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明細書 :レーザー結晶用ダイボンド装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4191111号 (P4191111)
公開番号 特開2006-041316 (P2006-041316A)
登録日 平成20年9月26日(2008.9.26)
発行日 平成20年12月3日(2008.12.3)
公開日 平成18年2月9日(2006.2.9)
発明の名称または考案の名称 レーザー結晶用ダイボンド装置
国際特許分類 H01L  21/52        (2006.01)
H01S   3/042       (2006.01)
FI H01L 21/52 F
H01S 3/04 L
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2004-221243 (P2004-221243)
出願日 平成16年7月29日(2004.7.29)
審査請求日 平成16年7月30日(2004.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
発明者または考案者 【氏名】常包 正樹
【氏名】平等 拓範
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】土屋 知久
参考文献・文献 特開2004-193539(JP,A)
特開2004-006521(JP,A)
特開平05-337865(JP,A)
特開平04-094140(JP,A)
特開昭59-119737(JP,A)
特開2003-218131(JP,A)
特開平06-069286(JP,A)
特開2004-087610(JP,A)
調査した分野 H01S 5/00- 5/50
H01L 21/52
H01L 21/58
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザー結晶をヒートシンクに固着するダイボンド装置において、
(a)ピン台座が係合する複数個のピン保持体と、
(b)該ピン保持体にガイドされるピンと、
(c)前記ピン保持体の顎状下部と前記ピンの顎部との間に配置されるスプリングと、
(d)前記ピン台座の押圧により前記スプリングを介して前記ピンを上下にスライド可能になし、前記ピンの先端面をレーザー結晶上に接触させて該レーザー結晶を所定の圧力でヒートシンクに押し付けた状態で加熱し、前記レーザー結晶を前記ヒートシンクに固着する手段を具備することを特徴とするレーザー結晶用ダイボンド装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記レーザー結晶と前記ピンの先端面の間に緩衝媒質を挟むことを特徴とするレーザー結晶用ダイボンド装置。
【請求項3】
請求項記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記レーザー結晶に接する緩衝媒質の表面に頂上と谷の高さが0.5μm~100μmの凹凸が形成されていることを特徴とするレーザー結晶用ダイボンド装置。
【請求項4】
請求項1記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記ピンの先端面の中央部に逆凹面形状部を有し、該逆凹面形状部を除いて、前記レーザー結晶に接するピンの先端が面になっており、前記ピンの先端面の中央部にピンの中心を貫通する穴を有し、該穴を通して前記レーザー結晶を真空吸着して保持することを特徴とするレーザー結晶用ダイボンド装置。
【請求項5】
請求項記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記ピンの上部に超音波を伝える機構を具備することを特徴とするレーザー結晶用ダイボンド装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー結晶をヒートシンク等に固着するためのレーザー結晶用ダイボンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、固体レーザー装置の高出力化と小型化のために、レーザー結晶を高熱伝導のヒートシンクに固着する技術の重要性が高まってきている。従来技術としては、レーザー結晶とヒートシンクの間にインジウム(In)やグラファイトの薄膜を挟み、外部から圧力をかけて密着させ熱伝達させる方法が良く知られている。しかし、実際には、これらの薄膜とレーザー結晶あるいはヒートシンク媒質との界面に、多くの空孔や酸化層、変性層が存在するために、期待するほどの冷却効率が得られないことが問題になっていた。また、かけた圧力によってレーザー結晶が歪み、レーザー発振特性が劣化する問題があった。さらに安定した熱伝導を行わせるためには圧力を継続的にかけ続ける必要があるため、環境温度や経年変化によって加圧機構の能力が低下した場合、熱伝達が低下する問題があった。
【0003】
そこで、半導体レーザーや発熱の大きいパワー半導体デバイスの放熱技術として知られているように、熱伝導率の高いハンダ等を媒質として用い、固着によってレーザー結晶をヒートシンクに固定、冷却する方法が注目されている。固着の際一度加熱することで表面の酸化層、変性層を除去したり、界面で固着材とレーザー結晶表面層、ヒートシンク表面層と物理的に反応、一体化することで空孔をなくし冷却効率を大幅に改善することができる。また、近年高い熱伝導性を有する有機系あるいは無機系の接着剤も開発普及しており、これは固化、接着させる際にハンダのような高い温度を必要としないために固着作業が簡便であるという特徴がある。従来レーザー結晶とヒートシンクをハンダ等で固着した構造の例として以下のような文献が知られている。

【特許文献1】米国特許第5553088号公報
【特許文献2】米国特許第6658036号公報
【非特許文献1】アイトリプルイー ジャーナル オブ セレクテッド トピックス イン クォンタム エレクトロニクス 6巻(2000年発行)、650頁
【非特許文献2】オプティクス・レターズ、27巻(2002年発行)、1791頁
【非特許文献3】アプライド・フィジックス・レターズ、83巻(2003年発行)、4086頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハンダ等を固着材として用いる場合、それぞれの媒質の位置合わせ、固定、加圧と加熱を行うダイボンド装置が必要となるが、レーザー結晶をヒートシンクに固着する場合には通常の半導体デバイスと異なり、レーザー結晶の発熱面積が大きいこと、発熱密度が高いこと、さらにレーザー結晶側の固着面に熱伝達の不均一性があった場合、レーザー結晶中の温度分布の不均一性や熱歪みによって屈折率が局所的に変化するためにレーザー発振特性が劣化する可能性があった。また、一般にレーザー結晶の表面やレーザー結晶と固着材の間には、レーザー光を反射したり透過したりするための誘電体や金属の反射膜や反射防止膜などの反射率制御膜が形成されており、これらがダイボンドの際に物理的に傷つけられたり、熱や歪みによって剥がれたりした場合にも、レーザー発振特性が著しく劣化あるいは動作不能になる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、レーザー結晶をヒートシンクに固着するためのダイボンド装置において、レーザー結晶面内できわめて均一かつ高い熱伝導で固着を行い、かつレーザー結晶やその表面に付加された反射率制御膜を傷つけることのないレーザー結晶用ダイボンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕レーザー結晶をヒートシンクに固着するダイボンド装置において、ピン台座が係合する複数個のピン保持体と、このピン保持体にガイドされるピンと、前記ピン保持体の顎状下部と前記ピンの顎部との間に配置されるスプリングと、前記ピン台座の押圧により前記スプリングを介して前記ピンを上下にスライド可能になし、前記ピンの先端面をレーザー結晶上に接触させてこのレーザー結晶を所定の圧力でヒートシンクに押し付けた状態で加熱し、前記レーザー結晶を前記ヒートシンクに固着する手段を具備することを特徴とする。
【0007】
〕上記〔1〕記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記レーザー結晶と前記ピンの先端面の間に緩衝媒質を挟むことを特徴とする。
【0008】
〕上記〔〕記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記レーザー結晶に接する緩衝媒質の表面に頂上と谷の高さが0.5μm~100μmの凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0009】
〕上記〔1〕記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記ピンの先端面の中央部に逆凹面形状部を有し、該逆凹面形状部を除いて、前記レーザー結晶に接するピンの先端が面になっており、前記ピンの先端面の中央部にピンの中心を貫通する穴を有し、該穴を通して前記レーザー結晶を真空吸着して保持することを特徴とする。
【0010】
〕上記〔〕記載のレーザー結晶用ダイボンド装置において、前記ピンの上部に超音波を伝える機構を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレーザー結晶用ダイボンド装置によれば、レーザー発振する領域や反射率制御膜を傷つけることなく、レーザー結晶をヒートシンクに固着することができるので、広い面積におよぶレーザー結晶を高熱伝導でかつ高い面内均一性の接合が可能になり、レーザーの高い発振効率、高出力でも安定した動作特性とビーム品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
レーザー結晶をヒートシンクに固着するダイボンド装置において、ピン台座が係合する複数個のピン保持体と、このピン保持体にガイドされるピンと、前記ピン保持体の顎状下部と前記ピンの顎部との間に配置されるスプリングと、前記ピン台座の押圧により前記スプリングを介して前記ピンを上下にスライド可能になし、前記ピンの先端面をレーザー結晶上に接触させてこのレーザー結晶を所定の圧力でヒートシンクに押し付けた状態で加熱し、前記レーザー結晶を前記ヒートシンクに固着する手段を具備する。よって、広い面積におよぶレーザー結晶を高熱伝導でかつ高い面内均一性の接合が可能になり、レーザーの高い発振効率、高出力でも安定した動作特性とビーム品質を得ることができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施例を示す固体レーザー結晶用ダイボンド装置の断面図である(本願請求項1の発明に対応)。
【0015】
この図において、土台1の上に断熱材2とヒーター3があり、このヒーター3上にヒートシンク4が設置されている。さらに、ヒートシンク4の上には固着材5を挟んでレーザー結晶6が配置されている。ピン7はピン保持体8の遊合穴8Bを通して上下に稼働できるようになっており、さらにピン7にはピン鍔部7Aが形成されており、このピン7の鍔部7Aとピン保持体8の鍔状下部8Aとの間にコイル状のスプリング9が配置されている。また、ピン保持体8の鍔状下部8Aには一枚のピン台座10が載置され、このピン台座10に荷重11が印加可能に構成されている。つまり、ピン7を保持する複数のピン保持体8は一枚のピン台座10に固定されており、ピン台座10に上面から荷重11(圧力)を加えて押し付けることにより、ピン台座10に応動する個々のピン7のスプリング9が圧縮されてピン7の先端面からレーザー結晶6を押し付ける力が発生する。スプリング9の縮んだ長さとピン7の先端面からレーザー結晶6を押す力とは相関があるため、ピン台座10をレーザー結晶6の表面に対し所望の距離で保持することにより、ピン台座10に固定されているピン7の数や位置によらず、各ピン7の先端面からレーザー結晶6に所望の力がかかる。
【0016】
図2は図1に示した1個のピンの支持機構を示す断面図である。
【0017】
図1に示したように、ピン7はピン台座10によって押圧されるピン保持体8の遊合穴8Bを通して上下に稼働できるようになっており、さらにピン7にはピン鍔部7Aが形成されており、このピン7の鍔部7Aとピン保持体8の鍔状下部8Aとの間にコイル状のスプリング9が配置されている。因みに、かかるピン7の支持機構自体として、市販されている例としては(株)サンケイエンジニアリングの伝導接触ピンCPシリーズなどがある。
【0018】
図3は本発明の他の実施例を示す1個のピンの支持機構を示す断面図である。
【0019】
この図に示すように、ピン台座10′に上端が閉じた筒状のピン保持体8′が固定され、そのピン保持体8′内にコイル状のスプリング9′が配置され、そのスプリング9′の下端に、筒状のピン保持体8′の内側に係合する筒上のピン本体7-1と細いピン先端部7-2を有するピン7′を配置するようにしている。因みに、かかるピン7′の支持機構自体として、市販されている例としてはアキュレイト販売(株)のスプリングプローブUPシリーズなどがある。
【0020】
図1~図3に示したように、ピン台座10,10′に加えられた押圧力は、ピン保持体8,8′に伝達され、ピン7,7′にスプリング9,9′を介して弾性的な押圧力が加えられるように構成される。
【0021】
図4は本発明の第1実施例によるレーザー結晶用ダイボンド装置の作用と効果(その1)についての説明図である。なお、図1と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0022】
この図においては、ヒートシンク4-1のレーザー結晶6を固着する面がヒートシンク4-1の底面に対して少し傾きを持っている。このようなヒートシンク4-1の形態は、その製造過程で起こり得るものである。この場合、固着されるレーザー結晶6もヒートシンク4-1の底面の傾きに応じて少し斜めになるが重要なことはこのような状態でもレーザー結晶6とヒートシンク4-1を面内で密着させることである。本発明のダイボンド装置によれば、それぞれピン7がピン保持体8の遊合穴8Bを通して独立に稼働するので、図4に示すようにヒートシンク4-1とレーザー結晶6が斜めになっていてもすべてのピン7がレーザー結晶6の表面に接触し、かつレーザー結晶6全体をヒートシンク4-1に密着させるように圧力をかけることができる。
【0023】
具体的には、図4に示すように、レーザー結晶6表面の高さが高い領域(右側)ではピン7の先端面とピン台座10との距離が近いためによりスプリング9が圧縮され、大きな力でレーザー結晶6をヒートシンク4-1に押し付け、逆にレーザー結晶6表面の高さが低い領域(左側)ではこのピン7の先端面とピン台座10との間隔が広いためにレーザー結晶6をヒートシンク4-1に押しつける力はやや低下するが、レーザー結晶6がヒートシンク4-1と十分密着するように押し付けることが可能である。
【0024】
図5は本発明の第1実施例によるレーザー結晶用ダイボンド装置の作用と効果(その2)についての説明図である。
【0025】
この図に示す例ではヒートシンク4-2のレーザー結晶6を固着する面に緩やかな凹凸を有している。このような場合でもそれぞれのピン7は独立に稼働し、レーザー結晶6の全面をヒートシンク4-2に押し付けることができるので、ヒートシンク4-2の表面形状に合わせてレーザー結晶6を密着させることができる。
【0026】
上記した図4および図5の例ではレーザー結晶6を押し付けるヒートシンク表面が土台1と平行平面でない場合を示したが、もちろんこれら以外にもレーザー結晶6や固着材5の厚みや表面形状に変動があった場合においてもピン7はレーザー結晶6と固着材5とヒートシンクを密着させるようにレーザー結晶6を押し付けることができる。
【0027】
図6は本発明の第2実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項第2項の発明に対応)。なお、図1と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0028】
この図において、レーザー結晶20は内部にレーザー発振する領域21とレーザー発振しない領域22を有しており、レーザー結晶20表面には反射率を制御する反射率制御膜23が形成されている。ピン31はレーザー発振しない領域22に配置されており、レーザー発振する領域21には配置されていない。これは、レーザー発振する領域21で発生したレーザー光はその表面に形成された反射率制御膜23(一般には反射率が極力低くなるように設計された誘電体多層膜)を通して外部に取り出されるが、この誘電体多層膜がレーザー結晶20そのものに比べ柔らかく傷つきやすい場合が多いからである。
【0029】
このように構成したことにより、レーザー発振する領域21及びそこに対応する反射率制御膜23の表面にはピン31が接触していないために、ピン31でレーザー結晶20をヒートシンク4に押し付ける際、ピン31の先端面でレーザー発振する領域21の反射率制御膜23を傷つける心配がない。
【0030】
しかしながら、レーザー発振する領域21はレーザー発振動作時に発熱量が多くもっとも放熱を必要とする領域であり、ヒートシンク4にもっとも密着させなければならない領域である。
【0031】
図7は本発明の第2実施例を示すレーザー結晶内部にレーザー発振する領域とレーザー発振しない領域を有する場合のレーザー結晶面上のピンで抑えるべき点を示す図であり、図7(a),(b)はレーザー発振する領域が円形である場合、図7(c),(d)はレーザー発振する領域が四角形である場合を示している。
【0032】
図7(a)においては、レーザー発振する円形の領域42の回りのレーザーを発振しない領域41上であって、レーザー発振する円形の領域42に近接してこの領域42を取り囲むように4本のピン43を配置するようにしている。
【0033】
また、図7(b)においては、レーザー発振する円形の領域44の回りのレーザー発振しない領域45上であって、レーザー発振する円形の領域44に近接してこの領域44を取り囲むように等間隔で8本のピン46を配置するようにしている。
【0034】
さらに、図7(c)においては、レーザー発振する正方形の領域47の回りのレーザー発振しない領域48上であって、レーザー発振する正方形の領域47に近接してこの領域47を取り囲むように4本のピン49を配置するようにしている。
【0035】
また、図7(d)においては、レーザー発振する長方形の領域53の回りのレーザー発振しない領域52上であって、レーザー発振する長方形の領域53に近接してこの領域53を取り囲むように8本のピン51を配置するようにしている。
【0036】
このように、レーザー結晶内部にレーザー発振する領域と発振しない領域を有する場合、レーザー発振する領域とレーザーを発振しない領域との境界に沿ってピンを配置することで、直接押し付けることのできないレーザー発振する領域のヒートシンクへの密着性を改善することができる。
【0037】
また、同じレーザー結晶内に複数のレーザー発振する領域がある場合でも、レーザー発振しない領域にピンを配置することで、図6に示した実施例と同じ理由によりレーザー発振する領域に形成された反射制御膜を傷つけることがない。さらに、その場合、レーザー発振する領域とレーザーを発振しない領域との境界に沿ってピンを配置することで、図7に示した実施例と同じ理由により直接押し付けることのできないレーザー発振する領域のヒートシンクへの密着性を改善することができる。
【0038】
図8は本発明の第3実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項第項~第項の発明に対応)。なお、図6と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0039】
この実施例においては、ピン31とレーザー結晶20の間に緩衝媒質60が挟まれている。このような構成にすることにより、ピン31の圧力を緩衝媒質60の面積分に分散できるために、面積の非常に小さなピン31の押さえ付けによるレーザー結晶20や反射率制御膜23の傷や割れを防ぐことができる。また、緩衝媒質60はレーザー発振する領域21に直接接触していないためにレーザー発振する領域21及びそこに対応する反射率制御膜23の表面に傷や割れを生じさせることがない。
【0040】
図9は本発明の第3実施例の固体レーザー結晶ダイボンド装置を分解した斜視図である(本願請求項第項の発明に対応)。緩衝媒質はレーザー発振する領域21を避けるようにドーナッツ形状の緩衝媒質61となし、かつ一体に形成することでレーザー結晶20への位置合わせが容易になるように構成されている。
【0041】
図10は本発明の第4実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項第項の発明に対応)。なお、図6と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0042】
この実施例では、緩衝媒質62はレーザー発振する領域21に接しないように、逆凹面形状に加工された逆凹面形状部63が形成されるようにしている。
【0043】
このように構成することで、レーザー発振する領域21及びそこに対応する反射率制御膜23の表面の傷や割れを防ぐことができる。
【0044】
図11は本発明の第5実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項第項の発明に対応)。なお、図6と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0045】
この実施例では、緩衝媒質64の反射率制御膜23に接する面全面に0.5μm~100μmの微小凹凸65が形成されている。このように構成することにより、ダイボンドの際、加熱により緩衝媒質64と反射率制御膜23が融着して離れなくなったり、反射率制御膜23が傷ついたりすることを避けることができる。
【0046】
この図11では緩衝媒質64による圧力の分散と接触面の微小凹凸65の形成による張り付きの防止効果を考えてレーザー発振する領域21にもピン66を配置して、押さえ付けるようにしている。このように構成することによりもっとも発熱量が大きく、ヒートシンク4への密着が必要なレーザー発振する領域にピン66による圧力を加えることができる。
【0047】
緩衝媒質64の材料の例としては、レーザー結晶と同じYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)でもよいし、サファイア、水晶、シリコンなどの結晶でもよい。また、石英やBK7などのガラス材料でもよい。さらにはアルミニウムや銅、ステンレスなどの金属材料でもよい。また、SiC、AlN、BNなどのセラミックでもよい。
【0048】
接触面に0.5μm以上の微小凹凸65を形成する手法としては、研磨やサンドブラストのような機械的な加工はもちろん、化学的機械的研磨でもよい。さらにエッチングでもよいし、メッキやアルマイト処理、黒化処理などの電気化学的処理でもかまわない。
【0049】
図12は本発明の第6実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項項の発明に対応)。なお、図6と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0050】
この図において、レーザー結晶20内でレーザー発振する領域21にはピン71の先端面71-Aが直接触れないようにピン71の先端面71-Aに逆凹面形状に加工された逆凹面形状部72を形成するようにしている。
【0051】
このように、ピン71の先端面71-Aを逆凹面形状にすることでレーザー結晶20のレーザー発振する領域21へ傷が付くのを防止することができ、かつレーザー発振する領域21の周囲を均一にヒートシンク4に押さえ付けることができる。なお、図中、73はスプリング、74はピン保持体を示している。
【0052】
図13は本発明の第7実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項項の発明に対応)。なお、図6と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0053】
この実施例では、ピン81の先端に平坦面81-Aを有し、先端が平坦になったピン81の内部の中央には真空に引くための中空機構82を備えており、レーザー結晶20を吸引して保持し、レーザー結晶20をヒートシンク4に位置わせを行った後に、レーザー結晶20をヒートシンク4に押さえ付け固着する。ピン81の先端を平坦面81-Aにすることでレーザー結晶20を押さえ付ける力を分散させ、レーザー結晶20や反射率制御膜23へ傷が付くのを防止することができる。
【0054】
図14は本発明の第8実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である(本願請求項第10項の発明に対応)。なお、図12と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0055】
この図において、レーザー結晶20内でレーザー発振する領域21にはピン91の先端面91-Aが直接触れないように逆凹面形状に加工された逆凹面形状部92を形成するようにしている。さらに、ピン91の逆凹面形状部92の内部の中央には真空に引くための中空機構93を具備しており、レーザー結晶20を吸引して保持し、ヒートシンク4に位置合わせを行った後に、レーザー結晶20をヒートシンク4に押さえ付け固着する。ピン91の先端面91-Aを逆凹面形状にすることでレーザー結晶20のレーザー発振する領域21へ傷が付くのを防止することができ、かつ、レーザー発振する領域21の周囲を均一にヒートシンク4に押さえ付けることができる。
【0056】
図15は本発明の第9実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の平面図である(本願請求項第11項の発明に対応)。なお、図14と同様の部分には同じ符号を付してそれらの説明は省略している。
【0057】
この実施例では、レーザー結晶20を押さえるピン91の上端側に超音波発生部94を固定するようにしている。このように構成することにより、ダイボンド中、固着材5のハンダが融解した時点でピン91に超音波を印加し、ハンダ表面の極薄い酸化膜を破ってハンダとレーザー結晶20との界面で良好な接触を得ることができる。さらに、融解したハンダが均一に攪拌され、かつボイドの発生も防止することができる。
【0058】
以上の実施例において、レーザー発振元素としては、Yb(イッテルビウム)やNd(ネオジウム)でもよいし、Tm(ツリウム)、Ho(ホロミウム)などの遷移金属でもよい。また、Cr(クロム)やTi(チタン)でもよいし、それらを複数含んでもよい。また、レーザー結晶の母材としては、YAG以外にYVO4 (イットリウム・バナデート)、GdVO4 (ガドリウムバナデート)、YLF(イットリウム・リチウム・フロライド)、KGW(タングテート)、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)などでもよい。また、最近ではこれらの材料のセラミックあるいは多結晶の構造体も利用可能である。
【0059】
固着材は高熱伝導性の有機系、無機系の接着剤でもよいし、Au,Ag,Sn,In、Sb、Cu、Pbなどを含む低融点金属材料、ハンダ材でも構わない。レーザー結晶や反射率制御膜の耐熱性を考慮し、最適な融点や硬度を得るための金属材料の混合比が選択される。
【0060】
これらの固着材とレーザー結晶との密着性を上げるために、レーザー結晶側にも適切な処理や密着性改善層の形成が必要である。たとえば、ハンダ材を固着材に用いるのであれば、レーザー結晶側にCr、Ti、Ni、Pt、Auなどの薄膜金属が積層される。
【0061】
ヒートシンクの材料はCu,CuWなどの金属材料をはじめ、SiC,AlN,BN、DLCでもよい。レーザー結晶と同じく固着材との密着性を上げるためにヒートシンクの表面にCr、Ti、Ni、Pt、Auなどの薄膜金属が積層される。
【0062】
ピンおよびスプリングは耐熱性に優れた材料が選択されるが、代表的なものとしてはステンレスが用いられる。ピンの先端面は緩やかな球形でもよいし平面でもよい。また、先端部に断熱性のあるセラミックや緩衝性のあるテフロン(登録商標)やフッ素樹脂を用いたりごく一部に付加してもよい。
【0063】
レーザー結晶を抑えつける圧力としては結晶全体で200~1000グラムが適当であるが、レーザー結晶の材質や厚みに応じて200グラム以下や1000グラム以上の圧力も選択可能である。ピンを多数配置することでピン1本あたりの圧力を低減することができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のレーザー結晶用ダイボンド装置は、高出力で高品質の固体レーザー装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施例を示す固体レーザー結晶用ダイボンド装置の断面図である。
【図2】図1に示した1個のピンの支持機構を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す1個のピンの支持機構を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施例によるレーザー結晶用ダイボンド装置の作用と効果(その1)についての説明図である。
【図5】本発明の第1実施例によるレーザー結晶用ダイボンド装置の作用と効果(その2)についての説明図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図7】本発明の第2実施例を示すレーザー結晶内部にレーザー発振する領域とレーザー発振しない領域を有する場合のレーザー結晶面上のピンで抑えるべき点を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図9】本発明の第3実施例の固体レーザー結晶ダイボンド装置を分解した斜視図である。
【図10】本発明の第4実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図11】本発明の第5実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図12】本発明の第6実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図13】本発明の第7実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図14】本発明の第8実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の断面図である。
【図15】本発明の第9実施例を示す固体レーザー結晶ダイボンド装置の平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 土台
2 断熱材
3 ヒーター
4,4-1,4-2 ヒートシンク
5 固着材
6,20 レーザー結晶
7,7′,31,43,46,49,51,66,71,81,91 ピン
7A ピン鍔部
7-1 ピン本体
7-2 細いピン先端部
8,8′,74 ピン保持体
8A ピン保持体の鍔状下部
8B ピン保持体の遊合穴
9,9′,73 スプリング
10,10′ ピン台座
11 荷重
21 レーザー発振する領域
22,41,45,48,52 レーザー発振しない領域
23 反射率制御膜
42,44 レーザー発振する円形の領域
47 レーザー発振する正方形の領域
53 レーザー発振する長方形の領域
60,62,64 緩衝媒質
61 ドーナッツ形状の緩衝媒質
63,72,92 逆凹面形状部
65 微小凹凸
71-A,91-A ピンの先端面
81-A 平坦面
82,93 中空機構
94 超音波発生部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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