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明細書 :超伝導素子を用いた中性子検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4811552号 (P4811552)
公開番号 特開2005-286245 (P2005-286245A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 超伝導素子を用いた中性子検出装置
国際特許分類 H01L  39/00        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
G01T   1/26        (2006.01)
G01T   3/00        (2006.01)
FI H01L 39/00 ZAAZ
C01G 1/00 S
G01T 1/26
G01T 3/00 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2004-101498 (P2004-101498)
出願日 平成16年3月30日(2004.3.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 中性子光学及び検出器合同会議(2004年1月12~16日)で発表
特許法第30条第1項適用 第16回国際超電導シンポジウム(2003年10月27-29日)で発表
特許法第30条第1項適用 2004年(平成16年)春季 第51回応用物理学関係連合講演会で発表
審査請求日 平成19年3月7日(2007.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
【識別番号】000205627
【氏名又は名称】大阪府
発明者または考案者 【氏名】三木 茂人
【氏名】石田 武和
【氏名】王 鎮
【氏名】島影 尚
【氏名】四谷 任
【氏名】佐藤 和郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100094101、【弁理士】、【氏名又は名称】舘 泰光
【識別番号】100114616、【弁理士】、【氏名又は名称】眞下 晋一
【識別番号】100124028、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 公雄
【識別番号】100124039、【弁理士】、【氏名又は名称】立花 顕治
審査官 【審査官】正山 旭
参考文献・文献 特開平10-107334(JP,A)
特開2002-141565(JP,A)
特開2002-094133(JP,A)
特開2003-014861(JP,A)
特開2003-158307(JP,A)
国際公開第2002/088647(WO,A1)
調査した分野 H01L 39/00
C01G 1/00
G01T 1/26
G01T 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
誘電体材料で形成された基板、
該基板上に10Bを含むMgB2形成された超伝導材料のストリップライン、
該ストリップラインの表面に形成された保護膜、及び、
前記ストリップラインの両端部分に形成された電極を有し、前記超伝導材料が、自然酸化によって超伝導特性が劣化する材料である超伝導素子
前記ストリップラインを超伝導転移温度付近の温度に冷却した状態で、前記電極間に定電圧を印加し、前記ストリップラインの電流値を測定する手段、又は、
前記ストリップラインを超伝導転移温度付近の温度に冷却した状態で、前記電極間に定電流を流し、前記ストリップラインの電圧値を測定する手段とを備え、
前記ストリップライン中の10Bと中性子との核反応による前記ストリップラインの抵抗値の変化を測定することを特徴とする超伝導素子を用いた中性子検出装置。
【請求項2】
前記保護膜が、酸化シリコンであることを特徴とする請求項1に記載の中性子検出装置
【請求項3】
前記ストリップラインが
アンダ形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中性子検出装置
【請求項4】
前記ストリップラインが、ホウ素全体中の10Bの含有割合が約97%以上であるMgB2形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れかの項に記載の中性子検出装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導材料のストリップラインを基板上に形成した超伝導素子を用いた中性子検出装置に関し、特に、自然酸化によって超伝導特性が劣化する超伝導材料を用いてストリップラインを形成した超伝導素子を用いた中性子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MgB2は、超伝導転移温度が比較的高い超伝導材料であることが2001年に発見され、超伝導エレクトロニクス分野への応用が期待され、実用化に向けての研究が成されている。実用化のためには、MgB2を薄膜に形成することが必要であり、約1000℃以上の高温でのアニーリング工程を含む2段階成長法(Two-step-growth technique)での薄膜形成が多く研究されてきた。しかし、高温アニーリングを含んだ製造工程では、薄膜集積回路等のデバイス化が非常に困難であるのが実情である。
【0003】
これに対して、下記特許文献1、2には、アニーリングを行うことなくMgB2薄膜を基板上に形成する方法が開示されている。特許文献1には、マグネシウム(Mg)及びホウ素(B)を同時にスパッタリングし、基板上にMgB2を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、Mg及びBを同時に蒸着し、基板上にMgB2を形成する方法が開示されている。特許文献1、2には、これらの方法で形成されたMgB2が良好な超伝導特性を示すことも開示されている。
【0004】
一方、ホウ素は質量数11(11B)のものが主として自然界に存在するが、その同位体である10Bは、中性子を吸収して7Li及びα粒子を生成する核反応を行うことが知られており、この核反応を利用して、電荷を持たないために検出が非常に困難な中性子を検出する研究が行われている。例えば、下記特許文献3には、絶縁層を間に挟んでMg112層及びMg102層を積層した構造や、Mg112層の表面の中央及び四隅に絶縁層を間に挟んで、Mg102をフォノン検出素子として備えた構造の超伝導トンネル接合素子の中性子検出器が開示されている。特許文献3では、11B及び10Bの超伝導状態におけるエネルギーギャップが異なることを利用し、Mg102層における10Bと中性子との核反応によって生成されたα粒子によって発生するフォノンをMg112層で検出する。

【特許文献1】特開2003-158307号公報
【特許文献2】特開2003-158308号公報
【特許文献3】特開2003-14861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1、2に開示された方法で形成されたMgB2薄膜は、製造直後には良好な超伝導特性を示すが、その特性は安定に維持されない問題がある。例えば、MgB2薄膜形成から数時間後には超伝導特性が極端に劣化する。このために、MgB2薄膜を応用した素子を長期間に亘って使用することができない。
【0006】
また、上記の特許文献3では、光子、放射線、中性子などを検出するために、複数のMgB2層を超伝導トンネル接合の構成に形成しなければならず、構造が複雑であり、製造が非常に困難である。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、良好な超伝導特性の経時劣化を防止することができる超伝導素子を用いた中性子検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0009】
上記したMgB2の超伝導特性が短期間で劣化する原因の一つとして、常温の空気中において薄膜表面からの自然酸化によって、MgB2薄膜の結晶構造が変化していることが考えられる。
【0010】
従って、本発明に係る超伝導素子(1)は、誘電体材料で形成された基板と、該基板上に形成された超伝導材料のストリップラインと、該ストリップラインの表面に形成された保護膜とを備え、前記超伝導材料が、自然酸化によって超伝導特性が劣化する材料であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る超伝導素子(2)は、上記の超伝導素子(1)において、前記保護膜が、酸化シリコンであることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る超伝導素子(3)は、上記の超伝導素子(1)又は(2)において、前記ストリップラインが、MgB2から形成され、メアンダ形状に形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る超伝導素子(4)は、上記の超伝導素子(1)~(3)の何れかにおいて、前記ストリップラインが、ホウ素全体中の10Bの含有割合が約97%以上であるMgB2から形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る超伝導素子を用いた中性子検出装置(1)は、誘電体材料で形成された基板、該基板上に10Bを含むMgB2で形成された超伝導材料のストリップライン、該ストリップラインの表面に形成された保護膜、及び、前記ストリップラインの両端部分に形成された電極を有し、前記超伝導材料が、自然酸化によって超伝導特性が劣化する材料である超伝導素子と、前記ストリップラインを超伝導転移温度付近の温度に冷却した状態で、前記電極間に定電圧を印加し、前記ストリップラインの電流値を測定する手段、又は、前記ストリップラインを超伝導転移温度付近の温度に冷却した状態で、前記電極間に定電流を流し、前記ストリップラインの電圧値を測定する手段とを備え、前記ストリップライン中の10Bと中性子との核反応による前記ストリップラインの抵抗値の変化を測定することを特徴としている。
また、本発明に係る超伝導素子を用いた中性子検出装置(2)は、上記の中性子検出装置(1)において、前記保護膜が、酸化シリコンであることを特徴としている。
また、本発明に係る超伝導素子を用いる中性子検出装置(3)は、上記の中性子検出装置(1)又は(2)において、前記ストリップラインが、メアンダ形状に形成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る超伝導素子を用いる中性子検出装置(4)は、上記の中性子検出装置(1)~(3)の何れかにおいて、前記ストリップラインが、ホウ素全体中の10Bの含有割合が約97%以上であるMgB2で形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る超伝導素子の製造方法(1)は、カルーセルスパッタリング装置を用いてマグネシウム及びホウ素を同時にスパッタリングし、誘電体材料の基板上にMgB2薄膜を形成する第1ステップと、電子ビームリソグラフィによって、前記MgB2薄膜を細長いストリップライン形状に加工する第2ステップと、前記ストリップライン形状に加工された前記MgB2薄膜の表面に、高温のアニーリングを行わずに保護膜を形成する第3ステップとを含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る超伝導素子の製造方法(2)は、上記の超伝導素子の製造方法(1)の第1ステップにおいて、10Bの含有割合が約97%以上であるホウ素をスパッタリングのターゲットとして使用することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る超伝導素子の製造方法(3)は、上記の超伝導素子の製造方法(1)又は(2)の第2ステップにおいて、前記ストリップラインがメアンダ形状に形成され、前記第3ステップにおいて、前記保護膜が酸化シリコンの蒸着によって形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る超伝導素子によれば、保護膜を設けたことによって、ストリップラインの自然酸化を防止することができ、長期間に亘って良好な超伝導特性を維持することができる。特に、容易に自然酸化するMgB2を用いた場合にも、長期間に亘って良好な超伝導特性を維持することができる。
【0019】
また、本発明に係る超伝導素子は、構造が比較的簡単であり、10Bを使用することによって、比較的高い超伝導転移温度で使用可能な超伝導素子であり、検出精度が高い中性子検出装置を実現することができる。
【0020】
また、本発明に係る超伝導素子の製造方法によれば、ストリップラインの自然酸化を防止することができ、長期間に亘って良好な超伝導特性を維持することができ、構造が比較的簡単な超伝導素子を、少ない製造工程で製造することができる。
【0021】
また、本発明に係る超伝導素子の製造方法によれば、超伝導特性を劣化させることなく、MgB2の微細なメアンダ形状のストリップラインを備えた超伝導素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る超伝導素子の概略構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【0023】
図1に示したように、本超伝導素子は、基板1と、その表面に経路を繰り返し折り返した形状(以下、メアンダ形状と記す)に形成されたストリップライン2と、その表面を覆う保護膜3と、電極4、4’とを備えている。ここで、基板1は、例えばサファイア(Al23)(0001)で形成され、ストリップライン2は、常温の空気中で自然酸化して超伝導特性が劣化する超伝導材料、例えば、質量数10の10Bを含んだMg102を主成分としたMgB2で形成されている。護膜3はストリップラインの表面が空気に接するのを防止する役割をし、例えば、酸化シリコンSiOで形成されている。電極4、4’は導電体であり、例えばアルミニウムAlで形成されている。
【0024】
図2は、図1に示した超伝導素子の製造方法を説明する断面図である。以下に、図2を参照しながら、図1に示した超伝導素子の製造方法を説明する。
【0025】
まず、第1ステップにおいて、(a)に示したように、サファイアの基板1の上に、カルーセルスパッタリング装置を用いてMgB2薄膜2を形成する。カルーセルスパッタリング装置を用いたMgB2薄膜の製造方法は、例えば上記の特許文献1に開示されており、公知であるので、ここでは詳細説明を省略し、主に製造条件について説明する。初期状態のチャンバー内の圧力は、例えば約1.1×10-7Torr以下の低圧にする。この状態から、低圧の不活性ガス(例えば約5mTorrのアルゴンガス)中で、基板1を加熱しつつ、基板1を保持したホルダーを高速回転させながら、ターゲットであるMg及びBを同時にスパッタリングする。Bターゲットには11Bを多く含んだ通常のBターゲット(10Bが約20%、11Bが約80%)ではなく、10Bを主に含んだターゲット、例えば、約97%以上の10Bを含んだターゲットを使用する。ここで、基板1の温度は約250~約400℃の範囲に設定する。Bターゲットに関してはRFマグネトロンスパッタリングを行い、Mgターゲットに関してはDCマグネトロンスパッタリングを行う。RFマグネトロンスパッタリングのパワーは、例えば約800W、DCマグネトロンスパッタリングのパワーは、例えば約300Wに設定する。このMg及びBの同時スパッタリングを所定の時間実行し、所定の厚さのMgB2薄膜2を形成する。形成されるMgB2薄膜2中の10B及び11Bの含有割合は、使用するBターゲット中の割合で決まる。
【0026】
次に、第2ステップにおいて、(b)に示したように、電子ビームリソグラフィ用レジストをMgB2薄膜2の上に塗布し、電子ビームリソグラフィによってメアンダ形状にレジストパターン5を形成した後、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチングを行う。これによって、MgB2薄膜2がメアンダ形状に形成される。電子ビームエッチングを用いることで、微細なストリップライン、例えば、約1μm幅のメアンダ形状のストリップラインを形成することができる。ここで、電子ビームリソグラフィにおいて精度良く描画を行うためには、使用する電子線レジスト材料、下地である超伝導薄膜材料、メアンダ形状のストリップ幅、ストリップ間隔に最適なドーズ量(単位面積あたりの電子注入量)を設定する必要がある。例えば、電子線レジストZEP520-22(日本ゼオン社製)を用いて、ストリップ幅約1μm、ストリップ間隔約1μmのパターンを形成するには、ドーズ量を115~120μc/cm2の範囲の値に設定することが望ましい。
【0027】
第3ステップにおいて、(c)に示したように、高真空の環境中で、第2ステップ後にレジストパターン5を除去した素子全体の上に、酸化シリコンSiOを真空蒸着によって形成する。ここで、酸化シリコンSiOの蒸着は、抵抗加熱真空蒸着装置を用い、ハース内に粒状の酸化シリコンSiOを詰め、ハース加熱を行い蒸着を行う。成膜時到達真空度1×10-6Torr以下が達成されており、レート3.5A/secになるように、ハースにかかる電力を制御しながら成膜を行う。また、酸化シリコンSiO蒸着前には綺麗なMgB2薄膜表面上に酸化シリコンSiOの蒸着を行うために、同一チャンバー内でイオンビームクリーニング処理を行っている。
【0028】
最後に、第4ステップにおいて、(d)に示したように、通常のフォトリソグラフィによって保護膜(SiO)3の上にフォトレジストを用いてパターン形成を行い、保護膜3の所定領域を除去し、高真空状態で導電材料、例えばAlを蒸着し、フォトレジストをリフトオフする。これによって、所定領域に導電材料が残り電極4が形成される。
【0029】
以上の第1~第4ステップによって、図1に示したようなメアンダ形状の超伝導材料のストリップラインを備えた超伝導素子を製造することができる。製造された超伝導素子は、ストリップラインの表面全体が保護膜で覆われているので、自然酸化が生じない。
【0030】
次に、上記の方法で製造された超伝導素子の中性子検出装置への応用に関して説明する。図3は、図1に示した素子を中性子の検出に適用できることを説明するための、MgB2の抵抗値の温度特性を示す図である。
【0031】
図1に示した超伝導素子のMg102薄膜2を、オフセット転移温度TC,offset付近に冷却し、電極4、4’に所定の定電圧を印加した状態で、電流値を観測する、又は、電極4、4’に定電流を流した状態で、電圧値を観測する。MgB2は図3に示したように、超伝導転移温度TcにΔTcの幅を持っており、オフセット転移温度TC,offsetは、抵抗値が常温での抵抗値RNの10%になる温度である。この状態で、中性子nが、保護膜3を通過してMg102薄膜2に入射し、10B+n→7Li+α の核反応が起こると、Mg102薄膜2中で局部的な発熱が起こる。Mg102薄膜2が微細なストリップライン状に形成されていれば、発熱が生じた付近の断面全体の温度が上昇し、抵抗値が急激に増大する。その結果、定電圧を印加した場合、電流値が急激に減少し、定電流を流した場合、電圧値が急激に増大する。これによって、中性子を検出することができる。
【0032】
ここで、出来る限り広い面積で、中性子を検出できるように、MgB2のストリップラインは、約1μm以下の線幅及び線間隔のメアンダ形状に形成されていることが望ましい。また、中性子の検出には、冷却温度を超伝導転移温度TC付近に設定すればよいが、オフセット転移温度TC,offset以下の温度に設置するのがより望ましい。
【0033】
以上では、MgB2がメアンダ形状のストリップラインに形成されている場合を説明したが、これに限定されず、ストリップラインが自然酸化によって超伝導特性が劣化する超伝導材料を主成分とし、且つその表面に保護膜が形成されていればよく、用途に応じて、種々の形状、大きさ、線幅のストリップラインであってよい。
【0034】
また、保護膜は、酸化シリコンSiOに限定されず、ストリップラインの自然酸化を防止できる素材であればよい。また、その形成方法も蒸着に限定されず、プラズマCVD法などの比較的低温で、保護膜を形成することができる方法であればよい。
【0035】
また、基板は、サファイアAl23に限定されず、誘電体などの非金属であればよく、用途に応じて種々の材料を使用すればよい。
【0036】
また、中性子検出用の超伝導素子としては、図1に示したメアンダ形状に限定されず、Mg102が主成分で、所定領域を覆う連続したストリップラインであればよい。
【0037】
また、10B及び中性子の核反応を検出する方法は、上記に限定されず、ストリップラインの抵抗値の変化を検出できる方法であればよい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【0039】
図2に従って説明した製造方法を用いて、実際にメアンダ形状のストリップラインを備えた超伝導素子を製造した。基板1としてサファイア(0001)を使用し、Bターゲットとして約97%以上の10Bを含み、純度99.9%のBを使用した。また、第1ステップの製造条件として、基板ホルダーの回転速度を約30rpm、アルゴンガス圧を約5mTorr、基板温度を約290℃、スパッタリングパワーを、Bターゲットに関しては約800W、Mgターゲットに関して約300W、スパッタリング時間を約51分間とした。また、第2ステップでは、電子ビームリソグラフィ用レジストZEP520-22(日本ゼオン社製を500nmの厚さに塗布し、電子ビームのドーズ量を120μc/cm2に設定した。
【0040】
その結果、図4に示したように、基板1上の1.0cm×0.8cmの領域に、線幅及び線間隔が約1μm、全長が約47.3cmのメアンダ形状のストリップラインを備えた超伝導素子を形成することができた。図4の(a)は、試作した超伝導素子の平面図であり、(b)は(a)の一部を拡大表示した平面図であり、(c)はV-V線に沿った垂直断面図である。メアンダ形状のストリップライン(MgB2)2、Al電極4、酸化シリコン(SiO)薄膜3の厚さは、それぞれ約200nm、約150nm、約300nmであった。
【0041】
図5は、基板上に形成したミアンダ形状に加工する前のMgB2薄膜に関する抵抗率の温度特性を示す図である。横軸は、MgB2の温度、縦軸はMgB2の抵抗率である。抵抗率の測定には、4探針法を用いた。図5の丸は試作したMgB2薄膜の測定結果を表し、三角は通常の11Bが多く含まれるMgB2薄膜の測定結果である。図5から分かるように、試作したMgB2薄膜は、オンセット転移温度TC,onset=約29.2K、オフセット転移温度TC,offset=約28.6Kであり、何れの温度も通常の11Bが多く含まれるMgB2薄膜(TC,onset=約27.8K、TC,offset=約27.2K)よりも高い温度であった。このように、同位体効果によって、試作したMgB2薄膜の超伝導転移温度を高くすることができた。
【0042】
図6は、図5と同様に測定した抵抗率の温度特性を示す図である。図6の三角は、試作した超伝導素子のMgB2の測定結果であり、丸は、比較のためにパターン形成されていない平面状のMgB2について測定した結果である。図6から、両者の超伝導特性は殆ど同じであり、試作した超伝導素子のMgB2には特性劣化が生じていないことが分かる。即ち、本発明に係る製造方法は、MgB2薄膜の超伝導特性を劣化させないで、MgB2薄膜をメアンダ形状に形成できる方法である。また、試作した超伝導素子のMgB2の40Kの温度における抵抗率ρ40Kは約117μΩcmであり、295Kでの抵抗率ρ295Kとの比である残留抵抗率比(residual resistivity ratio)RRR(=ρ295K/ρ40K)は約1.22であった。
【0043】
図7は、試作した超伝導素子のMgB2の抵抗率の温度特性の経時変化を示す図である。図7の丸は、試作3日後の測定結果であり、三角は試作32日後の測定結果である。図7から、試作した保護膜を備えた超伝導素子では、長期間経過しても超伝導特性が殆ど変化せず、製造直後の特性が長期間維持されることが分かる。これに対して、保護膜を形成しなかったMgB2では、形成から数時間で著しく超伝導特性が劣化した。
【0044】
図8は、試作した超伝導素子のMgB2の電流-電圧特性を測定した結果を示す図である。測定中の最も低温(7K)での測定結果において、超伝導臨界電流Icは約3.5mA、臨界電流密度は1.52×106A/cm2であった。図8から分かるように、超伝導臨界電流Icは、温度が上昇すると小さくなり、転移温度Tc=28.5Kでほぼ0になっている。
【0045】
この結果は、パターン形成されていないMgB2に関するKijoon H. P. Kim等の測定結果(Kijoon H. P. Kim, W. N. Kang, Mun-Seog Kim, C. U. Jung, Hyeong-Jin Kim, Eun-Mi Choi, Min-Seok Park, and Sung-Ik Lee, cond-mat/0103176, 2001)と同様の結果であった。即ち、本発明に係る製造方法を用いて微細なメアンダ状に形成されたMgB2であっても、十分な超伝導特性を示しており、中性子検出装置への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る超伝導素子の概略構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図2】本発明の実施の形態に係る超伝導素子の製造方法を説明する断面図である。
【図3】本発明に係る超伝導素子を用いた中性子検出の原理を説明する図である。
【図4】本発明の製造方法で製造した超伝導素子の実施例を示す平面図(a)、(b)及び断面図(c)である。
【図5】試作したMgB2薄膜及び通常のMgB2薄膜の超伝導特性を示す図である。
【図6】図4に示した超伝導素子のMgB2及び平板状のMgB2の超伝導特性を示す図である。
【図7】図4に示した超伝導素子のMgB2の超伝導特性の経時変化を示す図である。
【図8】図4に示した超伝導素子のMgB2の電流-電圧特性の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板
2 ストリップライン
3 保護膜
4、4’ 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図4】
7