TOP > 国内特許検索 > 吸着材 > 明細書

明細書 :吸着材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4530765号 (P4530765)
公開番号 特開2005-021892 (P2005-021892A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
発明の名称または考案の名称 吸着材
国際特許分類 B01J  20/20        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI B01J 20/20 A
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-250220 (P2004-250220)
分割の表示 特願2000-358362 (P2000-358362)の分割、【原出願日】平成12年11月24日(2000.11.24)
出願日 平成16年8月30日(2004.8.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2000年6月3日 発行の「Abstracts and Programme.Poster Presentations EUROCARBON 2000,1st World Conference on Carbon.9-13 July 2000.Berlin VOLUME 11」に発表
審査請求日 平成19年10月31日(2007.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】小海 文夫
【氏名】高橋 邦充
【氏名】ジェイムズ アデレーネ ニーシャ
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】馳平 裕美
参考文献・文献 特開2001-064004(JP,A)
特開平11-221414(JP,A)
特開平06-298508(JP,A)
調査した分野 B01J 20/00~20/34
C01B 31/00~31/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
活性化プロセスをせずにエタノールを吸着する吸着材であって、単層カーボンナノホーンが球状に集合してなる単層カーボンナノホーン集合体により構成されていることを特徴とする吸着材。
【請求項2】
350℃~550℃の温度範囲で酸化抵抗性を有することを特徴とする請求項1記載の吸着材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、吸着材に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、活性化処理が不要で、吸着容量の極めて大きな単層カーボンナノホーンからなる吸着材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、この出願の発明者らにより、炭素原子のみからなる新しい炭素同素体である単層カーボンナノホーン(SWNH)が発見された。SWNHは、単層カーボンナノチューブの一端が円錐形状を有する管状体であって、各々の円錐部間に働くファンデルワールス力によって、複数のものがチューブ部を中心側にし円錐部が角のように表面部に突き出るような構成で集合し、直径80nm程度以下の球状の単層カーボンナノホーン集合体(SWNHs)を形成していることも見出されている。図1(a)~(c)にSWNHsのTEM像を例示した。
【0003】
SWNHのチューブ部は、直径約2nm、長さ30~50nm程度であり、円錐部は軸断面の頂角が平均20°程度のものである。SWNHsを構成する隣接した二つのSWNHの壁間距離は約0.4nm以下である。
【0004】
このようなSWNHsは、フラーレン、カ-ボンナノチュ-ブ等のニューカーボンと同様に、その機能および特性の発見と、化学工業をはじめとする広い分野での応用に大きな期待がよせられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしなから、これまでSWNHsの機能および特性に関してはほとんど何も知られていないのが現状である。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、SWNHsの構造を基本とし、これまで未知の新しい機能材として、活性化処理が不要で、吸着容量の極めて大きな単層カーボンナノホーンの吸着材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0008】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、活性化プロセスを必要とせずにエタノールを吸着する吸着材であって、単層カーボンナノホーンが球状に集合してなる単層カーボンナノホーン集合体により構成されていることを特徴とする吸着材を提供する。
【0009】
そして第2には、この出願の発明は、上記第1の発明について、350℃~550℃の温度範囲で酸化抵抗性を有することを特徴とする吸着材を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、SWNHsの構造を基本とし、これまで未知の新しい機能材として、活性化処理が不要で、吸着容量の極めて大きな吸着材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
まず、この出願の発明が提供する吸着材は、活性化プロセスを必要とせずに被吸着物を吸着する吸着材であって、単層カーボンナノホーンが球状に集合してなる単層カーボンナノホーン集合体(以下、単にSWNHsと示す)により構成されていることを特徴としている。
【0013】
SWNHsは、チューブの一端が円錐形状の管状体からなる単層カーボンナノチューブの複数のものが、各々のチューブ部を中心側にし、円錐部が角のように表面部に突き出るような構成で球状体を形成したものであることが知られている。このようなSWNHsについて、この出願の発明では、これを吸着材としている。SWNHsが吸着材としての機能を有することはこれまで全く知られていないことであって、この出願の発明によってはじめて提示されることになる。
【0014】
さらに、この出願の発明の吸着材は、驚くべきことに、SWNHsという純粋な炭素材料により構成されているにもかかわらず、いかなる活性化プロセスをも必要とせず、高い吸着活性を示す。例えば従来より吸着材として広く使用されている活性炭材料は、製造過程において、物理的あるいは化学低活性化プロセスが必須とされている。このような活性化プロセスを必要としない高い吸着活性は、SWNHsに独特の新規な化学的特性の発見として画期的である。
【0015】
なお、この出願の発明では、SWNHsについては「球状」に単層カーボンナノホーンが集合したものとしているが、この「球状」であることは、真球状であることに限定されることはない。同様に、「円錐」との規定についても真円錐に限られないことは言うまでもない。
【0016】
そして、この出願の発明の吸着材は、図2の断面模式図に示したように、SWNHsの表面部に突き出た円錐部の間に形成される空間に、各種の被吸着物を吸着させるようにしている。被吸着物としては、気体、有機物、錯体、生体関連物質等の、各種の物質を考慮することができる。具体的には、たとえば、O、N、CO、CO、窒素酸化物、メタン等の有機物ガス等の気体、アルコール、アルデヒド、ケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の有機物、金属フタロシアニン等の錯体、汚染水や汚染気流中の有機不純物や生体関連物質等を対象とすることができる。
【0017】
たとえば、通常SWNHsの比表面積は100~300m/g程度であるが、その吸着容量は、超高比表面積カーボンであるMACSORB(樹脂ベースのカーボン、賦活:KOH活性、平均細孔径:1nm以下、比表面積:2290m/g)と比較して、エタノール吸着量で約3.5倍という大きなものとなる。エタノール分子の大きさはおよそ0.6nm以上であり、図2に示したように、エタノール分子は、SWNHs吸着材の表面だけではなく、SWNHsを構成する個々の単層カーボンナノホーンの円錐部の相互の間に形成される空間に吸着される。したがって、SWNHsは比表面積が約7~23倍程度の超高比表面積カーボンよりも多くの被吸着物質を吸着することができるのである。
【0018】
また、この出願の発明の吸着材は、前記の通りの隣接するチューブ壁により構成される空間に加えて、SWNHsのチューブ部の間に形成される空間(図2において、点線の小さな丸に囲まれた空間)や、さらにはSWNHsそのものの内部空間にも被吸着分子を吸着することが可能である。ただし、隣接した二つの単層カーボンナノホーンの管状体の壁間距離は約0.4nmであることから、被吸着分子としては、このような壁間スペースに入り込むことができる程度に小さいものである。被吸着分子が十分に小さい場合には、この出願の発明の吸着材の吸着容量を、さらに大きなものとすることができる。
【0019】
加えて、SWNHs自体が1800℃以上の真空中で極めて不活性であることは知られていたが、さらには、C60やアモルファスカーボンや活性炭等と比較して30~50℃の温度範囲での酸化抵抗が高いことが明らかになった。これにより、この出願の発明の吸着材は、より多様な環境で利用可能となる。
【0020】
なお、この出願の発明におけるSWNHsについては、室温、760TorrのAr雰囲気中で、触媒無しのグラファイトをターゲットとするCOレーザーアブレーション法によって製造することができる。
【0021】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
300mlの99.5%エタノールにSWNHs10mgを入れ、一般的な超音波槽を用いて30分間超音波を照射した。なお、使用したSWNHsは、波長10.6μmのCOレーザーを、反応チャンバー(室温、760Torr、Ar雰囲気)内で回転しているφ30×50mmのグラファイトターゲットにビーム径10mmで照射して発生させ、収集フィルター上に回収したものであり、その構造は次の通りであった。
【0023】
SWNH :チューブ直径 平均2nm
チューブ長さ 30nm
円錐部軸断面の頂角 平均20°
SWNHs:直径 平均70nm
チューブ壁間距離 平均0.3nm
このようなエタノール処理を施したSWNHs(以下、エタノール処理SWNHsという)は、溶媒を自然蒸発させることで溶液から回収した。超高比表面積を有するMACSORBに対しても、同様なエタノール処理を施した。
【0024】
エタノール処理SWNHs、未処理SWNHsおよびエタノール処理MACSORBを試料とし、熱重量分析(TGA)を行うことでエタノール吸着量を測定した。測定にはTGA2950を用い、99.9999%のHe雰囲気中で、室温~600℃の温度範囲を昇温速度10℃/min.で加熱した。Heガスの流量は、60ml/min.で一定とした。なお、試料室は各々の分析前にHeガスでパージし、残留酸素の低減を図った。
【0025】
TGAの結果を、図3に示した。図中のアルファベットa、bはそれぞれエタノール処理SWNHsのTGA曲線とDTGA曲線を、cはエタノール処理MACSORBのTGA曲線を示している。未処理SWNHsについては、この温度範囲において目立った重量変化が見られなかったことから図示しなかった。このことから、残留酸素による分析への影響はなかったものとした。
【0026】
エタノール処理SWNHsの重量の減少はエタノールの脱離によるものであり、エタノール処理によってSWNHsに吸着されたエタノール量に一致する。このことから、SWNHsのエタノール吸着量は約25重量%であった。また、TGA曲線およびDTGA曲線から、エタノールの脱離は100~550℃の範囲で2段階で連続的に生じていることが分かった。一方の曲線cから、MACSORBのエタノール吸着量は7重量%程度であることがわかった。
【0027】
以上のことから、この出願の発明のSWNHs吸着材は、例えば、超高比表面積カーボンよりもエタノールの吸着容量が約3.5倍というように、吸着容量の大きいことが示された。
(実施例2)
実施例1におけるSWNHsと他の炭素材のO2雰囲気における熱安定性をTGA分析により調べた。炭素材としては、C60、グラファイト、ダイヤモンド、アモルファスカーボン(a-C)、気相成長カーボンファイバー(VGCF075)、活性炭繊維A-20(比表面積:1800m/g)およびMACSORB(比表面積:2290m/g)を用いた。その結果から、図4に、SWNHsと他の炭素材料のDTGA曲線を示した。
【0028】
SWNHsの酸化は300℃付近から徐々に始まり、620℃付近でピークとなり、720℃で終了することがわかった。他の炭素材料と比較して、SWNHsの熱安定性は、VGCF07、グラファイトおよびダイヤモンドには劣っていた。しかしながら、610℃以下で完全に燃焼するC60、a—Cや2種の活性炭;A-20およびMACSORBよりは安定していた。また、これらの材料よりも、350~550℃の温度範囲でのSWNHsの酸化速度が低いことが注目された。すなわち、SWNHsは、350~550℃の温度範囲で、C60、a—C、A-20およびMACSORB等の材料よりも高い酸化抵抗特性を有することがわかった。
【0029】
以上のことから、SWNHsの酸素雰囲気中における熱安定性は高く、C60、a—C、2種の活性炭と比較して30~50℃の温度範囲で高酸化抵抗を示すことはSWNHs自体に付加的な価値を与え、この出願の発明の酸化触媒および触媒担体が広い範囲で利用できることが示された。
【0030】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】SWNHsのTEM像を例示した図である。(a)SWNHsは、直径が80nm程度でほぼ均一な大きさの球状体である。(b)それぞれのSWNHsは、管状のSWNHが球状に集合して構成されている。(c)SWNHsの表面部には、20nm程度の長さの円錐状の突出物が複数認められる。
【図2】集合体表面に突出しているホーン間の空間に吸着されたエタノール分子(小さい点群)の様子を例示した模式図である。(縮尺等は正確ではない。)
【図3】TGA分析の結果を例示した図であり、a、bはエタノール処理したSWNHsのTGA曲線とDTGA曲線を、また、cはエタノール処理したMACSORBのTGA曲線を示している。
【図4】酸素雰囲気中のSWNHsおよび各種カーボン材料のDTGA曲線を例示した図である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図1】
3