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明細書 :細胞剥離剤及び細胞シート剥離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4161106号 (P4161106)
公開番号 特開2006-094799 (P2006-094799A)
登録日 平成20年8月1日(2008.8.1)
発行日 平成20年10月8日(2008.10.8)
公開日 平成18年4月13日(2006.4.13)
発明の名称または考案の名称 細胞剥離剤及び細胞シート剥離方法
国際特許分類 C12N   1/02        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   5/06        (2006.01)
FI C12N 1/02
C12N 5/00 B
C12N 5/00 E
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2004-286163 (P2004-286163)
出願日 平成16年9月30日(2004.9.30)
審査請求日 平成19年8月30日(2007.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】399051858
【氏名又は名称】株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】ワンペン テチャブンヤキャート
【氏名】加藤 雅一
【氏名】大谷 亨
【氏名】由井 伸彦
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 国際公開第03/074099(WO,A1)
調査した分野 C12N 1/00
C12N 5/00
A61L 27/00
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)

特許請求の範囲 【請求項1】
容器表面に接着した細胞シートを剥離するために用いられる、アミノ化ポリロタキサンを含有する細胞剥離剤。
【請求項2】
前記アミノ化ポリロタキサンは、ポリロタキサンに含まれるシクロデキストリン骨格中の少なくとも一部の水酸基がアミノ基を有する置換基で置換された化合物である、請求項1に記載の細胞剥離剤。
【請求項3】
前記ポリロタキサンは、線状分子に環状分子を複数貫通した状態で線状分子の両端に加水分解性結合を介して嵩高い置換基を有する生体親和性基が導入された化合物である、請求項2に記載の細胞剥離剤。
【請求項4】
前記アミノ基を有する置換基は、-OOCNH-A-NR12(Aは分岐を有していてもよい炭化水素鎖、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよく水素又は分岐を有していてもよい炭化水素基)である、請求項2又は3に記載の細胞剥離剤。
【請求項5】
Aは、炭素数2~4の分岐を有していてもよい炭化水素鎖である、請求項4に記載の細胞剥離剤。
【請求項6】
1及びR2は、同じであっても互いに異なっていてもよく水素又は炭素数1~5の分岐を有していてもよい炭化水素基である、請求項4又は5に記載の細胞剥離剤。
【請求項7】
容器表面に細胞を接着させて培養して細胞シートにする培養工程と、
前記培養工程のあと請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞剥離剤を添加した培地に交換して前記容器表面から前記細胞シートを剥離させる剥離工程と、
を含む細胞シート剥離方法。
【請求項8】
請求項に記載の細胞シート剥離方法であって、
前記剥離工程のあと前記剥離した細胞シートを回収する回収工程、
を含む細胞シート剥離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞剥離剤及び細胞シート剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内で培養した細胞シートは容器表面に接着しているため、この細胞シートを回収するにはディスパーゼ(登録商標)のようなタンパク分解酵素を用いて容器表面から剥離する操作を行っている。このようなタンパク分解酵素を用いた剥離操作では、細胞にダメージを与えるだけでなく、培養にともなって産生された細胞外マトリクスも分解してしまうことがある。また、タンパク分解酵素は動物由来材料である場合が多く、再生医療用の細胞シートへ応用する場合、安全性に課題がある。この点に鑑み、例えば特許文献1では、容器表面に接着した培養細胞をタンパク分解酵素を用いることなく剥離させて回収する方法が提案されている。即ち、表面をポリ-N-イソプロピルアクリルアミドで被覆したペトリ皿を用意し、このペトリ皿上にてウシの大動脈の血管内細胞の培養を37℃でおこなった後、4℃に冷却することによりペトリ皿の表面を疎水性から親水性に変化させ、培養細胞を剥離させて回収している。

【特許文献1】特公平6-104061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1では、培養細胞を剥離させるには温度をコントロールすることが必要になるため、操作が簡便であるとは言いにくかった。
【0004】
本発明は、容器表面に接着した細胞を簡便な操作により剥離可能な細胞剥離剤を提供することを目的の一つとする。また、この細胞剥離剤を用いて容器表面に接着した細胞シートを剥離する方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の細胞シート剥離剤は、アミノ化ポリロタキサンを含有するものである。この細胞シート剥離剤によれば、細胞にダメージを与えることなく、また、温度をコントロールすることなく容器表面に接着した培養細胞を剥離することができる。
【0007】
本発明の細胞剥離剤の骨格をなすポリロタキサンは、線状分子に環状分子を複数貫通させた状態で線状分子の両端に環状分子が外れないような嵩高いキャップを結合させた構造を有している。
【0008】
ここで、線状分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、星形ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、ポリビニルエーテル、高分岐ポリエーテル、高分岐オリゴエチレングリコール、高分岐オリゴプロピレングリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ乳酸、ポリ(ε-カプロラクトン)とポリ乳酸の共重合体、ポリ乳酸とポリエチレングリコールとの共重合体、ポリ(ε-リジン)、ポリアミド、ポリ(イミノオリゴメチレン)、アイオネン、ポリ(ビニルジエンクロリド)、ポリプロピレン、オリゴプロピレン、ポリエチレン、オリゴエチレン、ポリ(アルキレンベンズイミダゾール)、ポリウレタン、ポリ(ビオロゲン)、ポリ(N-ジメチルデカメチレンアンモニウム)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリアニリン、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(N-アシルエチレンイミン)、ポリエチレンイミン、ポリ(4-ビニルピリジン)-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体、フラーレン-ポリエチレングリコール結合体、疎水化多糖、ポリエチレングリコール-多糖グラフト共重合体、ポリプロピレングリコール-多糖グラフト共重合体、ジフェニルヘキサトリエンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。この線状分子の平均分子量は、200~1000000であることが好ましく、400~50000であることがより好ましく、1000~5000であることが特に好ましい。
【0009】
また、環状分子としては、α、β又はγ-シクロデキストリンであることが好ましいが、これと類似の環状構造を持つものであってもよく、そのような環状構造としては環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等が挙げられる。線状分子と環状分子の組み合わせとしては、α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールとの組合せが好ましい。
【0010】
また、嵩高いキャップは、環状分子が外れないような構造を有していればどのようなものであってもよいが、嵩高い置換基を有する生体親和性基であることが好ましく、線状分子の両末端に加水分解性結合を介して導入されていることが好ましい。ここで、生体親和性基としては、生体に対する親和性が高い基(生体に対して安全性の高い基)であればどのような基であってもよいが、例えばアミノ酸、オリゴペプチド、オリゴ糖類又は糖誘導体であることが好ましい。アミノ酸としては、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。また、オリゴペプチドとしては、前出のアミノ酸の複数がペプチド結合して形成されたもの等が挙げられる。また、オリゴ糖類としては、繰り返し単位が1~10程度であって、デキストラン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、でんぷん等の多糖類を構成する単糖によって構成されたものや、環状オリゴ糖であるα、β又はγ-シクロデキストリン等が挙げられる。更に、糖誘導体としては、オリゴ糖類、多糖又は単糖をアセチル化やイソプロピル化等の化学修飾した化合物等が挙げられる。このうち、ベンゼン環を有するアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン等が好ましい。また、嵩高い置換基としては、線状分子から環状分子が抜け落ちるのを防止できればどのような基であってもよいが、例えば1以上のベンゼン環を有する基又は1以上の第三ブチルを有する基が好ましい。1以上のベンゼン環を有する基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)基、9-フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基等が挙げられ、また、1以上の第三ブチルを有する基としては、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸tert-ブチルエステル(OBu基)等が挙げられるが、このうち、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。また、加水分解性結合としては、生体内で加水分解する結合であることが好ましく、生体内で速やかに非酵素的に加水分解することを考慮すればエステル結合であることが好ましい。
【0011】
本発明の細胞剥離剤に含まれるアミノ化ポリロタキサンは、ポリロタキサンに含まれるシクロデキストリン骨格中の少なくとも一部の水酸基がアミノ基を有する置換基で置換された化合物であればよい。ここで、シクロデキストリン骨格中の水酸基は、シクロデキストリン骨格をなすグルコースの水酸基であることが好ましく、該グルコースの6位の水酸基であることがより好ましい。また、アミノ基を有する置換基は、特に限定されるものではないが、-OOCNH-A-NR12(Aは分岐を有していてもよい炭化水素鎖、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよく水素又は分岐を有していてもよい炭化水素基)であることが好ましい。ここで、Aは、炭素数2~4の分岐を有していてもよい炭化水素鎖であることが好ましく、例えば-(CH22-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-(CH23-、-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH(CH3)-、-(CH24-などが挙げられる。R1及びR2 は、水素又は炭素数1~5の分岐を有していてもよい炭化水素基であることが好ましく、後者の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。なお、-OOCNH-の部位は糊代(のりしろ)のような役割をする部位と考えられるため、この構造に限られるものではなく、例えば、-OCOO-、-OOC-、-OCH2-、-OC(OH)CH2-、-OC(=S)NH-などであってもよい。
【0012】
本発明の細胞剥離剤は、容器表面に接着した細胞(接着依存性細胞)を剥離するのに用いられる。ここで、接着依存性細胞としては、例えば、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、肝細胞、膵細胞、筋細胞又はこれらの前駆細胞や、間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)等が挙げられる。
【0013】
本発明の細胞剥離剤は、容器表面に接着した細胞シート、特に表皮細胞の細胞シートを剥離するのに好適に用いられる。細胞シートを剥離する方法は、容器表面に細胞を接着させて培養して細胞シートにする培養工程と、この培養工程のあと本発明の細胞シート剥離剤を添加した培地に交換して容器表面から細胞シートを剥離させる剥離工程とを含むものとしてもよい。ここでいう培地とは、剥離工程中に細胞シートを構成する細胞を死滅させない液体であればよく、DMEMなどの基礎培地や、基礎培地に増殖因子を添加した増殖用培地だけでなく、生理食塩水やリン酸緩衝液などの液体であってもよい。また、剥離工程のあと剥離した細胞シートを回収する回収工程を含むものとしてもよい。ここで、剥離工程では、細胞を培養しつつ容器表面から徐々に細胞シートを剥離させてもよい。また、回収工程では、剥離した細胞シートを懸架用支持膜に付着させて引き上げることにより回収してもよい。ここで、懸架用支持膜とは、所定状態に達した細胞をほぼそのまま懸架できるものであればいずれのものでもよく、たとえば、滅菌ガーゼ、滅菌和紙、滅菌濾紙、滅菌不織布のほか、PVDF膜(ポリフッ化ビニリデン膜)やPTFE膜(ポリテトラフルオロエチレン膜)等の親水性膜や、シリコーンゴムなどの柔軟性のある高分子材料やポリグリコール酸、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーや寒天培地やコラーゲンゲル、ゼラチンゲルなどのハイドロゲルなどをシート状にしたものなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の好適な実施形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
ポリロタキサン(図1参照)を以下の手順により合成した。
【0016】
[1-1]エステル結合を介して両末端にアミノ基を有するPEGの合成
分子量3300のポリエチレングリコール(PEG)(33g,10mmol)と無水コハク酸(20g,200mmol)をトルエン(220ml)に溶解させ、この溶液を150℃で5時間還流させた。反応終了後、過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥して粗生成物を得た。これをジクロロメタンに溶解させ、不溶物を遠心分離により除去し、過剰のジエチルエーテルに注ぎ込んで、濾別・減圧乾燥後に両末端にカルボキシル基を有するPEG(化合物A)を白色粉末として得た。この化合物A(20g,5.7mmol)とN-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)(17.1g,148.2mmol)を1,4-ジオキサンとジクロロメタンの混合溶液(350ml,体積比1:1)に溶解させ、氷冷後ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.5g,114mmol)を加えた。氷冷したまま1時間攪拌し、その後室温で終夜攪拌した。副生成物のジシクロヘキシルウレアを濾別し、濾液は濃縮してから過剰のジエチルエーテルに注ぎ込んだ。濾別・減圧乾燥後にカルボキシル基が活性化されたPEG(化合物B)を白色粉末として得た。次いで、エチレンジアミン(0.4ml,6mmol)を溶解させたジクロロメタン(75ml)に、化合物B(10g,2.7mmol)を溶解させたジクロロメタン(75ml)を滴下し、滴下終了後から室温で1時間攪拌した。反応終了後、溶液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥後に両末端にアミノ基を有するPEG(化合物C)を白色粉末として得た。
【0017】
[1-2]擬ポリロタキサンの調製
α-シクロデキストリン(α-CD)(48g,49.2mmol)の飽和水溶液(311ml)に化合物C(4g,1.12mmol)の水溶液(20ml)を室温で滴下した。1時間超音波を照射しながら攪拌し、その後室温で24時間攪拌した。遠心分離により白色の沈殿物を回収し、50℃で減圧乾燥を行い、白色粉末の擬ポリロタキサンを得た。なお、ポリロタキサンとは、多数の環状分子(例えばシクロデキストリン)に線状分子(例えばPEG)が貫通し、その線状分子の両末端を嵩高い置換基でキャップしたものをいい、擬ポリロタキサンとは、ポリロタキサンの両末端を未だ嵩高い置換基でキャップしていないものをいう。
【0018】
[1-3]末端キャップ剤の調製
α-CDの脱離を防止する嵩高い置換基としてベンジルオキシカルボニル-L-フェニルアラニン(Z-L-Phe、Zはベンジルオキシカルボニル基を表す)を導入するために、Z-L-Pheのカルボキシル基の活性化を行った。すなわち、Z-L-Phe(100g,334mmol)を1,4-ジオキサン(800ml)に溶解させ、氷冷しながらHOSu(38.42g,334mmol)を加えた。1時間後にDCC(75.7g,367mmol)を溶解させた1,4-ジオキサン溶液(200ml)をゆっくり加え、氷冷したまま1時間攪拌し、その後室温で終夜攪拌した。副生成物のジシクロヘキシルウレアを濾別し、濾液は濃縮してから過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥後に粗生成物を得た。室温でできるだけ飽和濃度になるように粗生成物をジクロロメタンに溶解させた後、石油エーテルを適量加え冷蔵し、再結晶を行った。結晶を濾別・減圧乾燥して白色針状結晶のZ-L-Pheのスクシンイミドエステル(Z-L-Phe-OSu)を得た。
【0019】
[1-4]ポリロタキサンの調製
Z-L-Phe-OSu(80g,200mmol)をジメチルスルフォキシド(DMSO)(60ml)に溶解させ、擬ポリロタキサン(45g、2mmol)を加えた。この不均一溶液を室温で攪拌しながら、均一になるように少しずつDMSOを加えて96時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、粗生成物を得た。粗生成物をアセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)の順で洗浄して不純物(未反応Z-L-Phe-OSu、α-CD、化合物Cなど)を除去し、濾別・減圧乾燥して生分解性のポリロタキサンを白色粉末として得た。合成の確認は、1H-NMRにより行った。また、このポリロタキサンのα-CD貫通数を1H-NMRでのPEGのプロトンとα-CDのC(炭素)の1位のプロトンとの積分比から求めたところ、17であった。
【実施例2】
【0020】
CDI活性化ポリロタキサンを以下の手順により調製した。即ち、実施例1で得られたポリロタキサン(1g,0.0369mol,CD=0.871mmol,OH=15.6mmol)をDMSO(10ml)に窒素雰囲気下で溶解させ、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)2.54g(15.6mmol;ポリロタキサン中の水酸基と等量)を加え、窒素雰囲気下室温で反応を行い、3時間経過後エーテルに滴下して白色沈殿物を生成させ、これをろ過し室温で減圧乾燥して白色粉末のCDI活性化ポリロタキサン(CDI-PR)を得た。このCDI-PRの活性化率を紫外吸光分光計を用いて207nmの吸光度から算出したところ、91.37%であった。
【実施例3】
【0021】
アミノ化ポリロタキサンやスルフォン化ポリロタキサン、カルボキシル化ポリロタキサンを以下のようにして調製した。
【0022】
アミノ化ポリロタキサンを以下の手順により調製した。即ち、実施例2で得られたCDI-PR1g(0.029mmol)を20mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、ここに過剰量のアミノ化試薬を加え、室温にて3時間攪拌した。その後、反応溶液を過剰量のジエチルエーテルに投じ、得られた沈殿物を同様の溶媒で洗浄後、目的とするアミノ化ポリロタキサンを得た。ここで、アミノ化試薬として、1,2-ジアミノプロパンを使用したものをサンプルNo.1(導入されたアミン数16,α-CD貫通数17)とし、1,3-ジアミノプロパンを使用したものをサンプルNo.2(導入されたアミン数38,α-CD貫通数17)とし、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノエタンを使用したものをサンプルNo.3(導入されたアミン数158,α-CD貫通数17)とし、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンを使用したものをサンプルNo.4(導入されたアミン数128,α-CD貫通数17)とした。
【0023】
カルボキシル化ポリロタキサンを以下の手順により調製した。即ち、実施例1に準じて、多数のα-CD空洞部を貫通したPEG(分子量4000)の両末端をZ-チロシンでキャップしたポリロタキサンを調製した。このポリロタキサンの無水コハク酸によるエステル化により、α-CD水酸基にカルボキシエチルエステル(CEE)基を導入した水溶性のカルボキシル化ポリロタキサン(導入されたCEE数188,α-CD貫通数15)を合成した。このカルボキシル化ポリロタキサンをサンプルNo.5とした。
【0024】
スルホン化ポリロタキサンを以下の手順により調製した。即ち、上述のように合成したカルボキシル化ポリロタキサンに水溶性カルボジイミドを縮合剤として用いてタウリンを導入し、スルホン化ポリロタキサンを得た(導入されたタウリン数117,α-CD貫通数9)。このスルホン化ポリロタキサンをサンプルNo.6とした。なお、実施例1のポリロタキサンをサンプルNo.7とした。下記表1に各サンプルの構造的特徴を示す。
【0025】
【表1】
JP0004161106B2_000002t.gif

【実施例4】
【0026】
各サンプルのポリロタキサンにつき、細胞剥離試験を以下の手順により行った。即ち、各サンプルのポリロタキサンを正確に秤量した後、70%エタノールを加えて、200mg/mLの溶液あるいは懸濁液を調製した。その後、70%エタノールで0.02~20mg/mLの希釈系列を調製し、96穴プレートに100μLずつ添加して、クリーンベンチ内にて一晩送風状態で乾燥させた。細胞増殖用培地100μLを添加し、1時間攪拌してポリロタキサンを再溶解後、NIH3T3細胞懸濁液(高密度条件:3×105cells/mL、中密度条件:9×104cells/mL、低密度条件:3×104cells/mL、)を100μLずつ添加した。最終ポリロタキサン濃度は0.01,0.1,1,10mg/mL、NIH3T3細胞密度は1,3,10×104cells/cm2である。その後、5%CO2、37℃という条件下で8日まで培養し、顕微鏡下所見を観察した。
【0027】
その結果、カルボキシル化ポリロタキサン(サンプルNo.5)、スルホン化ポリロタキサン(サンプルNo.6)及びα-CD水酸基が無置換のポリロタキサン(サンプルNo.7)を含む培地においては、播種密度にかかわらず、濃度が1mg/mL以下ではプレート面に接着して増殖するのみで剥離はみられず、濃度が10mg/mLでは細胞が接着せず増殖しなかった。
【0028】
これに対して、1級アミンを導入したアミノ化ポリロタキサン(サンプルNo.1,2)においては、濃度が0.1~1mg/mLで播種密度が中・高密度条件の場合、培養3日目までに細胞がシート状に増殖して剥離し、更には収縮して1個のスフェロイドが形成された。このことから、アミノ化ポリロタキサンが細胞に弱く結合してプレート面への細胞の接着を部分的に阻害し、シート形成後には細胞シートの収縮力がプレート面と細胞との接着力を上回り、シート状に剥離したと推測される。このため、スフェロイドが形成される前のシート状の段階で細胞シート支持体を用いて細胞シートを回収することが可能である。また、同アミノ化ポリロタキサンにおいて、濃度が10mg/mLで播種密度が中・高密度条件の場合、培養1日めで細胞コロニーが凝集して多数の小スフェロイドが形成された。このことから、シート状に剥離して1個のスフェロイドが形成される場合に比べて、アミノ化ポリロタキサンと細胞との結合量が多く、小さなコロニー形成の段階で細胞コロニーのシート収縮力がプレート面と細胞との接着力を上回ったと推測される。
【0029】
一方、3級アミンを導入したアミノ化ポリロタキサン(サンプルNo.3,4)においては、濃度が10mg/mLで高密度条件の場合、培養2,3日めまでに細胞コロニーが凝集して多数の小スフェロイドが形成され、同濃度で中・低密度条件の場合、プレート面に接着して細胞が増殖するのみであった。このことから、3級アミンを導入したアミノ化ポリロタキサンは、1級アミンを導入したアミノ化ポリロタキサンに比べて細胞との接着性が弱いと推測される。
【0030】
以上の細胞剥離試験は、培養工程と剥離工程とを同時に進行させたものであるが、培養工程においてコンフルエントになる直前にアミノ化ポリロタキサンを添加すれば、細胞が増殖してシート状になりつつシート収縮力により容器表面から剥離するため、例えば親水処理したPVDF膜(ポリフッ化ビニリデン膜)を上方から落とし、このPVDF膜に細胞シートを接触させたあと膜ごと引き上げることにより、細胞シートを剥離・回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、再生医療分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】アミノ化ポリロタキサンの合成手順を表す説明図である。
図面
【図1】
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