の固体表示素子が示されているが、反射型にすることもできる。また、固体表示素子の駆動方式としては、液晶表示素子と同様の駆動方式を採用することができる。すなわち、上記特許文献2に記載のように、コラム(X軸)走査部及びロー(Y軸)走査部を有するマトリクス電極を配置して、このマトリクス電極に対応して固体表示素子を配置して、個々の固体表示素子を時分割された信号でX軸及びY軸を走査することにより、固体表示素子を駆動することができる。
【0022】
図1、図2に示した固体表示素子を実現するために、
まず、反強的(アンチフェロ:antiferro)d3x2-r2/d3y2-r2軌道秩序相と、強的(フェロ:ferro)d3x2-r2軌道秩序相との相境界近くの層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4(0.75≦x≦0.82)に関する、eg電子の軌道秩序状態への電場効果を研究した。クロスニコル配置における偏光顕微鏡により、二つの軌道秩序相を区別することができ、これらの間の電界スイッチの観察に成功した。これは、二つの競合的な軌道秩序状態を持ったシステムが、液晶のような機能性の軌道版を有する事を示している。
【0023】
最近、本願発明者らは、単層の層状マンガン酸化物結晶であるNd1-xSr1+xMnO4のドーピングレベルの変化に対して、軌道状態の変化に相応した連続的な構造転移(上記非特許文献1)に関する報告をした。抵抗、磁化、回折方法(X線、電子、中性子)(上記非特許文献1-3)によるNd1-xSr1+xMnO4(0.6≦x≦0.9)の電子相図を図3に示す。
【0024】
この図において、領域(A)は反強的d3x2-r2/d3y2-r2軌道秩序相領域、領域(B)は強的d3x2-r2軌道秩序相領域、領域(C)は、両者の共存相領域を示しており、黒円は軌道秩序温度T00を、また、横軸はドーピングレベルxを縦軸は温度(K)を示す。
【0025】
また、挿入図(1)はx<0.75、挿入図(2)はx>0.82での電荷、スピン、軌道秩序を示す。D,Eは単位セルを示している。
【0026】
室温では、このドーピング範囲において、層状マンガン酸化物は正方晶構造を示す。冷却に伴い、それらはT00~270Kで正方晶から斜方晶への構造相転移を示す。しかしながら、二種の斜方晶相が存在し、その境界は0.75≦x≦0.82周辺に位置している。x≦0.75の斜方晶相においては、図3の挿入図(1)に示すようなMn3+-Mn4+電荷秩序とMn3+イオンでのd3x2-r2/d3y2-r2軌道秩序が現れる。
【0027】
その結果、伝播ベクトル[δ,δ,0]〔δ=(1-x)/2〕を持つ超格子構造が出現し、これが斜方晶転移の起源となっている。この反強的軌道秩序に起因して、系は斜方晶相となるだけでなく、MnO2面の光学主軸が45゜回転する。それに対して、x≧0.82の斜方晶相においては、図3の挿入図(2)に示すように、超格子構造は観察されずユニットセルは正方晶—斜方晶転移で変化しない。しかしながら、aとb軸の長さは強的d3x2-r2型の軌道秩序が原因で異なってくる(a>b)。また、これらの二つの斜方晶相はMnO2面内光学主軸の異なる方向をもって(45゜回転),相境界(0.75≦x≦0.82)付近において共存する。ドーピングレベル(反強的d3x2-r2/d3y2-r2 →強的d3x2-r2)に対するeg軌道状態の変化は磁気的秩序状態の変化と一致する〔図3の挿入図(2)参照〕。
【0028】
電荷・軌道秩序状態の層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4(0.60≦x≦0.9)は、T00以下の温度での斜方晶相において、面内方向の光学的電子遷移に偏光方向依存性が生じる。試料に直線偏光を持つ光を入射したときに、光の偏光方向が結晶の光学主軸に対し平行ではない場合、反射光は楕円偏光となり、入射光の偏光に対して垂直な偏光成分を持つようになる。この垂直成分を検知するために、互いの偏光成分を垂直にした二つの偏光子を用いる(クロスニコル配置)。層状マンガン酸化物における2つの斜方晶相は互いに45°回転した光学主軸を有するので、一方の相の光学主軸に平行な偏光を用いることによって、各々の相を明暗のコントラストとして認識することができる。また、軌道秩序のある斜方晶相と軌道秩序のない正方晶相の違いも、この手法により区別・認識することが可能である。
【0029】
試料(固体材料)2には、Nd1-xSr1+xMnO4をFZ法で成長させた単結晶を用いた。結晶を劈開することにより、MnO2(ab)面に平行な清浄表面を得ることができた。電極5,6は蒸着法により作製した。電極間隔は50μmである。印加した電場と電流の方向はMnO2(ab)平面内のMn-Oボンドに平行である。ジュール熱効果を最小にするために200msecのパルス電圧が電圧源7より印加された。電圧印加中の劈開表面の偏光顕微鏡像はCCDカメラ(図示なし)を使って記録された。
【0030】
図4は本発明の固体表示素子の動作状態を示す顕微鏡像であり、図4(a)はNd1-xSr1+xMnO4(x=0.77)を0Vにした、つまり、電極11,12間を無電圧とした、クロスニコル配置での顕微鏡像で、強的(フェロ)の軌道状態であるので明るい。図4(b)は、電極11,12間に650Vの電圧を印加したクロスニコル配置での顕微鏡像であり、軌道秩序が失われたパラ軌道状態となっているので暗くみえる。このように、印加電圧を0Vにすると、強的(フェロ)の軌道状態にもどるので、画面は明るくなり、電圧を印加すると画面は暗くなる。
【0031】
より詳しく説明すると、図4(a)の場合、一方向に軌道が揃った状態であるので、入射光をこの軌道と45度をなす方向に配置するとその反射光は楕円偏光となり、クロスに配置した偏光からの反射光は明るく戻ってくる。
【0032】
図4(b)の場合、電場の印加により軌道秩序が失われ(パラ軌道秩序状態)、結晶が斜方晶から正方晶へとスイッチする。その結果として、顕微鏡像は暗くなるが、これは正方晶における反射光が入射光と同じ偏光成分を持つためである。ここで、印加電圧を0Vにすると強的(フェロ)軌道状態に戻り、画面は明るくなる。このときのスイッチ速度はmsecオーダーであった。また、同じ現象はNd1-xSr1+xMnO4(x=0.78)においても観察された。電極間隙を0.5μm程度に加工することは現在のLSI微細化技術をもってすれば容易である。このときの制御電圧は6.5Vであるから、液晶と比較しても遜色のない低電圧レベルである。またこの構造を1000Å程度の薄膜構造とし、電極を透明電極とする構造をとれば、1.0V程度の電圧で薄膜の透過光の偏光度を制御することが可能となるため、さらに低電圧化が期待できる(図1)。
【0033】
図5は本発明にかかる固体表示素子の固体材料を反射光によって観察する配置を示す模式図である。
【0034】
この図において、20は固体表示素子の固体材料、21,22はその固体材料20を挟む電極、23は入射側の偏光子、24は反射側の偏光子、25はCCDである。固体表示素子の個体材料20の軌道秩序状態を観察するためには、偏光子23,24をクロスニコルの配置にしCCDカメラでの映像の明暗を調べればよい。
【0035】
以上から、Nd1-xSr1+xMnO4(x=0.77)において、電極間に電圧を印加するとその軌道秩序状態を秩序状態から無秩序状態に制御することができ、その変化は可逆的である。この状態は丁度、液晶中の剛直な高分子の向きが変化することに対応して電場により偏光方向を制御できることと同じである。液晶の場合は透過光であるのに対して、本発明の軌道制御型固体表示素子は反射光の偏光が回転する点が違うが、軌道制御型固体表示素子を薄膜で構成すれば、液晶素子とまったく同じ機能を示すこととなる。スイッチ速度は、xの混合比を調整すれば、容易に高速化できるし、もともと電子軌道の半径はÅレベルであり、液晶分子が数百Å以上の大きさになるのとは比較にならないほど小さいため、その回転速度を速めることは原理的に容易である。
【0036】
この実施例に見るように、液晶で実現された電場による光の偏光度を制御することを固体表示素子で実現できることを示した。これは、本来液体である液晶表示素子がもつ課題を一挙に解決できる道筋を示したといえる。
【0037】
本発明の実施例においては強的(フェロ)とパラ軌道変化を電場で制御するものであるが、強的(フェロ)と反強的(アンチフェロ)(軌道が隣の軌道との向きが180度異なった秩序状態を示す軌道整列状態)を電場で制御できることも判っている。この場合も、同じように画像表示素子として応用可能である。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の固体表示素子は、液晶表示装置に代わる表示素子に適しており、パソコン表示画面、家庭用テレビ表示画面、携帯電話表示画面などの広範な用途が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例を示す固体表示素子の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す固体表示素子の拡大断面模式図である。
【図3】Nd1-xSr1+xMnO4(0.6≦x≦0.9)の電子相図である。
【図4】固体表示素子の動作状態を示す顕微鏡像である。
【図5】固体表示素子の固体材料を反射光によって観察する配置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 固体表示素子
2,20 固体表示素子の固体材料
3 表面透明電極
4 裏面透明電極
5 透明表面保護膜
6 透明裏面基板
7 固体表示素子に印加される電圧源
8,9,23,24 偏光子
11,12 電極
21,22 固体材料を挟む電極
25 CCD
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図4】
4