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明細書 :グラファイト酸化物層間への有機金属種の挿入方法、及びそれを用いる含炭素多孔体複合材料の合成

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4552022号 (P4552022)
公開番号 特開2005-330162 (P2005-330162A)
登録日 平成22年7月23日(2010.7.23)
発行日 平成22年9月29日(2010.9.29)
公開日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称 グラファイト酸化物層間への有機金属種の挿入方法、及びそれを用いる含炭素多孔体複合材料の合成
国際特許分類 C01B  31/04        (2006.01)
B01J  20/20        (2006.01)
FI C01B 31/04 101Z
B01J 20/20 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2004-151471 (P2004-151471)
出願日 平成16年5月21日(2004.5.21)
審査請求日 平成18年12月14日(2006.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】王 正明
【氏名】楚 英豪
【氏名】山岸 美貴
【氏名】廣津 孝弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特開2003-192316(JP,A)
山崎恵美, 松尾吉晃, 福塚友和, 杉江他曾宏,交換法による鉄錯体の酸化黒鉛への導入,炭素材料学会年会要旨,2002年12月 4日,Vol.29th,Page.290-291
王正明, 星野尾恭美子, 獅々堀和代, 加納博文,大井健太,ナノポ-ラス炭素/シリカ複合体の合成,炭素材料学会年会要旨集,2002年12月 4日,Vol.29th,Page.306-307
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を添加し、これらを機械的に攪拌して反応させて、層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法であって、使用する金属又は半金属酸化物前駆体の量を、グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])に対する金属又は半金属酸化物前駆体の量がモル比で22以下となるようにしたことを特徴とするグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法。
【請求項2】
使用する金属又は半金属酸化物前駆体の量が、グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])に対する金属又は半金属酸化物前駆体の量がモル比で1~22である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する金属又は半金属酸化物前駆体の量が、グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])に対する金属又は半金属酸化物前駆体の量がモル比で5~22である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属又は半金属酸化物前駆体が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及び鉄の中から選ばれた少なくとも1種の金属又は半金属の化合物である請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
金属又は半金属酸化物前駆体が、テトラエトキシシランである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体が、長鎖有機アミン、長鎖界面活性剤、又は長鎖アルコール等を用いて層間を予備拡張したものである請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を添加し、これらを機械的に攪拌して反応させる方法である請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の方法で製造されたグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体が導入されたグラファイト酸化物層状体を、不活性雰囲気中で焼成して安定なピラーを含む含炭素多孔質複合材料を製造する方法。
【請求項9】
焼成温度が、不活性雰囲気中、500~700℃である請求項8に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法において、使用する金属又は半金属酸化物前駆体の量が、モル数で当該グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])の22モル以下であることを特徴とするグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法、及びこの方法で製造されたグラファイト酸化物をさらに焼成して含炭素多孔質複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、モンモリロナイトのような層状粘土について、その層間にアルミナ、ジルコニア、酸化クロム、酸化チタン、SiO-TiO、SiO-Fe、Al-SiOなどをインターカレーションして層間架橋多孔体を形成させることが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
炭素性の層状物質としては、グラファイトがよく知られているが、グラファイトは、面内炭素原子間距離0.142nm、層面間距離0.335nmの異方性の強い層状構造を有する物質である。このような強い異方性は、その反応性に大きな影響を与え、面内の結合を攻撃するような反応は進行しにくいが、層間を拡張しながら反応物質を挿入する反応、いわゆるインターカレーションを起しやすく、これによりグラファイト層間化合物を形成する。
しかし、グラファイトが層状粘土と同様に層状構造を有するにもかかわらず、アルカリ金属やハロゲンなどの比較的小さな分子とグラファイト層間化合物しか形成することができず、その比較的大きな表面積を有する多孔体を形成しないのは、層間距離が小さく、しかもグラファイト層間化合物のようにサンドイッチ構造をとっているためと考えられている。このように、グラファイト或いはグラファイト層間化合物は、大きい表面積の多孔体を構成しないし、後続の加熱処理により架橋を形成しようとしても、それが崩壊して安定した孔を形成することは困難であった。
【0004】
ところで、本発明者らは、グラファイトを酸化して得たグラファイト酸化物をアルカリ中に分散し、或いは予め長鎖有機イオンで層間を拡張し、続いて金属或いは半金属酸化物のような硬い架橋剤を導入することにより、高表面積の含炭素多孔体複合材料を合成できることを報告してきた(特許文献1~3参照)。しかし、層間予備拡張したグラファイト酸化物から含炭素多孔体複合材料を合成するにはこれを大量の有機金属種或いは有機金属種の有機溶媒溶液中で長期間を経て処理する必要があった。これらの液相方法は大量な有機金属種が必要とする経済性の問題や合成時間がかなりかかる等の欠点があった。
【0005】

【特許文献1】特開2003-192316号
【特許文献2】特願2002-381293号明細書
【特許文献3】特願2003-4964号明細書
【非特許文献1】「表面」、第27巻、第4号(1989年)、第290~300頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長鎖有機アミン、長鎖界面活性剤、或いは長鎖アルコール等を用いて層間予備拡張をしたグラファイト酸化物の層間へ安定なピラー構造を形成することができる金属又は半金属酸化物前駆体を挿入するための経済的でかつ簡便な方法を提供し、そこから新規な含炭素多孔体複合材料を合成することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、グラファイト酸化物層状体を長鎖有機アミン、長鎖界面活性剤、又は長鎖アルコール等を用いて層間を予備拡張をし、続いて金属又は半金属酸化物のような硬い架橋剤を導入することにより、表面積の大きな含炭素多孔体複合材料を合成できることを報告してきた(特許文献1~3参照)。しかし、層間を予備拡張したグラファイト酸化物から含炭素多孔体複合材料を合成するには、大量の有機金属種又は有機半金属種を有機溶媒中で長期間、通常は7日以上の処理が必要であった。この方法は処理時間が長いだけでなく、後処理も煩雑であり、収率も十分ではなかった。さらに、このようにして得られた含炭素多孔体複合材料の比表面積も必ずしも十分でなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、グラファイト酸化物層状体を、より少量の有機金属種又は有機半金属種を用いて、メカニカル的に両者を均一的に混合させることで、効率的に、かつ短時間で有機金属種をグラファイト酸化物の層間に挿入できることを見出した。さらに、この方法で得られた有機金属種挿入グラファイト酸化物は規則的な層状構造を保っており、有機金属種又は有機半金属種の仕込み量の増加に伴い、層間距離が次第に増大する結果となり、従来の方法で得られた生成物とは異なった。また、この方法で得られた有機金属種挿入グラファイト酸化物を炭化等の後処理をすることにより、表面積1000m/g以上の含炭素多孔体複合材料を恒常的に合成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法において、使用する金属又は半金属酸化物前駆体の量が、モル数で当該グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])の22モル以下で、必要により好ましくは層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、金属又は半金属酸化物前駆体を添加し、これらを機械的に攪拌して反応させることを特徴とするグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法、及びこの方法により製造され得るグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体が導入されたグラファイト酸化物層状体に関する。
また、本発明は、前記した本発明の方法で製造されたグラファイト酸化物層状体の層間に金属又は半金属酸化物前駆体が導入されたグラファイト酸化物層状体を、不活性雰囲気中で焼成して安定なピラーを含む含炭素多孔質複合材料を製造する方法、及びこの方法により製造され得る含炭素多孔質複合材料に関する。
【0009】
本発明において基材として用いられるグラファイト酸化物層状体は、例えばグラファイトを濃硫酸と硝酸との混合液中に浸し、塩素酸カリウムを加え、反応させるか、或いは濃硫酸と硝酸ナトリウムの混合液中に浸し、過マンガン酸カリウムを加え、反応させることにより調製される。これらの処理によりグラファイトの炭素原子は、sp2状態からsp3状態に変化し、いわゆるベンゼン環を形成している炭素原子のような状態から飽和の脂肪族の炭素原子の状態に変化し、これらの変化した炭素原子に酸素原子や水素原子などが結合して、層間に酸素原子を導入することができる。このようにして製造されたグラファイト酸化物層状体の層間距離は、通常0.6~1.1nm程度である。
このようにして製造されたグラファイト酸化物層状体に、よく知られている粘土層間架橋多孔体を製造する方法と同様にして、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及び鉄の中から選ばれた少なくとも1種の金属又は半金属の化合物からなるピラーを形成させて、多孔質グラファイト複合材料を製造することができる。
【0010】
このような多孔質グラファイト複合材料を製造するためには、グラファイト酸化物の層間を予備拡張することが重要であり、層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体としては、長鎖有機アミン、長鎖界面活性剤、又は長鎖アルコール等を用いて層間を予備拡張したものが挙げられる。例えば、特許文献1には層間拡張用イオンとして、次の一般式(1)、
[R-NR (1)
(式中、Rは炭素数8~20の長鎖アルキル基、R、R及びRはそれぞれ炭素数1~3のアルキル基であって、この中の1個はRと同じであってもよい。)で表わされる長鎖アルキル基をもつ第四級アンモニウム陽イオンの使用が記載されている。
また、次の一般式(2)
NR (2)
(式中、R、R及びRの中の少なくとも1個は炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、残りは水素原子である。)
で表わされる有機アミンのような分子も同じように層間を拡張するために用いることができることが記載され、このような有機アミンとしては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ビリジン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリンなどがあることも記載されている。
そして、このような層間拡張用イオン又は分子の導入は、例えばアルカリ水溶液中でグラファイト酸化物層状体にその質量に基づき、8~36.0倍量の層間拡張用イオン又は分子を加え、室温から90℃までの範囲の温度で15~60分間反応させることによって行われることが記載されている。
【0011】
また、これらの層間予備拡張方法を有機溶媒が介在する条件で固相において長鎖アルキル基を有するアミンをグラファイト酸化物と反応させることにより、グラファイト酸化物の層間にこれらのアミンをインターカレーションさせることもできる(特許文献3参照)。この方法に使用される長鎖有機アミンとしては、鎖長が炭素数で8以上の炭素鎖を有する炭化水素基を有する有機アミンであり、好ましくは炭素数が8~40、炭素数8~30、又は炭素数8~20の鎖状又は環状のアルキル基を有する有機アミンが挙げられる。これらのアルキル基は鎖長が炭素数で8以上の炭素鎖を有するものであれば、直鎖状であっても分枝状であってもよく、また途中に炭素環が形成されていてもよい。本発明の有機アミンは、少なくとも1個の有機基が炭素数で8以上の炭素鎖を有するものであれば、第1級アミンでも第2級アミンでも第3級アミンでもよいが、入手のし易さや、形成された層の均一性などの点から、第1級アミンが好ましい。長鎖有機アミンの好ましい例としては、より具体的には、例えば、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコシルアミンなどが挙げられる。
【0012】
この方法における、グラファイト酸化物層状体(GO)と長鎖有機アミンとの混合は有機溶媒などを用いてGOが固相のままで、両者を乳鉢などで機械的に混合する方法によって行うことができる。使用する長鎖有機アミンが常温で液体状のものであっても、固体状のもの(例えば、炭素数14以上の脂肪族飽和アミン)であっても可能である。より具体的には、両者を混合した後、有機溶媒を添加して、更に乳棒でかき混ぜて液体を吸収したGO或いは、固相の混合物を均一混合・反応させ、有機溶媒を蒸発させるなどにより除去する。これらの操作を、1~5回、好ましくは2~3回繰り返す。この際に使用される有機溶媒としては、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族飽和炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素などの炭化水素が挙げられる。
この方法によれば、グラファイト酸化物の炭素の層間距離は、使用する長鎖有機アミンの炭素鎖の長さ、及び濃度に依存して拡大される。また、使用する有機アミンの炭素数が8の場合であっても、層間距離が通常のグラファイト酸化物の層間距離(0.62nm)の2倍以上に拡大される。このように長鎖有機アミンにより簡便にグラファイト酸化物の層間距離を大きく拡大されること、即ち通常の2倍(1.24nm)以上、好ましくは3倍(1.86nm)以上に拡大された新規なグラファイト酸化物層状体を提供することができる。
【0013】
そして、このようにして層間距離が拡大されたグラファイト酸化物層状体に、更に金属又は半金属酸化物前駆体を導入して、金属又は半金属の化合物を主体とする安定なピラーを形成され、かつ層間距離が拡大された多孔質グラファイト複合材料を製造する。この方法は、従来グラファイト酸化物層状体の質量の20~100倍量、好ましくは40~80倍量の金属又は半金属酸化物前駆体を用いて、7日以上反応させることにより行われてきた。しかし、この方法では、多量の原料を必要とするだけでなく、反応時間も長く、そして、グラファイトの層間の規則性を保持させることが困難でもあった。
【0014】
本発明者らは、より少量の金属又は半金属酸化物前駆体を用いて、有機溶媒の存在下又は非存在下に機械的に攪拌することにより、短時間で規則性の高い含炭素多孔体複合材料を合成できることを見出した。
本発明の方法において、使用される金属又は半金属酸化物前駆体としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及び鉄の中から選ばれた少なくとも1種の金属又は半金属の化合物、すなわち含ケイ素化合物、含アルミニウム化合物、含チタン化合物、含ジルコニウム化合物、含鉄化合物などが挙げられる。これらの化合物の1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできるが、通常は1種類を使用するのが好ましい。好ましい例としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾルやシリカ-チタニアゾル、シリカ-酸化鉄ゾル、アルミナ-シリカゾルのような混合ゾルなどが挙げられる。また、他の好ましい例としては、ケイ酸、アルミン酸、チタン酸及びジルコン酸の中から選ばれた金属又は半金属の無機多塩基酸と低級アルコールとのエステル、例えば、炭素数1~4のアルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールとのエステルが挙げられ、より具体的には、例えばケイ酸テトラエチル、アルミン酸トリエチル、チタン酸テトラエチル、ジルコン酸テトラエチルなどが挙げられる。また、所望ならばこの中のアルコキシル基の一部がアルキル基になっている部分エステルも用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明の方法において、使用される金属又は半金属酸化物前駆体の量は、モル数でグラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量(以下、[H]と略す。)の22モル以下、1~22モル、又は19モル以下、1~19モルが挙げられる。また、後処理後の比表面積の点からは、1~22モル、1~19モル、好ましくは5~22モル、5~19モル、より好ましくは5~15モルが挙げられる。
ここで、グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])は、酸化した後のグラファイトの層状体(GO)における交換可能な水素イオンの容量(モル)であり、例えば、グラファイト酸化物層状体(GO)を水酸化ナトリウムで処理して、ナトリウムイオンに交換にした後、これを塩酸などの酸で滴定して決定することができる。グラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])の値は、使用するグラファイトや酸化方法などにより異なるが、例えば後記する実施例において製造されたグラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量([H])は、4.92mmol/gであった。このグラファイト酸化物層状体(GO)を1000g使用した場合には、そのイオン交換容量([H])は4.92モルであるから、これに対して4.92×22モル以下の金属又は半金属酸化物前駆体を使用すればよいことになる。
【0016】
金属又は半金属の化合物を主体とする安定なピラーを形成させるためには、前記した方法により金属又は半金属酸化物前駆体を導入した後、50~70℃で乾燥し、次いで不活性雰囲気中、500~700℃において2~8時間加熱処理するのが好ましい。当該加熱処理により、それぞれ金属又は半金属の酸化物や、これらの混合酸化物からなる安定なピラーを含む多孔質複合材料が得られる。上記の無機多塩基酸のエステルは、加水分解されるか後続の加熱処理により分解して、層間を支持しうる強度をもつ安定な化合物、すなわち固体状の含ケイ素化合物、含アルミニウム化合物、含チタン化合物、含ジルコニウム化合物を生成するものであればどのようなものでもよい。
【0017】
次に本発明の方法をより具体的に説明するが、本発明の方法はこれらの具体的な方法に限定されるものではない。
シュタウデンミール(Staudenmier)の方法(L.Staudenmier, Ber. Dtsch. Chem. Ges., 31, 1481 (1898))により、グラファイト酸化物層状体(GO)(化学組成式: C6.03.9,イオン交換容量:4.92mmol/g)を製造した。これをヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いて層間を予備拡張したグラファイト酸化物層状体(以下、GOC16という。)を製造した(特許文献1参照)。
これに、テトラエトキシシラン(TEOS)を、GOのイオン交換容量([H])に対して、モル数で6モル(5mL)になるように加え、直ちに数回機械的に攪拌し混合した。反応時間は1日で目的のTEOSが挿入されたグラファイト酸化物層状体(以下、GOC16Sという。)が得られた。
次の表1に、同様な比表面積値を得るために必要とする消費TEOS量及び合成時間を、従来の方法(従来法)と本発明の方法(本法)を比較して示す。
【0018】
【表1】
JP0004552022B2_000002t.gif

【0019】
本発明の方法により、消費TEOS量が1/10以下に減少し、合成時間が1/7以下に短縮し、高収率で多孔性複合体が得られることがわかった。
【0020】
また、前記のようにして製造された層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体(GOC16)に、テトラエトキシシラン(TEOS)を、GOのイオン交換容量([H])に対して、モル数で1モル、3モル、6モル、9モル、9.7モル、12モル、15モル、及び22モルになるように加え、直ちに数回機械的に攪拌し混合した。得られたTEOSが挿入されたグラファイト酸化物層状体(GOC16S)のXRDパターンを図1に示す。図1のグラフの横軸は2θを示し、縦軸は強度(Intensity)を示す。グラフ中の一番下は層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体(GOC16)を示し、その上は順にTEOSが3モル、6モル、9モル、9.7モル、12モル、15モル、及び22モル加えられたものを示す。図1の2θが5°以下の部分において、当該モル数が15モルまでのものは極めて整然としたチャートになっているが、当該モル数が22モルではその整然さが少し失われてきているのがわかる。この結果、本発明の方法により、界面活性剤で予備拡張されたグラファイト酸化物(GOC16)の層間へTEOSをインタカレーションさせた後でも、規則的層構造が保持されたこと、また、TEOSの仕込み量が増加するに従い、層間距離が次第に増加し、TEOSのモル数/イオン交換容量([TEOS]/[H])=22を越えると、構造が無秩序化していくことがわかった。
【0021】
さらに、前記した方法で得られたGOC16Sを空気中に一日放置した後、823Kで真空焼成を行い、多孔性複合体(以下、GOC16S-823Kという。)を得た。これらのGOC16S-823KのSiO含有量(重量%)を測定した。結果を図2のグラフに示す。図2のグラフの横軸は仕込みTEOSのモル数/イオン交換容量([TEOS]/[H])を示し、縦軸はSiO含有量(重量%)を示す。この結果、シリコン含有量がTEOS仕込み量の増加と共に次第に増加し、ある値以上では一定になることがわかった。また、GOC16S-823Kの比表面積を測定したところ、BET比表面積は約1030m/gにも達していることがわかった。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、少量の金属又は半金属酸化物前駆体を用いて層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体に、当該金属又は半金属酸化物前駆体を導入する方法を提供するものであり、本発明の方法によれば、高価な金属又は半金属酸化物前駆体の使用量を少なくすることができるだけでなく、後処理も簡便となり、さらに金属又は半金属酸化物前駆体に対する収率を飛躍的に向上させることができ、かつ反応時間を短縮することができる。また、本発明の方法で製造された金属又は半金属酸化物前駆体が挿入されたグラファイト酸化物層状体から、比表面積の極めて大きな金属又は半金属の化合物を主体とする安定なピラーが形成された含炭素多孔体複合材料を、効率的にかつ安定して製造することができる。また、本発明は、本発明の方法により、比表面積の極めて大きな金属又は半金属の化合物を主体とする安定なピラーが形成された含炭素多孔体複合材料を提供するものである。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
GOC16の製造
グラファイト酸化物層状体(GO)は、シュタウデンミール(Staudenmier)の方法(L.Staudenmier, Ber. Dtsch. Chem. Ges., 31, 1481 (1898))により製造した。製造されたグラファイト酸化物層状体(GO)の化学組成式(吸着水量を含む)は、C6.03.9であった。
このグラファイト酸化物層状体(GO)の50mgに、10mLの0.1M NaCl及び0.1M NaOHの混合液を加え、25℃で一週間振動させた後、イオン交換されたグラファイト酸化物層状体(GO)を取り出し、脱イオン水で洗浄した後、酸塩基滴定した。その結果、このグラファイト酸化物層状体(GO)のイオン交換容量は、4.92mmol/gであった。
特許文献1に記載の方法にしたがって、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いて層間を予備拡張したグラファイト酸化物層状体(GOC16)を製造した。
【実施例2】
【0025】
GOC16Sの製造
実施例1で製造された層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体(GOC16)1068mgに、テトラエトキシシラン5mL(4.65mg)を入れ([TEOS]/[H]=6の条件に相当)、直ちに乳鉢で数回攪拌混合した後、1日放置して、ケイ酸テトラエチルが層間に挿入された層間化合物を得た。
比較のためにテトラエトキシシラン63mL(58.6mg(0.281mmol))を用いて反応させた。反応終了までに7日を要した後、生成した固体を遠心分離し、エチルアルコール10mlで1回洗浄したのち、大気中に24時間放置し、さらに空気中60℃で12時間乾燥させることにより、ケイ酸テトラエチルが層間に挿入された層間化合物を得た。
これらの結果をまとめて、表1に示す。この結果、本発明の方法により消費TEOS量が1/10以下減少し、合成時間が1/7以下短縮し、高収率的に多孔性複合体を得られることがわかった。
【実施例3】
【0026】
GOC16Sの製造
実施例1に記載の方法により製造したGOC16の40mgを乳鉢中に入れ、これにピペットでテトラエトキシシランモル数(略称:[TEOS])対GOイオン交換容量(略称:[H])の比が1モル(31.2μL)、3モル(93.6μL)、6モル(187.2μL)、9モル(280.8μL)、9.7(302.6μL)、12モル(374.4μL)、15モル(468μL)、22モル(686.4μL)に等しくなるように、所定容積のTEOSを固体上に加え、直ちに乳鉢で数回攪拌混合して、1日放置して、ケイ酸テトラエチルが層間に挿入されたそれぞれの層間化合物を得た。
得られたTEOS挿入層間化合物(総称:GOC16S)のそれぞれのXRDパターンを図1に示す。
【実施例4】
【0027】
安定なピラーが形成された含炭素多孔体複合材料の製造
実施例3で製造されたGOC16Sを空気中に一日放置した後、823Kで真空中で焼成したて、多孔性複合体(GOC16S-823K)を得た。
図2に、GOC16S、及びGOC16S-823KのSiO含有量(重量%)とTEOS仕込み量との関係を示す。また、BET比表面積は約1030m/gに達していた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、従来の活性炭のような多孔質炭素材料に比べ、より緩和な条件下ではるかにち密な細孔をもち、しかも安定な多孔質グラファイト複合材料を簡便に製造する方法するものであり、このような多孔質グラファイト複合材料は、吸着剤、触媒、触媒担体などとして利用し得る上に、メタンのような炭化水素燃料の貯蔵材料としても好適である。したがって、本発明の方法及び本発明の方法で製造された多孔質グラファイト複合材料は産業上極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の方法で製造されたテトラエトキシシラン(TEOS)が挿入されたグラファイト酸化物層状体(GOC16S)のXRDパターンを示す。図1のグラフの横軸は2θを示し、縦軸は強度(Intensity)を示す。グラフ中の一番下は層間が予備拡張されたグラファイト酸化物層状体(GOC16)を示し、その上は順にTEOSが3モル、6モル、9モル、9.7モル、12モル、15モル、及び22モル加えられたものを示す。
【図2】図2は、本発明の方法で製造されたGOC16Sを823Kで焼成して製造された多孔性複合体(GOC16S-823K)のSiO含有量(重量%)の測定結果を示すグラフである。図2のグラフの横軸は仕込みTEOSのモル数/イオン交換容量([TEOS]/[H])を示し、縦軸はSiO含有量(重量%)を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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