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明細書 :化学バイオセンサおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4328664号 (P4328664)
公開番号 特開2005-283550 (P2005-283550A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月9日(2009.9.9)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 化学バイオセンサおよびその製造方法
国際特許分類 G01N  27/12        (2006.01)
FI G01N 27/12 B
G01N 27/12 C
G01N 27/12 G
G01N 27/12 J
G01N 27/12 M
G01N 27/12 N
G01N 27/12 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2004-127340 (P2004-127340)
出願日 平成16年3月27日(2004.3.27)
審査請求日 平成19年2月16日(2007.2.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】本津 茂樹
【氏名】西川 博昭
【氏名】楠 正暢
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
審査官 【審査官】柏木 一浩
参考文献・文献 特開2003-253424(JP,A)
特開平07-167814(JP,A)
特開平08-239208(JP,A)
特開平08-101146(JP,A)
特公平05-015004(JP,B2)
特開昭63-269406(JP,A)
特開2004-033589(JP,A)
特開2003-052805(JP,A)
特開平03-150458(JP,A)
国際公開第03/056033(WO,A1)
特開平06-107404(JP,A)
特開平08-240551(JP,A)
S.Nakayama,Bio-Organic Material Detection using Hydroxyapatite Composite QCM Sensors,Key Engineering Materials ,スイス,1999年,Vol.169-170,P.269-272
津曲昭男,蛋白質のアパタイト薄膜上への吸着のQCM法による検討,日本セラミックス協会年会講演予稿集,日本,1999年,P.428
調査した分野 G01N 27/12
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上にハイドロキシアパタイトの薄膜を形成し、該薄膜上に更に、電気抵抗測定用の一対の電極を離間して設けて成り、前記一対の電極間の電気抵抗によりタンパク質を検出する化学バイオセンサ。
【請求項2】
基板上に、ハイドロキシアパタイトを構成するカルシウムの一部をキャリアドーピング用元素で置き換えてなるハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を形成し、該薄膜上に更に、電気抵抗測定用の一対の電極を離間して設けて成り、前記一対の電極間の電気抵抗によりタンパク質を検出する化学バイオセンサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の化学バイオセンサを製造するにあたり、ハイドロキシアパタイトの薄膜またはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を基板上に形成する薄膜形成工程を含む製造方法であって、前記薄膜形成工程においてレーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイトの薄膜またはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を形成することを特徴とする化学バイオセンサの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、タンパク質を検出するセンサに係り、さらに詳しくは、タンパク質の吸着をインピーダンス、電気抵抗、電流、電圧、キャパシタンス等の電気特性の変化として直接検出する化学バイオセンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られた化学センサのうち、ガスセンサとしては、酸化物半導体センサ、熱式ガスセンサ、SAW(Surface Acoustic Wave)センサ、および水晶振動子(QCR:Quartz Crystal Resonator、特許文献1)センサなどがある。酸化物半導体センサは半導体表面でガスが吸着酸素による酸化反応を引き起こしこのとき電子が半導体に流れ込んで導電率が増加するので、これを電気抵抗の変化で測定しガスを検出するようになっている。熱式ガスセンサは検出対象としてLPガス、都市ガス、水素、メタン、一酸化炭素などの可燃性ガスの検出が主流である。SAWやQCRセンサは感度はあまり高くないが、有機材料を用いているために選択性の制御が容易である。QCRセンサの原理は、水晶振動子の両面の電極上にガス官能膜を形成し、特定のガスがガス官能膜に吸着すると質量が変化するため水晶振動子の共振周波数が下がる。この周波数変化は吸着ガスの質量に比例するので、周波数変化を測定して吸着ガス量を検出するようになっている。

【特許文献1】特開2003-121329
【0003】
化学センサのうち、匂いセンサとしては、酸化物半導体(MOS)ガスセンサ(非特許文献1)、導電性高分子ガスセンサ(非特許文献2)、FETガスセンサ(非特許文献3)、SAWガスセンサ(非特許文献4)、水晶振動子ガスセンサ(非特許文献5)などがそれぞれの文献に報告されている。

【非特許文献1】K.Persaud and G.Dodd:Nature,299,352-354(1982)..
【非特許文献2】K.C.Persaud and P.Travers:Intelligent Insturuments & Computers,Elsevier Science Publishing,147-154(1991).
【非特許文献3】I.Lundstrom,R.Erlandssom and U.Frykman:Nature,352,47-50(1991).
【非特許文献4】A.Saitou,T.Nomura and T.Moriizumi:Mol.Cryst.Liq.Cryst.,267,387-392(1995).
【非特許文献5】K.Ema,M.Yokoyama,T.Nakamoto and T.Moriizumi:The 17th SensorSymposium,307-312(200).
【0004】
上記した化学センサは、一般的に目的とする検出対象化学物質を捕捉・認識するためのレセプタ部を用意しなければならず、これと捕捉・認識を電気信号に変換するトランスデューサー(各種電極)からなっており、その構造は複雑であって微小化に難がある。また、バイオセンサでは目的の化学物質を捕捉するための特殊な酵素などの生物活性物質をレセプタに固定化する固定化膜が最重要であり、そのために高分子膜、生体膜等各種の固定化膜が提案されているが、これらの膜への生物活性物質の吸着を直接電気信号に変換するのは困難である。
【0005】
一方、ハイドロキシアパタイトはカルシウムイオンCa2+やリン酸イオンPO43-を表面に持つため、各種ガス、イオン、アルコール、酵素、タンパク質、DNA等の化学物質を吸着することが知られている。そこで、かかる化学物質を検出する化学センサの材料にハイドロキシアパタイトの薄膜を利用することを考えた。ハイドロキシアパタイトの薄膜を形成する技術としては、例えば電気泳動法が知られている。この電気泳動法は、ハイドロキシアパタイトの原料粉末を液体中に分散させ,その液中に一対の電極を入れて直流電圧を印加して粉末を電気泳動により移動させ,最終的に到達した電極上にハイドロキシアパタイトを膜状に堆積させるものである。しかしながら、電気泳動法により形成されたハイドロキシアパタイト膜は成分中のCa:P比を所望の値に調整しにくいため、化学量論的組成の材料が得られないという問題や、膜の結晶性が悪いという問題がある。また、比較的厚い膜であるために膜のクラック発生や基板からの剥離という問題も生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述したように、ハイドロキシアパタイトは各種化学物質を吸着する特性を持つ。また、Ca2+の一部をNa+、K+、Mg2+、Sr2+に置換すると、置換元素の種類や置換量により電気的特性が変化する特性を持つ。上述した2つの特性を利用すれば、ハイドロキシアパタイト自身に種々の化学物質を吸着できるレセプタ部とトランスデューサー部を兼ね備えさせる化学バイオセンサを実現できる。また、トランスデューサー部は半導体や各種電極の電子技術の発展に伴って新規な技術や材料が用いられるようになってきたが、劣悪な環境下でのセンサ使用は耐久性に問題が残る。しかしながら、ハイドロキシアパタイトは安定したセラミックスであって硬くて丈夫であるために、使用環境がいくぶん悪くても耐久性に問題を生じない。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、タンパク質を検出可能で機械的強度が高く、実用的な化学バイオセンサおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る化学バイオセンサは、基板上にハイドロキシアパタイトの薄膜を形成し、該薄膜上に更に、電気抵抗測定用の一対の電極を離間して設けたものであり、前記一対の電極間の電気抵抗によりタンパク質を検出するものである。本発明の化学バイオセンサにおいて、センサ用の基板としては、例えば、アルミナ(Al23)や酸化ジルコニア(ZrO)等のセラミックスが挙げられる。また、薄膜を形成する手段としては、例えば、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、反応性蒸着法等が挙げられる。

【0009】
また、本発明に係る化学バイオセンサは、基板上に、ハイドロキシアパタイトを構成するカルシウムの一部をキャリアドーピング用元素で置き換えてなるハイドロキシアパタイト誘導体((Ca,M)10(PO46(OH)2)の薄膜を形成し、該薄膜上に更に、電気抵抗測定用の一対の電極を離間して設けたものであり、前記一対の電極間の電気抵抗によりタンパク質を検出するものである。
この発明に用いるキャリアドーピング用元素Mとしては、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)などが挙げられる。ハイドロキシアパタイトの基本物性を損なわない範囲であれば、カルシウムの1.0wt%に対して、置換されるキャリアドーピング用元素の重量%は0~0.1wt%である。

【0010】
そして、前記各構成の化学バイオセンサを製造する本発明の製造方法は、ハイドロキシアパタイトの薄膜またはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を基板上に形成する薄膜形成工程を含む製造方法であって、前記薄膜形成工程においてレーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイトの薄膜またはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を形成するものである。
本発明に適用するレーザーアブレーション法の薄膜形成操作は慣用法でよい。レーザーアブレーション法に用いるレーザーの種類は特に限定されないが、膜厚が1μm程度あるいは1μm以下の薄膜を得るためには例えばエキシマレーザを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る化学バイオセンサによれば、多くの化学物質に対して、きわめて高い吸着能力を持つハイドロキシアパタイトの薄膜によりタンパク質を吸着させ、そのときに変化する薄膜の電気抵抗を測定して化学物質をセンシングできるので、構成が簡素ですみ安価に提供され検出精度も高い。かかる簡素な構成と併せて、セラミックであるハイドロキシアパタイトが硬くて強い材料であることから、壊れにくく耐久性の高い化学バイオセンサを実現することができる。すなわち、本発明の化学バイオセンサは、特定のタンパク質(プロテイン)を検出できるプロテインセンサとして使用可能である。例えば、ハイドロキシアパタイトのタンパク質吸着機能を利用し、検出したい特定のタンパク質と結合するタンパク質をハイドロキシアパタイト薄膜上に予め固定しておく。この固定タンパク質と、検出したい特定のタンパク質とが結合すると、ハイドロキシアパタイト薄膜の電気抵抗が変化する。この電気抵抗を測定することにより、特定のタンパク質を検出することができる。因みに、従来のプロテインセンサではタンパク質に蛍光物質などの標識(マーカ)を付ける手間のかかる作業を行なわなければならなかったが、本発明の化学バイオセンサではこのような作業が不要となる。
【0012】
また、ハイドロキシアパタイトを構成するカルシウムの一部をキャリアドーピング用元素で置き換えてなるハイドロキシアパタイト誘導体で薄膜を形成する場合は、置き換えるキャリアドーピング用元素の種類や置き換え重量%を調整することにより、目的とする化学物質の種類や検出濃度範囲を適宜に選定することができ、タンパク質はもとより、生体材料、医療材料その他の分野に広く利用され得る。
【0013】
そして、レーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイトの薄膜またはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜を形成するときは、他の成膜方法により形成した薄膜よりも強固な薄膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態および実施例はそれぞれ本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る化学バイオセンサの概略斜視図である。
図1において、この実施形態の化学バイオセンサは、アルミナ製の基板1と、この基板1上に成膜されたハイドロキシアパタイトまたはハイドロキシアパタイト誘導体の薄膜2と、薄膜2上に離間して形成された櫛型で一対の電極3,3と、電極3,3にそれぞれ結線されて外部の電気特性測定装置(LCRメータなど、図示省略)に接続されるリード線4,4とから構成されている。この実施形態に係る化学バイオセンサは次の実施例1によって更に詳しく説明される。
【実施例1】
【0015】
図1に示した化学バイオセンサにおいて、基板1にはポーラスアルミナを用い、ArFエキシマレーザー(λ=193nm、パルス幅=20nsec)によるレーザーアブレーション法によりハイドロキシアパタイト誘導体(Na-HAp)の薄膜2を基板1上に成膜した。このArFエキシマレーザーアブレーション法を適用した成膜装置では、真空成膜チャンバー内に、基板1とターゲットであるCa9Na2(PO46(OH)2とを収容し、基板温度300℃、H2Oを含んだ酸素中でガス雰囲気0.8mTorrの条件下により膜厚約1μmの薄膜2を成膜した。ターゲット上のレーザーエネルギー密度は1J/cm2,繰り返し周波数は1~10Hzとした。成膜後、H2Oを含んだ酸素中で500℃、1時間の熱処理を行って、ナトリウム置換ハイドロキシアパタイト(Ca9Na2(PO46(OH)2、ハイドロキシアパタイト誘導体の例)の薄膜2を結晶化させた。その後、慣用のスパッタ法および真空蒸着法を併用して金製の櫛形電極3,3を薄膜2上に形成した。電極3,3にそれぞれ結線したリード線4,4を汎用のLCRメータに接続し、下記する実施例2でセンサ電気特性の測定に供した。
尚、上記のように形性した薄膜2はX線回折分析に供した。測定した薄膜2のX線回折パターンを図に示す。図のX線回折パターンから明らかなように、ポーラスアルミナ上の薄膜2は、目的とする結晶化ナトリウム置換ハイドロキシアパタイトであった。
【実施例2】
【0016】
は実施例1の化学バイオセンサのタンパク吸着特性を示している。メスシリンダ中に入れた100mlの純水中に化学バイオセンサを沈め、牛胎児血清(以下FBSと称する)を、(1)10μl、(2)100μl、(3)100μl、(4)100μlと、(1)から(4)まで順に適時間隔で純水中に滴下した。FBSを滴下していくと薄膜の電気抵抗が次第に低下していった。これにより、この化学バイオセンサはタンパク質の吸着をセンシングできることが確認された。
【実施例3】
【0017】
実施例1で形成された薄膜2がナトリウム置換ハイドロキシアパタイト(Ca9Na2(PO46(OH)2、ハイドロキシアパタイト誘導体の例)で構成されていることを確認するため、ポーラスアルミナ製の基板1の替わりに、チタン-アルミナ-バナジウム合金(Ti-6Al-4V)を基板とし、その上に実施例1と同様にしてナトリウム置換ハイドロキシアパタイトの薄膜を形成し、この薄膜をX線回折分析に供した。測定した薄膜のX線回折パターンを図に示す。図のX線回折パターンから明らかなように、白抜き丸印で示したX線回折角2θにおいて、X線回折強度(Intensity)のピークが検出され、薄膜がナトリウム置換ハイドロキシアパタイト(Na-HAp)であることを確認できた。
【実施例4】
【0018】
この実施例では、実施例におけるナトリウム置換ハイドロキシアパタイトに替えて、マグネシウム置換ハイドロキシアパタイトCa9Mg(PO46(OH)2をターゲットとして用いたこと以外は、実施例と同様にしてチタン-アルミナ-バナジウム合金(Ti-6Al-4V)上に薄膜を形成し、この薄膜をX線回折分析に供した。測定した薄膜のX線回折パターンを図に示す。図のX線回折パターンから明らかなように、白抜き丸印で示したX線回折角においてX線回折強度のピークが検出され、薄膜がマグネシウム置換ハイドロキシアパタイト(Mg-HAp)であることが確認された。
【0019】
尚、上記の実施形態では、ターゲットとしてCa9Na2(PO46(OH)2を用いて基板上にハイドロキシアパタイト誘導体(Ca9Na2(PO46(OH)2)の薄膜を形成した化学バイオセンサを例示したが、本発明の化学バイオセンサはそれに限定されるものでなく、例えばターゲットとしてCa10(PO46(OH)2を用いて基板上にハイドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)の薄膜を形成した化学バイオセンサも、本発明に含まれる。
また、上記ではレーザーアブレーション法を用いて薄膜を形成したが、本発明においてはレーザーアブレーション法の替わりに、スパッタリング法、反応性蒸着法などを用いて成膜しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態および実施例1に係る化学バイオセンサの概略斜視図である。
【図2】実施例による化学バイオセンサのタンパク質吸着特性を示すグラフである。
【図3】実施例によるナトリウム置換ハイドロキシアパタイト薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】実施例によるマグネシウム置換ハイドロキシアパタイト薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図5】実施例1によるナトリウム置換ハイドロキシアパタイト薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【符号の説明】
【0021】
1 基板
2 薄膜
3 電極
4 リード線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4