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明細書 :α-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4368289号 (P4368289)
公開番号 特開2006-137733 (P2006-137733A)
登録日 平成21年9月4日(2009.9.4)
発行日 平成21年11月18日(2009.11.18)
公開日 平成18年6月1日(2006.6.1)
発明の名称または考案の名称 α-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン類の製造方法
国際特許分類 C07D 317/36        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07D 317/36
B01J 3/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2004-331083 (P2004-331083)
出願日 平成16年11月15日(2004.11.15)
審査請求日 平成17年4月22日(2005.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】榧木 啓人
【氏名】碇屋 隆雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】渕野 留香
参考文献・文献 特開平10-120673(JP,A)
特開昭61-076479(JP,A)
米国特許第03541087(US,A)
調査した分野 C07D 317/36
B01J 3/00
C07B 61/00
CA/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0004368289B2_000008t.gif
(式中の1は、水素原子、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基を示し、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、またはフェニル基を示し、2つのR2は同一または別異であってもよい。)
で表わされるプロパルギルアルコール類を、次式
【化2】
JP0004368289B2_000009t.gif
(式中のtBuはtert-ブチル基を示し、iPrはイソプロピル基を示し、Mesは2,4,6-トリメチルフェニル基を示す。)から選ばれる少なくとも1種の含窒素環状カルベンもしくはその二酸化炭素付加物の存在下に、亜臨界もしくは超臨界の状態の二酸化炭素と反応させることを特徴とする、次式
【化3】
JP0004368289B2_000010t.gif
(式中のR1およびR2は前記のものを示す。)
で表わされるα-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン類の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、各種のカーボネート、ウレタン、フラノン誘導体や光学活性ジオール類等へ合成原料や合成中間体として有用な5員環カーボネートであるα-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
五員環カーボネートである、1,3-ジオキソラン-2-オンは、脂肪族ポリカーボネートの原料モノマーや非プロトン性溶媒、あるいは有機合成プロセスの中間体として有用な化合物群である。その合成法はホスゲンや一酸化炭素などの毒性の高い反応剤の使用を必要とすることが多い。このため、無害で入手容易な二酸化炭素を炭素資源として効率良く活用し、1,3-ジオキソラン-2-オンに誘導することができれば、環境調和型合成法として意義がある。
【0003】
このような観点から、プロパルギルアルコールと二酸化炭素からのα-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オンを合成する方法が検討されており、ルテニウム、コバルト、パラジウム、銅などの金属触媒を使用した例がこれまでに知られている。Ru触媒(非特許文献1)、Co触媒(非特許文献2)、Pd触媒(非特許文献3-5)、Cu触媒(非特許文献6-9、特許文献1-4)である。しかし、これらの重金属の触媒はその反応後の廃棄処理が問題となり、また反応そのものの効率の点でも満足できるものではない。
【0004】
一方、非金属系触媒としては、ホスフィン類が有効(非特許文献10)だが、異臭を伴い毒性の高いリン化合物は実用上の制限が大きい。また、強塩基触媒も報告されている(非特許文献11)が、基質は一例に限られ、かつ高い触媒濃度(20mol%)を必要としている。

【非特許文献1】Y.Sasaki, Tetrahedron Lett.,27,1573(1986).
【非特許文献2】Y.Inoue, J.Ishikawa, M.Taniguchi, H.Hashimoto, Bull.Chem.Soc. Jpn.,60,1204(1987).
【非特許文献3】K.Iritani, N.Yanagihara, K.Uchimoto, J.Org.Chem.,51,5499(1986)
【非特許文献4】Y.Inoue, Y.Itoh, I.F.Yen, S.Imaizumi, J.Mol.Catal.,60,L1(1990).
【非特許文献5】K.Uemura, T.Kawaguchi, H.Takayama, A.Nakamura, Y.Inoue, J.Mol.Catal.A.139,1(1999).
【非特許文献6】H.Laas, A.Nissen, A.Nurrenbach, Synthesis,958(1981).
【非特許文献7】H.S.Kim, J.W.Kim.S.C.Kwon, S.C.Shim, T.J.Kim, J.Organomet.Chem.,545-546,337(1997).
【非特許文献8】S.C.Kwon, C.S.Cho, S.C.Shim, T.J.Kim, Bull.Korean Chem.Soc.,20,103(1999).
【非特許文献9】Y. Gu, F. Shi, Y. Deng, J.Org.Chem.,69,391(2004).
【非特許文献10】J.M.Joumier, J.Fourmer, C.Bruncau, P.H.Dixneuf, J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,3271(1991).
【非特許文献11】M.Costa, et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1699-1700,(1996).
【特許文献1】P.Dimroth, H.Pasedach, PB Patent 1098953(1961).
【特許文献2】P.Dimroth, E.Schefezik, H.Pasedach, PB Patent 1145632(1963).
【特許文献3】R.J.Tedeschi, L.L.Moore, US Patent 3541087(1970).
【特許文献4】K.Schneider, DE 3433403 Al(1986).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、以上のとおりの背景から、重金属触媒や毒性の高いホスフィンを用いることなく、少ない量の触媒を用いることで高い反応効率を実現することができ、基質の適用範囲も広い、反応にともなう廃棄物や副生物の問題を解消した環境負荷低減プロセスとして有用な、1,3-ジオキソラン-2-オン類の新しい製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記の課題を解決する方法として以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:次式
【0008】
【化1】
JP0004368289B2_000002t.gif

【0009】
(式中の1は、水素原子、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基を示し、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、またはフェニル基を示し、2つのR2は同一または別異であってもよい。)
で表わされるプロパルギルアルコール類を、次式
【化2】
JP0004368289B2_000003t.gif
(式中のtBuはtert-ブチル基を示し、iPrはイソプロピル基を示し、Mesは2,4,6-トリメチルフェニル基を示す。)から選ばれる少なくとも1種の含窒素環状カルベンもしくはその二酸化炭素付加物の存在下に、亜臨界もしくは超臨界の状態の二酸化炭素と反応させ、次式
【0010】
【化2】
JP0004368289B2_000004t.gif

【0011】
(式中のR1およびR2は前記のものを示す。)
で表わされるα-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン類を製造する。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおりの本願発明によれば、従来のような重金属化合物や毒性の高いホスフィンを用いることなく、少ない量の有機分子触媒を用いることで、高い反応効率を実現している。また、基質の適用範囲が広く、従来法では例が少ない内部アルキンを有する基質でも効率良く進行し、その選択性も高い。反応に伴う廃棄物や副生成物がない環境負荷低減プロセスとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、反応基質としてのプロパルギルアルコールについては、符号R1およびR2が前記のとおりの各種のものであってよい。
【0021】
とえば、基質としてのプロパルギルアルコールとしては、基質のアルキン部位は末端アセチレンに限らず、R1としてアリール基(C65、4-(CH3)C64、4-(CH3CO)C64、4-(CN)C64、4-(NO2)C64、4-(CF3)C64、3,5-(CF6263)、アルケニル基(CH2=CH-、C63CH=CH-)、アルキニル基(HC≡C-)などを有する内部アルキンでもよい。アルキンへの二酸化炭素の付加は立体選択的に進行し、Z体のα-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オンが単一生成物として合成できる。また、基質の置換基R2にメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ベンジル、フェニル置換基導入した化合物が例示される。
【0022】
触媒もしくは反応促進剤としての含窒素環状カルベンについては、次式で表わされるものを用いることができる。
【0024】
【化5】
JP0004368289B2_000005t.gif

【0025】
そして、環状ジアミノカルベンは次式のように二酸化炭素と反応し付加生成物を与えることが知られており、これを用いても同様に反応が進行する。取扱いの困難な環状ジアミノカルベンを単離せずに、二酸化炭素付加物を等価体として代替することができる。
【0026】
【化6】
JP0004368289B2_000006t.gif

【0027】
また、さらには本願発明においては、たとえば次式に示すようなチアゾリウム塩から塩基処理により系中で発生するカルベン類も触媒活性を示す。
【0028】
【化7】
JP0004368289B2_000007t.gif

【0029】
本願発明のプロパルギルアルコールと二酸化炭素との反応は、一般的には、0.1~10mol%、より好適には1~5mol%の含窒素環状カルベンもしくはその二酸化炭素付加体の存在下に、二酸化炭素0.1~30MPa、反応温度30~200℃程度の範囲で、0.5~100時間程度行うことが考慮される。そして、亜臨界もしくは超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体および反応基質とすることにより反応性はより向上することになる。
【0030】
また、本願発明においては、上記の反応を阻害することのない適宜な有機溶媒を使用してもよい。エーテル系、エステル系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、二トリル系、アミド系等の有機溶媒が考慮される。
【0031】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0032】
<実施例1>
オートクレーブ中、2-メチル-4-フェニル-3-ブチン-2-オール(801mg,5.0mmol)と、前記式で表わされる触媒1b(45mg,0.25mmol)を導入し、二酸化炭素を圧入(10.0MPa)したのち、100℃で攪拌する。所定の反応時間(15時間)後、反応容器を冷却し、二酸化炭素を放出する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの通常の分離操作により、(Z)-5-ベンジリデン-4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンが収率75%(768mg,3.76mmol)で得られる。
<実施例2>
オートクレーブ中、2-メチル-3-ブチン-2-オール(426mg,5.0mmol)を、触媒2b(55mg,0.25mmol)の存在下で二酸化炭素の加圧下(4.5MPa)で100℃の温度において攪拌する。所定の反応時間(15時間)後、反応容器を冷却し、二酸化炭素を放出する。蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの通常の分離操作により、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンが収率88%(562mg,4.39mmol)で得られる。
<実施例3>
オートクレーブ中、3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウム ブロマイド(63mg,0.25mmol)に1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(38mg,0.25mmol)を作用させ系中で触媒5を発生させる。2-メチル-3-ブチン-2-オール(426mg,5.0mmol)を加え、二酸化炭素の加圧下(10.0MPa)で100℃の温度において攪拌する。所定の反応時間(15時間)後、反応容器を冷却し、二酸化炭素を放出する。蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの通常の分離操作により、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オン(55mg,0.43mmol)が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
α-アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オンは各種カーボネート、ウレタン、フラノン誘導体や光学活性ジオール類の合成原料として知られており、本願発明はその製造法として重要である。また、生成物のカーボネート基のα位のオレフィンをさらに修飾、変換することができることは化学合成法として有用性が高い。