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明細書 :ハイブリット複合体を表面に備える体内留置型医療用デバイスの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4570445号 (P4570445)
公開番号 特開2006-130007 (P2006-130007A)
登録日 平成22年8月20日(2010.8.20)
発行日 平成22年10月27日(2010.10.27)
公開日 平成18年5月25日(2006.5.25)
発明の名称または考案の名称 ハイブリット複合体を表面に備える体内留置型医療用デバイスの製造方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61F   2/02        (2006.01)
A61F   2/06        (2006.01)
A61L  29/00        (2006.01)
A61L  31/00        (2006.01)
A61M  25/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 Z
A61L 27/00 Q
A61F 2/02
A61F 2/06
A61L 29/00 W
A61L 31/00 Z
A61M 25/00 304
請求項の数または発明の数 5
全頁数 53
出願番号 特願2004-321101 (P2004-321101)
出願日 平成16年11月4日(2004.11.4)
審査請求日 平成19年7月10日(2007.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】803000056
【氏名又は名称】財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
発明者または考案者 【氏名】古薗 勉
【氏名】安田 昌司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】安居 拓哉
参考文献・文献 特開2004-051952(JP,A)
特開2004-143417(JP,A)
特開平08-266618(JP,A)
特開2003-144139(JP,A)
特開2004-173772(JP,A)
特開平03-073160(JP,A)
特開平10-052488(JP,A)
特開平08-198763(JP,A)
特開平01-170467(JP,A)
特開2003-320011(JP,A)
特開2004-105046(JP,A)
特開2001-172511(JP,A)
井奥 洪二 ,化学工業,2001年,Vol.52 No.5 ,pp.360-365
Miyazaki, T. et al.,Transactions of the Materials Research Society of Japan,2004年 9月,Vol.29 No.6,pp.2923-2926
Schnettler, R. et al.,Biomaterials,2003年,Vol.24,pp.4603-4608
調査した分野 A61L 27/00
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リン酸カルシウムまたは酸化チタンと高分子基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに自家細胞および/またはES細胞で被覆されてなるハイブリット複合体を表面に備える体内留置型医療用デバイスの製造方法であって、以下の(3)または(4)であることを特徴とする体内留置型医療用デバイスの製造方法:
(3)前記自家細胞および/またはES細胞を、前記複合体を含む液体培地が入った培養容器中で、当該培養容器を回転させつつ培養してハイブリット複合体を取得し、当該ハイブリッド複合体を用いて体内留置型医療用デバイスを製造する工程を含む体内留置型医療用デバイスの製造方法;
(4)前記複合体を表面に備える体内留置型医療用デバイスを含む液体培地が入った培養容器中で、前記自家細胞および/またはES細胞を培養する際に、当該体内留置型医療用デバイスを回転させつつ培養する工程を含むことを特徴とする体内留置型医療用デバイスの製造方法
【請求項2】
上記(3)において自家細胞および/またはES細胞と複合体とが接触しやすいような角度で培養容器を回転させ、
上記(4)において自家細胞および/またはES細胞と体内留置型医療用デバイスとが接触しやすいような角度で体内留置型医療用デバイスを回転させることを特徴とする請求項1に記載の体内留置型医療用デバイスの製造方法
【請求項3】
上記(3)において5分から2時間間隔で培養容器を回転させつつ培養し、
上記(4)において5分から2時間間隔で体内留置型医療用デバイスを回転させつつ培養することを特徴とする請求項1または2に記載の体内留置型医療用デバイスの製造方法
【請求項4】
上記体内留置型医療用デバイスが、経皮デバイス、腹膜透析用カテーテル、人工肛門、人工膀胱、ステント、ステントグラフト、人工血管、シャント、人工心臓、ペースメーカー、または人工靭帯である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の体内留置型医療用デバイスの製造方法
【請求項5】
上記自家細胞が、歯根膜細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、およびES細胞からなる群より選ばれる物質、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の体内留置型医療用デバイスの製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、体内留置型医療用デバイス用の医療材料として利用可能な複合体であって、迅速な細胞親和性および長期間細胞接着安定性を両立するハイブリット複合体、およびその製造方法、並びにそれを用いた医療用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムや、ポリウレタン等の高分子基材は、生体不活性、長期安定性、強度および柔軟性等の特性を有しており、例えば経皮カテーテル用の医療用材料として広く用いられている。しかし、上記例示の高分子基材は生体不活性であるために、上記例示の高分子基材を医療用材料として用いる場合には、経皮部において生体組織との接着が起こらず、皮膚のダウングロース(上皮組織がカテーテル表面に沿って内部へ陥入していく現象)、および陥入部位における細菌感染の危険性が常に問題となっている。
【0003】
一方、例えばハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムは、生体活性材料として医療分野において広く用いられている。当該リン酸カルシウムは、単独、または無機材料や有機材料と複合化させて医療分野に利用されている。上記リン酸カルシウムは、例えば、経皮カテーテル等の部材として使用されている。
【0004】
しかし、上記リン酸カルシウムは、脆く、成形性が悪く、および金属部材との結合性がない。従って、例えば、上記リン酸カルシウムを経皮カテーテルとして用いた場合には、金属性部材とリン酸カルシウム端子との間隙から細菌感染が起こる可能性がある等の問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解消する手法の一つとして、例えば、上記高分子基材の表面にハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムを修飾したリン酸カルシウム複合体を用いることが提案されている。
【0006】
そして、上記高分子基材の表面に、リン酸カルシウムを修飾する方法としては、具体的には、例えば、ガラスとの複合化により修飾する方法(特許文献1参照)、生体模倣反応を利用して修飾する方法(特許文献2参照)、交互浸漬法を利用して修飾する方法(特許文献3参照)などが行われている。これらのリン酸カルシウムは、結晶構造がアモスファス(非晶質)であり、生体内で溶解しやすく生体活性の持続が十分でないという問題点がある。
【0007】
また、高結晶性リン酸カルシウムラミックスを、高分子基材表面へ修飾する方法としては、接着剤もしくは高分子基材を溶融することにより複合化する製造方法(特許文献4参照)や、スパッタリングイオンビームを用いて修飾する方法(特許文献5参照)や、プラズマ処理を用いて修飾する方法(特許文献6,7参照)、レーザーアブレーションを用いて修飾する方法(特許文献5参照)などがあるが、これは高分子基材の物性を損なう恐れがあり、スパッタリングイオンビーム法、プラズマ処理法、レーザーアブレーション法で行われたものはリン酸カルシウム粒子が均一でなく、また単に吸着しているだけであるため基材と粒子との間の結合力は十分でなく、高分子基材からリン酸カルシウム粒子が剥離する恐れがある。
【0008】
一方、酸化チタンは、白色顔料としての特性を利用して塗料、合成樹脂、インキ、製紙、化学繊維等に混合・複合化されている。また、酸化チタンは、光触媒として脱臭材、防汚材、抗菌・抗ウィルス・防カビ材、防曇材、水処理材、抗癌剤(材)等に用いられている。また、上記酸化チタンは、化学的に極めて安定で毒性がない物質として知られている。具体的には、例えば、16ヶ月間飼料中に酸化チタンを添加して与えた動物試験(非特許文献1参照)、皮下注射、粉末吸入を行なった動物試験(非特許文献2参照)においても中毒症状が認められないことが報告されている。さらに、経口投与しても発癌性がないことが報告されている(非特許文献3参照)。
【0009】
このような酸化チタンを医療用材料として使用したのものとしては、高い隠ぺい力による歯科用レジンコンポジット充填剤(非特許文献4参照)や、光触媒効果による抗癌剤(非特許文献5参照)、液体含有物非付着性カテーテルが提案されている。
【0010】
そして、医療用材料として好適な、これら酸化チタンと上記高分子基材とを複合化させた酸化チタン複合体が提案されている。
【0011】
上記酸化チタン複合体の製造方法としては、具体的には、例えば、すき込み、または、溶融による混合がある。また、高分子基材の表面に酸化チタンをコーティングする方法としては、例えば、ディップ法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等がある。
【0012】
しかしながら、上記製造方法によって製造された酸化チタン複合体では、高分子基材および酸化チタンが本来有する性質が変化する、または、酸化チタンが高分子基材から剥離するという問題点がある。
【0013】
具体的には、すき込み、または、溶融によって製造された酸化チタン複合体の場合には、製造過程において、本来酸化チタンまたは高分子基材が本来有する物性を損なう、または、物性が変化してしまう。
【0014】
また、例えば、高分子基材の表面に、酸化チタンを上記コーティングする方法によって製造された酸化チタン複合体は、高分子基材の表面に酸化チタンを塗布しただけである、つまり、酸化チタンを物理的に接着または吸着させている。従って、酸化チタンが高分子基材の表面から簡単に剥離することとなる。このように、高分子基材から酸化チタンが簡単に剥離してしまうと、酸化チタン複合体としての機能を発揮することができない。
【0015】
従って、酸化チタンおよび高分子基材の本来有する物性を損なわせることなく、簡単、かつ、高分子基材の表面に酸化チタンが強固に結合された、酸化チタン複合体およびその製造方法が求められている。
【0016】
以上の問題点を解決するために、本発明者らが開発した方法が、例えば特許文献8~特許文献10に開示されている。これらの技術は、リン酸カルシウムもしくは酸化チタンと化学的に結合する活性基を有する低分子もしくは高分子鎖を高分子基材表面に化学修飾することによって、化学結合を介してリン酸カルシウムもしくは酸化チタンと高分子基材との複合体形成させるという方法である。これらの方法により、上記問題点は解決された。

【特許文献1】特開昭63-270061号公報(公開日;1988年11月8日)
【特許文献2】特開平7-303691号公報(公開日;1995年11月21日)
【特許文献3】特開2000-342676号公報(公開日;2000年12月12日)
【特許文献4】特開平10-15061号公報(公開日;1998年1月10日)
【特許文献5】特開2003-52805号公報(公開日;2003年2月25日)
【特許文献6】特開平8-56963号公報(公開日;1996年3月5日)
【特許文献7】特開2001-190653号公報(公開日;2001年7月17日)
【特許文献8】特開2001-172511号公報(公開日;2001年6月26日)
【特許文献9】特開2004-51954号公報(公開日;2004年2月19日)
【特許文献10】特開2004-143417号公報(公開日;2004年5月20日)
【非特許文献1】L.Herget,Chem.Ztg.,82,793(1929)
【非特許文献2】L.Vernettiblinate,Riforma.Med.Naples,44,15,16(1928)
【非特許文献3】清野 学著、「酸化チタン-物性と応用技術」、技術堂出版株式会社、p80
【非特許文献4】K.Yoshida,et al.,J.Biomed.Mater.Res.Appl.Biomater.,58,525(2001)
【非特許文献5】R.Cai,et al.,Cancer Res.,52,2346(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、経皮カテーテル等の体内留置型医療用デバイス、特に皮下組織、筋肉、血管等の生体軟組織に用いられる医療用デバイスにおいては、当該医療用デバイスの埋植時における親和性が迅速に行なわれることが特に重要である。なぜなら、医療用デバイスの埋植から軟組織との接着までの期間に、細菌等による感染や医療用デバイスのズレが生じるからである。よって、医療用デバイスの医療用材料に用いられる上記リン酸カルシウムと高分子基材との複合体、および酸化チタンと基材との複合体としては、軟組織と迅速に接着する性質を有するものが好ましいといえる。
【0018】
それゆえ本発明は、生体組織、特に軟組織と迅速に接着する性質を有するリン酸カルシウムと基材との複合体、および酸化チタンと基材との複合体、並びに前記複合体の製造方法、前記複合体を用いた医療用材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明にかかるハイブリット複合体は、上記課題を解決するために、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに軟組織に対して親和性を有する軟組織親和性向上物質で被覆されていることを特徴としている。
【0021】
上記軟組織親和性向上物質は、軟組織に対して親和性を有するものであり、軟組織と迅速に接着する物質である。よって、生体適合性が高いリン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材が化学結合してなる複合体の表面に、さらに当該軟組織親和性向上物質を被覆することによって、さらに生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と接着することができる。それゆえ、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用デバイスのズレを予防することができるという効果を奏する。また本発明にかかるハイブリット複合体において、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材が化学結合によって複合体を形成しているため、埋植後の安定性はきわめて高いといえる。
【0022】
また本発明にかかるハイブリット複合体は、上記課題を解決するために、上記軟組織親和性向上物質が、自家細胞、ES細胞、細胞増殖因子、接着性タンパク質、および接着性多糖類からなる群より選ばれる物質、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
自家細胞は、医療用材料が埋植される生体から採取した細胞であり、その生体組織(軟組織)との親和性は特に高い。ES細胞は、生態に移植した環境に適合した細胞に形質転換する性質を示すため自家細胞と同様移植した場に対して親和性を示すので、軟組織に埋殖した場合は、その細胞が軟組織と良好な親和性を示す。また、細胞増殖因子は、細胞の接着・増殖を促進する効果があるためより効果的な親和性促進効果を発現するので、軟組織に埋殖した場合は、その増殖因子が軟組織と良好な親和性を示す。さらに、接着性タンパクおよび接着性多糖類は、細胞と直接接着する効果のあるため、より効果的な細胞親和性促進効果を発現する。それゆえ本発明にかかるハイブリット複合体からなる医療用デバイスは、生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と接着することができる。それゆえ、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用デバイスのズレを予防することができるという効果を奏する。
【0024】
また本発明にかかるハイブリット複合体は、上記課題を解決するために、上記自家細胞が、歯根膜細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、およびES細胞からなる群より選ばれる物質、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
上記歯根膜細胞または、線維芽細胞、または血管内皮細胞は、軟組織を形成する細胞であり、また骨髄細胞、またはES細胞は、生体に移植した環境に適合する細胞に形質転換するので軟組織に埋殖した場合軟組織と親和性を示す細胞である。それゆえ軟組織との親和性が高い。以上の理由より本発明にかかるハイブリット複合体からなる医療用デバイスは、生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と接着することができる。それゆえ、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用デバイスのズレを予防することができるという効果を奏する。
【0026】
また本発明にかかるハイブリット複合体は、上記課題を解決するために、上記細胞増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、および表皮成長因子(EGF)からなる群より選ばれる物質、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
上記線維芽細胞増殖因子(FGF)、または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、または肝細胞増殖因子(HGF)、または表皮成長因子(EGF)は、細胞の接着・増殖を促進する効果があるためより効果的な親和性促進効果を発現する物質であるので、軟組織に埋殖することにより、特に軟組織との親和性が高くなる。それゆえ本発明にかかるハイブリット複合体からなる医療用デバイスは、生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と親和することができる。それゆえ、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用デバイスのズレを予防することができるという効果を奏する。
【0028】
また本発明にかかるハイブリット複合体は、上記課題を解決するために、上記接着性タンパク質が、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、およびフィブロインからなる群より選ばれる物質、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
上記コラーゲン、またはゼラチンまたはフィブリン、またはフィブロイン、またはグリコサミノグリカン、もしくはペクチン、またはヒアルロン酸、またはコンドロイチン、またはヒアルロン酸、またはコンドロイチン、またはキチン、またはキトサン、またはアルギン酸は、細胞と直接接着する効果のあるため、より効果的な細胞親和性促進効果を発現する。それゆえ特に軟組織に埋殖した場合、軟組織と親和性が高くなるといえる。それゆえ本発明にかかるハイブリット複合体からなる医療用デバイスは、生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と接着することができる。それゆえ、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用デバイスのズレを予防することができるという効果を奏する。
【0030】
一方、本発明にかかるハイブリット複合体の製造方法は、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに軟組織に対して親和性を有する軟組織親和性向上物質で被覆させてなるハイブリット複合体の製造方法であって、前記複合体に、前記軟組織親和性向上物質を被覆する被覆工程を含むことを特徴としている。
【0031】
上記被覆工程としては、例えば、軟組織親和性向上物質(自家細胞、ES細胞、細胞増殖因子、接着性タンパク質、接着性多糖類)の溶液中に、上記ハイブリット複合体を添加して撹拌し、複合体を回収すれば、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと、基材が化学結合してなる複合体の表面に、さらに軟組織親和性向上物質(自家細胞、ES細胞、細胞増殖因子、接着性タンパク質、接着性多糖類)を被覆させてなるハイブリット複合体を製造することができる。また上記被覆工程としては、上記複合体の表面に、軟組織親和性向上物質(自家細胞、ES細胞、細胞増殖因子、接着性タンパク質、接着性多糖類)を含む溶液を噴霧してもよい。
【0032】
また、本発明にかかるハイブリット複合体の製造方法は、リン酸カルシウム、または酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに自家細胞、および/またはES細胞で被覆させてなるハイブリット複合体の製造方法であって、前記複合体を含む液体培地に、前記自家細胞、および/またはES細胞を接種し、培養する培養工程を含むことを特徴としている。
【0033】
複合体を含む倍地中で、自家細胞等を培養することにより、複合体の表面に増殖した自家細胞等が複合体の表面に吸着することとなる。それゆえリン酸カルシウムまたは酸化チタンと、基材が化学結合してなる複合体の表面に、さらに自家細胞、および/またはES細胞を被覆させてなるハイブリット複合体を製造することができる。
【0034】
一方、本発明にかかる医療用材料は、上記いずれかのハイブリット複合体を用いた医療用材料である。
【0035】
それゆえ、医療用材料を用いて医療用デバイスを製造すれば、医療用デバイスの埋植初期に起こる細菌等による感染や、埋植部からのズレを予防することができるという効果を奏する。また本発明にかかる医療用材料を構成するハイブリット複合体において、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材が化学結合によって複合体を形成しているため、医療用デバイス埋植後の安定性はきわめて高いといえる。
【発明の効果】
【0036】
以上のごとく本発明によれば、生体内で安定性が高く、かつ生体組織、特に軟組織と迅速に接着する性質を有するリン酸カルシウムと基材との複合体、および酸化チタンと基材との複合体、並びに前記複合体の製造方法、前記複合体を用いた医療用材料を提供することができる。
【0037】
それゆえ、経皮デバイス等の医療用材料として用いることによって体細胞親和性が向上することにより、短期間で経皮デバイス等と生体とが密着するため、細菌等の感染の可能性を低減することができる。また人工血管において、本発明にかかるハイブリット複合体を用いることにより、体細胞親和性が向上し、短期間で人工血管が接着するため、人工血管留置部分からのズレる確率を低減することができる。さらには歯根膜細胞および骨髄細胞等の自家細胞を医療用デバイスに被覆することにより、インプラント早期より医療用デバイスのズレ防止や創傷治癒効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
〔本発明にかかるハイブリット複合体〕
本発明にかかるハイブリット複合体は、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに軟組織親和性向上物質で被覆されていることを特徴としている。以下の説明では、「1.軟組織親和性向上物質」、「2.リン酸カルシウムと基材が化学結合してなる複合体」、「3.酸化チタンと基材が化学結合してなる複合体」、「4.本発明にかかるハイブリット複合体の製造方法」、「5.本発明にかかるハイブリット複合体の利用」の項に分けて説明する。
【0040】
なお、本発明の説明において「ハイブリット複合体」とは、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに軟組織親和性向上物質で被覆されている物質のことを意味する。
【0041】
<1.軟組織親和性向上物質>
ここで「軟組織親和性向上物質」とは、生体組織、特に軟組織に親和性を有する物質からなるものである。また「軟組織」とは、骨、歯、および各部臓器を除く体組織をさし、支持組織や運動器などがこれに含まれ、皮下組織、筋肉、筋膜、腱、滑膜、真皮、漿膜などの間葉系組織からなる。骨髄、リンパ節、血球などの造血臓器は除外されるが、外肺葉組織のうち末梢神経、交感神経や傍神経節などは含まれる。軟組織を形成する細胞としては、線維芽細胞、組織球、脂肪細胞、血管およびリンパ管内皮細胞、血管外皮細胞平滑筋細胞、黄紋筋細胞、滑膜細胞、未分化間葉細胞、抹消神経細胞、Schwann細胞などである。
【0042】
上記「軟組織親和性向上物質」としては、特に限定されるものではないが、例えば自家細胞、またはES細胞、または細胞増殖因子、または接着性タンパク質、または接着性多糖類等が挙げられる。
【0043】
ここで「自家細胞」とは、医療用デバイスが埋植される生体から採取した細胞のことを意味する。例えば、本発明にかかるハイブリット複合体に用いる場合には、当該細胞を対象体(動物でもよい)から採取し、生体外で培養した細胞を対象体に戻すようなその細胞をさす。培養条件等については特に限定されるものではなく、当該細胞に好適な条件を適宜選択の上、採用すればよい。当該細胞が表面に被覆された医療用デバイスは、その生体組織(軟組織)との親和性は高く、また免疫反応等が起こらないために好ましいといえる。かかる自家細胞として利用可能な細胞としては、例えば、歯根膜細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、ES細胞(embryonic stem cell line;胚性幹細胞)等が挙げられる。上記の細胞は、軟組織を形成する細胞もしくは軟組織に埋殖されたときその軟組織に分化する細胞であるため、軟組織との親和性が特に高い。それゆえ、当該細胞が表面に被覆された医療用材料は、その生体組織(軟組織)と迅速に接着することとなる。
【0044】
また、自家細胞でないES細胞(クローン胚:クローン胚とは、患者自身の体細胞の核を取り出し、卵子の核と入れ替えたものことを意味する。 HYPERLINK "http://www.trc-net.ne.jp/basics/i-02.html" http://www.trc-net.ne.jp/basics/i-02.html参照。)も「軟組織親和性向上物質」として利用可能である。ES細胞は、種々の細胞に分化することができる未分化の細胞であり、当該細胞を埋植すればその軟組織二分化する。それゆえ、軟組織との親和性は特に高いといえる。また増殖能力が高く、生体外において細胞を調製することが容易であるために本発明にかかるハイブリット複合体を構成する「軟組織親和性向上物質」として特に好ましいといえる。かかるES細胞の由来は、医療デバイスを埋植する生体由来のもの用いる必要がある。すなわち、最終的に製造した医療デバイスをヒトの埋植する際は、ヒト由来のES細胞を用いる。なお、ES細胞は、米国ワイセル(WiCell)社等から入手可能である(読売新聞2001年11月30日記事参照)。
【0045】
また上記「軟組織親和性向上物質」として利用可能な「細胞増殖因子」としては、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、または肝細胞増殖因子(HGF)、または表皮成長因子(EGF)等が挙げられる。例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、血管内皮が損傷すると、当該組織に付着して損傷箇所を修復するという性質を有している。よって、上記細胞増殖因子は、軟組織細胞の接着・増殖を促進する効果があるためより効果的な親和性促進効果を発現する物質であり、軟組織との親和性が特に高い。それゆえ、「軟組織親和性向上物質」として好適である。
【0046】
また上記「軟組織親和性向上物質」として利用可能な「接着性タンパク質」としては、例えば、コラーゲン、またはゼラチン、またはフィブリン、またはフィブロイン等が挙げられ、「接着性多糖類」として、グリコサミノグリカン、またはペクチン、またはヒアルロン酸、またはコンドロイチン、またはキチン、またはキトサン、またはアルギン酸等が挙げられる。また上記物質の部分分解物、酸化物、アルキレンオキシド付加物、カルボキシメチル化物および架橋体であってもよい。上記接着性タンパク質および接着性多糖類は、細胞が生体と接着する際に分泌するタンパクおよび多糖類である。それゆえ、当該接着性タンパクおよび多糖類は、生体組織、特に軟組織との親和性が高いために「軟組織親和性向上物質」として好適である。上記「接着性タンパク質」および「接着性多糖類」は、市販品を入手して使用すればよい。また必要に応じて、分解、化学修飾等を行って使用してもよい。
【0047】
なお本発明にかかるハイブリット複合体は、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと基材とが化学結合してなる複合体の表面の少なくとも一部が、さらに上記「軟組織親和性向上物質」で被覆されているものであるが、複合体の表面に被覆する「軟組織親和性向上物質物質」は、上記例示した種々の物質の1つに限られるものではなく、種々組み合わせて被覆した態様であってもよい。軟組織親和性向上物質を、リン酸カルシウムまたは酸化チタンと、基材が化学結合してなる複合体の表面に被覆する方法については後述する。
【0048】
<2.リン酸カルシウムと基材が化学結合してなる複合体>
以下に、リン酸カルシウムと基材が化学結合してなる複合体(以下リン酸カルシウム複合体という)について説明する。なお以下の説明においては、リン酸カルシウムのうち特にリン酸カルシウム焼結体と基材とが化学結合した場合について説明するが、本発明においてリン酸カルシウムは、焼結体であっても、アモルファス(非晶質)であってもよい。ただし、生体内での安定性が高いという理由からは焼結体の方が好ましいといえる。
【0049】
まず、基材と複合体を形成するリン酸カルシウム焼結体について説明する。上記リン酸カルシウム焼結体(リン酸カルシウムセラミックスとも呼ばれる)とは、アモルファス(非晶質)のリン酸カルシウムと比べた場合に結晶性が高いリン酸カルシウムを示している。具体的には、リン酸カルシウム焼結体は、アモルファス(非晶質)のリン酸カルシウムを焼結させることにより得られる。そして、上記リン酸カルシウム焼結体は、該リン酸カルシウム焼結体自体の表面に、カルシウムイオン(Ca2+)、リン酸イオン(PO42-)および水酸化物イオン(OH-)の少なくとも何れか1つのイオンを有している。
【0050】
また、リン酸カルシウム焼結体の1つの結晶面には、少なくともリン酸イオンまたはカルシウムイオンが存在する。具体的には、リン酸カルシウムの結晶面によって存在するイオンは異なり、互いに異なる結晶面に、カルシウムイオンおよびリン酸イオンが存在している。また、上記リン酸カルシウム焼結体に水酸化物イオンが含まれている場合には、該水酸化物イオンは、上記カルシウムイオンまたはリン酸イオンが存在している結晶面の少なくとも1つの結晶面に存在することとなる。
【0051】
上記リン酸カルシウム焼結体としては、具体的には、例えば、ハイドロキシアパタイト焼結体(Ca10(PO46(OH)2)、トリリン酸カルシウム(β(α)-トリリン酸カルシウム(Ca3(PO42))、メタリン酸カルシウム(Ca(PO32)、Ca10(PO462、Ca10(PO46Cl2等が挙げられる。なお、上記リン酸カルシウムは、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。また、上記リン酸カルシウム焼結体には、リン酸カルシウム水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換された化合物等が含まれていてもよい。
【0052】
ここで、上記リン酸カルシウム焼結体の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるリン酸カルシウム焼結体は、アモルファスのリン酸カルシウムを焼結させることにより得ることができる。具体的には、上記例示のリン酸カルシウムを800℃~1300℃の温度範囲内で所定時間焼結させることにより、リン酸カルシウム焼結体を得ることができる。上記リン酸カルシウムを焼結させることによって、結晶性を高めることができ、例えば、生体内に導入した場合における溶解性を小さくすることができる。このリン酸カルシウム焼結体の結晶化の度合いは、X線回折法(XRD)により、測定することができる。具体的には、リン酸カルシウム複合体の各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高い。
【0053】
上記リン酸カルシウムを焼結させる焼結温度の下限値としては、650℃以上がより好ましく、800℃以上がさらに好ましく、1000℃以上が特に好ましい。焼結温度が650℃よりも低いと、焼結が十分でない場合がある。一方、焼結温度の上限値としては、1300℃以下がより好ましく、1250℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。焼結温度が1300℃よりも高いと、後述する基材が有する官能基と直接化学結合することが困難になる場合がある。従って、焼結温度を、上記範囲内とすることにより、生体内で溶解し難く(結晶性が高く)、かつ、基材が有する官能基と直接化学結合することができるリン酸カルシウム焼結体を製造することができる。また、焼結時間としては、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0054】
また、例えば、リン酸カルシウム焼結体を構成する材料として、ハイドロキシアパタイト焼結体またはβ-トリリン酸カルシウムを用いる場合、該ハイドロキシアパタイト焼結体またはβ-トリリン酸カルシウムは、生体組織との親和性および生体環境における安定性が優れているために、医療用材料として好適である。また、ハイドロキシアパタイト焼結体は、生体内で溶解し難い。従って、例えば、上記ハイドロキシアパタイト焼結体を用いてリン酸カルシウム複合体を製造した場合には、生体内で長期間、生体活性を維持することができる。
【0055】
本実施の形態にかかるリン酸カルシウム焼結体は、粒子状であることがより好ましい。より詳細には、上記リン酸カルシウムの粒子径の下限値としては、0.001μm以上がより好ましく、0.01μm以上がさらに好ましい。上記粒子径が0.001μmよりも小さいと、リン酸カルシウムと基材との複合体を生体に埋入した場合に、基材の表面に結合されているリン酸カルシウムが溶出してしまい、生体適合性が損なわれる恐れがある。
【0056】
一方、上記リン酸カルシウムの粒子径の上限値としては、1000μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。上記粒子径が1000μmよりも大きいと、リン酸カルシウムと基材との結合が相対的に弱くなり、リン酸カルシウムと基材との複合体を生体に埋入した場合に破損する恐れがある。
【0057】
また、リン酸カルシウム焼結体は、上記リン酸カルシウムの焼結温度およびリン酸カルシウム焼結体の粒子径を制御することにより、例えば、得られたリン酸カルシウム複合体を生体内に埋入させたとき、リン酸カルシウム焼結体の溶出速度を制御することができる。つまり、上記焼結温度および上記粒子径を制御することにより、用途に応じた、リン酸カルシウムと基材との複合体の物性を設計することができる。
【0058】
(基材)
本実施の形態にかかる基材としては、高分子基材が好ましく、医療用高分子がさらに好ましく、有機高分子が特に好ましい。上記基材としては、具体的には、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴムであっても良い)、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成高分子;セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン等のムコ多糖類等、シルクフィブロイン等の天然高分子等が挙げられる。上記例示の基材のうち、長期安定性、強度および柔軟性等の特性が優れている点で、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、または、シルクフィブロインが好適に使用される。
【0059】
また、上記例示の基材の代わりに、具体的には、例えば、医療用材料として好適に使用することができる、酸化チタン等の無機材料の基材を使用することもできる。従って、本発明における基材とは、上記酸化チタン等の無機材料からなる基材も含むものとする。
【0060】
また、例えば、上記有機高分子と上記無機材料とを組み合わせて基材としてもよい。
【0061】
本実施の形態にかかる基材の表面には、リン酸カルシウムと化学結合することができる官能基を有している。
【0062】
ハイドロキシアパタイトまたはその焼結体の場合、これらハイドロキシアパタイトまたはその焼結体は、イソシアネート基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基と化学結合することが可能である。つまり、基材が有する官能基として、イソシアネート基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有している場合には、この基材とハイドロキシアパタイト焼結体とを化学結合させることができる。なお、上記アルコキシシリル基とは、Si-ORを含む基を示している。つまり、本実施の形態において、アルコキシシリル基には、≡Si-OR,=Si-(OR)2,-Si-(OR)3等が含まれる。なお、上記≡および=は、三重結合、二重結合のみを示すものではなく、それぞれの結合の手が、異なる基と結合していてもよい。従って、例えば、-SiH-(OR)2や-SiH2-(OR)等もアルコキシシリル基に含まれる。また、上記Si-ORのRとは、アルキル基または水素を示している。
【0063】
上記基材表面の官能基は、基材自体が有する官能基であってもよく、また、基材表面を、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電、プラズマ照射、表面グラフト重合等の公知の手段によって、上記基材を改質することにより導入されたものであってもよい。
【0064】
また、上記官能基を導入するために、基材に活性基を導入し、この活性基を用いて官能基を導入してもよい。
【0065】
そして、上記官能基を有する基材と、リン酸カルシウム焼結体とを反応させることによりリン酸カルシウム複合体を得ることができる。なお、リン酸カルシウム複合体の製造方法については後述する。
【0066】
そして、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体が例えば、ハイドロキシアパタイト複合体である場合、基材の表面に、ハイドロキシアパタイト焼結体が化学結合されている。具体的には、ハイドロキシアパタイト焼結体に存在する水酸基(-OH)と、上記基材または表面修飾したリンカーが有するイソシアネート基(—NCO)またはアルコキシシリル基とが、直接、化学結合している。上記基材のアルコキシシリル基が-Si≡(OR)3である場合、ハイドロキシアパタイト焼結体と基材との間には、化学式(1)に示すような結合が存在することとなる。
【0067】
【化1】
JP0004570445B2_000002t.gif

【0068】
(ただし、上記Xは基材を示し、Yはハイドロキシアパタイト焼結体を示す)
上記の場合、基材が備えている1つの(-Si≡(OR)3)に対して、ハイドロキシアパタイト焼結体の3個の水酸基が反応していることとなる。従って、例えば、アルコキシシリル基の数が少ない基材であっても、ハイドロキシアパタイト焼結体を多く結合させることができる。従って、基材にアルコキシシリル基を導入する場合には、この導入するアルコキシシリル基の数を、従来と比べて、減らすことができる。なお、上記化学式(1)のケイ素原子(Si)は、基材が有するアルコキシシリル基の一部である。具体的には、上記ケイ素原子は、表面修飾したグラフト鎖の一部でもよく、高分子鎖が有するアルコキシシリル基の一部でもよい。また、上記化学式(1)の酸素原子(O)は、基材が有するアルコキシシリル基の一部、または、ハイドロキシアパタイト焼結体が有する水酸基の一部である。また、上記化学式(1)のXとSiとの間は、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合していてもよい。
【0069】
また、上記官能基がイソシアネート基の場合には、ハイドロキシアパタイト焼結体と基材とは、ウレタン結合で化学結合されている。
【0070】
リン酸カルシウム複合体においては、基材におけるリン酸カルシウムの結合量(吸着率)が5重量%以上であることが好ましい。さらには上記結合量としては、7重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、12重量%以上が特に好ましい。上記結合量が5重量%以上とすることにより、上記リン酸カルシウム複合体を、例えば、経皮端子等の医療用材料に用いた場合に、高い生体適合性を示すことができる。
【0071】
(リン酸カルシウム複合体の製造方法)
ここで、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体の製造方法は、リン酸カルシウムが、基材粒子が有する官能基と化学結合してなるリン酸カルシウム複合体の製造方法であって、上記リン酸カルシウムと化学結合可能な官能基を有し、かつ、基材粒子と反応可能な官能基含有化合物を、基材粒子と反応させることにより、上記基材粒子に、上記官能基を導入する導入工程と、上記導入工程にて官能基が導入された基材粒子と未反応の官能基化合物とを分離する分離工程と、上記基材粒子に導入された官能基と、上記リン酸カルシウムとを反応させる反応工程とを含む方法である。また、上記製造方法において、上記導入工程の前に、基材を粒子状に形成する形成工程を行ってもよい。これについて以下に説明する。なお、以下の説明では、リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイト焼結体であり、基材がシルクフィブロインであり、上記基材にイソシアネート基および/またはアルコキシシリル基を導入する場合について説明する。
【0072】
(形成工程)
形成工程では、基材を粒子状に形成する。具体的には、基材を長軸方向の長さが1cm~1μmの範囲内であり、短軸方向の長さが1mm~1nmの範囲内である柱状または球状の粒子形状にする。上記基材を粒子状にする形成する方法としては、例えば、基材がシルクフィブロイン繊維の場合には、上記範囲内となるように上記繊維を切断すればよい。
【0073】
(導入工程)
導入工程では、リン酸カルシウムと反応可能な官能基(化学結合可能な官能基)を基材粒子(以下、単に基材と称する場合がある)に導入する。この導入工程では、リン酸カルシウムの種類および、リン酸カルシウムと基材との間に生成される化学結合の種類によって、反応条件等が異なる。
【0074】
上記基材に、イソシアネート基および/またはアルコキシシリル基(官能基)を導入する方法としては、公知の方法により行なえばよく、特に限定されるものではないが、例えば、分子末端に、反応性官能基を有するシランカップリング剤等を用いることにより、基材に上記官能基を導入することができる。
【0075】
ここで、基材にアルコキシシリル基を導入する方法の1つとして、シランカップッリング剤を用いて導入する方法について説明する。なお、基材にアルコキシシリル基を導入する方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0076】
シランカップリング剤は、化学式〔2〕に示すような化学構造をしている。
〔化2〕
Z-Si≡(OR)3 ・・・(2)
上記Zは、各種合成樹脂等の有機材料(基材)と化学結合することができる反応性官能基であればよく、具体的には、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等が挙げられる。また、上記ORは、ハイドロキシアパタイト焼結体と化学結合することができるものであればよく、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、上記化学式(2)中の反応性官能基であるZとSiとは、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合されていてもよい。
【0077】
すなわち、上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-トリエトキシ-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。上記例示のシランカップリング剤のうち、重合性モノマーであるという点で、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。上記シランカップリング剤は、基材の種類、および、基材表面に活性基(後述する)が導入されている場合には、この活性基の種類等によって適宜選択すればよい。
【0078】
上記シランカップリング剤を用いて、基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、具体的には、例えば、コロナ処理を施した基材に、末端に反応性官能基を有するシランカップリング剤を直接導入してもよい。また、界面活性剤と過酸化系開始剤とを用いて基材からプロトン(水素原子)を引き抜いてラジカルを発生させることにより、上記官能基を有する非水溶性モノマーを基材に、直接、グラフト重合させることができる。この方法を用いることにより、基材に上記官能基を、直接、導入することができる。
【0079】
また、基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、例えば、基材に予め、上記シランカップリング剤が有する反応性官能基と反応することができる活性基を導入しておき、この活性基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、基材にアルコキシシリル基を導入してもよい。なお、上記活性基とは、具体的には、例えば、ビニル基、アミノ基等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、上記シランカップリング剤の反応性官能基(上記化学式(2)のZ)の種類に応じて適宜設定すればよい。
【0080】
ここで、基材としてシルクフィブロイン(繊維)を用い、このシルクフィブロインに活性基であるビニル基を導入しておき、このビニル基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、基材にアルコキシシリル基を導入する方法の具体的条件について説明する。
【0081】
まず、基材に活性基を導入する工程(活性基導入工程)について説明する。基材にビニル基を導入するには、例えば、基材と、活性基含有化合物とを、触媒、重合禁止剤および溶媒の混合溶液中で反応させればよい。
【0082】
上記活性基含有化合物としては、具体的には、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。上記溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、脱水ジメチルスルホキシド、脱水ジメチルホルムアミド等が好適に使用される。重合禁止剤は、基材に導入された活性基同士、および、活性基含有化合物同士が重合しないために添加する。上記重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン等が挙げられる。触媒としては、例えば、ジブチルチン(IV)ジラウレート等が挙げられる。
【0083】
上記活性基含有化合物の添加量の下限値としては、基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記添加量が10重量%よりも少ないと、基材に、十分な量の活性基が導入されない場合がある。一方、上記添加量の上限値としては、基材に対して、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記添加量が500重量%よりも多いと経済的でない。
【0084】
そして、反応温度の下限値としては、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましく、45℃以上が特に好ましい。上記反応温度が30℃よりも低ければ、反応が十分に起こらず、基材に活性基が導入されない場合がある。一方、反応温度の上限値としては、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。反応温度が100℃よりも高いと、基材に導入された活性基同士が反応する恐れがある。また、基材が劣化する場合もある。なお、反応時間は、反応温度等により適宜設定すればよい。以上のような条件で反応させることにより、基材に活性基を簡単に導入することができる。
【0085】
基材に対する活性基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましく、2.0重量%以上が特に好ましい。導入率が0.1重量%よりも少ないと、基材に導入されるアルコキシシリル基の数が少なくなり、ハイドロキシアパタイト複合体を製造することができなくなる恐れがある。一方、導入率の上限値としては、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が特に好ましい。上記導入率が30重量%よりも多いと、基材に導入された活性基の数が多くなり、この活性基同士が反応する場合がある。
【0086】
次に、基材の活性基と、末端に反応性官能基を有するシランカップリング剤とを重合することにより、基材にアルコキシシリル基を導入する。
【0087】
上記シランカップリング剤としては、末端の反応性官能基が、基材に導入された活性基と重合することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、活性基としてビニル基を導入した場合には、上記メタクリロキシ系シランカップリング剤である例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を好適に使用することができる。
【0088】
そして、上記シランカップリング剤と活性基が導入された基材とを、重合開始剤、溶媒の存在下で重合させることにより、基材にアルコキシシリル基を導入することができる。
【0089】
上記溶媒としては、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の無極性の有機溶媒が好適に使用される。
【0090】
また、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等を用いればよい。
【0091】
上記シランカップリング剤の使用量(添加量)の下限値としては、上記活性基が導入された基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記使用量が10重量%よりも少ないと、十分なハイドロキシアパタイト焼結体と反応するだけのアルコキシシリル基を導入することができない場合がある。一方、上記使用量の上限値としては、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記使用量が500重量%よりも多いと、経済的でない。
【0092】
また、重合は、窒素雰囲気下で行なうことがより好ましい。重合温度の下限値としては、40℃以上がより好ましく、45℃以上がさらに好ましく、50℃以上が特に好ましい。重合温度が40℃よりも低いと、重合が十分に起こらず、基材に官能基が導入されない場合がある。一方、重合温度の上限値としては、80℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。重合温度が80℃よりも高いと、基材が劣化する場合がある。なお、重合時間としては、所望の導入率(基材に官能基が導入される割合)となるように適宜設定すればよい。
【0093】
また、基材に対する上記官能基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。ここで、導入率とは、基材の単位重量あたりに導入されたシランカップリング剤の重量の割合である。上記導入率が0.1重量%以上であれば、上記基材に、生体適合性を発現することができる十分な量の、ハイドロキシアパタイト焼結体を結合させることができる。一方、上記導入率の上限値としては、特に限定されるものではないが、上記導入率が100重量%よりも高いと、基材に結合するハイドロキシアパタイト焼結体の量が多くなりすぎ、経済的でない場合がある。
【0094】
なお、基材に、アルコキシシリル基を導入する方法としては、上記説明の方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。また、上記反応条件については、基材、活性基含有化合物およびシランカップリング剤の種類等によって、適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。このようにして、基材の表面に官能基を導入することができる。
【0095】
ここで、上記アルコキシシリル基を導入する別の方法について説明する。具体的には、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤と、基材とを反応させることにより、基材に、アルコキシシリル基を直接導入する方法である。
【0096】
まず、上記シランカップリング剤と界面活性剤とを混合しておく。そして、この混合物を基材と開始剤とが含まれている水溶液中に加えて反応させる。これにより、基材にアルコキシシリル基を直接導入することができる。上記方法により、基材にアルコキシル基を導入する場合には、水溶液中で反応させることができるので、アルコキシシリル基が導入された基材の生体に対する安全性をより向上させることができる。
【0097】
上記アルコキシシリル基を基材に直接導入する方法において用いられる界面活性剤としては、具体的には、例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ドデシル-β-グルコシド等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、上記開始剤としては、具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム(ペルオキソ二酸カリウム)等が挙げられる。また、反応溶媒としては、水、アルコール等が好適に用いられる。
【0098】
また、上記アルコキシシリル基を直接導入する方法において、使用する界面活性剤の量としては、シランカップリング剤に対して、1.0~50.0重量%の範囲内がより好ましく、10.0~25.0重量%の範囲内がさらに好ましい。界面活性剤を上記の範囲内で使用することにより、シランカップリング剤が有するアルコキシシリル基を水やアルコール等から保護することができる。
【0099】
つまり、上記アルコキシシリル基を直接導入する方法においては、アルコキシシリル基を一時的に界面活性剤で保護しておき、この保護されたアルコキシシリル基と基材とを反応させることにより、基材にアルコキシシリル基を直接導入することができる。
【0100】
なお、上記アルコキシシリル基を直接導入する方法における、その他の反応条件(例えば、基材に対する添加量)等については、上記官能基がアルコキシシリル基の場合と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0101】
次に、上記官能基がイソシアネート基である場合について説明する。イソシアネート基を末端に有するモノマーと基材と重合させて、基材にイソシアネート基を導入する場合には、イソシアネート基が反応溶媒中の活性水素と反応して失活する恐れがあるために、脱水ジメチルスルホキシド、脱水ジメチルホルムアミド等の脱水溶媒中で反応させることが好ましい。
【0102】
また、活性水素を有する、水またはアルコール中で、末端にイソシアネート基有するモノマーを基材と反応させる場合には、上記イソシアネート基が上記活性水素と反応するため、イソシアネート基を保護する必要がある。具体的には、例えば、上記イソシアネート基を、フェノール、イミダゾール、オキシム、N-ヒドロキシイミド、アルコール、ラクタム、活性メチレン複合体等のブロック剤を用いて、保護することにより重合を行なうことができる。イソシアネート基を保護している上記ブロック剤は、加熱することにより脱離させることができる。従って、イソシアネート基を有するモノマーをブロック剤で保護して、基材と重合させた後に、加熱することにより、基材にイソシアネート基を導入することができる。
【0103】
上記ブロック剤として、例えば、フェノールを用いた場合、110~120℃の範囲内で加熱することにより、イソシアネート基を保護しているブロック剤を脱離させることができる。また、ブロック剤として、例えば、イミダゾールを用いた場合には110~130℃の範囲内、オキシムを用いた場合には130~150℃の範囲内で加熱することにより、上記ブロック剤を脱離させることができる。上記ブロック剤としては、具体的には、例えば、メチルサリチレート、メチル-p-ヒドロキシベンゾエート等のフェノール含有化合物;イミダゾール;メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム等のオキシム含有化合物等が挙げられる。また、基材の種類によっては、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド等のN-ヒドロキシイミド含有化合物;メトキシプロパノール、エチルヘキサノール、ペントール、エチルラクテート等のアルコール含有化合物;カプロラクタム、ピロリジノン等のラクタム含有化合物;エチルアセトアセテート等の活性メチレン化合物等を使用してもよい。
【0104】
なお、上記官能基としてイソシアネートを用いた場合における、その他の反応条件(例えば、基材に対する添加量)等については、上記アルコキシシリル基を基材に直接導入する方法の場合と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0105】
また、上記無機化合物が酸化チタンであり、基材にアルコキシシリル基および/またはイソシアネート基を導入する場合には、上記反応条件によって官能基を導入すればよく、詳細な説明は省略する。
【0106】
(分離工程)
分離工程では、上記導入工程にて官能基が導入された基材粒子と未反応の官能基含有化合物とを分離する。官能基含有化合物は、反応性の高い官能基および基材と反応することができる反応基を有しているので、例えば、官能基同士または反応基同士が反応することがある。つまり、上記導入工程にて使用された官能基含有化合物のうち、一部は、基材粒子に導入されることになり、残りは、反応しないで残ったり、官能基含有化合物同士が反応することがある。つまり、上記導入工程の後、反応溶液(導入工程後の分散液)には、副生成物が存在している。そこで、分離工程では、これら副生生物を分離する。
【0107】
具体的には、まず、上記反応溶液をフィルター(濾紙)を用いて濾過する。このとき、使用するフィルター(濾紙)の目開きとしては、上記基材粒子よりも小さいことが好ましい。また、目開きが一定である定性濾紙を用いることがより好ましい。これにより、濾紙上には、官能基が導入された基材が残ることとなる。そして、基材と未反応である官能基含有化合物は、濾液となる。
【0108】
そして、上記定性濾紙を用いて濾過する場合、濾紙の目開きについて、例えば、基材粒子が長軸方向の長さが1cm~1μmの範囲内であり、短軸方向の長さが1mm~1nmの範囲内である柱状または球状の粒子形状である場合には、その基材粒子の大きさに応じて設定すればよく、100nm~10μm程度であればよい。
【0109】
その後、濾紙上に残った基材に超音波を照射することにより、高分子化した官能基含有化合物を分離することができる。
【0110】
なお、上記分離工程は、導入工程にて官能基が導入された基材粒子と未反応の官能基含有化合物とを分離することができればよく、他の方法によって両者を分離することができれば、詳細な方法については特に限定されるものではない。
【0111】
(反応工程)
反応工程では、上記導入工程および分離工程により、基材に導入された官能基(イソシアネート基および/またはアルコキシシリル基)とハイドロキシアパタイト焼結体とを反応させる。具体的には、ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させた分散液に、上記基材を浸漬することにより、基材の表面にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させる。そして、上記表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基と上記官能基とを反応させる。
【0112】
上記ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させる分散媒としては、具体的には、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、ハイドロキシアパタイト焼結体を良好に分散させる点で、アルコール類が好適に使用される。また、例えば、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒を用いる場合、ハイドロキシアパタイト焼結体を良好に分散させるためには、例えば、(1)スターラー等の攪拌装置で強力に攪拌する、(2)超音波装置を用いて分散させる、(3)上記攪拌装置および超音波装置を併用する、等の方法を用いればよい。
【0113】
上記分散液の調製において、ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量の下限値としては、上記分散媒に対して、0.01重量%以上がより好ましく、0.02重量%以上がさらに好ましく、0.05重量%以上が特に好ましい。上記ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量が0.01重量%よりも少ないと、基材の表面に均一にハイドロキシアパタイト焼結体が吸着せず、均一な被覆表面を形成できなくなる場合がある。一方、上記ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量の上限値としては、上記分散媒に対して、5.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下がさらに好ましく、3.0重量%以下が特に好ましい。上記添加量が5.0重量%よりも多い場合には、基材の表面に吸着するハイドロキシアパタイト焼結体の量よりも、分散液に残存するハイドロキシアパタイト焼結体の量が著しく多くなり、経済的でない。
【0114】
そして、上記ハイドロキシアパタイト焼結体が分散している分散液に、官能基を有する基材を投入する際には、静かに投入することが好ましい。また、基材を投入した後は、分散液を静かに攪拌することがより好ましい。強く攪拌する場合には、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子同士が凝集する場合がある。
【0115】
さらに、基材にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させた後、基材を分散液から分離する。このとき、定性濾紙を用いて分離することがより好ましい。この定性濾紙は、上記分離工程で用いた定性濾紙と同じ目開きであることがさらに好ましい。また、具体的には分離方法としては、まず、分散液の上澄みハイドロキシアパタイト焼結体を一旦、濾過した後、沈殿した基材を回収することが効率的である。
【0116】
上記基材の表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基と上記官能基とを反応させる反応温度の下限値としては、25℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。上記反応温度が25℃よりも低いと、ハイドロキシアパタイト焼結体と上記官能基とが反応しない場合がある。一方、上記反応温度の上限値としては、200℃以下がより好ましく、175℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。上記反応温度が200℃よりも高い場合には、基材が分解する場合がある。
【0117】
また、基材表面にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させた後で、必要に応じて、真空条件下で反応させてもよい。真空条件下でハイドロキシアパタイト焼結体と官能基とを反応させることにより、より早くハイドロキシアパタイト複合体を製造することができる。なお、真空条件下で反応させる場合、反応を行なう圧力としては、0.01mmHg(1.33kPa)~10mmHg(13.3kPa)の範囲内が好ましい。官能基がアルコキシシリル基である場合、圧力を上記範囲内とすることにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基と官能基であるアルコキシシリル基とを反応させる際に発生するメタノール(エタノール)を除去することができる。また、上記官能基がブロックドイソシアネート基(保護されたイソシアネート基)である場合、圧力を上記範囲内とすることにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基と官能基であるイソシアネート基とを反応させるときに発生するブロック剤(例えば、フェノール、イミダゾール、オキシム等)を効率よく除去することができる。
【0118】
なお、基材の種類、および、官能基の種類によって、上記導入工程および反応工程の反応条件や溶媒の種類等は適宜変更すればよい。
【0119】
また、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体の製造方法は、ハイドロキシアパタイト焼結体と基材とが化学結合を介して結合しているハイドロキシアパタイト複合体の製造方法であって、長軸1cm~1μm、短軸1mm~1nmに裁断された基材表面にイソシアネート基、アルコキシシリル基、および 4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド(4META)基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基を導入する導入工程と、上記導入工程にて合成される、副生成物である上記基材表面と結合していない官能基含有ポリマーと上記基材とを分離する分離工程と、上記基材の官能基と、上記ハイドロキシアパタイト焼結体とを反応させることにより化学結合を形成する反応工程とを含む構成であってもよい。
【0120】
また、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体は、上記リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイト焼結体であり、上記基材が、シルクフィブロインであることがより好ましい。ハイドロキシアパタイト焼結体は、非晶質のハイドロキシアパタイトと比べて、結晶性が高く、例えば、生体内に長期間に渡って埋植することができる。また、ハイドロキシアパタイト焼結体およびシルクフィブロインは、共に生体活性が高いので、これらの複合体であるハイドロキシアパタイト複合体(無機化合物複合体)は、生体適合性が高い。
【0121】
次に、リン酸カルシウムと基材とが、イオン的相互作用によって化学結合しているリン酸カルシウム複合体について説明する。
【0122】
本実施の形態におけるリン酸カルシウム複合体において、リン酸カルシウムがリン酸カルシウム焼結体であり、当該リン酸カルシウム焼結体と基材とがイオン的相互作用によって化学結合する場合、上記基材の表面には、上記官能基がイオン化されたイオン性官能基が存在している。そして、基材の表面にイオン性官能基が存在している場合には、イオン性官能基とリン酸カルシウム焼結体自体のイオンとがイオン的な相互作用によって化学結合することにより、リン酸カルシウム複合体を形成することとなる。
【0123】
上記イオン性官能基は、酸性官能基または塩基性官能基に分類される。
【0124】
上記酸性官能基としては、具体的には、例えば、-COO-,-SO32-,-SO3-,-O-、R2NC(S)2-等が挙げられる。また、上記塩基性官能基としては、具体的には、例えば、-NH3+、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。つまり、上記基材の表面には、上記例示の、酸性官能基または塩基性官能基が存在している。なお、上記R2NC(S)2-のRは、アルキル基を示している。
【0125】
また、上記イオン性官能基としては、酸処理またはアルカリ処理等の化学的処理によりイオン化するものであればよく、具体的には、例えば、カルボキシル基、ジカルボキシル基、ジチオカルバミン酸イオン、アミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0126】
なお、上記官能基としては、例えば、該官能基とリン酸カルシウム焼結体自体とが配位結合によって結合することができる、非イオン性官能基(中性官能基)等であってもよい。
【0127】
上記基材の表面にイオン性官能基を導入する方法としては、例えば、末端にカルボキシル基、ジカルボキシル基または塩基性官能基を有するビニル系重合性単量体を基材にグラフト重合させる方法等が挙げられる。詳細については後述する。
【0128】
上記イオン的相互作用による結合とは、基材の表面に存在するイオンと、リン酸カルシウム焼結体の表面に存在するイオンとの間で化学的に結合することである。従って、上記イオン的相互作用による結合としては、例えば、イオン結合、配位結合等が挙げられる。また、本実施の形態におけるイオン結合には、イオン結合性と共有結合性との両方が含まれる結合も含むものとする。また、同様に、本実施の形態における配位結合には、配位結合性と共有結合性との両方が含まれる結合も含むものとする。なお、上記イオン結合性または配位結合性と共有結合性との両方が含まれる結合の場合には、イオン結合性または配位結合性が50%以上含まれているものとする。
【0129】
また、上記イオン的相互作用による結合には、上記に加えて、さらに、水素結合、双極子相互作用、ファン・デル・ワールス力等による結合が含まれていてもよい。
【0130】
つまり、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体の場合には、リン酸カルシウム焼結体と、基材のイオン性官能基との大部分が、イオン結合または配位結合によって結合されている。
【0131】
ここで、リン酸カルシウムの表面に存在するイオンと、基材の表面に存在するイオン性官能基との関係について説明する。
【0132】
上記基材の表面に存在するイオン性官能基が塩基性官能基(+の電荷を有する官能基)である場合には、該塩基性官能基と、リン酸カルシウムの表面に存在するリン酸イオンおよび/または水酸化物イオンとが直接化学結合することによりリン酸カルシウム複合体を構成することとなる。
【0133】
一方、上記基材の表面に存在するイオン性官能基が酸性官能基(-の電荷を有する官能基)である場合には、該酸性官能基と、リン酸カルシウムの表面に存在するカルシウムイオンとが直接化学結合することによりリン酸カルシウム複合体を構成することとなる。
【0134】
ここで、本実施の形態にかかるリン酸カルシウム複合体の製造方法について説明する。なお、上記形成工程、分離工程については、上述の方法と同様であり詳細な説明は省略する。
【0135】
(導入工程)
リン酸カルシウム焼結体と基材とがイオン的相互作用によって結合したリン酸カルシウム複合体の場合、官能基は、後述するイオン化工程により、該官能基自体をイオン化することができるものである。
【0136】
ここで、基材に官能基を導入する方法の1つとして、官能基を有する官能基含有化合物と基材とを反応させる方法について説明する。なお、基材に官能基を導入する方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。なお、以下の説明では、基材としてシルクフィブロインを用い、官能基(イオン性官能基)がカルボキシル基(ジカルボキシル基も含む)である場合について具体的に説明する。
【0137】
官能基を有する官能基含有化合物としては、末端にカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、カルボキシル基と基材と反応することができる反応基とを有する化合物が好適に使用される。上記官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、4-メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド(4-Methacryloxyethyl trimellitate anhydride(以下、4-METAと称する))、コハク酸、無水コハク酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0138】
上記例示の官能基含有化合物のうち、既に歯科用材料として一般的に使用されており、医療用材料として好適に使用することができる点で、4-METAを使用することがより好ましい。
【0139】
そして、これら、官能基含有化合物と基材とを反応させることにより、基材の表面に官能基を導入する。具体的には、界面活性剤と過酸化系開始剤とを用いて基材からプロトン(水素原子)を引き抜いてラジカルを発生させることにより、上記官能基含有化合物を基材に、直接、グラフト重合させることができる。この方法を用いることにより、基材に上記官能基を、直接、導入することができる。この反応について以下に説明する。
【0140】
上記界面活性剤としては、具体的には、例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ノニルフェニルポリエチレン、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ドデシル-β-グルコシド等が挙げられる。
【0141】
また、過酸化系開始剤としては、具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)等が挙げられる。
【0142】
そして、上記基材と、界面活性剤と、過酸化系開始剤と、官能基含有化合物とを、重合溶媒に添加して重合させることにより、基材に官能基を導入することができる。
【0143】
上記重合溶媒としては、具体的には、例えば、水、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。上記例示の重合溶媒のうち、経済的および医療用材料として使用する場合の安全性の点から、水がより好ましい。
【0144】
上記反応系における官能基含有化合物の添加量の下限値としては、基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記添加量が10重量%よりも少ないと、基材に、十分な量の官能基が導入されない場合がある。一方、上記添加量の上限値としては、基材に対して、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記添加量が500重量%よりも多いと経済的でない。
【0145】
また、重合温度の下限値としては、30℃以上がより好ましく、35℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。上記重合温度が30℃よりも低ければ、重合が十分に起こらず、基材に官能基が導入されない場合がある。一方、重合温度の上限値としては、80℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。重合温度が80℃よりも高いと、官能基の導入が進みすぎ、基材が変質する場合がある。また、基材が劣化する場合もある。なお、重合時間は、重合温度等によって変化するが、所望の導入率(基材に官能基が導入される割合)となるように適宜設定すればよい。以上のような条件で重合させることにより、基材に官能基を簡単に導入することができる。
【0146】
また、基材に対する上記官能基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましい。ここで、導入率とは、基材の単位重量あたりに導入された官能基含有化合物の重量の割合である。上記導入率が0.1重量%以上であれば、上記基材に、生体適合性を発現することができる十分な量の、リン酸カルシウム焼結体を結合させることができる。一方、上記導入率の上限値としては、特に限定されるものではないが、上記導入率が100重量%よりも高いと、基材に結合するリン酸カルシウム焼結体の量が多くなりすぎ、経済的でない場合がある。
【0147】
また、上記重合は、窒素雰囲気下で行なうことがより好ましい。このようにして、基材の表面に官能基を導入することができる。
【0148】
また、例えば、上記官能基含有化合物として、コハク酸を用いる場合には、例えば、基材とコハク酸とを還流溶媒中にて還流することにより、基材の表面にカルボキシル基を導入することができる。このとき、還流溶媒としては、具体的には、例えば、脱水ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が挙げられる。また、この場合における、基材に対するコハク酸の使用割合は、上記と同様である。
【0149】
そして、リン酸カルシウム焼結体と基材とをイオン的相互作用によって結合する場合、導入した官能基をイオン化するイオン化工程を行なう必要がある。なお、このイオン化工程については、後述する分離工程を行なった後に行ってもよく、また、上記導入工程の後(分離工程の前)に行ってもよい。以下にイオン化工程について説明する。
【0150】
イオン化工程では、基材に導入した官能基をイオン化する。具体的には、例えば、官能基を導入した基材をアルカリ処理または酸処理することにより、官能基をイオン化することができる。
【0151】
上記官能基がカルボキシル基である場合には、このカルボキシル基を有する基材を、例えば、水酸化カリウム等のアルカリ溶液に浸漬することにより、カルボキシル基をイオン化することができる。
【0152】
つまり、官能基をアルカリ処理することにより、酸性官能基とすることができる。一方、官能基を酸処理することにより、塩基性官能基とすることができる。
【0153】
上記アルカリ処理を行なう場合には、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の強塩基性の水溶液を用いることがより好ましい。一方、酸処理を行なう場合には、例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸等の強酸性の水溶液を用いることがより好ましい。このように、イオン化工程を行なうことにより、基材の官能基をイオン化することができる。つまり、基材の表面にイオン性官能基を存在させることができる。
【0154】
(反応工程)
反応工程では、上記イオン化工程により、イオン化されたイオン性官能基とハイドロキシアパタイト焼結体の表面に存在するイオンとを反応させる。具体的には、ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させた分散液に、上記基材を浸漬することにより、基材の表面にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させる。そして、上記表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体の表面に存在するイオン(カルシウムイオン)と上記イオン性官能基(-COO-)とを反応させる。
【0155】
上記ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させる分散媒としては、具体的には、例えば、水、または、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、ハイドロキシアパタイト焼結体を良好に分散させる点で、アルコール類が好適に使用される。上記例示の分散媒のうち、得られるリン酸カルシウム複合体を医療用材料として使用する場合には、より高い分散性を得るために、アルコール類がより好ましく、アルコール類とトルエンとの混合溶媒が特に好ましい。また、分散液の調製における、ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量等については、上述と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0156】
この反応工程において、イオン性官能基とハイドロキシアパタイト焼結体とを結合させる反応温度としては、特に限定されるものではなく、常温で行なうことができる。つまり、本実施の形態では、イオン的な相互作用によって両者を結合させており、従来と比べてより簡単に両者を結合させることができる。
【0157】
また、基材の種類、および、官能基の種類によって、上記導入工程、イオン化工程および反応工程の反応条件や溶媒の種類等は適宜変更すればよい。
【0158】
なお、上記の説明では、リン酸カルシウム焼結体としてハイドロキシアパタイト焼結体を用いている例について説明しているが、上記に限定されるものではなく、例えば、リン酸カルシウム焼結体としてβ-トリリン酸カルシウム等を用いた場合でも上記製造方法を用いることにより、好適にリン酸カルシウム複合体を製造することができる。
【0159】
また、上記の説明では、官能基含有化合物として、カルボキシル基含有化合物について説明しているが、官能基としてはカルボキシル基に限定されるものではない。他の官能基を有する官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、-SO3-、-SO2-、-O-、等の官能基を有する化合物等が挙げられ、より具体的には、R2NC(S)2-、NH3+、ピリジン、+3N-CH2-CH2-NH3+等が挙げられる。そして、官能基含有化合物は、基材の種類によって適宜選択すればよい。なお、上記R2NC(S)2-のRは、アルキル基を示している。
【0160】
<3.酸化チタンと、高分子基材が化学結合してなる複合体>
以下に、酸化チタンと基材が化学結合してなる複合体(以下酸化チタン複合体という)について説明する。
【0161】
本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、酸化チタンが、基材と化学結合してなる構成である。より詳細には、活性基を有する基材と、該活性基と反応可能な反応性官能基を有する酸化チタンとからなる酸化チタン複合体であって、上記活性基と反応性官能基とが化学結合してなる構成である。
【0162】
(酸化チタン)
本実施の形態にかかる酸化チタンは、例えば、化学式;TiO2等で表される化合物であるとともに、この化合物の表面に水酸基を有するものである。すなわち、本実施の形態にかかる酸化チタンとは、表面に水酸基を有している酸化チタンを示す。
【0163】
具体的に説明すると、上記TiO2の場合、酸化チタンの表面を最も多く占めている結晶面、すなわち、アナターゼ型の(001)面とルチル型の(110)面とには、2種類の水酸基が存在している。その1つは、Ti4+と結合しているターミナルOH基であり、もう1つは、2個のTi4+と結合しているブリッジOH基である(清野学著、酸化チタン 物性と応用、技法堂出版、2000参照)。
【0164】
そして、本実施の形態にかかる酸化チタンは、生体組織との親和性および生体環境における安定性が優れているために、医療用材料として好適である。
【0165】
上記酸化チタンは、粒子状であることがより好ましい。粒子状である場合、酸化チタン粒子の形状および粒子径としては、上記酸化チタンと後述する基材とが化学結合することにより、基材の表面に固定できる程度の粒子の形状および粒子径であればよい。具体的には、上記粒子径の下限値としては、0.001μm以上がより好ましく、0.01μm以上がさらに好ましい。一方、上記粒子径の上限値としては、1000μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。上記粒子径が1000μmよりも大きいと、または、0.001μmよりも小さいと、酸化チタンと後述する高分子基材との結合が相対的に弱くなり、生体に埋入した場合に、酸化チタン複合体が破損する場合がある。
【0166】
(基材)
本実施の形態にかかる基材としては、高分子基材が好ましく、医療用高分子材料がより好ましく、有機高分子がさらに好ましい。上記基材としては、具体的には、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴムであっても良い)、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成高分子;セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン等のムコ多糖類等、シルクフィブロイン等の天然高分子等が挙げられる。上記例示の基材のうち、長期安定性、強度および柔軟性等の特性が優れている点で、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、または、シルクフィブロインが好適に使用される。
【0167】
また、上記例示の基材の代わりに、具体的には、例えば、医療用材料として好適に使用することができる、チタン合金等の無機材料の基材を使用することもできる。従って、本実施の形態にかかる基材とは、上記チタン合金等の無機材料からなる基材も含むものとする。
【0168】
また、上記高分子基材の形状としては、例えば、シート状、繊維状、チューブ状または、多孔体でもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0169】
(酸化チタン複合体の製造方法)
ここで、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法について説明する。
【0170】
本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法は、大別すると2つの方法がある。すなわち、(1)基材および/または酸化チタンの表面を修飾した後に両者を化学結合させる、(2)酸化チタンと基材との両方共、表面処理せずに化学結合させる方法である。
【0171】
本実施の形態では、上記(1)の方法のうち、酸化チタンが、基材に化学結合してなる酸化チタン複合体の製造方法であって、上記基材に活性基を導入する活性基導入工程と、酸化チタンに該活性基と反応可能な反応性官能基を導入する反応性官能基導入工程と、上記活性基と反応性官能基とを反応させる反応工程とを含む方法について説明する。
【0172】
より具体的には、例えば、活性基を有する基材として、表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴムと、表面に反応性官能基を導入した酸化チタンの粒子として、アミノ基を導入した酸化チタンとを用い、両者を反応させることにより、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体を製造する例について説明する。
【0173】
つまり、活性基と反応性官能基とを反応させることにより、上記酸化チタンと基材とを結合する化学結合が形成されることとなる。
【0174】
本実施の形態にかかる酸化チタン複合体が有する化学結合、すなわち、上記酸化チタンと基材とを結合する化学結合としては、酸化チタン・基材間の結合強度が十分に得られるものであれば、特に限定されるものではないが、以下に示す化学結合を一例として挙げることができる。
【0175】
【化3】
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【0176】
【化4】
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【0177】
【化5】
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【0178】
【化6】
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【0179】
【化7】
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【0180】
【化8】
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【0181】
【化9】
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【0182】
【化10】
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【0183】
【化11】
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【0184】
【化12】
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【0185】
【化13】
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【0186】
【化14】
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【0187】
【化15】
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【0188】
【化16】
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【0189】
【化17】
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【0190】
【化18】
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【0191】
これらの化学結合は、酸化チタンに導入された反応性官能基と基材に導入された活性基との間の反応によって得られる。
【0192】
以下に、上記例示の化学結合のうち、化学式(3)で示されるアミド基について具体的に説明する。アミド結合は、アミノ基と、カルボキシル基、アジドカルボニル基、クロロカルボニル基、N-ヒドロキシスクシンイミドカルボン酸エステルおよび/または酸無水物との反応;カルボキシル基と、N-アセチルアミノ基および/またはN-トリメチルシリルアミノ基との反応;イソシアナート基とカルボキシル基との反応;等により得られる。適切な反応条件は、それぞれの組み合わせによって異なり、反応が進むのであれば、反応条件は特に限定されるものではない。
【0193】
例えば、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせの場合、まず、溶媒中に酸化チタンを加え、攪拌して、この酸化チタンを分散させた後、この中に、基材を浸漬する。そして、上記基材を溶媒から引き上げた後に、洗浄して、特定の反応条件にて基材が有する活性基と酸化チタンが有する反応性官能基とを反応(縮合反応)させる。
【0194】
このとき、酸化チタンの使用量の下限値は、活性基を有する基材1重量部に対して、0.001重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。一方、酸化チタンの使用量の上限値は、活性基を有する基材1重量部に対して、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。上記下限値が0.001重量部よりも少ないと、基材の表面に均一に酸化チタンの粒子が吸着せず、均一な被膜表面を形成することができなくなる場合がある。一方、上記上限値が100重量部よりも多い場合には、経済的でない。
【0195】
また、酸化チタンを分散させる溶媒としては、具体的には、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記溶媒の使用量の下限値としては、上記基材1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。上記下限値が0.1重量部よりも少ない場合、基材の表面に均一に酸化チタンの粒子が吸着せず、均一な被膜表面を形成することができなくなる場合がある。一方、上記溶媒の使用量の上限値としては、上記基材1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらに好ましい。上記上限値が1000重量部よりも多い場合には、経済的でない。
【0196】
そして、基材を溶媒から引き上げた後、基材が有する活性基と酸化チタンが有する反応性官能基と反応させる反応温度の下限値としては、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。上記反応温度が120℃よりも低い場合には、縮合反応が十分に進行しない恐れがある。一方、上記反応温度の上限値としは、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。上記反応温度が200℃よりも高いと、基材が劣化する場合がある。
【0197】
また、上記縮合反応は、減圧下で行なうことがより好ましい。上記減圧度の下限値としては、0.01mmHg(1.33Pa)以上がより好ましく、0.1mmHg以上がさらに好ましい。上記減圧度の下限値が0.01mmHgよりも低い場合には、装置等の設備面において、経済的でない。一方、上記減圧度の上限値としては、10mmHg(1.33kPa)以下がより好ましく、5.0mmHg以下がさらに好ましい。上記減圧度の上限値が10mmHgよりも高い場合には、縮合反応が起こり難くなり、反応時間が長時間となる。また、アミノ基とカルボキシル基とでアミド結合を形成する場合には、縮合剤、例えば、カルボジイミド等を用いることで低温にて合成することができる。具体的には、例えば、4℃~室温(25℃)にて、1~6時間反応させることで上記アミド結合が形成される。
【0198】
また、上記化学式(4)で示されるエステル結合は、カルボキシル基とヒドロキシル基、ジアゾカルボニル基および/またはジアゾアルキル基の反応等により得られる。適切な反応条件は、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではない。具体的に、例えば、カルボキシル基とヒドロキシル基との組み合わせの場合、有機溶媒中で、カルボキシル基とヒドロキシル基とを反応させる方法等が挙げられる。
【0199】
上記化学式(5)で示される尿素結合は、アミノ基とイソシアナート基とを反応させることにより得られる。反応条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶媒中、室温でアミノ基とイソシアナート基とを反応させる方法等が挙げられる。
【0200】
上記化学式(6)で示されるチオ尿素結合は、アミノ基とイソチオシアナート基とを反応させることにより得られる。反応条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、pH9の炭酸ナトリウム緩衝溶液中で、0℃~室温の温度範囲内でアミノ基とイソチオシアナート基とを1~24時間反応させる方法等が挙げられる。
【0201】
上記化学式(7)で示されるβ-ケトチオエーテル結合は、メルカプト基とα-ハロアセチル基の反応等により得られる。反応条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、水中、室温、pH7~8の弱アルカリの条件でメルカプト基とα-ハロアセチル基とを反応させる方法等が挙げられる。
【0202】
上記化学式(8)で示されるシッフ塩基構造は、アミノ基と、アルデヒドまたはケトンとして機能しうる部分との反応等により得られる。反応条件としては、例えば、アルカリ水溶液中、室温で両者を反応させる方法等がある。また、上記のシッフ塩基構造を、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の公知の還元剤を用いて還元することにより、化学式(9)で示される2級、3級アミン構造を得ることができる。
【0203】
上記化学式(10)で示されるスルファミド結合は、アミノ基と、塩化スルフォニル基および/またはスルフォン基との反応等により得られる。適切な反応条件は、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的に、例えば、アミノ基とスルフォニル基との組み合わせの場合、(1)有機溶媒中、室温で、アミノ基とスルフォニル基とを反応させる方法、(2)水中、pH9~10のアルカリの条件で反応させる方法等がある。
【0204】
上記化学式(11)で示されるヒドロキシ-2級アミン構造は、アミノ基とエポキシ基との反応により得られる。反応条件については特に限定されるものではないが、例えば、水中、室温下、pH8~10の条件で反応させる方法等がある。
【0205】
上記化学式(12)で示されるカルバメート結合は、ヒドロキシル基とイソシアナート基および/または炭酸ジエステルとの反応等により得られる。適切な反応条件については、組み合わせによって異なり、特に限定されるものではない。例えば、ヒドロキシル基とイソシアナート基との組み合わせの場合、トルエン溶媒中、還流下でヒドロキシル基とイソシアナート基とを反応させる方法等がある。
【0206】
上記化学式(13)で示されるアリールアミン構造は、アミノ基とハロゲン化アリール基および/またはスルフォン化アリール基との反応等によって得られる。適切な反応条件については、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アミノ基とハロゲン化アリール基の場合、アルカリ条件下、水溶液中で、アミノ基とハロゲン化アリール基とを反応させる方法等がある。なお、上記化学式(13)中のAr1は、アリール基を示している。
【0207】
上記化学式(14)で示されるアリールチオエーテル結合は、メルカプト基と、ハロゲン化アリール基および/またはスルフォン化アリール基との反応等により得られる。適切な反応条件については、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メルカプト基とハロゲン化アリール基との場合、メタノール溶媒中、0℃でピペリジンを触媒として用いて、メルカプト基とハロゲン化アリール基を反応させる方法等がある。なお、上記化学式(14)中のAr2は、アリール基を示している。
【0208】
上記化学式(15)で示されるスルフィド結合は、メルカプト基と、スルフィド結合との交換反応によって得られる。適切な反応条件は、特に限定されるものではなく、例えば、pH7~8の水溶液中、室温でメルカプト基とスルフィド結合とを反応させる方法等がある。
【0209】
上記化学式(16)で示されるチオエーテル結合は、メルカプト基と、アクリロイル基および/またはマレイン酸イミドとの反応等により得られる。適切な反応条件については、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メルカプト基とアクリロイル基との場合、中性~アルカリ性溶液中で、メルカプト基とアクリロイル基とを反応させる方法等がある。
【0210】
上記化学式(17)で示されるβ-アミノチオエーテル結合は、メルカプト基とアジリジンおよび/またはイミンとの反応等により得られる。適切な反応条件については、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メルカプト基とアジリジン基との場合、水溶液中、弱アルカリ条件下で反応させる方法等がある。
【0211】
上記化学式(18)で示されるビニル結合は、ビニル重合反応等により得られる。適切な反応条件については、それぞれの組み合わせによって異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビニル基を導入したTiO2粒子(酸化チタン粒子)に対して、基材からビニル基化合物をグラフト重合させることにより、両者を結合させる方法等がある。
【0212】
これらの化学結合は、酸化チタンの粒子表面の反応性官能基と基材表面の活性基との間の反応によって得られる。従って、上記例示の組み合わせのうち、一方が反応性官能基であり、他方が活性基であればよい。具体的には、例えば、アミノ基と、カルボキシル基との反応により、化学式(3)に示すようなアミド結合を得る場合、アミノ基は上記活性基であってもよく、また、反応性官能基であってもよい。同様に、カルボキシル基が反応性官能基であってもよく、また、活性基であってもよい。
【0213】
(活性基導入工程)
ここで、基材に活性基を導入する工程(活性基導入工程)について説明する。
【0214】
基材に活性基を導入する方法としては、例えば、基材の表面に、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電および/またはプラズマ照射を施した後、表面グラフト重合法等を行なうことにより導入する等の方法が挙げられる。
【0215】
ここで、表面グラフト重合法を用い、基材としてポリジメチルシクロヘキサン系シリコーンゴムを用いる場合における、活性基の導入方法の例について説明する。
【0216】
基材であるポリジメチルシロキサン系シリコーンゴムに、グラフト重合により、活性基を導入する場合、まず、基材の表面をコロナ処理またはプラズマ照射により処理した後、この処理された基材と重合性単量体とを溶媒に投入し、不活性ガス雰囲気下、かつ、減圧下で重合する。
【0217】
上記溶媒としては、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記溶媒の使用量の下限値としては、上記処理された基材1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。上記溶媒の使用量が0.1重量部よりも少ない場合には、基材の表面に、活性基を均一に導入することが難しくなる。一方、上記溶媒の使用量の上限値としては、上記処理された基材1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらに好ましい。上記溶媒の使用量が1000重量部よりも多い場合には、経済的でない。
【0218】
また、上記グラフト重合に用いる重合性単量体としては、酸化チタン粒子の表面の反応性官能基と反応して化学結合を形成する活性基を末端(または側鎖)に有していれば特に限定されるものではない。換言すると、重合性単量体は、例えば、上記化学式(3)~(18)に示される化学結合を形成するための活性基を有している。上記重合性単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、アコニット酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、および、これらの各種金属塩またはハロゲン化物;(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸モノグリセロール、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、アクリロイルモルホリン、マレイン酸イミド、無水マレイン酸;アミノスチレン、カルボキシスチレン等のスチレン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、ビニルベンジルアミン等が挙げられる。
【0219】
上記重合性単量体の添加量の下限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、0.001重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。上記重合性単量体の添加量が0.001重量部よりも少ない場合には、基材の表面に十分な量の活性基を導入することが困難になる。一方、上記重合性単量体の添加量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。上記重合性単量体の添加量が100重量部よりも多い場合には経済的でない。
【0220】
また、上記基材と重合性単量体とを重合させる重合温度の下限値としては、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。上記重合温度が40℃よりも低い場合には、グラフト重合が十分に行われない場合がある。一方、重合温度の上限値としては、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。上記重合温度が100℃よりも高い場合には、グラフト効率が減少する場合がある。
【0221】
また、基材に活性基として、例えば、ビニル基を導入するには、基材と、活性基含有化合物とを、触媒、重合禁止剤および溶媒の混合溶液中で反応させればよい。
【0222】
上記活性基含有化合物としては、具体的には、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。上記溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、脱水ジメチルスルホキシド、脱水ジメチルホルムアミド等が好適に使用される。重合禁止剤は、基材に導入された活性基同士、および、活性基含有化合物同士が重合しないために添加する。上記重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン等が挙げられる。触媒としては、例えば、ジブチルチン(IV)ジラウレート等が挙げられる。
【0223】
上記活性基含有化合物の添加量の下限値としては、基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記添加量が10重量%よりも少ないと、基材に、十分な量の活性基が導入されない場合がある。一方、上記添加量の上限値としては、基材に対して、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記添加量が500重量%よりも多いと経済的でない。
【0224】
そして、反応温度の下限値としては、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましく、45℃以上が特に好ましい。上記反応温度が30℃よりも低ければ、反応が十分に起こらず、基材に活性基が導入されない場合がある。一方、反応温度の上限値としては、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。反応温度が100℃よりも高いと、基材に導入された活性基同士が反応する恐れがある。また、基材が劣化する場合もある。なお、反応時間は、反応温度等により適宜設定すればよい。以上のような条件で反応させることにより、基材に活性基を簡単に導入することができる。
【0225】
基材に対する活性基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましく、2.0重量%以上が特に好ましい。導入率が0.1重量%よりも少ないと、基材に導入されるアルコキシシリル基の数が少なくなり、酸化チタン複合体を製造することができなくなる恐れがある。一方、導入率の上限値としては、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が特に好ましい。上記導入率が30重量%よりも多いと、基材に導入された活性基の数が多くなり、この活性基同士が反応する場合がある。
【0226】
なお、上記活性基は、基材の表面の高分子が有する活性基であってもよい。
【0227】
(反応性官能基導入工程)
上記酸化チタンに反応性官能基を導入する工程(反応性官能基導入工程)について以下に説明する。酸化チタンに反応性官能基を導入する方法としては、具体的には、例えば、反応性官能基を有するシランカップリング剤と酸化チタンとを反応させればよい。
【0228】
ここで、上記シランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤は、化学式(19)に示すような化学構造をしている。
【0229】
Z-Si-(OR)3 ・・・(19)
上記Zは、各種合成樹脂等の有機材料(基材または基材が有する活性基)と化学結合することができる反応性官能基であればよく、具体的には、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等の上記化学式(3)~化学式(18)に示される化学結合を形成することができる基が挙げられる。すなわち、本実施の形態で使用されるシランカップリング剤は、少なくとも反応性官能基を有している。また、上記Si-(OR)3は、酸化チタンと化学結合することができる官能基であればよく、具体的には、ORとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、上記化学式(19)中の反応性官能基Zと、Siとは、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合されていてもよい。
【0230】
すなわち、上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-トリエトキシ-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。上記例示のシランカップリング剤のうち、重合性モノマーであるという点で、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。上記シランカップリング剤は、基材の種類、および、基材が有する活性基の種類等によって適宜選択すればよい。
【0231】
上述したように、シランカップリング剤は、一方の端に反応性官能基を有しており、他方の端に官能基を有しているので好適に使用することができる。なお、上記反応性官能基とは、活性基と反応することができるものである。また、官能基とは、酸化チタンと反応することができるものである。また、以下の説明では、シランカップリング剤を用いて酸化チタンに活性基を導入する例について説明する。
【0232】
上記反応性官能基を有するシランカップリング剤と酸化チタンとを反応させる際の反応条件としては、反応の種類、用いるシランカップリング剤の種類等によって異なり、特に限定されるものではない。また、上記反応の種類としては、例えば、乾式法や湿式法等が好適である。
【0233】
乾式法の場合には、高速攪拌機中に酸化チタンの粒子を投入して、そこに、一端に官能基、他端に反応性官能基を有するシランカップリング剤を滴下、または、スプレーにより添加し均一に攪拌した後に乾燥させるようになっている。このとき、シランカップリング剤の添加量としては、酸化チタン粒子1重量部に対して0.0001~10重量部の範囲内がより好ましい。
【0234】
一方、湿式法の場合には、有機溶媒中に、酸化チタンの粒子とシランカップリング剤とを添加して、攪拌しながら、室温~150℃の温度範囲内で、10分~10日間反応させた後、溶媒および未反応のシランカップリング剤を除去して、乾燥させるようになっている。
【0235】
このとき、用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記有機溶媒の使用量の下限値としては、酸化チタン粒子(酸化チタンの粒子)1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。上記有機溶媒の使用量が0.1重量部よりも少ない場合には、反応系が均一になり難く、酸化チタン粒子の表面が均一に修飾されない場合がある。一方、上記有機溶媒の使用量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。上記有機溶媒の使用量が1000重量部よりも多い場合には、経済的でない。
【0236】
シランカップリング剤の添加量の下限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、0.0001重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.0001重量部よりも少ない場合には、酸化チタン粒子の表面に導入される反応性官能基の量が十分でなくなる恐れがある。一方、シランカップリング剤の添加量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の添加量が10重量部よりも多い場合には、経済的でない。なお、この理由については、上記乾式法の場合も同様である。
【0237】
また、反応温度の下限値としては、室温(25℃)以上がより好ましい。反応温度が室温よりも低い場合には、反応に長時間を要する場合がある。一方、反応温度の上限値としては、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。反応温度が150℃よりも高い場合には、シランカップリング剤の末端の、反応性官能基および/または官能基が好ましくない副反応を起こす場合がある。
【0238】
また、反応性官能基導入工程によって、反応性官能基が導入された酸化チタンの光触媒活性を長時間持続させるためには、上記反応温度は、80℃程度が好ましい。
【0239】
(反応工程)
反応工程では、上記活性基導入工程により基材に導入された活性基と、反応性官能基導入工程により酸化チタンに導入された反応性官能基とを反応させる。具体的には、上記酸化チタンを分散させた分散液に、上記基材を浸漬することにより、基材の表面に酸化チタンを吸着させる。そして、上記反応性官能基と上記活性基とを反応させる。なお、以下の説明では、基材にシリコーンゴムを用い、上記基材と酸化チタンとをアミド結合により結合させる例について説明する。
【0240】
上記酸化チタンを分散させる分散媒としては、具体的には、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、酸化チタンを良好に分散させる点で、水、アルコール類が好適に使用される。また、例えば、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒を用いる場合、酸化チタンを良好に分散させるためには、例えば、(1)スターラー等の攪拌装置で強力に攪拌する、(2)超音波装置を用いて分散させる、(3)上記攪拌装置および超音波装置を併用する、等の方法を用いればよい。
【0241】
上記分散液の調製において、酸化チタンの添加量の下限値としては、上記分散媒に対して、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。上記酸化チタンの添加量が0.1重量%よりも少ないと、基材の表面に均一に酸化チタンが吸着せず、均一な被覆表面を形成できなくなる場合がある。一方、上記酸化チタンの添加量の上限値としては、上記分散媒に対して、5.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下がさらに好ましく、3.0重量%以下が特に好ましい。上記添加量が5.0重量%よりも多い場合には、基材の表面に吸着する酸化チタンの量よりも、分散液に残存する酸化チタンの量が著しく多くなり、経済的でない。
【0242】
上記基材の表面に吸着した酸化チタンの反応性官能基と上記活性基とを反応させる反応温度の下限値としては、25℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。上記反応温度が25℃よりも低いと、反応性官能基と上記活性基とが反応しない場合がある。一方、上記反応温度の上限値としては、200℃以下がより好ましく、175℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。上記反応温度が200℃よりも高い場合には、基材が分解する場合がある。
【0243】
なお、上記分散液に基材を浸漬した後、反応させる前に、上記分散媒と同じ溶媒で、基材を洗浄することがより好ましい。上記基材を浸漬した後の基材の表面には、酸化チタンが積層されており、洗浄しないで反応させると、酸化チタンが積層された状態のまま、複合化するため、基材の物性を損なわせたり、強度が不十分になる場合がある。
【0244】
また、必要に応じて、真空条件下で反応させてもよい。真空条件下で酸化チタンの反応性官能基と基材の活性基とを反応させることにより、より早く酸化チタン複合体を製造することができる。なお、真空条件下で反応させる場合、反応を行なう圧力としては、0.01mmHg(1.33Pa)~10mmHg(1.33kPa)の範囲内が好ましい。
【0245】
なお、基材の種類、反応性官能基および/または活性基の種類によって、上記反応工程の反応条件や溶媒の種類等は適宜変更すればよい。
【0246】
(酸化チタン複合体)
以上の製造方法により得られた本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、基材の表面に、酸化チタンが化学結合されている。具体的には、酸化チタンに導入された反応性官能基と、上記基材が有する活性基とが、化学結合している。これにより、従来の酸化チタン複合体に比べて、酸化チタンが基材から剥離し難くなっている。言い換えると、長期間、基材の表面に酸化チタンを定着させておくことが可能となる。従って、酸化チタンの機能を長期間持続することができる酸化チタン複合体を提供することができる。
【0247】
また、得られた酸化チタン複合体の酸化チタン層の厚さとしては、基材の厚さ、および、使用する用途により異なるが、例えば、経皮カテーテル用途の場合には、基材の厚さを100%としたとき、0.0001%~100%の範囲内がより好ましく、0.001%~10%の範囲内がさらに好ましい。上記酸化チタン層の厚さを上記範囲とすることにより、基材の特性を損なわせることなく、生体適合性の優れた酸化チタン複合体を得ることができる。また、得られた酸化チタン複合体は、基材の表面に酸化チタンが結合されており、柔軟性に優れている。
【0248】
このように、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、柔軟性、強度、生体に対する密着性および生体適合性に優れるため、経皮カテーテル、経皮端子等の経皮医療器具;人工血管、人工器官等の人工臓器等の医療用材料として好適に使用することができる。また、本実施の形態にかかる製造方法では、従来と比べて、より一層簡単、かつ、複雑な形状の酸化チタン複合体を製造することが可能である。
【0249】
また、酸化チタンは、殺菌性に優れている。具体的には、紫外線型光触媒酸化チタンに紫外線、もしくは可視型光触媒酸化チタンの場合には可視光を照射することにより、殺菌効果を発現することができる。従って、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体を、例えば、経皮デバイス(例えば、カテーテル)として生体内に埋植した場合、経皮デバイスの接合部付近に繁殖した様々な生体に害をなす菌等を殺菌、および上記菌による感染を防止することが簡単にできる。具体的には、生体外から、酸化チタン複合体に対して紫外線を照射することにより、殺菌することが容易に可能となる。これにより、感染を防止することが可能となる。従って、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、例えば、人工臓器に付随した経皮デバイスの創製や、生体内に長期間に渡り埋植する場合に、生体内排除を抑制可能とする生体内インプラント材料の創製、在宅治療における輸液、栄養補給に伴う生体装着デバイスの創製等の医療用高分子に特に好適である。
【0250】
また、光触媒としての活性を制御するために、有機物または無機物で被覆した酸化チタン粒子も複合化に用いることができる。表面被覆に用いることができる無機物としては、例えば、ハイドロキシアパタイトが挙げられ、有機物としては、例えば、メタクリレート化合物が挙げられるが、上記これらに限定されるものではない。
【0251】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、光により細胞の吸着・脱着を制御することが可能であるので、再生医療用細胞シート作製培養シャーレ等にも応用することができる。
【0252】
また、酸化チタンを基材の表面により長時間、固着(定着)させておくことが可能となるので、脱臭剤、抗菌・抗カビ材、水処理材、防曇材、防汚材として、好適に使用することができる。
【0253】
また、酸化チタンによる基材の新規な表面修飾法を提供することができる。
【0254】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の上に、必要に応じて、例えば、上述のリン酸カルシウムを積層させることもできる。リン酸カルシウムは、既述の通り生体安定性に優れているため、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体に積層させることにより、生体材料として好適に使用することができる。
【0255】
上記酸化チタンの上に、さらにリン酸カルシウムを積層させる方法としては、具体的には、例えば、(1)重合性単量体とリン酸カルシウムからなる混合物の粒子を、この酸化チタン複合体、すなわち、基材の酸化チタンが修飾された面の上に塗布して、その後、熱、光、または放射線等により重合性単量体を重合させて固化させる方法、(2)上記酸化チタン複合体をカルシウムイオンとリン酸イオンとを含む溶液に浸漬して、リン酸カルシウムを析出させる方法、(3)上記酸化チタン複合体を、カルシウムイオンを含む溶液とリン酸イオンを含む溶液とに交互に浸漬して、リン酸カルシウムを析出させる方法等が挙げられる。また、上記(1)の方法の場合には、適当な形状の型を用いることで、リン酸カルシウムを所望の形状に積層させることができる。
【0256】
次に酸化チタンが、酸化チタンと化学結合可能な官能基を有する基材に化学結合してなる酸化チタン複合体であって、上記酸化チタンと、上記官能基とが、直接、化学結合してなる態様について説明する。
【0257】
本実施の形態にかかる基材の表面には、上記酸化チタンと化学結合可能な官能基を有している。上記「酸化チタンと、上記基材が有する酸化チタンと反応可能な官能基とが、直接、化学結合してなる」とは酸化チタンと、上記官能基とが直接、化学結合していることである。つまり、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、基材と酸化チタンとが化学結合している。上記官能基としては、具体的には、例えば、アルコキシシリル基およびイソシアネート基等からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基が挙げられる。上記基材表面の官能基は、基材表面の高分子が有する官能基であってもよく、また、基材表面を、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電、プラズマ照射、表面グラフト重合等の公知の手段によって、上記基材を改質することにより導入されたものであってもよい。
【0258】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法は、酸化チタンが、基材に化学結合してなる酸化チタン複合体の製造方法であって、上記基材に、酸化チタンと化学結合可能な官能基を導入する導入工程を行ない、上記基材の官能基と上記酸化チタンとを反応させる官能基反応工程とを含む方法である。
【0259】
(導入工程)
上記導入工程では、基材に、酸化チタンと化学結合可能な官能基を導入する。なお、以下の説明では、基材に、酸化チタンと化学結合可能な官能基としてアルコキシシリル基を導入する場合について説明する。
【0260】
上記基材に、官能基を導入する方法、すなわち、導入工程としては、公知の方法により行えばよく、特に限定されるものではないが、例えば、分子末端に、官能基を有するシランカップリング剤等を用いることにより、基材に上記官能基を導入することができる。
【0261】
ここで、基材にアルコキシシリル基を導入する方法の1つとして、シランカップッリング剤を用いて導入する方法について説明する。なお、基材にアルコキシシリル基を導入する方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0262】
上記シランカップリング剤を用いて、基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、具体的には、例えば、コロナ処理を施した基材に、末端に官能基を有するシランカップリング剤を直接導入してもよい。また、界面活性剤と過酸化系開始剤とを用いて基材からプロトン(水素原子)を引き抜いてラジカルを発生させることにより、上記官能基を有する非水溶性モノマーを基材に、直接、グラフト重合させることができる。この方法を用いることにより、基材に酸化チタンと化学結合可能な官能基を、直接、導入することができる。
【0263】
また、基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、例えば、基材に予め、上記シランカップリング剤が有する反応性官能基と反応することができる活性基を導入しておき、この活性基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、基材にアルコキシシリル基を導入してもよい。なお、上記活性基とは、具体的には、例えば、ビニル基、アミノ基等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、上記シランカップリング剤の反応性官能基(上記化学式(19)のZ)の種類に応じて、適宜設定すればよい。従って、本実施の形態で使用するシランカップリング剤は、少なくとも官能基を有していればよく、官能基と反応性官能基とを有していることがより好ましい。なお、上記官能基とは、酸化チタンと化学結合可能なものであり、反応性官能基とは、上記活性基と化学結合可能なものである。
【0264】
ここで、基材としてシルクフィブロインを用い、このシルクフィブロインに、活性基であるビニル基を導入しておき、このビニル基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、基材にアルコキシシリル基を導入する方法の具体的条件について説明する。
【0265】
上記基材に活性基を導入する工程については、上記の活性基導入工程と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0266】
次に、基材に導入された活性基と、それぞれの末端に反応性官能基と官能基とを有するシランカップリング剤とを重合することにより、基材に官能基であるアルコキシシリル基を導入する。
【0267】
上記シランカップリング剤としては、官能基を有し、かつ、末端の反応性官能基が、基材に導入された活性基と重合することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、活性基としてビニル基を導入した場合には、上記メタクリロキシ系シランカップリング剤である例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用することができる。
【0268】
そして、上記シランカップリング剤と活性基が導入された基材とを、重合開始剤、溶媒の存在下で重合させることにより、基材に官能基であるアルコキシシリル基を導入することができる。
【0269】
上記溶媒としては、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の無極性の有機溶媒が好適に使用される。
【0270】
また、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等を用いればよい。
【0271】
上記シランカップリング剤の使用量(添加量)の下限値としては、上記活性基が導入された基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記使用量が10重量%よりも少ないと、十分な酸化チタンと反応するだけのアルコキシシリル基を導入することができない場合がある。一方、上記使用量の上限値としては、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記使用量が500重量%よりも多いと、経済的でない。
【0272】
また、重合は、窒素雰囲気下で行なうことがより好ましい。重合温度の下限値としては、40℃以上がより好ましく、45℃以上がさらに好ましく、50℃以上が特に好ましい。重合温度が40℃よりも低いと、重合が十分に起こらず、基材に官能基が導入されない場合がある。一方、重合温度の上限値としては、80℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。重合温度が80℃よりも高いと、基材が劣化する場合がある。なお、重合時間としては、所望の導入率(基材に官能基が導入される割合)となるように適宜設定すればよい。
【0273】
また、基材に対する上記官能基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。ここで、導入率とは、基材の単位重量あたりに導入されたシランカップリング剤の重量の割合である。上記導入率が0.1重量%以上であれば、上記基材に、生体適合性を発現することができる十分な量の、酸化チタンを結合させることができる。一方、上記導入率の上限値としては、特に限定されるものではないが、上記導入率が100重量%よりも高いと、基材に結合する酸化チタンの量が多くなりすぎ、経済的でない場合がある。
【0274】
なお、基材に、アルコキシシリル基を導入する方法としては、上記説明の方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。また、上記反応条件については、基材、活性基含有化合物およびシランカップリング剤の種類等によって、適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。このようにして、基材の表面に官能基を導入することができる。
【0275】
なお、上記官能基がイソシアネート基である場合であり、かつ、イソシアネート基を末端に有するモノマーを基材と重合することにより、基材にイソシアネート基を導入する場合には、イソシアネート基が反応溶媒中の活性水素と反応して失活する恐れがあるため、脱水ジメチルスルホキシド、脱水ジメチルホルムアミド等の脱水溶媒中で反応させることが好ましい。
【0276】
また、活性水素を有する、水またはアルコール中で、末端にイソシアネート基有するモノマーを基材と反応(重合)させる場合には、上記イソシアネート基が上記活性水素と反応するため、イソシアネート基を保護する必要がある。具体的には、例えば、上記イソシアネート基を、フェノール、イミダゾール、オキシム、N-ヒドロキシイミド、アルコール、ラクタム、活性メチレン複合体等のブロック剤を用いて、保護することにより重合を行なうことができる。イソシアネート基を保護している上記ブロック剤は、加熱することにより脱離させることができる。従って、イソシアネート基をブロック剤で保護しておき、他端に存在しているモノマーと基材と重合させた後に、加熱することにより、基材にイソシアネート基を導入することができる。つまり、表面にイソシアネート基を有している基材を得ることができる。
【0277】
上記ブロック剤として、例えば、フェノールを用いた場合、110~120℃の範囲内で加熱することにより、イソシアネート基を保護しているブロック剤を脱離させることができる。また、ブロック剤として、例えば、イミダゾールを用いた場合には110~130℃の範囲内、オキシムを用いた場合には130~150℃の範囲内で加熱することにより、上記ブロック剤を脱離させることができる。上記ブロック剤としては、具体的には、例えば、メチルサリチレート、メチル-p-ヒドロキシベンゾエート等のフェノール含有化合物;イミダゾール;メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム等のオキシム含有化合物等が挙げられる。また、基材の種類によっては、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド等のN-ヒドロキシイミド含有化合物;メトキシプロパノール、エチルヘキサノール、ペントール、エチルラクテート等のアルコール含有化合物;カプロラクタム、ピロリジノン等のラクタム含有化合物;エチルアセトアセテート等の活性メチレン化合物等を使用してもよい。
【0278】
なお、上記官能基としてイソシアネートを用いた場合における、その他の反応条件(例えば、基材に対する添加量)等については、上記官能基がアルコキシシリル基の場合と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0279】
(官能基反応工程)
官能基反応工程では、上記基材に導入された官能基(例えば、イソシアネート基、アルコキシシリル基)と上記酸化チタンとを反応させる。この官能基反応工程は、上述した反応工程と同様の条件で行えばよく、詳細な説明は省略する。
【0280】
(酸化チタン複合体)
本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、酸化チタンが、酸化チタンと化学結合可能な官能基を有する基材に化学結合してなる酸化チタン複合体であって、上記酸化チタンと、上記基材が有する官能基とが化学結合してなる構成である。
【0281】
以上のようにして得られる酸化チタン複合体は、さらに、酸化チタン表面を修飾することなく(前処理を必要とすることなく)製造することができる。
【0282】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法は、酸化チタンが、酸化チタンと化学結合可能な官能基を有する基材に化学結合してなる酸化チタン複合体の製造方法であって、上記基材に、酸化チタンと化学結合可能な官能基を導入する導入工程と、上記基材の官能基と上記酸化チタンとを反応させる反応工程を含む方法であってもよい。
【0283】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体は、上記酸化チタン複合体の製造方法によって製造されていることがより好ましい。
【0284】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法は、さらに、導入工程の前に、基材に、活性基を導入する活性基導入工程を含み、導入工程では、反応性官能基と酸化チタンと化学結合可能な官能基とを含む化合物を用いて、該反応性官能基と上記活性基とを反応させる方法がより好ましい。
【0285】
上記の構成によれば、基材に上記反応性官能基と反応することができる活性基を導入するので、多種の反応性官能基を選択することができる。これにより、上記官能基をより簡単に導入することができる。
【0286】
また、本実施の形態にかかる酸化チタン複合体の製造方法は、酸化チタンが、基材に化学結合してなる酸化チタン複合体の製造方法であって、酸化チタンと基材とを化学結合させる反応工程を含む方法であってもよい。
【0287】
上記の構成によれば、酸化チタンと基材とを化学結合させているので、従来と比べて、酸化チタンと基材とが強固に結合した酸化チタン複合体を提供することができる。
【0288】
また、本実施の形態の酸化チタン複合体の製造方法は、酸化チタンと基材とが化学結合により結合された酸化チタン複合体の製造方法であって、酸化チタンに、基材と反応可能な反応基を導入する反応基導入工程と、上記反応基と基材とを反応させる結合工程を含む方法であってもよい。
【0289】
また、このとき、一端に反応基を有し、かつ、他端に反応性官能基を有するシランカップリング剤を用いることで、より簡単に酸化チタン複合体を製造することができる。
【0290】
<4.本発明にかかるハイブリット複合材料の製造方法>
本発明にかかるハイブリット複合体は、上記説示したのリン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体に、軟組織親和性向上物質を被覆させて製造すればよい。換言すれば、本発明にかかるハイブリット複合体は、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体に、軟組織親和性向上物質を被覆する被覆工程を含むことを特徴としている。また本発明にかかるハイブリット複合体の製造方法には、上記で説示した、リン酸カルシウム複合体の製造方法の各工程、酸化チタン複合体の製造方法の各工程が含まれていてもよい。
【0291】
また上記被覆工程は、上記リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体の状態で被覆してもよいし、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体を用いて医療用デバイス等を成型した後に当該成型した医療用デバイス等に軟組織親和性向上物質を被覆させてもよい。またリン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体を経皮端子等の医療用デバイスの基材に吸着させた後に、当該医療用デバイスごと軟組織親和性向上物質を被覆してもよい。
【0292】
被覆工程の具体的方法については、軟組織親和性向上物質が、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体(以下、適宜リン酸カルシウム等と称する)に被覆される方法であれば特に限定されるものではない。例えば、軟組織親和性向上物質の溶液(懸濁液)中に、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体を入れて撹拌した後、リン酸カルシウム複合体等を回収すればよい。その際に従来公知の自動培養装置を用いて、行なえばより簡便に被覆工程を行なうことができる。また、リン酸カルシウム複合体等に軟組織親和性向上物質の溶液(懸濁液)を噴霧してもよい。
【0293】
また、軟組織親和性向上物質が自家細胞細胞(歯根膜細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、ES細胞)、ES細胞の場合においては、上記のように細胞懸濁液中に、リン酸カルシウム複合体等を入れて撹拌する方法、細胞懸濁液を噴霧する方法を用いてもよいが、リン酸カルシウム複合体等を含む液体培地に、前記自家細胞等を接種し、培養する方法(培養工程を含む方法)を用いてもよい。
【0294】
上記培養工程を用いることによって、培養によって増殖した自家細胞等が、リン酸カルシウム複合体等に吸着し、結果として自家細胞等をリン酸カルシウム複合体に被覆するこができる。また上記培養工程を含むことにより、被覆する自家細胞等の大量調製とリン酸カルシウム複合体等への被覆が同時に行なうことができ、予め自家細胞等を培養して大量調製する工程を省くことができるために好ましいといえる。
【0295】
ここで、上記自家細胞等を培養する際の条件については、培養する細胞にとって好的な条件を適宜選択の上、採用すればよい。上記培養工程に利用可能な培地としては、例えば、α-MEM培地(10%牛血清、50IUペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、2.550μg/mlアンフォテリシンB入り)等が利用可能である。その他の培地については、機能性ペプチド研究所ホームページ( HYPERLINK "http://www.func-p.co.jp/hito.html" http://www.func-p.co.jp/hito.html)に開示されているヒト体細胞培養用培養液を適宜選択の上採用すればよい。また培養温度についても、培養する細胞に応じて適宜最適な条件を採用すればよい。例えば、28℃から40℃の範囲で培養を行なうことが好ましく、37℃で行なうことがより好ましい。また培養には、従来公知のCO2インキュベーターを用いて行なえばよい。CO2濃度は、0~25%で行なえばよい。
【0296】
特に培養中において、培養容器を任意の時間間隔で回転(反転)させることが好ましい。増殖した細胞が、培養容器の一部に集まることを防止することができ、またリン酸カルシウム複合体等により均一に被覆することができるからである。培養容器を回転させる間隔については限定されるものではないが、5分~2時間隔が好ましく、10分~1時間間隔がより好ましく、30分程度が最も好ましい。回転の間隔が短すぎると、細胞がリン酸カルシウム複合体等に静着し接着するための時間がなく、培養液中に再び浮遊してしまうことなり、また経済的にも頻繁に回転させ労力を浪費してしまうこととなる。一方、回転の間隔が長すぎると細胞等が培養容器の底に溜まってしまい接着効率が低下してしまうこととなる。
【0297】
また例えば、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体を用いて医療用デバイス等を成型した後に当該成型した医療用デバイス等に軟組織親和性向上物質を被覆させる場合や、リン酸カルシウム複合体または酸化チタン複合体を経皮端子等の医療用デバイスの基材に吸着させた後に被覆する場合にあっては、培養容器中で上記医療用デバイスを回転させながら培養するという態様であってもよい。
【0298】
なお上記培養容器あるいは、医療用デバイスの回転の様式は、180°回転させるだけでなく、90°、45°等、医療用デバイスの形状等に応じて好適な回転角度を適宜設定すればよい。医療用デバイスの形状によっては、被覆しにくい箇所があり、その場所に細胞が接触しやすいような角度で回転させることにより、医療用デバイスへの細胞の被覆が向上する。
【0299】
また本発明にかかるハイブリット複合体における軟組織親和性向上物質の被覆率(リン酸カルシウム等の複合体を覆う軟組織親和性向上物質の割合)は、100%覆われていることが最も好ましいが、少なくとも80%以上被覆されていればよく、50%以上されていることがより好ましい。ただし、軟組織親和性向上物質は、出来るだけ重層していなほうが望ましい。重層してしまうと細胞間の接着性に問題があり接着力が低くなり複合体へ移植した際の体細胞への親和性に問題が出てくるためである。
【0300】
さらには、本発明にかかるハイブリット複合体における軟組織親和性向上物質の被覆層は、均一に覆われていることが好ましいといえる。軟組織親和性向上物質の被覆層にムラがなく、埋植した際に周囲に存在する軟組織とより密着し易くなり、さらに親和性が向上するからである。
【0301】
<5.本発明にかかるハイブリット複合体の利用>
本発明にかかるハイブリット複合体は、特に、医療用デバイスの製造に用いられる医療用材料として好適である。医療用材料として用いる場合は、上記リン酸カルシウム複合体に軟組織親和性向上物質が被覆されたハイブリット複合体、酸化チタン複合体に軟組織親和性向上物質が被覆されたハイブリット複合体それぞれ単独で用いてもよいし、これらの混合物であってもよい。またその他、医療用材料として好ましい物質を混合して医療用材料としてもよい。
【0302】
本発明にかかるハイブリット材料よりなる医療用材料の応用例としては、経皮デバイス(肺高血圧症治療用カテーテル(長期留置型中心静脈カテーテル)、腹膜透析用カテーテル、補助人工心臓(VAS)の送血管・脱血管の皮膚挿入部位への利用)、人工肛門・人工膀胱、ステントおよびステントグラフトへの応用、人工血管、シャント(外シャント、内シャント)、体内留置型人工心臓の体内固定化技術への応用(人工心臓、ペースメーカー等)が挙げられる。
【0303】
また上記の他にも、coronary stent、メタリックステント、血栓除去用ステント、尿管ステント、BMP治療用メタリックステント、胆管ステント、食道ステント、気管・気管支ステント、高カロリー用カテーテル、ブラッドアクセス、補テツ材料、人工靱帯等にも利用が可能である
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0304】
本発明の実施例として、ハイドロキシアパタイト(HAp)焼結体粒子群を製造した例について示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0305】
〔実施例1〕歯根膜細胞を被覆した経皮端子の動物埋植試験
(ハイドロキシアパタイト焼結体粒子の製造方法)
まず、本実施例にかかるハイドロキシアパタイト焼結体の製造方法について説明する。
【0306】
連続オイル相としてドデカン、非イオン性界面活性剤として曇天31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテルを用いて、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル層40mlを調製した。次に、上記調製した連続オイル層にCa(OH)2分散水溶液(2.5モル%)を10ml添加した。そして、得られた分散液を十分に撹拌した後、その水/オイル(W/O)乳濁液に1.5モル%のKH2PO4溶液10mlを添加して、反応温度50℃で、24時間撹拌しながら反応させた。得られた反応物を遠心分離により分離することにより、ハイドロキシアパタイトを得た。そして、上記ハイドロキシアパタイトを800℃の条件で、1時間加熱することにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の粒子(以下、HAp粒子と称する)を得た。このハイドロキシアパタイト焼結体は、単結晶体であり、長径が100~400nmであった。
【0307】
(ハイドロキシアパタイト複合体粒子(複合体)の製造方法)
まず、高分子基材である繊維状シルクフィブロイン(藤村製糸株式会社製、以下、SF繊維と称する)を、長軸方向平均長さ100μm、短軸方向平均10μmに切断した。そして、得られたSF繊維(以下、cutSFと称する)をソックスレー抽出器で不揮発成分の抽出・除去を行なった。得られたcutSFの走査型電子顕微鏡像を図1に示した。
【0308】
次にソックスレー抽出済みのcutSF600mgをドクター試験管に入れた後、そこに、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)82mgを純水18mlに溶かしたものを、およびγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE503)1088μlをペンタエチレングリコールドデシルエーテル292μlに加えて十分に攪拌したものを添加した。そして、液体窒素にて凍結、脱気、解凍、窒素置換するという作業を2回繰り返した。
【0309】
次に、反応溶液を、50℃の湯浴で、60分間加熱することにより反応を行なった。その後、反応溶液を、定性濾紙(保留粒子径5μm)を用いて濾過した。これにより、cutSFの表面にアルコキシシリル基が導入されたSF繊維(濾滓)と、高分子化したKBEおよびシリル基がエステル化した分子(濾液)とを分離した。そして、さらに、高分子化したKBEを分離するために、cutSFの表面にアルコキシシリル基が導入されたSF繊維をエタノール中で、1分間超音波(出力20kHz、35W)処理し、さらに2時間攪拌しながら洗浄したのち、定性濾紙にて濾過した。その後真空乾燥することにより、末端のアルコキシシリル基を有する高分子鎖をグラフト重合させたSF繊維、すなわち、アルコキシシリル基導入SF繊維(以下、KBE-cutSFと称する)を得た。得られたKBE-cutSFの走査型電子顕微鏡像を図2に示す。
【0310】
またこのときの反応時間におけるアルコキシシリル基の導入率は8.3重量%であった。なお上記導入率は、未処理のcutSFの重量をAg、反応後のcutSFの重量(KBE-cutSF)をBgとして、下式(1)により求めた。
【0311】
導入率(重量%)=((B-A)/A)×100・・・(1)
各反応時間(15分間、60分間、75分間、90分間、120分間)におけるアルコキシシリル基の導入率を表1、および図3に示す。
【0312】
【表1】
JP0004570445B2_000019t.gif

【0313】
一方、溶液(トルエン:メタノール=8.6:1)15mlに上記HAp粒子300mgを加え、20秒間超音波処理することで分散させて後、30分~1時間静置した。
【0314】
また、HAp粒子を静置している間に、30mlのエレンマイヤーに溶媒(トルエン:メタノール=8.6:1)15mlに、KBE-cutSF約300mg分散させた。
【0315】
そして、KBE-cutSFを分散させたエレンマイヤーに、パスツールピペットにて、上記HAp粒子を分散させた上澄み溶媒を静かに移した。その後、1分ごとにKBE-cutSFとHAp粒子とが混合した分散溶媒をスポイトにて静かに撹拌した。
【0316】
そして上記撹拌操作を10回繰り返した後、上記定性濾紙にてHAp粒子が吸着したKBE-cutSF(以下、KBE-cutSF-HApと称する)と吸着していないHAp粒子とを分離した。具体的には、上澄みのHAp粒子を濾過し、その後に、沈殿したKBE-cutSF-HApを回収した。
【0317】
その後、濾別したKBE-cutSF-HApをエタノール中で、2時間攪拌・洗浄し、1分間超音波処理した後、上記定性濾紙にて濾過した。
【0318】
そして、濾別したKBE-cutSF-HApを60℃にて乾燥後、120℃、1mmHg、2時間処理した。このようにして、KBE-cutSF-HAp粒子を合成した。図4に、上記KBE-cutSF-HAp粒子の走査型電子顕微鏡像を示す。
【0319】
また上記合成したKBE-cutSF-HApのFT-IR(拡散反射法)を用いて分析した結果を図5に示す。図5(a)はcutSFのFT-IR分析の結果であり、同図(b)はKBE-cutSFのFT-IR分析の結果であり、(c)はKBE-cutSF-HApのFT-IR分析結果である。図5(c)において、PO43-に帰属される1050cm-1付近に新たな吸収があり、HAp粒子が高分子基材に結合していることがわかった。
【0320】
(経皮端子の製造方法)
以下、KBE-cutSF-HAp粒子を基体に被覆して、経皮端子を製造する方法について説明する。なお経皮端子とは、カテーテルとの経皮デバイスのダウングロースを予防するために用いられる器具であり、例えば、生体適合性の高いハイドロキシアパタイトセラミックスからなる経皮端子が知られている(H. AOKI, in"Medical Applications of Hydroxyapatite" (Ishiyaku EuroAmerica Inc., 1994) p. 133参照)。
【0321】
まず、経皮端子のシリコーンラバー製基体表面のうち、KBE-cutSF-HAp粒子を被覆しない部分(被覆部以外)にはカバーテープを巻いておいた。
【0322】
次にシリコーンラバー製基体のカテーテルが挿入される方向を軸として、360rpmで回転させながら、シリコーン接着剤(GE東芝シリコーン株式会社製:非腐食性速乾性接着シール材TSE-399)を基体に塗布した後、5600rpmで10秒間回転させることにより、余分な接着剤を取り除いた。
【0323】
そして上記接着剤が塗布された基体を360rpmで回転させながら、KBE-cutSF-HAp粒子をまんべんなくつけ、その後、余分なKBE-cutSF-HAp粒子を取り去った。なお上記カバーテープは、この操作の後に基体から剥がした。
【0324】
その後、KBE-cutSF-HAp粒子で被覆された基体を85℃で5分間乾燥させ、5分後に回転棒からはずした。そして、減圧下(133Pa(1mmHg))で120℃、2時間乾燥を行なった。
【0325】
次に、上記基体を純水に浸し、超音波(出力20kHz、35W)処理を3分間行なうことにより、上記基体を洗浄した。さらに超音波照射終了後、純水中で基体を1時間攪拌して洗浄した後、乾燥させ、24時間放置することにより本発明にかかる経皮端子を製造した。このようにして得られた経皮端子の全体写真を図6(a)に示し、当該経皮端子の走査型電子顕微鏡像を図6(b)に示す。図6(b)によれば、経皮端子表面にKBE-cutSF-HAp粒子がまんべんなく被覆していることが分かった。
【0326】
(経皮端子への細胞被覆方法)
上記のようにして取得した経皮端子をマイクロチューブ(2ml)へ入れ、α-MEM培地2ml注入し、超音波(120W、1分間)処理を行なった。
【0327】
当該経皮端子を新しいマイクロチューブ(2ml)へ入れ替え、そこへ歯根膜細胞(2.5×105個/ml)を2ml接種した。なお歯根膜細胞は、後述する動物埋植試験に用いるラットから予め採取し、α-MEM培地にて培養したものを使用した。
【0328】
マイクロチューブのふたは開けたままにし、インキュベートを行なった。インキュベートは、37℃、大気中で行なった。インキュベートを行なう時、20~30分間隔でマイクロチューブを回転させた。このことにより歯根膜細胞がマイクロチューブの底にたまることを防止するとともに、経皮端子の表面に歯根膜細胞がまんべんなく被覆させることができる。
【0329】
インキュベート開始から約2日後(約48時間後)、さらに培養した経皮デバイス複合体を新しいマイクロチューブ(2ml)へ入れ替え、そこへ新しい歯根膜細胞(2.5×105個/ml)を2ml接種し、20~30分間隔でマイクロチューブを回転させながらインキュベートを行なった。
【0330】
上記インキュベートから約2日後(約48時間後)、さらに約8時間インキュベートを行なって、最終的に歯根膜細胞が表面に吸着した経皮端子を作製した。
【0331】
上記経皮端子の走査型電子顕微鏡像を図7に示した。図7によれば、歯根膜細胞が経皮端子上にまんべんなく被覆している様子がわかる。
【0332】
(動物埋植試験)
上記操作によって得られた歯根膜細胞を被覆した経皮端子を、歯根膜細胞の取り出したラットと同腹のラットの皮下に埋植し、3日後経皮端子を埋植部から取り出し、HE染色により評価を行なった。
【0333】
〔実施例2〕骨髄細胞を被覆した経皮端子の動物埋植試験
被覆させる細胞を骨髄細胞にした以外は、実施例1と同様にして、骨髄細胞を被覆した経皮端子を作製した。動物埋植試験も実施例1に準じて行なった。
【0334】
〔比較例〕細胞を被覆していない経皮端子の動物埋植試験
上記実施例1、2の各細胞を被覆する前の経皮端子を用いて、実施例1、2と同様に動物埋植試験を行なった。
【0335】
〔実施例1,2、比較例の結果〕
実施例1において動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を図8(a)に示し、実施例2において動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を図8(b)に示し、比較例において動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を図8(c)に示した。
【0336】
なお、図9に経皮端子1およびカテーテル2からなる経皮デバイス3の概略図を示した。同図において経皮端子1が生体内に埋植され、カテーテル2は生体外に存在しカテーテル2を通って薬剤が投与される。経皮端子1は、カテーテル2のダウングロースを防止するためのものである。なお、上記電子顕微鏡観察を行なった領域は、同図中丸で囲んだ。
【0337】
図8(a)~(c)からわかるように、細胞を被覆した経皮端子はいずれも、比較例のものに比べ、結合組織の早期伸展が認められた。これは、経皮端子と生体組織(軟組織)が早期に接着していることを示している。
【0338】
したがって、ハイドロキシアパタイト複合体にさらに細胞(歯根膜細胞、骨髄細胞)を被覆した本発明にかかるハイブリット複合体にて製造した経皮端子等の医療用材料は、生体組織、特に軟組織との親和性が向上し、迅速に軟組織と接着することができる。よって、医療用材料の埋植初期に起こる細菌等による感染や、医療用材料のズレを予防することができるとともに、創傷治癒の促進効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0339】
本発明にかかるハイブリット複合体は、生体組織(軟組織)と早期に接着する性質を有するものである。よって、種々の体内留置型医療用デバイスの医療用材料に利用が可能である。例えば、経皮デバイス(肺高血圧症治療用カテーテル(長期留置型中心静脈カテーテル)、腹膜透析用カテーテル、補助人工心臓(VAS)の送血管・脱血管の皮膚挿入部位への利用)、人工肛門・人工膀胱、ステントおよびステントグラフトへの応用、人工血管、シャント(外シャント、内シャント)、体内留置型人工心臓の体内固定化技術への応用(人工心臓、ペースメーカー等)が挙げられる。
【0340】
また上記の他にも、coronary stent、メタリックステント、血栓除去用ステント、尿管ステント、BMP治療用メタリックステント、胆管ステント、食道ステント、気管・気管支ステント、高カロリー用カテーテル、ブラッドアクセス、補テツ材料、人工靱帯等にも利用が可能である。
【0341】
それゆえ本発明によれば、種々広範な医療用材料(医療用デバイス)において好的に利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0342】
【図1】実施例1におけるcutSFの走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図2】実施例1におけるKBE-cutSFの走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図3】実施例1における反応時間におけるアルコキシシリル基の導入率を示すグラフである。
【図4】実施例1におけるKBE-cutSF-HAp粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図5】実施例1におけるFT-IR(拡散反射法)分析結果を示すグラフである。
【図6】図6(a)は実施例1において作製した表面をKBE-cutSF-HAp粒子で被覆した経皮端子の全体写真図であり、図6(b)は、同経皮端子の一部の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】実施例1において作製した表面をKBE-cutSF-HAp粒子で被覆し、さらに歯根膜細胞を被覆した経皮端子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図8】図8(a)は、実施例1の動物埋植試験において、動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を示す図であり、図8(b)は、実施例2の動物埋植試験において、動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を示す図であり、図8(c)は、比較例の動物埋植試験において動物から取り出した経皮端子の表面の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【図9】経皮端子およびカテーテルからなる経皮デバイスの概略図である。
【符号の説明】
【0343】
1 経皮端子
2 カテーテル
3 経皮デバイス
図面
【図3】
0
【図5】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図4】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8