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明細書 :ケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4528898号 (P4528898)
公開番号 特開2006-036666 (P2006-036666A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成18年2月9日(2006.2.9)
発明の名称または考案の名称 ケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤
国際特許分類 A61K  31/728       (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  37/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C08B  37/08        (2006.01)
FI A61K 31/728
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 17/00
A61P 37/00
A61P 37/04
A61P 37/08
A61P 43/00 111
C08B 37/08 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2004-216995 (P2004-216995)
出願日 平成16年7月26日(2004.7.26)
審査請求日 平成18年9月1日(2006.9.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】304031427
【氏名又は名称】愛知県
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】神奈木 玲児
【氏名】宮崎 敬子
【氏名】京ケ島 守
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】福井 悟
参考文献・文献 特開2000-102362(JP,A)
特開2000-136138(JP,A)
国際公開第02/074318(WO,A1)
国際公開第03/033004(WO,A1)
特開2004-083539(JP,A)
特表平11-500742(JP,A)
調査した分野 C08B 1/00-37/18
A61K 31/33-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
重量平均分子量が20,000~40,000であるヒアルロン酸又はその塩を有効成分とするケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤。
【請求項2】
in vitroにおいてCCR10を誘導するための試薬である、請求項1記載のケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤
【請求項3】
リンパ系細胞を重量平均分子量が20,000~40,000であるヒアルロン酸又はその塩を添加した培地中で培養し、該培養細胞のケモカイン受容体CCR10の発現を誘導する方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤及びCCR10発現不全疾患の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは白血球走化、活性化作用を持つ分子であり、その受容体(ケモカイン受容体)は白血球側にある。受容体を介してケモカインの刺激をうけた白血球は、遊走し、その機能を必要とされる場所で、免疫監視機構等の重要な役割を果たす。従来、一部のケモカインの末端アミノ酸を一部修飾することで受容体に対する拮抗作用を示す物質が報告されている(非特許文献1等)。
一方、ヒアルロン酸は皮膚、筋肉、眼の硝子体、血管等の主要成分であるが、これら組織が損傷を受けた場合に、ヒアルロン酸が低分子化し、ケモカインの一種であるIL-8を誘導することが知られている(非特許文献2)。
更に、扁平上皮とリンパ球の接着が、扁平上皮細胞側に存在するヒアルロン酸によって媒介され、この接着が起こるとリンパ球側にCCR10の発現が誘導されることが解明されている(非特許文献3)。また、ケモカイン受容体CCR10は、皮膚等の炎症に関連してケモカインCCL27等と相互作用することが知られている(非特許文献4)。
更に、4~60糖のヒアルロン酸オリゴマーが細胞障害抑制剤や細胞・組織保護剤として有用であること(特許文献1)、2~80の二糖単位からなるヒアルロン酸がT細胞活性を阻害し免疫抑制剤として使用され得ること(特許文献2)、重量平均分子量70万~110万のヒアルロン酸が自己免疫性肝炎等の処置剤として使用され得ること(特許文献3)、平均分子量80万~400万のヒアルロン酸が皮膚疾患の治療に使用され得ること(特許文献4)等が報告されている。
【0003】

【非特許文献1】ケモカインと基礎 その基礎と臨床 茆原順一編 医薬ジャーナル社 2000年
【非特許文献2】J. Biol. Chem. Vol.279, No.17, 17079-17084 (2004)
【非特許文献3】蛋白質核酸酵素 vol.48, No.8, 1112-1119 (2003)
【非特許文献4】Nat Med. 2002 Feb; 8(2): 117-8
【特許文献1】WO2002/004471
【特許文献2】特表平11-500742
【特許文献3】特開2001-354572
【特許文献4】特開平8-208488
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来、特定分子量のヒアルロン酸が各種免疫疾患に効果があることが知られている。
しかし、肝炎等の治療薬として用いられるケースでは、インターフェロンγ産生抑制が示唆され(特許文献3)、皮膚炎等に効果のあるケース(特許文献4)では、ヒアルロン酸の保湿性を利用しているものと考えられ、これらの場合には分子量の大きいものがより効果的であり、その結果、このタイプのヒアルロン酸の分子量は例えば80万以上のように大きい。
また、T細胞の活性を抑えたり各種インターロイキン産生を抑える等の場合は、分子量が例えば約3万以下のような低分子量のヒアルロン酸が使用される(特許文献1、2等)。
【0005】
また、ヒアルロン酸がCCR10の発現に関与していることは知られているが(非特許文献3)、体外から投与するヒアルロン酸としてどのようなタイプのヒアルロン酸がCCR10を効果的に発現させるかについては全く検討されていなかった。
このように、皮膚や、肝臓、消化器等の臓器などでCCR10等のケモカイン受容体の発現が抑えられていることが免疫不全等の原因となっていることが予想されるが(非特許文献1)、CCR10等のケモカイン受容体の発現を増すことにより免疫機構等を高める安全な方法や物質は殆ど知られていなかった。
従って、本発明は、CCR10の発現を誘導してCCR10発現不全に起因する疾患の予防や治療に用いることのできる特定のヒアルロン酸に基づく薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の重量平均分子量を有するヒアルロン酸がケモカイン受容体CCR10(NM_016602、配列番号1)の発現を誘導することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、重量平均分子量が20,000~40,000であるヒアルロン酸又はその塩を有効成分とするケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤である。
また本発明は、in vitroにおいてCCR10を誘導するための試薬である、上記のケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤である。
更に、本発明は、リンパ系細胞を重量平均分子量が20,000~40,000であるヒアルロン酸又はその塩を添加した培地中で培養し、該培養細胞のケモカイン受容体CCR10の発現を誘導する方法である。

【発明の効果】
【0007】
本発明の特定分子量のヒアルロン酸又はその塩は、CCR10発現誘導作用を有するので、その結果ヒトにおけるCCR10発現不全疾患、特に種々の免疫疾患や免疫不全の予防や治療のために有利に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ヒアルロン酸は、D-N-アセチルグルコサミンと(GlcNAc)とD-グルクロン酸(GlcA)とが交互にグリコシド結合してできた直鎖状の多糖であり、本発明で用いるヒアルロン酸の重量平均分子量は20,000~40,000である。
ヒアルロン酸の重量平均分子量は、第十三改正日本薬局方:一般試験法・第36項粘度測定法に従って極限粘度を測定し、Laurentらの式(Biochim. Biophys. Acta, 42, 476(1960))によって算出する。また、重量平均分子量が既知のヒアルロン酸、デキストラン等を標準試料としてゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)によって求めてもよい。



【0009】
本発明で用いるヒアルロン酸は、非還元末端がグルクロン酸であるヒアルロン酸の他、非還元末端がN-アセチルグルコサミンであるヒアルロン酸も含む。非還元末端に位置する糖は、飽和糖(単糖中の炭素・炭素間の結合に二重結合を含まないもの)でも不飽和糖(単糖中の炭素・炭素間の結合に二重結合を含むもの)でもよい。特に非還元末端に位置する糖が飽和糖であるものが好ましく、具体的には下記式(1)で表されるヒアルロン酸が好ましい。
GlcA(-GlcNAc-GlcA)-GlcNAc (1)
(式中、GlcAはグルクロン酸残基を、GlcNAcはN-アセチルグルコサミン残基を、-はグリコシド結合を、nは重量平均分子量に対応する整数を示す。)
上記式(1)のGlcA-GlcNAcにおけるグリコシド結合はβ1→3結合であることが好ましく、GlcNAc-GlcAにおけるグリコシド結合はβ1→4結合であることが好ましい。
【0010】
そのなかでも、下記式(2)で表されるヒアルロン酸が特に好ましい。
【化1】
JP0004528898B2_000002t.gif
(式中、nは重量平均分子量に対応する整数であり、Mはプロトン又はNa等の1価のカチオンを表し、Acはアセチル基を表す。)
【0011】
また、本発明で用いるヒアルロン酸は塩の形態であってもよく、更に電離した状態であってもよい。このヒアルロン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、又はジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩、ガラクトサミン塩、グルコサミン塩等の有機塩基との塩が例示され、好ましくは薬学的に許容されるアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。
【0012】
本発明で用いるヒアルロン酸の由来は特に限定されない。例えば、鶏冠、臍帯、豚皮、牛皮、魚類その他の動物の皮、大動脈等や、ヒアルロン酸(HA)を産生する微生物等から分離、精製されたHAであって重量平均分子量が6,000~500,000であるもの、又は重量平均分子量が500,000を超えるHAを分解処理(例えば、酵素分解、化学分解、加熱処理、超音波処理、紫外線照射、ガンマー線照射等)する工程を経て製造されるものであってもよい。また、合成(例えば化学合成や酵素合成)の工程を経て製造されるものであってもよい。
酵素分解法としては、ヒアルロニダーゼ(睾丸由来)、ヒアルロニダーゼ(Streptomyces由来)、ヒアルロニダーゼSD、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACIII、コンドロイチナーゼABC、エンドグルクロニダーゼ(ヒル由来)などのHAを分解する酵素をHAに作用させる方法が挙げられる(新生化学実験講座「糖質II-プロテオグリカンとグリコサミノグリカン-」p244-248、1991年発行、東京化学同人)。上記式(2)のヒアルロン酸を酵素分解法で得るためには、HAを分解する酵素として加水分解酵素を用いることが好ましい。
加熱処理法としては、HAをオートクレーブ処理する方法、湯煎する方法等が挙げられる。
【0013】
化学分解法としては、HAをアルカリ分解法、ジメチルスルホキシド法(DMSO法)、アスコルビン酸との化学的解重合反応(クリーブランドほか,Bioch.Biophy.Acta,vol.192,p385,1969)、次亜塩素酸塩類との処理(シラーほか,Biol.Chem.Hopp-Seyler,vol.375,p169,1994)、次亜塩素酸塩の存在下での超音波処理(EP0944007)等が挙げられる。アルカリ分解法は、具体的には、例えばHAの溶液に1N程度の水酸化ナトリウム等の塩基を加え、数時間加温して低分子化させた後、塩酸等の酸を加えて中和することにより行うことができる。DMSO法としてはNagasawaらの方法(Carbohyd.Res.,141,p99-110,1985)が挙げられる。また、塩酸や硫酸等の酸によって加水分解することもできる。
超音波処理法としてはBiochem.,33,p6503-6507(1994)等に記載された方法が挙げられる。
合成による製造方法としてはGlycoconjugate J.,p453-439(1993)、国際公開WO93/20827等に記載された方法が挙げられる。
このように低分子化されたヒアルロン酸を所望の純度に精製して用いてもよい。精製方法は特に限定されるものではないが、例えば必要により上記分解反応液を中和したり酵素を除去し、エタノール等の有機溶媒による沈殿処理、メンブランフィルター、限外濾過膜、透壁膜等による膜処理を行ない、より純度の高いヒアルロン酸を得ることができる。
【0014】
本発明のCCR10の発現誘導剤を医薬品として用いる場合や、CCR10発現不全疾患の治療薬として用いる場合(以下これらを「本発明の薬剤」ともいう。)には、その有効成分であるヒアルロン酸又はその塩は、高純度に精製され、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものが好ましい。このようなヒアルロン酸又はその塩のエンドトキシン濃度は、溶液形態の剤とした場合において0.3EU/mL以下であることが好ましい。エンドトキシン濃度は、当業者に周知慣用のエンドトキシンの測定法を用いて測定することができるが、カブトガニ・アメボサイト・ライセート成分を用いるリムルス試験法が好ましい。なお、EU(エンドトキシン単位)は、日本工業規格生化学試薬通則(JISK8008)に従って測定・算出できる。また、鉄含量は20ppm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の薬剤は、上記に規定したヒアルロン酸が目的とする治療効果が得られる有効量含有されていればよく、本発明の薬剤の効果に影響を与えない限りにおいては、他の分子量のヒアルロン酸を含んでいても差し支えない。
本発明の薬剤は、単独で、又は薬学的に許容される担体と配合した医薬組成物、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤、軟膏、クリームなどの外用剤、又は経口投与剤、注腸剤、注射薬などの液状製剤として経口又は非経口的に投与することができる。
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などを用いてよく、また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いてもよい。
【0016】
本発明の薬剤は、対象疾患の種類により異なるが、他の薬剤活性成分と組み合わせて用いてもよい。このような他の薬剤としては、たとえば、抗炎症剤、抗リウマチ剤が挙げられる。
【0017】
本発明の薬剤の1日当たりの投与量は、患者の状態や体重、投与の方法により異なるが、経口投与の場合成人(体重50Kg)1人当たり活性成分(HA)として約5~1000mg、好ましくは約10~600mgであり、さらに好ましくは約10~300mgであり、1日当たり1~3回程度にわけて投与する。
【0018】
ケモカイン受容体CCR10は、特に、皮膚、消化管で重要な役割を担っている。従って、本発明の薬剤は、これらの臓器でCCR10の発現が抑えられているようなCCR10発現不全疾患、具体的には免疫不全状態にある病気に効果があると考えられ、特に、皮膚、消化管、肝臓の免疫異常の疾患に効果があると考えられる。このような予防・治療の対象疾患としては、例えば、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、ルポイド肝炎が挙げられる。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0019】
製造例1
この製造例では、重量平均分子量が0.6、2.3及び12万のヒアルロン酸を製造した。
重量平均分子量が約100万のヒアルロン酸を、50mM燐酸緩衝液(pH5.3)に1%になるように溶解し、100ミリリットルとした。ここに羊睾丸由来ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)を1万ユニット加え、摂氏37度で反応させ、経時的にアリコットを取り、GPC(カラムG4000PWXL,G3000PWXL,G2500PWXLの3本連結、東ソー社製、溶離液 0.2M NaCl、流速 0.6mL/min)でモニターし、当該の分子量付近となったら、このものを100℃の温水に入れ、酵素反応を停止させた。冷却後、終濃度0.5MとなるようNaClを加え、助剤(ラヂオライト #100)をいれたブフナーにこの溶液を通し濾過をおこない失活させた酵素蛋白質を除いた。このろ液にろ液量の2.5~3倍容量のエタノールを加えて、部分分解されたヒアルロン酸画分を沈殿させ回収した。得られた白濁は再度水に溶解し、エンドトキシンを除くため活性炭処理を行った後、得られたろ液に終濃度0.5MとなるようNaClを加え、2ないし3倍容量のエタノールを加え、沈殿洗浄、減圧乾燥を行い、当該の低分子ヒアルロン酸を得た。これらのエンドトキシン含量はすべて0.15EU/mg以下であった。
【0020】
製造例2
この製造例では、重量平均分子量が46万のヒアルロン酸を製造した。
重量平均分子量が約100万のヒアルロン酸を、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)に1%になるように溶解し、この100ミリリットルをオートクレーブ(121℃)処理した。上記と同様、経時的にモニターし当該の分子量付近で操作を止め冷却後、このものを0.5MのNaClに溶解した。三倍容量のエタノールを加えヒアルロン酸を沈殿させ当該のヒアルロン酸を得た。得られたヒルロン酸は製造例1で記載した方法と同様にエンドトキシンを除去し生成物を得た。得られた生成物のエンドトキシン含量も製造例1で記載した範囲にあった。
【実施例1】
【0021】
ヒトリンパ系細胞HUT78細胞(ATCC TIB-161、RPMI 1640 (Invitrogen)+10%ウシ胎仔血清(FCS)で継代培養したもの)を無血清SFM培地(Hybridoma-SFM培地、グルタミン添加、GIBCO, Invitrogen)に浮遊させ、10cmシャーレ中で24hrs培養した。
細胞濃度を1×107/mlに調整し、ここに無菌操作でクリーンベンチ内でおのおの10 mg/mlの濃度に注射用蒸留水に溶解した製造例1及び2で得た各分子サイズのヒアルロン酸を終濃度100μg/mlとなるように入れ、CO2インキュベーターで24時間培養した。
【0022】
培養後、細胞を回収し、acid guanidinium thiocyanate-chloroform 抽出法(Isogen kit, Nippon-Gene)でRNAを抽出した。
RNAの単離はISOGEN試薬(株式会社ニッポンジーン)を用いて以下の手順で行った。即ちポリプロピレンチューブに、約5~10×106個のHUT78細胞に1mlのISOGEN試薬を加え、室温で5分放置後、0.2mlのクロロホルムを加え、15秒間激しく振とうし2~3分放置した。これを4℃、12Kg下で15分遠心すると、上から水相、中間相、有機相の三相に分離するが、その水相を取り出しここに再度取り出した水相と同等量のクロロホルムを加え、15秒間激しく振とうし2、3分放置した。4℃、12Kg下で15分遠心させ、先と同様に水相を得る。こうして得た水相に0.5mlのイソプロパノールを加え、室温5~10分放置し、4℃、12Kg下で10分遠心し、沈殿を得る。これに1ml以上の75%エタノールを加え、撹拌後、4℃、7.5Kg下で5分遠心し、沈殿を得た後、風乾し、純水に溶解し、RNAを得た。分光光度計を用いて260nmの吸収を測定しRNAを定量した。
【0023】
RNAの濃度を確認したのち、RT-PCR(逆転写酵素を用いるポリメラーゼ連鎖反応法;35サイクル, 1 min at 94℃, 45 s at 55, 1 min at 72℃)にてCCR10遺伝子発現及び対照としてグリセルデヒト3-燐酸脱水素酵素(G3PDH)の発現を解析した。PCRプライマーとしてupper5’-GCTACAAGGCCGATGTCCAG-3’(配列番号2)、1ower5’-ATGAGGCGACAGCGTCGTTG-3’(配列番号3)、対照のG3PDH用のプライマーはupper5’-TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT-3’(配列番号4)、1ower5’-CATGTGGGCCATGAGGTCCA CCAC-3’(配列番号5)を用いた。
【0024】
その結果得られた電気泳動図を図1に示す。図2は図1に示したCCR10発現量をG3PDH発現量を基準として数値化したものである。
対照(ヒアルロン酸無添加)や高分子ヒアルロン酸(重量平均分子量 100万)を添加した場合と比較して、製造例1及び2で得た4種のヒアルロン酸を添加した場合には、CCR10の発現が増加しており、23KDa(重量平均分子量23,000)のヒアルロン酸を添加した場合には特に顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によって提供される重量平均分子量が6,000~500,000のヒアルロン酸又はその塩を有効成分とするケモカイン受容体CCR10の発現誘導剤は、in vitroにおいてCCR10を誘導するので研究用の試薬としての有用性を有するだけでなく、皮膚や、肝臓、消化器等の臓器などでCCR10の発現が抑えられたCCR10発現不全疾患患者に対して投与することによって、in vivoでCCR10の発現を誘導することができ、しかも安全性が高いことが確認されているので医薬品として利用でき、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】HUT78細胞を各分子サイズのヒアルロン酸で刺激した後のCCR10遺伝子及びグリセルデヒト3-燐酸脱水素酵素(G3PDH)の発現を示す電気泳動図である。対照(control)はヒアルロン酸無添加、ヒアルロン酸(Intact)は重量平均分子量100万のヒアルロン酸を示す。
【図2】図1を数値化した図である。縦軸はG3PDH発現量に対するCCR10発現量の比を示す。
図面
【図2】
0
【図1】
1