TOP > 国内特許検索 > 有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法 > 明細書

明細書 :有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3979500号 (P3979500)
公開番号 特開2005-171221 (P2005-171221A)
登録日 平成19年7月6日(2007.7.6)
発行日 平成19年9月19日(2007.9.19)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
G02B   5/20        (2006.01)
FI C09K 11/06
G02B 5/20 101
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2004-245947 (P2004-245947)
出願日 平成16年8月25日(2004.8.25)
優先権出願番号 2003393176
優先日 平成15年11月21日(2003.11.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年12月8日(2005.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】金子 祐司
【氏名】松田 宏雄
【氏名】福田 隆史
【氏名】島田 悟
【氏名】木村 龍実
【氏名】小野寺 恒信
【氏名】笠井 均
【氏名】岡田 修司
【氏名】及川 英俊
【氏名】中西 八郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】滝口 尚良
参考文献・文献 特開2002-189123(JP,A)
特開2002-082364(JP,A)
特開2002-214653(JP,A)
特開平07-049475(JP,A)
特開2004-109951(JP,A)
特開平02-012104(JP,A)
特開昭60-212706(JP,A)
特開2002-180052(JP,A)
特開平09-297217(JP,A)
特開平11-109305(JP,A)
特開2003-315544(JP,A)
特開平03-021904(JP,A)
特開昭58-102205(JP,A)
特表2002-502051(JP,A)
特開2001-174636(JP,A)
特開昭62-267703(JP,A)
特開平08-286029(JP,A)
特開平06-079168(JP,A)
特開平11-148080(JP,A)
特開2002-196142(JP,A)
特開2001-215489(JP,A)
調査した分野 C09K 11/06
G02B 5/20
特許請求の範囲 【請求項1】
有機色素あるいは有機顔料の有機微結晶が、磁場または電場により異方性配向されて、置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーからの高分子媒体中に分散固定されていることを特徴とする有機微結晶配向分散体。
【請求項2】
置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーが、次式(1)(2)
【化1】
JP0003979500B2_000005t.gif
(式中のR1およびR4は、各々、同一または別異に、水素原子、または置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R3は、置換基を有していても、異種原子を介在させていてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン鎖を示している)で表わされるものであることを特徴とする請求項1の有機微結晶配向分散体。
【請求項3】
2は、炭素数が7以上のアルキル基であることを特徴とする請求項2の有機微結晶配向分散体。
【請求項4】
請求項1から3に記載の有機微結晶配向分散体からなることを特徴とする偏光蛍光材料。
【請求項5】
有機色素あるいは有機顔料の微結晶を、置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの固定用媒体を混合し、磁場または電場印加による異方性配向を誘起させて光硬化により固定化することを特徴とする有機微結晶配向分散体の製造方法。
【請求項6】
置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸モノマーが、次式(1)(2)
【化2】
JP0003979500B2_000006t.gif
(式中のR1およびR4は、各々、同一または別異に、水素原子、または置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R3は、置換基を有していても、異種原子を介在させていてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン鎖を示している)で表わされるものであることを特徴とする請求項5の有機微結晶配向分散体の製造方法。
【請求項7】
2は、炭素数が7以上のアルキル基であることを特徴とする請求項6の有機微結晶配向分散体の製造方法。
【請求項8】
固定用媒体は、光重合開始剤を含有していることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかの有機微結晶配向分散体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、磁場または電場印加による異方性配向を誘起させて固定化された有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機微結晶配向分散共重合体は、カラーフィルター等の光学材料として使用が試みられている。すなわち、従来ではフルカラー液晶表示装置としてはカラーフィルター方式が代表的な方式とされているが、液晶表示装置ではカラーフィルターと偏光板とによる透過率低下が問題になっていたことから、これを解決するためにたとえば積層構成として偏光機能を備えたカラーフィルター(特許文献1)とすること等が試みられている。
【0003】
偏光カラーフィルターはこのような液晶表示装置等において重要な光学材料とされているが、これを構成する材料についてはその透過率や偏光特性の向上を図るべく検討が進められている。
【0004】
そして、この出願の発明者らは、このような偏光カラーフィルターの材料として、有機色素や有機顔料の分散系に注目し、透過率や偏光機能の向上を図ることのできる、有機色素または有機顔料微粒子の分散系からなる新しい偏光カラーフィルターと、その製造方法(特許文献2)を提案した。有機色素や有機顔料の超微粒子の分散系は、電気的,光学的な異方性と分散系全体としての等方性をもつことから、有機二次非線形光学材料や、様々な光学、表示材料としての利用が期待されるからである。
【0005】
しかしながら、発明者らが提案した分散系については今後の大きな発展が期待されているものの、より最良のものへのアプローチは依然として未踏のものであった。

【特許文献1】特開平8-286029号公報
【特許文献2】特願平2002-276179号出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この出願の発明は以上のとおりの背景よりなされたものであって、フルカラー液晶表示装置等のための光学材料として有用であって、透過率や偏光機能の向上を図ることのできる、今後へのアプローチとして、重要な、有機色素または有機顔料微粒子の分散系からなる新しい有機微結晶配向分散共重合体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、有機色素あるいは有機顔料の微結晶が、磁場または電場により異方性配向されて、置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーからの高分子媒体中に分散固定されていることを特徴とする有機微結晶配向分散体を提供する。
【0008】
また、第2には、置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーが、次式(1)(2)
【0009】
【化1】
JP0003979500B2_000002t.gif
式中のR1およびR4は、各々、同一または別異に、水素原子、または置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R3は、置換基を有していても、異種原子を介在させていてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン鎖を示している)
で表わされるものであることを特徴とする有機微結晶配向分散体を、第3には、R2は、炭素数が7以上のアルキル基であることを特徴とする有機微結晶配向分散体を提供する。
【0011】
さらに、この出願の発明は、第4には、上記の有機微結晶配向分散体からなることを特徴とする偏光蛍光材料を提供する。
【0012】
そして、この出願の発明は、第5には、上記の有機微結晶配向分散体の製造方法として、有機色素あるいは有機顔料の微結晶を、置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーの固定用媒体を混合し、磁場または電場印加による異方性配向を誘起させて光硬化により固定化することを特徴とする有機微結晶配向分散体の製造方法を提供し、第6には、アルキルアクリル酸モノマーが、次式(1)(2)
【0013】
【化2】
JP0003979500B2_000003t.gif
式中のR1およびR4は、各々、同一または別異に、水素原子、または置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、R3は、置換基を有していても、異種原子を介在させていてもよい直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン鎖を示している)で表わされるものであることを特徴とする有機微結晶配向分散体の製造方法を、第7には、R2は、炭素数が7以上のアルキル基であることを特徴とする有機微結晶配向分散体の製造方法を提供し、第8には、固定用媒体は光重合開始剤を含有していることを特徴とする有機微結晶配向分散体の製造方法を提供する。

【発明の効果】
【0014】
上記のとおりのこの出願の発明によって、フルカラー液晶表示装置等のための光学材料として有用であって、透過率や偏光機能の向上を図ることのできる、今後へのアプローチとして重要な、有機色素または有機顔料微粒子の分散系からなる新しい有機微結晶配向分散体、偏光蛍光材料、並びにその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以上のとおりこの出願の発明の有機微結晶配向分散体は、図1に模式的に例示したように、有機色素または有機顔料のナノサイズの微結晶のコロイド分散系に磁場または電場などの外場を印加させることにより誘起される微結晶異方性配向効果を利用した有機微結晶配向分散体としている。このような有機微結晶配向分散体の微結晶異方性配向効果は可逆であり、非外場印加時には等方的状態となる。また、この出願の発明の有機微結晶配向分散体は、分散液中に異方化された状態で微結晶を特有の高分子媒体中固定化されてもいる。
【0016】
このような特徴を有するこの出願の発明について、以下のその実施の形態について説明する。
【0017】
まず出願の発明においては、有機色素あるいは有機顔料についてはその「色素」「顔料」の区分に係わりなく、たとえば液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルター用の色素や顔料をはじめとして各種のものであってよい。好ましくは、スチリルピリジニウム色素:DAST、ポリ1,6-ジ(n-カルバゾイル)-2,4-ヘキサジエン:poly(DCHD)、多環芳香族化合物(アントラセン、テトラセン、ペンタセン、コロネン)等が挙げられる。これらの有機色素や有機顔料のナノサイズの微結晶、つまり、この出願の発明においては、一般的に1μm(1000nm)以下のサイズの微結晶は、まず、分散液中に分散される。
【0018】
ここで、分散液としては、上記有機色素あるいは有機顔料を分散させることができるものであれば特に限定されることはない。例えば以下に説明する固定化用の媒体であってもよい。分散液中に分散固定した有機微結晶配向分散体とする場合には、固定化用の媒体が用いられる。この場合の固定化用の媒体としては、前記のとおりの有機高分子、すなわち、前記のとおりの置換基を有していてもよいアルキルアクリル酸のモノマーまたはオリゴマーであって、より好適には前記の式(1)(2)で示されるものの1種以上のものが用いられる。なかでも光により架橋硬化が行われるものが用いられる。モノマーの具体例としては、例えば、炭素数7以上のアルキル基を有するオクチルアクリル酸、ラウリルアクリル酸、ラウリルメタクリル酸等の直鎖または分枝鎖状の長鎖アルキルアクリル酸や、エチレングリコキシアクリル酸、フッ素化アルキルアクリル酸等のジアクリル酸やハロゲン原子、アルコキシ基等の各種の置換基を有する、アルキルアクリル酸あるいはアルキルメタクリル酸類が挙げられる。ここでアルキルアクリル酸モノマーと例えばジアクリル酸モノマー誘導体を併用することで光硬化する率が向上し効率良く固定化される。ジアクリル酸モノマー誘導体の具体例としては、tricyclo[5.2.1.02,6]decane-4,8-dimethanol diacrylate, 1,3-butanediol diacrylate, 1,4-butanediol diacrylate, 1,6-hexanediol diacrylate, 1,9-nonanediol diacrylate, 1,10-decanediol diacrylate, 2.2 Bis[4-(acryloxy polyethoxy)phenyl]propane, 2.2 Bis[4-(acryloxy diethoxy)phenyl]propane, Polyethylene glycol diacrylate, Dipropylene glycol diacrylate, Tripropylene glycol diacrylate, Polypropylene glycol diacrylate, Neopentyl glycol diacrylate, 2-methyl-1,3-propanediyl ethoxy diacrylateが挙げられる。ジアクリル酸モノマー誘導体の使用量としてはアルキルアクリル酸モノマーに対して数%が好ましく、例えば1~2%が好適である。以上これらの媒体は分散液におけるコロイド状態を破壊しない範囲と種類のものと光重合開始剤を用いて混合される。
【0019】
光重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)等の過酸化物、トリクロロアセトフェノン、トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のポリハロゲン化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾフェノン等のケトン類、ビスペンタジエニルチタニウムジ(ペンタフルオロフェニル)等の有機金属化合物が挙げられる。
【0020】
この出願の発明は、このような分散液中に分散された状態で、磁場または電場を印加し、微結晶に異方性配向を誘起させるものである。または、以上のような混合の状態で、磁場または電場を印加し、微結晶に異方性配向を誘起させて前記固定化用の媒体を固化させるものである。これによって、硬化後は、可視領域で透明であり、さらに加工性も優れたポリマーを得ることができる。また、この場合の磁場については、その磁界方向、磁場強度は適宜であってよく、たとえば磁場強度は大きいほどよく、超電導マグネットによる数十テスラ程度までであってよい。電場については、AC、DCどちらでも異方的配向が観測され、電場の強度が大きいほど配向度が大きくなる。ACの周波数は10Hz以上が好ましい。
【0021】
以上のようなこの出願の発明によって、磁場または電場下において異方化された有機微結晶配向分散共重合体が実現される。
【0022】
また、この出願の発明は、以上のような有機微結晶配向分散体からなる偏光蛍光材料をも提供するものである。すなわち、この偏光蛍光材料について、本願の発明者は鋭意研究の結果、以上のような有機微結晶配向分散体が偏光蛍光することを見出し、本願発明に至ったものである。この偏光蛍光材料は、たとえば、偏光子を通して観測した場合、偏光子の角度により発光輝光の違いが観測されるものである。また、この偏光蛍光材料は、磁場または電場印加によって有機微結晶が異方的配向状態とされている有機微結晶配向分散体からなるものであり、磁場または電場印加時の磁場強度を適宜に設定することで、発光輝光を調節することも可能とされる。
【0023】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例1】
【0024】
次式で表わされるスチリルピリジニウム色素(以下DASTと略称)微結晶分散系は、ラウリルアクリレート(ラウリルアクリル酸)を分散液として再沈法で作製した。光硬化は、光重合開始剤としてベンゾインイソプロピルエーテルを、たとえぱ0.1mol/l微結晶分散液に加えて、2テスラの磁場を印加しながら、水銀灯照射により硬化をおこなった。固定化されたDAST微結晶分散系に、フォークト配置で磁場の向きに対して平行な偏光(0deg.)を入射した時は、図2に四角印で示したように吸光度の増加が観測され、垂直な偏光(90deg.)を入射した時は、図2中に三角印で示したように、吸光度の減少が観測された。
【0025】
磁場印加せずに光硬化をおこなったDAST微結晶分散系に平行な偏光(0deg.)を入射した時と垂直な偏光(90deg.)を入射した時の偏光吸収スペクトルは、図2に丸印で示したように両者が一致した。さらに、光硬化した後のDAST微結晶分散系に磁場を印加しても、印加前後で吸光度の変化は観測されなかった。
【0026】
このように、磁場下で微結晶分散液を光硬化することにより異方性配向を保持した微結晶分散系の固体が得られた。
【0027】
【化3】
JP0003979500B2_000004t.gif

【実施例2】
【0028】
<アントラセン微結晶分散系の作製と磁場配向>
市販のアントラセンをエタノールから再結晶、昇華精製を行ったものを試料とした。精製したアントラセンアセトン溶液5mMの0.1mlを水5mlに注入して微結晶分散液を作製した。アントラセンエタノール溶液とアントラセン微結晶分散液の吸収スペクトルをそれぞれ図3中の丸印、四角印で示した。
【0029】
アントラセン微結晶分散液の吸収スペクトルは文献(Edward Van Keuren et.al,J.dispersion Sci.and Tech.,2003,24,721-729)と同じであることが確認された。
【0030】
次に、2テスラまで印加可能な電磁石を用いて磁場下でのアントラセン微結晶分散液の偏光吸収スペクトルを偏光角度(0deg.,45deg.,90deg.,135deg.)を変えて測定した。偏光吸収スペクトルはフォークト配置のみ測定した。この結果をそれぞれ図4((a),(b),(c),(d))に示す。図中の黒丸印は磁場印加していない場合の偏光吸収スペクトルを示し、白丸印は2テスラで磁場印加した場合の偏光吸収スペクトルを示す。
【0031】
図4より、磁場下でのアントラセン微結晶分散液の偏光吸収スペクトルに偏光角度依存性が観測された。フォークト配置では、磁場下で磁場に対して平行な偏光(0deg.)を入射すると吸光度の増大が全測定波長領域で大きく観測された(図4(a))。逆に磁場下で磁場に対して垂直な偏光(90deg.)を入射すると吸光度の減少が全測定波長領域で観測された(図4(c))。磁場印加を止めると印加前の偏光吸収スペクトルに戻った。
<アントラセン誘導体の微結晶分散系の作製と磁場配向>
2-アントラセンカルボン酸(東京化成工業株式会社より購入)を当量の水酸化セシウムと水(H2O)中で攪拌すると溶解するので、水を凍結乾燥で除去し、白色固体(多少白っぽい結晶)の2-アントラセンカルボン酸セシウム塩(AnCO2Cs)を得た。
【0032】
5mMAnCO2Csメタノール溶液0.1mlを5mlのラウリルアクリレートに注入し、少しずつ加熱した。溶液が少し白濁し、レーザー光および偏光子により複屈折性が確認できたら室温まで放置し、測定試料とした。
【0033】
この測定試料をラウリルアクリレートモノマー中で再沈させたAnCO2Cs微結晶分散液の磁場下における偏光吸収スペクトルを偏光角度(0deg.,45deg.,90deg.,135deg.)を変えて測定した。偏光吸収スペクトルはフォーク配置とファラデー配置で測定し(ファラデー配置は偏光角度0deg.,90deg.のみ)、この結果をそれぞれ図5((a),(b),(c),(d)),図6((a),(b))に示す。図中の黒丸印は磁場印加していない場合の偏光吸収スペクトルを示し、白丸印は2テスラで磁場印加した場合の偏光吸収スペクトルを示す。
【0034】
図5より、磁場下でのAnCO2Cs微結晶分散液の偏光吸収スペクトルに偏光角度依存性が観測された。配向挙動は、無置換のアントラセンと同様であった。フォークト配置では、磁場に対して平行な偏光(0deg.)を入射すると磁場下で吸光度の増大が観測された(図5(a))が、最も長波長側の吸収極大の吸光度は変化しなかった。逆に磁場に対して垂直な偏光(90deg.)を入射すると磁場下で吸光度の減少が観測された(図5(c))。
【0035】
図6より、全ての偏光子の角度で同じ現象が観測され、磁場下では吸光度の減少が観測された。しかしながら吸収極大では逆に吸光度の増加が観測された。磁場印加を止めると印加前の吸収スペクトルに戻った。
【実施例3】
【0036】
<アントラセン誘導体の微結晶分散系の磁場配向固定化と蛍光偏光挙動>
5mMAnCO2Csメタノール溶液0.1mlを5mlのラウリルアクリレートに注入し、少しずつ加熱した。溶液が少し白濁し、レーザー光および偏光子により複屈折性が確認できたら室温まで放置した。次いで0.5mMになるように光開始剤のベンゾインイソプロピルエーテルを加えて約10分間分散液を窒素置換した。磁場下で超高圧水銀灯を約10~15分間照射し、光硬化させることでAnCO2Cs微結晶分散液を配向固定化した。
【0037】
この固定化されたAnCO2Cs微結晶分散系に紫外線照射すると、固定化されたAnCO2Cs微結晶分散系が青白く発光する様子が観察された。
【0038】
2テスラで配向固定化したAnCO2Cs微結晶分散系の蛍光は、偏光子を通して観測すると偏光子の角度により発光輝光の違いが観測された。しかしながら15テスラの磁場下で硬化させる方がより違いがはっきりすると考えられる。
【0039】
定常的偏光蛍光強度を測定するためには、四面透明角セル中で固定化した試料が必要となる。測定は、蛍光分光器の試料室に固定化した試料をセットし、まず励起、蛍光波長を設定する。励起側及び蛍光側の偏光子の角度を0°に設定して蛍光強度を測定する(ih)。励起側偏光子はそのままで、蛍光側偏光子を90°に設定して蛍光強度を測定する(iv)。励起側及び蛍光側の偏光子を90°に設定して蛍光強度を測定する(Ih)。励起側の偏光子90°、蛍光側の偏光子を0°に設定して蛍光強度を測定する(Iv)。偏光度(P)の計算は次式を用いて得られる。
P=(Ih-GxIv)/(Ih+GxIv)、G=(iv/ih
今回、励起波長を366nm、蛍光波長を400nmに設定し、参考試料としてアントラセンエタノール溶液と共に偏光度の測定を行った。
アントラセンエタノール溶液:P=0.047 at 400nm
配向固定化したAnCO2Cs微結晶分散系:P=-0.155 at 400nm(1回目)、P=-0.113 at 400nm(2回目)
分子分散した溶液系を比較すると、配向固定化したAnCO2Cs微結晶分散系の偏光度は大きい値になることが示され、配向による偏光蛍光が示された。
【実施例4】
【0040】
実施例1において、磁場印加のかわりに、電場印加しながら水銀灯照射により硬化をおこなってDAST微結晶分散を作製した。印加電場は、それぞれ最大AC 2.0kV,50Hz、DC 0.7kVとした。固化されたDAST微結晶分散系に、フォークト配置で電場の向きに対して平行な偏光(0deg.)を入射した時は、実施例1と同様に、吸光度の増加が観測され、垂直な偏光(90deg.)を入射した時は、吸光度の減少が観測された。
【0041】
電場印加せずに光硬化をおこなったDAST微結晶分散系に平行な偏光(0deg.)を入射した時と垂直な偏光(90deg.)を入射した時の偏光吸収スペクトルは、一致した。さらに、光硬化した後のDAST微結晶分散系に電場を印加しても、印加前後で吸光度の変化は観測されなかった。
【0042】
このように、電場下でも微結晶分散液を光硬化することにより異方性配向を保持した微結晶分散系の固体が得られた。
【実施例5】
【0043】
<アントラセン微結晶分散系とアントラセン誘導体の微結晶分散系の電場配向>
実施例2で作製したアントラセン微結晶分散液とアントラセン誘導体微結晶分散液に、電場下での偏光吸収スペクトルを偏光角度(0deg.,45deg.,90deg.,135deg.)を変えて測定した。印加電場は、それぞれ最大AC 2.0kV,50Hz、DC 0.7kVとした。この偏光吸収スペクトルの結果より、実施例2と同様に偏光角度依存性が観測された。また、電場印加を止めると印加前の吸収スペクトルに戻った。
【実施例6】
【0044】
<アントラセン誘導体の微結晶分散系の電場配向固定化と蛍光偏光挙動>
実施例3において、磁場印加のかわりに、電場下で超高圧水銀灯により光硬化させることでAnCO2Cs微結晶分散液を配向固定化した。印加電場は、それぞれ最大AC 2.0kV,50Hz、DC 0.7kVとした。
【0045】
この固定化されたAnCO2Cs微結晶分散系に紫外線照射すると、固定化されたAnCO2Cs微結晶分散液が青白く発光する様子が観察された。また、偏光子を通して観測すると偏光子の角度により発光輝光の違いが観測された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この出願の発明の有機微結晶配向分散体の概念を模式的に例示した図である。
【図2】実施例1で作製した固定化されたDAST微結晶分散系の吸光度の変化を示した図である。
【図3】実施例2で作製したアントラセンエタノール溶液とアントラセン微結晶分散液の偏光吸収スペクトルを示した図である。
【図4】実施例2で作製したアントラセン微結晶分散液について、偏光角度((a)0deg.,(b)45deg.,(c)90deg.,(d)135deg.)を変えて測定したフォークト配置の偏光吸収スペクトルを示した図である。
【図5】実施例2で作製したAnCO2Cs微結晶分散液ついて、偏光角度((a)0deg.,(b)45deg.,(c)90deg.,(d)135deg.)を変えて測定したフォークト配置の偏光吸収スペクトルを示した図である。
【図6】実施例2で作製したAnCO2Cs微結晶分散液ついて、偏光角度((a)0deg.,(b)90deg.)を変えて測定したファラデー配置の偏光吸収スペクトルを示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5