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明細書 :臨界電流密度測定方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4302556号 (P4302556)
公開番号 特開2005-257592 (P2005-257592A)
登録日 平成21年5月1日(2009.5.1)
発行日 平成21年7月29日(2009.7.29)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 臨界電流密度測定方法及びその装置
国際特許分類 G01N  27/72        (2006.01)
FI G01N 27/72
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2004-072223 (P2004-072223)
出願日 平成16年3月15日(2004.3.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年12月3日 社団法人低温工学協会発行の「第69回2003年度秋季 低温工学・超電導学会講演概要集」に発表
審査請求日 平成19年1月15日(2007.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】大嶋 重利
【氏名】齊藤 敦
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開平09-236583(JP,A)
特開2003-207526(JP,A)
特開2004-212168(JP,A)
特開平04-172280(JP,A)
A Sundaresan et al.,A simple test for high Jc and low Rs superconducting thin films,Superconductor Science and Technology,2003年,Vol.16 No.5,L23-L24
調査した分野 G01N 27/72-27/90
JSTPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
演算処理手段と、この演算処理手段に接続されたロッド付き荷重測定センサーと、前記ロッドの先端に取り付けた永久磁石と、前記永久磁石に対向して配置される被検査体としての高温超電導薄膜とを備え、前記永久磁石と前記高温超電導体間の斥力を前記荷重測定センサーによって求め、前記演算処理手段により前記斥力と高温超電導体薄膜厚とを基に予め求めておいたマップから前記被検査体の臨界電流密度を測定することを特徴とする臨界電流密度の測定装置。
【請求項2】
また、前記マップは、磁化特性法、四端子法、誘導法の何れかの方法で測定した値を基に作成したことを特徴とする臨界電流密度の測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の臨界電流密度の測定装置を用い、永久磁石と超電導体間の斥力を荷重測定センサーによって求め、この斥力と超電導体膜厚とを基に、予め求めておいたマップから被検査体の臨界電流密度を求めることを特徴とする臨界電流密度の測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は製造した高温超電導体薄膜の臨界電流密度測定方法及びその装置に関するものであり、より詳細には、超電導薄膜と永久磁石の磁場との相互作用で得られる斥力を荷重センサで測定し、予め磁化特性法や四端子法、誘導法などにより求めておいた臨界電流密度(Jc)と斥力/超電導薄膜の膜厚(a1 /d)のグラフ(Jc-a1 /dのグラフ)から、前記測定値を使用して非破壊で臨界電流密度を簡便に測定することができる臨界電流密度測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導、特に液体窒素冷却により超電導性(ゼロ抵抗)を示す高温超電導体が発見されてから、輸送用超電導線材の研究開発が進み種々の高性能な超電導線材が開発されている。超電導線材の性能は主に臨界電流密度によって評価され、近年ではJc~1MA/cm2 を超える高臨界電流密度線材が開発され、その長さは100mに達している。今後、さらなる長尺化と低コスト化が課題となっている。
【0003】
一方、これまで、幾つかの臨界電流密度の評価方法が提案されており、それぞれが、幾つかの利点・欠点を有している。最も一般的である四端子法は測定精度が高く、他の測定方法の校正手段としても用いられているが、サンプル形状を加工しなければならないといういわゆる破壊測定方法である。
また、サンプルを加工せずに、準非破壊でJcを評価する方法として磁化特性法が最近注目されているが、長尺の超電導線材の測定は困難である。
このような背景の中で、現在主流となっている非破壊測定方法は、誘導法(特許文献1)であるが、誘導法は、
(1)高臨界電流密度、厚膜(1μm)のJc測定が困難である。
(2)液体窒素を大量に必要とする。
(3)装置が高価である。
という問題があった。
【0004】

【特許文献1】特開2003-207526
【0005】
このため、高速線材作製とほぼ同時に線材の非破壊性能試験が可能な評価ツールが望まれている。また、線材の長尺化に伴うオンライン評価機構の開発例もないことから、長尺な高品質超電導線材の非破壊診断ツールの確立が課題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長尺な高品質超電導線材の非破壊測定のために、永久磁石を用いた臨界電流密度の評価方法を用いることを特徴としており、測定原理は、冷却した超電導体に永久磁石を近づけることによる斥力と、遠ざけていく時に生じる引力を荷重測定センサーで測定し、その内の斥力の荷重特性から臨界電流密度の評価を行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
演算処理手段と、この演算処理手段に接続されたロッド付き荷重測定センサーと、前記ロッドの先端に取り付けた永久磁石と、前記永久磁石に対向して配置される被検査体としての高温超電導薄膜とを備え、前記永久磁石と前記高温超電導体間の斥力を前記荷重測定センサーによって求め、前記演算処理手段により前記斥力と高温超電導体薄膜厚とを基に予め求めておいたマップから前記被検査体の臨界電流密度を測定することを特徴とする臨界電流密度の測定装置である。
また、前記マップは、磁化特性法、四端子法、誘導法の何れかの方法で測定した値を基に作成したことを特徴とする臨界電流密度の測定装置である。
また、前記に記載の臨界電流密度の測定装置を用い、永久磁石と超電導体間の斥力を荷重測定センサーによって求め、この斥力と超電導体膜厚とを基に、予め求めておいたマップから被検査体の臨界電流密度を求めることを特徴とする臨界電流密度の測定方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、これまで非破壊測定不可能であった高臨界電流密度かつ厚膜線材の測定・評価が可能となる。永久磁石を使うのでFeNdB磁石のような数1000Gaussの磁場が作れる強力磁石を使うことにより10μm位の厚さまで計測できる。直流磁場でよい(強力な永久磁石が使用可能)。小さな直径の磁石を使う、純鉄のヨークを磁石に近づけ磁場を絞りこむ等して膜の内面分布の測定分解能を高くできる。また、測定装置の構成も簡便なため、実用化における設備投資費の節減と、線材の低コスト化につながる。さらに、一ヶ所の測定時間が短いことから大量生産ライン用装置への応用も容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
長尺な高品質超電導線材の非破壊測定のために、永久磁石を用いた臨界電流密度の評価方法を用いる。測定原理は、冷却した超電導体に永久磁石を近づけることによる斥力と、遠ざけていく時に生じる引力を荷重測定センサーで測定し、その内の斥力の荷重特性から臨界電流密度の評価を行う。本発明の方法によれば、誘導法では測定不能な厚みの膜も測定でき、永久磁石の磁場を絞り込むことにより面内分布を高い解像度で測定できる等の特長を有する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を説明すると、図1に装置の概略図を示す。
測定装置は制御用パソコン(演算処理手段)と測定装置本体というシンプルな構成になっており、制御用パソコン1は本体制御用インターフェースボードを内蔵し、ほぼ全ての測定を自動制御可能となっている。本体近傍には、約2リツトル容量の液体窒素槽3がおかれ、被検査物としての高温超電導薄膜8を簡易に冷却することができる。本体下部は各電源と制御用モータ、加重センサー値の表示ユニット2が設置されている。制御用パソコン、モータ、表示ユニットは公知のものを使用しており、さらに測定を自動制御するためのソフトウエアは本発明の特徴ではないので、詳細な説明は省略する。
【0011】
パソコンには測定装置本体(ロッド付き加重測定センサー)4が接続されており、加重センサーからの出力をパソコン内に取り込むことができるようになっている。ロッド付き加重測定センサー4のロッド5先端には円柱状の永久磁石6(本例ではφ5~2.6mm、h=3mm)が取り付けられている。この構成により永久磁石6と被検査物(超電導材)8に働く加重を測定することが出来る。加重測定の分解能は、0.01g重である。また、測定の際は被検査物表面にポリアミド粘着テープ7を貼り薄膜の劣化を防止しているが、このテープは無くてもよい。
【0012】
上記装置による加重測定
ロッド5の先端に取り付けた永久磁石6を被検査体(高温超電導薄膜)8に近づけていく際、超電導薄膜8に流れるシールド電流(マイスナー効果)によりロツド5に取り付けた永久磁石6と被検査体8の間に斥力が生じる(図2(a))。さらに磁石6を近づけ、薄膜の下部臨界磁界(H.1)以上の磁界が印加されると磁束が薄膜内を貫通する(図2(b))。次に被検査体8からロッド5を離していくと、被検査体8に保持されている磁場により先ほどとは逆にロッド5に取り付けた永久磁石6と被検査体8の間に引力が生じる(図2(c))。薄膜の臨界電流密度Jcが大きいほど、これらの力は強くなることから、既知のJcを持つ高温超電導薄膜の斥力、引力特性を測定し、その相関を見いだすことにより簡便にJcの評価が可能となる。
【0013】
具体的には、予め、誘導法により測定した臨界電流密度Jcと、高温超電導薄膜と永久磁石との間の距離Lと斥力との関係からa1 /dを求め、これらの関係を図4に示すようにマップ化しておく。なお、図4は一例としてYBCO薄膜の77KにおけるJc-a1 /d特性をしめしている。マグネットはφ5mmを用いた。実験で得られたJcはa1 に正の相関を示し、
Jc=3.6×10-5×(a1 /d)2/3 〔MA/cm2
の関係で説明できている。したがって、本測定装置により測定したa1 と既知の膜厚さdを用いて後述のようにして薄膜のJcを評価できる。なお、図4は薄膜の材料、磁石の大きさ毎の実験を行い簡単に作成することができる。
ところで上記a1 は次のように定義される。
図3は簿膜と永久磁石間の測定最小距離Lmin を変えて引力・斥力特性を測定した結果を示している。図3から、Lmin が0.5から2.0mmの範囲ではL=0の外挿値が全て一致していることがわかる。そこで、実験で得られた荷重と距離の関係から斥力、引力値それぞれの接線とL=0の交点をそれぞれ、a1 、a2 と定義する。a1 の値は、磁石を近づけた際に超電導体内に流れるマイスナー電流に関係し、a1 が大きいほど大きなマイスナー電流が流れると考えられる。一方、a2 は超電導薄膜内で反転するシールド電流による磁界と、膜中のトラップ磁界によるものである。よって、a1 がJcと相関をもつことがわかる。dは高温超電導薄膜の膜厚である。
【0014】
上記装置による臨界電流密度Jcの求め方。
先ずロッド付き加重測定センサー4から被検査体8との間の斥力と距離Lを求め、その値をもとにパソコン内で、a1 を求め、既知の膜厚とからa1 /dを求め、この値を使用してパソコン内に記憶しているマップ(図4参照)から臨界電流密度Jcを求める。こうすることで膜厚が既知のサンプルの斥力a1 を測定することによって容易にJcを算出することができる。
【0015】
以上、本発明に係る高臨界電流密度かつ厚膜線材の渕定・評価について説明をしたが、パソコンの代わりに専用の制御回路を使用してもよい。さらに本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明により、これまで非破壊測定不可能であった高臨界電流密度かつ厚膜線材の測定・評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本装置の概略構成図である。
【図2】永久磁石を使用した測定原理の説明図である。
【図3】斥力・引力特性のLmin 依存性を示すグラフである。
【図4】臨界電流密度(Jc)と斥力/超電導薄膜の膜厚(a1 /d)の関係図(マップ)である。
【符号の説明】
【0018】
1 制御用パソコン
2 表示ユニット
3 液体窒素槽
4 ロッド付き荷重測定センサ-
5 ロッド
6 永久磁石
7 ポロアミド粘着テープ
8 被検査物
9 ベース
10 冷却部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3