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明細書 :皮膚から汗を採取する方法、汗中のグルコースを検出する方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4005029号 (P4005029)
公開番号 特開2005-230188 (P2005-230188A)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発行日 平成19年11月7日(2007.11.7)
公開日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発明の名称または考案の名称 皮膚から汗を採取する方法、汗中のグルコースを検出する方法および装置
国際特許分類 G01N   1/10        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/48        (2006.01)
A61B   5/00        (2006.01)
A61B   5/145       (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/66        (2006.01)
FI G01N 1/10 V
G01N 27/46 338
G01N 27/46 336A
G01N 27/48 311
A61B 5/00 N
A61B 5/14 310
G01N 33/48 S
G01N 33/50 X
G01N 33/66 C
請求項の数または発明の数 21
全頁数 18
出願番号 特願2004-041922 (P2004-041922)
出願日 平成16年2月18日(2004.2.18)
審査請求日 平成16年2月18日(2004.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】591115936
【氏名又は名称】藤嶋 昭
【識別番号】502331743
【氏名又は名称】堀 ▲煕▼一
【識別番号】000215073
【氏名又は名称】津田 孝雄
発明者または考案者 【氏名】藤 嶋 昭
【氏名】堀 ▲煕▼一
【氏名】津 田 孝 雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100075812、【弁理士】、【氏名又は名称】吉武 賢次
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100094640、【弁理士】、【氏名又は名称】紺野 昭男
【識別番号】100107342、【弁理士】、【氏名又は名称】横田 修孝
【識別番号】100113365、【弁理士】、【氏名又は名称】高村 雅晴
審査官 【審査官】野村 伸雄
参考文献・文献 特開平11-352092(JP,A)
特開平10-221293(JP,A)
特開2003-315340(JP,A)
特開2000-287942(JP,A)
特開2003-121410(JP,A)
特開平11-290280(JP,A)
特表2005-513513(JP,A)
特開2002-195919(JP,A)
特開2002-310977(JP,A)
土谷薫,外3名,簡易サンプリングにより採取したヒト汗に存在するグルコース濃度のLCによる定量,日本分析化学学会第50年会講演要旨集,社団法人日本分析化学会,2001年11月 9日,p.142
菅瀬貞治、外1名,ヒト汗中の乳酸、尿酸、キサンチン、チロシンの高速液体クロマトグラフィーによる定量、及びワイン摂取後の汗中の乳酸濃度変化,分析化学,社団法人日本分析化学会,2002年 6月 5日,Vol.51,No.6,p. 429-435
調査した分野 G01N 1/10
G01N 27/416
G01N 27/48
G01N 33/48
G01N 33/50
G01N 33/66
A61B 5/00
A61B 5/145
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
皮膚から汗を採取する方法であって、
指を収容する大きさと、被検者の指の形に適合した形状とを有し、なおかつ被検者の指における指先から第一関節までの範囲を少なくとも覆う、非通水性材料製の指キャップを用意し、
該指キャップにサンプリング液を入れ、
該溶液が入った指キャップに指を挿入して保持し、該指に発生する汗をサンプリング液に溶出させ、そして、
前記指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記サンプリング液が水および/またはアルコールを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプリング液が水およびアルコールを含んでなり、該サンプリング液におけるアルコールの濃度が0.1~80体積%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、エタノール、ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピルアルコール、ポリエチレングリコール、ブチルアルコール、ジプロピレングリコール、および1,3-ブチレングリコールから選択される少なくとも一種である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記指の指キャップへの保持が0.5~30分間行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記指キャップが樹脂またはゴム製である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
汗中のグルコース濃度を測定するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
皮膚から汗を採取して汗中のグルコースを検出する方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載される方法に従い、汗が溶出されたサンプリング液を得た後、
該汗を含有するサンプリング液中のグルコースを検出すること
を含んでなる、方法。
【請求項9】
前記グルコースの検出が、
前記サンプリング液を乾燥させて乾燥試料とし、
該乾燥試料に測定用溶媒を添加して、被検溶液を調製し、
該被検溶液中のグルコースを検出すること
により行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記汗の採取において前記指キャップに指を保持している間、別の指における発汗量を測定することにより、前記指キャップ中における前記指の発汗量を決定し、かつ、
前記グルコースの検出が、
前記被検溶液中のグルコース濃度を測定することにより、該被検溶液中のグルコース量を算出し、そして、
該被検溶液中のグルコース量と前記指キャップ中における前記指の発汗量とを用いて、汗中のグルコース濃度を算出する工程
をさらに含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定用溶媒がリン酸緩衝液である、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥がドライヤーにより行われる、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記乾燥が、二つの領域に仕切られた開放端を有する容器にサンプリング液を収容し、前記ドライヤーから排出される加熱空気を一方の領域に送り込み、前記サンプリング液上を通過させて、他方の領域から排出させることにより行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グルコース濃度の測定が、
前記被検溶液と、グルコースオキシダーゼと、フェリシアンイオンと、導電性ダイヤモンド電極とを用意し、
前記被検溶液をグルコースオキシダーゼに接触させて過酸化水素を生成させ、該過酸化水素によりフェリシアンイオンをフェロシアンイオンに還元させ、
該フェロシアンイオンを含有する被検溶液に、作用電極としての前記ダイヤモンド電極と、対電極とを接液させ、
前記ダイヤモンド電極と、前記対電極との間に、前記ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応が生じる電圧を印加し、そして、
該電圧下における電流値または電気量を測定し、得られた電流値または電気量から前記被検溶液中のグルコースの濃度を算出すること
により行われる、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
得られた電流値または電気量からグルコースの濃度を算出する工程が、予め作成されたグルコース濃度と電流値または電気量との検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グルコースオキシダーゼが担体に担持されてなり、該担体が反応器内に充填されてなる、請求項14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記被検溶液の供給が、キャリアとしての溶液を一定流速で系内を流しながら、該キャリア溶液中に前記被検溶液を注入することにより行われる、請求項1416のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリア溶液にフェリシアンイオンを生じる塩が添加される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載される方法に用いられる、指を収容する大きさと、被検者の指の形に適合した形状とを有し、なおかつ被検者の指における指先から第一関節までの範囲を少なくとも覆う、非通水性材料で作製された、指キャップ。
【請求項20】
請求項1418のいずれか一項に記載の方法に記載される、被検溶液中のグルコース濃度の測定を実施するための装置であって、
グルコースオキシダーゼが担持されてなる反応器と、
前記反応器に前記被検溶液を導入する手段と、
該反応器を通過した前記被検溶液に、フェリシアンイオンの存在下、作用電極としてのダイヤモンド電極、および対電極を接触させる手段と、
前記ダイヤモンド電極と、前記対電極との間に、前記ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応が生じる電圧を印加する手段と、
該印加電圧下における電流値または電気量を測定する手段と
得られた電流値または電気量から前記被検溶液中のグルコース濃度を算出する手段と
を備えてなる、装置。
【請求項21】
参照電極をさらに備え、それにより前記作用電極の該参照電極に対する電位を制御するようにされてなる、請求項20に記載の装置。
発明の詳細な説明
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚から汗を採取する方法、採取した汗中のグルコースを検出する方法および装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
背景技術
近年、糖尿病の患者数が増加の一途を辿っている。この糖尿病の診断は、血糖値を測定することにより一般的に行われているが、採血を要し、その分析にも時間を要することから、簡便な方法であるとは言い難い。
これに対し、近年、尿糖値測定による糖尿病診断が実用化されるようになってきた。この尿糖値の測定は、苦痛を伴う採血を行う必要がなく、排尿により得られた尿を用いるという簡便性のために、今後利用者が増大していくものと思われる。
【発明の具体的説明】
【0003】
尿糖値を簡便に測定する方法として、導電性ダイヤモンドを使用して電気化学的に定量分析することが提案されている。
例えば、導電性ダイヤモンドにニッケル等の触媒金属を担持させた電極を用いて、グルコースを直接的に定量分析する方法が知られている(例えば、特開2002-310977号公報(特許文献1))。
また、グルコースをグルコースオキシダーゼに接触させて過酸化水素を生成させ、この過酸化水素を、イリジウム等の触媒金属を担持させたダイヤモンド電極を用いて電気化学的に検出することにより、グルコースの定量分析を行う方法も知られている(特開2003-121410号公報(特許文献2)参照)。
【0004】
【0005】
本発明者らは、今般、サンプリング液を入れた非通水性材料製の指キャップに指を挿入して一定時間保持することにより、汗中成分(例えばグルコース)の分析に十分な量の汗を簡便にかつ効率良く採取できるとの知見を得た。また、そのようにして採取された汗中のグルコースを、導電性ダイヤモンド電極を用いて簡便かつ高精度で検出および定量できるとの知見も得た。
【0006】
したがって、本発明は、汗中成分(例えばグルコース)の分析に十分な量の汗を簡便にかつ効率良く採取し、必要に応じてその汗中のグルコース濃度を簡便かつ高精度に検出および定量することをその目的としている。
【0007】
そして、本発明による皮膚から汗を採取する方法は、
指を収容する大きさを有する、非通水性材料製の指キャップを用意し、
該指キャップにサンプリング液を入れ、
該溶液が入った指キャップに指を挿入して保持し、該指に発生する汗をサンプリング液に溶出させ、そして、
前記指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得ること
を含んでなるものである。
【0008】
また、本発明による皮膚から汗を採取して汗中のグルコースを検出する方法は、
上記方法に従い、汗が溶出されたサンプリング液を得た後、
前記汗を含有するサンプリング液中のグルコースを検出すること
を含んでなるものである。
【0009】
さらに、本発明による指キャップは、上記方法に用いられる、指を収容する大きさを有し、非通水性材料で作製されたものである。
【0010】
汗の採取方法
本発明の方法における汗の採取は、指の皮膚から行われる。汗の採取に供する指の本数は一本で十分であるが、これに限らず複数本であってもよい。本発明の方法にあっては、この汗の採取のために指キャップを用いる。この指キャップは、指を収容する大きさを有する、非通水性材料製のキャップ状の容器である。指キャップには、使用時に、サンプリング液が適量注入される。そして、被検者は指を指キャップに挿入して一定時間保持するだけで、指に発生する汗をサンプリング液中に溶出させることができる。被検者が指キャップに指を保持する時間は、0.5~30分、好ましくは3~10分、より好ましくは4~6分程度の短時間で十分であり、被検者の時間的および身体的負担は極めて軽いと言える。その後、指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得る。こうして採取されたサンプリング液には、汗中のグルコース濃度を測定するのに十分な量のグルコースが溶存する。したがって、このサンプリング液を用いて、必要に応じて乾燥および測定用溶媒の添加等の前処理を行うことにより、採取した汗中のグルコース量を測定することが可能となる。
【0011】
指キャップ
本発明の方法に用いる指キャップは、指を収容する大きさを有する、非通水性材料製のキャップ状の容器である。指キャップが収容可能な指の本数は限定されないが、一本とするのが汗の採取を簡単に行えるので好ましい。図1に指キャップの一例を示す。図1に示されるように指キャップ1は、指が通過可能なリング状の挿入口2と、挿入口2から筒状に延在して、その一端が閉じられた筒状部3とから構成されてなる。
【0012】
指キャップの材質は、指キャップ中にサンプリング液を収容するため、非通水性の材料とする。好ましい指キャップの材質は、樹脂またはゴムであり、具体例としては塩化ビニル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フロロエテンプロピレン樹脂、およびポリスルホン樹脂が挙げられ、より好ましくは柔軟性および透明性の点から塩化ビニル樹脂あるいはポリプロピレン樹脂である。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、指キャップが収容する指の範囲は、被検者の指における指先から第一関節までの範囲を含むのが好ましく、より好ましくは指先から第二関節までの範囲を含むものであり、さらに好ましくは指先から指の付け根までの範囲を含む。これにより汗の採集面積を十分に確保することができ、汗中成分(例えばグルコース)の定量分析に十分な量の汗を効率よく採取できる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、指キャップを被検者の指の形に適合した形状を有するようにするのが好ましい。披検者の指の形に適合した形状とは、披検者の指を挿入した際に、指キャップ内面と被検者の指表面との間に形成される空間が、サンプリング液が行き渡る程度に最小限である形状を意味する。これにより、指キャップ中に入れられるサンプリング液を挿入した指の全面に行き渡らせやすくなるので、発生した汗を十分にサンプリング液に溶出させることができる。しかも、指キャップ中に注入するサンプリング液の液量を最小限にすることができるので、その後の定量測定に先立ち行われるサンプリング液の乾燥処理を極めて短時間で行うことができる。
指キャップを披検者の指の形に適合した形状に形成する方法の例としては、石膏を用いて披検者の指の型を採取し、得られた石膏型を用いて指キャップを作製することが挙げられる。あるいは、一般的な指の大きさまたはおよび形状に対応する指キャップを予め複数種類用意しておき、被検者の指の大きさおよび形状に応じて、適合する種類の指キャップを適宜選択して使用してもよい。
【0015】
サンプリング液
本発明の方法に用いるサンプリング液は、汗を液中に抽出し分散させることができる液体であれば限定されないが、水および/またはアルコールを含んでなるものが汗中の成分(例えばグルコース)を安全かつ効率よく採取できる点から好ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、サンプリング液が水およびアルコールを含んでなり、該サンプリング液におけるアルコールの濃度が0.1~80体積%であるのが好ましく、より好ましくは1~30体積%である。これにより、汗中の成分(例えばグルコース)を皮膚に残存または付着させることなく、効率よく液中に溶出させることができる。すなわち、汗中の成分(例えばグルコース)を安全にかつ無駄無くサンプリング液に溶出させることができる。
【0017】
本発明に用いるアルコールは、汗中の成分を溶出可能なものであれば限定されず、1価アルコールおよび多価アルコールのいずれも包含される。好ましいアルコールの例としては、エタノール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピルアルコール、ポリエチレングリコール、ブチルアルコール、ジプロピレングリコール、および1,3-ブチレングリコールが挙げられ、より好ましくは、汗の溶出性能が高く、短時間で乾燥させることができる点で、ブチレングリコール、エチレングリコールである。また、二種以上のアルコールを併用してもよく、その場合のサンプリング液中の好ましい組成例としては、エタノール50体積%およびブチレングリコール1~10体積%、またはエタノール50体積%およびエチレングリコール1~10体積%が挙げられる。
【0018】
汗中のグルコースの測定方法
上記の通り、本発明の汗の採取方法より採取されたサンプリング液は、汗中のグルコースの検出および定量測定に適している。したがって、得られたサンプリング液を用いて、公知の方法に従い、グルコースの検出および定量を行うことができる。特に、汗中のグルコース濃度と、血糖値との間には相関関係があることが知られていることから、汗中のグルコース濃度を知ることができれば、血糖値を推定し、糖尿病診断に利用することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、上記サンプリング液を用いて汗中のグルコース濃度を測定するために、上記汗の採取において指キャップに指を保持している間、別の指における発汗量を測定しておくことが好ましい。例えば、指キャップに覆われる指の表面積を予め算出しておき、測定により得られた単位面積当たりの発汗量を乗ずることにより、サンプリング液中に溶出された発汗量を算出することができる。これにより、指キャップ中における指の発汗量を算出することができる。
【0020】
指における発汗量の測定は、市販される局所発汗量連続記録装置を用いて行うことができる。この局所発汗量連続記録装置の一例を図2に示す。図2に示される装置10は、プローブ11、発汗計12、およびレコーダ13を備えてなる。この装置10にあっては、プローブ11にシリカゲルでほぼ0%Rhに除湿された乾燥空気が図中矢印方向に一定流量で供給される。供給された乾燥空気は、プローブ11に密着して載置される指の皮膚表面から放出される汗を直ちに拡散させて、プローブ11と一体的に設けられる発汗計12に運ぶ。発汗計12は、汗が拡散された空気中の水分量を検出する。この発汗計12は、湿度センサの静電容量を発振定数とする周波数信号に変換した後、気湿温度に影響されない絶対的な発汗量に補償演算する。こうして得られた絶対的な発汗量の値がレコーダ13から出力される。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、汗を含有するサンプリング液を乾燥させて乾燥試料とした後、得られた乾燥試料に測定用溶媒を添加して、被検溶液を調製するのが好ましい。これにより、採用する測定方法に適した液性の披検溶液とすることができるので、測定精度を向上できる。もっとも、採用するグルコース測定法が許容する場合には、サンプリング液としてグルコース測定方法に適した溶液を予め使用することにより、汗を採取したサンプリング液を乾燥試料とすることなく、そのままグルコースの測定に使用してもよい。
【0022】
サンプリング液の乾燥方法は、サンプリング液中の溶媒を除去できるものであれば限定されない。好ましい乾燥方法の具体例としては、ドライヤー、エバポレーター、凍結乾燥、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられ、より好ましくは、乾燥速度が極めて速く、グルコース濃度の測定を迅速に行える点でドライヤーである。ドライヤーを用いたサンプリング液の乾燥方法の一例としては、サンプリング液を秤量瓶または遠沈管の上部を切除した広口容器等の、大きな口と浅い深さを有する広口容器に入れ、この容器の開放部にドライヤーの風を直接送り込むことにより行うことができる。その際、サンプリング液の入った容器の周囲を銅網等の金属網や断熱材で覆うことにより、サンプリング液の蒸気圧をさらに高くして、かつ迅速に蒸気圧を除くことにより乾燥効率をより一層向上させることができる。
【0023】
本発明のより好ましい態様によれば、乾燥が、二つの領域に仕切られた開放端を有する容器にサンプリング液を収容し、前記ドライヤーから排出される加熱空気を一方の領域に送り込み、前記サンプリング液上を通過させて、他方の領域から排出させることにより行われるのが好ましい。二つの領域に仕切られた開放端を有する容器の一例を図3に示す。図3に示されるサンプリング液を収容する容器は、遠沈管の上部を切除した広口容器20であって、その開放口21は仕切り板22が設けられることにより、二つの領域に仕切られてなる。そして、この仕切られた一方の領域の開放口にドライヤー23の風を吹き込むことにより、遠沈管の内部には図中矢印方向、すなわち一方向に加熱空気の流れが出来、他方の領域の開放口から加熱空気が排出される。これにより、サンプリング液の乾燥効率をさらに向上させることができ、より短時間で乾燥を完了させることができる。
【0024】
得られた乾燥試料には測定用溶媒を添加して、被検溶液が調製される。測定用溶媒としては、採用するグルコース測定法に適した溶媒であれば限定されないが、後述するダイヤモンド電極を用いた測定法を含む、電気化学的手法により測定を行う場合には、測定用溶媒がリン酸緩衝液であるのが好ましい。
【0025】
こうして、得られた被検溶液について、グルコース濃度を測定する。このグルコースの測定は、公知の方法を用いて行うことができる。本発明の汗の採取方法により得られたサンプリング液およびこれから得られる披検溶液にあっては、汗を原料とするため、グルコースの濃度は低いものであるが、後述するダイヤモンド電極を用いた測定方法によれば、そのような被検溶液について簡便かつ高精度にグルコース濃度を測定することができる。
このようにして得られた被検溶液中のグルコース濃度を基に、被検溶液中のグルコースの絶対量を算出することができる。そして、この被検溶液中のグルコース絶対量と、先に算出された指キャップ中に溶出された発汗量とを用いて、汗中のグルコース濃度を算出することができる。
【0026】
ダイヤモンド電極を用いた被検溶液中のグルコース濃度の測定
本発明の好ましい態様によれば、被検溶液中のグルコース濃度の測定は、グルコースオキシダーゼと、フェリシアンイオンと、導電性ダイヤモンド電極とを用いて、グルコースの存在に起因する電流を検出することにより行うことができる。すなわち、この方法にあっては、まずグルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて過酸化水素を生成させる。そして、生成した過酸化水素をフェリシアンイオンに作用させて、フェロシアンイオンに還元させる。そして、ダイヤモンド電極がフェロシアンイオンを電気化学的に特異的に酸化し、対電極との間に電流を発生するとの性質を利用して、被検溶液中のフェロシアンイオンを検出する。すなわち、反応系において以下の化学反応が起こり、その結果、電流が発生する。
グルコース + HO + O → グルコラクトン + H
(グルコースオキシダーゼ)
2[Fe(CN)3- + H
→ 2[Fe(CN)4- + O + 2H
[Fe(CN)4- → [Fe(CN)3- + e
【0027】
前述の通り、触媒金属を担持させたダイヤモンド電極を用いて過酸化水素を直接酸化または還元させて検出することは知られている。しかしながら、本発明の方法にあっては、導電性ダイヤモンドとして生成されたままの(as grown)のものを使用することができる。したがって、ダイヤモンド電極に触媒金属を担持させる必要がなく、フェロシアンイオンを介在させるだけでグルコース濃度を測定することができる。また、フェロシアンイオンを介して検出することにより検出のための印加電圧を低くすることができ、その結果、ノイズ(例えばS/N比)の低い、安定性の極めて高い電気化学的測定が可能となる。このため、低濃度のグルコース濃度を高精度かつ簡便に定量することができるとの利点がある。
【0028】
さらに、本発明にあっては、ダイヤモンド電極を作用電極とし、対電極との間に生じる電流値または電気量が系内のグルコースの濃度に正比例するとの性質を利用して、被検溶液中のグルコースの存在量を測定することができる。
このように、グルコースの定量は電流を検出することにより行われるため、測定時間は短くかつ簡便である。したがって、本発明による方法は短時間の内に容易にグルコースを検出し、その濃度を知ることが出来る点で極めて有利である。
【0029】
上述したように、本発明の方法を利用すれば、グルコースの検出および定量を行うことができる。このようなグルコースの検出は、グルコースを、ダイヤモンド電極に接触させる前に、グルコースオキシダーゼに接触させて、過酸化水素を生成させておき、その後、生成した過酸化水素をフェリシアンイオンと接触させてフェロシアンイオンに還元させ、このフェロシアンイオンの酸化電流を検出することにより行われる。このとき、酵素反応後の被検溶液中のフェロシアンイオン濃度とグルコース濃度とは正比例の関係となるため、作用電極と対電極との間に生じる電流値または電気量は、結果的に系内のグルコースの濃度に正比例する。したがって、この性質を利用して、被検溶液中のグルコースを定量的に検出することができる。
【0030】
本発明の方法において、グルコースの定量のための電気化学的系は、ダイヤモンド電極を作用電極とした以外は、一般的な電気化学的な系であることが出来る。
【0031】
すなわち、本発明の方法にあっては、ダイヤモンド電極を作用電極とし、対電極とともに被検溶液に接触させ、この二つの電極間に、ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応の生じる電圧を印加し、この電圧下における電流を検出することにより、グルコースを検出する。さらに、この得られた電流の電流値または電気量を測定することにより、被検溶液中のグルコースの濃度を算出することができる。上記したように、フェロシアンイオンの酸化により、ダイヤモンド電極と対電極との間に生じる電流値または電気量は、系内のグルコースの濃度に正比例する。従って、一旦ある電圧値における電流値または電気量とグルコースの濃度との関係を求めておけば、その関係から、得られた電流値に対応する被検溶液中のグルコースの濃度を容易に知ることが出来る。すなわち、本発明の好ましい態様にあっては、グルコースの濃度と電流値または電気量との検量線を予め作成しておき、この検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより、グルコースの濃度を知ることが出来る。
【0032】
本発明において対電極としては、白金、炭素、ステンレス、金、ダイヤモンド、SnO等の利用が好ましい。
【0033】
本発明において、作用電極であるダイヤモンド電極と、対電極との間に印加される電圧は、ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応が生じるものであれば限定されないが、測定効率および精度の観点から、この印加電圧は、フェロシアンイオンの酸化のピーク電流を与える電圧またはそれ以上であることが好ましい。ここで、ピーク電流とは、例えばサイクリックボルタンメトリーにより、最大電流値を与える電圧として求めることが出来る。
【0034】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、参照電極を被検溶液中に接液させ、ダイヤモンド電極と、参照電極との間に、ダイヤモンド電極上で酸化反応の生じる電圧の絶対値を制御することが、測定精度の観点から好ましい。参照電極は公知のものを利用することが出来、飽和カロメル電極(SCE)、標準水素電極、銀塩化銀電極、水銀塩化水銀電極、水素パラジウム電極等が利用可能である。
【0035】
本発明による測定方法において、電気化学的系は、ダイヤモンド電極を作用電極とした以外は、一般的な電気化学的な系であることが出来るが、本発明の好ましい態様によれば、所定の溶液を一定流速でキャリアとして系内を流し、そのキャリア溶液中に被検溶液を注入して測定を行う、フローセルを用いたフローインジェクション法による測定が好ましい。
【0036】
フローセルを用いたフローインジェクション法の概略は図4に示される通りである。フローセル35には、キャリア溶液溜31から、ポンプ32によりキャリア溶液が注入される。ポンプ32とフローセル35との間には、被検溶液注入口33が設けられ、キャリア溶液に被検溶液が注入可能とされる。また、過酸化水素の検出に先立ち酵素反応が行われるように、被検溶液注入口33とフローセル35との間に、グルコースオキシダーゼが担持された触媒担体が充填されてなる反応器34が設けられる。フローセル35を通過したキャリア溶液は、廃液溜36に集められる。
【0037】
フローセル35の基本構造は図5に示される通りである。フローセル35は、ダイヤモンド電極41、対電極42、および参照電極43が、キャリア溶液および被検溶液が流れる流路44内に露出され、被検溶液と接触出来るよう構成されている。ダイヤモンド電極41は、後述する図7に示される構造を有し、その表面が、流路44内に露出され、キャリア溶液および被検溶液と接触する。キャリア溶液は、流路44の流入口45から入り、図中の矢印のように流れ、流出口46に至る。なお、流出口46およびその近傍はステンレス製のチューブで構成されており、このステンレス製チューブ自体を対電極42として機能させる。流路44の両端部はガスケット47を設けて密閉される。ダイヤモンド電極41の導線Aおよび対電極42の導線Bの間に、フェロシアンイオンをダイヤモンド電極41上で酸化させる電圧を印加する。
【0038】
測定は以下のように行われる。まず、被検溶液を注入しないキャリア溶液のみを流し、いわゆるバックグラウンド電流を出来るだけ小さくし、かつ安定させる。ダイヤモンド電極はバックグラウンド電流が小さいことを特長とする。次に、被検溶液を被検溶液注入口33より注入する。この注入は継続して行われてもよいが、ピーク電流を測定可能な程度の量を一時期に注入してもよい。グルコースが被検溶液中に含まれている場合、グルコース量に比例して生成されるフェロシアンイオンがダイヤモンド電極41上で酸化され、それに伴う電流を検出できる。この電流の電流値または電気量を測定することにより、グルコースの濃度を知ることができる。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、キャリア溶液にフェリシアンイオンを生じる塩が添加されるのが好ましい。フェリシアンイオンを生じる塩の例としては、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウムが挙げられる。
【0040】
本発明の別の好ましい態様によれば、フローセル35におけるダイヤモンド電極41をマイクロ電極の形態とすることも好ましい。また、本発明の別の好ましい態様によれば、ダイヤモンド電極41を回転電極としてもよい。
【0041】
さらに、本発明の別の態様によれば、被検溶液中のグルコースの濃度を測定する装置が提供される。この装置の基本構成は図6に示される通りである。図6の装置において、電源・電流計51には、図5に記載のフローセルより、ダイヤモンド電極41に接続される導線A、対電極42に接続される導線B、および参照電極43に接続される導線Cが接続される。この電源・電流計51は、ダイヤモンド電極と対電極との間にダイヤモンド電極上で酸化反応の生じる電圧を印加する手段と、この印加電圧下における電流値または電気量を測定する手段とを兼ねるものである。すなわち、この電源・電流計51によって、ダイヤモンド電極41および対電極42の間に、フェロシアンイオンをダイヤモンド電極41上で酸化させる電圧を印加し、さらにフェロシアンイオンのダイヤモンド電極41上での酸化反応に伴う電流値または電気量を測定する。この電流値または電気量は、電流値比較・濃度算出装置52に送られる。この装置52には、検量線データ53が送られ、この装置内において、電源・電流計51から送られた電流値と、検量線データを比較し、被検化合物の濃度を算出する。すなわち、得られた電流値または電気量から被検溶液中の被検化合物の濃度を算出する手段を備える。得られた被検化合物濃度は、表示装置54により表示される。
【0042】
ダイヤモンド電極およびその製造
ダイヤモンドは本来優れた絶縁体である。しかしながら、3族や5族の不純物を添加することによって、半導体~金属様の導電性を示すようになる。本発明にあっては、半導体~金属様の導電性を示すダイヤモンドを電極として使用する。
【0043】
このような導電性を付与するために添加される物質としては、上記の通り3族および5族の元素が挙げられ、さらに好ましくはホウ素、窒素、リンが挙げられ、最も好ましくはホウ素または窒素である。この導電性を付与するために添加される物質の添加量は、ダイヤモンドに導電性を付与できる範囲で適宜決定されてよいが、例えば1×10-2~10-6Ωcm程度の導電性を与える量添加されることが好ましい。この導電性を付与するために添加される物質の添加量は、導電性ダイヤモンドの製造工程における添加量により制御されることが一般的である。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、基材上に導電性ダイヤモンドの薄膜を形成するとともに、導線を接続させ、電極とすることが好ましい。基材としては、Si(例えば、単結晶シリコン)、Mo、W、Nb、Ti、Fe、Au、Ni、Co、Al、SiC、Si、ZrO、MgO、黒鉛、単結晶ダイヤモンド、cBN、石英ガラス等が挙げられ、特に単結晶シリコン、Mo、W、Nb、Ti、SiC、単結晶ダイヤモンドの利用が好ましい。
【0045】
この態様の電極を図7を用いて更に説明する。図7(a)は、ダイヤモンド電極41の断面図であり、この電極は、基材62の上に形成された導電性ダイヤモンド薄膜63からなり、さらにこの導電性ダイヤモンド薄膜63には導線65が例えば金コーティング64を介して接続される。図7(b)は、ダイヤモンド電極41の斜視図であり、基材62の上に形成された導電性ダイヤモンド薄膜63からなり、さらにこの導電性ダイヤモンド薄膜63を電極とするための金コーティング64を介して導線65が接続される。また、図7(b)に点線で示されるように、ダイヤモンド電極41の最表面の外縁および端部側面に、保護膜66を形成してもよい。この保護膜66は、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂で形成されるのが好ましく、これによりダイヤモンド電極41の端部側面、金コーティング64、および導線65を電気化学的に安定な状態が確保されるように保護して、より安定かつ正確な測定を可能にする。
【0046】
導電性ダイヤモンド薄膜の厚さは、特に限定されないが、1~100μm程度の厚さが好ましく、より好ましくは5~50μm程度である。
【0047】
さらに本発明の好ましい態様によれば、本発明によるダイヤモンド電極は、マイクロ電極の形態をとることが出来る。マイクロ電極の概念は既に公知であり、本発明においてマイクロ電極形態のダイヤモンド電極とは、Pt、W、Mo等の細線の末端を鋭利に切断し、電解研磨により末端をさらに鋭利にした後、その末端表面に導電性ダイヤモンドの薄膜を形成した構成のものを意味する。
【0048】
本発明の好ましい態様によれば、導電性ダイヤモンド薄膜は、化学気相成長法により好ましく製造される。化学気相成長法とは、気相中で気体原料を化学反応させて物質を合成する方法であり、CVD(Chemical Vapor Deposition )法と一般に呼ばれる。この方法は、半導体製造プロセスにおいて広く利用されており、本発明における導電性ダイヤモンド薄膜の製造にも合目的的な改変のもと利用可能である。
【0049】
ダイヤモンドの化学気相合成は、メタンなどの含炭素気体と水素を混合したものを原料気体として、それを励起源により励起させ、基板上に供給して堆積させることにより行われる。
【0050】
励起源としては、熱フィラメント、マイクロ波、高周波、直流グロー放電、直流アーク放電、燃焼炎などが挙げられる。また、これらを複数組み合わせて核生成密度を調整したり、大面積化や均一化を図ることも可能である。
【0051】
原料としては、炭素の含まれている多くの種類の、励起源により分解、励起されて、C、Cなどの活性な炭素、およびCH、CH、CH、Cなどの炭化水素ラジカルを生じさせる化合物を利用可能である。好ましい具体例としては、気体としてCH、C、C、C1016、CO、CF、液体としてCHOH、COH、(CHCO、固体として黒鉛、フラーレンなどが挙げられる。
【0052】
気相合成法にあって、ダイヤモンドに導電性を付与する物質の添加は、例えば添加物質のディスクを系内に置き、炭素源原料と同様に励起させ、炭素気相に添加物質を導入する方法、炭素源に予め添加物質を添加し、系内に炭素源と共に導入し、励起源により励起し、炭素気相に添加物質を導入する方法等により行うことが出来る。本発明の好ましい態様によれば、後者の方法が好ましい。とりわけ、炭素源としてアセトン、メタノールなどの液体を用いる場合、これに酸化ボロン(B)を溶解してボロン源とする方法が、ボロンの濃度の制御が容易で、かつ簡便であることから好ましい。例えば、気相合成法にあって、炭素源にホウ素を添加する場合、10~12,000ppm程度が一般的であり、また1,000~10,000ppm程度が好ましい。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、導電性ダイヤモンド薄膜の製造はプラズマ化学気相合成法により行われることが好ましい。このプラズマ化学気相合成法は、化学反応を引き起こす活性化エネルギーが大きく、反応が速いとの利点を有する。さらに、この方法によれば、熱力学的に高温でなければ存在しない化学種を生成して、低い温度での反応が可能となる。プラズマ化学気相合成法による導電性ダイヤモンド薄膜の製造は、本発明者らの一部を含めいくつかの報告が既にあり(例えば、Yano et al., J. Electrochem. Soc., 145(1998) 1870)、これら報告に記載の方法に従って行うことが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
例1:指キャップの作製
指キャップの作製を以下の通り行った。まず、汗の採取対象である指を油粘土で覆い、指の型を採取した。得られた型に石膏を流し込み、1日間放置した後、石膏を取り外した。次いで、石膏に熱収縮チューブを被せ、ヒートガンで熱を加え、収縮チューブを収縮させた。そして、チューブ内の石膏を全て除去して、熱収縮したチューブを指キャップとして得た。
【0056】
例2:指からの汗の採取
50体積%エタノール水溶液に1,3-ブチレングリコールを添加して、10体積%の1,3-ブチレングリコール水溶液をサンプリング液として調製した。このサンプリング液約0.7mlを例1で作製した指キャップに注入した。指キャップに被検者の左手の中指を挿入して、そのまま5分間保持しながら、指から放出される汗をサンプリング液中に溶出させた。このとき、同時に、局所発汗量連続記録装置(Kenz Perspiro 210、スズケン社製)に接続されたプローブに右手の中指を載置し、単位面積当たりの発汗量を5分間測定した。
次いで、指キャップから左手中指を抜くとともに、右手中指をプローブから外した。このとき、左手中指に付着したサンプリング液ができるだけ指キャップ内に回収されるように留意した。こうして、皮膚からの汗が溶出されたサンプリング液を得た。
【0057】
例3:汗中のグルコース濃度の測定
例2で得られたサンプリング液を用いて、被検者の汗中のグルコース濃度を以下のようにして測定した。まず、サンプリング液を広口容器に入れ、乾燥台の上に置いた。ドライヤーの送風口を広口容器に向けて乾燥を開始し、完全に水が除去されるまで乾燥を行い、乾燥試料を得た。
次いで、この広口容器に、0.3Mの水酸化ナトリウム水溶液および0.5Mの1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(PMP)メタノール溶液を添加し、70℃で1時間半反応させた後、室温まで冷却させた。冷却された溶液に1N塩酸を添加して中和した後、ドライヤーを用いて上記同様にして乾燥させた。こうして得られた乾燥試料に蒸留水およびクロロホルムを添加し攪拌した後、上層である水層100μlを採取した。この水層をドライヤーを用いて上記同様にして乾燥させた。得られた乾燥試料に溶離液30μlを添加して、被検溶液を得た。こうして得られた被検溶液を液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、グルコース誘導体に起因するピーク面積を読み取り、そのピーク面積と予め作成しておいたグルコースの検量線とを比較することにより、グルコース濃度を算出した。液体クロマトグラフィーに使用した装置および測定条件は以下の通りである。
検出器:Diode array detector 350RS、大塚電子株式会社製
ポンプ:LC-9A、島津製作所製
カラム:CAPCELL PAK C18 2.0mm i.d.×150mm、SHISEIDO
溶離液:アセトニトリル/0.1Mリン酸緩衝液(pH7)=18/82
流量:0.200ml/min
検出波長:245nm
サンプル注入量:10μl
【0058】
得られた被検溶液中のグルコース濃度と、被検溶液の体積から、被検溶液中のグルコース量、すなわち採取した汗中のグルコース量を算出した。一方、例2で測定された単位面積当たりの発汗量に指キャップの内表面積を乗ずることにより、指キャップで採取された発汗量を算出した。そして、採取した汗中のグルコース量を採取された発汗量で除することにより、汗中のグルコース濃度を算出した。その結果、被検者の汗中のグルコース濃度は180μMであると算出された。
【0059】
例4:導電性ダイヤモンド電極の作製
公知の方法に従い、導電性n型シリコン(111)面上に、ホウ素を高濃度(10,000ppm、B/C比)で導入したダイヤモンド薄膜を、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて形成した。こうして、導電性ダイヤモンド電極を得た。得られたダイヤモンド薄膜の抵抗は10-3Ωcmであった。シリコン基板の裏面に、銀ペーストを用いて銅線を固着した。
【0060】
例5:グルコースの検量線の作成
まず、下記成分を含んでなるリン酸緩衝溶液(PBS溶液)を調製した。
塩化ナトリウム 1.37×10-1
塩化カリウム 2.68×10-3
リン酸一水素ナトリウム無水物 9.58×10-3
リン酸二水素カリウム無水物 1.47×10-3
【0061】
得られたPBS溶液に、フェリシアン化カリウムを加えて、2mMフェリシアン化カリウムPBS溶液を得た。この溶液4mlにグルコースオキシダーゼ0.1mgを添加し、さらにグルコースを0.5μmolして被検溶液を得た。同様にして、添加するグルコース量を1.0μmol、2.5μmolとした被検溶液、およびグルコースを添加しない被検溶液も調製した。
これらの各被検溶液に、作用電極として例1で調製したダイヤモンド電極を浸け、また対電極として白金電極を浸け、さらに参照電極としてAg/AgCl電極を浸けて、図5に示されるような電気化学測定用セルを構成した。図6に示される測定装置として、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(Princeton Applied Research社製、PG580)を用意して、各電極を接続した。
【0062】
この測定系を用いて、各被検溶液について、ノーマルパルスボルタンメトリー測定を、以下の条件で行った。
電解液:PBS
被検溶液体積:4ml
初期電位:0V
初期電位時間:5秒間
掃引電位1:0.1V
掃引電位2:1V
パルス高さ:0.2V
周波数:15Hz
スキャンインクリメント:0.002V
ポイント数:241
【0063】
測定結果は図8に示される通りであった。得られたピーク電気量と、グルコースの濃度から、図9に示される検量線が得られた。図9に示されるように、グルコース濃度に比例して、ピーク電気量も推移した。
【0064】
例6:グルコースの検量線の作成
例5で調製したPBS溶液に、フェリシアン化カリウムを加えて、20μMフェリシアン化カリウムPBS溶液を得た。この溶液4mlにグルコースオキシダーゼ50μgを添加し、さらにグルコースを5nmol添加して被検溶液を得た。同様にして、添加するグルコース量を10nmol、25nmolとした被検溶液、およびグルコースを添加しない被検溶液も調製した。こうして得られた各被検溶液におけるフェリシアン化カリウムおよびグルコースの濃度は、例5で調製された各被検溶液におけるフェリシアン化カリウムおよびグルコースの濃度の100分の1である。
この各被検溶液について、例5と同様にして、ノーマルパルスボルタンメトリー測定を行った。測定結果は図10に示される通りであった。得られたピーク電気量と、グルコースの濃度から、図11に示される検量線が得られた。図11に示されるように、グルコース濃度に比例して、ピーク電気量も推移した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の方法に用いられる指キャップの一例を示す模式図であり、この指キャップ1は、挿入口2と、挿入口2から筒状に延在する筒状部3とから構成される。
【図2】本発明の方法に用いられる局所発汗量連続記録装置の基本構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の方法において行われる乾燥方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明による測定法に用いられるフローインジェクション法の概略を示す図である。
【図5】図4に示されるフローインジェクション法に用いられるフローセルの基本構造を示す図である。
【図6】本発明による測定装置の基本構成を示す図である。
【図7】ダイヤモンド電極の構造を示す図であり、(a)はダイヤモンド電極41の断面図であり、(b)は、ダイヤモンド電極41の斜視図である。
【図8】例5において得られた、各グルコース濃度におけるピーク電流を表す図である。
【図9】例5において作成された、グルコース濃度と、ピーク電気量との検量線である。
【図10】例6において得られた、各グルコース濃度におけるピーク電流を表す図である。
【図11】例6において作成された、グルコース濃度と、ピーク電気量との検量線である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10