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明細書 :光フーリエ変換装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4471666号 (P4471666)
公開番号 特開2005-195751 (P2005-195751A)
登録日 平成22年3月12日(2010.3.12)
発行日 平成22年6月2日(2010.6.2)
公開日 平成17年7月21日(2005.7.21)
発明の名称または考案の名称 光フーリエ変換装置及び方法
国際特許分類 G02F   1/35        (2006.01)
FI G02F 1/35
請求項の数または発明の数 18
全頁数 26
出願番号 特願2004-000464 (P2004-000464)
出願日 平成16年1月5日(2004.1.5)
審査請求日 平成18年11月21日(2006.11.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】廣岡 俊彦
【氏名】中沢 正隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 IEEE Journal of Quantum Electronics,Vol.36,No.7,2000年 7月,795-801
Proceedings of SPIE,1998年,Vol.3418,78-85
Optics Letters,1999年 9月 1日,Vol.24,No.17,1197-1199
Physical Review Letters,2000年 6月26日,Vol.84,No.26,6010-6013
IEEE Journal of Quantum Electronics,1994年 8月,Vol.30,No.8,1951-1963
調査した分野 G02F 1/35
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生する二次関数型光パルス発生器と、
信号光パルスと制御光パルスを合波する合波器と、
信号光パルスと制御光パルスとの相互位相変調によって信号光パルスをパルス全体にわたって線形にチャープさせるための光カー媒質と、
群速度分散を有する分散性媒質と
を備え、
前記二次関数型光パルス発生器は、入力された信号光パルスに基づくクロック信号に従い二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生し、
入力された信号光パルスと前記二次関数型光パルス発生器で発生された二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスとを前記合波器により合波して前記光カー媒質に入射し、前記光カー媒質において、前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記入力された信号光パルスをチャープ率Kで線形にチャープさせ、前記光カー媒質から出力された信号光パルスを分散量DがD=1/Kで与えられる前記分散性媒質に通すことにより、前記分散性媒質から出力される信号光パルスの時間波形が、入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例する光フーリエ変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光フーリエ変換装置において、
さらに、前記分散性媒質を通過した信号光パルスと前記制御光パルスとをもう一度合波して前記光カー媒質に入射し、前記光カー媒質で前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記分散性媒質を通過した信号光パルスを再び線形にチャープさせることにより、前記光フーリエ変換装置から出力される信号光パルスの時間波形が、入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例し、かつ、前記光フーリエ変換装置から出力される信号光パルスの周波数スペクトルが、入力された信号光パルスの時間波形に比例する光フーリエ変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光フーリエ変換装置において、
信号光パルスを前記光カー媒質に2回通過させることによってチャープが完全に補償され、出力においてチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることを特徴とする光フーリエ変換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光フーリエ変換装置において、
前記光カー媒質を通過した前記信号光パルス及び前記制御光パルスを分波し、分波された信号光パルスを前記分散性媒質に入力するための分波器と、
前記分散性媒質を通過した信号光パルスと分波した制御光パルスとをもう一度合波し、前記光カー媒質に入射するための合波器と
をさらに備えた光フーリエ変換装置。
【請求項5】
二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生する二次関数型光パルス発生器と、
信号光パルスと制御光パルスを合波する合波器と、
信号光パルスと制御光パルスとの相互位相変調によって信号光パルスをパルス全体にわたってチャープ率Kで線形にチャープさせるための光カー媒質と、
群速度分散を有する分散性媒質と
を備え、
さらに、
前記二次関数型光パルス発生器は、
光パルスを発生する光パルス送信器と、
正常分散の絶対値が長手方向に減少する分散減少ファイバと
を有し、
前記二次関数型光パルス発生器は、入力された信号光パルスに基づくクロック信号に従い二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生し、
入力された信号光パルスを分散量Dの前記分散性媒質に通過させ、前記分散性媒質から出力された信号光パルスと制御光パルスとを前記合波器により合波して前記光カー媒質に入射し、前記光カー媒質において、前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記分散性媒質から出力された信号光パルスをD=1/Kの関係にあるチャープ率Kで線形にチャープさせることにより、前記光フィルタから出力される信号光パルスの周波数スペクトルが、入力された信号光パルスの時間波形に比例する光フーリエ変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光フーリエ変換装置において、
さらに、前記光カー媒質において線形にチャープされた信号光パルスをもう一度前記分散性媒質に通すことにより、前記光フーリエ変換装置から出力される信号光パルスの時間波形が、入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例し、かつ、前記光フーリエ変換装置から出力される信号光パルスの周波数スペクトルが、入力された信号光パルスの時間波形に比例する光フーリエ変換装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光フーリエ変換装置において、
信号光パルスを前記分散性媒質に2回通過させることによってチャープが完全に補償され、出力においてチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることを特徴とする光フーリエ変換装置。
【請求項8】
請求項1又は5に記載の光フーリエ変換装置において、
前記光カー媒質による信号光パルスと制御光パルスとの相互位相変調によって信号光パルスに印加される周波数チャープのャープ率Kは制御光パルスのピークパワー、前記光カー媒質の長さ及び前記光カー媒質の非線形屈折率のいずれか又は複数により調節することができることを特徴とする光フーリエ変換装置。
【請求項9】
請求項に記載の光フーリエ変換装置において、
前記二次関数型光パルス発生器は、
光パルスを発生する光パルス送信器と、
正常分散を有し、前記光パルス送信器からの光パルスが伝搬する光ファイバ増幅器と
を備える光フーリエ変換装置。
【請求項10】
請求項に記載の光フーリエ変換装置において、
前記二次関数型光パルス発生器は、
光パルスを発生する光パルス送信器と、
正常分散の絶対値が長手方向に減少する分散減少ファイバと
を備える光フーリエ変換装置。
【請求項11】
請求項5又は10に記載の光フーリエ変換装置において、
前記分散減少ファイバは、分散値が連続的に変化する、又は、分散値が一定あるいは長手方向に線形に変化する複数種類の光ファイバを複数縦続接続することにより、分散値の変化が区間ごとに離散的に近似されたファイバ、又は、分散値が連続的に変化するひとつのファイバを含み、分散値の変化は次式で表される又は次式で近似される光フーリエ変換装置。
D(z)=D/(1+DΓz)
(ただし、D(z);分散値の変化を表す関数、z:ファイバの長手方向の座標、D;入射端(z=0)での関数値、Γ:正常分散の大きさの減少の比率)
【請求項12】
請求項に記載の光フーリエ変換装置において、
前記二次関数型光パルス発生器は、
光パルスを発生する光パルス送信器と、
振幅透過特性が二次関数又は放物線で表され、前記光パルス送信器からの光パルスの周波数スペクトルを二次関数型又は放物線状にする光フィルタと、
前記光フィルタを通過した光パルスの周波数スペクトル波形の形状に光パルスの時間波形を変換する光フーリエ変換装置と
を備える光フーリエ変換装置。
【請求項13】
請求項1又は5に記載の光フーリエ変換装置において、
制御光と信号光の高速な相互位相変調を効率よく発生させるために、前記光カー媒質として分散値が小さい低分散光カー媒質を用いるか、あるいは、信号光と制御光の波長が前記光カー媒質の零分散波長を挟んで互いに対称な波長になるように信号光及び/又は制御光の波長を設定することを特徴とする光フーリエ変換装置。
【請求項14】
請求項1又は5に記載の光フーリエ変換装置において、
信号光パルスに基づいてクロック信号を抽出するクロック信号抽出回路と、
制御光パルスに光遅延を与える光遅延素子と
をさらに備え、
前記二次関数型光パルス発生器は、前記クロック信号抽出回路からのクロック信号に従い制御光パルスを発生し、及び/又は、前記光遅延素子は、前記制御光パルスに対し信号光パルスとタイミングが一致するように光遅延を与える光フーリエ変換装置。
【請求項15】
入力された信号光パルスに基づくクロック信号に従い二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生し、
入力された信号光パルスと発生された二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスとを合波して光カー媒質に入射し、光カー媒質において前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記入力された信号光パルスをパルス全体にわたってチャープ率Kで線形にチャープさせ、光カー媒質から出力された信号光パルスを分散量DがD=1/Kで与えられる群速度分散を有する分散性媒質に通すことにより、前記分散性媒質から出力される信号光パルスの時間波形が、前記入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例する光フーリエ変換方法。
【請求項16】
請求項15に記載の光フーリエ変換方法において、
さらに、分散性媒質を通過した前記信号光パルスと前記制御光パルスとをもう一度合波して光カー媒質に入射し、光カー媒質で前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって分散性媒質を通過した前記信号光パルスを再び線形にチャープさせることにより、光フーリエ変換された信号光パルスの時間波形が、前記入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例し、かつ、光フーリエ変換された信号光パルスの周波数スペクトルが、前記入力された信号光パルスの時間波形に比例することを特徴とする光フーリエ変換方法。
【請求項17】
入力された信号光パルスに基づくクロック信号に従い二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生し、
入力された信号光パルスを分散量Dの群速度分散を有する分散性媒質に通過させ、その信号光パルスと発生された二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスとを合波して光カー媒質に入射し、光カー媒質において前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記分散性媒質から出力された信号光パルスをD=1/Kの関係にあるチャープ率Kで線形にチャープさせることにより、前記光フィルタから出力される信号光パルスの周波数スペクトルが、前記入力された信号光パルスの時間波形に比例する光フーリエ変換方法。
【請求項18】
請求項17に記載の光フーリエ変換方法において、
さらに、光カー媒質において線形にチャープされた前記信号光パルスをもう一度分散性媒質に通すことにより、光フーリエ変換された信号光パルスの時間波形が、前記入力された信号光パルスのスペクトル形状に比例し、かつ、光フーリエ変換された信号光パルスの周波数スペクトルが、前記入力された信号光パルスの時間波形に比例することを特徴とする光フーリエ変換方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光フーリエ変換装置及び方法に係り、特に、光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状(包絡線)に、及び/又は光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状に、あるいは光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換技術を利用したさまざまな応用が、超高速光通信や超短パルスモード同期レーザ、光信号処理などの分野において提案されている。例えば超高速光通信においては、信号光パルス列における各パルスの時間位置のランダムな揺らぎ(タイミングジッタ)の低減(例えば、非特許文献1参照)、偏波モード分散の補償(例えば、非特許文献2参照)、などへの応用が提案されている。また、モード同期レーザから発生する超短パルスのタイミングジッタの抑圧(例えば、非特許文献3)においても光フーリエ変換技術が有効である。また、正常分散を有する光ファイバ増幅器を用いた二次関数型の光パルスの発生について記載された文献がある(例えば、非特許文献4参照)。
【0003】
本発明者は、一般的に光ファイバにあらゆる線形歪み効果が存在してもパルスのスペクトル形状が不変であることから受信側で時間と周波数を入れ替え送信データを完全に再生する波形無歪み伝送(特願2003-23973「光伝送方法および光伝送装置」、特願2003-181964「OTDM伝送方法及び装置」)、光パルス圧縮ならびに光関数発生(特願2003-109708「光パルス圧縮器および光関数発生器、光パルス圧縮方法および光関数発生方法」)について出願している。また、本発明者は、光ファイバ増幅器を用いずに二次関数型で表現される光パルスを発生させる方法及び装置について出願している(特願2003-387563「光パルス発生方法および光パルス圧縮方法等」)。これらの出願の内容は、参照により本明細書に組み込むことができる。
【0004】
図1に、光フーリエ変換を行なうために従来用いられている回路の構成例を示す。同図において、この回路は、LiNbO結晶などの電気光学結晶におけるポッケルス効果を用いた位相変調器(LN位相変調器)2、分散量Dをもつ分散性媒質3を備える。なお、分散性媒質3の分散パラメータをβ[ps/km]、長さをL[km]とすると、分散量はD=βL[ps]で与えられる。また、図中実線は光パルスを、点線は電気信号を表す。分散性媒質3には光ファイバあるいは回折格子対、ファイバブラッググレーティング等が用いられる。位相変調器2の変調特性のピークは光パルスの中心位置に一致させる。LN位相変調器2によってパルスに印加されるチャープの大きさ(チャープ率K)は次のようにして求めることができる。位相変調器2に電圧V(t)=Vcos(ωt)を印加すると、電気光学効果による屈折率変化がもたらす光の位相変化量Δφ(t)は
【0005】
【数1】
JP0004471666B2_000002t.gif

【0006】
で与えられる。ただしVπは半波長電圧(光の位相をπ回転させるのに必要な印加電圧)、ωは位相変調器の駆動周波数、Vは電圧の振幅である。式(1)はパルスの中心近傍(t=0)でテイラー展開することにより
【0007】
【数2】
JP0004471666B2_000003t.gif

【0008】
と近似することができる。すなわちLN位相変調器によってチャープ率Kの近似的に線形な周波数チャープ
【0009】
【数3】
JP0004471666B2_000004t.gif

【0010】
が光パルスに印加される。
【0011】
図1において時間波形u(t)、周波数スペクトルU(ω)をもつ光パルスをまず光カップラ1により2つに分波し、片方をLN位相変調器2に入力する。また他方はクロック信号抽出回路4に入力し、パルス列からクロック信号(正弦波信号)を抽出する。出力された信号を位相シフタ5、電気増幅器6を介してLN位相変調器2に印加することにより、LN位相変調器2を駆動する。位相シフタ5は位相変調を光パルスに最適に同期して印加するために挿入している。また電気増幅器6はLN位相変調器2の駆動用である。
【0012】
LN位相変調器2に入力された光パルスは線形チャープΔω(t)=-Ktを与えられ、その結果パルス波形の各時間位置において時間に比例した大きさの周波数シフトを受ける。さらにその線形チャープパルスは分散性媒質3に入力される。分散性媒質3においては光パルスの時間波形に群速度分散によって周波数成分に応じて異なる時間遅延(パルス内群遅延)が与えられる。前記光パルスはLN位相変調器2においてあらかじめ線形チャープを与えられていたので、分散性媒質3において光パルスの各周波数成分が時間軸上の異なった位置に分離される。その結果、チャープ率Kに対して分散量DをD=1/Kに選ぶことにより、分散性媒質3の出力で光フーリエ変換前の光パルスのスペクトル形状U(ω)(ただしω=t/D)に比例した波形が時間軸上で生成される。

【非特許文献1】L.F.Mollenauer and C.Xu, “Time-lens timing-jitter compensator in ultra-long haul DWDM dispersion managed soliton transmissions,” in Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEO) 2002, paper CPDB1 (2002).
【非特許文献2】M.Romagnoli, P.Franco, R.Corsini, A.Schiffini, and M.Midrio, “Time-domain Fourier optics for polarization-mode dispersion compensation,” Optics Letters, vol.24, no.17, pp.1197-1199 (1999).
【非特許文献3】L.A.Jiang, M.E.Grein, H.A.Haus, E.P.Ippen, and H.Yokoyama, “Timing jitter eater for optical pulse trains,” Optics Letters, vol.28, no.2, pp.78-80 (2003).
【非特許文献4】M.E.Fermann, V.I.Kruglov, B.C.Thomsen, J.M.Dudley, and J.D.Harvey, “Self-simiar propagation and amplification of parabolic pulses in optical fibers,” Phys.Rev.Lett. Vol.84, pp.6010-6013 (2000).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし従来の光フーリエ変換に用いられるLN位相変調器はパルス全体にわたって一様に線形なチャープを与えることができない場合がある。図2は、LN位相変調器によって光パルスに印加される位相変調(a)および周波数シフトの大きさ(b)を示す模式図である。点線は二次関数で表される位相変調特性および時間に対して線形な周波数シフトの大きさを示している。図2に示すように、LN位相変調器の正弦波的な変調特性が二乗曲線で近似できる範囲(LN位相変調器が光パルスに印加するチャープが線形とみなせる範囲)はパルスの中心近傍に限定されてしまう。ここではこれを光フーリエ変換の許容ウィンドウ幅と呼ぶ。光パルスの時間幅に比べてこの許容ウィンドウ幅が狭いとき、そのウィンドウ幅より外側の領域にある光パルス成分に対しては光フーリエ変換を正確に実行することができないという大きな課題があった。
【0014】
また前項で述べたように、光フーリエ変換装置を構成する分散性媒質の分散量Dと位相変調器のチャープ率の大きさKはD=1/Kで関係づけられている。分散性媒質によって与えることができる分散量Dの大きさはデバイスの特性によって制限されるため、必要な分散量Dを小さく抑えるには位相変調器のチャープ率Kを大きくとる必要がある。一方で、LN位相変調器によって得られるチャープ率Kの大きさの上限はLN位相変調器の長さや電圧の印加方向の厚さ、電極の特性などによって決まってしまう。このため従来の光フーリエ変換装置においては、分散性媒質の特性とLN位相変調器の特性の制限により、実現できる光フーリエ変換特性に大きな制限があった。
【0015】
さらに、LN位相変調器において電気回路による処理速度は40GHz程度に制限されるため、伝送速度が40Gbit/sを超える超高速光パルス列に対して従来の方法で光フーリエ変換を行なうことは困難であった。
【0016】
以上の課題点は前項で挙げた光フーリエ変換技術の各種応用を実現するうえで大きな障害となっている。そこで本発明はこれらの課題を解決するために、位相変調特性を二次関数で表されるように改善し、光フーリエ変換を幅広い時間領域にわたって実行することができる光フーリエ変換装置及び方法を提供することを目的とする。また、本発明は、信号光に印加されるチャープのチャープ率Kの調節範囲が広い光フーリエ変換装置及び方法を提供することも目的のひとつである。さらに、本発明は、伝送速度が電気回路による処理速度の制限を越える超高速光パルス列に対して光フーリエ変換を行なうことができる光フーリエ変換装置及び方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光フーリエ変換装置及び方法のひとつは、信号光パルスを形状が二次関数で表される放物線状の制御光パルスと合波し、光カー媒質において前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記信号光パルスをパルス全体にわたって線形に位相変調(周波数チャープ)させ、その後前記信号光パルスを群速度分散(二次分散)を有する分散性媒質に通すことにより、前記信号光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状に変換する光フーリエ変換装置及び方法である。
【0018】
本発明は、上記の光フーリエ変換装置及び方法において、制御光との相互位相変調によって信号光に印加される周波数チャープのチャープ率Kと分散性媒質の分散量DとがD=1/Kの関係を満たし、チャープ率Kは制御光のピークパワー、光カー媒質の長さ、光カー媒質の非線形屈折率(n)を変えることにより調節することができることを特徴のひとつとする。
【0019】
本発明は、また、上記の光フーリエ変換装置及び方法において、放物線状の制御光パルスを発生させる方法として、正常分散を有する光ファイバ増幅器、正常分散の値が長手方向に徐々に減少する分散減少ファイバ、もしくは振幅透過特性が二次関数で表される光フィルタと光フーリエ変換装置のいずれかを用いることを特徴のひとつとする。
【0020】
本発明は、さらに、上記の光フーリエ変換装置及び方法において、制御光と信号光の高速な相互位相変調を効率よく発生させるために、分散値が非常に小さい低分散光カー媒質を用いるか、あるいは信号光と制御光の波長が光カー媒質の零分散波長を挟んで互いに対称な波長になるよう設定する(ウォークオフフリー)ことも特徴のひとつである。
【0021】
本発明に係る他の光フーリエ変換装置及び方法は、上述の順序とは逆にまず信号光を分散性媒質に通過させ、その後前記信号光パルスを形状が二次関数で表される放物線状の制御光パルスと合波し、光カー媒質において前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記信号光パルスをパルス全体にわたって線形にチャープさせることにより、前記信号光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換装置及び方法である。
【0022】
また、本発明に係る別の光フーリエ変換装置及び方法は、まず信号光を分散性媒質に通過させ、その後前記信号光パルスを形状が二次関数で表される放物線状の制御光パルスと合波し、光カー媒質において前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記信号光パルスをパルス全体にわたって線形にチャープさせ、さらに前記信号光パルスをもう一度分散性媒質に通すことにより、前記信号光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状に、かつ前記信号光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換装置及び方法である。
【0023】
本発明は、この光フーリエ変換装置及び方法において、信号光が分散性媒質を2回通過することによってチャープが完全に補償され、出力においてチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることを特徴のひとつとする。
【0024】
また、本発明に係る他の光フーリエ変換装置及び方法は、信号光パルスを形状が二次関数で表される放物線状の制御光パルスと合波し、光カー媒質において前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記信号光パルスをパルス全体にわたって線形にチャープさせ、その後信号光パルスを分散性媒質に通し、さらに信号光パルスを前記制御光パルスともう一度合波して光カー媒質で前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記信号光パルスを再びパルス全体にわたって線形にチャープさせることにより、前記信号光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状に、かつ前記信号光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換装置及び方法である。
【0025】
本発明は、この光フーリエ変換装置及び方法において、信号光が光カー媒質を2回通過することによってチャープが完全に補償され、出力においてチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることを特徴のひとつとする。
【0026】
本発明の第1の解決手段によると、
二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生する二次関数型光パルス発生器と、
信号光パルスと制御光パルスを合波する合波器と、
信号光パルスと制御光パルスとの相互位相変調によって信号光パルスをパルス全体又は幅広い時間領域にわたって線形にチャープさせるための光カー媒質と、
群速度分散を有する分散性媒質と
を備え、
入力された信号光パルスと制御光パルスとを前記合波器により合波して前記光カー媒質に入射し、前記光カー媒質において、前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記入力された信号光パルスを線形にチャープさせ、前記光カー媒質から出力された信号光パルスを前記分散性媒質に通すことにより、前記入力された信号光パルスの時間波形をその周波数スペクトルの形状に変換する光フーリエ変換装置が提供される。
【0027】
本発明の第2の解決手段によると、
二次関数又は放物線で表される形状の制御光パルスを発生する二次関数型光パルス発生器と、
信号光パルスと制御光パルスを合波する合波器と、
信号光パルスと制御光パルスとの相互位相変調によって信号光パルスをパルス全体又は幅広い時間領域にわたって線形にチャープさせるための光カー媒質と、
群速度分散を有する分散性媒質と
を備え、
入力された信号光パルスを前記分散性媒質に通過させ、前記分散性媒質から出力された信号光パルスと制御光パルスとを前記合波器により合波して前記光カー媒質に入射し、前記光カー媒質において、前記信号光パルスと前記制御光パルスとの相互位相変調によって前記分散性媒質から出力された信号光パルスを線形にチャープさせることにより、前記入力された信号光パルスの周波数スペクトルの形状をその時間波形に変換する光フーリエ変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光フーリエ変換装置及び方法においては、形状が放物線状である光パルスを制御光として用い、信号光との相互位相変調によって信号光に線形チャープを印加することができるため、より正確な光フーリエ変換を実現することができる。また本発明の光フーリエ変換装置及び方法は電気回路による信号処理を必要としないため、電気による処理速度の限界を超える高速な信号パルス列に対しても光フーリエ変換を実行することが可能となる。したがって、従来の光フーリエ変換装置の性能によって制限されていた光フーリエ変換の各種応用が本発明の光フーリエ変換装置及び方法によって実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
A.第1の実施形態
(装置構成)
図3に、本発明の第1の実施形態に係る光フーリエ変換装置の構成図を示す。光フーリエ変換装置は、光カップラ1、クロック信号抽出回路4、二次関数型光パルス発生器7、光遅延素子8、合波器9、光カー媒質10、光フィルタ11、及び、分散性媒質12を備える。
【0030】
光カー媒質10は三次の非線形屈折率をもつ媒質で、例えば単一モード光ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、半導体光増幅器、エルビウム添加光ファイバ増幅器、あるいは有機非線形材料などが用いられる。
【0031】
分散性媒質12は、例えば、1.3μmの波長帯域付近に零分散領域が存在する群速度分散特性を有するような単一モード光ファイバあるいは回折格子対、ファイバブラッググレーティング等を用いることができる。クロック信号抽出回路4は、光カップラ1により分岐された信号光パルスを入射し、信号光パルスに基づいてクロック信号を抽出する。なお、図中実線は光パルス(光信号)を、点線は電気信号を示す。以下のフーリエ変換装置、及び、二次関数型光パルス発生器の構成を示す図についても同様である。
【0032】
二次関数型光パルス発生器7は、クロック信号抽出回路から出力されたクロック信号に従い制御光パルスを発生する。光遅延素子8は、制御光パルスの中心時間位置が信号光パルスのタイミングと一致するように適当な時間遅延を与える。光フィルタ11は、信号光を制御光から分波するためのフィルタである。
【0033】
(二次関数型光パルス発生器)
二次関数型光パルス発生器7は放物線状の波形を有するパルス(以下、制御光パルス、二次関数型光パルスと記すこともある)を発生する装置で、例えば、以下の3つの形態で実現することができる。
【0034】
第1の形態は、正常分散をもつ光ファイバ増幅器を用いるものである(例えば、非特許文献4参照)。図4に、第1の形態による二次関数型光パルス発生器の構成を示す。第1の形態の二次関数型光パルス発生器7は、光パルス送信器13と正常分散光ファイバ増幅器14とを有する。光パルス送信器13は例えば、クロック信号抽出回路4を用いて信号光から抽出されたクロックで駆動されるモード同期レーザ、EA(Electro-Absorption:電界吸収型)変調器あるいはLN変調器の組み合わせによって作製する。光パルス送信器13から出力される光パルスを正常分散光ファイバ増幅器14に入力すると、正常分散と非線形光学効果によりパルスが波形全体にわたって線形にチャープされ、同時にパルスの形状が放物線状に整形される。
【0035】
第2の形態は、正常分散を有し分散値の大きさが長手方向に徐々に減少する光ファイバを用いるものである(例えば、特願2003-387563「光パルス発生方法および光パルス圧縮方法等」参照)。図5に、第2の形態による二次関数型光パルス発生器7の構成を示す。第1の形態と同様クロック信号によって駆動された光パルス送信器13から出力される光パルスを光増幅器15によって増幅し正常分散減少ファイバ16に入力すると、その出力で放物線状パルスが得られる。
【0036】
二次関数型光パルス発生器7は、光パルス送信器13と、光増幅器15と、正常分散減少ファイバ16とを備える。光パルス送信器13は、例えばモード同期ファイバレーザやモード同期半導体レーザを用いることができる。光通信波長帯での利用を念頭に置くと、特に適した波長としては1.5μm帯が挙げられる。発生される光パルスの波長及び波形などは、これに限らず任意のものを用いることができる。光増幅器15は、正常分散減少ファイバ16において非線形光学効果(自己位相変調効果)を生じさせるために用いる。なお、光増幅器15からの出力は非線形パルスである。ここで、非線形光パルスとは、例えば、正常分散減少ファイバ16で非線形光学効果を得るために必要なパワーを持つ光パルスを指す。
【0037】
正常分散減少ファイバ16は、正常分散値をもち分散値の大きさが長手方向に減少している光ファイバである。例えば、正常分散減少ファイバ16は、分散値の大きさが連続的に変化する1つのファイバを用いることができる。なお、本実施の形態において、また一般に、「分散値の大きさが減少する」とは、分散値の絶対値が減少していることをいい、このような正常分散ファイバを、正常分散減少ファイバと呼ぶ。正常分散減少ファイバ16は、例えば、石英ガラスを材料とする通常の光ファイバにおいて、コア径を長手方向に連続的に変化させることで実現できる。具体的には、例えば、製造時にファイバを線引きする過程において、線引きの速度を変えることでコア径を変化させることで実現可能である。また、正常分散減少ファイバ16は、分散値が一定である、あるいは長手方向に線形に変化する又は分散値が連続的に変化する何種類かのファイバを縦続接続することにより該ファイバの分散値の連続的な減少を離散的に近似してもよい。
【0038】
ここで正常分散減少ファイバ16の長手方向に沿った分散値の変化を表す関数D(z)を距離(長手方向の座標)zとともに減少するように
D(z)=D/(1+DΓz)
という形に選ぶことができる。ここで、Γは正常分散の大きさの減少の比率を表す。
【0039】
図5(b)に、正常分散減少ファイバ16の分散値の変化の例を示す。図中点線は、分散値が連続的に変化するファイバ16を表すものであり、実線は分散値が長手方向に線形に変化する3種類のファイバを縦続接続することにより近似された例である。なお、この例では3種類のファイバを用いているが、これに限らず適宜の数のファイバを用いることができる。また、関数D(z)をz=0での値(例えば、図5(b)に示す光ファイバの例では約-4ps/nm/km)で全て規格化し、D=1、入射端(z=0)での関数値はD(z)=1として表現してもよい。
【0040】
第3の形態は、振幅透過特性が二次関数で表される放物線状光フィルタによって、光パルスのスペクトル形状を放物線状に整形し、従来の光フーリエ変換装置(例えば図1に示す装置)によって放物線状のスペクトル形状を放物線状の光パルス波形に変換する形態である。図6に、第3の形態による二次関数型光パルス発生器7の構成を示す。第3の形態の二次関数型光パルス発生器7は、光パルス送信器13と、放物線状光フィルタ17と、光フーリエ変換装置18とを有する。第1の形態と同様クロック信号によって駆動された光パルス送信器13から出力される光パルスを放物線状光フィルタ17に入力してそのスペクトル形状を放物線状に整形し従来の光フーリエ変換装置18に入力すると、その出力で時間波形が放物線状である二次関数型光パルスが得られる。
【0041】
ここで、第3の形態では、光フーリエ変換装置18は、従来と同様のものを用いている。光フーリエ変換の特性は、放物線状のスペクトル形状をもつパルスの時間幅と位相変調器の特性の関係に依存する。よって、従来の光フーリエ変換器18に用いられる位相変調器において、変調特性が二次関数で近似できる時間範囲内に放物線上光フィルタ17を通過したパルスがあれば、出力で二次関数型の制御光パルスが得られる。
【0042】
(詳細な動作説明)
次に本実施形態における光フーリエ変換装置の動作を説明する。図3において、まず信号光パルス列を光カップラ1により分岐し、一方をクロック信号抽出回路4に接続してパルス列のクロック信号を抽出する。
【0043】
時間波形u(t)、周波数スペクトルU(ω)をもつ信号光パルス(波長λ)および二次関数型光パルス発生器7から出力された放物線状の制御光パルス(波長λ)を合波器9で合波し、光カー媒質10に入力する。このとき制御光パルスの中心時間位置が信号光パルスのタイミングと一致するよう光遅延素子8によって適当な時間遅延を与えておく。ここで信号光パルスの時間波形u(t)とその周波数スペクトルU(ω)は
【0044】
【数4】
JP0004471666B2_000005t.gif

【0045】
で関係づけられている。
【0046】
光カー媒質10において、信号光と制御光との相互位相変調によって信号光の瞬時周波数は制御光強度の時間変化に応じて変調される。なお、信号光の強度は制御光に比べて十分小さいとし信号光自体の強度変化による自己位相変調は無視することができる。長さlの光カー媒質10において信号光に生じる瞬時周波数の変化(チャープ)δωは、相互位相変調による位相変化δφ=(2π/λ)(2nI)lを微分して
【0047】
【数5】
JP0004471666B2_000006t.gif

【0048】
となる。ここでI(t)は制御光の単位面積あたりの強度、nはカー係数と呼ばれる定数である。
制御光である二次関数型光パルスは次式で与えられる時間波形u(t)をもつ。
【0049】
【数6】
JP0004471666B2_000007t.gif

【0050】
ここで、Tは二次関数型光パルスの中心から裾野までの時間幅を示す。例えば、Tは、二次関数型光パルスの強度がゼロになる時間と、パルスの中心(ピーク)の時間との幅を示す。なお、式(5)はパルスの振幅についての式であり、パワーは時間tの2乗の形で表現される。したがって相互位相変調によって信号光に生じるチャープは、式(4)及び(5)より
【0051】
【数7】
JP0004471666B2_000008t.gif

【0052】
で与えられる。ここでPは制御光のピークパワー、Aeffはコアの実効断面積であり、I(t)は、
I(t)=|u(t)|/Aeff
である。すなわち、光カー媒質10における位相変調特性は、式(4)に示すように制御光の波形に依存するが、制御光の強度が本実施の形態のように放物線状であるときは、信号光には時間幅2Tにわたって一様に線形チャープδω=-Kt(すなわち位相変調δφ=exp(iKt/2))が印加される。ただし、式(6)より
【0053】
【数8】
JP0004471666B2_000009t.gif

【0054】
(γは非線形定数)である。
【0055】
図7に、二次関数型光パルス列との相互位相変調によって信号光パルス列を構成する各光パルスに線形チャープが印加される様子を模式的に示す。ここでは信号光および制御光パルス列の繰り返し周波数を、二次関数型光パルスの時間幅2Tの逆数に選んでいる。図7上段は、信号光(実線)及び制御光(点線)の時間波形を示し、下段は信号光に印加される周波数シフトを示す。図示のように、制御光の中心から裾野までの時間幅をTとすると、信号光には時間幅2Tにわたり線形チャープが印加される。なお、チャープ率Kの大きさは制御光パルスのピークパワーPや光カー媒質10の長さl、光カー媒質10のカー係数(非線形屈折率)nを変えることによって調節することができる(式(7)参照)。
【0056】
なお、相互位相変調を最も効率よく発生させるには、信号光と制御光の波長差|λ-λ|に起因する群速度不整合によるウォークオフが小さいことが望ましい(上の説明ではウォークオフがゼロと仮定している)。ここで、ウォークオフとは、制御光と信号光の波長における群速度の違いによって、両者の間に生じる群遅延を指す。そのためには例えば分散値が非常に小さい光カー媒質10を用いるか、あるいは信号光と制御光が光カー媒質10で同じ時間遅延を受けるよう、λとλが光カー媒質10の零分散波長を挟んで互いに対称な波長になるようにλ及び/又はλを設定すればよい。例えば、このようなλは二次関数型光パルス発生器7の光パルス送信器13により設定可能である。
【0057】
光カー媒質10で線形チャープを印加された後の信号光パルスの時間波形u(t)は
【0058】
【数9】
JP0004471666B2_000010t.gif

【0059】
と表される。このとき信号光パルスの時間波形に生じる周波数シフトにより、各時間位置に異なる周波数が割り当てられている。
【0060】
光カー媒質10を通過した後、信号光は光フィルタ11によって制御光から分波され、分散性媒質12に入力される。分散性媒質12を通過した後の信号光パルスの時間波形v(t)は
【0061】
【数10】
JP0004471666B2_000011t.gif

【0062】
となる。ここで分散性媒質12の分散量をD=1/Kに選ぶと、式(9)は
【0063】
【数11】
JP0004471666B2_000012t.gif

【0064】
と書くことができる。したがって分散性媒質12の出力で得られる光パルスの時間波形v(t)は光フーリエ変換前の光パルスのスペクトル形状U(ω)(ただしω=t/D)に比例する。
【0065】
以上を言い換えると、光カー媒質10において各時間位置に異なる周波数が割り当てられた信号光は、分散性媒質12における群速度分散によって周波数に応じて異なる時間遅延を与えられる。その結果、時間軸上で信号光パルスの各周波数成分が分離され、特に分散量をD=1/Kに選ぶことによって、u(t)のフーリエ変換像U(ω)に比例する時間波形すなわちU(t/D)が得られる。
【0066】
(数値計算例)
次に、上記実施形態の光フーリエ変換装置に関する数値計算の一例を示す。本数値計算では制御光として、図5に示すような構成を有する二次関数型光パルス発生器7によって得られる放物線状パルスを用いる。制御光のエネルギーを20pJとし、二次関数型光パルスの発生に用いる正常分散減少ファイバ16の入力における分散値をD=-17.5ps/nm/km、非線形係数をγ=3.33W-1km-1とする。また、正常分散減少ファイバ16の分散値の減少の比率をΓ=0.062m-1とする。正常分散減少ファイバ16にはパルス幅が1.0psのガウス型パルスを入射している。
【0067】
図8に、正常分散減少ファイバ16の分散値の長手方向の変化(a)および出力における制御光パルスの波形(b)を示す。得られた制御光のピークパワーはP=1.58W、時間幅はT=12psである。なお、図8(b)に示す二次関数型光パルスの裾野部分は緩やかに減少しているため、強度がゼロになるのは12ps程度のところである。
【0068】
次に、図9は、光カー媒質10を伝搬した後光フィルタ11で分波された信号光の時間波形および周波数チャープを示す図である。同図で細実線は信号光に印加される周波数チャープの理論値を、細点線は従来のLN位相変調器によって信号光に印加される周波数チャープを示している。また、太実線は、本数値計算例におけるパワー及びチャープである。図中の矢印及び楕円は、左軸はパワー、右軸はチャープのグラフであることを示すものである。図9に示す波形及びチャープは、図3に示すような構成を有する系において、ガウス型の形状を有するパルス幅10psの信号光ならびに正常分散減少ファイバ16の出力で得られた上述の制御光とを合波器9によって合波し、光カー媒質10を伝搬させた後、光フィルタ11によって制御光から分波された信号光の時間波形と周波数チャープを示す。ここで信号光と制御光の波長間隔を20nmとしている。また光カー媒質10として、分散値-0.2ps/nm/km、非線形係数3.33W-1km-1、長さ1450mの分散シフトファイバを用いている。これらの値を式(7)に代入して得られるチャープ率の理論値はK=-0.212ps-2である。この理論値から求まる線形チャープ(同図の細実線)は数値計算結果とよく一致していることがわかる。また、従来の光フーリエ変換装置に用いられるLN位相変調器によって信号光に印加される周波数チャープ(同図の細点線)と比較して、チャープが線形である領域が大きく拡大していることがわかる。
【0069】
図10に、さらに、チャープした信号光を分散性媒質12に入力し伝搬させた後の信号光の波形(太線)を示す。ここで分散性媒質12の分散量はD=1/K=-4.72psに設定している。細実線はチャープが完全に線形である(光カー媒質10で線形チャープを信号光に印加した)として式(10)を用いて計算した信号光u(t)の光フーリエ変換後の波形v(t)、細点線は従来のLN位相変調器を用いて光フーリエ変換を行なったとき(LN型光変調器を用いて信号光にチャープを印加したとき)の結果である。LN位相変調器を用いたときはフーリエ変換像に歪みが生じているのに対し、本実施の形態に係る光フーリエ変換装置を用いることによってフーリエ変換像に歪みは生じず、また、変換後のパルス幅がチャープが完全に線形であるとしたときのパルス幅と同じであることがわかる。
【0070】
B.第2の実施形態
図11に、本発明の第2の実施形態に係る光フーリエ変換装置の構成図を示す。第1の実施形態に係る光フーリエ変換装置との相違は、分散性媒質12が本実施形態では合波器9の前に位置していることである。他の構成は上述と同様であるので、その説明を省略する。また、二次関数光パルス発生器7は第1の実施形態と同様、図4~図6のうちのいずれかの構成をとることができる。
【0071】
次に本実施形態における光フーリエ変換装置の動作を説明する。図11において、光カップラ1で分岐された時間波形u(t)、周波数スペクトルU(ω)をもつ信号光パルス(波長λ)をまず分散性媒質12に入力する。分散性媒質12の出力における信号光パルスの周波数スペクトルU(ω)は
【0072】
【数12】
JP0004471666B2_000013t.gif

【0073】
で与えられる。次に信号光パルスおよび二次関数型光パルス発生器7から出力された放物線状の制御光パルス(波長λ)を合波器9で合波し、光カー媒質10に入力する。このとき制御光パルスの中心時間位置が信号光パルスのタイミングと一致するよう光遅延素子8によって適当な時間遅延を制御光パルスに与えておく。光カー媒質10では第1の実施形態と同様、制御光との相互位相変調によって信号光に線形チャープδω(式(6))が印加される。光カー媒質10を通過した後、信号光と制御光は光フィルタ11によって分波される。光フィルタ11の出力における信号光の周波数スペクトルV(ω)はU(ω)との畳み込み積分で与えられ、
【0074】
【数13】
JP0004471666B2_000014t.gif

【0075】
となる。ここで光カー媒質10によって印加される線形チャープのチャープ率Kと分散性媒質12の分散量DがD=1/Kを満たすよう設定すると、式(12)は
【0076】
【数14】
JP0004471666B2_000015t.gif

【0077】
と書くことができる。ここで、
【0078】
【数15】
JP0004471666B2_000016t.gif

【0079】
を用いた。したがって光フィルタ11によって分波された信号光パルスの周波数スペクトルV(ω)は光フーリエ変換前の光パルスの時間波形u(t)(ただしt=-Dω)に比例する。
【0080】
C.第3の実施形態
図12に本発明の第3の実施形態に係る光フーリエ変換装置の構成図を示す。第3の実施形態に係る光フーリエ変換装置は、光カップラ1、クロック信号抽出回路4、二次関数型光パルス発生器7、光遅延素子8、合波器9、光カー媒質10、光フィルタ11、分散性媒質12、光サーキュレータ20及び20’を備える。図3に示す光フーリエ変換装置と同符号のものについては、上述と同様であるので説明を省略する。
【0081】
同図において、光カップラ1で分岐された信号光はまず光サーキュレータ20のポート20aに入力される。ポート20aはポート20b、分散性媒質12、および光サーキュレータ20’のポート20’bを介して、ポート20’aに接続される。光サーキュレータ20’のポート20’aとポート20’cとは合波器9、光カー媒質10、光フィルタ11を介してループ状に接続される。光フィルタ11によって分波された信号光はポート20’c、ポート20’bを介して再び分散性媒質12を通過した後、光サーキュレータ20のポート20bを介してポート20cより出力される。合波器9の一方の入力には光サーキュレータ20’のポート20’aから信号光が入射され、もう一方の入力には二次関数型光パルス発生器7および光遅延素子8によって生成された制御光が入射される。光遅延素子8は光カー媒質10において制御光パルスの中心時間位置が信号光パルスのタイミングと一致するために制御光に適当な時間遅延を与えるのに用いられる。
【0082】
次に本実施形態における光フーリエ変換装置の動作を説明する。図12において、分散性媒質12の出力における信号光パルスの時間波形u(t)は入力信号光パルスの時間波形u(t)を用いて畳み込み積分により次式で表される。
【0083】
【数16】
JP0004471666B2_000017t.gif

【0084】
次に信号光は制御光と合波された後光カー媒質10に入力され、制御光との相互位相変調により信号光に線形チャープδω(式(6))が印加される。その結果光カー媒質10の出力における信号光パルスの時間波形u(t)はu(t)を用いて
【0085】
【数17】
JP0004471666B2_000018t.gif

【0086】
と表される。さらに信号光は光フィルタ11によって制御光より分波された後もう一度分散性媒質12に入力される。その結果信号光パルスの時間波形v(t)はu(t)を用いて
【0087】
【数18】
JP0004471666B2_000019t.gif

【0088】
と書くことができる。分散性媒質12の分散量をD=1/Kに設定すると、式(14)~(16)より最終的に出力される信号光パルス波形は
【0089】
【数19】
JP0004471666B2_000020t.gif

【0090】
となる。ここでU(ω)(ただしω=t/D)はu(t)のフーリエ変換(式(1))である。すなわち、光フーリエ変換装置の出力時間波形v(t)は、光フーリエ変換装置への入力波形のスペクトル形状U(ω)に比例している。本実施形態では信号光が分散性媒質12を2回通過することによってチャープが完全に補償され、第1の実施形態とは異なり、出力ではチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることに注意する。
【0091】
なお、出力される信号光パルスの周波数スペクトルは
【0092】
【数20】
JP0004471666B2_000021t.gif

【0093】
となり、光フーリエ変換装置の出力波形のスペクトル形状V(ω)は、光フーリエ変換装置への入力の時間波形u(t)に比例している。
【0094】
D.第4の実施形態
図13に、本発明の第4の実施形態に係る光フーリエ変換装置の構成を示す。第4の実施形態に係る光フーリエ変換装置は、光カップラ1、クロック信号抽出回路4、二次関数型光パルス発生器7、光遅延素子8及び8’、合波器9及び9’、光カー媒質10、光フィルタ11、分散性媒質12、分波器19、光サーキュレータ20及び20’を備える。図3に示す光フーリエ変換装置と同符号のものについては、上述と同様であるので説明を省略する。
【0095】
同図において、信号光はまず、二次関数型光パルス発生器7および光遅延素子8によって生成された制御光と合波器9によって合波される。合波器9の出力は光サーキュレータ20のポート20a、ポート20b、光カー媒質10、および光サーキュレータ20’のポート20’b、ポート20’aを介して、制御光と信号光を分波する分波器19に接続される。分波器19は、制御光と信号光を分波する。分波器19の一方の出力(信号光)は分散性媒質12を介して、もう一方の出力(制御光)は光遅延素子8’を介して、それぞれ合波器9’の各入力に接続される。合波器9’において制御光および信号光が再び合波される。合波器9’の出力は光サーキュレータ20’のポート20’c、ポート20’b、光カー媒質10、光サーキュレータ20のポート20b、ポート20cを介して光フィルタ11に接続される。光フィルタ11によって信号光が制御光より分波される。光遅延素子8および8’は光カー媒質10において制御光パルスの中心時間位置が信号光パルスのタイミングと一致するために制御光に適当な時間遅延を与えるのに用いられる。
【0096】
次に本実施形態における光フーリエ変換装置の動作を説明する。図13において、制御光と合波され光カー媒質10に入力された信号光が光カー媒質10において線形チャープを受けた後の時間波形u(t)は、もとの信号光パルスの時間波形u(t)を用いて次式で表される。
【0097】
【数21】
JP0004471666B2_000022t.gif

【0098】
次に分波器19によって一旦制御光より分波され分散性媒質12を通過した後の信号光の時間波形u(t)はu(t)を用いて畳み込み積分により次式で表される。
【0099】
【数22】
JP0004471666B2_000023t.gif

【0100】
制御光と再び合波され光カー媒質10を通過しもう一度線形チャープを印加された後の信号光の波形v(t)はu(t)を用いて
【0101】
【数23】
JP0004471666B2_000024t.gif

【0102】
と書くことができる。分散性媒質12の分散量をD=1/Kに設定すると、式(19)~(21)より最終的に光フィルタ11により分離され、出力される信号光パルス波形は
【0103】
【数24】
JP0004471666B2_000025t.gif

【0104】
となる。ここでU(ω)[ω=t/D]は光フーリエ変換装置への入力時間波形u(t)のフーリエ変換(式(1))である。本実施形態では信号光が光カー媒質10を2回通過することによってチャープが完全に補償され、その結果第1の実施形態とは異なり、出力ではチャープのないトランスフォームリミットな波形が得られることに注意する。
【0105】
なお、出力される信号光パルスの周波数スペクトルは、上述の式(18)と同様にして
【0106】
【数25】
JP0004471666B2_000026t.gif

【0107】
となり、光フーリエ変換装置の出力波形のスペクトル形状V(ω)は、光フーリエ変換装置への入力の時間波形u(t)に比例している。
【産業上の利用可能性】
【0108】
光フーリエ変換技術を利用したさまざまな応用が、超高速光通信や超短パルスモード同期レーザ、光信号処理などの分野において提案されており、これらに関連する産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】従来の光フーリエ変換装置の構成を示す図である。
【図2】LN位相変調器によって光パルスに印加される位相変調および周波数シフトの大きさを示す模式図である。点線は理想的な位相変調特性および周波数シフトの大きさを示している。
【図3】本発明の光フーリエ変換装置の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図4】図3における二次関数型光パルス発生器7の構成(第1の形態)を示す図である。
【図5】図3における二次関数型光パルス発生器7の構成(第2の形態)を示す図である。
【図6】図3における二次関数型光パルス発生器7の構成(第3の形態)を示す図である。
【図7】制御光と信号光との相互位相変調によって信号光に線形チャープが印加される様子を示す模式図である。
【図8】図5における正常分散減少ファイバ16の分散値の長手方向の変化(a)、ならびに図5において正常分散減少ファイバを用いたときに二次関数型光パルス発生器7の出力で得られる制御光パルスの時間波形(b)、を示す図である。
【図9】図3において光カー媒質10を伝搬した後光フィルタ11で分波された信号光の時間波形および周波数チャープを示す図である。同図で細実線は信号光に印加される周波数チャープの理論値を、細点線は従来のLN位相変調器によって信号光に印加される周波数チャープを示している。
【図10】図3中の分散性媒質12の出力における信号光の時間波形を示す図である。同図で細実線は光カー媒質10で理想的な線形チャープを信号光に印加したときの光フーリエ変換の結果を、細点線は従来のLN型光変調器を用いて信号光にチャープを印加したときの光フーリエ変換の結果を示している。
【図11】本発明の光フーリエ変換装置の第2の実施形態の構成を示す図である。
【図12】本発明の光フーリエ変換装置の第3の実施形態の構成を示す図である。
【図13】本発明の光フーリエ変換装置の第4の実施形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1 光カップラ
2 LN位相変調器
3 分散性媒質
4 クロック信号抽出回路
5 位相シフタ
6 電気増幅器
7 二次関数型光パルス発生器
8、8’ 光遅延素子
9、9’ 合波器
10 光カー媒質
11 光フィルタ
12 分散性媒質
13 光パルス送信器
14 正常分散光ファイバ増幅器
15 光増幅器
16 正常分散減少ファイバ
17 放物線状光フィルタ
18 光フーリエ変換装置
19 分波器
20、20’光サーキュレータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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