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明細書 :微細突起構造体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4390708号 (P4390708)
登録日 平成21年10月16日(2009.10.16)
発行日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 微細突起構造体及びその製造方法
国際特許分類 B29D  28/00        (2006.01)
C12M   3/00        (2006.01)
C08J   9/00        (2006.01)
B29C  59/00        (2006.01)
FI B29D 28/00
C12M 3/00 Z
C08J 9/00 Z
B29C 59/00 F
請求項の数または発明の数 25
全頁数 19
出願番号 特願2004-555064 (P2004-555064)
出願日 平成15年11月27日(2003.11.27)
国際出願番号 PCT/JP2003/015171
国際公開番号 WO2004/048064
国際公開日 平成16年6月10日(2004.6.10)
優先権出願番号 2002344513
2003356881
優先日 平成14年11月27日(2002.11.27)
平成15年10月16日(2003.10.16)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成17年6月28日(2005.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】田中 賢
【氏名】下村 正嗣
【氏名】竹林 允史
【氏名】藪 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100116089、【弁理士】、【氏名又は名称】森竹 義昭
【識別番号】100090985、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 幸雄
【識別番号】100127513、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 悟
審査官 【審査官】大島 祥吾
参考文献・文献 特開平09-155972(JP,A)
特開2002-335949(JP,A)
特開2001-157574(JP,A)
特開2002-528302(JP,A)
特開2003-305361(JP,A)
特開2002-347107(JP,A)
特開2003-128832(JP,A)
特開2003-253020(JP,A)
特表平10-502305(JP,A)
国際公開第00/050232(WO,A1)
調査した分野 B29D 28/00
B29C 59/00
C08J 9/00
C12M 3/00
B29C 41/12
特許請求の範囲 【請求項1】
基材表面に微細突起が規則的に配列してなる微細突起構造体であって、前記基材及びその微細突起が、ポリマーを含み、必要に応じ変性材を含む多孔質ハニカム構造体を前駆体とし、この前駆体を厚み方向に剥離して得られることを特徴とする、微細突起構造体。
【請求項2】
基材表面に微細突起が規則的に配列し、撥水性表面を有してなることを特徴とする、請求項1記載の微細突起構造体。
【請求項3】
基材表面に微細突起が規則的に配列し、親水性化処理によって親水性表面を有してなることを特徴とする、請求項1記載の微細突起構造体。
【請求項4】
前記前駆体及びこの前駆体から得られてなる基材が、薄膜状を呈している、請求項1乃至3の何れか1項記載の微細突起構造体。
【請求項5】
前記微細突起が、長さ0.1~50μm、先端部分の長さ0.01~20μm、突起間隔0.1~100μmに配列してなることを特徴とする、請求項1乃至の何れか1項記載の微細突起構造体。
【請求項6】
前記ポリマーが疎水性あるいは生分解性ポリマーを含み、両親媒性ポリマーを含んでいる、請求項1乃至5の何れか1項記載の微細突起構造体。
【請求項7】
前記疎水性あるいは生分解性ポリマー、および両親媒性ポリマーの含有割合が、疎水性あるいは生分解性ポリマーが50~99%、残部両親媒性ポリマーである、請求項記載の微細突起構造体。
【請求項8】
前記疎水性あるいは生分解性ポリマーとして、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、又はポリスチレンを使用する、請求項又は記載の微細突起構造体。
【請求項9】
ポリマーを溶解して含む疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させ、該キャスト液表面の雰囲気に含まれている湿分を該キャスト液表面で微小水滴に凝縮、結露させ、該液表面又は液中に最密充填構造に分散させ、次いでこの結露し液表面又は液中に分散してなる微小水滴を蒸発させる事で水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得、次いでこの構造体を、厚み方向に剥離することによって少なくとも二つに分離し、前記分離によって微細突起が剥離面に規則的に形成され、配列してなるハニカム構造体を得ることを特徴とする、請求項1乃至の何れか1項記載の微細突起構造体。
【請求項10】
前記微細突起が垂直方向以外の任意方向に指向され、異方性を有して設定されていることを特徴とする、請求項1乃至の何れか1項記載の微細突起構造体。
【請求項11】
前記異方性を有する微細突起が、微細突起の前駆体である多孔質ハニカム構造体を厚み方向に剥離する際、生成する微細突起が、厚み方向以外に任意の方向に指向するよう、横ずり応力を含む剥離処理によって得られることを特徴とする、請求項10記載の微細突起構造体。
【請求項12】
前記親水性化処理が、化学的修飾処理、オゾン酸化処理、アルカリ処理の何れか一つまたはそれらの組み合わせである請求項3記載の微細突起構造体。
【請求項13】
ポリマーを溶解して含む疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させ、該キャスト液表面の雰囲気に含まれている湿分を該キャスト液表面で微小水滴に凝縮、結露させ、該液表面又は液中に最密充填構造に分散させ、次いでこの結露し液表面又は液中に分散してなる微小水滴を蒸発させる事で水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得、次いでこの構造体を、厚み方向に剥離することによって少なくとも二つに分離し、これによって微細突起が剥離面に規則的に配列してなるハニカム構造体を得ることを特徴とする、微細突起構造体の製造方法。
【請求項14】
前記ポリマーが疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーとから構成され、必要に応じて変性材が配合されていることを特徴とする、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項15】
前記疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーの組成割合が、疎水性あるいは生分解性ポリマーが50~99%、残部両親媒性ポリマーである、請求項14記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項16】
前記疎水性あるいは生分解性ポリマーが、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリスチレンを基本骨格としたポリマーよりなることを特徴とする、請求項14又は15記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項17】
前記湿分を含んでいる雰囲気が、相対湿度50~95%に調製された雰囲気である、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項18】
前記雰囲気が、通常の大気であることを特徴とする、請求項13又は17に記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項19】
前記湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させる操作態様が、高湿度を含む雰囲気を有機溶媒の蒸発面に向けて吹き付けることによって行なわれることを特徴とする、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項20】
前記剥離操作が粘着テープによって行われることを特徴とする、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項21】
前記剥離操作がポリマーの溶解によって行われることを特徴とする、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項22】
前記剥離操作が超音波照射によって行われることを特徴とする、請求項13記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項23】
前記微細突起が、長さ0.1~50μm、先端部分の長さ0.01~20μm、間隔密度0.1~100μmに形成され、配列されたことを特徴とする、請求項13乃至22の何れか1項に記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項24】
前記微細突起が垂直方向以外の任意方向に指向されてなる異方性を有して設定される、請求項13乃至23の何れか1項記載の微細突起構造体の製造方法。
【請求項25】
前記異方性を有する微細突起が、微細突起の前駆体である多孔質ハニカム構造体を厚み方向に剥離して微細突起を生成する際、生成する微細突起が、厚み方向以外に任意の方向に指向するよう、横ずり応力がかけられて剥離処理されて得られることを特徴とする、請求項24記載の微細突起構造体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
本発明は、極めて特異な表面状態を呈してなる微細突起構造体、すなわち、超微細な突起が基材表面に所定間隔で規則的に配列してなる多孔質薄膜構造体とその製造方法に関する。さらには超微細な突起が基材表面に所定間隔で規則的に配列し、撥水性表面、あるいは親水性表面を有してなる多孔質薄膜構造体とその製造方法に関する。何れにしてもその表面形状の特異性から、微細突起のない、あるいは不規則な突起構造のものに比し、優れた作用効果が奏せられるものと期待され、これによって細胞培養工学、医用スカフォールト材料を始めとして、半導体、記録材料、スクリーン、セパレータ、イオン交換膜、電池隔膜材料、ディスプレイ、光学材料、導波管、音響機器材料等各種技術分野において応用、使用が期待される微細突起構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、生化学の分野を中心として、細胞工学、培養工学におけるスカフォールト材料として、表面に微細な孔等が規則的に形成され、配列してなる基材が、後述するように各種学術文献、技術報文等において相次ぎ提案、発表されている。
これら提案による各基材は、特異な表面構造を有していることから、医用分野は勿論のこと、これに限らず、各種技術分野への応用、適用が検討され、例えば半導体、低誘電率材料、電子ディスプレイ用散乱層、磁気記録材料、フォトニック結晶、細胞培養用基材など多様な用途への使用、応用も含めて検討され、有望な素材の一つとして注目されている。
しかしながら、このような微細な孔が規則的に配列した構造のものを、通常の微細加工技術によって作製しようとすると、以下に記載するような点において問題があり、極めて困難であり、必ずしも現実的に適正な手段とは到底言えないものである。例えば、微細加工方法としては、リソグラフィーやレーザーによる加工方法が知られ、挙げられるが、これらの方法では、その加工できる材料に制限があることに加え、細密な微細加工を無数と言ってもいいほどに相当数、形成すること、それも規則的に形成する等の作業は極めて困難である。相当熟練した者による場合であっても、加工工程が多く、相当の時間を要するものであることは想像するに難くない。当然高コストを要するものである。
これに対して、いわゆる相分離法によってマイクロパターンを形成させる方法も知られているが、その得られた表面の状態は、再現性において問題があり、得られたものは不均質なパターンであり、特定の規則性を持ったものを得るマイクロパターン形成技術としては不十分なものであった。
何れにしても、これら従来のマイクロパターン化技術を使った表面加工は、非常に高度な技術が必要であり、大量生産が出来ないこと、高コストになること、などの点で多くの問題を抱えているものであった。
【0003】
以上に対して、最近、ポリマーの希薄溶液を固体基板上にキャストすることで、比較的簡単に微細な規則的パターンが形成されることが各種文献に報告されている。これについては、本発明者等を含む研究グループにおいても提案しているところである(非特許文献1参照、)。この方法は、高分子の希薄溶液をキャストし、溶媒を蒸発させることによって高分子ポリマーに微細構造のドット(突起)パターンを形成するものである。しかしながら、この提案による方法は、その突起の配列を制御可能に規則性を持ったマイクロドットとするまでには至っておらず、不十分なものであった。
【0004】
また、微細構造として、微細なハニカムパターンを有してなる多孔質膜を形成することも提案されている(非特許文献2、非特許文献3)。この方法は、自己凝集力の強い部分と柔軟性を発現する部分とを併せ持つ特殊なポリマーを利用し、これらのポリマーを疎水性有機溶液に溶解し、キャストすることによって該パターンを形成するものである。
【0005】
なお、この方法についても、本発明者等グループにおいて鋭意研究した結果、キャストするポリマーとして、特定のポリマーを選択することにより、特有なハニカム構造を持ってなる微細構造体を作製することに成功し、その成果については技術論文において発表、報告した(非特許文献4、非特許文献5)。
すなわち、該ポリマーの構成成分として、親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸などのアニオン性多糖と4級の長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオン性錯体を使用することによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜を生成しうることに成功したものである。
【0006】
本発明者らにおいては、また、様々な生分解性ポリマーで作製してなる多孔質ハニカム構造膜が細胞培養基材として極めて有望な材料であることについても知見し、これに基づいて特許出願した(特許文献1参照)。
この特許出願で、本発明者らの提案した作製方法は、濃度調整した疎水性有機溶液のキャスト膜に高湿度の空気を吹き付ける、または高湿度下に置くだけで作製するという、極めて簡便で製造コストにおいて利点のある、優れた手法である。
その際、孔の鋳型になる水滴径を変化させることで、多孔質膜の孔径を0.1~100μmの範囲で制御することが出来るもので、非常に独自性に富み、優れた提案であると言うことができる。
【0007】
【非特許文献1】
Chemistry Letters,821,1996.
【非特許文献2】
Science 283,373,1999
【非特許文献3】
Nature 369,387,1994
【非特許文献4】
Thin Solid films 327,829,1998
【非特許文献5】
Moleculer Cryst.Liq.Cryst.322,305,1998
【特許文献1】
特開2001-157574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上に述べた研究、提案を基礎として、これをさらに発展させ、新規な微細構造を呈した特異性のある表面状態を有してなるもの、すなわち、単にハニカム構造を呈しているだけではなく、その表面に微細突起が形成されてなる構造のものを、極めて簡便な方法によって提供しようというものである。
さらに、該突起構造に異方性を持たせた構造のもの、撥水性に富んだ微細突起構造のもの、および、親水性に富んだ微細突起構造のものを、極めて簡便な方法によって提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明者らにおいては鋭意研究した結果、如上の技術を前提として、さらに発展させた結果、これまでとは全く異なった表面特性を有してなる、すなわち微細突起が規則的に配列してなる構造のものを得ることに成功した。すなわち、ポリマーの疎水性有機溶媒溶液から出発し、ハニカム構造の多孔質薄膜を中間体として得、この中間体をその厚み方向に剥離操作によって二分することによって極めて特異な微細突起を有してなる構造体を作製することに成功した。
本発明は、この成功と成功に至るまでの間に得られた知見に基づいてなされたものであり、以下に記載する構成を講ずることによって達成される。
【0010】
(1) 基材表面に微細突起が規則的に配列してなる微細突起構造体であって、前記基材及びその微細突起が、ポリマーを含み、必要に応じ変性材を含む多孔質ハニカム構造体を前駆体とし、この前駆体を厚み方向に剥離して得られることを特徴とする、微細突起構造体。
(2) 基材表面に微細突起が規則的に配列し、撥水性表面を有してなることを特徴とする、(1)記載の微細突起構造体。
(3) 基材表面に微細突起が規則的に配列し、親水性化処理によって親水性表面を有してなることを特徴とする、(1)記載の微細突起構造体。
(4) 前記前駆体及びこの前駆体から得られてなる基材が、薄膜状を呈している、(1)乃至(3)の何れか1項記載の微細突起構造体。
(5) 前記微細突起が、長さ0.1~50μm、先端部分の長さ0.01~20μm、突起間隔0.1~100μmに配列してなることを特徴とする、(1)乃至(4)の何れか1項記載の微細突起構造体。
(6) 前記ポリマーが疎水性あるいは生分解性ポリマーを含み、両親媒性ポリマーを含んでいる、(1)乃至(5)の何れか1項記載の微細突起構造体。
(7) 前記疎水性あるいは生分解性ポリマー、および両親媒性ポリマーの含有割合が、疎水性あるいは生分解性ポリマーが50~99%、残部両親媒性ポリマーである、(6)記載の微細突起構造体。
(8) 前記疎水性あるいは生分解性ポリマーとして、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、又はポリスチレンを使用する、(6)又は(7)記載の微細突起構造体。
(9) ポリマーを溶解して含む疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させ、該キャスト液表面の雰囲気に含まれている湿分を該キャスト液表面で微小水滴に凝縮、結露させ、該液表面又は液中に最密充填構造に分散させ、次いでこの結露し液表面又は液中に分散してなる微小水滴を蒸発させる事で水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得、次いでこの構造体を、厚み方向に剥離することによって少なくとも二つに分離し、前記分離によって微細突起が剥離面に規則的に形成され、配列してなるハニカム構造体を得ることを特徴とする、(1)乃至(8)の何れか1項記載の微細突起構造体。
(10) 前記微細突起が垂直方向以外の任意方向に指向され、異方性を有して設定されていることを特徴とする、(1)乃至(9)の何れか1項記載の微細突起構造体。
(11) 前記異方性を有する微細突起が、微細突起の前駆体である多孔質ハニカム構造体を厚み方向に剥離する際、生成する微細突起が、厚み方向以外に任意の方向に指向するよう、横ずり応力を含む剥離処理によって得られることを特徴とする、(10)記載の微細突起構造体。
(12) 前記親水性化処理が、化学的修飾処理、オゾン酸化処理、アルカリ処理の何れか一つまたはそれらの組み合わせである(3)記載の微細突起構造体。
【0011】
(13) ポリマーを溶解して含む疎水性有機溶媒溶液を基板上にキャストし、湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させ、該キャスト液表面の雰囲気に含まれている湿分を該キャスト液表面で微小水滴に凝縮、結露させ、該液表面又は液中に最密充填構造に分散させ、次いでこの結露し液表面又は液中に分散してなる微小水滴を蒸発させる事で水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得、次いでこの構造体を、厚み方向に剥離することによって少なくとも二つに分離し、これによって微細突起が剥離面に規則的に配列してなるハニカム構造体を得ることを特徴とする、微細突起構造体の製造方法。
(14) 前記ポリマーが疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーとから構成され、必要に応じて変性材が配合されていることを特徴とする、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(15) 前記疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーの組成割合が、疎水性あるいは生分解性ポリマーが50~99%、残部両親媒性ポリマーである、(14)記載の微細突起構造体の製造方法。
(16) 前記疎水性あるいは生分解性ポリマーが、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリスチレンを基本骨格としたポリマーよりなることを特徴とする、(14)又は(15)記載の微細突起構造体の製造方法。
(17) 前記湿分を含んでいる雰囲気が、相対湿度50~95%に調製された雰囲気である、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(18) 前記雰囲気が、通常の大気であることを特徴とする、(13)又は(17)に記載の微細突起構造体の製造方法。
(19) 前記湿分を含んでいる雰囲気の下で該有機溶媒を蒸発させる操作態様が、高湿度を含む雰囲気を有機溶媒の蒸発面に向けて吹き付けることによって行なわれることを特徴とする、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(20) 前記剥離操作が粘着テープによって行われることを特徴とする、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(21) 前記剥離操作がポリマーの溶解によって行われることを特徴とする、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(22) 前記剥離操作が超音波照射によって行われることを特徴とする、(13)記載の微細突起構造体の製造方法。
(23) 前記微細突起が、長さ0.1~50μm、先端部分の長さ0.01~20μm、間隔密度0.1~100μmに形成され、配列されたことを特徴とする、(13)乃至(22)の何れか1項に記載の微細突起構造体の製造方法。
(24) 前記微細突起が垂直方向以外の任意方向に指向されてなる異方性を有して設定される、(13)乃至(23)の何れか1項記載の微細突起構造体の製造方法。
(25) 前記異方性を有する微細突起が、微細突起の前駆体である多孔質ハニカム構造体を厚み方向に剥離して微細突起を生成する際、生成する微細突起が、厚み方向以外に任意の方向に指向するよう、横ずり応力がかけられて剥離処理されて得られることを特徴とする、(24)記載の微細突起構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、水蒸気を鋳型としてポリマーの希薄溶液を固体基板上にキャストすることでハニカム構造の微細な規則的パターンを有する薄膜を得、これを厚み方向に剥離することによって、薄膜剥離面に微細突起が規則的に配列、形成されてなる全く新しい新素材を提供するものであり、その表面特性は規則的微細突起構造を有している際だった特徴を有していることから、以下に列記する分野等において格別の作用効果が奏せられるものと期待される。すなわち、ケミカルバルブ、DNAチップ、プロティンチップ、細胞診断用チップ、細胞培養工学、医用スカフォールト材料、半導体、記録材料、セパレータ、イオン交換膜、電池隔膜材料、ディスプレイ、光導波路など光学材料、触媒担体、細胞培養基材、異方性個体電導性材料、マイクロ流路、等に使用され、物質の流れを一定方向に制御するバイオチップ表面、一定方向のみ空気や水の抵抗を小さくする低摩擦抵抗表面などに好適な表面を提供でき、格別の働きが奏せられるものと期待される。この様な効果は一端にすぎず、突起構造によって、気液接触反応あるいは液液接触反応各種反応操作に用いられて、接触効果が促進され、あるいは液体の蒸発、乾燥分離操作等に大いに寄与するものと期待される。
【0013】
また、表面に形成されている穴とそれに連結した微細突起とにより、非突起側表面を流れる液体は、穴と微細突起を介して、外部空間に排出される等の現象によって、特有な流路に使用すること等が考えられる。すなわち、人工血管、人工腎臓、等の設計に使用される医用材料としての使用のほか、微細突起を制御することによって、突起を任意に動作せしめる等の作用によって、人工的繊毛運動を生じさせ、マイクロロボット、あるいはマイクロバイオロボット等の運動系材料等に使用すること等が考えられる。さらにまた、ろ過操作においては、上記構成により、液体の排出が有利に行われることから圧力損出の小さなろ過器の設計等に使用される。また、その形は自由になることから、様々な形態材料として使用され、多様な用途に使用される有力な新素材を提供するものである。今後、ナノ技術の進展によって活発となるマイクロ技術における新素材として応用、使用され、表面形状の特異性に起因した格別の働きが奏せられるものと期待される。
特に、前記疎水性表面を有する微細突起構造体は、近年、撥水性表面を求めるニーズが強まり、これを求める技術分野が広まっている。その動向、応用については、各種文献に紹介され、多数に上る多様な応用例が紹介され、挙げられている(例えば、1.高撥水技術の最新動向-超撥水材料から最新の応用まで-、東レリサーチセンター、2001年、2.マテリアルインテグレーション、2001年14巻10月号)。しかしながら、これまでの加工方法は何れも、加工できる材料に制限があり、加工工程に多くの時間とコストを要するものであった。本発明の(2)および関連する発明は、このニーズ応える新素材を提供するものであり、簡単な形成手段によって提供することができ、今後、各種分野において大いに使用され、発展に寄与するものと期待される。
上記撥水性に対するニーズに対し、一部の分野では、水との親和性を求めるニーズも高まっている。例えば、濾過用のフィルターの設計においては、フィルター材料表面からの水分分離効率をよくする必要があり、材料を親水性に設定することが求められる。本発明の(3)および関連する親水性表面を有する設定にした発明は、これに応える、親水性に富んだ表面を有する新素材を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の微細突起構造体は、多孔質ハニカム構造体を得る工程とこれを剥離する工程の2段階工程によって作製されるものであることは前述したとおりであるが、これについて、この一連の操作を以下に要約して、記載する。
まず、疎水性有機溶媒に疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーを溶解させたものを調製し、これを基板上にキャストし、相対湿度が50%以上の大気の下で該有機溶媒を徐々に蒸発させ、あるいは、液面に向けて高湿度雰囲気ガスを吹き付けることによって溶媒を蒸発させ、その蒸発潜熱によって該キャスト液表面に湿分を凝縮し、微小水滴を結露させて、水滴が液表面又は液中に最密充填構造に分散された状態とし、次いでこの結露し、液表面又は液中に分散した微小水滴を蒸発させることにより、水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得るものであり、次いでこの得られたハニカム構造体に、粘着テープを貼り付け、これを引っ張る等の剥離手段によって該ハニカム構造体を二分し、二分された剥離面にハニカム構造の破断によって形成された微細な突起が、規則的に配列した構造体を得る。
【0015】
さらに述べると、その前段の水滴を鋳型とする多孔質ハニカム構造体を得るプロセスにおいて、キャスト液表面に微小水滴を凝縮、結露させ、液表面又は液中に最密充填に分散させ、この水滴を蒸発することで、直径0.1~100μmの微細孔が最密充填した構造、すなわちハニカム構造を有してなる薄膜状構造体が得られるものである。なお、このプロセス自体は、すでに特定のポリマーに基づき、すでに提案され、特許出願されていることは前述したとおりであるが、本発明は、上記プロセスによって形成されたハニカム構造体(図1)は、微小水滴を鋳型としているため、1つの孔が6本の支柱で支えられた構造を有しており、その支柱は中心でくびれた構造を有していること(図2)に着目してなされたものである。
すなわち、この多孔質ハニカム構造体を剥離することにより、その剥離による破断面に微細突起構造が極めて規則正しく配列形成されてなる状態、構造のものが得られることによるものである。
本発明は、前示前段のプロセスに、さらに後段のプロセスを結びつけることによってなされたものであり、その後段の剥離操作によってハニカム構造が破断し、これに基づいて所定の長さの微細突起が所定間隔に形成されてなる構造体が得られるものである。
なお、図1は、シャーレの中に生成させた状態の多孔質ハニカム構造体と、これを2段階にスケールアップした状態を示しており、図2は、これを電子顕微鏡(SEM)によってさらにスケールアップした像と、この構造体を3次元構造にて模式的に表した模式図を示すものである。
【0016】
ここに、本発明に用いる疎水性あるいは生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの生分解性脂肪族ポリエステル、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリメチルヘキサデシルシロキサン、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどが有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。
【0017】
本発明に用いる両親媒性ポリマーとしては、特に制限はないが、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸DNAやRNAなど核酸などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマー等を利用することが容易に入手可能なものとして挙げられ、好ましい。
【0018】
本発明の微細突起構造体のもととなる多孔質ハニカム構造体薄膜を作製するに当たっては、ポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必須である事から、使用する有機溶媒としては非水溶性溶媒である事が必要である。また、使用する各ポリマーに対してこれを溶解するものでなければならない。更にまた、容易に蒸発し、且つ蒸発潜熱によって湿分を容易に凝縮させるものが望ましい。
これらの性質を備えている限り特に制限する必要はないが、簡単に手に入る毒性のないものが望ましいことは勿論である。具体的例示すると、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン、などの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、又、これらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用してもかまわない。
【0019】
これらの溶媒に溶解する疎水性あるいは生分解性ポリマーと両親媒性ポリマー両者併せてのポリマー濃度は、0.01から20wt%、より好ましくは0.1から10wt%の範囲である。ポリマー濃度が0.01wt%より低いと得られる薄膜の力学強度が不足し望ましくない。又、20wt%以上ではポリマー濃度が高くなりすぎ、十分なハニカム構造が得られない。又、疎水性または生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーとの組成比は99:1から50:50(wt/wt)である。両親媒性ポリマー比が1以下では均一な多孔質構造が得られなく、又、該比が50以上では得られる多孔質薄膜の安定性、特に力学的な安定性に欠ける為、好ましくない。
【0020】
本発明においては該ポリマー有機溶媒溶液を基板上にキャストし多孔質薄膜を作製する。その場合、該基板としては、使用するポリマーを溶解した有機溶媒溶液に、相互に溶解、腐食、あるいは反応したりするものや、そして生成物に対して汚染等悪影響を与えるものは避け、化学的に安定な材料が望ましい。ガラス、金属、シリコンウェハー、等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂等の耐有機溶剤製に優れた高分子が挙げられる。以上挙げた基板は、何れも固体表面を基板としたものを例示したが、この基板としては固体表面には限らない。すなわち、水、流動パラフィン、液状ポリエーテル等の液体も使用することが出来る。これら液体の上に、出発ポリマー溶液を展開し、同様の操作で、すなわち、高湿度雰囲気の下で有機溶媒を蒸発し、水滴を鋳型とした多孔質ハニカム構造の薄膜を得、その後は、該膜を同様の剥離操作によって剥離し、微細突起を形成させることが出来る。むしろ基板として液体を使用することによって、その上に展開するポリマーの溶液は、その厚みが表面張力によってコントロールすることができ、薄い膜を作製する場合には好ましい。
何れの基板においても、該多孔質ハニカム構造体薄膜の特徴である自立性を生かすことで、該構造体を単独で容易に基板から取り出すことができる。
【0021】
本発明で、多孔質ハニカム構造が形成される機構は次のように考えられる。疎水性有機溶媒が蒸発するとき、潜熱を奪う為に、キャスト薄膜表面の温度が下がり、水分が凝縮し、微小な水の液滴がポリマー溶液表面に凝集、付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、このため、水微粒子が凝集して1つの塊になろうとする際に、安定化される。溶媒が蒸発していくに伴い、ヘキサゴナルの形をした液滴が最密充填した形で並んでいき、最後に、水が蒸発し、ポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。従って、該薄膜を調製する環境としては相対湿度が50から95%の範囲にあることが望ましい。50%以下ではキャスト薄膜上への結露が不十分になり、又、95%以上では環境のコントロールが難しく好ましくない。
【0022】
本発明において、多孔質ハニカム構造体とは、すでに前示説明からでも明らかなように、上下2枚のフィルムが重ね合わさった2層構造(図2参照)を呈し、その間を規則的に細孔が配列し、各細孔は6本の支柱で支えられ、その支柱は中心でくびれてなる状態、構造を有してなるものである。このような複雑且つ規則的構造が生じた理由は、キャストした高分子溶液表面に、溶媒の蒸発潜熱によって空中の水分が結露し、六方細密充填した水滴が細密パッキングした結果、水滴以外の空間で高分子の析出が生じたためと考えられる。
【0023】
多孔質薄膜の孔径や膜厚は、キャストする液の濃度、溶媒の種類、液量、雰囲気あるいは吹き付ける空気の流量、温度、湿度を変化させることで、つまり、溶媒の蒸発スピード、あるいはこれに結露スピードの制御とを適宜組み合わせることによって、孔径の鋳型となる水滴の成長、溶媒の蒸発速度を制御し、これにより孔の径その他を制御することができる。このようにしてできる、微細突起構造体のもとになる多孔質薄膜の孔径と膜厚は0.1から100μmである。
【0024】
膜に吹き付ける高湿度空気は、膜の表面に空気中の水分を結露させることができる湿度であればよく、温度によって20~100%の相対湿度であればよいし、空気に限らず窒素、アルゴンなどの比較的不活性なガスを用いてもよい。
膜に吹き付ける高湿度空気の流量は、膜の表面に空気中の水分を結露させることができ、キャストに用いた溶媒を蒸発させることができる流量であればよい。
高湿度空気を吹き付けるときの雰囲気の温度は、キャストに用いた溶媒が蒸発することができる温度であればよい。
【0025】
多孔質薄膜表面を剥離させる方法としては、特に限定されず、例えば、粘着テープを薄膜の表面に張って剥離させる方法が典型的な手段として挙げられる。この粘着テープによる場合、基板側およびテープ側どちらにも、同様の微細突起構造を形成させることができるため、湾曲した基材にも微細突起構造体を形成させる方法を提供するものである。これ以外の剥離操作としては、超音波照射あるいはポリマーの溶解による剥離操作が挙げられる。なお、基板側に形成された微細構造突起体は容易に自己支持薄膜として剥がし取ることができる。
【0026】
多孔質ハニカム構造体薄膜は微細突起構造の前駆体となるため、微細突起構造体の間隔は、多孔質薄膜の孔径に依存し、約0.1~100μmである。また、微細突起構造体の高さや先端の寸法は、多孔質薄膜の膜厚や剥離方法、材質に依存し、それぞれ、約0.1~100μm、0.01~20μmである。
なお、本発明において微細突起構造とは、間隔、高さがほぼ一定の複数の突起が規則正しく配列している構造をいう。突起の断面に特に限定は無く、円形、楕円形、六角形、長方形、正方形等の形状でもよい。
【0027】
この微細突起を形成させたことで、微細突起のないもの、あるいは不規則なものに比し、表面の摩擦抵抗が低減し、撥水性が極めて向上する等際だった性状を呈していることは勿論、例えば、細胞の培養技術に供することにより、細胞の着床率を向上せしめ、それによる増殖・分化、等培養基材として優れた作用効果が奏せられることが期待される。勿論、その表面性状も含め、全体的に特異なミクロ構造を呈しており、従前には全くなかった新規な基材であり、その意義は極めて大きい。今後、種々の分野における材料設計において極めて大きなインパクトを与えるのみならず、優れた作用効果を奏するものと期待され、産業の発展におおいに寄与するものと確信する。
【実施例】
【0028】
次に本発明を、図面、実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0029】
実施例1;
平均分子量20万のポリスチレンと両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap;正式名称:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に4mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分2lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発させることによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜(図1、図2)を作製した。次いで者レー内の得られた膜状試料片の表面に粘着テープを貼り付けた後、厚み方向に剥離することで微細突起構造体を作製した。電子顕微鏡(以下、SEMという)による斜め観察の結果、テープ側、ガラスシャーレ側共に規則性の極めて高い微細突起構造体を作製することができたことが明らかとなった(図3)。
【0030】
【化1】
【0031】
実施例2;
以下、1~9の各種高分子、すなわち、1.ポリスチレン、2.ポリメチルメタクリレート、3.ポリカーボネート、4.ポリテトラヒドロフルフリルメタクリレート、5.ポリ(ε-カプロラクトン)、6.ポリ乳酸、7.ポリ(グリコール酸-乳酸)共重合体(組成比50:50)、8.ポリスルホン、9.ポリメチルヘキサデシルシロキサンと、これに両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に6mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分3lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発さえることにより超微細な細孔が規則的に配列してなる、ハニカムパターンを有する多孔質薄膜を作製した(図4)。次いで実施例1同様、これを剥離した結果、各細孔周囲に規則的に配列し、細孔を支えている状態を呈している支柱部分が断裂し、これによって超微細突起が規則的に配列してなる微細突起構造体が作製された(図5)。
【0032】
実施例3;
平均分子量20万のポリテトラヒドロフルフリルメタクリレートと両親媒性ポリアクリルアミドを重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのシャーレ上にキャストする量を2.5、5、7.5、10mlと変え、相対湿度70%の高湿度空気を毎分2lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発させることによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜を作製した。次いで粘着テープを膜表面に貼り付けた後、厚み方向に剥離することで微細突起構造体を作製した。これをSEM観察した結果、溶媒のキャスト量によって突起の間隔が異なる微細突起構造体を作製することができることが確認された(図6)。
【0033】
実施例4;
ポリスチレンと両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で(a)10:1、(b)10:2,(c)10:2.5(d)10:3の割合でそれぞれ混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に8mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分3lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発さえることによりハニカムパターンを有する多孔質薄膜を作製した。これらの多孔質薄膜を、1-プロパノールに10分浸漬して溶解した後、エタノールで洗浄した。乾燥後、SEMで観察を行った(図7)。その結果、各試料片は何れも剥離し、剥離面に微細突起ないし微細突起模様が規則的に配列した構造体が得られることが明らかとなった。比較のため、テープ剥離したものを側方に示した。これによりポリマー溶解法も、剥離手段として有効な方法であることが明らかとなった。
【0034】
実施例5;
ポリスチレンと両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に5mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分3lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発させることによりハニカムパターンを有する多孔質薄膜を作製した。この作製した多孔質薄膜に超音波照射(20KHz、15W)を5分間行った。その結果、水滴を鋳型として形成されたハニカム構造体が、その支柱部分で切断され、微細突起が飛び出した構造のものが得られたことが確認され、剥離手段として有効であることがSEM観察で確認された(図8)。
【0035】
実施例6;
平均分子量2.9万のポリカーボネートと両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap;正式名称:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に8mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分2lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発させることによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜〔図9(a)〕を作製した。次いで粘着テープを膜表面に貼り付けた後、横ずり応力をかけて剥離することで異方性を有する微細突起構造体を作製した〔図9(b)、(c)〕。SEMによる斜め観察の結果、テープ側、ガラスシャーレ側共に規則性の極めて高い異方性を有する微細突起構造体を作製できることが分かった。
【0036】
実施例7;
平均分子量100万のポリスチレンと両親媒性ポリアクリルアミドを重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に6mlキャストし、相対湿度70%の高湿度空気を毎分3lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を蒸発させることによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜〔図10(a)〕を作製した。次いで粘着テープを膜表面に貼り付けた後、横ずり応力をかけて剥離することで異方性を有する微細突起構造体を作製した〔図10(b)、(c)〕。これをSEMにより、斜方向から観察した結果、テープ側、ガラスシャーレ側共に規則性の極めて高い異方性を有する微細突起構造体が作製できた。
【0037】
以下、実施例8ないし13においては、本発明の疎水性ポリマーから作製された微細突起構造体が、同じ材質から作製された通常の膜体(以下平膜という)や、微細突起のないハニカム構造体に比し、撥水性表面を有することを示すものである。
【0038】
実施例8ならび比較例1、2;
重量平均分子量20万のポリスチレン(Aldrich)と両親媒性ポリアクリルアミド(化合物1Cap:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)を重量比で10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(ポリマー濃度として4mg/l)を、直径10cmのガラスシャーレ上に6mlキャストし、相対湿度80%の高湿度空気を毎分3lの流量で吹き付け、クロロホルム溶媒を十発させることによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜を作成した。次いで粘着テープを膜表面に貼り付けた後、剥離することで微細突起構造体も作成した。ついで、これらの試料体を蒸留水10μlを微細突起構造表面に滴下し、30秒後に水の静的接触角を測定した。比較対照として、ポリスチレンの多孔質膜表面ならびに、上記ポリスチレンとCap(重量比10:1)のクロロホルム溶液を用いてスピンコーターで作成した平膜の静的接触角を測定した。水の静的接触角を表1に示す。
【0039】
実施例9ならびに比較例3、4;
実施例のポリスチレンの代わりに、重量平均分子量35万のポリメチルメタクリレート(Aldrich)を用いて同様に、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜、微細突起構造体、平膜を作製し、水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
実施例10(c)ならびに比較例5、6;
実施例1のポリスチレンの代わりに、重量平均分子量2.9万のポリカーボネートを用いて同様に、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜、微細突起構造体の各平膜を作成し、水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
実施例11ならびに比較例7、8;
実施例1のポリスチレンの代わりに、重量平均分子量24万のポリテトラヒドロフルフリルメタクリレートを用いて同様に、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜、微細突起構造体、平膜を作成し、水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
実施例12(e)ならびに比較例9、10;
実施例1のポリスチレンの代わりに、粘度平均分子量4万のポリ(ε-カプロラクトン)(和光純薬(株)製)を用いて同様に、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜、微細突起構造体の各平膜を作成し、水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
実施例13(f)ならびに比較例11、12;
実施例1のポリスチレンの代わりに、重量平均分子量4~7.5万のポリ(グリコール酸-乳酸)共重合体(組成比50:50)(Aldrich)を用いて同様に、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜、微細突起構造体の各平膜を作成し、水の静的接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
以下、実施例14においては、ポリマーからなる微細突起表面に親水性化手段を適用し、水濡れ性のよい、親水性に富んだ微細突起構造体を作製する例を示す。
【0046】
実施例14(チタンアルコキシドによる表面修飾);
ポリ乳酸(PLLA)とCapとを1-:1の割合で混合し、2.0g/l
のクロロホルム溶液を調製した。この溶液を3.0ml、直径9cmのシャーレ上にキャストし、高湿度の空気を吹き付けてハニカムフィルムを作製した。作製したフィルムの上面を粘着テープで剥離し、ピラー(突起)構造を作製した。
作製した各サンプルに10μlのMilliQ水を滴下して30秒後及び210秒後の接触角を、測定した。対照実験として、同じ組成の平膜、ハニカムパターンフィルムを用意し、同様の実験を行った。各試料の水の接触角を測定したところ、平膜では101°±9°であったのに対し、ハニカムでは109°±2°、突起構造のものは138°±2°であった。
次に各試料フィルムをチタンアルコキシド溶液に浸漬した。フィルムはやや白濁した。これはチタンアルコキシドの加水分解によって屈折率の高いチタニアゲルが表面に形成され、表面での光散乱が生じたためである。リンスの後も表面の白濁は変化しなかった。すなわち、チタニアゲルは表面に固定されているものと考えられる。両親媒性高分子であるCapポリマーは、カルボキシル基を持つため、このカルボキシル基を足場としてチタニアゲルが表面に成長したと考えられる。
チタニアゲルを表面に形成された場合、水滴を表面に滴下してから30秒の水の接触角は、平膜では39°±10°、ハニカムでは19°±6°、突起構造では31°±10°と、親水化されていることが確認された。
また、この値は水滴を滴下してから210秒後ではさらに低くなり、平膜では28°±6°、ハニカム及び突起構造では接触を測定出来ないほど低下した。平膜は一定以上接触角が下がらないのに対し、構造化したフィルムでは非常に接触角が低下したのは、親水面が構造化されることによって毛管力が生じ、毛管力によって液体が次第にフィルムの表面に広がったためであると考えられる。
一般的に表面積を大きくする(すなわち、凹凸を形成する)と、表面の性質が強調されるように働くことはWenzelにより報告されている。見かけの接触角θwは、次の式で表される。
cosθw=rcosθ
上式においてrは平膜の場合の面積で構造化膜の表面積を割ったもの、θは平膜の場合の接触角である。すなわち、表面積が大きい方が表面の性質を強調する。この場合も同様のことが起きていると考えられる。
【0048】
実施例15(オゾン処理による親水化);
ポリスチレン(分子量28万、Aldrich)とCapを10:1の割合で混合し、5.0g/lの溶液を調製した。この溶液を7.5ml、直径約9cmシャーレ上にキャストし、高湿度の空気を当ててフィルムを作製した。またフィルム一部上面を粘着テープで剥離し、突起構造を作製した。作製した各フィルムについて接触角を測定した。ハニカム、突起構造各フィルムの接触角はこの時点ではそれぞれ114°±2°、158±5°であった。
次に、作製したフィルムをオゾンクリーナ(NL-UV253、日本レーザー電子(株))で処理し、30分間オゾン処理する毎にフィルム上での接触角を測定した。その結果、接触角は次第に低下した。しかし、ハニカムフィルムの接触低下は緩やかであり、180分処理を行っても70°前後の接触角を示した。一方突起構造の場合では、ハニカム構造の場合よりも接触角低下が著しく、180分処理した場合約30°前後となった。このことからオゾン処理の場合は表面の形状の効果がより顕著に現れていると考えられる。
【0049】
実施例16;
重量平均分子量4~7.5万のポリ(グリコール酸-乳酸)共重合体(組成比50:50)(Aldrich)で作製したハニカムフィルムを、テープを用いて厚み方向に剥離させ、突起構造を作製した。突起表面を1N水酸化ナトリウム水溶液に120分浸漬後、蒸留水で洗浄した。乾燥後、水滴を静的接触角の測定を水滴滴下後30秒後と120秒後に行った。その結果、水酸化ナトリウム水溶液浸漬前は164°±2°であったが、浸漬後21°±5°(30秒後)、約0°(120秒後)であった。
°(120秒後)であった。
【0050】
実施例17;
実施例16で作製した突起構造表面を、水不溶性の親水性高分子である重量平均分子量8.5万のポリ(2-メトキシエチルアクリレート)の0.2w/v%のメタノール溶液に浸漬して表面コーティングを行った。乾燥後、水滴を水の静的接触角の水摘摘後下後30秒後と120秒後に行った。その結果、コーティング前は164°±2°であったが、コーティング後は29°±4°(30秒後)、約0°(120秒後)であった。
以上の結果からハニカムおよび突起構造を、表面の化学修飾およびオゾン酸化で親水化できることが分かった。このようなフィルムはマトリックス材料や分離膜などへの応用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水蒸気を鋳型としてポリマーの希薄溶液を固体基板上にキャストすることでハニカム構造の微細な規則的パターンを有する薄膜を得、これを厚み方向に剥離するという特有な構成を講じたことによって、薄膜剥離面に微細突起が規則的に配列、形成された全く新しい新素材を提供するものであり、その表面の規則的に配列した微細突起の存在よって、今後各種分野において大いに利用されることが期待される。本発明の微細突起構造体の利用可能性を列挙すると、ケミカルバルブ、DNAチップ、プロティンチップ、細胞診断用チップ、細胞培養工学、医用スカフォールト材料、半導体、記録材料、セパレータ、イオン交換膜、電池隔膜材料、ディスプレイ、光導波路など光学材料、触媒担体、細胞培養基材、異方性個体電導性材料、マイクロ流路、等が挙げられる。特に、微細突起の存在によって、物質の流れを一定方向に制御するバイオチップ表面、一定方向のみ空気や水の抵抗を小さくする低摩擦抵抗表面などに好適な表面を提供でき、このような態様は、微細突起に異方性を付与したことによってその作用効果に一層の顕著性を増し、各種分野において大いに利用され、産業の発展におおいに寄与するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1に記載のシャーレ上に得られた多孔質ハニカム構造体(膜)とその表面をSEM観察した像。
【図2】実施例1に記載の多孔質ハニカム構造体のSEM像(上)とその3次元構造を示すSEM像(下)。
【図3】剥離後の得られた実施例1の微細突起構造体の斜め方向から観察したSEM観察像。
【図4】実施例2に記載された各種ポリマーより作製された多孔質ハニカム構造体のSEM像
【図5】実施例2の多孔質ハニカム構造体から得られた微細突構造体SEM像。
【図6】実施例3の微細突起構造体SEM像。
【図7】実施例4のポリマー溶解法によって得られた微細突起構造体のSEM像。
【図8】実施例5の超音波照射法によって得られた微細突起構造体のSEM像。
【図9】実施例6の異方性微細突起構造体SEM像。
【図10】第10図(a)は、実施例7の異方性微細突起構造体で真上からのSEM像、同図(b)、(c)は、斜め55°からのSEM像。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9