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明細書 :ガリウム含有窒化物単結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4489446号 (P4489446)
公開番号 特開2005-206403 (P2005-206403A)
登録日 平成22年4月9日(2010.4.9)
発行日 平成22年6月23日(2010.6.23)
公開日 平成17年8月4日(2005.8.4)
発明の名称または考案の名称 ガリウム含有窒化物単結晶の製造方法
国際特許分類 C30B  29/38        (2006.01)
C30B  19/04        (2006.01)
C30B  19/12        (2006.01)
FI C30B 29/38 D
C30B 19/04
C30B 19/12
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2004-013114 (P2004-013114)
出願日 平成16年1月21日(2004.1.21)
審査請求日 平成18年11月22日(2006.11.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】福田 承生
【氏名】デイルク エーレントラウト
【氏名】吉川 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開昭56-160400(JP,A)
特開平01-132117(JP,A)
特開2004-244307(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
結晶成長チャンバ内の容器に保持した溶融ガリウムと窒素ガスの反応により種結晶基板上
にガリウム含有窒化物単結晶を成長させる方法において、
ガリウム(Ga)の共晶合金融液を形成し、
メッシュ状、ストライプ状、又は穴あき水玉模様の触媒金属を付着させた種結晶基板を
転・上下駆動軸の下端部に取り付けて該共晶合金融液中に浸漬し、
該融液の表面の窒素供給源を含有する空間部から該共晶合金融液中に溶け込む窒素と共晶
合金成分のガリウムとの該種結晶基板面における反応によって、
該種結晶基板表面にガリウム含有窒化物単結晶相の薄膜該種結晶基板を回転させながら
グラフォエピタキシー(Grapho-epitaxy)法により該種結晶基板表面の全てを覆うように
成長させることを特徴とするガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【請求項2】
触媒金属は、白金(Pt)及び/又はイリジウム(Ir)であることを特徴とする請求項1記載の
ガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【請求項3】
ガリウム(Ga)の共晶合金融液を形成する金属は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ル
テニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、ビスマ
ス(Bi)、又は金(Au)から選ばれる金属の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求
項1記載のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【請求項4】
該窒素供給源を含有する空間部の圧力は0.1~0.15MPaであることを特徴とする請求項1記
載のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【請求項5】
窒素供給源は窒素、NH、又は窒素含有化合物ガスであることを特徴とする請求項1記
載のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【請求項6】
種結晶基板は、サファイア単結晶であることを特徴とする請求項1記載のガリウム含有窒
化物単結晶の製造方法。
【請求項7】
種結晶基板は、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、又はインジウム(In)を少なくとも含む
窒化物の結晶層を有する基板であることを特徴とする請求項1記載のガリウム含有窒化物
単結晶の製造方法。
【請求項8】
ガリウム(Ga)の共晶合金融液として、Al-Ga-Inの共晶合金融液又は、Gaと、Al、In以外
の金属との共晶合金にさらにアルミニウム(Al)とインジウム(In)を溶解した共晶合金融液
を用いることにより式AlxGa1-x-yInyN(0<x<1、0晶の製造方法。
【請求項9】
結晶成長チャンバは縦型とし、チャンバ内の縦方向に温度の異なる温度領域を少なくとも
2つ以上形成し、種結晶基板を上下駆動軸で引き上げて低温の温度領域に配置して結晶成
長させることを特徴とする請求項1記載のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリウム(Ga)を含有する融液から基板上にGaN,AlGaIn等のガリウム含有窒化物
の単結晶を成長する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN,AlGaIn等の窒化物を応用する電子光学機器は、これまで、サファイア(Al2O3)基板
又はSiC基板上にヘテロエピタキシャル成長した窒化物を用いている。最も良く用いられ
ているMOCVD法においては、GaNが気相成長するが、反応速度が遅い、単位面積当たりの転
位数が多い(最小で約108/cm2)などの問題に加え、バルク単結晶の生成が不可能であっ
た。
【0003】
気相ハロゲンを利用するエピタキシャル成長法(HVPE法)が提案されている(非特許文献1
,2)。この方法を利用することによって直径2インチのGaN基板を製造できるが、表面の
欠陥密度が約107~109/cm2であるため、レーザーダイオードに必要とされる品質を十分
確保できない。
【0004】
近年、溶媒に溶質を飽和状態まで溶解させた後、温度や圧力などの条件をコントロールし
、GaN系結晶を成長させる融液合成法が提案されている(非特許文献3)。
【0005】
一般に、融液合成法は固相反応法や気相成長法に比して高品質な結晶を得やすいという特
徴があり、GaとMg,Ca,Zn,Be,Cdなどを含む融液を使用して直径6~10mmのGaN単結晶が得ら
れている(非特許文献4、特許文献1)。しかしながら、単結晶の合成には2000MPaとい
う極めて高い圧力が必要であり、危険を伴う。また、工業生産の観点から、この方法の事
業化には超高圧装置のために非常に高価な設備が必要となる。
【0006】
これらの方法に代えて、III族金属の融液に窒素原子を含有するガスを注入する方法(特
許文献2)や、Naなどの溶媒を使用して比較的低圧でIII族金属の融液と窒素を含有する
ガスとの反応によりIII族窒化物結晶を製造する方法が知られている(特許文献3)。
【0007】

【非特許文献1】M.K.Kelly, O. Ambacher「Opticalpatterning of GaN films」, Appl.Phys.Lett. 69,(12),(1996)
【非特許文献2】W.S.Wrong, T. Samds「Fabricationof thin-film InGaN light-emitting diode membranes」,Appl. Phys. Lett.75 (10) (1999)
【非特許文献3】井上 他「日本結晶成長学会誌」,27,P54(2000)
【非特許文献4】S. Porowski 「Thermodynamicalproperties of III-V nitrides and crystal growth of GaN at high N2 pressure」, J. Cryst. Growth,178,1997),174-188
【特許文献1】特表2002-513375号公報
【特許文献2】特開平11-189498号公報
【特許文献3】特開2001-64098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、危険の少ない、安価な設備により達成できる、ガリウム含有窒化物単結晶の融
液成長を可能とする方法、特に、常圧で実施できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、種結晶基板上にガリウム含有窒化物単結晶をグラフォエピタキシー(Gr
apho-epitaxy)法により成長させる方法である。
すなわち、本発明は、(1)結晶成長チャンバ内の容器に保持した溶融ガリウムと窒素ガ
スの反応により種結晶基板上にガリウム含有窒化物単結晶を成長させる方法において、
ガリウム(Ga)の共晶合金融液を形成し、メッシュ状、ストライプ状、又は穴あき水玉模様
の触媒金属を付着させた種結晶基板を回転・上下駆動軸の下端部に取り付けて該共晶合金
融液中に浸漬し、該融液の表面の窒素供給源を含有する空間部から該共晶合金融液中に溶
け込む窒素と共晶合金成分のガリウムとの該種結晶基板面における反応によって、該種結
晶基板表面にガリウム含有窒化物単結晶相の薄膜該種結晶基板を回転させながらグラフ
ォエピタキシー(Grapho-epitaxy)法により該種結晶基板表面の全てを覆うように成長さ
せることを特徴とするガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0010】
また、本発明は、(2)触媒金属は、白金(Pt)及び/又はイリジウム(Ir)であることを特
徴とする請求項1記載のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法。
【0011】
また、本発明は、(3)ガリウム(Ga)の共晶合金融液を形成する金属は、アルミニウム(A
l)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、
オスミウム(Os)、ビスマス(Bi)、又は金(Au)から選ばれる金属の少なくとも1種以上であ
ることを特徴とする上記(1)のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0012】
また、本発明は、(4)該窒素供給源を含有する空間部の圧力は0.1~0.15MPaであること
を特徴とする上記(1)のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0013】
また、本発明は、(5)窒素供給源は窒素、NH、又は窒素含有化合物ガスであることを
特徴とする上記(1)のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0014】
また、本発明は、(6)種結晶基板は、サファイア単結晶であることを特徴とする上記(
1)のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0015】
また、本発明は、(7)種結晶基板は、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、又はインジウ
ム(In)を少なくとも含む窒化物の結晶層を有する基板であることを特徴とする上記(1)
のガリウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0016】
また、本発明は、(8)ガリウム(Ga)の共晶合金融液として、Al-Ga-Inの共晶合金融液
又は、Ga と、Al、In以外の金属との共晶合金にさらにアルミニウム(Al)とインジウム(In
)を溶解した共晶合金融液を用いることにより式AlxGa1-x-yInyN(0<x<1、0リウム含有窒化物単結晶の製造方法、である。
【0017】
また、本発明は、()結晶成長チャンバは縦型とし、チャンバ内の縦方向に温度の異な
る温度領域を少なくとも2つ以上形成し、種結晶基板を上下駆動軸で引き上げて低温の温
度領域に配置して結晶成長させることを特徴とする上記(1)のガリウム含有窒化物単結
晶の製造方法、である。
【0018】
本発明の方法において用いられるグラフォエピタキシー法は、基板表面に配置の揃った模
様を付け、これによって整列した結晶核を種に単結晶化させる方法であり、これまで、主
に有機物薄膜の方位制御結晶成長において、又は液晶をSiO2アモルファス基板上に方位制
御成長させる場合などにおいて、気相法又は液相法による実施例が示されてきた(I. Smi
th, DC. Flanders, Appl. Phys. Lett.32,(1978),349、HI. Smith, MW. Geis, CV. Thomp
son, HA. Atwater, J. Cryst.Growth,63,(1983),527、T.Kobayashi, K. Takagi, Appl.Ph
ys. Lett. 45,(1984),44、DC. Flanders, DC. Shaver, HI.Smith, Appl.Phys. Lett. 32,
(1978),597 [液晶])が、窒化物薄膜のような結晶成長速度に強い方位依存性を有するも
のにおいても有効な方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、気相ハロゲンを利用するエピタキシャル成長法(HVPE法)のGaN基板の問
題点である表面の欠陥密度(約107~109/cm2)を約104/cm2程度以下に低減でき、白色照
明用LEDの高輝度化やレーザーダイオードに必要とされる品質を十分確保できるようにな
る。また、バルクデバイスはもとより、基板として広範囲な応用展開も可能となる。また
、窒素ガスの供給に高圧を必要としないため、工業生産の観点からも現実的な設備構成と
なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の方法では、Gaを含有する融液から基板上にガリウム含有窒化物単結晶をグラフォ
エピタキシー成長させる。Gaを含有する融液はガリウムの共晶合金融液からなる。この共
晶合金融液は該共晶合金融液の表面の窒素供給源を含有する空間部から該融液中に溶け込
む窒素の溶媒となる。周囲を加熱できる結晶成長チャンバ内の容器に保持した共晶合金融
液に溶け込んだ窒素とGaの反応によって触媒金属を付着させた種結晶基板上にガリウム含
有窒化物単結晶を成長させる。
【0021】
種結晶基板としては単結晶中のエッチピット等の欠陥を低減するためには格子定数がガリ
ウム含有窒化物単結晶と近いことが望ましい。そのような基板としては、サファイア、Si
C、ZnO、LiGaO2などが挙げられる。また、ホモエピタキシャル成長させる組成と同じ構造
を有し、ほぼ等しい格子定数を有する結晶層を有する基板、すなわち、ガリウム、アルミ
ニウム、又はインジウムを少なくとも含む窒化物の結晶層を有する基板が好ましい。
【0022】
共晶合金融液のガリウム供給源として用いられるガリウム含有化合物は、主にガリウム含
有窒化物またはその前駆体で構成される。前駆体はガリウムを含有するアジド、アミド、
アミドイミド、イミド、水素化物、金属間化合物、合金などを使用できる。
【0023】
Gaとの共晶合金を形成する金属は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)
、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、ビスマス(Bi)、又は
金(Au)から選ばれる少なくとも1種以上の金属である。
【0024】
Al、In、 Ru、Rh、Pd、Re、Os、又はAuは全て遷移金属であり、GaなどのIII族元素と窒化
物を形成する反応はしない。Al、Inは、Ga含有窒化物化合物の構成元素であり、その構成
元素自身が溶媒となる(セルフフラックス)ので、純度を高められる。また、Biは、窒素
と同属の典型金属でありながらGaなどのIII族元素と窒化物を形成する反応はしない。Ga
と共晶合金を形成するこれらの金属は、窒化物の溶解する温度(結晶が晶出する温度)を
800~900℃程度に低くする。
【0025】
共晶合金融液に対する窒素の溶解度は高ければ高いほど良い。窒素の溶解度は共晶合金の
組成比に依存する。この組成比(モル比)は、共晶合金を形成する金属:Ga=1:3~7程
度、好ましくは1:4~5程度とする。この範囲から離れると窒素の溶解度が低減する。
【0026】
2元系共晶合金組成の具体例は下記のとおりである。
Ga1-xAlx,Ga1-xInx, Ga1-xRux,Ga1-xRhx,Ga1-xPdx,Ga1-xRex,Ga1-xOsx,Ga1-xBix,Ga1-xAu
x(0<x<1, 好ましくは0.3Ga1-x-yRuxRhy,Ga1-x-yRuxPdy,Ga1-x-yRuxRey,Ga1-x-yRuxOsy,Ga1-x-yRuxBiy,Ga1-x-yRux
Auy,Ga1-x-yRhxPdy,Ga1-x-yRhxRey,Ga1-x-yRhxOsy,Ga1-x-yRhxBiy,Ga1-x-yRhxAuy,Ga1-x-
yPdxRey,Ga1-x-yPdxOsy,Ga1-x-yPdxBiy,Ga1-x-yPdxAuy,Ga1-x-yRexOsy,Ga1-x-yRexBiy,Ga
1-x-yRexAuy,Ga1-x-yOsxBiy,Ga1-x-yOsxAuy,Ga1-x-yBixAuy,(0<x<1,0例えば、AlxGa1-x-yInyN(0<x<1、0融液やGaとAl、In以外の金属との共晶合金にさらに溶質としてAlとInを加え
共晶合金融液を用いる。AlN-GaN-InNの固溶体、そのアミド[(Ga,Al,IN)Cl3(NH3
6]などの気相法などにより作成された市販の窒化物を融液として用いることもできる。
【0028】
これらの共晶合金融液を形成するには、Gaとの共晶合金を形成する金属及びGa供給源を所
望の組成比になるように必要な原料を適正の割合で準備し、反応容器に充填し、反応容器
内で加熱し、共晶温度(この温度が冷却時には窒化物単結晶の晶出温度に当たる)以上10
0~150℃程度高い温度で加熱することで溶解させる。この共晶温度より高い温度への過熱
(overheating)により、窒素をより多く融液中に溶かすことができる。ただし、高すぎ
ると溶媒の成分が揮発するなど、好ましくない現象が発生する。また、過熱により融液が
充分に移動し、触媒表面に均質に分布する。
【0029】
上記の共晶合金融液中に触媒として付着させた種結晶基板を浸漬し、該共晶合金融液の表
面上の窒素供給源を含有する空間部から該融液中に溶け込む窒素とガリウムとの該種結晶
基板面における反応によって、該種結晶基板表面にガリウム含有窒化物単結晶相を成長さ
せる。
【0030】
種結晶基板上に付着させる触媒金属としては、好ましくは白金(Pt)及び/又はイリジウム
(Ir)を用いる。図1に、触媒金属を用いるグラフォエピタキシー法を平面図で模式的に示
す。また、図2に、結晶成長チャンバ内の容器に保持した溶融ガリウムと窒素ガスの反応
により種結晶基板上にガリウム含有窒化物単結晶を成長させる方法を概念的に示している
。図1(A)に示すように、単結晶基板1をメッシュ状、ストライプ状、又は穴あき水玉
模様に覆うような形で触媒2を配置して付着するのが好ましい。メッシュ、ストライプの
幅は約5ミクロン以上約500ミクロン以下、より好ましくは約50~70ミクロンで可能である

【0031】
共晶合金融液の表面上の窒素供給源を含有する空間部の雰囲気は、N2ガスのみ、又はNH3
ガスのみ、又はN2+NH3の混合ガス(混合比は、N2:NH3=1-x:x,(0<x<1、好ましくは0.05に常圧よりややプラス圧の状態に保持するとよい。すなわち、0.1~0.15MPa程度、好まし
くは0.1~0.11MPa程度の圧力とする。
【0032】
融液のガリウム供給源の原料として、例えば、GaNやGaCl3(NH36などの窒素化合物を用
いた場合、原料中の窒素も窒素供給源になり得る。
【0033】
図2に示すように、種結晶基板1が共晶温度に保持された融液内に浸された際に、種結晶
基板1の回転・引上げ軸14を通じて熱が逃げることにより、種結晶基板1の表面が結晶
の晶出温度になる。すると、図1(B)に示すように、触媒2の周辺にグラフォエピタキ
シー成長した窒化物3が形成される。そして、図1(C)に示すように、単結晶化し、成
長したGa含有窒化物単結晶4で種結晶基板1の表面の全てが覆われ、膜厚100~200μm程
度のGaを含有する窒化物単結晶薄膜が合成される。
【0034】
結晶が晶出する温度は、500~900℃、好ましくは600~750℃とする。チャンバ内の共晶合
金融液の横方向の温度差を±5℃/cm以下という極めて均質な温度分布とし、溶解領域と結
晶化領域の温度差は、融液内において充分にGa源、窒素の輸送が確保できる範囲に設定す
ることにより、高品質な単結晶を得ることができる。また、種結晶基板の面内における温
度分布を均質にし、均等にガリウム含有窒化物単結晶を成長させるためには、種結晶基板
を回転・上下駆動軸の下端に垂直方向に吊り下げた状態で約10~50rpm程度で回転可能と
することが好ましい。
【0035】
ガリウム含有窒化物は、ドナー、アクセプター、磁気性、または光学活性のドープを含有
できる。ドナーとして、Znなどのガリウムより価数の小さい元素をガリウムのサイトに固
溶させることにより過剰の電子を生み出すことができる。アクセプターとして、Geなどの
ガリウムより価数の大きい元素をガリウムのサイトに固溶させることにより電子の不足状
態を生み出すことができる。磁気性はFe、Ni、Co、Mn、Crなどの磁性イオンを混晶として
含有することにより実現する。光学活性は、希土類元素などを微量にドープすることによ
り実現する。
【0036】
図3は、本発明の方法を実施するために好適な3ゾーン式LPE(liquid phase epitaxy
)炉を用いる結晶成長装置の構成例を示す図である。図3を参照すると、石英チャンバ1
1内の保温材12上に設置した坩堝13内には、Gaを含有する共晶合金の融液が収容され
ている。石英チャンバ11の縦方向には温度の異なる領域を実現できるように、石英チャ
ンバ11の周囲に縦方向に多段階に、それぞれ独立に動作させるヒーターH1、H2、H
3・・・が具備されている。ヒーターは上<中<下の順で温度が高くなるように設定する

【0037】
坩堝13の上端部内の融液が結晶の晶出する温度よりやや高くなるように設定する。これ
によって融液の対流を促すことにより、溶質のGaを融液内に均質に分布させることができ
る。炉の断熱材を厚くすることで放熱を防いで温度を維持し、ヒーターのカンタル線の巻
き間隔とその直径を調整して石英チャンバ11内の横方向には均質な温度分布を有するよ
うにする。この温度分布は、チャンバの内壁面からチャンバの中心軸線方向への距離1cm
につき±5℃以下となるように温度維持することが好ましい。
【0038】
坩堝13内の気体と融液との境界領域である気液界面に接するように、種結晶基板1は回
転・上下駆動軸14により保持される。図3では複数枚の種結晶基板を同心状に回転・上
下駆動軸14に吊り下げた状態を示す。結晶の成長開始時には種結晶基板1を低温域に配
置するようにする。この種結晶基板1の回転・上下駆動軸14は、石英チャンバ11の上
部の蓋15を通して外部につながっており、外部から種結晶基板1の位置を変更できるよ
うになっている。すなわち、種結晶基板1の回転・上下駆動軸14は、種結晶基板1及び
成長したガリウム含有窒化物結晶を引き上げることが可能なように、外部からその位置を
変更可能に構成されている。
【0039】
窒素原料は、窒素ガス供給管16を通して、石英チャンバ11外から石英チャンバ11内
の窒素供給源を含有する空間部21に雰囲気ガスとして供給可能となっている。この際、
石英チャンバ11内の窒素圧力を調整するために、圧力調整機構が設けられている。この
圧力調整機構は、例えば、圧力計17及びガス導入用バルブ18などにより構成されてい
る。
【0040】
石英チャンバ11の窒素供給源を含有する空間部21への 雰囲気ガス導入前には石英チ
ャンバ11内から空気及び残存水分などを除去するために10-6Torrまで減圧することがで
きる真空排気設備(図示せず)を設ける。
【0041】
図3の結晶成長装置は、基本的に、坩堝13内で、Gaの共晶合金融液と、窒素原料とから
、Ga含有窒化物結晶を成長させるものであって、雰囲気を制御したままで種結晶基板1の
回転・上下駆動軸14を移動させることで、種結晶基板1と融液と窒素原料とが接するこ
とができる領域を移動可能となっている。
【0042】
坩堝13内において、Gaの共晶合金融液と窒素原料が反応し種結晶基板1を核にしてGa含
有窒化物が結晶成長する。ここで、種結晶基板1の回転・引上げ軸14を0.05~0.1mm/ho
ur程度の速度で移動することで、種結晶基板1はチャンバ11内の縦方向の温度差に加え
、種結晶基板1が固定されている回転・上下駆動軸14から熱を奪われることで、低温に
なり、種結晶基板1の表面に選択的にガリウム含有窒化物の単結晶が成長し、さらに種結
晶基板1及びその周辺に成長したGa含有窒化物結晶が移動し、さらに大きなGa含有窒化物
単結晶を成長させることが可能となる。すなわち、種結晶基板1と融液及び窒素原料が接
する領域が移動することで、結晶成長領域が移動し、Ga含有窒化物単結晶が成長し、大型
化する。この時、Ga含有窒化物単結晶の成長は、気液界面で主に起こる。
【0043】
すなわち、Gaが十分ある状態で、Gaの共晶合金の窒素ガス溶解作用で窒素が連続的に融液
中に供給され、触媒金属の作用によって継続的なGa含有窒化物単結晶の成長が可能となり
、Ga含有窒化物単結晶を所望の大きさに成長させることが可能となる。
【実施例1】
【0044】
1.3ゾーン式LPE炉(liquid phase epitaxy)を用いた。反応容器として坩堝を用い
その中に溶質としてGa及び溶媒金属(モル比でBi:Rh:Pd=1:1:1)をモル比で4:1 の
割合で充填した。
2.触媒となるPtを大きさ5mm×5mm×0.5mm厚のサファイア単結晶からなる種結晶基板の
表面にメッシュ状に被せた。メッシュの線の幅は0.1mm、間隔は0.1mmとした。
3.ロータリーポンプ及びデヒュージョンポンプにより石英チャンバー内を真空(~10-5
Torr程度)にした後に高純度N2ガス(99.9999%)を導入し約0.11MPa(空気の逆流を防ぐ
ためややプラス圧)にした。石英チャンバ内の温度分布は横方向に±3℃/cmとして高い均
質性を有するようにした。
4.3時間程度で反応温度800℃(結晶晶出温度より100~150℃程度高温)へ加熱した。
5.Ptメッシュ付き種結晶基板を30rpmで回転させながら共晶合金融液に浸した。
6.10時間程度反応させながら結晶晶出温度(650℃)まで炉の温度調整器により制御し
ながら炉の温度を下げて徐冷した。
7.反応後、Ptメッシュ付き種結晶基板を回転させながら上昇速度0.05mm/hourで共晶合
金融液から離した。
8.炉内全体を10時間程度かけて冷却した。
9.結晶を成長させた基板を炉から取り出した。
【0045】
図4に、得られたGaNの粉末X線回折結果を、図5に、ロッキングカーブの半値幅を示す
。得られた結晶は、GaNであり、膜厚100~200μm、結晶性は、ロッキングカーブの半値幅
がCVD法で作製されたGaNの1/3程度であり、良好な単結晶であった。表面の欠陥密度は2×
104/cm2程度であった。
【実施例2】
【0046】
1.3ゾーン式LPE炉(liquid phase epitaxy)を用いた。反応容器として坩堝を用い
その中に溶質としてGa及び溶媒金属(モル比でBi:Ru:Os=1:1:1)をモル比で4:1 の
割合で充填した。
2.触媒となるIrを大きさ(5mm×5mm×0.5mm厚)のサファイア単結晶(Al2O3)からなる
種結晶基板の表面にメッシュ状に被せた。メッシュの線の幅は0.1mm、間隔は0.1mmとした

3.ロータリーポンプ及びデヒュージョンポンプによりチャンバー内を真空(~10-5Torr
程度)にした後に高純度N2ガス(99.9999%)を導入し約0.11MPa(空気の逆流を防ぐため
ややプラス圧)にした。チャンバ内の温度分布は横方向に±3℃/cmとして高い均質性を有
するようにした。
4.3時間程度で反応温度750℃(結晶晶出温度より100~150℃程度高温)へ加熱した。
5.Ptメッシュ付き種結晶基板を50rpmで回転させながら共晶合金融液に浸した。
6.10時間程度反応させながら結晶晶出温度(600℃)まで炉の温度調整器により制御し
て徐冷した。
7.反応後、Ptメッシュ付き種結晶基板を回転させながら上昇速度0.05mm/hourで共晶合
金融液から離した。
8.炉内全体を10時間程度かけて冷却した。
9.結晶を成長させた基板を炉から取り出した。
【0047】
図6に、得られたGaNの粉末X線回折結果を、図7に、ロッキングカーブの半値幅を示す
。得られた結晶は、GaNであり、膜厚100~200μm、結晶性は、実施例1の場合と同じくロ
ッキングカーブの半値幅がCVD法で作製されたGaNの1/3程度であり、良好な単結晶であっ
た。表面の欠陥密度は3×104/cm2程度であった。
【実施例3】
【0048】
1.3ゾーン式LPE炉(liquid phase epitaxy)を用いた。反応容器として坩堝を用い
その中に溶質としてGaとAl(モル比でGa:Al=4:1)及び溶媒金属(モル比でBi:Rh:Pd
=1:1:1)をモル比で4:1の割合で充填した。
2.触媒となるIrを大きさ(5mm×5mm×0.5mm厚)のサファイア単結晶(Al2O3)からなる
種結晶基板の表面にメッシュ状に被せた。メッシュの線の幅は0.1mm、間隔は0.1mmとした

3.ロータリーポンプ及びデヒュージョンポンプによりチャンバー内を真空(~10-5Torr
程度)にした後に高純度N2ガス(99.9999%):高純度NH3ガス(99.9999%)=4:1を導
入し約0.11MPa(空気の逆流を防ぐためややプラス圧)にした。チャンバ内の温度分布は
横方向に±3℃/cmとして高い均質性を有するようにした。
4.3時間程度で反応温度800℃(結晶晶出温度より100~150℃程度高温)へ加熱した。
5.Ptメッシュ付き種結晶基板を回転させながら共晶合金融液に浸した。
6.10時間程度反応させながら結晶晶出温度(700℃)まで炉の温度調整器により制御し
て徐冷した。
7.反応後、Ptメッシュ付き種結晶基板を回転させながら上昇速度0.05mm/hourで共晶合
金融液から離した。
8.炉内全体を10時間程度かけて冷却した。
9.単結晶を成長させた基板を炉から取り出した。
【0049】
図8に、得られたGaNの粉末X線回折結果を、図9に、ロッキングカーブの半値幅を示す
。得られた結晶は、Al0.18Ga0.82Nであり、膜厚100~200μm、結晶性は、実施例1の場合
と同じくロッキングカーブの半値幅がCVD法で作製されたGaNの1/3程度であり、良好な単
結晶であった。表面の欠陥密度は7×103 /cm2程度であった。
【0050】
比較例1
Ga単独の融液を使用したこと以外は実施例1と同じ条件で結晶成長を行った。Gaが再晶出
して析出物となった。図10に、析出物の粉末X線回折図形を示す。GaNを得る反応が進
まず、Gaメタルが検知された。全てのピークはGaとして帰属される。
【0051】
比較例2
種結晶基板に触媒金属を付着させなかったこと以外は実施例1と同じ条件で結晶成長を行
った。反応が非常に遅く、GaNは粉末状に晶出して析出物となった。図11に、析出物の
粉末X線回折図形を示す。結晶成長の反応が遅かったため、結晶化が完全には進みきって
おらず、ややブロードなピークになっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の方法による結晶成長の過程を示す概念図である。
【図2】結晶成長チャンバ内の容器に保持した溶融ガリウムと窒素ガスの反応により種結晶基板上にガリウム含有窒化物単結晶を成長させる方法の概念図である。
【図3】本発明の融液成長法によってガリウム含有窒化物単結晶を得るために使用する装置の模式図である。
【図4】実施例1で得られたGaNの粉末X線回折グラフである。
【図5】実施例1で得られたGaNのロッキングカーブの半値幅を示すグラフである。
【図6】実施例2で得られたGaNの粉末X線回折グラフである。
【図7】実施例2で得られたGaNのロッキングカーブの半値幅を示すグラフである。
【図8】実施例3で得られたGaNの粉末X線回折グラフである。
【図9】実施例3で得られたGaNのロッキングカーブの半値幅を示すグラフである。
【図10】比較例1で得られた析出物の粉末X線回折グラフである。
【図11】比較例2で得られた析出物の粉末X線回折グラフである。
【符号の説明】
【0053】
1 単結晶基板
2 触媒
3 Grapho-epitaxy成長した窒化物
4 成長したGa含有窒化物単結晶
5 融液
12 保温材
14 回転・上下駆動軸
15 蓋
16 窒素ガス供給管
17 圧力計
18 ガス導入用バルブ
21 窒素供給源を含有する空間部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10