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明細書 :光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4215687号 (P4215687)
公開番号 特開2006-022046 (P2006-022046A)
登録日 平成20年11月14日(2008.11.14)
発行日 平成21年1月28日(2009.1.28)
公開日 平成18年1月26日(2006.1.26)
発明の名称または考案の名称 光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法
国際特許分類 C07C 231/12        (2006.01)
C07C 233/47        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 231/12
C07C 233/47
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2004-202010 (P2004-202010)
出願日 平成16年7月8日(2004.7.8)
審査請求日 平成17年10月31日(2005.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】山下 恭弘
【氏名】森 雄一朗
【氏名】中村 昌幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】福島 芳隆
参考文献・文献 特開2004-285059(JP,A)
特開2002-356454(JP,A)
特開2001-252568(JP,A)
Journal of the American Chemical Society,2002年,Vol.124, No.13,p.3292-3302
Journal of the American Chemical Society,2000年,Vol.122, No.22,p.5403-5404
調査した分野 C07C 231/12
C07C 233/47
C07B 53/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(I)
【化1】
JP0004215687B2_000012t.gif
(ただし、R1アルキル基、ビニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアルコキシ基である)
で表されるアルデヒド化合物と、次式(II)
【化2】
JP0004215687B2_000013t.gif
(ただし、2はトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、tert-ブトキシ基、またはトリクロロエトキシ基であり、R3~R5は同一または別異に炭素数1~4のアルキル基である
で表されるケイ素エノラートを、ジルコニウム化合物と次式(IVa)または(IVb)
【化3】
JP0004215687B2_000014t.gif
(ただし、XおよびYは、同一又は別異に水素原子またはハロゲン原子である)
で表されるいずれかの光学活性ビナフトール化合物を含んでなるキラルジルコニウム触媒の存在下で反応し、次式(IIIa)または(IIIb)
【化4】
JP0004215687B2_000015t.gif
(ただし、R1~R4は前記のものである)
で表されるいずれかのβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を得ることを特徴とする光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を合成するための方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、天然物や生物活性物質の合成中間体として有用なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を、高いsyn選択性および光学純度で製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
β-ヒドロキシ-α-アミノ酸は、生物活性物質や天然物質等に含まれる重要成分である。例えば、バンコマイシン系抗生物質にはエリスロ-およびスレオ-β-アリール-セリン構造が存在し、抗菌剤として注目されるsphingofunginには、β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位が存在することが知られている。また、β-ヒドロキシ-α-アミノカルボニル化合物は、2-アミノ-1,3-ジオール、β-ラクタム、アジリジン等の合成中間体として使用されている。
【0003】
β-ヒドロキシ-α-アミノ酸の不斉合成方法としては、アルデヒドとグリシン誘導体のアルドール反応が知られている。具体的には、ルイス酸触媒を用いた不斉合成により、β-ヒドロキシ-α-アミノ酸の前駆体である2-オキサゾリン-4-カルボキシレートを得る方法(非特許文献1~3)や、グリシンシッフ塩基を用いてβ-ヒドロキシ-α-アミノカルボニル化合物を得る方法が報告されている(非特許文献4~6)。
【0004】
しかし、これらの方法は、いずれも、基質一般性に欠ける等の問題点を有し、実用的な合成法としてのレベルに達していないのが実情である。
【0005】
このような事情を鑑みて、この出願の発明者らは、これまでに、アルデヒドとグリシン由来のケイ素エノラートをキラルジルコニウム存在下でアルドール反応させることにより、anti選択的にβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸エステル類が得られることを見出し、報告している(例えば、特許文献1)。しかし、高syn選択的に光学純度の高いβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を得る方法については明らかにされていなかった。

【非特許文献1】Tetrahedron 1988, 44, 5253.
【非特許文献2】J. Org. Chem. 1999, 64, 7040.
【非特許文献3】Angew. Chem., Int. Ed. 2001, 40, 1884.
【非特許文献4】Tetrahedron Lett. 1999, 40, 3843.
【非特許文献5】Tetrahedron 2002, 58, 8289.
【非特許文献6】Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 4542.
【非特許文献7】Synthesis 1988, 127.
【非特許文献8】J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 3292.
【特許文献1】特願2004-059897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、高いsyn選択性と光学純度でβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を製造するための方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして次式(I)
【0008】
【化5】
JP0004215687B2_000002t.gif
(ただし、R1アルキル基、ビニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアルコキシ基である)
で表されるアルデヒド化合物と、次式(II)
【0009】
【化6】
JP0004215687B2_000003t.gif
(ただし、2はトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、tert-ブトキシ基、またはトリクロロエトキシ基であり、R3~R5は同一または別異に炭素数1~4のアルキル基である
で表されるケイ素エノラートを、ジルコニウム化合物と次式(IVa)または(IVb)
【0010】
【化7】
JP0004215687B2_000004t.gif
(ただし、XおよびYは、同一又は別異に水素原子またはハロゲン原子である)
で表されるいずれかの光学活性ビナフトール化合物を含んでなるキラルジルコニウム触媒の存在下で反応し、次式(IIIa)または(IIIb)
【0011】
【化8】
JP0004215687B2_000005t.gif
(ただし、R1~R4は前記のものである)
で表されるいずれかのβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を得ることを特徴とする光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法では、反応基質として、式(I)で表されるアルデヒド化合物と、式(II)で表されるN-アシル-N-アルキルグリシンエステル由来のケイ素エノラートを用い、キラルジルコニウム触媒下で反応することにより、不斉アルドール反応が進行し、高いsyn選択性と光学純度でβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸が得られる。
【0015】
また、キラルジルコニウム触媒として、ジルコニウム化合物と式(IVa)または(IVb)で表される光学活性ビナフトール化合物を含んでなるものを使用することにより、不斉アルドール反応が進行し、対応する光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体が高いsyn選択性と光学純度で得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0017】
この出願の発明の光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸の製造方法では、反応基質として、次式(I)
【0018】
【化9】
JP0004215687B2_000006t.gif
で表されるアルデヒド化合物と、次式(II)
【0019】
【化10】
JP0004215687B2_000007t.gif
で表されるケイ素エノラートを、キラルジルコニウム触媒の存在下で反応することにより、次式(IIIa)または(IIIb)
【0020】
【化11】
JP0004215687B2_000008t.gif
で表される光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体を得るものである。
【0022】
式(I)におけるR1は、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、ビニル、アリル等のアルケニル基、エチニル、2-プロピニル等のアルキニル基、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基、フリル、ピリジル、イミダゾリル等のヘテロ環基、またはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基である。
【0023】
式(II)における2はトリフルオロメチル、ベンジルオキシ、tert-ブトキシ、またはトリクロロエトキシ基であり、3~R5は、同一または別異に炭素数1~4のアルキル基である。
【0024】
この出願の発明の光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法において使用されるキラルジルコニウム触媒は、Zr(OR)4(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表す)で表されるジルコニウムアルコキシドと、次式(IVa)または(IVb)
【0026】
【化12】
JP0004215687B2_000009t.gif
で表される光学活性ビナフトール化合物を含んでなるキラルジルコニウム触媒が用いられる。式(IVa)の光学活性ビナフトールを使用した場合には、前記の式(IIIa)の光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体が得られ、式(IVb)の光学活性ビナフトールを使用した場合には、前記の式(IIIb)の光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体が得られる。なお、式(IVa)および(IVb)において、XおよびYは、同一または別異に水素原子またはハロゲンを表す。
【0027】
この出願の発明の光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体の製造方法において、使用される反応基質の濃度や割合、キラルジルコニウム触媒の濃度、反応溶媒、反応温度、反応時間、反応雰囲気等はとくに限定されない。例えば、アルデヒド化合物とケイ素エノラートを0.1:1~1:0.1(モル比)とし、キラルジルコニウム触媒におけるジルコニウム化合物を反応基質に対して1~40モル%、光学活性ビナフトール化合物を反応基質に対して1~50モル%とすることが考慮される。また、溶媒としては、トルエン等の炭化水素、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等を単独で、あるいは混合溶媒として使用できる。さらに、反応系に水やアルコール類などのプロトン性溶媒を計算量添加することで収率や立体選択性を向上させることも可能である。反応は、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下で行っても、大気や空気中で行ってもよく、反応温度は、-80~50℃程度の範囲が考慮される。
【0028】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
〔準備〕
ベンズアルデヒド(i)は東京化成工業(株)より購入し、蒸留精製したものを使用した。また、ケイ素エノラート(ii)は、公知の方法により合成したものを使用した(非特許文献7)。さらに、(R)-3,3',6,6'-テトラヨード-1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジオール(以下、(R)-3,3',6,6'-I4BINOLと記載する)は、従来法により合成して使用した(非特許文献8)。ジルコニウムテトラ-tert-ブトキシド(以下、Zr(OtBu)4と記載する)は、(株)トリケミカル研究所より購入した。トルエンは蒸留し、MS 4A上で乾燥して使用した。tert-ブチルメチルエーテル(以下、tBuOMeと記載する)は、蒸留後、ナトリウム上で乾燥して使用した。1-プロパノールは、マグネシウムプロポキシド下で蒸留し、MS 4A上で乾燥して使用した。
【0030】
〔方法〕
次の反応式(A)に従って、メチル 3-ヒドロキシ-2-メチルトリフルオロアセチルアミノ-3-フェニルプロピオネート(化合物a)を合成した。
【0031】
【化13】
JP0004215687B2_000010t.gif
(R)-3,3',6,6'-I4BINOL(0.024 mmol)のトルエン(0.20 mL)分散液に、室温下、Zr(OtBu)4(0.020 mmol)のトルエン(0.50 mL)溶液を加え、3時間攪拌した。次いで、1-プロパノール(0.60 mmol)とH2O(0.020 mol)のトルエン(0.30 mL)溶液を加え、さらに室温で1時間攪拌した。
【0032】
反応溶液を-20℃まで冷却した後、ベンズアルデヒド(0.20 mmol)のtBuOMe(0.30 mL)溶液を加え、ケイ素エノラート(ii)(0.30 mmol)のtBuOMe(0.70 mL)溶液を8時間かけてゆっくりと加えた。
【0033】
得られた反応溶液を4時間攪拌し、0.5 M KHSO4(10 mL)水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチル(10 mL)を添加し、有機層を分離して水層を酢酸エチル(10 mL×2回)で抽出した。
【0034】
有機層を回収し、飽和NaHCO3水溶液と食塩水で洗浄した後、Na2SO4上で乾燥し、ろ過および減圧下での濃縮の後、粗生成物を得た。
【0035】
粗生成物のTLC(Wakogel B-5F;和光純薬(株))においてシリルエーテル構造が確認された場合には、粗生成物をTHF-1N HCl(20:1)により0℃で1時間処理した。溶液をさらに飽和NaHCO3により塩基性とした後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を回収し、食塩水で洗浄した後、Na2SO4上で乾燥した。ろ過および減圧下での濃縮の後、粗生成物をSlica gel 60(Merck)を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、化合物(a)を得た。
【0036】
化合物(a)の同定結果を表1に示した。
【0037】
なお、IRスペクトルは、JASCO FT/IR-610赤外スペクトロメーターを用いて、1Hおよび13C NMRは、JEOL JNM-LA300, JNM-LA400, JNM-LA500スペクトロメーターにより、溶媒をCDCl3として測定した。1H NMRの内部標準(δ= 0)はテトラメチルシラン(TMS)とし、13C NMRの内部標準(δ= 77.0)はCDCl3とした。ジアステレオマー比は1H NMRにより求めた。
【0038】
また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、SHIMADZU LC-10AT(液体クロマトグラフ)、SHIMADZU SPD-10A(UV-VIS検出器)、およびSHIMADZU C-R6AまたはC-R8Aクロマトパックを用いて実施した。
【0039】
さらに、質量分析は、SHIMADZU GCMS-QP5050Aを用いて、高分解能質量分析は、JEOL JMS-SX 102を用いて実施した。
【0040】
【表1】
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【0041】
このような反応により、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸が、高いsyn選択性および光学純度で得られることが確認された。