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明細書 :オキシ水酸化鉄の製造方法及びオキシ水酸化鉄吸着材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4012975号 (P4012975)
公開番号 特開2006-124239 (P2006-124239A)
登録日 平成19年9月21日(2007.9.21)
発行日 平成19年11月28日(2007.11.28)
公開日 平成18年5月18日(2006.5.18)
発明の名称または考案の名称 オキシ水酸化鉄の製造方法及びオキシ水酸化鉄吸着材
国際特許分類 C01G  49/02        (2006.01)
B01J  20/06        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
FI C01G 49/02 A
B01J 20/06 A
C02F 1/28 P
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2004-315713 (P2004-315713)
出願日 平成16年10月29日(2004.10.29)
審査請求日 平成19年1月18日(2007.1.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】599100198
【氏名又は名称】財団法人 滋賀県産業支援プラザ
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】前 一廣
【氏名】牧 泰輔
【氏名】内田 篤志
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100078732、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 保
【識別番号】100081765、【弁理士】、【氏名又は名称】東平 正道
【識別番号】100089185、【弁理士】、【氏名又は名称】片岡 誠
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特表2004-509750(JP,A)
特開平11-047763(JP,A)
調査した分野 C01G 49/00-49/08
B01J 20/06
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)3価の鉄イオン含有溶液に塩基を加え、pHを3.3~6に調整することにより、オキシ水酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、
(b)該沈殿物を100℃以下の温度で乾燥することによってオキシ水酸化鉄を得る工程、及び
(c)得られたオキシ水酸化鉄を水と接触させた後、100℃以下の温度で乾燥する工程、を順次行うことを特徴とするオキシ水酸化鉄の製造方法。
【請求項2】
(a)工程におけるpHを3.5~5.5に調整する請求項1に記載のオキシ水酸化鉄の製造方法。
【請求項3】
乾燥を40℃以上60℃未満の温度で行う請求項1又は2に記載のオキシ水酸化鉄の製造方法。
【請求項4】
乾燥を空気中、真空中又は不活性ガス中のいずれかの雰囲気中で行う請求項1~3のいずれかに記載のオキシ水酸化鉄の製造方法。
【請求項5】
3価の鉄イオン含有溶液の濃度が0.01~5mol/Lである請求項1~4のいずれかに記載のオキシ水酸化鉄の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法により得られたオキシ水酸化鉄を主成分とするオキシ水酸化鉄吸着材であって、BET比表面積が100~400m2/gであり、オキシ水酸化鉄1kg当りの水酸基含有量が7~30mol-OH/kgであるオキシ水酸化鉄吸着材
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシ水酸化鉄の製造方法及びオキシ水酸化鉄吸着材に関する。さらに詳しくは、本発明は、工場廃水、排ガス中等のリン成分等の有害物質に対して優れた吸着能を有するオキシ水酸化鉄を有利に製造する方法、及びその方法により得られた吸着材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、科学技術の発展に伴って、多種多様な化学物質が製造、使用されている。このような化学物質は、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものも数多く存在している。例えば、水処理の場合、有機もしくは無機のリン、フッ素、ヒ素、モリブデン、クロム、アンチモン、セレン、ホウ素、テルル、ベリリウム、シアン等が有害物質として知られている。また、気体処理の場合、排ガス中の硫化水素、メルカプタン、青酸、フッ化水素、塩化水素、SOx、NOx、その他、リン、ヒ素、アンチモン、硫黄、セレン、テルル化合物、シアノ化合物等が有害物質として知られている。
上記有害物質は、飲料水、水道水、ミネラルウォーター、治療用水、農業用水、工業廃水、及び空気中、排ガス中等に溶解、懸濁、乳化もしくは浮遊した状態で含まれている場合があり、これらの有害物質を分離、除去することが試みられている。
【0003】
従来、工業廃水等から有害な化学物質を吸着するための鉄系吸着材について、種々の提案がなされている。例えば、粒度50μm以下の含水酸化鉄を200~500℃で加熱し、含水酸化鉄中の結晶水を蒸発させ、細孔を0.1~50nm、比表面積15~200m2 /gの含水酸化鉄(特許文献1参照)が提案されている。
しかしながら、特許文献1では、200~500℃で加熱処理しているため、エネルギー消費が大きく、工業的に不利である。しかも、リン成分等の有害物質の吸着に必要な鉄系吸着材の吸着サイト(水素結合サイト)が、高温加熱処理により減少しているため、吸着力が十分でないという問題点があった。
【0004】
また、鉄イオン溶液にアルカリを加えてpHを3に調整し、低温で乾燥することによって得られた、非晶質の水酸化鉄系の沈殿生成物からなる陰イオン吸着材(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、pH3では1×10-3mol/dm-3の3価の鉄イオンが残存し、水酸化鉄が安定に沈殿できない。しかも、特許文献2の方法では、本発明方法における(c)工程の水処理及び乾燥処理を行っていないため、得られる吸着材は、比表面積が小さく吸着力も十分でないという問題点があった。
また、BET比表面積50~500m2/gの微粒子状オキシ水酸化鉄の凝集物の製造方法(特許文献3参照)も提案されている。
しかしながら、特許文献3のオキシ水酸化鉄は、粒子系がナノサイズで小さいため、反応性は優れているが、粒子の飛散や摩擦による発火等の恐れがあり、取り扱いに不便であり、さらに吸着物質の回収も困難であるという問題点があった。
このため、有害物質の吸着能が十分であり、かつ取り扱いの容易な吸着材の開発が望まれていた。
【0005】

【特許文献1】特開2003-154234号公報
【特許文献2】特開2003-334542号公報
【特許文献3】特開2004-509752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の現状に鑑み、工場廃水、排ガス中等のリン成分、環境ホルモン等の有害物質に対して優れた吸着能を有するオキシ水酸化鉄を有利に製造する方法、及びその方法により得られた吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、3価の鉄イオン含有溶液を出発原料として生成したオキシ水酸化鉄を含む沈殿物を低温乾燥し、更に水と接触させた後、再度低温乾燥することにより、上記目的を達成しうることを見出した。発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(a)3価の鉄イオン含有溶液に塩基を加え、pHを3.3~6に調整することにより、オキシ水酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、
(b)該沈殿物を100℃以下の温度で乾燥することによってオキシ水酸化鉄を得る工程、及び
(c)得られたオキシ水酸化鉄を水と接触させた後、100℃以下の温度で乾燥する工程、を順次行うことを特徴とするオキシ水酸化鉄の製造方法、並びに
(2)前記(1)に記載の方法により得られたオキシ水酸化鉄を主成分とするオキシ水酸化鉄吸着材であって、BET比表面積が100~400m2/gであり、オキシ水酸化鉄1kg当りの水酸基含有量が7~30mol-OH/kgであるオキシ水酸化鉄吸着材
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、リン成分、環境ホルモン等の有害物質に対して優れた吸着能を有するオキシ水酸化鉄を効率的に製造することができる。
また、本発明の製造方法により得られたオキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材は、比表面積が大きく、かつ従来の5~8倍の陰イオン吸着サイト(水素結合サイト)を有しているため、リン酸イオン等の陰イオン種に対して優れた吸着力を発揮し、浄水、排水又は気体浄化等の分野で好適に使用することができる。
また、本発明の吸着材は、再使用が容易であるため実用性が高く、吸着した陰イオン種を溶離させることにより、陰イオン種に含まれる元素を効率的に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のオキシ水酸化鉄の製造方法は、(a)3価の鉄イオン含有溶液に塩基を加え、pHを3.3~6に調整することにより、オキシ水酸化鉄を含む沈殿物を生成させる工程、
(b)該沈殿物を100℃以下の温度で乾燥することによってオキシ水酸化鉄を得る工程、及び
(c)得られたオキシ水酸化鉄を水と接触させた後、100℃以下の温度で乾燥する工程、を順次行うが、中でも(c)工程が大きな特徴である。
【0010】
本発明方法の(a)工程において、原料溶液である3価の鉄イオン含有溶液としては、塩化第二鉄〔FeCl3〕、硫酸第二鉄〔Fe2(SO43〕、硝酸第二鉄〔Fe(NO33〕等の第二鉄化合物を含有する溶液が挙げられる。これらの中では、反応性等の観点から、塩化第二鉄〔FeCl3〕の水溶液が好ましい。
【0011】
塩基は、3価の鉄イオン含有溶液を中和し、pHを調整して、オキシ水酸化鉄を含む沈殿生成物を生成させるために使用する。塩基としては、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NH3、NH4OH、MgO、MgCO3等を使用することができる。これらの中では、特に水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。
【0012】
用いる3価の鉄イオン含有溶液及び塩基の濃度に特に制限はない。塩基の反応制御の容易さの観点から、3価の鉄イオン含有溶液の濃度は0.01~5mol/Lが好ましく、0.05~3mol/Lが更に好ましい。また、塩基の濃度は0.1~10モル/Lが好ましく、1~5モル/Lが更に好ましい。
pHは3.3~6に調整する必要がある。pHが3.3未満、例えばpH3では、オキシ水酸化鉄の結晶生成の初期段階なので、1×10-3mol/dm-3の3価の鉄イオンが残存し、安定状態で沈殿物を生成することが困難である。pHを3.3とすることによって、3価の鉄イオンの残存濃度は1×10-4mol/dm-3となり、安定的に水酸化鉄が沈殿できる。また、pH7付近では塩化第一鉄が沈殿する。従って、適切な水素結合サイトを有するオキシ水酸化鉄を高純度で安定に生成させる観点から、pHは好ましくは3.5~5.5、更に好ましくは3.7~5.3とする。
【0013】
(a)工程で得られた沈殿物は吸引濾過等により濾別し、(b)工程に供する。
(b)工程においては、その沈殿物を100℃以下の温度で乾燥する。温度が100℃を超えると乾燥は速いが、陰イオンの吸着サイト(水素結合サイト)を適切に残すよう制御することが困難となる。また、温度が低すぎると乾燥に時間がかかりすぎ、実用的でない場合がある。このため、乾燥温度は、好ましくは20~80℃、更に好ましくは30~70℃、特に好ましくは40℃以上60℃未満である。乾燥は、空気中、真空中、不活性ガス中のいずれでもよいが、真空条件下で行うことが好ましい。乾燥時間は特に制限はなく、通常2時間~2日間、好ましくは5時間~24時間である。
本発明の(b)工程においては、高温度での乾燥処理がないので、オキシ水酸化鉄の粒子間焼結が起こらない。このため、(b)工程により得られたオキシ水酸化鉄は、30~300m2/g、特に40~200m2/gのBET比表面積を有する。
【0014】
また、(b)工程により得られたオキシ水酸化鉄は、水素結合サイト(陰イオン吸着サイト)を大量に含有し、オキシ水酸化鉄1kg当りの水酸基含有量で3mol-OH/kg以上、好ましくは5~20mol-OH/kg、更に好ましくは7~30mol-OH/kgである。
なお、オキシ水酸化鉄の水酸基含有量は、フーリエ変換赤外分光光度計(拡散反射法)を用いて、FeOOHの O-Hの伸縮状態を測定し、Russel et al., Nature 1974, 248, 220-221からFeOOHのピークを3130cm-1及び3420cm-1として、Miura et al., Am. Chem. Soc., Fuel Chem., 1999, 44 (3), 642-646に基づいて算出し、決定することができる。
【0015】
(b)工程により得られたオキシ水酸化鉄は針状結晶であり、幅が10~500nm、好ましくは50~200nmであり、長さ/幅の比(L/D)は、通常5/1~50/1、好ましくは5/1~20/1である。
オキシ水酸化鉄は針状結晶であるが、凝集して凝集体粒子となっている。オキシ水酸化鉄の凝集体粒子としての平均粒子径は100~300μm、好ましくは150~250μmである。
ここで、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば、株式会社堀場製作所、LA-920)を用いて、レーザー回折/散乱法で測定された体積基準粒度分布から算出されるメジアン径を意味する。
【0016】
本発明方法の(c)工程においては、(b)工程で得られたオキシ水酸化鉄を水と接触させた後、100℃以下の温度で乾燥する。
温度が100℃を超えると乾燥は速いが、水素結合サイト(陰イオン吸着サイト)を適切に残すよう制御することが困難となる。また、温度が低すぎると乾燥に時間がかかりすぎ、実用的でない場合がある。このため、乾燥温度は、好ましくは20~80℃、更に好ましくは30~70℃、特に好ましくは40℃以上60℃未満である。乾燥は、空気中、真空中、不活性ガス中のいずれでもよいが、真空条件下で行うことが好ましい。乾燥時間は特に制限はなく、通常2時間~2日間、好ましくは5時間~24時間である。
(c)工程における処理により、得られるオキシ水酸化鉄1kg当りの水酸基含有量(オキシ水酸化鉄の吸着サイト)は、3mol-OH/kg-FeOOH以上、好ましくは5~20mol-OH/kg、更に好ましくは7~30mol-OH/kgのままで大きく変化しない。しかし、BET比表面積は、1.2倍以上、好適条件では1.5~2.5倍増大する。その結果、BET法による比表面積は、好ましくは100~400m2/g、更に好ましくは120~350m2/g、特に好ましくは150~300m2/gとなる。
本発明の(c)工程においては、高温度での乾燥処理がないので粒子間焼結がなく、増大したBET比表面積が減少することはない。
凝集体粒子としての平均粒子径は、80~300μm、好ましくは100~200μmである。
【0017】
(c)工程の水処理による比表面積増大のメカニズムについては、次の(1)、(2)が考えられる。
(1)3価の鉄イオン含有溶液に水酸化ナトリウム等の塩基を添加するので、FeOOH凝集体中に不純物としてNaClの結晶がナノサイズで生成する。これが水と接触することによってNaClが溶解し、NaClが溶解した部分は細孔になり、比表面積増大に繋がると考えられる。
(2)FeOOH製造過程でpHを3.3~6に調整するため、FeOOHを完全に結晶化するには水酸基(OH)が不足状態にあり、その状態のまま100℃以下という低温で乾燥することでさらに水酸基が不足状態となる。その状態でオキシ水酸化鉄が水と接触すると急激な吸水が起こり、その吸水によってFeOOHの結晶格子間が緩むと考えられる。
【0018】
本発明方法においては、(a)~(c)の各工程の条件を適宜調整することにより、BET比表面積、水酸基含有量、単独粒子の平均粒子径及び微粒子凝集体の平均粒子径の異なるオキシ水酸化鉄を製造することができる。
【0019】
オキシ水酸化鉄には、α-FeOOH(ゲータイト)、β-FeOOH(アカゲナイト)、γ-FeOOH(レピドクロサイト)の3種類があるが、本発明方法によるオキシ水酸化鉄はα-FeOOHに近いが、100%完全なα-FeOOH(ゲータイト)ではないと考えられる。本発明方法によるオキシ水酸化鉄は、α-FeOOHに近い非晶質FeOOHの微粒子であり、これが大きな凝集体となっており、光沢のある黒色粒子の形態となっている。その凝集体は無数の細孔を保有する。粒子の平均細孔径は、好ましくは0.1~5.0nm,更に好ましくは0.5~1.5nmである。
【0020】
本発明のオキシ水酸化鉄の結晶構造は基本的には斜方晶であり、FeO68面体はFeIIIイオンに3つO2-と3つのOH-が配位している。このFeIIIイオンに配位したOH-のO-Hの伸縮が、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で測定したときに特徴的なスペクトルとして得ることができる。
すなわち、本発明のFeOOHのFTIRスペクトルピークは、O-H伸縮を示す3420cm-1に大きなピークがあり、弱い水素結合のOH基を大量に含有していることが特徴である。FTIRスペクトルにおけるこの3420cm-1のピークのOH-が、水素結合サイトとして、リン酸イオン等の陰イオン及び環境ホルモンの吸着において大きな役割を果す。
【0021】
本発明のオキシ水酸化鉄を用いて、水中のリン成分、環境ホルモン等の有害物質を除去する場合、これを充填塔(槽)に充填し、通水する方法で行うことができる。この場合、凝集体粒子の平均細孔径、平均粒子径、BET比表面積等は、吸着除去しようとする有害物質の捕捉に適した値のものを使用する。一般的には、取り扱い性、吸着性、吸着物質の回収性の観点から、平均粒子径が0.2~100mm、好ましくは0.5~50mm、更に好ましくは1~30mmの凝集体で多孔質のオキシ水酸化鉄凝集体が適当である。
【0022】
本発明の製造方法で得られたオキシ水酸化鉄は、非表面積が大きく、かつ従来の5~8倍の陰イオン吸着サイト(水素結合サイト)を有しているため、陰イオン種に対して優れた吸着力を発揮し、浄水又は気体浄化等の分野で好適に使用することができる。また、再使用が容易であるため実用性が高く、吸着したリン酸イオン等を効率的に分離、回収することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
(オキシ水酸化鉄の製造)
実施例1
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)を0.1mol/Lとなるように水に溶解し、室温で撹拌しながら、濃度2モル/ LのNaOH溶液を添加して溶液全体のpHを4に調整した。溶液中に生じた沈殿生成物を24時間静置し、吸引濾過して、沈殿物を得た。この沈殿物を50℃で48時間、定温乾燥器中で乾燥してFeOOHを得た。
得られたFeOOHのBET比表面積は50.6m2/g、水酸基含有量は12.78mol-OH/kg-FeOOH、凝集体粒子としての平均粒子径は、200μmであった。
このオキシ水酸化鉄を、パルプ濃度(水重量と乾燥オキシ水酸化鉄との重量比)が5%となるように純水中に投入し、室温で5分間撹拌した。撹拌後に吸引濾過して、オキシ水酸化鉄を得た。得られたオキシ水酸化鉄を55℃で24時間乾燥処理した。
得られたオキシ水酸化鉄のBET比表面積は218.6m2/g、水酸基含有量は12.8mol-OH/kg-FeOOH、凝集体粒子としての平均粒子径は、137.5μmであった。
なお、測定条件は次のとおりである。
(1)BET比表面積
日本ベル株式会社製、BET比表面積測定装置、型式BELSORP-miniを用いて測定した。
(2)水酸基含有量
日本電子株式会社製、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、型式SPX60(拡散反射法)を用いて、FeOOHの水素結合サイトとして、 O-Hの伸縮状態を測定した。Russel et al., Nature 1974, 248, 220-221からFeOOHのピークを3130cm-1及び3420cm-1として、水酸基含有量をMiura et al., Am. Chem. Soc., Fuel Chem., 1999, 44 (3), 642-646に基づいて算出し、決定した。
(3)平均粒子径
株式会社堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒度分布計、型式LA-920を用いて測定された体積基準粒度分布からメジアン径を算出した。
【0024】
実施例2~10
実施例1において、pH及び乾燥条件を、第1表に記載した条件としたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を第1表に示す。
なお、真空乾燥の場合は、ゲージ圧0.1MPaで行った。
【0025】
比較例1
市販試薬のオキシ水酸化鉄(α-FeOOH、ナカライテスク株式会社製、BET比表面積10.8m2/g)を230℃で2時間加熱処理した。得られたオキシ水酸化鉄のBET比表面積は170m2/g、水酸基含有量は3mol-OH/kg-FeOOH、凝集体粒子としての平均粒子径は、189μmであった。
【0026】
比較例2
実施例1において、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)の代わりに、塩化第一鉄(FeCl2)を用い、pHを8に調整し、得られた沈殿物を75℃で24時間乾燥し、(c)工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られたオキシ水酸化鉄のBET比表面積は132.0m2/g、水酸基含有量は3.3mol-OH/kg-FeOOH、凝集体粒子としての平均粒子径は、123μmであった。
【0027】
比較例3~5
実施例2~10において、乾燥条件を第1表に記載した条件としたこと以外は、実施例2~10と同様に行った。結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】
JP0004012975B2_000002t.gif

【0029】
(オキシ水酸化鉄の評価)
評価試験1
実施法1~5で得られたオキシ水酸化鉄を、リン濃度50mg/Lのリン酸溶液に1g/Lの割合で投入し、リン酸イオンの吸着性能を評価した。結果を図1に示す。図1から、乾燥温度が50℃から上昇するに従ってリン吸着量が徐々に減少するが、乾燥温度90℃でリン吸着率55%を示し、乾燥温度60℃未満でリン吸着率70%以上を示していることが分かる。
なお、リン吸着率(%)は、下式により算出した。
リン吸着率(%)=(吸着実験後のリン濃度/吸着実験前のリン濃度)×100
【0030】
評価試験2
フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子社製:型式SPX60)を用いて、実施例1で得られたオキシ水酸化鉄、及び市販試薬のオキシ水酸化鉄(α-FeOOH、ナカライテスク社製)について、FeOOHの水素結合サイトとして、 O-Hの伸縮状態を測定した。結果を図2に示す。
図2から、市販試薬のα-FeOOHも、実施例1で得られたFeOOHも、波数2400cm-1~3700cm-1にピークが存在しているが、実施例1で得られたFeOOHは、波数3420cm-1に大きなピークが存在しており、リン酸イオン等の陰イオン種の吸着能を示す弱い水素結合の水酸基を大量に含有していることが分る。
図3は、実施例1で得られたFeOOHを用いて、評価試験1を行った場合のリン酸イオン吸着前と吸着後のFTIRスペクトルである。リン酸イオン吸着前の波数3420cm-1のピークの水酸基含有量は8.27mol-OH/kg-FeOOHであり、リン酸イオン吸着後の波数3420cm-1のピークの水酸基含有量は3.54mol-OH/kg-FeOOHであった。このようにリン酸イオン吸着後のFTIRスペクトルは3420cm-1のピークが激減している。これはFeOOHの水素結合サイトのOH基の脱離と同時にリン酸イオンが吸着したことを示している。このことから、リン酸イオン等の陰イオン種の吸着除去には、水素結合サイトが寄与していることが分る。
図4は、実施例1において、(b)工程における乾燥温度を50℃~400℃に変化させた場合のFTIRスペクトルである。加熱温度が上昇するに従って3420cm-1のピークが減少し、100℃を超えた温度で乾燥すると、水素結合サイトが大幅に減少し、リン酸イオン等の陰イオン種の吸着能が大幅に低下することが分かる。
【0031】
評価試験3
実施例1で得られたオキシ水酸化鉄と市販試薬のオキシ水酸化鉄(α-FeOOH、ナカライテスク社製)、及びリン酸イオン含有水(和光純薬工業株式会社製リン標準液)を用いて、リン吸着量とリン平衡濃度の関係(オキシ水酸化鉄量1g/L、接触時間24時間)を評価した。結果を図5に示す。
図5からリン酸イオン平衡濃度が上昇するにつれてリン酸イオン吸着量も増加し、実施例1で得られたオキシ水酸化鉄では、平衡濃度200mg/Lでリン吸着量は40mg/gあった。一方、市販試薬のオキシ水酸化鉄では、平衡濃度200mg/Lでリン吸着量は6mg/gあった。この結果、実施例1で得られたオキシ水酸化鉄は、市販試薬のオキシ水酸化鉄の6.7倍の吸着能があることが分る。
【0032】
評価試験4
リン酸イオン含有廃水(滋賀県石部地区工場排水、リン濃度(リン元素換算)52.19mg/L)に、実施例1で得られたオキシ水酸化鉄を添加して、リン酸イオン除去能の評価を行った。オキシ水酸化鉄を2g/L-排水の割合で添加して、24時間攪拌した後のリン濃度は0mg/Lであり、リン酸イオンを完全に除去できた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】評価試験1における、実施法1~5で得られたオキシ水酸化鉄のリンの吸着性能評価の結果を示す図である。
【図2】評価試験2における、実施例1で得られたオキシ水酸化鉄と市販試薬のオキシ水酸化鉄のFTIRスペクトルである。
【図3】評価試験2における、リン酸イオン吸着前と吸着後のFTIRスペクトルである。
【図4】評価試験2における、乾燥温度を変化させた場合のFTIRスペクトルである。
【図5】評価試験3における、リン吸着量とリン平衡濃度の関係を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4