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明細書 :円形内面の接合層形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4160036号 (P4160036)
公開番号 特開2006-102803 (P2006-102803A)
登録日 平成20年7月25日(2008.7.25)
発行日 平成20年10月1日(2008.10.1)
公開日 平成18年4月20日(2006.4.20)
発明の名称または考案の名称 円形内面の接合層形成方法
国際特許分類 B23K  20/12        (2006.01)
F02F   1/08        (2006.01)
F16J  10/04        (2006.01)
F16C   9/04        (2006.01)
B23K 101/04        (2006.01)
FI B23K 20/12 310
F02F 1/08 A
F02F 1/08 Z
F16J 10/04
F16C 9/04
B23K 101:04
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2004-296212 (P2004-296212)
出願日 平成16年10月8日(2004.10.8)
審査請求日 平成16年10月8日(2004.10.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】502433634
【氏名又は名称】村上 秀樹
【識別番号】501156969
【氏名又は名称】篠田 剛
【識別番号】504378456
【氏名又は名称】南部 圭司
発明者または考案者 【氏名】篠田 剛
【氏名】村上 秀樹
【氏名】南部 圭司
個別代理人の代理人 【識別番号】100089440、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 和夫
審査官 【審査官】松本 公一
参考文献・文献 特開2000-301366(JP,A)
特開昭60-247423(JP,A)
特開2004-174593(JP,A)
特開2000-052066(JP,A)
特開2000-312981(JP,A)
調査した分野 B23K 20/12
F02F 1/08
F16J 10/04
B21D 49/00
特許請求の範囲 【請求項1】
円形内面を有する外側構造体の該円形内面の内側に、予め該円形内面に対応した断面形状の円筒体となした、該円形内面に付与すべき機能を有する機能材料を内側部材として嵌合状態に挿入セットしておき、該内側部材の軸方向端面に対して、外径が該円形内面の内径よりも小且つ該内側部材の内径よりも大であって軸方向且つ進行方向端部の外周面を実質的にテーパ面となした、直径Dに対して厚みTがT/D=0.3以下の且つ該テーパ面の小径側の直径が該内側部材の内径よりも小径である円盤状の回転加圧部を有する回転加圧工具の該テーパ面を回転及び加圧下に押し付けて該内側部材を摩擦発熱により加熱軟化させ、更に該回転加圧部を回転させつつ且つ該回転加圧工具の該回転加圧部以外の部分を該内側部材に接触させることなく軸方向に進行させて、該進行に伴い前記機能材料から成る内側部材を該進行方向と同じ軸方向及び半径方向外側に塑性流動させ、前記外側構造体の円形内面に前記機能材料から成る接合層を形成することを特徴とする円形内面の接合層形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は円形内面を有する外側構造体の円形内面に所定の機能を有する接合層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のエンジンは鋳鉄製とされており、シリンダの内面は主として熱処理によって特定の機能が付与されて来た。
これに対し、近年自動車の軽量化の要請からアルミエンジンが用いられるようになって来ており、この場合アルミ製のシリンダ内面、即ちその円柱孔内面に高温強度付与等、特定の機能を付与する手法として鋳鉄ライナ,硬質アルミライナ等のスリーブ鋳込み,圧入が主として採用されている。
またその他シリンダ内面にメッキ,表面溶融合金化としての溶射,肉盛、更には表面処理として窒化,拡散浸透等が実用化されている。
【0003】
しかしながらスリーブ鋳込み,圧入方式ではスリーブ自身の薄肉化に限度がある他、シリンダ内面との間に微小間隙が生じ、シリンダ性能への悪影響が出るなどの問題がある。
またシリンダ内面の機能性の接合層の厚みはシリンダ完成状態で1mmもあれば良いが、このスリーブ鋳込み,圧入方式では薄いスリーブを形成することが困難で、厚肉スリーブを加工で一部除去し薄肉化しているのが実情である。
【0004】
一方メッキや拡散浸透等の処理方法は、非常に薄い膜にすることが可能であるものの、下地としてのシリンダ内面の性状による影響を受け、特に0.3mm程度のピンホールがあっても密着性が悪くなる。
またこの処理方法の場合、機能性の接合層の厚みを1mm程度に厚くすることが困難で薄膜とならざるを得ず、そのため耐久性が劣る外、特にメッキの場合には剥離を起し易いといった問題もある。
【0005】
他方溶射や肉盛は1mm程度の厚みを有する接合層の形成方法としては有効であるが、溶射はメッキと同様シリンダ下地に欠陥があると密着性が悪くなる。また溶射は下地と融合していないので、剥離強度は低い。
また厚くすると熱影響が大きくなり、残留歪等の不具合も発生する傾向が強い。
以上シリンダ内面に機能性の接合層を形成する場合の問題点を述べたが、こうした問題は円形内面を有する外側構造体の円形内面に機能性の接合層を形成する場合において共通して生じ得る問題である。
【0006】
このような事情の下において、下記特許文献1には新規な接合層の形成方法が開示されている。
図6はその具体例で、図中200は円形内面、202は加圧ロッド(回転加圧工具)、204は機能性の接合層210を形成するための機能材料である。
この接合層210の形成方法では、円形内面200を有する外側構造体206の底部208上に機能材料204をセットしておき、そして加圧ロッド202を回転させながら円形内面200の内部に挿入するとともに、図中下向きの前進移動によって機能材料204を加圧し、そして加圧ロッド202の回転に伴う摩擦発熱によって、機能材料204を加熱軟化して塑性流動させ、そしてこれを加圧ロッド202と円形内面200との間の隙間に沿って底部208側から上向きに押し上げて(這い上がらせて)、円形内面200に接合層210を形成するものである。
【0007】
しかしながらその後の研究で、この接合層の形成方法の場合、接合層210の形成はできるものの、加熱軟化し、塑性流動化した機能材料204が円形内面200に沿って上向きに塑性流動する過程で、加圧ロッド202の外面或いは円形内面200との摩擦等による抵抗が働いて、加圧ロッド202と円形内面200との微小な隙間に沿って円滑に上向きに塑性流動せず、またその間に温度も低下して益々抵抗は大きくなり、これがため十分な高さ(軸方向長)に亘って接合層210を形成することが難しい場合もある他、下部において接合層210が厚く、上部で接合層が薄くなるなど接合層210の厚みが不均等となり易く、更には半径方向に強い圧力が働くことによって外側構造体206、特にシリンダ等その厚みが10mm程度以下の肉厚の小さいものの場合、その半径方向の圧力によって割れを生じるなどの問題のあることが判明した。
【0008】
そこで本発明者等は、図7に示すような円形内面への接合層の形成方法を開発した(下記特許文献2に開示)。
この図7に示す方法は、円形内面200の内側に、円形内面200より外径の小さな加圧ロッド202と、加圧ロッド202よりも大径で且つ円形内面200と実質同等外径を有するバックアップロッド211とを軸方向に対向する状態に挿入して、円形内面200の内側にセットした機能材料204を、それら加圧ロッド202とバックアップロッド211とで軸方向に挟み込んで加圧し、その加圧下で機能材料204のバックアップロッド211との接触部を実質的に塑性流動させない状態に保ちつつ、加圧ロッド202の回転により、機能材料204の加圧ロッド202の軸端面との接触部を摩擦発熱により加熱軟化して半径方向外方に、次いで加圧ロッド202と円形内面200との間の隙間に塑性流動させつつ、加圧ロッド202を機能材料204,バックアップロッド211とともに円形内面200に対して軸方向に相対的に前進移動させることで、円形内面200に機能材料204を前進方向と同方向に順に接合して行くものである。
【0009】
しかしながらその後の研究でこの方法の場合、回転加圧工具としての加圧ロッド202の外周面全体が広い面積に亘って機能材料204の内面と摩擦接触するため、その際の発熱で焼付きが生じてしまって、必ずしも円滑に機能材料204を接合できず、更に改良の余地のあることが判明した。
【0010】
尚、特許文献1には図8に示しているように回転加圧工具としての加圧ロッド202を、大径部212と小径部214とそれらの間のテーパ部216とを有する構成とした点が開示されているが、この接合方法においても回転加圧工具がロッドを成していて軸方向に沿って広い面積に亘り機能材料204に摩擦接触することから、上記と同じように機能材料204との間で焼付きを起してしまう問題を生じる。
【0011】

【特許文献1】特開2000-312981号公報
【特許文献2】特開2004-174593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、焼付きの問題を起すことなく良好に機能材料を接合することができる円形内面への機能材料の接合層形成方法を提供することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、円形内面を有する外側構造体の該円形内面の内側に、予め該円形内面に対応した断面形状の円筒体となした、該円形内面に付与すべき機能を有する機能材料を内側部材として嵌合状態に挿入セットしておき、該内側部材の軸方向端面に対して、外径が該円形内面の内径よりも小且つ該内側部材の内径よりも大であって軸方向且つ進行方向端部の外周面を実質的にテーパ面となした、直径Dに対して厚みTがT/D=0.3以下の且つ該テーパ面の小径側の直径が該内側部材の内径よりも小径である円盤状の回転加圧部を有する回転加圧工具の該テーパ面を回転及び加圧下に押し付けて該内側部材を摩擦発熱により加熱軟化させ、更に該回転加圧部を回転させつつ且つ該回転加圧工具の該回転加圧部以外の部分を該内側部材に接触させることなく軸方向に進行させて、該進行に伴い前記機能材料から成る内側部材を該進行方向と同じ軸方向及び半径方向外側に塑性流動させ、前記外側構造体の円形内面に前記機能材料から成る接合層を形成することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0014】
以上のように本発明は、機能材料を予め円筒体となしておいて、これを内側部材として外側構造体の円形内面の内側に嵌合状態に挿入セットしておく一方、回転加圧工具の回転加圧部を円盤状となして、その軸方向且つ進行方向の外周面を実質的なテーパ面となし、そのテーパ面を回転させつつ加圧下に内側部材の軸方向端面に押し付けて、その押し付けた部分を摩擦発熱により加熱軟化させ、更に回転加圧部を回転させつつ、また回転加圧工具の回転加圧部以外の部分を内側部材に接触させることなく軸方向に進行させて、機能材料から成る内側部材を摩擦発熱により上記の進行方向と同じ軸方向及び半径方向外側に塑性流動させ、外側構造体の円形内面に接合層を形成するものである。
【符号の説明】
【0015】
このように本発明の方法では、円盤状の回転加圧部を回転させながら、加圧下にそのテーパ面を用いて機能材料から成る内側部材を軸方向に押圧し、そこで発生する摩擦熱により機能材料即ち内側部材を加圧軟化させて塑性流動させ、外側構造体の円形内面に接合層形成するもので、この方法によれば、回転加圧工具の外周面と機能材料即ち内側部材との間の摩擦面を可及的に少なくし得ることから、上記のような焼付きの問題を生じることなく良好に機能材料から成る接合層を円形内面に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は円形内面12を有する外側構造体としての外側パイプである。
14は回転加圧工具で、16はその主体を成す円盤状の回転加圧部である。
【0017】
この回転加圧部16は、軸方向且つ進行方向(図中下向き方向)端部の外周面がテーパ面18とされている。この回転加圧工具14は、実質的にこの円盤状の回転加圧部16におけるテーパ面18で後述の機能材料から成る円筒形状の内側パイプ26(内側部材)を摩擦発熱させ、且つ図中下向き及び半径方向外向きに加圧して内側パイプを塑性流動させる。
【0018】
この円盤状の回転加圧部16には、下側のテーパ面18に続いて図中上側に(軸方向長の短い)軸方向と平行なストレート形状の内径規制面20が軸方向に小寸法で僅かに形成されている。
この内径規制面20は、後述の接合層28の内径を定める働きをなす部分である。このストレート形状の内径規制面20は場合によって省略しても良い。
尚この円盤状の回転加圧部16は、その直径Dに対して厚みTをT/D=0.3以下としておく。
【0019】
22は回転加圧工具14における連結部であって、この連結部22は、円盤状の回転加圧部16と回転加圧装置とを連結するための部分であって、実質的に加工部を構成しておらず、加工に際して内側パイプ26と非接触となるように外径が小径とされている。
尚24はバックアップ部材である。
【0020】
本実施形態の接合層形成方法では、図2(I)に示しているように予めパイプ状となした機能材料を内側パイプ26として外側パイプ10の円形内面12に嵌合状態に挿入しておく。
【0021】
そして図2(II)に示しているように回転加圧装置に連結された回転加圧工具14の円盤状の回転加圧部16、詳しくはそのテーパ面18を回転させながら内側パイプ26を図中上端面に押し付け、その押し付け時の摩擦発熱で内側パイプ26を加熱軟化させる。
尚円盤状の回転加圧部16は、その外径が外側パイプ10の円形内面12の内径よりも小さく、また内側パイプ26の内径よりも大きくされている。
【0022】
この実施形態では、このようにして回転加圧工具14、具体的には円盤状の回転加圧部16を回転させながら図中軸方向の下向きに押し込んで行き、内側パイプ26をその進行方向と同方向の軸方向及び半径方向外側に塑性流動させる。
これにより外側パイプ10の円形内面12に機能材料の接合層28が強固に形成される。
【0023】
尚このときの回転加圧部16による内側パイプ26の加工度は7%以上としておくことが望ましい。
ここで加工度は図3に示しているように内側パイプ26の当初の肉厚をt,加工による肉厚の加工後の肉厚をtとしたとき、t/t×100(%)で表わされる。
これは板材を圧延等したときの圧下率と類似の概念である。
このように7%以上の加工度で加工を行うことによって、接合層28を良好に円形内面12に圧着接合することができる。
【0024】
本実施形態において、内側パイプ26は円形内面12の内側への挿入時において完全なパイプをなしていなくても良く、板を丸めてパイプ状にしたものでも良い。
そのような場合であっても、回転加圧工具14による加工によって成形中に継ぎ目無しの円筒形状の接合層28が形成される。
【0025】
またこの内側パイプ26は鋳造材,円柱体を切削加工したもの,粉体を圧粉したもの,焼結材,押出或いは引抜加工により製造された各種の金属材料或いはプラスチック材料,更にはプラスチック材料中に金属若しくはセラミックスを含有させた材料等各種の材料を用いることが可能である。
【0026】
また円盤状の回転加圧部16による内側パイプ26の加工は、接合層28と円柱孔内面12との接合面の温度が溶融点以下且つ再結晶温度に近い温度(内側パイプ26が金属材料の場合)即ち(再結晶温度下方-100°K)程度から溶融点以下の温度となるように行うことが望ましい。
例えばアルミニウム合金の場合には300~500℃で接合良好な結果が得られる。
【0027】
また本実施形態では、必要に応じて回転加圧工具14を予熱したり、或いは外部熱源を用いて加温するなど補助的な熱量を与えることができ、このようにすれば発生熱の全てを摩擦熱でまかなう必要がなく好都合である。
【0028】
また回転加圧工具14の回転数は、円盤状の回転加圧部16の外周の周速度で20m/min~2000m/minとしておくことが好適である。
また上記回転加圧部16のテーパ面18は厳密なテーパ形状でなくても多少湾曲した面となしておいても良い。
【0029】
尚、回転加圧工具14にて内側パイプ26を摩擦発熱させて塑性流動させる際、図4に示しているように当初円盤状の回転加圧部16のテーパ面18を内側パイプ26の上端面に当初低い圧力で押し付けて摩擦発熱を生ぜしめ、その後に軸方向に大きな推力を加えて内側パイプ26を塑性流動させるようになすことができる。
【0030】
ここで図4中横軸は時間を表わし、縦軸は回転加圧部16から内側パイプ26に加える圧力を表わしている。
また同図中(イ)は圧力を一定に制御して加工を行う場合であり、また(ロ)は回転加圧部16の変位を一定に制御して加工を行う場合であり、また(ハ)はそれらを混合して加工制御する場合のパターンを表わしている。
【0031】
以上のような本実施形態の方法によれば、回転加圧工具14の外周面と機能材料、即ち内側パイプ26との間の摩擦面を可及的に少なくでき、加工中に回転加工工具14と内側パイプ26とが焼付きを起す問題を回避し得て、良好に接合層28を外側パイプ10の円形内面12内面に形成及び固着することができる。
【0032】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば本発明は図5に示すコンロッド30の円形内面12に対してメタル軸受を接合層28として形成したり、或いはその他様々な外側構造体の円形内面に対して様々な機能の接合層を形成する場合に適用可能であり、また本発明は円形内面の内径に対して軸方向長の短いものを対象として適用することも可能であるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のコーティング方法の要部工程の説明図である。
【図2】同実施形態のコーティング方法の説明図である。
【図3】同実施形態のコーティング方法の加工度の説明図である。
【図4】同実施形態のコーティング方法で採用する制御方式の説明図である。
【図5】本発明の適用対象の一例としてのコンロッドを示した図である。
【図6】従来のコーティング方法の一例を示す説明図である。
【図7】従来のコーティング方法の別の例を示す説明図である。
【図8】従来のコーティング方法の更に別の例を示す説明図である。
【0034】
10 外側パイプ(外側構造体)
12 円柱孔
14 回転加圧工具
16 回転加圧部
18 テーパ面
26 内側パイプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7