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明細書 :カルボラン誘導体化合物を自己組織化膜に用いる基板と該基板を用いた試験方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4450413号 (P4450413)
公開番号 特開2005-274525 (P2005-274525A)
登録日 平成22年2月5日(2010.2.5)
発行日 平成22年4月14日(2010.4.14)
公開日 平成17年10月6日(2005.10.6)
発明の名称または考案の名称 カルボラン誘導体化合物を自己組織化膜に用いる基板と該基板を用いた試験方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 33/53 ZNAM
C12M 1/00 A
C12M 1/34 A
C12N 15/00 A
C12N 15/00 F
C12Q 1/68 A
G01N 33/543 595
G01N 33/566
G01N 21/27 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2004-092072 (P2004-092072)
出願日 平成16年3月26日(2004.3.26)
審査請求日 平成18年12月1日(2006.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】玉田 薫
【氏名】伊藤 正照
【氏名】中村 史夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100106530、【弁理士】、【氏名又は名称】古宮 一石
審査官 【審査官】白形 由美子
参考文献・文献 特開2003-156504(JP,A)
特開2003-294742(JP,A)
カルボランのサイズ効果を利用した光応答性自己組織化膜の作製,第83春季年会プログラム (「化学と工業」掲載) 2H3-40,日本,2003年 3月 3日,Page.394
調査した分野 G01N 33/48-33/98
G01N 21/27
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸とターゲット核酸をハイブリダイゼーションして、基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法において、基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸が、構造式(2)で表されるジスルフイド化合物を介して、基板上に固定されている自己組織化膜にアミドカップリングにより核酸が固定されていることを特徴とする基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法。
【化1】
JP0004450413B2_000006t.gif
(式中、Rはカルボン酸基、Aはパラカルボランである。パラカルボランの12位にある置換基Rはフェノキシエチレングリコール基、又はエチレングリコール基である。)
【請求項2】
固定されている自己組織化膜にアミドカップリングにより固定されている核酸がDNAである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸とターゲット核酸のハイブリダイゼーションの有無を表面プラズモン共鳴法により検出する請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
塩基のミスマッチを含むターゲットDNAを検出するための請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
核酸を固定化した基板表面へのターゲットDNAの吸着を、ナトリウムイオン又はマグネシウムイオンから選ばれる1価又は2価の金属イオンの存在下で行う請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
下記構造式(2)で表されるジスルフイドから選ばれる化合物を介して、基板上に固定されている自己組織化膜にアミドカップリングによりDNA鎖が固定されており、DNA鎖は二重鎖部分及び一重鎖部分を有するDNA鎖であることを特徴とするDNA鎖が固定化されている基板。
【化2】
JP0004450413B2_000007t.gif
(式中、Rはカルボン酸基、Aはパラカルボランである。パラカルボランの12位にある置換基Rはフェノキシエチレングリコール基、又はエチレングリコール基である。)
【請求項7】
基板が、ガラス基板に金を蒸着したものであることを特徴とする請求項6に記載のDNA鎖が固定化されている基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボラン誘導体化合物を自己組織化膜に用いる基板と該基板を用いた試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子診断や病原菌の特定、あるいは一塩基多型の検出等、ある種の核酸(標的核酸)を検出する目的で核酸ブロープが用いられる。核酸ブロープとしては、DNA合成機により容易に合成できるという理由から、DNAブロープが主に使用されている.そして、近年、多数の核酸ブローブを基材に国定したDNAチップやDNAマイクロアレ-が実用化されるようになり、ターゲット核酸の検出に使用されている。
【0003】
基材に国定された核酸ブロープはターゲット核酸と接触条件下に置かれ、核酸プロープとターゲット核酸とのハイブリダイズの有無を検出する。ハイブリタイズの有無の検出には、例えば、核酸ブローブが有する、蛍光標識等の標識を用いて検知する。蛍光標識以外に、Rlなどが用いられる場合もある。
【0004】
これまでターゲット核酸とハイブリダイズした核酸ブローブを検知しやすいという観点から、蛍光標識が用いられることが多かった。しかし、蛍光標識を用いる場合、ターゲット核酸を蛍光ブロープ等で修飾する必要があるが、この操作は、煩雑である。今後、DNAチップやDNAマイクロアレーが、より広汎に実用されるためには、より簡便に上記ハイブリダイゼーションを検出できる手段が必要である。それに加えて、より微量のターゲット核酸を対象にした場合にも、上記ハイブリダイゼーションの検出が容易にできる、より高感度な検出を可能にする手段が必要である。このような検出装置として以下のものが知られている。
ヌクレオチド検出装置には、基板上に配置されたナノメータサイズの金粒子、金粒子に結合された一本鎖チオールDNAが設けられているヌクレオチド検出装置が知られている(特許文献1)。同様に、一本鎖の核酸プローブを支持体の表面に固定化することも知られている(特許文献2)
しかしながら、これらの一本鎖チオールDNAや一本鎖の核酸プローブを用いると、自己組織化したプローブDNAは密に凝集してしまうため十分な自由空間がないことからターゲットDNAが近づくことができず、相補対を作らないことが知られている。このような場合に、プローブDNAの分子間距離を作るために、メルカプトヘキサノールなどとチオール修飾したDNAとの共吸着により間引きする方法が一般的に用いられるが、混合比の検討課題が残されている。このようなことから、プローブとターゲットDNAが相補対を作る頃ができるバイオイップの実現が望まれている。
【0005】

【特許文献1】WO01/068834号公報
【特許文献2】特開0003-102499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、DNAプローブとターゲットDNAが相補対を作ることができる十分な空間をもったバイオチップを提供することである。又、このチップを用いた高感度な核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を検討し、アルキル基、アルキルアゾベンゼン基、フエノキシエチレングリコキシベンゼン、又はエチレングリコキシベンゼンを主鎖にもつスルフィド又はジスルフイドにおいて、スルフィド又はジスルフイド基からもっとも離れた末端部位に、反応性の機能性分子を有するカルボラン又はその誘導体を前記主鎖の部分に取り込んだ自己組織化膜は、カルボランの作用により、自己組織化膜を構成する分子相互では、凝集する状態を離れて、自由に機能性分子が近づくことができるようになるために、自己組織化膜と反応しようとする機能性分子との反応を阻害することなく、反応を進行させることができることを見出した。すなわち、3次元的に広がりを持つホウ素クラスターであるカルボランとDNAを結合させた分子をプローブDNAに接近するための十分な自由空間を作ることが可能となった。
機能性置換基を有するカルボラン化合物誘導体を有する生成物を基板に固定した自己組織化膜に、アミノ化DNAと縮合剤を用いて反応させることにより、DNAを導入することができる。
このようにして得られた基板上にDNAが固定された状態で水溶液に溶解させた状態とし、ターゲットDNAをハイブリダーゼーションさせると、自己組織化膜にカルボラン化合物誘導体が存在することにより、ハイブリダーゼーションを阻害せず、十分にこの反応を進行させることができる。このことを見出して,本発明を完成したものである。
【0008】
本発明によると、以下の発明が以下の発明が提供される。
(1) 基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸とターゲット核酸をハイブリダイゼーションして、基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法において、基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸が、構造式(2)で表されるジスルフイドから選ばれる化合物を介して、基板上に固定されている自己組織化膜にアミドカップリングにより核酸が固定されていることを特徴とする基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法。
【化1】
JP0004450413B2_000002t.gif
(式中、Rはカルボン酸基、Aはパラカルボランである。パラカルボランの12位にある置換基Rはフェノキシエチレングリコール基、又はエチレングリコール基である。)
(2) 固定されている自己組織化膜にアミドカップリングにより固定されている核酸がDNAである(1)に記載の方法。
(3) 前記基板表面に固定化された自己組織化膜に固定された核酸とターゲット核酸のハイブリダイゼーションの有無を表面プラズモン共鳴法により検出する(1)~(2)のいずれかに記載の方法。
(4) 塩基のミスマッチを含むターゲットDNAを検出するための(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 核酸を固定化した基板表面へのターゲットDNAの吸着を、ナトリウムイオン又はマグネシウムから選ばれる1価又は2価の金属イオンの存在下で行う(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 下記構造式(1)で表されるスルフイド及び下記構造式(2)で表されるジスルフイドから選ばれる化合物介して、基板上に固定されている自己組織化膜にアミドカップリングによりDNA鎖が固定されており、DNA鎖が固定されており、DNA鎖は二重鎖部分及び一重鎖部分を有するDNA鎖であることを特徴とするDNA鎖が固定化されている基板。
【化2】
JP0004450413B2_000003t.gif
(式中、Rはカルボン酸基、Aはパラカルボランである。パラカルボランの12位にある置換基Rはフェノキシエチレングリコール基、又はエチレングリコール基である。)
(7) 基板が、ガラス基板に金を蒸着したものであることを特徴とする(6)に記載のDNA鎖が固定化されている基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自己組織化膜に3次元的に広がりをもつホウ素クラスターであるカルボラン化合物とDNAを結合させた分子をプローブDNAとした。このカルボラン化合物を用いることにより、ターゲットDNAがプローブDNAに接近するための、十分な自由空間を作ることができたことにより、簡便かつ好感度なバイオチップが得られる。また、これを用いて、高感度な核酸とターゲット核酸との相補性を試験する方法が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のカルボラン誘導体化合物は、構造式(2)で表されるジスルフイドである。
【化3】
JP0004450413B2_000004t.gif

(式中、Rはカルボン酸基、Aはパラカルボランである。パラカルボランの12位にある置換基Rはフェノキシエチレングリコール基、又はエチレングリコール基である。)
【0011】
前記カルボラン化合物誘導体の製造方法は、Rを構成している基によって相違する。
(1)Rが、nエチレングリコールの場合
カルボランを、n-ブチルリチウムの存在下にクロロギ酸メチルと反応させてカルボランの1位にメチルエステル基を導入する。炭酸カリウムの存在下にジブロモアルカンと反応させてブロモアルキルカルボランを合成し、水酸化カリウムにより1位のメチルエステルを加水分解して、ギ酸に変え、次にチオ尿素と反応させて、メルカプトエチレングリコールカルボランを製造する。
(2)Rが、フェノキシ-nエチレングリコールの場合
nがテトラの場合について説明する。
パラカルボランと4-ヨードアニソールとを反応させて、1-(4-メトキシフェニル)-1,12-カルボランを得る工程(2を製造する工程)、1-(4-メトキシフェニル)-1,12-カルボランの12位にメチルエステルを導入して、1-(4-メトキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランを得る工程(3を製造する工程)、1-(4-メトキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランと三臭化ホウ素とを反応させて、1-(4-ヒドロキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランを得る工程(4を製造する工程)、1-(4-ヒドロキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランと1、11-ジブロモテトラエチレングリコールを反応させて1-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンを得る工程(5を製造する工程)、1-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンを加水分解して、1-(12-ギ酸-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンを得る工程(6を製造する工程)、1-(12-ギ酸-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンとチオ尿素を反応させて、12-(4-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-フェノキシ)-テトラエチレングリコール-ジスルフィドを得る工程(7を製造する工程)
【化7】
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【0012】
本発明の自己組織化膜は、前記構造式(1)で表されるスルフイド、又は構造式(2)で表されるジスルフイドを基板上に固定されているものである。
基板には、ガラスなどの板に金属を蒸着して得られるものが用いられる。
金属には、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、コバルト、インジウムなどの金属を挙げることができる。
構造式(1)で表されるスルフイド、又は構造式(2)で表されるジスルフイドを溶剤に溶解させて、希薄溶液を作り、前記基板と接触させて、室温下に数時間に渡り放置する。その後、基板に過剰に付着した前記化合物を除去する。
このようにして金属基板の表面に吸着させた自己組織化膜を得ることができる。
具体的には、前記の工程により得られる12-(4-(12-ギ酸メチルエステル-1,12—カルボラン)フエノキシ)-テトラエチレングリコール-ジスルフイドを、金属と共存させた状態に保つことによって、金属基板の表面に吸着させて自己組織化膜を形成する。
前記工程で得られた12-(4-(12-ギ酸メチルエステル-1,12—カルボラン)フエノキシ)-テトラエチレングリコール-ジスルフイドを、溶剤に溶解させて、希薄溶液を作り、前記基板と接触させて、室温下に数時間に渡り放置する。その後、基板に過剰に付着した前記化合物を除去する。
このようにして自己組織化膜が得られる。
溶媒は、適宜選択して使用することができる。具体的には、ジクロロメタンなどに溶解させて1mMの溶液とし、室温で、2から12時間程度放置する。
【0013】
前記工程で得られた機能性置換基を有するカルボラン化合物誘導体を有する生成物を基板に固定した自己組織化膜を、機能性分子と反応させる際にカルボラン化合物誘導体の作用により実際に反応を阻害されることがないかを確認する。
本発明では機能性分子に核酸、特にDNAを用いて確認を行なう。本発明では、機能性置換基を有するカルボラン化合物誘導体を有する生成物を基板に固定した自己組織化膜を、アミノ化DNAと縮合剤を用いて反応させることにより、DNAを導入することができる。この縮合剤には4-(4,6-ジメトキシー1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)、DCC(N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などが用いられる。
このようにして得られた基板上にDNAが固定された状態で水溶液に溶解させた状態で、ターゲットDNAをハイブリダーゼーションさせて、自由に反応させることができるかどうかを確認する。具体的には、ハイブリダイゼーションが生起していれば反応を阻害していないというとことがわかる。これには、ハイブリダイゼーションの確認には、表面プラズモン共鳴法、水晶振動子法などが適宜採用される。本発明では、表面プラズモン法によりハイブリダイゼーションが生起していることを確認している。
具体的には、特開2002-22653に記載されているような表面プラズモン共鳴分光法により、自己組織化膜の反射率の変化をモニターすることによって観察することができる。
本発明では、後で述べるように比較例としては、同じく末端に機能性置換基を有するものの、カルボラン化合物誘導体を有していない、従来から用いられてきた自己組織化膜を用いて同じく基板上にDNAが固定された状態で水溶液に溶解させた状態で、ターゲットDNAをハイブリダーゼーションさせて得られた結果を調べたものである。
【0014】
前記工程で得られた機能性置換基を有するカルボラン化合物誘導体を有する生成物を基板に固定した自己組織化膜を、機能性分子と反応させる際にカルボラン化合物誘導体の作用により実際に反応を阻害されることがないかを確認する。
本発明では機能性分子にDNAを用いて確認を行なう。本発明では、機能性置換基を有するカルボラン化合物誘導体を有する生成物を基板に固定した自己組織化膜を、アミノ化DNAと縮合剤を用いて反応させることにより、DNAを導入することができる。この縮合剤には4-(4,6-ジメトキシー1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)、DCC(N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などが用いられる。
このようにして得られた基板上にDNAが固定された状態で水溶液に溶解させた状態で、ターゲットDNAをハイブリダーゼーションさせて、自由に反応させることができるかどうかを確認する。具体的には、ハイブリダイゼーションが生起していれば反応を阻害していないというとことがわかる。これには、ハイブリダイゼーションを、表面プラズモン共鳴法、水晶振動子法などが適宜採用される。
本発明では、後で述べるように表面プラズモン法によりハイブリダイゼーションが生起していることを確認している。比較例としては、同じく末端に機能性置換基を有するものの、カルボラン化合物誘導体を有していない、従来から用いられてきた自己組織化膜を用いて同じく基板上にDNAが固定された状態で水溶液に溶解させた状態で、ターゲットDNAをハイブリダーゼーションさせて得られた結果を調べたものである。
【0015】
相補性試験方法については、以下の通りである。
本発明の相補試験方法では、前記スルフイド又はジスルフイドから選ばれる化合物が基板上に固定されている自己組織化膜にアミドカップリングにより核酸が固定されている基板表面に固定化された核酸と、ターゲット核酸とをハイブリダイゼ-ション可能な状態に保持し、基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸との相補性を試験する。
この方法に用いる、表面に核酸を固定化した基板、基板に固定化される核酸、ターゲット核酸、並びにハイブリダイゼーションの一般的方法及び条件は、公知の物、方法及び条件をそのまま利用できる。
【0016】
DNA鎖の基板表面への固定化は、例えば、基板が金属基板又は金属被覆を有する基板である場合、基板の金属表面にDNA鎖が硫黄原子を介して固定化させることができる。金属基板としては、例えば、金、銀、クロム、ガリウム、ニッケル、オネジウム等の金属製の基板を挙げることができる。また、金属被覆を有する基板としては、ガラス、マイカ(雲母)等の基板の表面に、金、銀、クロム、ガリウム、ニッケル、オネジウム等の金属被覆を設けた基板を挙げることができる。
基板の金属表面へのDNA鎖の硫黄原子を介しての固定化については基板の製造方法において詳述する。
【0017】
また、DNA鎖の基板表面への固定化は、例えば、基板がガラス基板又はシリコン基板である場合、基板の表面に前記DNA鎖が硫黄原子を介して固定化させることができる。ガラス基板としては、一般的なスライドガラス等のガラス基板を挙げることができる。また、シリコン基枝は、シリコンウェハ等であることができる。
基板の表面へのDNA鎖の硫黄原子を介しての固定化については基板の製造方法において詳述する。
【0018】
本発明の相補性試験方法は、基板表面に固定化された核酸とターゲット核酸とをハイブリタイゼーション可能な状態に置く。上記粒子に固定化された核酸とターゲット核酸とはハイブリタイズする。ターゲット核酸と基板表面に固定化された核酸とが相補的配列である場合、ターゲット核酸と基板表面に固定化された核酸とがハイブリダイズする。このようにして、相補性を試験する。
【0019】
表面プラズモン共鳴法は、基板表面にレーザ光を照射し、基板表面で生じる表面プラズモン共鳴を剖定することで基板表面に存在する膜等の厚みを測定する方法であり、ターゲットDNAとハイブリタイゼーションしたDNA鎖の存在の有無を膜厚の違いとして認識し、ハイブリダイゼーションの有無を検出する。
本発明では、表面に核酸を固定化した粒子を併用することで、表面プラズモン共鳴法を用いて、より高感度にハイブリダイゼーションの有無を検出することができる。
【0020】
水晶振動子法は、水晶振動子の電極への物質の付着による振動数の減少から付着物の質量を求める方法である(例えば、Chem.Rev.,1992,92.1355-1379参照)。水晶撮勤子法を用いる場合も、表面に核酸を固定化した粒子を併用する。
【0021】
本発明の相補性試験方法では、塩基のミスマッチを含むターゲットDNAを検出することもできる。即ち、本発明の相補性試験方法では、完全相補的なターゲットDNAは、ハイブリタイゼーションをするが、一塩基ミスマッチを含むターゲットDNAは、ハイブリダイゼーションをせず、その結果、一塩基ミスマッチを含むターゲットDNAを放出することもできる。
【0022】
本発明の相補性試験方法では、DNA鎖を固定化した表面へのターゲットDNAの接触を、2価金属イオンの存在下で行うことがハイブリダイゼーション後の鎖部分の安定性という観点から好ましい。2価金属イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、コバルトイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、カドミウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン等を挙げることができる。これら2価金属イオンの濃度は、例えば、1~1000mMの範囲とすることが適当である。
【0023】
尚、本発明では基板にDNA鎖を固定化する態様について説明した。しかし、例えば、基板に固定化きれる核酸は、一部又は全部がRNAであってもよい。
以下、実施例により本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
1-(4-メトキシフェニル)-1,12-カルボラン(化合物2)の合成方法
窒素雰囲気下、パラカルボラン(1.44 g, 10 mmol)に100 mlの無水1,2-ジメトキシエタンを加えた後、0℃で1.57 mM、n-ブチルリチウム(7.0 ml, 11 mmol)をゆっくり滴下し、室温で1時間撹拌した。その後、ヨウ化銅(I)(1.1 g, 11 mmol)を加えて2時間
、さらにピリジン(6 ml)を加えて30分間室温で撹拌することで、銅(I)-パラカルボ
ラン溶液を調整した。この溶液に4-ヨードアニソール(2.34 g, 10 mmol)を加えて110℃で4日間加熱還流させた。その後溶媒を減圧留去し、粗生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、ヘキサンとジエチルエーテル(15 : 1)を展開溶媒にしてシリカゲルカラムクロマト分離により単離精製し、化合物2番を40%の収率で得た。以下の分析結果から、表記の化合物1-(4-メトキシフェニル)-1,12-カルボランであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.09 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.72 (s, 3H), 2.72 (s, 1H) ; ; IR (KBr) 2837, 2613, 1614, 1515, 1302, 1263, 1184, 1140, 1086, 1040, 1024, 843, 808, 737 cm-1; HRMS (EI) Calcd for C9H18B10O: 250.2362. Found: 250.2449.
【実施例2】
【0025】
1-(4-メトキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン(化合物3)の合成方法
続いて窒素雰囲気下、化合物2番(0.75 g, 3.0 mmol)に50 mlの無水テトラヒドロフランを加えた後、0℃で1.57 mM、n-ブチルリチウム(2.3 ml, 3.6 mmol)をゆっくり滴下し、室温で1時間撹拌した。その後、クロロギ酸メチル(0.28 ml, 3.6 mmol)を加え、室温で5時間撹拌させた。その後溶媒を減圧留去し、粗生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、ヘキサンと酢酸エチル(10 : 1) を展開溶媒にしてフラッシュシリカゲルカラムクロマト分離により単離精製し、化合物3番を89%の収率で得た。以下の分析結果から、表記の化合物1-(4-メトキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.06 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6..66 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.63 (s, 3H); HRMS (EI) Calcd for C11H20B10O3: 308.3880. Found: 308.3821.
【実施例3】
【0026】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン(化合物4)の合成方法
続いて窒素雰囲気下、化合物3番(0.62 g, 2.0 mmol)に40 mlの無水ジクロロメタンを加えた後、0℃で三臭化ホウ素(0.38 ml, 4.0 mmol)をゆっくり滴下し、0℃で5時間撹拌した。その後溶媒を減圧留去し、粗生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、ヘキサンと酢酸エチル(10 : 1) を展開溶媒にしてフラッシュシリカゲルカラムクロマト分離により単離精製し、化合物4番を100%の収率で得た。以下の分析結果から、表記の化合物1-(4-ヒドロキシフェニル)-12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボランであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.06 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6..66 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.63 (s, 3H); HRMS (EI) Calcd for C10H18B10O3: 294.3611. Found: 294.3610.
【実施例4】
【0027】
1-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼン(化合物5)の合成方法
続いて化合物4番(0.44 g, 1.5 mmol)と1、11-ジブロモテトラエチレングリコール(0.72 g, 2.25 mmol)と炭酸カリウム(0.63 g, 4.5 mmol)に20 mlのアセトンを加えて1日加熱還流した。その後溶媒を減圧留去し、粗生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、ヘキサンと酢酸エチル(2 : 1) を展開溶媒にしてフラッシュシリカゲルカラムクロマト分離により単離精製し、化合物5番を55%の収率で得た。以下の分析結果から、表記の化合物1-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.06 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6..66 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 4.04 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.76-3.80 (m, 4H), 3.63 (s, 3H), 3.63-3.67 (m, 8H), 3.43 (t, J = 6.4 Hz, 2H); 13C NMR (500 MHz, CDCl3) d 159.0, 128.1, 114.0, 71.2, 70.8, 70.7, 70.6, 70.5, 69.6, 67.4, 54.1, 30.3; HRMS (EI) Calcd for C18H33B10O6Br: 533.4704. Found: 533.4701.
【実施例5】
【0028】
1-(12-ギ酸-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼン(化合物6)の合成方法
続いて化合物5番(0.37 g, 0.7 mmol)と水酸化カリウム(0.2 g, 3.5 mmol)に 20 mlのテトラヒドロフランと水(1 : 1)を加えて1日攪拌した。その後溶媒を減圧留去し、粗生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルを展開溶媒にしてフラッシュシリカゲルカラムクロマト分離により単離精製し、化合物6番を100%の収率で得た。以下の分析結果から、表記の化合物1-(12-ギ酸-1,12-カルボラン)-4-(1-ブロモ)-テトラエチレングリコキシベンゼンであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.05 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6..67 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 4.04 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.76-3.80 (m, 4H), 3.63-3.67 (m, 8H), 3.43 (t, J = 6.4 Hz, 2H); HRMS (EI) Calcd for C17H31B10O6Br: 519.4435. Found: 519.4433.
【実施例6】
【0029】
12-(4-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-フェノキシ)-テトラエチレングリコール-ジスルフィド(化合物7)の合成方法
続いて化合物6番(0.1 g, 0.2 mmol)とチオ尿素(0.06 g, 0.8 mmol)に20 mlのエタノールを加えて、6時間加熱還流する。その後、3 mlの10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、3時間過熱還流する。その後、反応溶液を中和させ、粗生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、化合物7番を100%の収率で得た。。以下の分析結果から、表記の化合物12-(4-(12-ギ酸メチルエステル-1,12-カルボラン)-フェノキシ)-テトラエチレングリコール-ジスルフィドであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) d 7.05 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 6..67 (d, J = 9.0 Hz, 4H), 4.04 (t, J = 4.9 Hz, 4H), 3.76-3.78 (m, 4H), 3.56-3.70 (m, 20H), 2.83 (t, J = 4.0 Hz, 4H); HRMS (EI) Calcd for C17H31B10O6Br: 943.2110. Found: 943.2104.
【実施例7】
【0030】
金基板上に自己組織化膜を形成させた。この自己組織化膜にアミノ修飾したDNAと縮合剤として4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride (DMT-MM) を用いて金基板上でアミド反応を行った。カルボン酸と縮合剤(DMT-MM)により形成される中間体を考慮すると、カルボランの立体効果により、DNAの一級アミン部位が中間体に近づくのに有利であると考えられる。このプローブDNAに相補する塩基配列を持ったターゲットDNAが20 mM MgCl2水溶液中で相補対を形成することを表面プラズモン共鳴法により観察した(図1)。この結果により前記化合物が金表面に固定化されたことが確認された。
なお、プローブDNAの配列は、TTTTTGACACAGCTAGTCAAGAGGTであった。
比較例1
【0031】
比較例に従来から自己組織化膜として用いられていたカルボンラン化合物を有していない
COOH基を置換基として有するテトラエチレングリコキシベンゼンを主鎖にもつ化合物の自己組織化膜を用いて同様の実験を行なった。その結果、前記実施例1の結果に比較して反射率が低い結果となっている(図2)。両者の結果を対比すると、本発明のカルボラン化合物を有する自己組織化膜の効果が確認できる。
プローブDNAについては、実施例7の場合と同じく、TTTTTGACACAGCTAGTCAAGAGGTであった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の自己組織化膜のプローブによるプラズモン共鳴法の結果を示す図。
【図2】本発明の自己組織化膜のプローブと比較例のプローブによるプラズモン共鳴法の結果を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1