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明細書 :実用的キラルジルコニウム触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4176022号 (P4176022)
登録日 平成20年8月29日(2008.8.29)
発行日 平成20年11月5日(2008.11.5)
発明の名称または考案の名称 実用的キラルジルコニウム触媒
国際特許分類 B01J  31/22        (2006.01)
C07C 229/18        (2006.01)
C07C 229/34        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/22 Z
C07C 229/18
C07C 229/34
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 11
全頁数 13
出願番号 特願2003-574331 (P2003-574331)
出願日 平成15年3月11日(2003.3.11)
国際出願番号 PCT/JP2003/002860
国際公開番号 WO2003/076072
国際公開日 平成15年9月18日(2003.9.18)
優先権出願番号 2002066122
優先日 平成14年3月11日(2002.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年10月5日(2004.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】牟田 博一
参考文献・文献 特開2001-252569(JP,A)
国際公開第01/021625(WO,A1)
鈴木 教之 外7名,シリカ表面へ固定化したメタロセン錯体によるオレフィンの立体規則性重合,触媒,1999年,Vol.41, No.6,p.392-394
調査した分野 B01J 21/00~38/74
C07C 229/18、34
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
空気中でも安定で、長期保存の可能な不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒であって、ジルコニウムと光学活性ビナフトール化合物を構成成分とするキラルジルコニウム触媒がゼオライトに固定化されていることを特徴とする実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項2】
キラルジルコニウム触媒は配位化合物を構成成分とする請求項1の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項3】
キラルジルコニウム触媒は、次式(I)
【化1】
JP0004176022B2_000013t.gif
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、いずれか一方はハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基であり、Lは配位子である)
で表される化合物である請求項2の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項4】
フッ素化炭化水素は、パーフルオロアルキル基である請求項3の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項5】
フッ素化炭化水素基は、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である請求項3の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項6】
ゼオライトは、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、およびモレキュラーシーブス5Aからなる群より選択される請求項1ないし5のいずれかの不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項7】
キラルジルコニウム触媒は、静電的相互作用によりゼオライトに固定化されている請求項1ないし6のいずれかの不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項8】
不活性雰囲気下で減圧加熱乾燥したモレキュラーシーブスと次式(II)
Zr(OR)4 (II)
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるジルコニウムアルコキシドと、次式(III)
【化2】
JP0004176022B2_000014t.gif
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、いずれか一方はハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基である)
で表される(R)-BINOLを混合して得られる不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項9】
ジルコニウムアルコキシドと(R)-BINOLに加え、さらに配位子化合物を混合して得られる請求項8の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項10】
配位子化合物は、N-メチルイミダゾールである請求項9の不斉マンニッヒ反応用の実用的キラルジルコニウム触媒。
【請求項11】
イミンとケイ素エノールエーテルを、請求項1ないし10のいずれかの実用的キラルジルコニウム触媒の存在下に反応させることを特徴とする不斉マンニッヒ反応方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、空気中でも安定で、長期保存後も高い触媒能を維持できる実用的キラルジルコニウム触媒に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は不斉マンニッヒ反応に有効に用いられる空気中でも安定で長期保存の可能な実用的キラルジルコニウム触媒に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
天然物質やその類似体の有機合成においては、各種の不斉合成反応が有効である。これらの不斉合成反応に用いられる不斉触媒の中には、高活性で、目的の反応を高選択的に進行させるものも存在するが、多くは、酸素、水、光、あるいは熱などの外部刺激により分解や不活性化を起こしやすく、不安定である。そのため、ほとんどの不斉触媒は、安定な前駆体から使用直前に調製する必要があり、安定で、長期保存が可能であり、反応後に回収、再利用できるような不斉触媒は極めて稀であるのが実情である。
【0003】
この出願の発明者らは、これまで、不斉マンニッヒ型反応等において有用なキラルジルコニウム触媒を開発し、報告している(例えば、特願平9-197589;Ishitani, H., Ueno, M., Kobayashi, S. J. Am. Chem. . 2000, 122, 8180他)。しかし、このようなキラルジルコニウム触媒もまた、空気中や水存在下では不安定であり、長期保存して利用したり、反応後に回収、再利用したりすることはほとんど不可能であった。そのため、ほとんどの反応系において、反応毎にin situで調製し、使用していたのが実情である。
【0004】
キラルジルコニウム触媒を予め調製し、長期保存することができれば、合成反応時の工程数が削減でき、例えば不斉マンニッヒ反応では、操作をより簡略化することが可能となる。また、触媒を回収、再利用できれば、合成反応のコスト削減につながるだけでなく、含金属廃液の量も大幅に削減でき、環境の面からも有用となることが期待される。
【0005】
したがって、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、長期保存においても高い触媒能を維持でき、安定で、反応後の回収、再利用も可能な実用性の高いキラルジルコニウム触媒を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、第1には、空気中でも安定で、長期保存の可能な実用的キラルジルコニウム触媒であって、ジルコニウムと光学活性ビナフトール化合物を構成成分とするキラルジルコニウム触媒がゼオライトに固定化されていることを特徴とする実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0007】
また、この出願の発明は、第2には、キラルジルコニウム触媒が配位化合物を構成成分とする前記の実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0008】
さらに、この出願の発明は、第3には、キラルジルコニウム触媒が、次式(I)
【0009】
【化3】
JP0004176022B2_000002t.gif
【0010】
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、いずれか一方はハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基であり、Lは配位子である)で表される化合物である前記の実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0011】
この出願の発明は、第4には、フッ素化炭化水素が、パーフルオロアルキル基である前記の実用的キラルジルコニウム触媒を、第5には、フッ素化炭化水素基が、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である前記の実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0012】
この出願の発明は、第6には、ゼオライトが、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、およびモレキュラーシーブス5Aからなる群より選択される前記いずれかの実用的キラルジルコニウム触媒を、第7には、キラルジルコニウム触媒が、静電的相互作用によりゼオライトに固定化されている前記いずれかの実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0013】
さらに、この出願の発明は、第8には、不活性雰囲気下で減圧加熱乾燥したモレキュラーシーブスと次式(II)
Zr(OR) (II)
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)で表されるジルコニウムアルコキシドと、次式(III)
【0014】
【化4】
JP0004176022B2_000003t.gif
【0015】
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、いずれか一方はハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基である)で表される(R)-BINOLを混合して得られる実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0016】
この出願の発明は、第9には、ジルコニウムアルコキシドと(R)-BINOLに加え、さらに配位子化合物を混合して得られる前記の実用的キラルジルコニウム触媒を、第10には、配位子化合物がN-メチルイミダゾールである実用的キラルジルコニウム触媒を提供する。
【0017】
そして、この出願の発明は、第11には、イミンとケイ素エノールエーテルを前記いずれかの実用的キラルジルコニウム触媒の存在下に反応させることを特徴とする不斉マンニッヒ反応方法をも提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
この出願の発明者らは、鋭意研究により、これまでに報告しているキラルジルコニウム触媒について、種々の条件を検討したところ、保持剤としてゼオライトを用いることにより、反応終了後に触媒の回収、再利用が可能となり、再利用された触媒の触媒能が維持されることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0019】
すなわち、この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒は、キラルジルコニウム触媒がゼオライトに固定化されていることを特徴とするものである。このとき、キラルジルコニウム触媒の種類はとくに限定されないが、例えば、次式
【0020】
【化5】
JP0004176022B2_000004t.gif
【0021】
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、同一分子内ではX、Yのいずれかがハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基であり、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基、Arは置換基を有していてもよい芳香族基、Lは配位子を示す)
のA~Fで表される各種の光学活性ビナフトール類が好ましく例示される。中でもAで表されるものが好ましく、Aにおける、配位子Lとしては、N-メチルイミダゾールや1,2-ジメチルイミダゾールが例示される。
【0022】
この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒において、キラルジルコニウム触媒の固定化担体として使用されるゼオライトは特に限定されない。具体的には、脱水剤として使用されるモレキュラーシーブス(MS)3A、4A、5A等が安価で入手し易いことから好ましい。モレキュラーシーブスを固定化担体として用いる場合、その粒径や細孔径等はとくに限定されず、使用するキラルジルコニウム錯体の分子量や配位子、あるいは溶媒の種類に応じて適宜選択すればよい。これらは、吸着あるいは吸収している不純物や水分を除去するために、予め真空下で加熱乾燥した後に使用することが好ましい。また、ゼオライトに代わり、類似の酸化物もしくは複合酸化物のうち、同様の触媒効果の得られるものも含まれる。具体的には、ジビニルベンゼン架橋型ポリスチレン、硫酸カルシウム等から成るDrieriteR(W.A. Hammond Drierite Co.の登録商標)、SiO等からなる吸着剤CeliteR(Celite Corporation(World Minerals Inc.)の登録商標)等が含まれる。
【0023】
この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒において、キラルジルコニウム触媒は、静電的相互作用におりゼオライトに固定化されてものであり、キラルジルコニウム触媒を担体となるゼオライトとともに、例えば溶液中で混合することにより簡単に得られるものである。具体的には、不活性雰囲気下で減圧加熱乾燥したゼオライト(例えば前記のMS5A)と次式(II)
Zr(OR) (II)
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるジルコニウムアルコキシドと、次式(III)
【0024】
【化6】
JP0004176022B2_000005t.gif
【0025】
(ただし、XおよびYは、同一または別異に水素原子、ハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基で、いずれか一方はハロゲン原子またはフッ素化炭化水素基である)
で表される(R)-BINOLと、配位子をそれぞれベンゼンに添加し、混合すればよい。そして、溶媒を除去し、乾燥させれば、本願発明の実用的キラルジルコニウム触媒が得られる。得られた実用的キラルジルコニウム触媒は、空気(湿気)中、室温下での保存が可能であり、長期に渡り触媒活性がほとんど変化しない。さらに、乾燥させた触媒をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で保存すれば、触媒の調製から数ヶ月経過後も高い触媒能を維持できる。
【0026】
この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒は、ゼオライトに固定化された状態で反応中に添加、使用できるものである。すなわち、ゼオライトに固定化されたキラルジルコニウム触媒は、再び脱離させなくても、各種の有機合成反応における不斉触媒として作用するのである。また、このような実用的キラルジルコニウム触媒は、反応溶媒中に溶解することなく、ゼオライトに固定化された状態で反応系内にあることから、反応終了後には、ろ過や溶媒除去等の一般的で簡便な操作により回収できる。そして、回収された実用的キラルジルコニウム触媒は、再び長期保存されてもよいし、次の反応に用いられてもよい。このとき、触媒能は後述の実施例からも明らかなように、当初の状態とほとんど変わらず、再利用触媒を用いても高い収率および立体選択性での反応が進行する。
【0027】
したがって、この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒を用いることにより、触媒そのものの使用量だけでなく、触媒除去のための精製操作に使用される溶媒量をも削減でき、また、含金属廃液の量が大幅に減少することから、コスト面だけでなく、環境の面からも有用性が高い。また、これまでキラルジルコニウム触媒を用いる不斉マンニッヒ反応等の反応操作においては、まず、触媒を反応系内で調製する必要があったが、この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒を用いれば、そのような工程を省略でき、反応が簡略化される。
【0028】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0029】
【実施例】
<実施例1> 実用的キラルジルコニウム触媒(ゼオライト固定化キラルジルコニウム触媒;ZiP)の調製
アルゴン雰囲気中、減圧下で加熱し、十分に乾燥させたモレキュラーシーブス5A(粉末状、Aldrich社)(240 mg)中にジルコニウムテトラ-tert-ブトキシド(以下Zr(OtBu)4;15.3 mg, 0.04 mmol)ベンゼン溶液(0.5 ml)、(R)-6,6'-(CF)BINOL(35.5 mg, 0.08 mmol)のベンゼン溶液(1.0 ml)、およびN-メチルイミダゾール(以下NMI;13.1 mg, 0.16 mmol)のベンゼン溶液(0.5 ml)を室温下で順次加え、80℃にて2時間撹拌し、キラルジルコニウム錯体ベンゼン溶液を調製した。その後、減圧下で溶媒を留去し、50℃にて真空(0.2 mmHg)下で1時間乾燥し、ZiPを定量的に得た(303.9 mg)。
【0030】
得られたZiPの構造解析をNMRにより行ったところ、Zr(OtBu)4、(R)-6,6'-(CF)BINOLおよびNMIをジクロロメタン中で混合してin situで調製したキラルジルコニウム触媒と良く似た明確なスペクトルが得られた。
【0031】
以下、乾燥後の取り扱いは空気中で行い、保存は特に記載されない限り容器にアルゴンを満たして行った。
<実施例2> 実用的キラルジルコニウム触媒を用いたマンニッヒ反応((R)-Methyl 2,2'-dimethyl-(2-hydroxyphenyl)amino-3-phenyl propionate(3a)の合成)
ベンズアルデヒドと2-アミノフェノールより合成したイミン(1a)とイソ酪酸メチル由来のケテンシリルアセタール(2a)によるエナンチオ選択的なマンニッヒ反応を行った。
【0032】
【化7】
JP0004176022B2_000006t.gif
【0033】
実施例1で得られたZiP(152.0 mg, 0.02 mmol)を反応容器に入れ、アルゴン雰囲気に置換した後、NMI(0.04 mmol、イミン(1a)の20 mol%)の塩化メチレン溶液(0.5 ml)を加え、室温下で30分撹拌した。その後-45℃でベンズアルデヒドと2-アミノフェノールより合成したイミン(1a)(0.2 mmol)とイソ酪酸メチル由来のケテンシリルアセタール(2a)(0.24 mmol)の塩化メチレン溶液(1.0 ml)を加え、18時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した後、沈殿物をセライト濾過により濾別し、塩化メチレンで抽出した。
【0034】
無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残渣にTHF:1N塩酸水溶液=10:1混合溶媒8 mlを0℃で0.5時間作用させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製した。対応する(R)-Methyl 2,2'-dimethyl-(2-hydroxyphenyl)amino-3-phenylpropionateを得た(59.9 mg, quant.)。光学純度は、光学異性体分離カラム(ダイセル化学工業、CHIRALCEL)を用いたHPLCにより決定した(90% ee)。
【0035】
以上の反応より得られた化合物3aの収率および光学純度を表1に示した(反応3)。
【0036】
さらに、以上の反応を、NMI量を0 mol%(0 mmol;反応1)、12 mol% (0.024 mmol;反応2)、および30 mol%(0.06 mmol;反応4)として行い、表1に示した。
【0037】
【表1】
JP0004176022B2_000007t.gif
【0038】
また、反応3で得られた化合物3aの同定結果を表2に示した。
【0039】
【表2】
JP0004176022B2_000008t.gif
【0040】
<実施例3> 実用的キラルジルコニウム触媒の貯蔵安定性
実施例1で得られたZiPを、室温下空気中で0~13週間貯蔵し、実施例2と同様の反応(表1、反応3)を行った。貯蔵時間と反応収率および光学純度を表3に示した。
【0041】
【表3】
JP0004176022B2_000009t.gif
【0042】
表3より、本願発明の実用的キラルジルコニウム触媒は、空気および湿気に対して高い安定性を示し、13週間貯蔵後も触媒活性が保たれることが確認された。
【0043】
Zr(OtBu)4、(R)-6,6'-(CF)BINOLおよびNMIを用いて得られた従来のジルコニウム触媒を室温下空気中で1日貯蔵した後、同様の反応に用いたところ、調製直後と比較して収率および光学純度に著しい低下が見られた。これより、このような高い貯蔵安定性は、本願発明の実用的キラルジルコニウム触媒の特徴であることが示された。
<実施例4> 実用的キラルジルコニウム触媒を用いたマンニッヒ反応((S)-S-Ethyl 3-[(2-hydroxy-6-methylphenyl) amino]-5-methyl hexane-thioateの合成)
Isovaleraldehyde、2-Amino-m-cresol、及び酢酸チオエステル由来のケイ素エノールエーテル(2b)によるエナンチオ選択的なマンニッヒ反応を行った。
【0044】
実施例1で調製されたZiP(152.0 mg, 0.02 mmol)を反応容器に投じ、アルゴン雰囲気に置換した後、N-メチルイミダゾール(0.04 mmol)塩化メチレン溶液(0.5 ml)を加え室温下30分撹拌した。その後2-Amino-m-cresol(0.2 mmol)を反応容器に直接投じ、isovaler aldehyde(0.3 mmol)の塩化メチレン溶液(0.5 ml)を加え室温下30分撹拌した。
【0045】
-45 ℃下、実施例2で用いた酢酸チオエステル由来のケイ素エノラート(2b)(0.3 mmol)の塩化メチレン溶液(0.5 ml)を加え、18時間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 ml)を加えて反応を停止し、沈殿物をセライト濾過により濾別し、水層を塩化メチレンで抽出した(10 ml x 3)。無水硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 9/1)で精製すると、対応する(S)-S-Ethyl 3-[(2-hydroxy- 6-methylphenyl)amino]-5-methylhexane-thioateを得た(35.4 mg, 60 %)。
【0046】
光学純度は、光学異性体分離カラム(ダイセル化学工業、CHIRALCEL)を用いたHPLCにより決定した (92 %ee)。
【0047】
得られた化合物3hの同定結果を表4に示した。
【0048】
【表4】
JP0004176022B2_000010t.gif
【0049】
<実施例5> 実用的キラルジルコニウム触媒の繰り返し利用(1)
回収再使用の検討の時のみモレキュラーシーブス5Aを通常より多く(18.0 g/mmol)用いZiPを調製した。ZiP(392.0 mg, 0.02 mmol)を反応容器に直接入れ、アルゴン雰囲気に置換した後、N-メチルイミダゾール(0.04 mmol)の塩化メチレン溶液(0.5 ml)を加え、室温下で30分間撹拌した。その後、-45 ℃でベンズアルデヒドと実施例2で用いたイミン(1a)(0.2 mmol)とケテンシリルアセタール(2a)(0.24 mmol)の塩化メチレン溶液(1.0 ml)を加え、18時間撹拌した後、反応系の塩化メチレンを真空ポンプで留去しながら室温に昇温した。
【0050】
3時間後、ヘキサン(5.0 ml)を加えてよく洗い、1分ほど静置した後反応系を解放し、パスツールピペットを用いて上澄みのペンタン層を抜き取った。この操作をさらに2回繰り返し、沈殿層の触媒を室温下3時間真空ポンプで乾燥し、次の反応に用いた。
【0051】
一方、ろ液に内部標準として2-Naphtolを加え、HPLCによりZiPから流出した(R)-6,6'-(CF)BINOLの量を定量した。流出した分の配位子の量から残っているZiPの量を算出し、これを基にして次の反応に用いた。さらに、ろ液を濃縮し、得られた残渣をメスフラスコを用い5.0mlメタノール溶液に精量し、蛍光X線測定により、ZiPから流出したジルコニウム金属を定量した。
【0052】
測定後、回収し、濃縮した残渣にTHF:1N塩酸水溶液=10:1混合溶媒8 mlを氷温下0.5時間作用させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製すると、対応する(R)-Methyl 2,2'-dimethyl- (2-hydroxyphenyl) amino-3-phenylpropionateが得られた。光学純度は、光学異性体分離カラム(ダイセル化学工業、CHIRALCEL)を用いたHPLCにより決定した。
【0053】
2回目以降の反応では、流出分を補正したZiPに対し1.5当量のNMIを加えて触媒を調製し、以降の操作はこれまでと同様とした。
【0054】
なお、HPLCによる流出した(R)-6,6'-(CF)BINOLの定量は、以下のとおりの方法により行った。
【0055】
HPLC:Daicel Chiralpak AD, hexane/iPrOH = 9/1, flow rate = 0.5 ml/min: tR = 14.3 min ((R)-6,6'-(CF)BINOL), tR = 20.7 min (2-Naphtol). 重量比1:1の時の吸光光度比 (R)-6,6'-(CF)BINOL: 2-Naphtol = 1.655:1として算出した。
【0056】
また、蛍光X線測定によるジルコニウム金属の流出は、既知の濃度のジルコニウム標準溶液を用いて作成した検量線からジルコニウム原子の流出量を算出して行った。
<実施例6> 実用的キラルジルコニウム触媒を用いた不斉マンニッヒ反応
次の反応式(B)に従い、マンニッヒ反応を行った。
【0057】
【化8】
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【0058】
得られた生成物の収率、syn/anti選択性、および光学純度を表5に示した。
【0059】
【表5】
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【0060】
また、各々の反応をZr(OtBu)4、(R)-6,6'-(CF)BINOLおよびNMIをジクロロメタン中で混合してin situで調製したキラルジルコニウム触媒を用いて行い、表5の*を記した欄に示した。
【0061】
芳香族やヘテロ環状アルデヒド由来のイミンだけでなく、脂肪族アルデヒド由来のイミンでも本願発明の実用的キラルジルコニウム触媒の存在下で高い収率およびエナンチオ選択性でマンニッヒ反応が進行することが確認された。α-TBSOエノレートを用いた場合にはsyn体が選択的に得られたものの、α-BnOエノレートを用いた場合にはanti体がジアステレオおよびエナンチオ選択性高く得られた。
【0062】
これらの結果は、in situで調製される従来のキラルジルコニウム触媒と同等であった。
<実施例7> 実用的キラルジルコニウム触媒の繰り返し利用(2)
実施例2において使用されたイミン(1a)とケテンシリルアセタール(2a)をジクロロメタン中、-45℃で反応させ、18時間後に反応容器を室温まで昇温してモレキュラーシーブス5Aを加えた。
【0063】
減圧下で3時間処理し、溶媒および未反応物を除去した後、ヘキサンを加えてデカンテーションを3回行った。生成物(3a)をヘキサンから分離した後(収率89 %、光学純度92 %ee)、残渣を減圧下で3時間処理し、2回目の反応に使用した。
【0064】
反応収率および選択性は、ほぼ同等となった(2回目:収率94 %、光学純度91 %ee;3回目:収率99 %、光学純度90 %ee)。
<実施例8> 実用的キラルジルコニウム触媒の調製とそれを用いた不斉マンニッヒ反応
(a) 実施例1と同様の方法により、MS5Aの代わりにMS4Aを用いて、NMIを加えずにZiPを調製した。
【0065】
得られたZiPを用いて、実施例2と同様の方法によりイミン(1a)とケテンシリルアセタール(2a)の反応を行ったところ、89 %の収率と82 %eeの光学純度で不斉マンニッヒ反応の生成物(3a)が得られた。
【0066】
さらに、このZiPを空気中、室温下で53日間貯蔵した後、同様の反応に用いたところ、高い収率(95%)と光学純度(80 %ee)で生成物(3a)が得られた。
(b) 実施例1と同様の方法により、MS5Aの代わりにMS3Aを、(R)-6,6'-(CF)BINOLの代わりに(R)-3,3'-Br2BINOLを用い、NMIを加えずにZiPを得た。
【0067】
得られたZiPを用いて、実施例2と同様の方法によりイミン(1a)とケテンシリルアセタール(2a)の反応を行ったところ、80 %の収率と97 %eeの光学純度で不斉マンニッヒ反応の生成物(3a)が得られた。
【0068】
さらに、このZiPを12日間貯蔵した後、同様の反応を行ったところ、収率(79 %)および光学純度(96 %ee)のいずれも保持されることが確認された。
【0069】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、空気中でも安定で、長期保存が可能な実用的キラルジルコニウム触媒が提供される。この発明の実用的キラルジルコニウム触媒を用いることにより、触媒そのものだけでなく、触媒除去のための精製用溶媒や含金属廃液を大幅に削減でき、経済性だけでなく、環境や人体への安全性の面からも有用性が高い。さらに、これまでキラルジルコニウム触媒を用いるほとんどの不斉マンニッヒ反応等の反応操作においては、in situでの触媒の調製する必要があったが、この出願の発明の実用的キラルジルコニウム触媒を用いれば、そのような工程を省略でき、操作も簡略化される。