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明細書 :温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4518777号 (P4518777)
公開番号 特開2005-137958 (P2005-137958A)
登録日 平成22年5月28日(2010.5.28)
発行日 平成22年8月4日(2010.8.4)
公開日 平成17年6月2日(2005.6.2)
発明の名称または考案の名称 温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 321
C07B 61/00 B
C07B 61/00 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2003-374234 (P2003-374234)
出願日 平成15年11月4日(2003.11.4)
審査請求日 平成18年10月3日(2006.10.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】千葉 一裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100098682、【弁理士】、【氏名又は名称】赤塚 賢次
審査官 【審査官】金 公彦
参考文献・文献 特開2005-111367(JP,A)
国際公開第2004/024315(WO,A1)
国際公開第2004/073852(WO,A1)
特開平07-252680(JP,A)
特開2003-062448(JP,A)
特開昭64-061497(JP,A)
特開2000-218155(JP,A)
調査した分野 B01J 19/00
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一定の温度を境に二相溶液状態及び均一溶液状態の相状態を可逆的に変化させる溶液を反応溶媒とする原料溶液を反応容器内において所定の温度下、攪拌して均一溶液を得ることで反応させる反応工程と、
当該反応容器を冷却することなく、当該均一溶液を冷却して該反応容器内に二相溶液を得る冷却工程と、
前記冷却工程後、反応容器内に得られた二相溶液の生成物溶液相を抽出する生成物溶液取得工程と
を有することを特徴とする温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法。
【請求項2】
前記冷却工程が、反応容器から当該均一溶液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却し、該冷却により得られた二相溶液を当該反応容器内に戻すものであることを特徴とする請求項1記載の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法。
【請求項3】
前記冷却工程が、該反応容器の温度よりも低温の固体を該反応容器内の均一溶液に挿入して該均一溶液を冷却する工程であることを特徴とする請求項1記載の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法。
【請求項4】
前記冷却工程が、低沸点化合物を直接、該反応容器内の均一溶液に混合して該均一溶液を冷却する工程であることを特徴とする請求項1記載の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法。
【請求項5】
前記生成物溶液相の抽出により残置された溶媒相を、次ぎの反応で再使用することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法。
【請求項6】
前記反応溶媒の二相溶液状態は、一相がシクロアルカン化合物であり、他相がニトロアルカン、ニトリル、アルコール、ハロゲン化アルキル、カーボネート、イミダゾリジノン、カルボジイミド、エステル、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エーテル、ウレア、アミド化合物及びスルフォキサイドから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項記載の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、操作性及び生産効率が飛躍的に優れる温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法及びこれを実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プロセスにおいて、一連の混合および分離操作を簡便に行うことができれば、一連の作業効率や生産効率を飛躍的に向上することができる。これまでにパーフルオロアルキル基を有する溶媒と一般的な有機溶媒との組合せにより構成される溶媒混合物は、温度の変化により相溶・相分離を起こすことが知られている(I. T. Horvath, J. Rabai, Science, 1994, 266, 72 J.A.Gladysz, Science, 1994, 266, 55)。また、特開平15-62448号公報には、相溶・相分離を起こす溶媒混合物として、シクロアルカンおよび極性溶媒の組合せが例示されている。
【0003】
このような溶媒混合物が相溶・相分離を起こす原理の概略図を図1に示す。図1(A)は、単一有機溶媒又は混合有機溶媒に分離している状態を示す。例えば一の溶媒として反応原料を溶解するものを用い、他の溶媒として触媒、反応補助剤を溶解するものを用いる。(B)は、温度条件を均一相溶混合溶媒系の状態にして反応を進行させる工程である。(C)は、前記温度条件から、可逆的に溶媒システムを構成する溶媒を主成分とする各溶媒相に分離し、生成物を溶解する相と触媒、反応補助剤を溶解させた相に分離した分離溶媒系の状態を示す。そして、生成物を溶解する相(生成物溶液)を分離して取り出し、所望の用途に供すると共に、反応補助剤を溶解させた相(触媒反応補助剤溶液)を再利用に供する((D))。
【0004】
特開平15-62448号公報に記載のシクロアルカンを含む相溶性多相有機溶媒は僅かな温度変化で相溶、相分離を繰り返すことができるため、広範な化学プロセス等に利用可能である。

【非特許文献1】I. T. Horvath, J. Rabai, Science, 1994, 266, 72 J.A.Gladysz, Science, 1994, 266, 55
【特許文献1】特開平15-62448号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、逐次相溶・相分離を繰り返すことにより多段階逐次反応プロセスなどを実施する場合、反応容器の温度を各段階で上昇または低下させ、これにより溶液温度を変化させることにより溶液の相構造を変化させなければならない。これは特に容量の大きなプラントスケールにおいてその制御が困難になるという問題がある。また、プラントスケールの反応容器の温度を各段階で上昇または低下させることは、電力や冷却水といったユーティリティーの使用が膨大となり、製造コストを上昇させるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、操作性と生産効率が飛躍的に優れる温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法及びこれを実施する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、温度により相溶化、相分離を可逆的に繰り返す溶媒混合物において、相分離は温度を下げることにより自然に起こる一方で、相溶化は一定の物理的刺激を与えない限り温度を上げても起こらないこと、このため反応させるため一旦加温した反応容器を冷却することなく、反応容器内の均一溶液を冷却し二相溶液を得た後、該加温状態にある反応容器内に存在させても、二相溶液を維持したままであり、従って二相溶液の生成物溶液を抜き取った後も反応容器の温度を維持したまま多段階逐次反応プロセスを行うことができ、その結果、優れた操作性と生産効率が得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一定の温度を境に二相溶液状態及び均一溶液状態の相状態を可逆的に変化させる溶液を反応溶媒とする原料溶液を反応容器内において所定の温度下、攪拌して均一溶液を得ることで反応させる反応工程と、当該反応容器を冷却することなく、当該均一溶液を冷却して該反応容器内に二相溶液を得る冷却工程と、前記冷却工程後、反応容器内に得られた二相溶液の生成物溶液相を抽出する生成物溶液取得工程とを有することを特徴とする温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法によれば、一つの反応容器の冷却及び再加熱が不要で温度を一定に保つことができるため、生産効率が大幅に向上する。また、一つのプロセス反応終了後、次ぎのプロセス反応に供される反応溶液の温度は速やかに一定温度(加温状態)になるため、多段階逐次プロセスなどにおいて、温度の変化時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法において、反応工程は、原料溶液を反応容器内において所定の温度下、攪拌して均一溶液を得ることで反応させる工程である。原料溶液は、一定の温度を境に二相溶液状態及び均一溶液状態の相状態を可逆的に変化させる溶液(以下、「溶媒混合物」とも言う。)を反応溶媒とするものである。当該溶媒混合物としては、特に制限されないが、例えば低極性有機溶媒と高極性有機溶媒の溶媒混合物が挙げられる。
【0012】
低極性有機溶媒としては、例えばアルカン、シクロアルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物などが挙げられる。このうち、シクロアルカン化合物が好ましい。シクロアルカン化合物としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどが挙げられ、このうち、シクロヘキサンは、融点が6.5℃と比較的高く、反応後の生成物等を固化して分離できる点で好ましい。
【0013】
高極性有機溶媒としては、例えばニトロアルカン、ニトリル、アルコール、ハロゲン化アルキル、カーボネート、イミダゾリジノン、カルボジイミド、エステル、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エーテル、ウレア、アミド化合物及びスルフォキサイドが挙げられ、これらは一種単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明において用いる原料溶液は、当該溶媒混合物の他、溶質、触媒、基質及び反応補助剤等、種々の反応に関与する物質を含有する。原料溶液の具体的としては、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、オクタデシルアミン及びベンゾイルクロライドの混合溶液、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、オクタデシルアミン及び無水酢酸の混合溶液及びシクロヘキサン、N,N’-ジメチイミダゾリジノン、オクタデシルアルコール及び安息香酸の混合溶液、デカリン、N,N’-ジメチイミダゾリジノン、ヘキサデカンチオール及びアクリル酸メチルの混合溶液が挙げられる。上記、オクタデシルアミン、オクタデシルアルコール、ヘキサデカンチオールはシクロヘキサン、またはデカリンなどに溶解し、上記ベンゾイルクロライド、無水酢酸、及びアクリル酸メチルはジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチイミダゾリジノンなどに溶解する。
【0015】
反応容器内において原料溶液を所定の温度にする方法としては、特に制限されず、例えば予め所定温度に加熱された原料溶液を反応容器に導入する方法、常温の原料溶液を反応容器に導入し、その後反応容器加熱用ヒーターをON状態として原料溶液を所定温度に維持する方法及び反応容器加熱用ヒーターをON状態として反応容器を所定温度を越える温度とし、該反応容器内に常温の原料溶液を導入し、原料溶液を所定温度に維持する方法が挙げられる。このうち、反応容器加熱用ヒーターを用いる方法が、別途の原料溶液加熱用の容器を必要としない点で好適である。所定の温度は反応温度であり、原料溶液や反応の種類により適宜決定される。
反応工程において、所定温度に加温された試料を攪拌する方法としては、特に制限されず、例えば先端部分に攪拌羽根を備えた攪拌棒の攪拌による機械的攪拌方法、試料中に窒素ガスを吹き込み気泡を導入するバブリング方法、試料容器又は試料に振動を与える振動攪拌方法などが挙げられる。このうち、先端部分に攪拌羽根を備えた攪拌棒の攪拌による機械的攪拌方法又は試料中に窒素ガスを吹き込み気泡を導入するバブリング方法が、簡易な装置でしかも攪拌効率が高い点で好ましい。本発明で用いる溶媒混合物は、所定温度に加温されただけでは均一溶液とはならず、一定の物理的刺激を与えることで相溶化がおきる。従って、反応工程における攪拌条件は、均一溶液が得られる条件で適宜選択される。均一溶液を得た後は、当該所定の温度で所定時間保持することもある。所定時間は、反応時間であり使用する溶媒や反応の種類、反応の目的などにより適宜決定される。本発明で用いる溶媒混合物において、相分離は温度を下げることにより自然に起こるため、当該均一溶液は、当該所定時間中、当該相分離が生じる温度以上に保持される。
【0016】
冷却工程は、当該反応容器を冷却することなく当該均一溶液を冷却して該反応容器内に二相溶液を得る工程である。反応容器を冷却することなく均一溶液を冷却する方法としては、特に制限されないが、反応容器から当該均一溶液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却し、該冷却により得られた二相溶液を当該反応容器内に戻す方法、該反応容器の温度よりも低温の固体を該反応容器内の均一溶液に挿入する方法、又は低沸点化合物を直接、該反応容器内の均一溶液に混合する方法が挙げられる。「反応容器を冷却することなく」とは、反応容器を冷却することで、反応容器内の試料を冷却することを除外する意味であり、反応容器内の試料を冷却することに伴って反応容器が冷却されることは許容される。
【0017】
反応容器から当該均一溶液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却し、該冷却により得られた二相溶液を当該反応容器内に戻す方法において、該方法に用いる装置としては、小規模反応装置の場合、例えば冷却装置を備えた抽出器が使用できる。当該抽出器は注射器と同様の機構のものであり、冷却装置としては、例えば抽出器のシリンダー周りに形成されたジャケットに水を通水する装置を用いることができる。また、大規模反応装置の場合、外部冷却器、ポンプ及び循環系を形成するように連結する配管類で構成された外部冷却ユニット装置を用いることができる。
【0018】
また、該反応容器の温度よりも低温の固体を該反応容器内の均一溶液に挿入する方法において、該方法で用いる装置としては、例えば冷却装置付きガラス棒または金属棒などが挙げられる。また、反応容器内の均一溶液に混合する低沸点化合物としては、例えば沸点が25℃のn-ヘプタンが挙げられる。低沸点化合物は反応容器内の均一溶液と直接接触して、該溶液から気化熱を奪い冷却する。気化した低沸点化合物は気体気化器で液化して再び反応容器内に投入される。これを繰り返すことで、均一溶液を冷却することができる。上記方法により冷却された均一溶液は、所定の温度以下になると自然に二相に分離する。冷却工程で得られる二相溶液は、一相が例えばシクロヘキサンのような低極性有機溶媒に反応生成物を溶解した生成物溶液であり、他の相が例えばジメチルホルムアミドのような高極性有機溶媒に触媒や反応補助剤を溶解した溶液である。
【0019】
冷却工程においては、冷却後、該反応容器内に二相溶液を得る。冷却方法が、低温の固体を使用する方法又は低沸点化合物を使用する方法の場合、反応容器内において相分離するため、特段の操作を採ることなくそのままでよい。一方、反応容器から当該均一溶液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却する方法の場合、冷却により得られた二相溶液は該反応容器内に戻される。冷却工程における冷却方法としては、反応容器から当該均一溶液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却する方法が好ましい。すなわち、低温の固体や低沸点化合物を用いるような反応容器内での冷却の場合、加温状態にある反応容器も冷却することになり、冷却効率が悪くなる。更に、反応容器が冷却されるため、生成物溶液を抽出した後、残部の溶媒を再使用する際、再度の加温が必要となり、反応コストが嵩む。これに対して、外部の冷却装置又は冷却器で冷却する方法では、反応溶液のみを冷却すればよいため、冷却効率が高い。しかも、加温状態にある反応容器内に戻された、該二相分離溶液は例え加温されたとしても物理的刺激は与えられないため、二相に分離した状態を維持できる。
【0020】
冷却工程後、反応容器内に得られた二相溶液の内、生成物溶液相を抽出し、そのまま又は必要に応じて、溶媒を除去した後、目的の用途で使用される。また、多段階逐次反応プロセスを実施する場合、生成物溶液相の抽出により残置された溶媒相はそのまま加温状態にある反応容器内に置いておくことが、残置された溶媒相を再使用する際、反応容器を再度加温するための熱エネルギーを最小限にすることができ、反応コストを抑制することができる点で好ましい。
【0021】
また、本発明の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応装置は、反応容器を加熱する加熱手段及び反応容器内の原料溶液に物理的刺激を与えて均一溶液とする刺激手段が付設された反応容器と、該反応容器を冷却することなく反応容器内の均一溶液を冷却する冷却手段と、を備える。
【0022】
反応容器を加熱する加熱手段としては、特に制限されないが、例えば反応容器の壁内に付設される埋め込みヒーターが挙げられる。このヒーターは通常反応容器の温度を制御する温度制御機構に接続されている。
【0023】
反応容器内の原料溶液に物理的刺激を与えて均一溶液とする刺激手段としては、例えば先端部分に攪拌羽根を備えた攪拌棒、原料溶液中に気泡を導入する気泡導入管と気泡発生器を備えるバブリング装置、反応容器又は原料溶液に振動を与える振動器などが挙げられる。
【0024】
前記反応容器を冷却することなく該反応容器内の均一溶液を冷却する冷却手段としては、反応容器から当該均一溶液を抜き出し、該抜き出された均一溶液を冷却器で冷却し、該冷却により得られた二相溶液を当該反応容器内に戻す手段、該反応容器の温度よりも低温の固体を該反応容器内の均一溶液に挿入する挿入手段、又は低沸点化合物を直接、該反応容器内の均一溶液に混合する混合手段が挙げられる。
【0025】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0026】
直径20mm、高さ60mmの円筒系ガラス瓶を反応容器としてブロックヒーター内蔵の卓上装置を用い、下記反応条件に準拠して、プロセス化学反応を行った。容器温度25℃の反応容器にオクタデシルアミン(51ミリグラム)を溶解させたシクロヘキサン2ml、ベンゾイルクロライド(49ミリグラム)溶解させたジメチルホルムアミド(DMF)2mlを添加して原料溶液を調製した。このとき液体は二相に分離した。
【0027】
次いで反応容器温度を60℃に加温し、溶液温度が48℃に達した段階で、窒素ガスを溶液内に直接吹き込み、物理的な攪拌を行うと、溶液は直ちに均一溶液となった。次に冷却装置を備えた注射器状の冷却器を用い、主プロセス容器から均一溶液3.6mlを吸い上げ、該冷却容器内で静置したところ、溶液温度が約40℃に降下すると二相に分離した。さらに2分間放置した後、該冷却器から漸次、60℃に加温してある該主プロセス反応容器に液体を戻した。この溶液は放置すると再び48℃以上になるが、窒素ガスの吹き込みなど、激しい物理的な攪拌を行わない限り、二相状態を保った。
【0028】
60℃の加温状態にある反応容器内の二相溶液の中、上部の相である生成物溶液部分を抽出し、溶媒を除去したところ反応生成物がN-オクダデシルベンズアミドであることを確認した(収率96%)。また、反応容器内に残存する溶液は、ベンゾイルクロライドを溶解する48℃以上に加温されたジメチルホルムアミド溶液であり、次段階における反応の原料溶液の一部として再使用状態にあった。
【実施例2】
【0029】
直径20mm、高さ60mmの円筒系ガラス瓶を反応容器としてブロックヒーター内蔵の卓上装置を用い、下記反応条件に準拠して、プロセス化学反応を行った。容器温度25℃の反応容器に2-アミノブチリックアシッド3,4,5-トリスオクタデシロキシベンジルエステル(60ミリグラム)を溶解させたシクロヘキサン2ml、9-フルオレニルメトキシカルボニルアミノアセティックアシッド(57ミリグラム)、ジイソプロピルカルボジイミド(25ミリグラム)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(55ミリグラム)を溶解して90分攪拌させたジメチルホルムアミド(DMF)2mlを添加して原料溶液を調製した。このとき液体は二相に分離した。
【0030】
次いで反応容器温度を60℃に加温し、溶液温度が48℃に達した段階で、先端に攪拌羽根の付いた攪拌棒で物理的な攪拌を行うと、溶液は直ちに均一溶液となった。次に5℃に冷却された冷却装置付き直径8mmのガラス棒を該主プロセス溶液に挿入し、溶液温度を低下させることにより二相に分離させた。二相分離後、該冷却装置付きガラス棒を引き上げ、該溶液を放置した。溶液温度はその後上昇し48℃以上になっても二相に分離した状態を維持した。
【0031】
60℃の加温状態にある反応容器内の二相溶液の中、上部の相である生成物溶液部分を抽出して溶媒を除去したところ、目的とする反応生成物が2—[2-(9H—フルオレ-9-イルメトキシカルボニル-アミノ)-アセチルアミノ]-3-メチル-ブチリックアシド3,4,5-トリスオクタデシロキシベンジルエステルが95%の収率で得られた。
【実施例3】
【0032】
直径20mm、高さ60mmの円筒系ガラス瓶を反応容器としてブロックヒーター内蔵の卓上装置を用い、下記反応条件に準拠して、プロセス化学反応を行った。容器温度25℃の反応容器にオクタデシルアミン(51mg)を溶解させたシクロヘキサン2ml、無水酢酸(20mg)を溶解させたジメチルイミダゾリジノン(DMI)2mlを添加して原料溶液を調製した。このとき液体は二相に分離した。
【0033】
次いで反応容器温度を60℃に加温し、溶液温度が48℃に達した段階で、窒素ガスを溶液内に直接吹き込み、物理的な攪拌を行うと、溶液は直ちに均一溶液となった。次にこの均一溶液に25℃のn-ペンタンを漸次注入した。n-ペンタンは直ちに揮発し始め、溶液が二相に分離した段階でn-ペンタンの注入をやめた。約10分間放置することにより、n-ペンタンはほぼ完全に揮発し、溶液温度は48℃以上になっても二相に分離した状態を維持した。
【0034】
60℃の加温状態にある反応容器内の二相溶液の中、上部の相である生成物溶液部分を抽出して溶媒を除去したところ、N-オクタデシルアセトアミドが得られた(収率97%)。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の温度変換により相状態が変化する二相溶液の反応方法及びこれに用いる装置は、卓上試験研究用化学プロセス装置、フロー系化学反応装置及び大型反応プラントに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】溶媒混合物が相溶・相分離を起こす原理を説明する概略図である。
図面
【図1】
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