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明細書 :真空紫外光用蛍光体の製造方法、および真空紫外光用蛍光体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4320442号 (P4320442)
公開番号 特開2005-060679 (P2005-060679A)
登録日 平成21年6月12日(2009.6.12)
発行日 平成21年8月26日(2009.8.26)
公開日 平成17年3月10日(2005.3.10)
発明の名称または考案の名称 真空紫外光用蛍光体の製造方法、および真空紫外光用蛍光体
国際特許分類 C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/00        (2006.01)
FI C09K 11/08 B
C09K 11/00 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 19
出願番号 特願2004-217898 (P2004-217898)
出願日 平成16年7月26日(2004.7.26)
優先権出願番号 2003201781
優先日 平成15年7月25日(2003.7.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年3月20日(2006.3.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】陳 丹平
【氏名】赤井 智子
個別代理人の代理人 【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
審査官 【審査官】中西 祐子
参考文献・文献 特開昭57-205337(JP,A)
特開2001-282153(JP,A)
特開平02-225335(JP,A)
特開昭57-188432(JP,A)
特開昭63-201020(JP,A)
特開2003-105331(JP,A)
陳丹平・三由洋・赤井智子・矢澤哲夫,「希土類イオンを含有する高ケイ酸ガラスの作成と蛍光特性」,日本セラミックス協会2003年年会講演予稿集,日本,社団法人日本セラミックス協会,2003年 3月22日,第64ページ
調査した分野 C09K11/00-11/89、CA/REGISTRY(STN)、JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
真空紫外領域の波長を有する紫外光の照射により蛍光を発する真空紫外光用蛍光体の製造方法であって、
セリウムを含んでなるアルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する分相工程と、
分相された上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属、アルカリおよびホウ酸を溶出することにより多孔質ガラスを得る酸処理工程と、
上記酸処理工程により得られた多孔質ガラスに、銅、イットリウム、ガドリニウム、ユーロピウム、セリウムおよびテルビウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子を吸着させる吸着工程と、
上記吸着工程により得られた金属原子吸着多孔質ガラスを、大気中あるいは還元雰囲気中にて焼成させる焼成工程とを有することを特徴とする真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項2】
上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、セリウムの酸化物を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項3】
上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、原料を加熱して溶融する溶融工程を2回実施して作製されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項4】
上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸は、2回実施される上記溶融工程のうちの第2回目の工程において添加されることを特徴とする請求項3に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項5】
上記酸処理工程と上記吸着工程との間で、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが繰り返し行われ、さらに、エチレンジアミン四酢酸を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項6】
上記吸着工程は、上記金属原子を有する化合物を含む溶液に上記多孔質ガラスを含浸させる工程であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項7】
上記吸着工程では、さらに、上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項8】
上記焼成工程における焼成温度は、900℃以上、1600℃以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の真空紫外光用蛍光体の製造方法により製造され、真空紫外光の照射により蛍光を発する真空紫外光用蛍光体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス母材が高い紫外光透過率を有し、化学的・機械的に優れていると共に、特に真空紫外領域(波長200nm以下)の光を照射することにより強く蛍光を発する真空紫外光用蛍光体の製造方法と、この製造方法により得られる真空紫外光用蛍光体とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、波長200nm以下の紫外光、すなわち真空紫外領域の紫外光で励起される真空紫外光用蛍光体が種々提案されている。このような真空紫外光用蛍光体としては様々な種類のものが知られているが、ほとんどは無機物質から構成されている。これら各種真空紫外光用蛍光体は、希ガスランプ等の照明装置やプラズマディスプレイ等の表示装置に広く用いられている。
【0003】
上記真空紫外光用蛍光体のうち、いくつかの種類のものは水銀線用蛍光体を改良することによって得られる。水銀線用蛍光体とは、水銀線(254nm)の波長域を有する紫外光で励起される蛍光体であり、これを改良して得られる真空紫外光用蛍光体としては、たとえば、緑色に発光するBaAl1219:Mn2+やZn2SiO4:Mn2+、赤色に発光する(Y.Gd)BO3:Eu3+あるいはY23:Eu3+、青色に発光するBaMgAl1019:Eu2+などが一般的に良く用いられている。その他にも、真空紫外領域で励起されやすい工夫を凝らした、アルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩蛍光体(特許文献1)、希土類酸化物蛍光体(特許文献2)、希土類リン酸蛍光体(特許文献3)、などの真空紫外光用蛍光体が知られている。
【0004】
しかし、これらの蛍光体は、一般に母材が紫外光をあまり透過しないため、まず粉体状に加工する必要があり、また、発光に寄与するのが粉体の最表面層(数十nm)程度となっている。したがって、通常の水銀線の紫外光を照射した場合と比較して、真空紫外領域の紫外光を照射した場合に、輝度が著しく低いという問題があった。また、母材が照射された紫外光を吸収するため、蛍光体の照射欠陥などを生じやすく、材料劣化が激しいという問題もあった。特に、上記の蛍光体をプラズマディスプレイで使用した場合、イオン衝撃が大きいため、材料劣化がさらに激しくなっていた。そのため、プラズマディスプレイの寿命が短くなるなどの問題を生じさせていた。
【0005】
さらに、上記した従来の蛍光体は、真空紫外光によって励起されると、温度消失しやすいという欠点を有していた。特に、青色蛍光体であるBaMgAl1019:Eu2+は劣化しやすい。この劣化の原因は、有機バインダーを300℃~500℃でベーキング処理する際に表面のEu2+(二価ユーロピウムイオン)が酸化されることにあった。
【0006】
そこで、上記従来の蛍光体における問題点の解消を図るべく、様々な新規蛍光体が提案されている。具体的には、上記のような照射欠陥、材料劣化および温度消失等の不具合を防ぐことを目的として、(1)表面に酸化物皮膜をした真空紫外光用蛍光体がいくつか提案されている(特許文献4~6)。また、蛍光の輝度を根本的に増加させることを目的として、(2)母材に紫外光透過率の高いフッ化物を使用した真空紫外光用蛍光体(特許文献7)も提案されている。

【特許文献1】特開2002-294230号公報(公開日:平成14年(2002年)10月9日)
【特許文献2】特開2002-256262号公報(公開日:平成14年(2002年)9月11日)
【特許文献3】特開2002-212553号公報(公開日:平成14年(2002年)7月31日)
【特許文献4】特開平8-319483号公報(公開日:平成8年(1996年)12月3日)
【特許文献5】特開平10-330746号公報(公開日:平成10年(1998年)12月15日)
【特許文献6】特開平10-298548号公報(公開日:平成10年(1998年)11月10日)
【特許文献7】特開2002-020745号公報(公開日:平成14年(2002年)1月23日)
【特許文献8】米国特許第2106774号
【非特許文献1】著者:赤井智子、陳丹平、増井大二、三由洋、矢澤哲夫、「新しい廃ガラスのリサイクル方法」、Journal of Ecotechnology Research、152-153頁、発行元:エコテクノロジー研究会、発行日:2002年12月5日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した新規な蛍光体においても、実用上、未だ克服すべき種々の課題を残している。
【0008】
具体的には、上記(1)の蛍光体(特許文献4~6に開示されている真空紫外光用蛍光体)では、母材自体の紫外光透過率を向上する工夫がなされている訳ではない。そのため、発光するのは蛍光体の最表面層のみであることに変わりはない。したがって、発光強度が低いことなどの、従来の真空紫外光用蛍光体が抱える問題点を根本的に解決するには至っていない。
【0009】
また、上記(2)の蛍光体(特許文献7に開示されている真空紫外光用蛍光体)は、母材がフッ化物であるため、酸化物を母材とした真空紫外光用蛍光体に比べると、化学的・機械的にはるかに不安定であり、実用性に欠けるという欠点があった。また、フッ化物等は環境に対しても悪影響を及ぼす等問題が多い。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス母材が高い紫外光透過率を有し、化学的・機械的に優れていると共に、特に真空紫外領域(波長200nm以下)の照射により強い蛍光を発する真空紫外光用蛍光体の製造方法と、この製造方法により得られる真空紫外光用蛍光体とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、模擬緑ガラスにホウ酸を添加したアルカリホウケイ酸塩ガラス中では、遷移金属の分布が不均一となり、金属イオンがホウ酸相に濃縮されるため、酸によって浸出されるということに着目した(非特許文献1参照)。そして、アルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施した場合に、ガラス中に含まれる低価数のFeイオンを高価数のFe3+の状態にすればホウ酸相に分散させることができ、さらに酸処理を施すことによってこのFe3+を除去することができると考えた。そして、原料となるアルカリホウケイ酸塩ガラスに重金属または希土類元素(好ましくは高価数の重金属または希土類イオン)を含ませることによって、溶融時にガラス中のFe2+をFe3+の状態にすることができることを見出した。これらのガラスを酸処理したところ、Feの含有量の低い多孔質ガラスが得られ、さらにこの多孔質ガラスを焼成すると真空紫外透過率の高い高ケイ酸ガラスが得られることを見出した。
【0012】
またこれとは別に、上記のような処理を施していない多孔質シリカガラスに、Cu等の金属化合物を含浸させ、その後、大気中または還元雰囲気中にて焼成を行うことにより酸化物ガラスを得た。そして、上記酸化物ガラスについて詳細な検討を行った結果、上記酸化物ガラスは、真空紫外光透過性、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度が優れているとともに、金属原子を多量に含まないにも関わらず、強い発光を呈することを独自に見出した。
【0013】
そこで、上記の、Feの含有量が低く、焼成すると高い紫外透過率を示す、多孔質ガラスを用いて、金属化合物を含浸させ焼成したところ、上記課題を解決できる真空紫外光用蛍光体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る真空紫外光用蛍光体の製造方法は、真空紫外領域の波長を有する紫外光の照射により蛍光を発する真空紫外光用蛍光体の製造方法であって、重金属または希土類元素を含んでなるアルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する分相工程と、分相された上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属、アルカリおよびホウ酸を溶出することにより多孔質ガラスを得る酸処理工程と、上記酸処理工程により得られた多孔質ガラスに、周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を吸着させる吸着工程と、上記吸着工程により得られた金属原子吸着多孔質ガラスを、大気中あるいは還元雰囲気中にて焼成させる焼成工程とを有することを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、真空紫外領域の光の照射に対して安定で高輝度の真空紫外用蛍光体を得ることができる。
【0016】
上記製造方法においては、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅のいずれかの元素を含むことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、ガラス母材の紫外光透過率をさらに向上させることが可能となる。
【0018】
また、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、上記元素の酸化物を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことがより好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、ガラス母材の紫外光透過率をさらに向上させることが可能となる。
【0020】
さらに、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、原料を加熱して溶融する溶融工程を2回実施して作製されたものであることがより好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、1回溶融の場合と比較して、より紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体用のガラス母材を得ることができる。
【0022】
また、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸は、2回実施される上記溶融工程のうちの第2回目の工程において添加されることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、得られる真空紫外光用蛍光体のガラス母材の紫外光透過率をより高くすることができる。
【0024】
さらに、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスがセリウムまたはクロムを含む場合に、上記酸処理工程と上記吸着工程との間で、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが繰り返し行われ、さらに、エチレンジアミン四酢酸を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、製造される真空紫外光用蛍光体中のFe濃度をさらに低下させ、ガラス母材の紫外光透過率をさらに高くすることができる。
【0026】
上記製造方法においては、上記吸着工程にて用いられる上記金属原子が、周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子のうち、周期表第4周期、または第5周期に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であることが好ましい。中でも、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、および錫から選ばれる少なくとも1種の原子がより好ましく用いられる。また、上記吸着工程にて用いられる上記金属原子は、ランタノイドの少なくとも1種の原子であってもよく、ランタノイドの場合には、上記金属原子が、ガドリニウム、ユーロピウム、セリウムおよびテルビウムから選ばれる少なくとも1種の原子であることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、発光強度の強い真空紫外光用蛍光体を容易に製造することができる。
【0028】
また、上記吸着工程は、上記金属原子を有する化合物を含む溶液に上記多孔質ガラスを含浸させる工程であることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、金属原子を有する化合物を容易に多孔質ガラスにしみ込ませることができる。
【0030】
さらに、上記吸着工程では、上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、焼成とともに金属イオンの価数制御を行うことができる。このため、より強く蛍光を発する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0032】
上記製造方法においては、上記焼成工程における焼成温度は、900℃以上、1600℃以下であることが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、900℃以上で焼成を行うことにより、金属原子が吸着している多孔質ガラスの孔径および表面状態をコントロールすることができる。また、1600℃以下で焼成を行うことにより、これ以上の温度で焼成した場合に起こる基質となるガラスの軟化を避けることができる。
【0034】
本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、上記製造方法により製造され、真空紫外光の照射により蛍光を発するものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、以上のように、重金属または希土類元素を含んでなるアルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する分相工程と、分相された上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属、アルカリおよびホウ酸を溶出することにより多孔質ガラスを得る酸処理工程と、上記酸処理工程により得られた多孔質ガラスに、周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を吸着させる吸着工程と、上記吸着工程により得られた金属原子吸着多孔質ガラスを、大気中あるいは還元雰囲気中にて焼成させる焼成工程とを有することを特徴とするものである。
【0036】
上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法によれば、ガラス母材が多量のシリカおよび低濃度のFeを含む、真空紫外光用蛍光体を得ることが出来る。したがって、ガラス母材の紫外光透過率が高く、より短波長の光で励起できるだけでなく、紫外光照射による欠陥も発生し難い真空紫外光用蛍光体を製造することが出来るという効果を奏する。また、上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、ガラス母材の紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体を低コストで大量に製造することが可能であるという効果も奏する。
【0037】
また、上記方法にて製造された真空紫外光用蛍光体は、真空紫外領域の光の照射により励起され、強い蛍光を発するものである。すなわち、上記真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光を可視域の光へ高効率に変換することができるものである。なおかつ、上記の真空紫外光用蛍光体は、ガラス母材が酸化物ガラスであるため、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度も優れている。したがって、上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度が優れているとともに、強い発光を呈する真空紫外光用蛍光体を容易に製造することができるという効果を奏する。また、上記の真空紫外光用蛍光体は、Eu等の希土類を多量に含ませなくても強力に発光するため、上記の真空紫外光用蛍光体は、製造コストを低減することも可能であるという効果も奏する。
【0038】
本発明の真空紫外光用蛍光体は、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造法によって製造されたものである。
【0039】
上記の真空紫外光用蛍光体は、真空紫外領域の光の照射により励起され、強い蛍光を発するという効果を奏するものであり、他に様々な利点を有している。まず、上記の真空紫外光用蛍光体は、従来のバイコール法によって製造されたガラスと同様にシリカが多孔質であるため、透光性と高い表面積をあわせ持つ。さらに、母材である多孔性ガラスが、Hgフリーランプで使用されるXe光(176nm)に対して高い透過性を有する。そのため、上記の真空紫外光用蛍光体は、そのガラス母材が従来のバイコール法によって製造されるガラスよりも紫外光透過率が高く、石英ガラスとほぼ同程度の紫外光透過率を有している。したがって、上記の真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光を可視域の光へ高効率に変換することができるという効果を奏する。さらに、上記の真空紫外光用蛍光体は、ガラス母材が酸化物ガラスであるため、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度も優れている。したがって、より短波長の光で励起できるだけでなく、紫外光照射による欠陥も発生し難いという効果を奏する。また、上記の真空紫外光用蛍光体は、溶融法やCVD法などによって製造される石英ガラスと比較して、低コストで大量に製造することができるため、大型化が可能であるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。
【0041】
(1)真空紫外光用蛍光体の製造方法
本発明にかかる真空紫外光用蛍光体の製造方法は、いわゆるバイコール法(特許文献8参照)を応用したものである。バイコール法とは、ケイ酸を主成分として含む高ケイ酸ガラスを大量に製造する方法である。詳しく説明すると、ホウケイ酸塩系ガラスを熱処理によってSiO2リッチの不溶相と、B23リッチの可溶相とに分相させた後に、酸で可溶相を溶出させることによって、SiO2を主成分とする多孔質ガラスを作製し、次いでこの多孔質ガラスを焼成して製造する方法である。
【0042】
この方法を応用して、アルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施すことによって、SiO2を主成分とする不溶相(ケイ酸相)と、B23を主成分とする可溶相(ホウ酸相)に分相させることができる。本発明の製造方法では、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに、重金属または希土類元素が含まれているため、この分相工程において、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe2+)をFe3+の状態にすることができる。
【0043】
本発明者等が見出した知見によれば、高価数の金属イオンはホウ酸相に濃縮されるため、上記アルカリホウケイ酸塩ガラス中に含まれるFe3+の状態にされた低価数の鉄は、ホウ酸相に分散される。上記の真空紫外光用蛍光体の製造工程においては、この分相工程の後に実施される酸処理工程によって、金属、アルカリおよびホウ酸を溶出させることができるため、Fe3+も他の金属イオンとともに除去することができる。そして、上記酸処理工程の後にアルカリホウケイ酸塩ガラスの焼成を行えば、Fe濃度が低く、紫外光透過率の高い、真空紫外光用蛍光体用のガラス母材を得ることができる。
【0044】
すなわち、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法によれば、ガラス母材が多量のシリカおよび低濃度のFeを含む、真空紫外光用蛍光体を得ることが出来る。したがって、この製造方法は、ガラス母材の紫外光透過率が高く、より短波長の光で励起できるだけでなく、紫外光照射による欠陥も発生し難い真空紫外光用蛍光体を製造することが出来るという利点を有する。また、上記真空紫外光用蛍光体の製造方法は、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、ガラス母材の紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体を低コストで大量に製造することが可能である。
【0045】
なお、ここで上記「重金属または希土類元素」には、単体、化合物、イオンなど、元素が通常に存在する場合の種々の形態のものが含まれる。しかし、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法において、上記重金属または希土類元素は、酸化剤として作用することができる高価数の重金属または希土類イオンの状態で、ホウケイ酸ガラス中に存在することが好ましい。これによって、アルカリホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe2+)を、より効果的にFe3+の状態に酸化することができる。
【0046】
本発明に係る真空紫外光用蛍光体の製造方法は、分相工程、酸処理工程、吸着工程、および焼成工程を有するものであればよい。以下に、本発明の真空紫外光用蛍光体製造方法における各工程、材料、生成物等について詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る真空紫外光用蛍光体の製造方法を単に製造方法と略す場合がある。
【0047】
(1-1)分相工程
本発明に係る製造方法においては、上記分相工程としては、重金属または希土類元素を含んでなるアルカリホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する工程であれば特に限定されるものではない。
【0048】
ここで、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅のいずれかの元素を含むことが好ましい。これによれば、得られる真空紫外光用蛍光体中のFe濃度をより低下させることがきるため、ガラス母材の紫外光透過率をさらに向上させることが可能となる。それに加えて、上記の製造方法によれば、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、ガラス母材の紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体を低コストで大量に製造することができる。
【0049】
また、本発明に係る製造方法においては、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、上記元素(すなわち、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu))のいずれか)の酸化物を、0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0050】
上記元素の酸化物を上記の範囲内で含有させれば、得られる真空紫外光用蛍光体中のFe濃度をより一層低下させることがきる。そのため、ガラス母材の紫外光透過率をさらに向上させることが可能となる。それに加えて、上記の製造方法によれば、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、ガラス母材の紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体を低コストで大量に製造することができる。
【0051】
なお、上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法において、上記元素を含む酸化物は、上記元素の高価数の酸化物であることが好ましい。これによって、アルカリホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe2+)を、より効果的にFe3+の状態に酸化することができる。
【0052】
そこで、本実施の形態では、上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法において、真空紫外光用蛍光体の原料として、ガラス組成中にマンガン(Mn)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)のいずれかの酸化物を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むアルカリホウケイ酸塩ガラスを使用した場合について説明する。上記真空紫外光用蛍光体の原料となるアルカリホウケイ酸塩ガラスの組成は、上記の条件以外は特に限定されることはなく、通常のアルカリホウケイ酸塩ガラスの原料に用いられる化合物を使用して、通常のアルカリホウケイ酸塩ガラスの組成に倣えばよい。
【0053】
より具体的には、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスには、上述のMn、Ce、Cr、Co、Cu以外に、Si、O、B、Na、Al、Caなどの元素を含む化合物が適宜含まれればよく、上記アルカリホウケイ酸塩ガラス中のSiO2の割合は45~60重量%程度、B23の割合は24~36重量%程度であればよい。なお、上記Mn、Ce、Cr、Co、Cuについては、例えば、高価数の酸化物、すなわちMnO2、CeO2、Cr23、Co23、CuOなどのような形態で含まれることが好ましい。上記元素(Mn、Ce、Cr、Co、Cuのいずれか)の高価数の酸化物は、酸化剤として機能するため、ホウケイ酸ガラス中の鉄を効果的にFe3+の状態にすることができる。
【0054】
上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、上述のような各化合物を適当量混合し、例えば、温度1350~1450℃で数時間程度の溶融を行った後に、冷却して作製することができる。
【0055】
なお、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、Si、O、B、Na、Al等およびMn、Ce、Cr、Co、Cuのいずれかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を含む複数の化合物を原料として適宜混合してガラス組成物とした後、高温溶融して作製されるが、その溶融工程は、2回に分けて実施されることが好ましい。これによれば、1回溶融の場合と比較して、よりガラス母材の紫外光透過率の高い真空紫外光用蛍光体を製造することができる。そして、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸(HBO)は、2回実施される溶融工程のうちの第2回目の溶融工程において添加されることが好ましい。これらによれば、得られる真空紫外光用蛍光体のガラス母材の紫外光透過率をより高くすることができる。
【0056】
以上のようにして作製されたアルカリホウケイ酸塩ガラスには、熱処理が施され、SiO2を主成分とする不溶相(ケイ酸相)と、B23を主成分とする可溶相(ホウ酸相)とに分相される。上記の熱処理は、温度550~650℃程度、時間20~80時間程度で実施すればよい。本実施の形態では、この工程を分相工程と呼ぶ。
【0057】
上記アルカリホウケイ酸塩ガラスは、Mn、Ce、Cr、Co、Cuのいずれかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことによって、アルカリホウケイ酸塩ガラス中に含まれるFeをFe3+の状態とし、上記分相工程においてホウ酸相に分散させることができる。
【0058】
(1-2)酸処理工程
上記酸処理工程は、分相された上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属、アルカリおよびホウ酸を溶出することにより多孔質ガラスを得る工程であれば特に限定されるものではない。このように、上記分相工程の後に、分相されたアルカリホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施すことによって、アルカリホウケイ酸塩ガラス中に含まれる金属、アルカリおよびホウ酸を溶出することにより多孔質ガラスを得る酸処理工程が実施される。
【0059】
これによって、ホウ酸相に分散している鉄イオンを、ホウ素、ナトリウム、カルシウムなどのイオンとともに除去することができ、アルカリホウケイ酸塩ガラスはFeの含有量の低い多孔質ガラスとなる。酸処理工程で用いられる酸の種類や酸処理の条件等は特に限定されるものではなく、バイコール法にて用いられる各種条件を援用すればよい。
【0060】
また、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法では、上述のように酸処理工程が行われた直後に吸着工程が実施されてもよいが、これ以外の方法として、上記酸処理工程と上記吸着工程との間で、熱処理と酸処理とがさらに繰り返し実施されてもよい。
【0061】
さらに、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法では、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスがセリウム(Ce)またはクロム(Cr)を含む場合に、上記酸処理工程と上記吸着工程との間で、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが複数回繰り返して行われた後、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることが好ましい。
【0062】
これによれば、EDTAがアルカリホウケイ酸塩ガラス中の金属と錯塩を形成するため、製造される真空紫外光用蛍光体中のFe濃度をさらに低下させることができ、波長185nm付近において、石英ガラスとほぼ同程度の紫外光透過率を有する、真空紫外光用蛍光体用のガラス母材を得ることができる。
【0063】
(1-3)吸着工程
上記酸処理工程の後に、上記多孔質ガラスに金属原子を吸着させる吸着工程が行われる。この吸着工程は、少なくとも、上記多孔質ガラスの表面および孔中に金属原子または金属原子を含む化合物を吸着させる工程であれば特に限定されるものではない。なお、本発明における「金属原子」には、金属イオンも含まれるものとする。
【0064】
具体的には、例えば、金属原子または金属原子を有する化合物を含む溶液に上記アルカリホウケイ酸塩ガラスを含浸させる方法、または金属原子または金属原子を有する化合物を含む溶液を上記多孔質ガラスに塗布する方法等を挙げることができる。なお、上記溶液の溶媒は、水であってもよいし、水以外の有機溶媒であってもよく特に限定されるものではない。また、上記多孔質ガラスに吸着させる金属原子または金属原子を有する化合物の量は適宜設定できる。
【0065】
また、上記多孔質ガラスに金属原子または金属原子を有する化合物を吸着させる際の条件、例えば、上記多孔質ガラスを上記溶液に含浸させる時間、温度、回数、溶液の量、溶液のpH等、および、上記多孔質ガラスに上記溶液を塗布する回数等は適宜設定することができ、特に限定されるものではない。
【0066】
また、上記多孔質ガラスに金属原子または金属原子を有する化合物を吸着させた後、一旦これを乾燥させて、再び金属原子または金属原子を有する化合物を吸着させることもできる。すなわち、吸着工程の途中に乾燥工程をいれてもよいし、上記金属原子等を吸着させる工程と乾燥工程とを複数回繰り返すことも可能である。これにより、上記多孔質ガラスに金属原子または金属原子を有する化合物を確実に吸着させることができ、濃度消光を防ぎ、より発光強度の強い真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0067】
上記金属原子としては、周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であることが好ましい。なお、本発明でいう周期表とは、長周期型の元素周期表をいう。
【0068】
周期表3A族に属する原子としては、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、およびランタノイド(La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム))が挙げられる。また、周期表4A族に属する原子としては、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)が挙げられる。また、周期表5A族に属する原子としては、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)が挙げられる。また、周期表6A族に属する原子としては、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)が挙げられる。また、周期表7A族に属する原子としては、Mn(マンガン)、Tc(テクネチウム)、Re(レニウム)が挙げられる。また、周期表8族に属する原子としては、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イルジウム)、Pt(白金)が挙げられる。また、周期表1B族に属する原子としては、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)が挙げられる。また、周期表2B族に属する原子としては、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)、Hg(水銀)が挙げられる。また、周期表4B族に属する原子としては、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、Pb(鉛)が挙げられる。なお、本発明でいう上記金属原子には、金属イオンを含むものとする。
【0069】
上記周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子のうちでも、周期表第4周期、または第5周期に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であることが好ましい。
【0070】
さらには、上記金属原子とは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Ag、およびSnから選ばれる少なくとも1種の原子であることが好ましい。
【0071】
上記の原子であれば、発光強度の強い真空紫外光用蛍光体を容易に製造できるためである。なお、上記の金属原子を単独で用いてもよいし、複数の金属原子を組み合わせて使用してもよいことは、いうまでもない。
【0072】
また、上記金属原子を有する化合物としては、Cu等をはじめとした上記金属原子を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、上記金属原子を含む硝酸塩、酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、有機金属塩等の化合物およびこれら化合物の水和物等の従来公知の化合物を挙げることができ、特に限定されるものではない。
【0073】
また、上記周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子のうちでも、ランタノイドの少なくとも1種の原子であることが好ましく、さらには、Gd、Eu、Ce、Tbが特に好ましい。上記の原子であれば、発光強度の強い真空紫外光用蛍光体を容易に製造できるためである。なお、上記の金属原子を単独で用いてもよいし、複数の金属原子を組み合わせて使用してもよいことは、いうまでもない。
【0074】
また、上記金属化合物としては、Sc化合物、Y化合物、およびランタノイド化合物が挙げられる。具体的には、例えば、金属原子を含む硝酸塩、酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、有機金属塩等の化合物およびこれら化合物の水和物等の従来公知の化合物を挙げることができ、特に限定されるものではない。
【0075】
このように、上記多孔質ガラスに、周期表3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、4B族に属する原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を吸着させることによって、より一層強力に発光する真空紫外光用蛍光体を容易に製造することができる。また、吸着工程では、上記金属原子を有する化合物を含む溶液に上記多孔質ガラスを含浸させる工程を好ましく用いることができるが、この工程であれば、Cu等の金属原子を有する化合物を容易に多孔質ガラスにしみ込ませることができる。したがって、容易に紫外光透過性、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度が優れているとともに、強い発光を呈する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0076】
本発明に係る真空紫外光用蛍光体製造方法における吸着工程は、さらに、上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させる工程を有していてもよい。これによって、焼成とともにCuイオン等の金属イオンの価数制御を行うことができる。このため、より強く蛍光を発する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0077】
上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させる工程は、例えば、多孔質ガラスの表面および孔中に増感剤を吸着させる工程であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、増感剤を含む溶液に多孔質ガラスを含浸させる方法や、その他に増感剤を含む溶液を多孔質ガラスに塗布する方法等を挙げることができる。上記溶液の溶媒も水、または有機溶媒等といった従来公知のものが使用できる。また、多孔質ガラスに増感剤を吸着させる工程は複数回行われてもよい。これにより、容易に増感剤を多孔質ガラスにしみ込ませることができ、より強く発光する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0078】
また、上記増感剤は、酸化物ガラス(シリカ)と組成の異なる化合物(例えば、酸化物等)であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、およびMg(マグネシウム)等の原子のうち、少なくとも1種が含まれる化合物が挙げられる。これらの化合物としては、上記原子を含む硝酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、または炭酸塩等の化合物等およびこれら化合物の水和物等の従来公知の化合物を挙げることができる。
【0079】
また、上記多孔質ガラスに吸着させる増感剤の量は適宜設定でき、特に限定されるものではない。
【0080】
また、上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させる工程は、上記多孔質ガラスに金属原子を吸着させる吸着工程の前後どの段階で行ってもよく、さらに、金属原子と増感剤とを上記多孔質ガラスに吸着させる工程を同時に行ってもよい。また、上記多孔質ガラスに金属原子を吸着させる工程と上記多孔質ガラスに増感剤を吸着させる工程との間に乾燥工程が入っていてもよいし、これら2つの吸着工程と乾燥工程とを複数回繰り返すこともできる。
【0081】
すなわち、上記増感剤を上記多孔質ガラスに吸着させる工程は、以下に述べる焼成工程における焼成の前であれば、どの段階で行われてもよく、回数等の条件も適宜設定可能である。
【0082】
(1-4)焼成工程
上記吸着工程の後に、この工程で得られた金属原子吸着多孔質ガラスを、大気中または還元雰囲気中にて焼成させる焼成工程が行われる。この焼成工程は、大気中または還元雰囲気中にて焼成させる工程であればよく、具体的な焼成方法等については特に限定されるものではない。例えば、還元雰囲気中にて焼成させる方法としては、後述する実施例に示すように、カーボンを入れたアルミナるつぼ中で焼成する方法等が挙げられる。
【0083】
なお、アルカリホウケイ酸塩ガラスを熱処理した後に、酸処理を行って可溶相を溶出させ、さらに焼成するという本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、上述したように、バイコール法に基づくものである。すなわち、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、原料となるアルカリホウケイ酸塩ガラス中にMn、Ce、Cr、Co、Cuのいずれかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含有する点以外は、従来公知のバイコール法(特許文献8参照)と同様の方法で実施することができる。それゆえ、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法は、バイコール法を応用した方法であると言える。
【0084】
上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法によれば、バイコール法によって作製された高ケイ酸ガラスと比較して、Fe濃度を低くすることができる。それに加えて、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、低コストで大量に真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0085】
また、焼成温度は、900℃以上で行うことが好ましい。後述する実施例に示すように、900℃より低い温度で焼成した場合は、十分な発光を呈する真空紫外光用蛍光体を得られないためである。これは、900℃以上で焼成を行うことにより、Cu等の金属原子が吸着している多孔質ガラスの孔径および表面状態をコントロールすることができるからである。
【0086】
一方、焼成温度の上限としては、1600℃であることが好ましい。これ以上の温度で焼成した場合、基質のガラスが軟化してしまうためである。
【0087】
このように、焼成工程では、好ましくは焼成温度を900℃以上とし、より好ましくは1600℃以下とすることで、金属原子を吸着させた多孔質ガラスを十分に焼成することができる。このため、確実に紫外光透過性、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度が優れているとともに、強い発光を呈する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。なお、焼成を行う時間、温度を上昇させる速度等は適宜設定することができ、特に限定されるものではない。
【0088】
また、上記焼成後に得られた酸化物ガラスを急速に冷却する冷却工程を含んでもよい。焼成を長時間行った場合、または焼成後に急冷を行わなかった場合は、母材(酸化物ガラス母材)とCu等の金属原子とが反応してしまい、蛍光が弱くなってしまうことがわかっているためである。そのため、冷却工程を実施することで、マトリックスと金属原子とが反応することを防ぐことができ、より強い蛍光を発する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。
【0089】
なお、冷却工程において、酸化物ガラスを急冷する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、一定温度の恒温槽内で冷却する方法、大気中に放置する方法等が挙げられる。また、冷却時間、冷却速度等は、適宜設定可能である。
【0090】
なお、本発明に係る製造方法においては、上記焼成工程を実施する前に、希土類イオンなどの化学物質を上記シリカの細孔に含浸させて、細孔に埋め込み焼成を行ってもよい。
【0091】
上記方法にて製造された真空紫外光用蛍光体は、紫外領域の光の照射により励起され、強い蛍光を発するものである。すなわち、上記真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光を可視域の光へ高効率に変換することができるものである。さらに、上記真空紫外光用蛍光体は、ガラス母材が酸化物ガラスであるため、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度も優れている。したがって、上記の構成によれば、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度が優れているとともに、強い発光を呈する真空紫外光用蛍光体を容易に製造することができる。また、上記真空紫外光用蛍光体は、Eu等の希土類を多量に含ませなくても強力に発光するため、製造コストを低減することも可能である。
【0092】
上記真空紫外光用蛍光体は、ガラス母材が紫外領域で石英ガラス並みの透過率を有するため、励起源の短波長化やHgフリーランプで使用されるXe光(176nm)に良く対応して可視光の蛍光を発する。すなわち、上記真空紫外光用蛍光体は、新しい光機能性材料として有効に利用することができる。
【0093】
それゆえ、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、照明装置や、表示装置等に好適に用いることができる。
(2)真空紫外光用蛍光体
本発明の真空紫外光用蛍光体は、上記の真空紫外光用蛍光体の製造方法によって製造されたものである。すなわち、本発明の真空紫外光用蛍光体は、重金属または希土類元素を含んでなるアルカリホウケイ酸塩ガラスを原料として、上記分相工程、酸処理工程、吸着工程、焼成工程を経て作製されたものである。
【0094】
また、本発明の真空紫外光用蛍光体としてより具体的なものは、その原料となるアルカリホウケイ酸塩ガラスに、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅のいずれかの元素の酸化物が0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含まれるものである。
【0095】
上記真空紫外光用蛍光体は、上述のような製造方法によって作製されたものであるため、酸処理によってアルカリホウケイ酸塩ガラス中に微量に含まれるFeが溶出され、Fe濃度が低くなっている。これによって、上記真空紫外光用蛍光体のガラス母材は高い紫外光透過率を呈することができる。さらに、多孔質ガラスに様々な金属原子が吸着されているため、紫外光によって励起され、強い発光を示すことができる。
【0096】
すなわち、本発明の真空紫外光用蛍光体は、より短波長の光で励起することができるという利点を有する。言い換えると、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、紫外光またはX線を可視域の光へ高効率に変換することができるものである。さらに、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、ガラス母材が安定な酸化物ガラスであるため、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度も優れている。したがって、より短波長の光で励起できるだけでなく、紫外光照射による欠陥も発生し難いという利点を有する。
【0097】
また、上記真空紫外光用蛍光体が、セリウムまたはクロムを含むアルカリホウケイ酸塩ガラスから作製される場合に、焼成工程の前にEDTAを含有する酸で酸処理が施されれば、そのガラス母材は波長185nm付近で石英ガラスとほぼ同程度の紫外光透過率を有することができる。石英ガラスは溶融法やCVD法などによって製造されるが、バイコール法により得られるガラスに比べると高コストとなる。したがって、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、そのガラス母材が石英ガラスとほぼ同じ紫外光透過率を有するにもかかわらず、石英ガラスよりも低コストで大量に製造することができるため、大型化が可能であるという利点も有する。
【0098】
さらに、上記真空紫外光用蛍光体は、従来のバイコール法によって製造されたガラスと同様にシリカが多孔質であるため、透光性と高い表面積をあわせ持つ。さらに、母材である多孔性ガラスが、Hgフリーランプで使用されるXe光(176nm)に対して高い透過性を有する。そのため、上記真空紫外光用蛍光体は、そのガラス母材が従来のバイコール法によって製造されるガラスよりも紫外光透過率が高く、石英ガラスとほぼ同程度の紫外光透過率を有している。したがって、上記真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光を可視域の光へ高効率に変換することができるものと言える。
【0099】
また、本発明の真空紫外光用蛍光体は、製造条件を適宜変更することによって、例えば、チューブ、板、ファイバー等といった種々の形状に成形することが可能であり、本発明の応用範囲をさらに拡大することができる。上記真空紫外光用蛍光体の種々の形状に成形する具体的な方法としては、例えば、上記アルカリホウケイ酸塩ガラスを溶融させた後に、種々の形状の金型に流し込んで冷却するという方法を挙げることができる。
【0100】
本実施の形態において説明した真空紫外光用蛍光体の製造方法では、その原料となるアルカリホウケイ酸塩ガラスに、Mn、Ce、Cr、Co、Cuのいずれかの酸化物が0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含まれるものを例に挙げて説明したが、本発明は上記アルカリホウケイ酸塩ガラスに他の重金属あるいは希土類元素が含まれるものであってもよい。
【0101】
また、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、後述する実施例に示すように、真空紫外領域の光の照射により励起され、強い蛍光を発するものである。さらに、真空紫外光照射による欠陥も発生し難いという利点を有する。さらに、Cu等の金属原子を多量に含ませなくても強力に発光するため、製造コストを低減することも可能である。
【0102】
具体的には、後述する実施例に示すように、例えば、金属原子としてGd、Ce、およびTbを用いて、還元雰囲気中で1100℃にて焼成を行うことにより得られた真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光励起によって発光強度の大きい発光を呈した。
【0103】
また、金属原子としてYを用いて、還元雰囲気中で1100℃にて焼成を行うことにより得られた真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光励起によって発光強度の大きい発光を呈した。
【0104】
また、金属原子としてCuを用いて、還元雰囲気中で1100℃にて焼成を行うことにより得られた真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光励起によって発光強度の大きい発光を呈した。さらに、焼成を窒素雰囲気中で行うと、発光強度は増大した。
【0105】
また、金属原子としてEuを用いて、還元雰囲気中で1100℃にて焼成を行うことにより得られた真空紫外光用蛍光体は、真空紫外光励起によって発光強度の大きい発光を呈した。
【0106】
また、還元環境下にて焼成を行うことにより、本発明に係る真空紫外光用蛍光体では、Cuイオン等の金属イオンとガラスの界面との状態が通常の酸化物ガラスとは異なる状態になっていると考えられるが、詳細については、現在検討中である。
【0107】
さらに、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、バーナーで加温しながらでも強く発光する。また、加温した湯中でも強く発光する。このことから、上記真空紫外光用蛍光体は、高温環境下の空気中、水中のいずれの環境でもでも強く発光し、優れた耐熱性と発光性を併せ持つといえる。勿論、上記真空紫外光用蛍光体は、高温環境下でなくとも強く発光することはいうまでもない。
【0108】
なお、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、上記製造方法により得られるものであればよい。
【0109】
本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、上述のように、紫外光透過性、耐熱性、化学的耐久性、および機械的強度に優れており、さらに透明性が高いため、短波長の光で励起できるだけでなく、紫外光照射による欠陥も発生し難いという利点を有する。また、上記真空紫外光用蛍光体は、金属原子を大量に使用していないため、より低価格で製造可能であるという利点を有する。
【0110】
さらに、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、製造条件を適宜変更することにより、例えば、チップ、チューブ、板、ファイバー等といった種々の形状に成形することが可能である。具体的には、例えば、アルカリホウケイ酸塩ガラスを製造する際、後述する実施例に示すように、一旦高温溶融させる工程がある。この高温溶融させた後、種々の形状の金型に流し込み冷却させて成形することにより、所望の形状のアルカリホウケイ酸塩ガラスを製造できる。したがって、上記種々の形状のアルカリホウケイ酸塩ガラスを用いることによって、チップ、チューブ、板、ファイバー等といった種々の形状の真空紫外光用蛍光体を製造することができる。なお、微少なチップに成型すれば、有機バインダーを利用して塗布する必要が無く、焼成工程を省略することも出来る。
【0111】
このため、本発明に係る真空紫外光用蛍光体は、例えば、エキシマレーザー等の光軸調整等に使用可能である。さらに、ランプ用蛍光管、蛍光ファイバー、ディスプレイ、LCDのバックライト、またはプラズマディスプレイ等の表示装置等に利用可能である。
【0112】
以下にいくつかの実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0113】
〔実施例1〕
実施例1では、市販の試薬:Na2CO3、CaCO3、Al(OH)3、SiO2、Ce23、を用いて、Na2O:11.5(wt%)、CaO:6.0(wt%)、Al23:4.0(wt%)、SiO2:77.6(wt%)、Ce23:1.0(wt%)のガラス組成となるように各試薬を秤量・混合し、白金坩堝を用いて、1450℃で4時間溶融してガラスを得た。
【0114】
このガラスを粗粉砕して、得られた粉砕ガラスにH3BO3を溶融させて混合ガラスを得た。その際、粉砕ガラスの重量部100に対して、B23に換算して50wt%となるように、H3BO3を加えた。溶融させた混合ガラスを冷却し、厚さ0.8mm弱の板状ガラスを得た。
【0115】
得られた板状ガラスを研磨した後、590℃の熱処理炉で40時間熱処理を行い、分相させた。そして、分相させた板状ガラスと1N硝酸とを密閉容器中に仕込み、90℃で24時間酸処理を行った。
【0116】
この多孔質ガラスを、2.00gのGd(NO3)3・xH2Oを5mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、次に350℃で乾燥させた。この処理を行った多孔質ガラスを、さらに、0.1gのCe(NO3)3・6H2Oを25mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、再度350℃で乾燥させた。このように二度の処理を行った多孔質ガラスを、さらに、0.3gのTb(NO3)3・6H2Oを10mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、やはり350℃で乾燥させ、金属吸着多孔質ガラスを得た。
【0117】
以上の処理を経て得た金属吸着多孔質ガラスを、カーボンを入れたアルミナるつぼ中で、2℃/分の速度で1100℃まで温度を上昇させ、2時間、焼成を行い、最終製造物である金属含有ガラスを得た。
【0118】
このようにして得た金属含有ガラスを、Xeが数Torr封入されたガイスラー管中に入れ、100Vの電圧をかけて、テスラーコイルを用いて放電を行った。すると、電気を消した昼間の部屋において、Xeの放電光によって励起された、可視光の緑色の発光を肉眼で観察できた。
【0119】
なお、実施例1の比較例として、波長185nm以下の真空紫外光に透過性を有しない市販の多孔質ガラス、あるいは廃ガラスなどから公知の方法を利用して得られた多孔質ガラスに、Tbを含浸させ、同様の方法で比較用のガラスを作成した。このような比較用ガラスを、Xeの放電光で観察したところ、暗室であっても全く発光しなかった。
【0120】
〔実施例2〕
実施例1と同様の多孔質ガラスを、5.0gのY(NO3)3・6H2OとEu(NO3)3・xH2Oとを10mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、次に350℃で乾燥させた。この操作を再度繰り返し、その後、大気中で、2℃/分の速度で1100℃まで温度を上昇させ、その後2時間焼成して、金属含有ガラスを得た。
【0121】
このようにして得た金属含有ガラスを、Xeが数Torr封入されたガイスラー管中に入れ、100Vの電圧をかけて、テスラーコイルを用いて放電を行った。すると、電気を消した昼間の部屋において、Xeの放電光によって励起された、可視光の赤紫色の発光を肉眼で観察できた。
【0122】
〔実施例3〕
実施例1と同様の多孔質ガラスを、0.2gのCuCl2・2H2Oを25mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、次に350℃で乾燥させた。この操作を再度繰り返し、その後、実施例1と同様に焼成して、金属含有ガラスを得た。
【0123】
このようにして得た金属含有ガラスを、Xeが数Torr封入されたガイスラー管中に入れ、100Vの電圧をかけて、テスラーコイルを用いて放電を行った。すると、電気を消した昼間の部屋において、Xeの放電光によって励起された、可視光の緑色の発光を肉眼で観察できた。また、焼成を窒素雰囲気中で行うと、発光強度は増加した。
【0124】
〔実施例4〕
実施例1と同様の多孔質ガラスを、0.2gのEu(NO3)3・xH2Oを10mlの蒸留水に溶解させた水溶液に含浸させて、次に350℃で乾燥させた。この操作を再度繰り返し、その後、実施例1と同様に焼成して、金属含有ガラスを得た。
【0125】
このようにして得た金属含有ガラスを、Xeが数Torr封入されたガイスラー管中に入れ、100Vの電圧をかけて、テスラーコイルを用いて放電を行った。すると、電気を消した昼間の部屋において、Xeの放電光によって励起された、可視光の青色の発光を肉眼で観察できた。
【0126】
また、得られた金属含有ガラスについて、真空紫外蛍光分光光度計(分光計器製MVUV-3型)を用いて蛍光スペクトルの測定を行った。励起源には重水素ランプを用い、窒素パージによって真空紫外領域の光を吸収する酸素を雰囲気中から除くことで、真空紫外領域光励起による測定を行った。図1に、得られた金属含有ガラスを155nm、160nmの波長の紫外光で励起した時の蛍光スペクトルを示す。図中、155nmの波長の紫外光で励起したときの結果を実線で、160nmの波長の紫外光で励起したときの結果を破線で示す。図1に示すように、得られた金属含有ガラスは、真空紫外領域の光の照射により強い蛍光を発することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明の真空紫外光用蛍光体の製造方法によれば、ガラス母材が高い紫外光透過率を有し、化学的・機械的に優れていると共に、特に真空紫外領域の照射により強い蛍光を発する真空紫外光用蛍光体を製造することができる。それゆえ、本発明は、蛍光体を製造または加工する各種素材産業だけでなく、照明装置や表示装置を製造する電気・電子機器産業や、これら装置に用いられる各種部品を製造する電気・電子部品産業にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】実施例4において得られた真空紫外光用蛍光体についての蛍光スペクトル測定の結果を示す図である。
図面
【図1】
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