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明細書 :顕微分光測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4336847号 (P4336847)
公開番号 特開2005-331419 (P2005-331419A)
登録日 平成21年7月10日(2009.7.10)
発行日 平成21年9月30日(2009.9.30)
公開日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称 顕微分光測定装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/65        (2006.01)
G02B  21/00        (2006.01)
FI G01N 21/27 E
G01N 21/64 E
G01N 21/65
G02B 21/00
請求項の数または発明の数 12
全頁数 15
出願番号 特願2004-151127 (P2004-151127)
出願日 平成16年5月21日(2004.5.21)
審査請求日 平成18年12月5日(2006.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】小平 哲也
【氏名】井上 俊一
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100115152、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 茂
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 実開平04-110961(JP,U)
特開2003-294618(JP,A)
特開2001-174708(JP,A)
特開平04-148847(JP,A)
谷俊朗、外3名,高分子薄膜中のフィブリル構造分子性J-会合体 - 作製と局所光物性評価,高分子論文集,日本,2003年12月25日,第60巻、第12号,第712頁-第724頁
調査した分野 G01N 21/00-21/74
G02B 19/00-21/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料の一部を測定部分として前記測定部分の分光測定を行う顕微分光測定装置であって、
第1の光学系と第2の光学系とを含み、
前記第1の光学系は、第1の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分の透過スペクトルおよび前記測定部分の反射スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(A)を測定するための光学系であり、
前記第2の光学系は、第2の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分のラマンスペクトルおよび前記測定部分の蛍光スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(B)を測定するための光学系であり、
前記第1および第2の光学系は、複数の光学素子を共有しており、
前記第1の光学系の光路と前記第2の光学系の光路とは、重なっている部分であって且つ前記第1の光と前記第2の光とが互いに逆方向に進行する部分を含み、
前記第1の光学系と前記第2の光学系とが切り替え可能であり、
前記第1および第2の光学系が第1および第2のミラーを共有しており、
前記第1の光学系において、前記第1のミラーは前記第1の光を前記試料の方向に反射し、前記第2のミラーは前記試料を透過した前記第1の光を第1の光検出器の方向に反射し、
前記第2の光学系において、前記第2のミラーは前記第2の光を前記試料の方向に反射し、前記第1のミラーは前記試料から発せられる光を第2の光検出器の方向に反射する、顕微分光測定装置。
【請求項2】
前記試料の一方から前記測定部分に前記第1の光を入射させて前記測定部分の透過スペクトルを測定し、前記一方とは反対側の他方から前記測定部分に前記第2の光を入射させて前記スペクトル(B)を測定する請求項1に記載の顕微分光測定装置。
【請求項3】
前記第1の光学系は、前記第1の光を前記他方から前記測定部分に入射させて前記測定部分の反射スペクトルを測定するための光学素子を含む請求項2に記載の顕微分光測定装置。
【請求項4】
前記スペクトル(A)の測定と前記スペクトル(B)の測定とを切り替えるために前記第2のミラーを回転させるモータをさらに備える請求項1に記載の顕微分光測定装置。
【請求項5】
前記第1および第2の光学系が1つの分光器を共有しており、
前記分光器は、前記第1の光を分光する分光器、および、前記第2の光を前記測定部分に入射させたときに生じるラマン散乱光および蛍光から選ばれる少なくとも1つの光を分光する分光器として機能する請求項1~4のいずれか1項に記載の顕微分光測定装置。
【請求項6】
前記分光器が差分散型2重分光器である請求項5に記載の顕微分光測定装置。
【請求項7】
前記分光器は前記第1の光が出射する出射スリットを備え、前記第1の光学系が視野絞りを備え、前記出射スリットと前記視野絞りとを用いて前記測定部分の位置を調整する請求項5に記載の顕微分光測定装置。
【請求項8】
試料の一部を測定部分として前記測定部分の分光測定を行う顕微分光測定装置であって、
第1の光学系と第2の光学系とを含み、
前記第1の光学系は、第1の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分の透過スペクトルおよび前記測定部分の反射スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(A)を測定するための光学系であり、
前記第2の光学系は、第2の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分のラマンスペクトルおよび前記測定部分の蛍光スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(B)を測定するための光学系であり、
前記第1および第2の光学系は、複数の光学素子を共有しており、
前記第1の光学系の光路と前記第2の光学系の光路とは、重なっている部分であって且つ前記第1の光と前記第2の光とが互いに逆方向に進行する部分を含み、
前記第1の光学系と前記第2の光学系とが切り替え可能であり、
前記第1および第2の光学系が1つの分光器を共有しており、
前記分光器は、前記第1の光を分光する分光器、および、前記第2の光を前記測定部分に入射させたときに生じるラマン散乱光および蛍光から選ばれる少なくとも1つの光を分光する分光器として機能する、顕微分光測定装置。
【請求項9】
前記分光器が差分散型2重分光器である請求項8に記載の顕微分光測定装置。
【請求項10】
前記分光器は前記第1の光が出射する出射スリットを備え、前記第1の光学系が視野絞りを備え、前記出射スリットと前記視野絞りとを用いて前記測定部分の位置を調整する請求項8に記載の顕微分光測定装置。
【請求項11】
前記第2の光学系が前記第1の光学系と前記視野絞りを共有しており、
前記第2の光は、前記視野絞りを通過したのちに前記測定部分に入射される請求項10に記載の顕微分光測定装置。
【請求項12】
前記第2の光学系が光検出器を含み、
前記スペクトル(B)は、前記出射スリットを通過したのちに前記光検出器で検出される請求項11に記載の顕微分光測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の特定の微小領域について透過および反射スペクトルを測定する装置が提案されている(たとえば特許文献1)。また、試料の特定の微小領域について、ラマンスペクトルを測定する装置も提案されている(たとえば特許文献2)。

【特許文献1】特開2000-356588号公報
【特許文献2】特開2001-215193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の装置を用いて、透過・反射スペクトルとラマンスペクトルとを測定する場合、それぞれを別の装置で測定する必要があった。しかし、微小な領域ごとに組成や結晶性が異なるような物体を測定する場合には、透過・反射スペクトルを測定した部分と、ラマンスペクトルを測定した部分とが異なってしまうと、両者のスペクトルの相関が不明になるという問題があった。一方、1つの装置で透過・反射スペクトルおよびラマンスペクトルを測定しようとすると、多数の光学素子を用いることが必要となり、装置が複雑で高額なものになるという問題が生じる。
【0004】
このような状況に鑑み、本発明は、試料の特定の微小部分について、透過スペクトルおよび/または反射スペクトルと、ラマンスペクトルおよび/または蛍光スペクトルとを簡単かつ位置精度よく測定できる顕微分光測定装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために検討した結果、本発明者らは、透過スペクトルを測定するための光学系と、ラマン・蛍光スペクトルを測定するための光学系とを、それらの光路が実質的に逆方向となるように構成することによって、上記目的を達成できることを見出した。本発明は、この新しい知見に基づくものである。
【0006】
すなわち、本発明の第1の顕微分光測定装置は、試料の一部を測定部分として前記測定部分の分光測定を行う顕微分光測定装置であって、第1の光学系と第2の光学系とを含み、前記第1の光学系は、第1の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分の透過スペクトルおよび前記測定部分の反射スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(A)を測定するための光学系であり、前記第2の光学系は、第2の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分のラマンスペクトルおよび前記測定部分の蛍光スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(B)を測定するための光学系であり、前記第1および第2の光学系は、複数の光学素子を共有しており、前記第1の光学系の光路と前記第2の光学系の光路とは、重なっている部分であって且つ前記第1の光と前記第2の光とが互いに逆方向に進行する部分を含む。そして、前記第1の光学系と前記第2の光学系とが切り替え可能である。すなわち、測定するスペクトルに応じて、使用する光学系を簡単に切り替えることができる。さらに、本発明の第1の顕微分光測定装置では、前記第1および第2の光学系が第1および第2のミラーを共有しており、前記第1の光学系において、前記第1のミラーは前記第1の光を前記試料の方向に反射し、前記第2のミラーは前記試料を透過した前記第1の光を第1の光検出器の方向に反射し、前記第2の光学系において、前記第2のミラーは前記第2の光を前記試料の方向に反射し、前記第1のミラーは前記試料から発せられる光を第2の光検出器の方向に反射する。
また、本発明の第2の顕微分光測定装置は、試料の一部を測定部分として前記測定部分の分光測定を行う顕微分光測定装置であって、第1の光学系と第2の光学系とを含み、前記第1の光学系は、第1の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分の透過スペクトルおよび前記測定部分の反射スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(A)を測定するための光学系であり、前記第2の光学系は、第2の光を前記測定部分に入射させて、前記測定部分のラマンスペクトルおよび前記測定部分の蛍光スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(B)を測定するための光学系であり、前記第1および第2の光学系は、複数の光学素子を共有しており、前記第1の光学系の光路と前記第2の光学系の光路とは、重なっている部分であって且つ前記第1の光と前記第2の光とが互いに逆方向に進行する部分を含み、前記第1の光学系と前記第2の光学系とが切り替え可能であり、前記第1および第2の光学系が1つの分光器を共有しており、前記分光器は、前記第1の光を分光する分光器、および、前記第2の光を前記測定部分に入射させたときに生じるラマン散乱光および蛍光から選ばれる少なくとも1つの光を分光する分光器として機能する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の装置によれば、試料の特定の一部について、透過スペクトルおよび/または反射スペクトルと、ラマンスペクトルおよび/または蛍光スペクトルとを、簡単かつ位置精度よく測定することができる。本発明の装置によれば、直径5μm以下の微小領域の評価が可能である。これによって、微小な領域ごとに組成や結晶性が異なるような試料についても、物性の正確な評価が可能となる。また、本発明の装置によれば、試料の一部の透過スペクトルを測定して吸収ピークに関する情報を得たのち、その吸収ピークに応じた光を照射してラマンスペクトルおよび/または蛍光スペクトルを測定することができる。そのため、効率的にラマンスペクトルおよび/または蛍光スペクトルの測定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の顕微分光測定装置は、試料の一部を測定部分としてその測定部分の分光測定を行うための装置である。
【0009】
本発明の装置は、第1の光学系と第2の光学系とを含む。第1の光学系は、第1の光を測定部分に入射させて、測定部分の透過スペクトルおよび測定部分の反射スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(A)を測定するための光学系である。第2の光学系は、第2の光を測定部分に入射させて、測定部分のラマンスペクトルおよび測定部分の蛍光スペクトルから選ばれる少なくとも1つのスペクトル(B)を測定するための光学系である。第1および第2の光学系は、複数の光学素子を共有しており、第1の光学系の光路と第2の光学系の光路とは、重なっている部分であって且つ第1の光と第2の光とが互いに逆方向に進行する部分を含む。そして、第1の光学系と第2の光学系とは切り替え可能である。すなわち、第1の光学系を進行する第1の光と第2の光学系を進行する第2の光とは、光路の一部において同じ光路を互いに逆方向に進行する。
【0010】
本発明の装置では、試料の一方から測定部分に第1の光を入射させて測定部分の透過スペクトルを測定し、上記一方とは反対側の他方から測定部分に第2の光を入射させてスペクトル(B)を測定することが好ましい。
【0011】
また、本発明の装置では、第1の光学系は、第1の光を上記他方から測定部分に入射させて測定部分の反射スペクトルを測定するための光学素子をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、測定部分の透過スペクトルと反射スペクトルとを容易に測定できる。
【0012】
また、本発明の装置では、第1および第2の光学系は第1および第2のミラーを共有することが好ましい。この場合、第1の光学系において、第1のミラーは第1の光を試料の方向に反射し、第2のミラーは試料を透過した第1の光を第1の光検出器の方向に反射することが好ましく、第2の光学系において、第2のミラーは第2の光を試料の方向に反射し、第1のミラーは試料から発せられる光(蛍光またはラマン光)を第2の光検出器の方向に反射することが好ましい。この構成によれば、少ない光学素子でスペクトル(A)および(B)を測定できる。さらにこの場合、スペクトル(A)の測定とスペクトル(B)の測定とを切り替えるために第2のミラーを回転させるモータをさらに備えることが好ましい。これによって、スペクトル(A)の測定とスペクトル(B)の測定とを、測定箇所を変えることなく簡単に切り替えることができる。
【0013】
また、本発明の装置では、第1および第2の光学系が1つの分光器を共有してもよい。この分光器は、第1の光を分光する分光器、および、第2の光を測定部分に入射させたときに生じるラマン散乱光および蛍光から選ばれる少なくとも1つの光を分光する分光器として機能する。このような分光器を用いることによって装置を簡略化できる。
【0014】
上記の共有される分光器は、差分散型2重分光器であることが好ましい。差分散型2重分光器は、2つの分光器を直列に配置・接続したものである。単分光器を用いた場合には波長分散によって第1の光の色むらが生じるが、差分散型2重分光器を用いることによってそのような色むらを抑制できる。そのため、スペクトル(A)とスペクトル(B)とを測定する本発明の装置では、差分散型2重分光器を用いることが好ましい。
【0015】
また、上記の共有される分光器は第1の光が出射する出射スリットを備え、第1の光学系が視野絞りを備え、出射スリットと視野絞りとを用いて測定部分の位置を調整してもよい。視野絞りは、第1の光が試料を透過または反射したあとの光路に配置される。出射スリットを、試料に入射する前の光に対する視野絞りとして機能させることによって、測定領域以外からの光の入射を抑制でき、高い吸光度の試料に対する透過スペクトルを精度良く測定することが可能となる。
【0016】
以下に、本発明の装置の一例について説明する。本発明の顕微分光測定装置の一例(以下、装置100という)を図1~図5に示す。図1は透過スペクトルを測定する場合の光路を示しており、図3は反射スペクトルを測定する場合の光路を示しており、図4および図5はラマンスペクトルまたは蛍光スペクトルを測定する場合の光路を示している。なお、図1および図3~図5では、一部の上面図もあわせて示している。
【0017】
(透過スペクトルの測定)
図1の装置100では、光源から第1の光11が出射される。第1の光11は、紫外領域から近赤外領域までの範囲の少なくとも一部の波長域を有する光である。光源は、そのような波長域の光を発する光源であればよく、特に限定されない。装置100では、光源として、ハロゲンランプ12および重水素ランプ13を用いている。ハロゲンランプ12を用いる場合には、ミラー14を光路上から排除する。重水素ランプ13を用いる場合には、光路上にミラー14を配置する。重水素ランプ13から出射された光は、ミラー14を介して凹面鏡15に入射される。
【0018】
第1の光11は、凹面鏡15で反射されたのち、チョッパー16を通過し、分光器17に導入される。チョッパー16は、第1の光11のみに変調を加えるためのものであり、第1の光11以外の光や電気的ノイズ等の影響を除去することが可能となる。装置100が十分に遮光された環境で用いられる場合には、通常、チョッパー16は不要である。ただし、PbSなどを用いた赤外検出器を用いる場合には、熱雑音を除去するためにチョッパー16を用いることが好ましい。
【0019】
分光器17は、第1の光学系および第2の光学系に共有される分光器である。分光器17は差分散型2重分光器である。上記の共有される分光器において、単色化される第1の光に含まれる迷光は強い光吸収を有する試料に対する透過スペクトル測定の精度を下げる原因となるので、上記の共有される分光器には、迷光除去率の高い差分散型2重分光器を用いることが望ましい。なお、分光器17として、高分散型分光器などの分光器を用いることも可能である。分光器17が差分散型2重分光器である場合の構成の一例を図2に示す。図2の分光器17は、入射スリット17a、球面鏡17b、平面鏡17c、グレーティング17d、収差補正鏡17e、球面鏡17f、グレーティング17g、平面鏡17h、収差補正鏡17i、および出射スリット17jを備える。図2に示すように、分光器17は、2つの分光器が線対称に配置されたような構造を有する。このような差分散型の2重分光器を用いることによって、迷光や色むらを低減できる。
【0020】
分光器17の出射スリット17jからは、単色光となった第1の光11が出射される。この第1の光11は偏光子18を通過してミラー(第1のミラー)19に入射される。
【0021】
ミラー19は、第1の光11を、試料ステージ30上に配置された試料101の方向に反射する。第1の光11は、カセグレイン鏡20によって試料101の一部である測定部分に集光・結像される。測定部分を透過した第1の光11は、カセグレイン鏡21によって視野絞り22の位置で結像されねばならない。測定する視野の位置、サイズ、及び結像が適切かどうかについては、三眼鏡筒23の肉眼観察用の接眼レンズから目視で確認・調節する。なお、このときの第1の光11は可視光とする。視野の位置および結像が適切でない場合には、試料が置かれている試料ステージ30の位置およびカセグレイン鏡20の位置を3次元方向で調節する。視野サイズは視野絞り22と出射スリット17jの開度によって決定する。視野の位置およびサイズが適切である場合には、三眼鏡筒23内のプリズムを除去して、第1の光11を上方へ導く。第1の光11はフィルター24を透過したのち、ミラー(第2のミラー)25によって、光検出器に集光される。フィルター24は、分光器17で除去できなかった2次回折光を除去するために配置される。ミラー25は、凹面鏡または放物面鏡である。ミラー25は、モータ(図示せず)で回転され、その回転は通常コンピュータで制御される。なお、以下で説明する光学素子のうち可動の光学素子は、ミラー25と同様にモータおよびコンピュータなどで制御される。
【0022】
光検出器は、第1の光11の光量を検出できるものであればよく、たとえば、光電子増倍管、フォトダイオード、赤外検出器などを用いることができる。これらは測定する光の波長および強度に応じて選択される。図1の例では、光検出器として、光検出器26と光検出器27とを用いている。具体的には、光検出器26は光電子増倍管であり、光検出器27はPbS光伝導素子である。
【0023】
装置100では、分光器17から出射される単色光の波長を変化させることによって、広い波長域の透過スペクトルを精度よく測定できる。また、装置100では、カセグレイン鏡を除き、分光器17と光検出器との間の光路にはミラーが2枚しか使用されていない。そのため、ミラーにおける反射による光量の低減が少なく、ミラーの表面粗さや凹面鏡の収差による視野のゆがみを極力抑えることができる。重水素ランプ13の光量は一般に低いため、光量の低減を抑制することは特に重要である。また、一般に透過スペクトルは以下に述べる反射スペクトルと比較してスペクトルの解析・解釈がしやすく、一般に好まれる測定法である。しかし、透過スペクトルの測定では、高い吸光度まで正確に測定する必要がある。そのため、光路設計において、透過スペクトルの測定を優先させた光学素子等の配置、及びその調整が容易になるようにミラーの数を減らすといった光路設計の工夫が重要である。
【0024】
(反射スペクトルの測定)
反射スペクトルの測定方法の一例を図3に示す。反射スペクトルを測定する場合には、図1に示した光路上に、ミラー31およびミラー32を配置する。なお、ミラー32は全反射タイプであるものの、顕微鏡筒内の半分のみ覆うようにサイズ及び位置が設定されている。分光器17から出射されて偏光子18を透過した第1の光11は、ミラー31によって反射されたのち、凹面鏡33によって反射され、視野絞り34の位置に集光される。凹面鏡33によって生じた球面収差は、視野絞り34によって解消できる。なお、視野絞り34は、視野絞り22と共役(等しい鏡筒長)な位置に存在する。視野絞り34を透過した第1の光11は、ミラー32によって試料101の方向に反射され、カセグレイン鏡21によって試料101の測定箇所に集光される。
【0025】
試料101で反射された第1の光11は、カセグレイン鏡21を経てミラー32の位置に到達するが、ミラー32は鏡筒内を全て覆っていないので、このミラーの存在しない鏡筒内の空間を経て視野絞り22に入射し、透過スペクトルの測定と同様に光量が測定される。このようにして、反射スペクトルが測定される。装置100では、透過スペクトルを測定する際の光路に2つのミラー31および32を挿入するだけで光路が切り替えられ、簡単に反射スペクトルを測定できる。なお、透過スペクトルの測定の場合と同様に、視野サイズ・位置・結像は、視野絞り22および34、ならびに試料ステージ30を調整することによって最適化される。
【0026】
(蛍光スペクトルの測定)
蛍光スペクトルの測定方法の一例を図4に示す。なお、ラマンスペクトルも蛍光スペクトルと同様の方法で測定できる。
【0027】
光源から出射された第2の光41は、凹面鏡42で反射され、チョッパー43を介して分光器44に入射する。第2の光41は、蛍光(またはラマン散乱光)を励起できる波長域を含む光であればよい。光源は、そのような光を出射する光源であればよく、たとえば、高輝度キセノンランプやレーザ装置などを用いることができる。レーザ装置を用いる場合には、分光器44は省略できる。装置100では、光源としてキセノンランプ45を用いている。キセノンランプなどのランプと分光器とを組み合わせることによって、任意の波長で試料を励起できる。チョッパー43は、チョッパー16と同様に、光源からの光以外の光の影響を除去するために配置されており、測定条件によっては省略してもよい。分光器44に特に限定はなく、さまざまな分光器を用いることができるが、低分散型の分光器は、輝度が高い単色光を得ることができるという点で好ましい。
【0028】
分光器44で単色光となった第2の光41は、偏光子46を透過したのちミラー25で反射され、視野絞り22の部分で集光される。視野絞り22を通過した第2の光41は、カセグレイン鏡21を介して試料101の所定の測定部分、すなわち、透過・反射スペクトルが測定された部分に入射される。第2の光41が照射された試料101は、蛍光(またはラマン散乱光)を生じる。なお、キセノンランプ45、凹面鏡42、分光器44、ミラー25は、第2の光41が、透過・反射スペクトルを測定した部分に入射するように配置される必要があるが、この配置は、既に透過または反射スペクトル測定のモードによって測定視野の位置、サイズおよび結像が調整されているので、実質的にはミラー25を所定の位置に移動するだけで足りる。本発明の装置によれば、透過・反射スペクトルを測定した測定部分と、蛍光(またはラマン散乱光)を測定した測定部分との位置のずれを、数ミクロン以下とすることも可能である。
【0029】
図4では、試料101で発生した蛍光(またはラマン散乱光)は、反射スペクトル測定時の光路と同じ光路を逆方向に進行して分光器17に入射する。なお、透過スペクトルの測定時と同じ光路を用いて蛍光を測定してもよい。一般にこのような光学系で得られるのは非共鳴ラマン散乱光であることが多い。その場合の光路を図5に示す。図5では、試料101で発生した蛍光(またはラマン散乱光)は、透過スペクトル測定時の光路と同じ光路を逆方向に進行して分光器17に入射する。いずれの光路を用いるかは、ミラー31およびミラー32によって切り替えることができる。分光器17の一方のスリットから入射した蛍光(またはラマン散乱光)は、分光されて分光器17の他方のスリットから出射する。蛍光スペクトル測定時には、分光器17の出射スリット17jが光入射側のスリットとなる。
【0030】
分光器17の光出射側には光検出器47が配置されており、分光器17から出射した蛍光は光検出器47に入射する。このようにして、蛍光スペクトルまたはラマンスペクトルを測定できる。感度の点を考慮すると光検出器47として光電子増倍管を用いることが好ましいが、試料の励起波長や蛍光が出現する波長域を考慮すると、他の原理に基づく検出器、例えばフォトダイオード等を用いてもよい。なお、蛍光およびラマン散乱光は、一般に励起光とは異なる波長となるため、分光器で励起光と蛍光(およびラマン散乱光)とを分離することができる。このため、これらのスペクトルを測定する場合には、出射スリット17jや視野絞り34を、透過・反射スペクトルを測定する場合よりも広げ、できるだけ多くの蛍光もしくはラマン光が分光器17、更には光検出器47に入射するようにしてもよい。
【0031】
以上のように、装置100は、透過スペクトルを測定するための第1の光学系として、凹面鏡15、分光器17、ミラー19、カセグレイン鏡20および21、視野絞り22、ミラー25といった光学素子を含む。また、反射スペクトルを測定する場合、第1の光学系は、上記光学素子に加えて、ミラー31、ミラー32、凹面鏡33、視野絞り34といった光学素子を含む。また、装置100は、蛍光スペクトルまたはラマンスペクトルを測定するための第2の光学系として、凹面鏡42、分光器44、ミラー25、視野絞り22、カセグレイン鏡20および21、ミラー19、分光器17などを備える。なお、反射スペクトルを測定するときの光路を用いる場合には、カセグレイン鏡20およびミラー19に代えて、ミラー31、ミラー32、凹面鏡33、視野絞り34が用いられる。このように、第1の光学系と第2の光学系とは、少なくとも、分光器17、カセグレイン鏡21、視野絞り22、ミラー25を共有する。
【0032】
第1の光学系の光路と第2の光学系の光路とは、一部において逆方向に重なっている。たとえば、図1の光路を進む光と図5の光路を進む光とは、分光器17~ミラー25までの光路を互いに逆方向に進行している。同様に、図3の光路を進む光と図4の光路を進む光とは、分光器17~ミラー25までの光路を互いに逆方向に進行している。この構成では、スペクトル(A)を測定するための光学系とスペクトル(B)を測定するための光学系とが、分光器やミラーなどの光学素子を共有するため、光学素子の数を減らすことができる。また、第1の光学系と第2の光学系とは、同じ位置(視野絞り22の位置および測定部分)で結像するように設定されている。この構成では、ミラー25および31とミラー32と光検出器47とを移動させるだけで、スペクトル(A)の測定とスペクトル(B)の測定とを簡単に切り替えることができるとともに、同じ部分のスペクトル(A)およびスペクトル(B)を簡単に測定できる。
【0033】
なお、図1~図5に示した装置は一例であり、本発明はこれに限定されない。装置に用いられている光学素子は、本発明の効果が得られる範囲内で省略・追加・変更してもよい。たとえば、カセグレイン鏡の代わりにレンズを用いてもよい。また、偏光子18および46は省略してもよい。ただし、これらの偏光子を用いることによって偏光モードで測定できるため、異方的な物質の配向度の評価などが可能となる。たとえば、カーボンナノチューブやなどの異方的な形状を有するナノ物質がミクロンオーダーで凝集しているような物質やポリマー膜について、カーボンナノチューブやポリマーの配向度などを評価できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の顕微分光測定装置は、さまざまな物質の分析に有効であり、特に、微小領域ごとに組成や結晶性などの物性が異なる物質の分析や微小な物質の分析に有効である。たとえば、多結晶や微結晶などの分析や、ミクロンオーダーのサイズを有する半導体デバイスの物性の評価に有用である。また、本発明の装置によれば、被測定物の透過スペクトルを測定してその物質の吸収ピークについての情報を得たのち、その吸収ピークを励起して蛍光スペクトルを測定することが可能である。そのため、本発明の装置によれば、物質の蛍光特性を効率的に評価できる。また、ラマン散乱を測定することによって、微小領域の化学組成、結晶構造、配向方向に関する評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の顕微分光測定装置の一例において、透過スペクトルを測定する方法を模式的に示す図である。
【図2】差分散型2重分光器の一例の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の顕微分光測定装置の一例において、反射スペクトルを測定する方法を模式的に示す図である。
【図4】本発明の顕微分光測定装置の一例において、蛍光スペクトルを測定する方法を模式的に示す図である。
【図5】本発明の顕微分光測定装置の一例において、蛍光スペクトルを測定する他の方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0036】
11 第1の光
12 ハロゲンランプ
13 重水素ランプ
14、31、32 ミラー
15、33、42 凹面鏡
16、43 チョッパー
17 分光器(共有される分光器)
18、46 偏光子
19 ミラー(第1のミラー)
20、21 カセグレイン鏡
22、34 視野絞り
23 三眼鏡筒
24 フィルター
25 ミラー(第2のミラー)
26、27 光検出器(第1の光検出器)
30 試料ステージ
41 第2の光
44 分光器
45 キセノンランプ
47 光検出器(第2の光検出器)
100 装置(顕微分光測定装置)
101 試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4