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明細書 :液晶高分子からなる膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4587276号 (P4587276)
公開番号 特開2005-243532 (P2005-243532A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年11月24日(2010.11.24)
公開日 平成17年9月8日(2005.9.8)
発明の名称または考案の名称 液晶高分子からなる膜の製造方法
国際特許分類 H05B  33/10        (2006.01)
H05B  33/04        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
C23C  14/12        (2006.01)
C23C  14/28        (2006.01)
H01L  21/203       (2006.01)
H01L  21/47        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
FI H05B 33/10
H05B 33/04
H05B 33/14 A
C23C 14/12
C23C 14/28
H01L 21/203 Z
H01L 21/47
H01L 29/28
H01L 29/78 618B
H01L 29/78 619A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2004-054035 (P2004-054035)
出願日 平成16年2月27日(2004.2.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月30日 社団法人応用物理学会主催の「第64回応用物理学会学術講演会」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年12月7日(2006.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】伊高 健治
【氏名】新井 圭一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100087941、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 修司
審査官 【審査官】本田 博幸
参考文献・文献 特開2003-297553(JP,A)
特開2004-023021(JP,A)
調査した分野 H05B 33/10
H05B 33/04
H01L 21/203
H01L 21/47
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/50
C23C 14/12
C23C 14/28
特許請求の範囲 【請求項1】
光学的異方性を示す液晶性高分子にパルスレーザーを照射することにより蒸発生成した気化物を基材上に堆積固化させることからなる膜の製造方法。
【請求項2】
基材上に請求項に記載の製造方法により膜を形成する積層体の製造方法
【請求項3】
請求項に記載の製造方法により保護膜を形成する電子デバイスの製造方法
【請求項4】
電子デバイスが有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項に記載の電子デバイスの製造方法
【請求項5】
電子デバイスが有機電界効果トランジスタ素子であることを特徴とする請求項に記載の電子デバイスの製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザーを光学的異方性を示す液晶性高分子(LCP)に照射することにより蒸発生成した気化物から膜を形成する方法、および該方法により保護膜を形成する電子デバイスの製造方法に関する。さらに詳しくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、これを有機EL素子と称する)、有機電界効果トランジスタ素子(以下、これを有機FET素子と称する)や光電変換素子などの有機電子デバイスの製造方法に関する。本発明の製造方法に係る電子デバイスは、低コスト生産性や軽薄短小性等の利点を損なうことなく、LCPに由来した優れた水および水蒸気バリアー性、酸素バリアー性、電気特性、耐熱性、耐薬品性、ならびに電気的特性を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機材料および/または有機材料で構成されたEL素子、FET素子、光電変換素子などの電子デバイスは、性能改良のための研究開発が進捗した結果、その需要を大きく伸ばしている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、これらの電子デバイス、なかでも有機材料を用いた電子デバイスは、大気中の水分や酸素などと容易に反応して性能が劣化し易いため、保護膜を設けることにより劣化を防止する必要がある、という問題点が指摘されていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、このような保護膜としては、SiO、SiON、SiN、AlO、AlN、Al23やDLC(Diamond Like Carbon)などの無機材料が実用に供されているほか、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂などの有機材料の適用も検討されている。例えば、半導体を無機材料で構成したFET素子は、該無機材料を電極で挟んだ後、エポキシ樹脂などで封止することで製造されているが、該エポキシ樹脂には空気中の水分や酸素の透過や残留を抑える目的で多量のフィラーを含有させなければならず、軽薄短小化の要求に限界がある。また、無機材料からなる半導体は、その生産性が低いために、低コスト化の要求にも限界がある。
【0004】
一方、半導体を有機材料で構成したFET素子は、半導体を有機材料で構成させることで低コスト生産を達成できるものの、従来使用されている無機材料よりもさらに空気中の水分や酸素により劣化し易いため、素子を保護する、優れた保護膜の開発が要望されている。有機FET素子の半導体を保護し、空気中の水分や酸素を遮断する材料としては、前述の無機材料などを用いることができるが、本来有機材料で構成することによる軽量化や低コスト化のメリットがなくなる。他方、保護膜として有機材料を用いるためには、該半導体との化学反応や不純物の付着を避けなければならず、溶剤などで希釈した有機材料をコートすることができない。また、保護膜として好適な有機材料が発見されたとしても、有機材料はダメージを受けやすく、スパッター法などでは、有機半導体層が劣化することが避けられないため、有機半導体を破損させることなく均一に保護膜を形成し、その性能を維持する製造方法が必要である。
【0005】
また、前記した有機EL素子や光電変換素子についても、保護膜として有機材料を用いるためには、有機FET素子について説明したのと同様の事情がある。

【非特許文献1】Macromolecular Rapid Communications,Vol.25,pp196-203(2004)
【特許文献1】特開平7-169567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、本発明は、水分バリアー性および/または酸素バリアー性に優れた有機材料の膜の製造方法を提供するとともに、該製造方法によって得られる膜を電子デバイス、特に有機電子デバイスの保護膜として形成してなり、空気中の水分や酸素による性能の劣化を防止した長期安定性に優れた電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、光学的異方性を示す液晶性高分子にパルスレーザーを照射することにより蒸発生成した気化物を基材上に堆積固化させることにより、水分バリアー性および/または酸素バリアー性に優れた膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、パルスレーザーを光学的異方性を示す液晶性高分子(以下、これをLCPと称する)からなるターゲットに照射して蒸発させるとともに、生成した気化物を該ターゲットと対向する位置に設置された電子デバイスなどの基材表面に堆積固化させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に使用されるLCPの性状は特に限定されるものではなく、溶媒を含むことによって光学的異方性を示すライオトロピックLCPおよび/または溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピックLCPを用いることができるが、ターゲットとしての好適な形状に成形する観点からはサーモトロピックLCPがより好ましい。ライオトロピックLCPとしては、芳香族ポリアミドやポリフェニレンビスベンゾチアゾールを例示することができる。一方、サーモトロピックLCPの具体例としては、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。但し、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、繰り返し単位の好適な組み合わせが必要とされることは言うまでもない。
【0010】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【表1】
JP0004587276B2_000002t.gif

【0011】
(2)芳香族又は脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【表2】
JP0004587276B2_000003t.gif

【0012】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【表3】
JP0004587276B2_000004t.gif

【0013】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【表4】
JP0004587276B2_000005t.gif

【0014】
これらの原料化合物から得られるサーモトロピックLCPの代表例として表5に示す構造単位を有する共重合体を挙げることができる。
【表5】
JP0004587276B2_000006t.gif

【0015】
また、本発明に使用されるサーモトロピックLCPとしては、基材上への膜の形成を効率的に行うことができるので、約200~約400℃の範囲内、とりわけ約250~約350℃の範囲内に融点を有するものが好ましい。
【0016】
高い生産性を有する設備のターゲットとして使用するためには、サーモトロピックLCPは、ターゲットの交換が容易であること、連続したターゲットの供給が行えることなどの利点があるので、フィルムの形態であることが好ましく、長尺フィルムの形状であることがより好ましい。
【0017】
本発明においてターゲットとして使用されるサーモトロピックLCPのフィルムは、サーモトロピックLCPを押出成形して得られる。任意の押出成形法がこの目的のために使用されるが、周知のTダイ製膜延伸法、ラミネート体延伸法、インフレーション法等が工業的に有利である。特に、ラミネート体延伸法やインフレーション法は、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスのとれた平坦なフィルムを得ることができる上、取扱いの点でもより好適である。
【0018】
本発明に従う、LCPからなる膜の製造は、特定の波長とエネルギーを発生することができるパルスレーザー照射装置を用いて、真空度が10-7Torr 以下の雰囲気下で実施することが好ましい。真空度がこの範囲から外れると、気化物が堆積固化しない。
【0019】
本発明に使用することのできるパルスレーザーの好ましい波長の範囲は、200から1200nmである。この範囲から外れると、気化物の堆積速度が遅いばかりでなく、形成された膜はガスバリアー性や電気絶縁性能に乏しいものとなる。LCPが効率的に蒸発気化される波長として、YAGレーザーの266nm、354nm、532nmおよび1064nm、KrFレーザーの248nm、ならびにArFレーザーの193nmを例示することができる。
【0020】
また、本発明に使用することのできるパルスレーザーの好ましいエネルギーの範囲は、0.1~3.0J/cmである。この範囲を超えると炭化が促進されて効果的に膜の形成を行うことができず、得られた膜は、ガスバリアー性や電気絶縁性能に乏しいものとなる。パルスレーザーのエネルギーは、0.1~2.0J/cmであることが好ましい。
【0021】
パルスレーザーの照射によって生成される気化物を堆積固化させるための基材には、特に制限はない。例えば、シート、フィルム、板、チューブ、繊維、布帛、異形成形品などの各種の形状の物品を基材として使用することができる。これらの中でも、均一な膜を形成することが容易であるため、シート状、フィルム状、板状などの平面的な形状を有する物品が好ましい。また、基材を構成する材料にも特に制限はなく、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、LCP、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル等の高分子;金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属;紙、ガラス、セラミックス、無機半導体、後述する有機半導体など、各種の材料を例示することができる。
【0022】
パルスレーザーの照射によって生成される気化物を堆積固化させるにあたり、基材の表面温度は特に制限されない。基材の表面温度は、通常室温に設定しておけば支障はないが、可能な範囲で低めの温度に設定しておくのがよい。
【0023】
本発明の製造方法により、LCPからなる膜が上記した基材上に形成され、基材とLCPの膜からなる積層体を得ることができる。このような積層体は、基材の種類に応じ、各種の用途に使用することができるが、LCPが有するガスバリアー性や電気絶縁性などの優れた特性が生かされる用途、特に、前記した有機FET素子、有機EL素子、光電変換素子といった電子デバイスとして有効に使用することができる。
【0024】
本発明の製造方法によって形成される膜の厚さは、特に限定されないが、ガスバリアー性や電気絶縁性能の観点からは30nm以上であることが好ましい。特に、このような膜は電子デバイスの保護膜として優れた性能を発揮する。中でも電子デバイスがEL素子や光電変換素子であり、本発明になる膜を該EL素子の発光面上あるいは光電変換素子の受光面上に形成する場合には、該膜の光線透過率をさらに考慮して膜厚を設定するのがよい。
【0025】
本発明の製造方法によれば、例えば1μm未満といった、非常に薄い膜を容易に形成することができる。
このようなLCPの薄い膜は、従来知られている方法では、製造することが容易ではなかった。
【0026】
電子デバイスの一例として、有機FET素子の断面構造を図1に示す。この有機FET素子は、レーザー分子線エピキタシー装置を用いて、サファイアなどの基板2上にゲート電極3、ゲート誘電体5、有機半導体6、ドレイン電極7およびソース電極8を堆積させ、本発明の製造方法によりLCPから保護膜1を形成することによって得られる。
【0027】
有機FET素子のゲート電極3として用いられる材質としては、アルミニウム、金などの金属材料やドープされたシリコンを用いることができる。これらは、用いる半導体の仕事関数や、FETの動作方法によって適切なものを用いる必要がある。
【0028】
有機FET素子のゲート誘電体5として用いられる材質としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム・窒化シリコン・誘電性ポリマーなどの酸化物・窒化物・硫化物・有機物を用いることができ、特にリーク電流が少なく、耐電界および誘電率の大きいものが電界を印加しやすいという点で好ましいが、目的とする出力によって選択すべきものであって、限定されるものではない。
【0029】
有機FET素子の有機半導体6として用いられる材質としては、電界効果を示す有機材料を挙げることができ、特にペンタセン、テトラセン、ルブレンなどのアセン系π共役有機材料やフタロシアニン、フラーレン(C60)などが移動度の点で好ましいが、目的とする出力に応じて適宜選択すればよく、限定されるものではない。
【0030】
また、有機FET素子のドレイン電極7およびソース電極8として用いられる材質としては、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム:銀合金などが挙げられることができ、電気伝導度が高く、有機材料との仕事関数の整合性がよいものが好ましいが、目的とする出力によって選択すべきものであり限定されるものではない。
【0031】
電子デバイスの他の例として、有機EL素子の断面構造を図2に示す。本図に示されたものは、従来の有機EL素子であり、ガラスなどの透明基板上にITOなどのアノード、正孔輸送層、発光層、必要に応じて電子輸送層、カソードを順次形成することにより得られる。正孔輸送層、発光層および電子輸送層は低分子および/または高分子の有機化合物であり、真空状態で昇華させた該分子を堆積させる方法や溶媒に溶かしてコーティングする方法により形成することができる。
【0032】
ここで、有機EL素子の透明基板としてPETなどのフレキシブルな高分子フィルムを用いた場合、ガラス基板を用いた場合と比較して、軽量性、携帯性、収納性および低価格性などの利点を付与することができる。しかし、透明性の高いフレキシブルな高分子フィルムは、一般に透湿性およびガスバリアー性が低いために、空気中の水分や酸素による素子の特性劣化が免れない。なお、有機EL素子の構造等については、特に前記した非特許文献1に詳しく説明されている。
【0033】
次に、本発明の製造方法によりLCPから形成される膜を保護膜とした有機EL素子の断面構造の一例を図3および図4に示す。ここで、発光面上に設けられる保護膜は実用的に十分な光線透過率を有することが重要な特性であり、LCPをこの目的に用いるためには、該膜の膜厚をできるだけ薄く設定する必要がある。このような薄いLCPの膜は、従来知られている方法では製造することが容易ではなかったが、本発明の製造方法によれば、例えば1μm未満といった、非常に薄い膜を容易に形成することができる。
【0034】
図3に示す有機EL素子は、透明高分子フィルム(基材)12上に本発明の方法によりLCPの膜(保護膜)11を形成し、次いで図2に示す従来の有機EL素子と同様にアノード13、正孔輸送層14、発光層15、電子輸送層16、カソード17を順次形成することによって得られる。
【0035】
また、図3に示す有機EL素子自体を基材として、本発明の方法によりLCPの膜(保護膜)11Aで表面全体を覆うように形成することにより、図4に示す有機EL素子を得ることができる。
【0036】
さらに、同様の構造を有する電子デバイスとして、基板上に電極層、光電変換層などを積層して形成した光電変換素子なども知られており、本発明の方法によってLCPからなる膜(保護膜)をその表面に形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、保護膜の保護特性および絶縁性能は、以下の方法により測定した。
【0038】
(a)保護特性
作製した有機FET素子について、作製直後もしくは真空装置内での電界効果移動度(A)および相対湿度60%の大気中に9日間放置した後の電界効果移動度(B)を測定し、(式1)を用いて保護特性を評価した。なお、電界効果移動度は、飽和領域におけるVG- ID曲線から(式2)を用いて求めた。
(保護特性、単位:%)=(B/A)×100 …(式1)
【0039】
【数1】
JP0004587276B2_000007t.gif
(ID,sat:飽和領域のドレイン電流、W:チャネル幅、L:チャネル長、Ci:誘電体層の面積あたりキャパシタンス、μFE:電界効果移動度、VG:ゲート電圧、VT:閾電圧)
【0040】
(b)絶縁特性
図5に示すように、サファイアからなる絶縁基板2上に、電極Aの金、本発明の製造方法によって形成された保護膜1、電極Bの金の順序で構成される試料を作製し、電極A-B間の破壊電圧を計測した。
【0041】
参考例1
パルスレーザーのターゲットとして、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の共重合物で、融点が280℃であるサーモトロピックLCPを吐出量20kg/時で溶融押出し、横延伸倍率4.77倍、縦延伸倍率2.09倍の条件でインフレーション製膜することにより、厚さ50μmのフィルムを得た。
【0042】
参考例2
パルスレーザーのターゲットとして、p-ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびビフェノールの共重合物で、融点が340℃であるサーモトロピックLCPを吐出量20kg/時で溶融押出し、横延伸倍率3.56倍、縦延伸倍率2.81倍の条件でインフレーション製膜することにより、厚さ50μmのフィルムを得た。
【0043】
参考例3
厚さ1800Åのサファイア基板上に、蒸着法によって厚さ300Åのアルミからなるゲート電極、スパッター法で厚み2000Åの酸化アルミからなるゲート誘電体、分子線エピタキシー法で厚み500Åのペンタセンからなる有機半導体、蒸着法で厚さ300Åの金と厚さ100Åのニッケルからなるドレイン電極およびソース電極を順次形成することにより、有機FET素子を作製した。
【0044】
実施例1
参考例1で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとして、真空度10-7Torrの雰囲気下で、波長248nmのKrFパルスレーザーをエネルギー密度0.56J/cmで照射することにより、厚さ700Åの保護膜を有する図5の構造の絶縁特性評価用試料を作製した。
次に、参考例3で得た、保護膜を有していない有機FET素子を素材として用い、上記と同様にして、表面に厚さ700Åの保護膜を有する図1の構造の有機FET素子を作製した。
得られた絶縁特性評価用試料の絶縁特性、および有機FET素子の保護特性を表6に示す。
【0045】
実施例2
参考例1で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとして、真空度10-7Torrの雰囲気下で、波長248nmのKrFパルスレーザーを0.84J/cmのエネルギー密度で照射することにより、厚さ700Åの保護膜を有する図5の構造の絶縁特性評価用試料を作製した。
次に、参考例3で得た、保護膜を有していない有機FET素子を基材として用い、上記と同様にして、表面に厚さ700Åの保護膜を有する図1の構造の有機FET素子を作製した。
得られた絶縁特性評価用試料の絶縁特性、および有機FET素子の保護特性を表6に示す。
【0046】
実施例3
参考例1で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとして、真空度10-7Torrの雰囲気下で、波長248nmのKrFパルスレーザーをエネルギー密度0.56J/cmで照射することにより、厚さ1100Åの保護膜を有する図5の構造の絶縁特性評価用試料を作製した。
次に、参考例3で得た、保護膜を有していない有機FET素子を基材として用い、上記と同様にして、表面に厚さ1100Åの保護膜を有する図1の構造の有機FET素子を作製した。
得られた絶縁特性評価用試料の絶縁特性、および有機FET素子の保護特性を表6に示す。
【0047】
実施例4
参考例2で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとしたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ700Åの保護膜を有する図5の構造の絶縁特性評価用試料、および厚さ700Åの保護膜を有する図1の構造の有機FET素子を作製した。
得られた絶縁特性評価用試料の絶縁特性、および有機FET素子の保護特性を表6に示す。
【0048】
実施例5
波長532nmのNd/YAGレーザーを用いて、エネルギー密度0.133J/cmで照射したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ700Åの保護膜を有する図5の構造の絶縁特性評価用試料、および厚さ700Åの保護膜を有する図1の構造の有機FET素子を作製した。
得られた絶縁特性評価用試料の絶縁特性、および有機FET素子の保護特性を表6に示す。
【0049】
比較例1
参考例3で得た保護膜を有していない有機FET素子を用いて、保護特性を評価した。結果を表6に示す。
【0050】
【表6】
JP0004587276B2_000008t.gif

【0051】
実施例6
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基板上に、参考例1で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとして、真空度10-7Torrの雰囲気下で、波長248nmのKrFパルスレーザーをエネルギー密度0.56J/cmで照射することにより厚さ700Åの保護膜を形成し、次いで厚さ700ÅのITO電極、厚さ50nmのTPD層、厚さ60nmのAlq3 (Tris-(8-hydroxyquinolate)-aluminum)層、厚さ50nmのMg:Ag電極をこの順に順次形成し、さらに、参考例1で得たサーモトロピックLCPのフィルムをターゲットとして、真空度10-7Torrの雰囲気下で、波長248nmのKrFパルスレーザーをエネルギー密度0.56J/cmで照射することによって厚さ700Åの保護膜を形成することにより、図4において電子輸送層が省略された構造を有する有機EL素子を作製した。
【0052】
上記実施例から明らかなとおり、水分バリアー性および/または酸素バリアー性に優れたLCPの膜を製造することができるとともに、該膜を電子デバイス、特に有機電子デバイスの保護膜として形成することにより、空気中の水分や酸素による性能の劣化を防止した長期安定性に優れた電子デバイスを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の製造方法によって形成された有機FET素子を示す断面構造図である。
【図2】従来の有機EL素子を示す断面構造図である。
【図3】本発明の製造方法によって形成された有機EL素子を示す断面構造図である。
【図4】本発明の製造方法によって形成された有機EL素子を示す断面構造図である。
【図5】本発明の製造方法によって形成された保護膜の絶縁特性を測定するための試料を示す断面構造図である。
【符号の説明】
【0054】
1:保護膜
2:基板
3:ゲート電極
5:ゲート誘電体
6:有機半導体
7:ドレイン電極
8:ソース電極
11、11A:保護膜
12:透明高分子フィルム(基材)
13:アノード(透明電極)
14:正孔輸送層
15: 発光層
16:電子輸送層
17:カソード
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4