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明細書 :ロボット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3950934号 (P3950934)
公開番号 特開2005-287846 (P2005-287846A)
登録日 平成19年5月11日(2007.5.11)
発行日 平成19年8月1日(2007.8.1)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 ロボット
国際特許分類 A63H  13/04        (2006.01)
A63H   3/04        (2006.01)
B25J  19/00        (2006.01)
FI A63H 13/04 J
A63H 3/04 B
B25J 19/00 B
B25J 19/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2004-108468 (P2004-108468)
出願日 平成16年3月31日(2004.3.31)
審査請求日 平成17年3月22日(2005.3.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】星野 聖
【氏名】川渕 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100091443、【弁理士】、【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
審査官 【審査官】松川 直樹
参考文献・文献 特開平07-136956(JP,A)
特開2003-129945(JP,A)
特開2003-247485(JP,A)
特表平11-515073(JP,A)
米国特許第6408289(US,B1)
米国特許第6168619(US,B1)
米国特許第6169269(US,B1)
調査した分野 A63H 13/04
A63H 3/04
B25J 19/00
F03G 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
ロボットの骨格の表面と表皮との間に配置した形状記憶合金素子の形状を変化させることにより前記表皮に動きを生じさせるロボットであって、
電流が通電されると、受動的な静的形状から予め記憶している他の形状に変化する複数の形状記憶合金素子を複数の結合用ノード素子を介してネット状に接続して構成した形状記憶素子ネットと、
前記複数の結合用ノード素子が前記骨格の前記表面上を動き得るように前記形状記憶素子ネットを前記ロボットの前記骨格の表面に固定する固定用留具と、
前記複数の結合用ノード素子に定電流を供給する電流供給ネットワークとを備え、
前記骨格の表面はアース面となるように導電性を有しており、
前記複数の結合用ノード素子は、前記アース面と接触するアース電極と、制御指令に基づいて選択された隣り合う二つの結合用ノード素子間に位置する前記形状記憶合金素子に電流が流れるように、前記形状記憶合金素子を前記電流ネットワークと前記アース電極との間に電気的に接続するスイッチング回路とを含んで構成されているロボット。
【請求項2】
前記骨格は、内部に空洞を有し且つ前記空洞内に配置した撮像装置により前記複数の結合用ノード素子の存在が撮影可能な構造を有している請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記複数の結合用ノード素子から選択された複数の結合用ノード素子が前記表皮に連結されている請求項1または2に記載のロボット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶素子を用いてロボットの表皮に動きを生じさせるロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平8-107983号公報には、複数の形状記憶合金片を埋め込んだマスクをロボットの骨格に被せ、形状記憶合金片の形状を変化させることによりロボットの顔の表情を変化させるようにしたロボット技術が開示されている。
【0003】
また特開2003-225470号公報には、ポリマーフィルムに複数の柔軟電極を一体形成して、この柔軟電極を個別に電圧制御しポリマーフィルムを変形させることによりロボットの顔の表情を表現するロボット技術が開示されている。

【特許文献1】特開平8-107983号公報 図1及び図2
【特許文献2】特開2003-225470号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロボットの顔の表情を変化させる技術では、表情を変化させるために表皮の下に配置される形状記憶合金や表皮の材料としても用いることができるポリマーフィルムの伸縮方向、伸縮量及び伸縮範囲が限られているため、表皮の任意の場所に任意の範囲の動きを選択的に与えることができない問題があった。
【0005】
発明の別の目的は、複数の形状記憶素子として複数の形状記憶合金素子を用いる場合に簡単に複数の任意の形状記憶合金素子に電流を流して複数の任意の形状記憶合金素子の形状を変化させることができるロボットの表皮に動きを生じさせるロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロボットの骨格の表面と表皮との間に配置した形状記憶素子の形状を変化させることによりロボットの表皮に動きを生じさせる。本発明では、温度、電流、電圧、電界、磁界、光等のように制御可能な静的な物理量の変化を受けると、受動的な静的形状から予め記憶している他の形状に変化する複数の形状記憶素子を複数の結合用ノード素子を介してネット状に接続して構成した形状記憶素子ネットを、複数の結合用ノード素子が骨格の表面上を動き得るようにロボットの骨格の表面に配置する。そして複数の結合用ノード素子を、二つの結合用ノード素子間に位置する形状記憶素子に制御指令に応じて静的な物理量の変化を与えることができるように構成し、任意の1以上の形状記憶素子の形状を変化させるために適宜の2以上の結合用ノード素子にそれぞれ制御指令を与えて表皮に形状変化や動きを生じさせる。
【0007】
ここで本明細書において、「静的な物理量」とは、速度、加速度、質量のように形状記憶素子に外力を加えてその形状に変化を与える原因となる物理量を除いた物理量を意味するものである。また「形状記憶素子」とは、形状記憶合金素子や、人工筋等に用いられるゴム素子やエアシリンダ等のように、静的な物理量の変化を受けると受動的な静的形状から予め記憶している他の形状に変化するあらゆる形状記憶素子を含むものである。さらに結合用ノード素子は、制御指令に応じて二つの結合用ノード素子間に位置する形状記憶素子に静的な物理量の変化を与えることができるものであれば如何なる構成を有していてもよい。使用する結合用ノード素子は、制御指令の意味を解釈する機能と、その解釈した指令に従って接続されている任意の形状記憶素子に静的な物理量の変化を選択的に発生させることができる機能とを少なくとも備えている。制御指令は、ロボットを制御するための制御装置から、有線、無線等により結合用ノード素子に与えることが可能である。なお形状記憶素子ネットそれ自体を給電線を利用して各結合用ノード素子に制御信号を与えるようにしてもよい。
【0008】
本発明によれば、複数の形状記憶素子を接続する複数の結合用ノード素子が骨格の表面上を動くようにして(言い換えれば骨格の表面に固定しないようにして)、複数の形状記憶素子を複数の結合用ノード素子を介してネット状に接続しているので、各結合用ノード素子を選択的に制御することにより表皮の任意の範囲に動きを選択的に与えることができる。特に、複数の結合用ノード素子が骨格の表面上を動く(滑る)ため、例えば結合用ノード素子を介して直列に接続された任意の数の形状記憶素子の形状の変化が累積して(または加算されて)表皮に表されることになる。そのため本発明の方法によれば、従来よりも大きな動きをある程度任意の方向に生じさせることができる。また任意の範囲内にある複数の形状記憶素子を選択してその形状を変化させることにより、これら複数の形状記憶素子の形状の変化を合成した所定の範囲にわたる大きな変化を表皮に表すことができる。
【0009】
結合用ノード素子を制御する場合に、ロボットの外部にコンピュータ等の情報処理装置を設け、このコンピュータからの制御指令のみで各結合用ノード素子の制御を行ってもよい。しかしながら、結合用ノード素子に、制御指令を含めた各種の情報を独自で処理する情報処理手段をそれぞれ設けてもよい。このような情報処理手段としては、近年開発されている超小型のマイクロコンピュータを用いることができる。結合用ノード素子の内部にマイクロコンピュータのような情報処理手段を内蔵させて、結合用ノード素子内でも情報処理を行わせると、結合用ノード素子自身でも情報処理を行うのでロボット制御の複雑で重い負荷を伴う情報処理を分散して処理することができる。そのため情報処理速度を上げることが可能になり、ロボットの表皮をスピーディに動かすことができる。なお情報処理手段は形状記憶素子ネット状に存在する全ての結合用ノード素子に内蔵させてもよいし、選択されたいくつかの結合用ノード素子に内蔵させてもよい。情報処理手段を結合用ノード素子の内部ではなく、結合用ノード素子の外部に隣接して配置することもできる。
【0010】
結合用ノード素子の動き(移動量や方向)を決定する静的な物理量の値(例えば物理量が電流であれば電流値とその通電時間)は、予め設定しておくほうが制御が容易になる。しかしながらロボットが置かれる条件、表皮や骨格の材質、結合用ノード素子の構造等によっては予め設定された静的な物理量を与えても所望の結合用ノード素子の動き(形状記憶素子の形状の変化)が得られないことがある。このような場合には、骨格の構造を内部に空洞を有し且つ空洞内に配置した撮像装置により複数の結合用ノード素子の存在が撮影可能な構造に構成すれば良い。そして撮像装置により得た複数の結合用ノード素子の映像情報に基づいて複数の形状記憶素子の伸縮状態を判定し、その判定結果に基づいて複数の結合用ノード素子をフィードバック制御すれば良い。このようにすると形状記憶素子の伸縮状態が、予定した伸縮状態とは異なる状態になっていると判定された場合には、フィードバック制御により予定した伸縮状態になるような指令が結合用ノード素子に与えられる。これにより、常に所望の結合用ノード素子の動きを得ることができる。なお、このとき結合用ノード素子に予め色情報を与えて(着色して)おけば、映像情報からの結合用ノード素子の判別が容易になる。
【0011】
形状記憶素子として形状記憶合金素子を用いる場合には、骨格の表面がアース面となるように骨格の表面に導電性を付与する。そして複数の結合用ノード素子に定電流を供給する電流供給ネットワークを設ける。また複数の結合用ノード素子を、制御指令に応じてアース面を利用して所定の形状記憶合金素子に電流を通電できるように構成する。骨格の表面が複数の結合用ノード素子に対するアース面になれば、複雑なアースパターンが不要になって、各形状記憶合金素子への通電を簡単に行うことができる。なおこの場合には、アース面と対向する結合用ノード素子の裏面側にアース面と接触するアース電極を設けておけばよい。また電流供給ネットワークは、複数の結合用ノード素子の動きを阻害しないような構造、例えば伸縮可能な構造等にしておく必要がある。
【0012】
なお表皮に大きな明確な動きを付与するためには(例えば顔の目の瞼の開閉等を行う場合には)、複数の結合用ノード素子から選択された複数の結合用ノード素子を表皮に連結しておく。このようにすると連結部に複数の形状記憶素子の形状の変化を合成して得た大きな変化量により大きな動きを生じさせることができる。連結部をどの位置にまたどの程度設けるかは、設計に応じて適宜に定めればよい。
【0013】
本発明の思想をロボットの骨格の表面と表皮との間に配置した形状記憶素子の形状を変化させることにより表皮に動きを生じさせるロボットに適用する場合には次のように構成する。温度、電流、電圧、電界、磁界、光等のように制御可能な静的な物理量の変化を受けると、受動的な静的形状から予め記憶している他の形状に変化する複数の形状記憶素子を複数の結合用ノード素子を介してネット状に接続して構成した形状記憶素子ネットが、複数の結合用ノード素子が骨格の表面上を動き得るようにロボットの骨格の表面に配置され、複数の結合用ノード素子が、二つの結合用ノード素子間に位置する形状記憶素子に制御指令に応じて静的な物理量の変化を与えることができる構造を有するようにする。
【0014】
このとき、形状記憶素子として形状記憶合金素子を用いる場合には、骨格の表面がアース面となるように該表面に導電性を付与する。そして複数の結合用ノード素子に定電流を供給する電流供給ネットワークを設ける。また複数の結合用ノード素子を、アース面と接触するアース電極と、制御指令に基づいて選択された隣り合う二つの結合用ノード素子間に位置する形状記憶素子に電流が流れるように、形状記憶合金素子を電流ネットワークとアース電極との間に電気的に接続するスイッチング回路とを含んで構成する。
【0015】
なお本発明を形状記憶素子ネットとしてとらえてもよいのは勿論である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の形状記憶素子を接続する複数の結合用ノード素子が骨格の表面上を動くようにして、複数の形状記憶素子を複数の結合用ノード素子を介してネット状に接続しているので、各結合用ノード素子を選択的に制御することにより表皮の任意の範囲に動きを選択的に与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は、本発明をロボットの顔の表皮に動きを生じさせる際に用いる形状記憶素子ネット1を装着する状態を示す分解斜視図である。図1において、形状記憶素子ネット1は、ロボット3の頭部の骨格5の表面5aと人間の顔を模した表皮9との間に装着されている。形状記憶素子ネット1には、その周囲に複数の固定用留具13が設けられており、これらの留具13と骨格6に設けられている被固定用留め具(図示せず)とで形状記憶素子ネット1が骨格5の表面5aに装着されている。
【0018】
ロボット3の骨格5は内部が空洞の中空構造を呈している。骨格5の構造は、任意であるが、この実施の形態では、骨格5の表面をアース面とすることができる構造を採用している。例えば、骨格5全体をアルミニウムやチタン等の導電性を有する金属材料で形成してもよいし、合成樹脂材料で骨格5を形成し、その表面にメッキや蒸着により導電性薄膜からなるアース面を形成してもよい。なお後述するように骨格5を光透過性を有する材料で形成する場合には、骨格5の表面には透明導電性薄膜をアース面として形成すればよい。表皮9は、弾性変形が可能なシリコンゴム等の薄い軟質の合成樹脂材料で形成されている。
【0019】
また形状記憶素子ネット1は、後に詳しく説明する複数の形状記憶素子14を複数の結合用ノード素子15を介してネット状に接続した構造を有している。結合用ノード素子15は、制御指令に応じて二つの結合用ノード素子15,15間に位置する形状記憶素子13に静的な物理量の変化を与えることができるものであれば如何なる構成を有していてもよい。使用する結合用ノード素子15は、制御指令の意味を解釈する機能と、その解釈した指令に従って接続されている任意の形状記憶素子14に静的な物理量の変化を選択的に発生させることができる機能とを少なくとも備えている。なお制御指令は、ロボットを制御するための制御装置から、有線、無線等により結合用ノード素子15に与えることが可能である。この例では、後に説明する電流供給ネットワーク16(図3及び図5)を信号伝送手段として利用して各結合用ノード素子15に制御信号を与えている。
【0020】
図2は、具体的な形状記憶素子ネット1の構成を概念的に示している。また図3は本実施の形態で使用した結合用ノード素子15の内部構成を概念的に示している。さらに図4は形状記憶素子ネット1の電源の構成を示す回路図を示している。さらに図5は形状記憶素子ネット1において、形状記憶素子14として形状記憶合金素子を用いる場合における通電回路の構成を示す図である。これら図2乃至図5を用いて本実施の形態で用いる形状記憶素子ネットの構造と動作を説明する。
【0021】
図2に概念的に示すように、形状記憶素子ネット1は、形状記憶素子14として用いた複数の形状記憶合金素子SMA1、SMA2・・・と複数の結合用ノード素子15とを用いて、網すなわちネットの交点に複数の結合用ノード素子15が位置し、二つの交点間(二つの結合用ノード素子間)に形状記憶合金素子SMA1、SMA2・・・が位置するように構成されている。また複数の結合用ノード素子15には、電流供給ネットワーク16を介して図4に示す定電流源17から定電流を供給できるようになっている。
【0022】
本実施の形態で用いる結合用ノード素子15は、図3に示すように、3つの電源接続端子V1,V2,V3と3つのグランド接続端子G1,G2,G3とを備えている。結合用ノード素子15の1つの電源接続端子V1は、隣り合う他の結合用ノード素子15のグランド接続端子G1と形状記憶素子合金SMA1を介して接続されている。また、結合用ノード素子15の別の電源接続端子V2は、隣り合う結合用ノード素子15のグランド接続端子G2と形状記憶素子合金SMA2を介して接続されている。さらに結合用ノード素子15の最後の電源接続端子V3は、隣り合う結合用ノード素子15のグランド接続端子G3と形状記憶素子合金SMA3を介して接続されている。形状記憶合金素子SMA1,SMA2,SMA3・・・は、予めコイルバネ状に形状が記憶処理されており、非通電のときには受動的に伸ばされて直線状に伸長しているが、電流が通電されて熱が発生すると、その熱によって変形して寸法を変える。なお形状記合金憶素子の形状は、コイルバネ状の他に波板状などの形状を採ることができる。
【0023】
形状記憶素子ネット1の全ての結合用ノード素子15の電源接続端子V1,V2,V3は、ロボット3の骨格5の外部に設けられている定電流源17に電流供給ネットワーク16で相互に接続されている。定電流源17は、図4に示すように、電圧源19とオペアンプA及び抵抗Rを組み合わせて構成された定電流回路21として構成されており、電圧フォロワを用いている。
【0024】
図5に示すように、結合用ノード素子15の内部には、接続される3つの形状記憶素子SMA1~SMA3に電流供給ネットワーク16から供給される定電流を選択的に且つ独立に供給するためにON/OFFが切替えられる3つの半導体切換スイッチSWが収納されている。また図5においては、便宜的に結合用ノード素子15の外部に配置してあるが、結合用ノード素子15の内部には情報処理装置25が収納されている。この情報処理装置25は、電流供給ネットワーク16を通して送られてきた制御指令に基づいて情報の処理を行い、3つの半導体切換スイッチSWに対して導通制御信号を与えて、3つの半導体切換スイッチSWのオンオフを制御する。1つの半導体切換スイッチSWがオン状態になると、1つの形状記憶合金素子が定電流ラインVccと骨格5の表面に形成したアース面との間に電気的に接続された状態となり、半導体切換スイッチSWがオン状態にある期間電流が形状記憶合金素子に通電される。このようにして隣り合う二つの結合用ノード素子15間の形状記憶合金素子に電流が通電される。
【0025】
結合用ノード素子15の底面には1以上の接地電極27と1以上のダミー電極29とが、骨格5の表面上に傾かないように位置するように分散して配置されている。電極27及び29の接触面は、接触抵抗を小さくして、しかも常に骨格と接触するように湾曲形状になっている。また後に説明するように電極27と電極29には、識別可能に色が付与されている。さらに図5に示すように、骨格5の裏面5b上には、形状記憶合金素子SMA1,SMA2,SMA3に対向する位置にペルチェ素子31がそれぞれ配置されている。電流が供給されて形状が変化した形状記憶合金素子SMA1,SMA2,SMA3は、ペルチェ素子31によって冷却され、通電される前の伸張した形状に戻る。なお形状記憶合金素子の冷却は、これに限定されるものではなく、例えば送風機やヒートパイプ等を用いて骨格5を常時冷却するようにしてもよい。
【0026】
図6は、ロボットの骨格5に形状記憶素子ネット1と表皮9とを装着した状態を模式的に拡大して示した一部拡大断面図である。ロボットの表皮9と骨格5の表面5aとの間に形成するギャップは、形状記憶素子ネット1の複数の結合用ノード素子15が骨格5の表面5a上を移動し且つこの移動によって表皮9に形状の変化または動きを与えることができるように寸法が定められている。骨格5の形状や結合用ノード素子15と表皮9との間の摩擦抵抗にもよるが、複数の結合用ノード素子15を表皮9に対してまったく固定しない場合でも、表皮9に変化または動きを与えることは可能である。また図7に示すように、複数の結合用ノード素子15のいくつかと表皮9の裏面9bとを、シリコンゴム等からなる可撓性を有する表皮結合部材35によって相互に接続するようにしてもよい。このように結合用ノード素子15と表皮9とを接続しておくことにより、隣合う表皮結合用部材35の間に位置する表皮9の部分を積極的に変化させる(縮めたり伸ばしたりする)ことができる。二つの表皮結合用部材35間の長さは、その間に位置する複数の形状記憶合金素子の形状が変化して得られる各形状記憶合金素子の形状の変化分の加減算値である。したがって表皮結合用部材35の配置位置を工夫することによって、表皮9にかなり大きな動きの変化を付与することが可能になる。なお表皮結合用部材35が配置されていない表皮9の裏面9bを、他の結合用ノード素子15と接触するように表皮9の裏面側の形状を定めてもよいのは勿論である。
【0027】
例えばロボット3の顔の表皮の一部を移動させる(例えば眉を寄せる等の動きをさせる)場合についての、変化させたい表皮9の部分に対応する結合用ノード素子15の移動情報を予めパターン化しておく。そしてパターン化した移動情報が形状記憶素子ネット1に送られると、結合用ノード素子15にはそれに対応した複数の結合用ノード素子15から所定の形状記憶合金素子に適当な電流値が供給される。供給される電流値に対応した熱が、結合用ノード素子15に接続されている形状記憶素子SMA1,SMA2,SMA3に発生し、それらの形状がそれぞれ変化して結合用ノード素子15が移動する。そして結合用ノード素子15が移動すると結合用ノード素子15に対応した表皮9の形状が変化して、表皮9の一部に動きが生じる。
【0028】
結合用ノード素子15の動き(移動量や方向)は、結合用ノード素子15に接続されているどの形状記憶素子の形状を変化させるかによって決まる。そこで図示しない制御装置から必要な制御指令が出力されると、その指令によって指定された結合用ノード素子では所定のスイッチング動作を実行することになる。しかしながらロボットが置かれる条件や、組み立て条件、使用した材料の材質によっては予め予想した結合用ノード素子の動きとは異なる動きをする場合がある。またロボットが置かれる場所によっては外気温が異なり、形状記憶素子の形状が設定された形状に変化しないことがある。また、結合用ノード素子が連続して動き続けると形状記憶素子ネット全体に熱がこもり、形状記憶素子の形状が予定した形状にならない場合も起こる。そこでこのような問題を防止するためには、図8に示すように、結合用ノード素子15の動きを絶えず測定してフィードバック制御する機能を付加するのが好ましい。図8には、フィードバック制御用のCCDやCMOSなどからなる撮像装置33を骨格5内に配置して結合用ノード素子15の動きの情報を得ている。図8において、骨格5の内部の空洞5cには、撮像装置33が配置されている。撮像装置33は、骨格5の表面5aに配置された複数の結合用ノード素子15の存在を骨格5の裏面5bから撮影している。撮影が可能なように、骨格5は光透過性を有する合成樹脂材料で形成されている。
【0029】
撮像装置33は、形状記憶素子ネット1に形成されている全ての結合用ノード素子15を撮影できる位置に配置されている。結合用ノード素子15の裏面または電極27及び29は予め異なる色で着色されており、撮像装置33が撮影した結合用ノード素子15の動きを容易に判別できるようになっている。撮像装置33により撮影された複数の結合用ノード素子15の映像情報は制御装置23(図4)に送られる。図9は骨格の空洞内から撮影された結合用ノード素子の様子を示す模式図である。図9の破線で囲まれた範囲が、結合用ノード素子15が複数移動した様子を示している。形状記憶合金素子SMAの伸縮状態が、予め設定した伸縮状態と異なる状態になっていると判定された場合には、即座に必要な伸縮状態になるような指令(電流の通電時間延長等)が結合用ノード素子15に送られる。
【0030】
本実施例では形状記憶素子として形状記憶合金素子を用いたが、電流の他に温度、電圧、電界、磁界、光等のような静的な物理量が与えられ、その量が変化することにより伸縮状態または変化量が変わる形状記憶素子であればその他の形状記憶素子を用いてもよいのは勿論である。
【0031】
また上記の実施の形態はロボットの顔の表情を変える場合に本発明を適用したものであるが、ロボットの胸の表皮等その他の表皮の動きを変える場合にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0032】
また上記の実施の形態では、表皮9に予め鼻や眉部の隆起した部分を形成しているが、表皮9には何も設けずに、形状記憶素子ネット1の形状変形によって表皮9の表面に鼻に相当する隆起部や眉の下の隆起部を形成するようにしてもよい。このようにすると形状記憶素子ネット1の形状変形によって任意の表情を作り出すことも可能である。なおこの場合には、少なくとも鼻を形成する領域や眉が形成される領域において、予め結合用ノード素子と表皮とを連結しておくの好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ロボットの顔の表皮に動きを生じさせる際に用いる形状記憶素子ネットを装着する状態を示す分解斜視図である。
【図2】具体的な形状記憶素子ネットの構成を概念的に示す図である。
【図3】本実施の形態で使用した結合用ノード素子の内部構成を概念的に示す図である。
【図4】形状記憶素子ネットの電源の構成を示す回路図である。
【図5】形状記憶素子ネットにおいて、形状記憶素子として形状記憶合金素子を用いる場合における通電回路の構成を示す図である。
【図6】ロボットの骨格に形状記憶素子ネットと表皮とを装着した状態を模式的に拡大して示した一部拡大断面図である。
【図7】一部の結合用ノード素子を表皮と連結した状態を示す一部拡大断面図である。
【図8】フィードバック制御用の撮像装置を骨格内に配置した場合の構造を説明する図である。
【図9】骨格の空洞内から撮影された結合用ノード素子の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1 形状記憶素子ネット
15 結合用ノード素子
16 電流供給ネットワーク
SMA1,SMA2,SMA3 形状記憶素子
25 情報処理装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8