TOP > 国内特許検索 > 関節中心計測装置 > 明細書

明細書 :関節中心計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4332669号 (P4332669)
公開番号 特開2005-245476 (P2005-245476A)
登録日 平成21年7月3日(2009.7.3)
発行日 平成21年9月16日(2009.9.16)
公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
発明の名称または考案の名称 関節中心計測装置
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/10 310G
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2004-055672 (P2004-055672)
出願日 平成16年3月1日(2004.3.1)
審判番号 不服 2007-006696(P2007-006696/J1)
審査請求日 平成16年6月15日(2004.6.15)
審判請求日 平成19年3月6日(2007.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】青木 慶
【氏名】持丸 正明
【氏名】河内 眞紀子
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
参考文献・文献 特開平9-153151(JP,A)
調査した分野 A61B5/11
特許請求の範囲 【請求項1】
骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置において、計測対象となる関節を近位に持つ体節の位置と姿勢の6自由度を計測するための、前記体節の身体表面に装着したジグの上に取り付けた標点セットと、該標点セットを取り付けた前記体節の位置と姿勢の計測空間内の6自由度を計測できる計測手段と、前記標点セットを取り付けた前記体節を、関節中心から標点までの距離を半径とする球面内の三次元的な回転運動をさせることにより、前記体節内の近位に存在する関節中心位置を正しく推定する推定手段及び、該推定手段により推定された関節中心位置を計測空間内の三次元座標に変換する変換手段を備えた電子計算処理手段とから構成されたことを特徴とする関節中心計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格を有する生物の運動を計測する際の目印としては、骨同士をつなぐ関節中心が挙げられる。しかし、真の関節中心は身体内部に存在し、運動中に身体を侵襲することなく直接計測することは困難である。そのために、関節付近に標点を取り付けて、回帰データを用いて真の関節中心を推定する手法を採ることが多い。例えば、人間の肩関節については、下記非特許文献1、2、3がある。また計測された運動データから幾何学的に肩関節中心を求める方法も提案されている。例えば、下記非特許文献4がある。さらには、犬等の挙動の画像から関節の動きのデータを収集するものも提案された。例えば下記特許文献5がある。また、人体像をボクセル(微小立方体)で満たされた空間内の挙動として取り扱うことにより、関節位置を求めるものも提案されている。例えば、下記特許文献6がある。
【0003】

【非特許文献1】〔Meskers et.al.1998〕:Meskers,C.G.,van der Helm,F.C.,Rozendaal,L.A.and Rozing,P.M:In vivo estimation of the glenohumeral joint rotation center from scapular bony landmarks by linear regression,Journal of Biomechanics,31,1(1998)
【非特許文献2】〔Veeger 2000〕:Veeger,H.E.J:The position of the rotation center of the glenohumeral joint,Journal of Biomechanics,33,12(2000)
【非特許文献3】〔Stokdijik et.al.2000〕Stokdijk,M.,Nagels,J.and Rozing,P.M.:The glenohumeral joint rotation center in vivo,Journal of Biomerchanics,33,12(2000)
【非特許文献4】〔Bao & Willems 1999〕Bao,H.and Willems,P.Y.:On the kinematic modelling and the parameter estimation of the human shoulder,Journal of Biomechanics,32,9(1999)
【特許文献5】特開平11-175692号公報(請求項1参照)
【特許文献6】特開2003-22437号公報(段落0066等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記非特許文献1~3に開示されたものでは、回帰データの適用範囲に大きく依存するため、その適用範囲外では、運動によっては関節中心が大きくずれてしまう現象が生じた。また、生物によっては回帰データがない場合も多い。さらにこの方法では、身体特徴点の触診が必須であり、専門技術を有する医療従事者が必要であった。また、前記非特許文献4に開示されたものでは、解剖学的な知識をあまり必要とはせず、幾何学的な拘束条件を仮定しているが、微小な運動に対しては適用が困難であり、さらに、取り付ける標点の位置が制限されてしまう等問題が多い。
【0005】
さらに、前記特許文献5に開示されたものでは、画像計測にのみ対応するものであり、多種の計測方法には応用ができない。さらにまた、前記特許文献6に開示されたものでは、予め装置内にボクセルで構築された人体のモデルが必要であり、簡便性に劣るものであった。
【0006】
そこで本発明は、前記従来の関節中心計測方法およびその装置の諸課題を解決して、運動中の骨格を有する生物の真の関節中心を、身体を侵襲することなく、また、専門技術を要さずに、簡便に計測できる関節中心計測装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明が採用した技術解決手段は、骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置において、計測対象となる関節を近位に持つ体節の位置と姿勢の6自由度を計測するための、前記体節の身体表面に装着したジグの上に取り付けた標点セットと、該標点セットを取り付けた前記体節の位置と姿勢の計測空間内の6自由度を計測できる計測手段と、前記標点セットを取り付けた前記体節を、関節中心から標点までの距離を半径とする球面内の三次元的な回転運動をさせることにより、前記体節内の近位に存在する関節中心位置を正しく推定する推定手段及び、該推定手段により推定された関節中心位置を計測空間内の三次元座標に変換する変換手段を備えた電子計算処理手段とから構成されたことを特徴とする関節中心計測装置である。

【発明の効果】
【0008】
本発明では、骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置において、計測対象となる関節を近位に持つ体節の身体表面に装着した標点セットを取り付け、該標点セットを取り付けた前記体節を三次元的な回転運動をさせることにより、前記体節内に存在する関節中心位置を正しく推定して、計測空間内の三次元座標に変換することで、関節の中心位置を求めることにより、身体表面に取り付けられた複数の標点の解析のみにより、運動中の骨格を有する生物の真の関節中心を、身体を侵襲することなく、また、専門技術を要さずに、利便性が高く計測が可能となるばかりでなく、運動中の関節中心の計測精度も向上させることができる。

【0009】
また、骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置において、計測対象となる関節を近位に持つ体節の位置と姿勢の6自由度を計測するための、前記体節の身体表面に装着したジグの上に取り付けた標点セットと、該標点セットを取り付けた前記体節の位置と姿勢の計測空間内の6自由度を計測できる計測手段と、前記標点セットを取り付けた前記体節を、特定の三次元的な回転運動をさせることにより、前記体節内の近位に存在する関節中心位置を正しく推定する推定手段と、該推定手段により推定された関節中心位置を計測空間内の三次元座標に変換する機能を備えるとともに物理的あるいは論理的処理手段を備えた電子計算処理手段とから構成されたことにより、身体表面に取り付けられた複数の標点の解析を通して、関節中心を、計測手段、画像表示手段およびパソコン等の電子計算処理手段等からなる簡素な装置により、身体を侵襲することなく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の関節中心計測装置の概要図、図2は関節中心推定運動図、図3は肩関節中心位置の推定結果図、図4は制御フロー図である。本発明の関節中心計測装置の基本的構成は、図1に示すように、骨格を有する生物の運動中の関節中心を計測する関節中心計測装置において、計測対象となる関節を近位に持つ体節の身体表面に装着した標点セットを取り付け、該標点セットを取り付けた前記体節を三次元的な回転運動をさせることにより、前記体節内に存在する関節中心位置を正しく推定して、計測空間内の三次元座標に変換することで、関節の中心位置を求めることを特徴とするものである。

【実施例1】
【0011】
以下、詳細に説明する。図1における本発明の概要ブロック図に示すように、本発明の関節中心計測装置は、体節の身体表面上に取り付けた3点以上の標点の三次元位置を計測・解析するための三次元位置計測手段(カメラ等の光学的手段や、磁気あるいは超音波等による計測手段が採用される)と、該計測手段からの画像情報を表示するディスプレー等の画像表示手段と、各情報の解析・処理を行うパソコン等の制御手段とから構成される。図示省略のその他の、記憶手段や解析結果のプリントアウト手段等も当然に備える。パソコン等の制御手段内には、基本的に、標点の三次元位置解析手段、関節中心位置推定手段および関節中心位置三次元座標変換手段が具備されている。
【0012】
本発明の基本となる手法は、実際に計測したい運動を行わせる前に、簡単な運動により標点座標系から見た関節中心を予め求める手法である。この運動を「関節中心推定運動」と呼ぶ。さらに本発明では、関節は上位にその関節を含む体節、例えば、人間の肩関節であれば上腕節に固定されているものとして考える。すなわち、生物の身体を剛体リンク群でモデル化したときに、関節は並進の3自由度を合わせた6自由度を有する関節であるものとした。また、その関節を挟んだ上位の体節、例えば、人間の肩関節であれば体幹節は、関節中心推定運動中は動かないものとした。
【0013】
図4は本発明の関節中心計測装置による制御フロー図である。先ず、関節を上位に持つ被験者の体節の身体表面あるいは身体表面に装着したジグの上に3点以上の標点を取り付ける体節への標点付与がなされる。次いでカメラ等の計測手段に計測開始がなされ、次いで被験者の体節の運動を促す。各標点の空間座標位置が計測されその解析がなされる。その後、体節座標系の解析がなされ、次いで、関節中心の推定がなされる。さらに、各標点と関節中心との関係の解析がなされて、最後に関節中心の計測空間内の三次元座標への変換が行われて関節中心の確定がなされる。
【0014】
<体節座標系の解析>
生物のある体節が時刻0から時刻tまで関節中心推定運動をするとき、空間座標系において関節中心は大きく動かないと仮定する。このとき、体節に取り付けた3つの標点から関節中心までのそれぞれの距離は、時刻tと時刻t’(t≠t’)においてほぼ一致するはずである。よって次の(1)式が成立する。
【数1】
JP0004332669B2_000002t.gif
1 S は時刻tにおける関節中心の空間座標系位置を表す。また、Rnt=(rnxt ,rnyt ,rnzt T (n=1,2,・・・,n)は時刻tにおける標点nの空間座標系位置を表す。標点の数は、最低3つ必要である。このとき、関節中心の変位量が少ないとすれば、Rt S =Rt'S とみなせる。よって、これらを展開して整理すると、次の(2)式のようになる。
【0015】
【数2】
JP0004332669B2_000003t.gif
ここで、0≦t’≦tの範囲で式(2)を拡張すると、次式(3)のようになる。
【0016】
<関節中心の推定>
【数3】
JP0004332669B2_000004t.gif
よってRt S は、
【数4】
JP0004332669B2_000005t.gif
と表される。A ̄t はAt の擬似逆行列である。(A ̄はAの算術平均を便宜的に表す)これを0≦t≦Tの範囲で解くことにより、関節中心推定運動中に関節中心が空間においてどの辺りにあるかを推定することができる。
【0017】
<各標点と関節中心との関係の解析>
前記で推定された関節中心を実際の運動計測に対応させるためには、各標点と関節中心との関係を求める必要がある。そこで、例えば光学的方法により運動計測を行う際には、体節に取り付けた標点セット内の3つ以上の標点から体節座標系を定め、体節座標系から見た関節中心の推定を行った。まず、任意姿勢を体節座標系の基準姿勢とした。このときの空間座標系標点位置R ̄n (n==1,2,・・・,n)のうち、任意の3点を選ぶ。ここでは、n=1,2,3を選んだものとする。このとき、R ̄1 を原点とする3つの座標軸ベクトル群R ̄p を次式(5)のように3×3の行列で定義した。
【数5】
JP0004332669B2_000006t.gif

【0018】
<関節中心の計測空間内の三次元座標への変換>
同様に、関節中心推定運動時のR1tを原点とする座標系ベクトル軸Rp t を次式(6)で表した。
【数6】
JP0004332669B2_000007t.gif
R ̄p とRp t は原点の重なった同じ大きさのベクトル群であり、その姿勢が異なる。よって、回転行列Mt を用いれば、次式(7)の関係が成り立つ。
【数7】
JP0004332669B2_000008t.gif

【0019】
このとき、Mt は基準姿勢を時刻tでの体節座標系に変換する行列である。なお、磁気センサ等、空間内の6自由度を計測できる標点セットおよび計測装置を用いる場合は、Mt は式(5)(6)(7)を用いずに直接計測することが可能である。一方、体節座標系における関節中心R ̄s は、仮定より体節に固定された定数ベクトルであるため、空間座標系の関節中心 *s t は次式(8)で表される。
【数8】
JP0004332669B2_000009t.gif
よって、関節中心推定運動中の *s t と式(4)で求められたRs t との差を比較することにより、R ̄s が推定される。これを最適化問題の形式に当てはめると以下のようになる。
【0020】
状態変数:R ̄s (3自由度)
目的関数:
【数9】
JP0004332669B2_000010t.gif
なお、目的関数の積分については実際には刻み時間dt毎に計算された値の総和で表される。求められたR ̄s は取り付けられた標点セットに固有の座標系である。よって、同じ標点セットを用いて目的の運動を計測すれば、空間座標系における関節中心は、式(8)で求めることができる。
【0021】
関節中心推定運動は、例えば、人間の肩関節であれば、図2のように、上腕節を肩から下垂した姿勢から身体前面へ30度内転させつつ60度屈曲させ、徐々に側方へ上腕を回転させ、90度程度外転しつつ10度伸展させ、初期姿勢に戻るような三次元的な回転運動を行わせることで、各標点の運動は、関節中心から標点までの距離を半径とする球面内の運動となる。本発明は、この球面の半径が各標点において常に一定になるように問題を置き換えて解いている。そのため、解剖学的な知見を全く用いずに関節中心を求めることができ、様々な関節への適用が可能である。
【0022】
本発明に用いる標点セットは、空間内の体節の三次元空間配置が計測できれば、その種類は問わない。よって、本発明は、3点以上の標点が必要な光学的方法や超音波センサのみならず、1つの標点のみで空間内の6自由度を計測できる磁気センサを標点セットに組み込むことができる。しかしながら、どのようなセンサを用いても、計測精度を上げるためには多数の標点を用いることが望ましい。本発明は、これらの標点に応じた三次元計測装置も備える。例えば光学式運動計測であれば、カメラを含む計測装置であり、磁気式運動計測であれば、磁場発生装置である。さらに、前記の手法を搭載した電子計算処理手段も備えることにより、目標とする関節中心位置の計測を行うことができる。
【0023】
人間の肩関節中心の計測結果を図3に示す。本発明を用いて被験者の肩関節位置を計測した結果、上腕節座標系において記述された肩関節位置は、MRIで計測された被験者の上腕骨骨頭付近に存在することが分かった。これは、解剖学的な知見と一致し、肩関節位置が正しく計測されたと言え、本発明の正しさが示された。
【0024】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内にて、関節の種類(肩関節、股関節、膝関節、手首等)、身体表面あるいは身体表面に装着したジグの上への標点の取付け形態、標点の数、形状、ジグの種類、計測手段の形状、形式(光学的手法あるいは磁気的手法もしくは超音波的手法によるもの)、推定手段の推定形態、推定された関節中心位置を計測空間内の三次元座標に変換する変換形態、電子計算処理手段の形式等については適宜選定することができる。なお、詳細な説明にて記載された諸元等は例示に過ぎないものであり、限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の関節中心計測装置の1つの実施例の概要図である。
【図2】同、関節中心推定運動図である。
【図3】同、肩関節中心位置の推定結果図である。
【図4】本発明の関節中心計測装置による制御フロー図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3