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明細書 :ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2006-514780 (P2006-514780A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成18年5月11日(2006.5.11)
特許番号 特許第5252465号 (P5252465)
登録日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発行日 平成25年7月31日(2013.7.31)
発明の名称または考案の名称 ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長
国際特許分類 H01L  21/205       (2006.01)
C23C  16/34        (2006.01)
C30B  29/38        (2006.01)
H01L  21/20        (2006.01)
H01L  29/201       (2006.01)
FI H01L 21/205
C23C 16/34
C30B 29/38 D
H01L 21/20
H01L 29/201
請求項の数または発明の数 2
全頁数 18
出願番号 特願2004-564675 (P2004-564675)
出願日 平成15年7月15日(2003.7.15)
国際出願番号 PCT/US2003/021916
国際公開番号 WO2004/061969
国際公開日 平成16年7月22日(2004.7.22)
優先権出願番号 60/433,844
60/433,843
優先日 平成14年12月16日(2002.12.16)
平成14年12月16日(2002.12.16)
優先権主張国 アメリカ合衆国(US)
アメリカ合衆国(US)
審判番号 不服 2010-019516(P2010-019516/J1)
審査請求日 平成18年4月20日(2006.4.20)
審判請求日 平成22年8月30日(2010.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】ベンジャミン・エー・ハスケル
【氏名】ポール・ティー・フィニ
【氏名】松田 成正
【氏名】マイケル・ディー・クレイブン
【氏名】スティーブン・ピー・デンバース
【氏名】ジェームス・エス・スペック
【氏名】中村 修二
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
参考文献・文献 特開平3-3233(JP,A)
特開2002-324758(JP,A)
特開2000-223418(JP,A)
特開昭63-178516(JP,A)
調査した分野 H01L 21/205
C23C 16/34
C30B 29/38
H01L 21/20
H01L 29/201
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に平坦な無極性a面窒化ガリウム膜を形成する方法であって、
無極性a面GaN膜が、平坦な鏡面で、試料面積10~20μmでの2乗平均平方根(RMS)粗さは2nm未満であり、後のデバイス再成長に好適な上面を得られるように、3ゾーン水平フロー式HVPEシステムを使用して、
(a)前記システムのリアクタr面サファイア基板を載置する工程と、
(b)前記リアクタを排気するとともにリアクタに精製窒素(N2)ガスを注入して満たし、内部の酸素および水蒸気の濃度を低下させる工程と、
(c)前記リアクタ内の全チャネルに水素(H2)および窒素(N2)の混合ガスを流すと共に、1040℃の成長温度までリアクタを加熱する工程と、
(d)前記リアクタ内のガス流に無水アンモニア(NH3)を加えることによって前記r面サファイア基板を窒化する工程と、
(e)前記リアクタの圧力を76Torrの堆積圧力に低下させる工程と、
(f)前記リアクタ内のr面サファイア基板上で、直接前記a面GaN膜の成長を開始するために、前記リアクタ内で塩化水素(HCl)ガスをガリウム(Ga)ソースに流し始め、600℃を上回る温度でHClガスをGaと反応させ一塩化ガリウム(GaCl)を形成させる工程と、
(g)少なくとも少量の水素ガス(H2)を含むキャリアガスを使用しGaClを前記リアクタ内のr面サファイア基板に移送し、V/III比(GaClに対するNH3のモル比)を1~50として、前記r面サファイア基板でGaClをアンモニア(NH3)と反応させ、窒化ガリウム膜を形成する工程と、
(h)所望の成長時間が経過した後、HClガスを流すことを中断し、リアクタの圧力を大気圧に戻し、リアクタの温度を室温に下げ、リアクタの温度が低下している間にGaN膜が分解しないようにガス流に無水アンモニア(NH3を含ませる工程とを含む方法。
【請求項2】
前記平坦な無極性a面GaN膜を、自立GaN基板として用いるのに十分な厚さに形成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本発明の譲受人に譲渡された以下の同時係属の米国特許仮出願の優先権を主張する。
【0002】
ベンジャミン・A.ハスケル(Benjamin A.Haskell)、ポール・T.フィニ(Paul T.Fini)、松田成正(Shigemasa Matsuda)、マイケル・D.クレイブン(Michael D.Craven)、スティーブン・P.デンバース(Steven P.DenBaars)、ジェームス・S.スペック(James S.Speck)、および中村修二(Shuji Nakamura)による第60/433,844号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長技術(TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR,NON-POLAR A-PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94-US-P1;および
【0003】
ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、および中村修二による第60/433,843号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON-POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93-US-P1。
【0004】
両出願とも参照として本明細書中に組込まれる。
【0005】
本出願は、本出願と同日出願され本発明の譲受人に譲渡された同時係属の、ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、および中村修二による国際出願第PCT/US03/21918号、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON-POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93-WO-U1に関し、この出願は本発明の譲受人に譲渡された同時係属の米国特許仮出願、ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、および中村修二による第60/433,843号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON-POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93-US-P1;およびベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、および中村修二による第60/433,844号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長技術(TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR,NON-POLAR A-PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94-US-P1;の優先権を主張し、上記出願は参照として本明細書中に組込まれる。


【0006】
1. 本発明の技術分野
本発明は半導体材料、方法およびデバイスに関し、より具体的にはハイドライド気相成長法(HVPE)による平坦な無極性a面窒化ガリウム(GaN)の成長に関する。
【背景技術】
【0007】
2. 関連技術の説明
(注:本出願は多くの異なる特許、出願明細書および/または刊行物を参照しており、これらは、1から順に付けた参考文献番号を用いて本明細書に記載する。これらの参考文献番号順に並べた種々の刊行物のリストを「参考文献」とタイトルをつけたセクションに示す。これらの刊行物は、それぞれ参照として本明細書中に組込まれる。)
【0008】
窒化ガリウム(GaN)、ならびにアルミニウムおよびインジウムが組込まれている窒化ガリウムの三元および四元化合物(AlGaN,InGaN,AlInGaN)の有用性は、可視および紫外オプトエレクトロニクスデバイスおよび高性能電子デバイスの製造の分野で定評がある(参考文献1~3参照)。このような素子は、典型的には、分子線エピタキシー(MBE)、有機金属化学気相成長法(MOCVD)またはハイドライド気相成長法(HVPE)などの成長技術によってエピタキシャル成長させる。
【0009】
GaNおよびその合金は六方晶系ウルツ鉱型結晶構造の時最も安定している。この構造の結晶は、120°回転対称の二つ(または三つ)の等価な基底面軸(a軸)によって示され、この軸はすべて、主軸のc軸に垂直である。図1は一般的な六方晶系ウルツ鉱型結晶構造100の概略図であり、重要な面102,104,106,108のほか、軸110,112,114,116を図中に示す。
【0010】
ウルツ鉱型構造内のガリウム原子および窒素原子は、それぞれc軸に沿う平面毎に配置されるので、その結果、各平面は一種類の原子、GaまたはNのみを含むことになる。電気的中性を維持するために、GaN結晶は、窒素原子のみを含む一つのc面(N面)、およびガリウム原子のみを含む一つのc面(Ga面)で終端する。その結果、GaN結晶はc軸に沿って分極されている。これらの結晶の自発分極はバルク性質であり、結晶の構造および組成に依存する。
【0011】
平坦なGa側c面の成長は比較的容易であるため、ほぼすべてのGaN系デバイスは、極軸であるc軸と平行に成長する。さらに、隣接する異なる層の界面における歪みによって圧電分極が生じる。分極の総量は自発分極および圧電分極の寄与の総和であり、その正味の影響によって量子ヘテロ構造内に電荷分離が発生する。量子井戸内の電荷分離は、電子-正孔再結合の効率を低下させ、放射波長をレッドシフトさせる(参考文献4~8参照)が、いずれも発光オプトエレクトロニクスデバイスの動作においては望ましくない。c軸配向のデバイスに特徴的な分極効果を除くことができれば、GaN発光デバイスの効率が向上すると考えられる。
【0012】
GaNのオプトエレクトロニクスデバイス中の圧電分極効果を除くことのできる方策の一つとして、結晶の無極性平面上にデバイスを成長させることが考えられる(参考文献9~11参照)。このような平面は、GaおよびNの原子を同数含み、電気的に中性である。さらに、順次形成される無極性層は相互に等価であるので、バルク結晶が成長方向に沿って分極することはない。GaNの対称性が等価である無極性平面の一例を挙げると、{11-20}平面群があり、a面と総称されている。高電子移動度トランジスタのような電子素子上、または可視および紫外レーザーダイオードおよび発光ダイオードのようなオプトエレクトロニクス素子上のa面基板上で成長させることにより、c面GaN上に同様に成長させた素子と比較して、素子性能を著しく向上させることができた。
【0013】
GaNのバルク結晶は、単に結晶を切断するだけでは、素子をその上に再成長させるための面を出すことができないので、利用不可能である。一般には、GaN膜は最初にヘテロエピタキシャル成長、つまりGaNと適切に格子整合できるような異質基板上に成長させる。近年、多くの研究グループによって、HVPEを利用して十分に厚い(>200μm)GaN膜をヘテロエピタキシャル成長により堆積させ、異質基板を不要にすることができるようになり、これによってホモエピタキシャル素子の再成長に使用することのできる自立GaN基板を得ることができるようになった(参考文献12~13参照)。HVPEには、MOCVDより1から2オーダー、およびMBEより3オーダー程度、成長速度が大きいという長所があり、これは基板作製にとって大変好ましい利点である。
【0014】
しかしながら、現在まで、HVPEによって成長させることができるのは平坦なc面GaN膜のみであった。a面GaNの場合、ほとんどすべての技術において、その成長膜は、図2に示すように、「鋸歯状」面または切子面の多い形態を示す(参考文献13~15参照)。図2は従来のa面GaN成長膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。このような表面構造が、基板または素子の層材料として使用するうえで許容可能な範囲にないことは明らかである。
【0015】
したがって、ホモエピタキシャル素子層の再成長基板として使用するのに好適な高品質のa面GaN厚膜を成長させる方法が、当該技術分野において必要とされている。より具体的には、極めて平坦な鏡面a面のGaN膜を成長させる方法が当該技術分野において必要とされている。本発明はこの要求に応えるものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基板上に平坦な無極性a面窒化ガリウム(GaN)膜を形成する方法を開示する。この方法は、(a)リアクタに基板を載置する工程と、(b)リアクタを排気するとともにリアクタに精製窒素(N2 )ガスを注入して満たし、内部の酸素濃度を低下させる工程と、(c)リアクタ内の全チャネルに水素(H2 )および窒素(N2 )の混合物を流すと共に、約1040℃の成長温度までリアクタを加熱する工程と、(d)リアクタ内のガス流に無水アンモニア(NH3 )を加えることによって基板を窒化する工程と、(e)リアクタの圧力をおよそ76Torrの所望の堆積圧力に低下させる工程と、(f)直接基板上でa面GaN膜の成長を開始するために、塩化水素(HCl)ガスをガリウム(Ga)ソースに流し始め、600℃を上回る温度でHClガスをGaと反応させ一塩化ガリウム(GaCl)を形成させる工程と、(g)少なくとも少量の水素(H2 )を含むキャリアガスを使用しGaClを基板に移送し、基板でGaClをアンモニア(NH3 )と反応させ、GaN膜を形成する工程と、(h)所望の成長時間が経過した後、HClガスを流すことを中断し、リアクタの圧力を大気圧に戻し、リアクタの温度を室温に下げ、リアクタの温度が低下しているあいだにGaN膜が分解しないようにガス流に無水アンモニア(NH3 )を含ませる工程を含む。
【0017】
以下、図面を参照する。類似部分には一貫して同じ参照番号を付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい実施の形態について添付の図面を参照して以下記載するが、図面は本記載の一部をなし、本発明を実施することのできる特定の実施形態を例示するために示されている。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、例示以外の実施の形態を使用することができ、構造を変化させることができることは明らかである。
【0019】
概要
本発明は、ハイドライド気相成長法(HVPE)を使用し、平坦な無極性a面窒化ガリウム(GaN)膜を成長させる。具体的には、本発明は、以下に示すいくつかの成長パラメータを組合せ使用することによって、この平坦な無極性a面窒化ガリウム(GaN)膜を得る。
【0020】
1.適切な基板、たとえば、これに限定されるものではないが、r面サファイア(A12 3 )基板を使用する。
【0021】
2.最終成長段階のキャリアガスとして少量の水素(H2 )をリアクタ中のガス流の一つ以上に使用する。
【0022】
3.膜堆積工程時にリアクタ圧を大気圧(760Torr)未満に低下させる。
【0023】
プロセス工程
図3は本発明の好ましい実施の形態によるプロセスの工程を示すフローチャートである。これらの工程は、従来の3ゾーン水平フロー式HVPEシステムを使用し、高品質の平坦な無極性a面GaN膜を得る典型的な成長手順を含む。
【0024】
ブロック300は、装置外洗浄を全くせずに基板をリアクタに載置する工程を表す。好ましい実施の形態では、基板はr面の{1-102}サファイア(A12 3 )基板である。なお、炭化ケイ素(SiC)のような別の材料も同じように使用することができる。
【0025】
ブロック302は、リアクタの加熱前に、リアクタを排気するとともに精製窒素(N2 )ガスをリアクタに注入し、内部の酸素および水蒸気の濃度を低下させる工程を表す。通常この工程をさらに繰り返し、システム内の酸素および水蒸気の含有量を低下させる。
【0026】
ブロック304は、システム内の全チャネルにH2 およびN2 の混合物を流すとともに、約1040℃の成長温度にリアクタを加熱する工程を表す。
【0027】
ブロック306は、リアクタが成長温度に達した後にサファイア基板を窒化する工程を表す。窒化工程は、リアクタ中のガス流に無水アンモニア(NH3 )を加え、サファイア基板の表面を窒化することを含む。基板を窒化する工程は、900℃を上回る温度にて実施される。
【0028】
ブロック308は、リアクタの圧力を所望の堆積圧力にまで減圧する工程を表す。好ましい実施の形態では、所望の堆積圧力は大気圧(760Torr)未満である。より具体的には、所望の堆積圧力は5~100Torrの範囲にある。実施の形態では、所望の堆積圧力をおよそ76Torrとしている。
【0029】
ブロック310は、低温バッファまたは核形成層を全く使用せずに、サファイア基板上で直接a面GaN膜の成長を開始させるために、ガリウム(Ga)ソースへ塩化水素(HCl)ガスを流し始める工程を表す。従来の金属ソースHVPEには、600℃を超える温度でHClガスを金属Gaと反応させるなど(しかしこれに限定されるものではない)ハロゲン化合物の装置内反応によって、一塩化ガリウム(GaCl)のような金属ハロゲン化物種を形成することが含まれている。
【0030】
ブロック312は、リアクタ中のガス流の一つ以上に少なくとも少量の水素(H2 )を含むキャリアガスによって基板にGaClを移送する工程を表す。キャリアガスはさらに窒素、ヘリウムまたはアルゴンを含んでもよい。基板への移送中、基板上、または排気流中のいずれかで、GaClがNH3 と反応しGaN膜を形成する。基板において反応が生じることで基板上でGaN膜が生成され、これによって結晶成長が起きる可能性がある。このプロセスの典型的なV/III比(GaClに対するNH3 のモル比)は、1~50である。なお、Gaソースの下流に補足のHClを注入するため、またはHClとGaソースとの反応が不完全であるため、NH3 /HCl比をV/III比に等しくする必要はない。
【0031】
ブロック314は、所望の成長時間が経過した後、HClガス流を中断し、リアクタ圧力を戻し、リアクタの温度を室温にまで低下させる工程を表す。この中断工程はさらに、リアクタの温度の低下中にGaN膜の分解を防ぐようにガス流にNH3 を含ませることを含む。リアクタ圧力を大気圧以下に低下させてもよく、たとえば5~760Torrの間で冷却を実施してもよい。
【0032】
このプロセスによるGaN膜の典型的な成長速度は毎時1から50μmの範囲にある。この成長速度は、ソースおよび基板の温度、システムへ流入する種々のガスの流量、リアクタの形状などを含むがこれらに限定されない、多くの成長パラメータに依存し、平坦なa面GaN膜が得られる合理的な幅の範囲内であれば成長速度は変化してもよい。上記のパラメータに対する好ましい値のほとんどは成長リアクタの形状に固有の値となる。
【0033】
上記のプロセス工程の「最終成長段階」の記載は、上記記載の条件を用い適切な期間処理をしてから成長段階を終えることによって以前なら粗い膜または鋸歯状膜であったものを平面化することができるとの観察に基づいている。成長の初期段階では、膜形態にかかわらず、名目上a面配向の材料を得られる成長パラメータであればいずれをも組込むことができる。
【0034】
好ましくは、上記のプロセス工程によって平坦な無極性a面窒化ガリウム(GaN)膜が作製される。さらに、この方法を使用して製造される素子には、レーザーダイオード、発光ダイオードおよびトランジスタが含まれる。
【0035】
実験結果
本発明者らによる実験によれば、上記のプロセスによって常に平坦な鏡面のa面GaN膜が得られる。図4は本発明に記載の技術を用いて成長させたa面GaN膜の断面のSEM画像である。図4に示されているように、上部側には極めて平坦な自由表面がある。(なお断面表面には筋も付いているが、これは人為的な切断によるものである。)
【0036】
図5(a)は、HVPEによって成長させた典型的なa面GaN膜のNomarski(商標)(ノマルスキ)型光学顕微鏡によるコントラスト像を示す。(11-20)GaN膜は、従来の透過型または反射型光学顕微鏡法によってその表面の詳細が多少明らかになっているが、鏡面であって光学上透明である。表面の特徴は、プロフィロメトリの測定によって示されるように、ピークから谷までの高さが500nmのオーダーで横の範囲が75+μmを超える「フロー」パターンが広範囲にわたってみられることである。光散乱および屈折率比によって、GaNのc軸にほぼ垂直に配向する表面下のひび割れを観察することができる。
【0037】
図5(b)は、このようなひび割れ二つを詳細に示す断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。このような内部ひび割れは、c面GaN膜(参考文献17参照)に見られるものと似ており、ほとんど例外なく成長中に自由表面へ達することはなかった。しかしながら、50+μm厚の膜にはひび割れが見られ、表面に伝搬していた。このようなひび割れは、粒子結合の結果であると思われる引張歪みによるプラスチック起伏に起因する(参考文献18参照)。ひび割れは、その後、局所的な横方向のオーバーグロースによって修復され、表面エネルギーが低下する。
【0038】
Digital Instruments D3100(デジタルインスツルメンツD3100)(商標)原子間力顕微鏡を使用し、原子間力顕微鏡法(AFM)によってタッピングモードでa面GaN表面上を観察した。図6は、a面GaN膜の典型的な原子間力顕微鏡写真を示す。試料面積2×2μmの局所的な2乗平均平方根(RMS)粗さは、典型的には<0.8nmであった。試料面積をさらに広くすると(10~20μm)、RMS粗さは2nm未満にとどまった。表面には、深さ3~7nmのナノメータースケールのピットが高密度に分布していた。貫通転位の終端が自由表面に出て表面を覆いつくすことによって、このようなピットが生じたと思われる。観察した表面のピット密度は、通常2×109 から9×109 cm-2の範囲にあった。さらにAFM画像には、GaNのc軸にほぼ垂直な向きの高さ約1nm以内の高い段が見られた。
【0039】
X線回折(XRD)および透過型電子顕微鏡法(TEM)による平面図によって、平坦なa面GaN膜の構造の特性を検討した。XRDは、レシービング・スリット・モードで作動する四軸型X線回折装置Philips MRD Pro(フィリップスMRDプロ)(商標)でCuKα線を使用して実施した。a-GaN膜のω-2θスキャンを行ったところ、r面サファイア(1-102),(2-204),(3-306)の反射および(11-20)GaN反射に対するピークを示した。GaN(0002)反射は観察されず、この技術の検出範囲内では、膜が一様にa面配向していたことがわかった。GaN[-1100]および[0001]方向が共平面にある形状のオンアクシス(11-20)反射のωロッキングカーブを測定した。このような形状の(11-20)反射の半値全幅(FWHM)は、ほとんどが1040~1045arcsecであった。散乱面に対して試料を傾け(斜め形状)、30°オフアクシス(10-10)反射を測定すると、約3000arcsecのFWHMが得られた。オンアクシスピーク幅は、MOCVDによる平坦なa面GaN成長膜(参考文献19参照)で観察されたものと同程度である一方、オフアクシスピーク幅はおよそ2倍であり、このことから、HVPE成長膜がよりはっきりとしたセル構造を有し、モザイク度が高いことが示唆される(参考文献20参照)。
【0040】
図7は、a面GaN膜の透過型電子顕微鏡写真の平面図を示す。図7(a)はg=0002の回折条件下での画像である。図から、GaN[0001]方向と平行なバーガースベクトル成分を有する貫通転位があることがわかるので、この転位はエッジ部の転位である。上記の試料のc成分転位密度は9×109cm-2から2×1010cm-2の範囲であり、MOCVDによるa面GaN成長膜のAFMピット密度測定およびTEMの結果ともよく合っていた(参考文献19参照)。g=1-100の回折条件下で得られた図7(b)のTEM画像をみると、約~4×105 cm-1の積層欠陥密度を示し、こちらも、MOCVDによる平坦なa面GaN成長膜で観察された3.8×105 cm-1という数値と同程度である(参考文献19参照)。このような基底面積層欠陥は、成長の初期段階中に窒素側露出(000-1)面が存在することに関係していると考えられる。g=1-100回折条件下で試料の傾斜を変更して得た別の画像をみると、バーガースベクトルb=1/3<1-100>を有する約~7×109 cm-2のショックレー部分転位のあることがわかる。
【0041】
参考文献
以下の参考文献を参照として本明細書中に組み込む。
<nplcit num="1"><text>T.Nishida and N.Kobayashi,Phys.Stat.Sol.(a),188(1),113(2001).</text></nplcit><nplcit num="2"><text>S.Nakamura,G.Fasol,and S.J.Pearton,The Blue Laser Diode.New York:Springer,2000.</text></nplcit><nplcit num="3"><text>L.F.Eastman and U.K.Mishra,IEEE Spectrum,39(5),28(2002).</text></nplcit><nplcit num="4"><text>T.Takeuchi,C.Wetzel,S.Yamaguchi,H.Sakai,H.Amano,I.Akasaki,Y.Kaneko,S.Nakagawa,Y.Yamaoka,and N.Yamada,Appl.Phys.Lett.73(12)1691(1998).</text></nplcit><nplcit num="5"><text>I.Jin Seo,H.Kollmer,J.Off,A.Sohmer,F.Scholz,and A.Hangleiter,Phys.Rev.B,57(16)R9435(1998).</text></nplcit><nplcit num="6"><text>R.Langer,J.Simon,V.Ortiz,N.T.Pelekanos,A.Barski,R.Andre,and M.Godlewski,Appl.Phys.Lett.,74(25)3827(1999).</text></nplcit><nplcit num="7"><text>P.Lefebvre,J.Allegre,B.Gil,H.Mathieu,N.Grandjean,M.Leroux,J.Massies,and P.Bigenwald,Phys.Rev.B,59(23)15363(1999).</text></nplcit><nplcit num="8"><text>P.Lefebvre,A.Morel,M.Gallart,T.Taliercio,J.Allegre,B.Gil,H.Mathieu,B.Damilano,N.Grandjean,and J.Massies,Appl.Phys.Lett.,78(9)1252(2001).</text></nplcit><nplcit num="9"><text>P.Waltereit,O.Brandt,A.Trampert,H.T.Grahn,J.Menninger,M.Ramsteiner,M.Reiche,and K.H.Ploog,Nature(London),406,865(2000).</text></nplcit><nplcit num="10"><text>M.D.Craven,P.Waltereit,F.Wu,J.S.Speck,and S.P.DenBaars,Accepted for Publication.</text></nplcit><nplcit num="11"><text>H.M.Ng,Appl.Phys.Lett.,80(23)4369(2002).</text></nplcit><nplcit num="12"><text>K.Motoki,T.Okahisa,N.Matsumoto,M.Matsushima,H.Kimura,H.Kasai,K.Takemoto,K.Uematsu,T.Hirano,M.Nakayama,S.Nakahata,M.Ueno,D.Hara,Y.Kumagai,A.Koukitu,and H.Seki,Jpn.J.Appl.Phys.Part 2,40(2B),L140(2001).</text></nplcit><nplcit num="13"><text>T.Paskova,P.P.Paskov,V.Darakchieva,S.Tungasmita,J.Birch,and B.Monemar,Phys.Stat.Sol.(a)183(1)197(2001).</text></nplcit><nplcit num="14"><text>A.Shintani and S.Minagawa,J.Electrochem.Soc.123(10)1575(1976).</text></nplcit><nplcit num="15"><text>B.Monemar,O.Lagerstedt,and H.P.Gislason,J.Appl.Phys.51(1)625(1980).</text></nplcit><nplcit num="16"><text>M.Sano and M.Aoki,Jpn.J.Appl.Phys.15(10)1943(1976).</text></nplcit><nplcit num="17"><text>E.V.Etzkorn and D.R.Clarke,J.Appl.Phys.,82(2)1025(2001).</text></nplcit><nplcit num="18"><text>T.Bo(ウムラウト付き)ttcher,S.Einfeldt,S.Figge,R.Chierchia,H.Heinke,D.Hommel,and J.S.Speck,Appl.Phys.Lett.,78(14)1976(2001).</text></nplcit><nplcit num="19"><text>M.D.Craven,S.H.Lim,F.Wu,J.S.Speck,and S.P.DenBaars,Appl.Phys.Lett.,81(3)469(2002).</text></nplcit><nplcit num="20"><text>B.Heying,X.H.Wu,A.S.Keller,Y.Li,D.Kapolnek,B.P.Keller,S.P.DenBaars,and J.S.Speck,Appl.Phys.Lett.,68,643(1996).</text></nplcit>
【0042】
結論
本発明の好ましい実施の形態の説明をまとめる。以下、本発明を実施するためのいくつかの代替の実施の形態について記載する。
【0043】
好ましい実施の形態では、a面GaNをサファイア基板から直接成長させる直接成長プロセスについて記載している。本発明を実施するとき、a面炭化ケイ素、もしくは特定の没食子酸塩またはアルミン酸塩のセラミック結晶が挙げられるが、これらに限定されない、他の好適な基板材料を使用してもよい。
【0044】
MOCVD、MBEまたはHVPEのような別の成長技術によって適切な基板にあらかじめ薄いGaN「テンプレート」層を堆積し、この層を用いることによってc面GaNのHVPE成長を実施することが多い。本発明を実施するうえで実行可能な技術として、HVPE再成長を順次実施するためにテンプレートを用いることを確立させた。
本発明の実施においては、基板やテンプレートが均一な平坦性を有さなくても良いことに注意されたい。基板やテンプレートには、その表面の選択された領域にa面GaN膜の成長を促すパターニングを施された表面を含んでも良い。
【0045】
本発明は、自立a面GaN膜または基板を製造するために使用することができる。本発明では、このような自立GaN膜または基板を「テンプレート」層として使用することが望ましい場合もある。
【0046】
好ましい実施の形態では、ガリウム(Ga)金属と塩化水素(HCl)ガスとの間の反応をIII 族ソースとして利用するHVPEに基づく成長プロセスについて記載している。III 族の別のソースとして、これに限定されるものではないが三塩化ガリウム(GaCl3 )を用い、または、別の反応ガスとして、これに限定されるものではないが臭化水素(HBr)を用い、方法は基本的に変更せず本発明を実施することができる。
【0047】
種々の成長技術によって低温で、または成長温度もしくはそれ以上の温度で堆積した核形成層を利用し、本発明を使用してHVPEによる再成長を順次行ってもよい。
【0048】
当業者は、加熱時のキャリアガス組成物を変更したり、上記記載の窒化工程を変更/省略したりするほうがいいと考える場合もある。このような変更は、本明細書中に記載の本発明の実施にあたって基本的に影響を及ぼすものではない。
【0049】
リアクタの形状および設計は、本発明の実施に影響を及ぼす場合もある。一般に、最適な流量はリアクタの設計に非常に左右されるので、本明細書では種々の成分ガスの正確な流量を省略する。
【0050】
好ましい実施の形態に使用される典型的な成長速度は1~50μm/時間である。しかしながら、本発明者らは、200μm/時間を上回るa面GaN成長速度が利用できることを実証した。好ましい範囲から外れる成長速度を使用しても、基本的に本発明の実施の変更にはあたらない。
【0051】
本発明を実施するための重要なパラメータは、成長圧力、キャリアガス流中の水素の存在、800~1300℃の範囲の成長温度、基板上のガス速度(これもまたリアクタに左右される)および適切な基板の使用である。このほかの要因として、以下に限定されるものではないが、V/III 比、正確なキャリアガス組成、および前駆物質の分圧が挙げられ、このような要因を大幅に変更しても、所望の平坦なa面GaN膜を得ることができる。
【0052】
最後に、本明細書に記載のプロセスを拡張し、複数のウェハを成長させることもできる。特に、多数のウェハ上に膜を同時に成長させるときに本発明を実施することができる。
【0053】
要約すれば、本発明は、キャリアガス流中の水素を利用する低圧成長を適用すれば、HVPEによって完全に平坦なa面GaN膜を成長させることができることを記載するものである。これによって得られる膜は、種々の成長技術によって素子を順次再成長させるのに適している。
【0054】
以上、本発明の一つ以上の実施の形態を例示および説明のために示した。開示の形態そのものによって本発明を包括または限定することを意図するものではない。上記の教示に鑑みて、多くの変更および変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細な記載によってではなく、添付の請求項によって限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一般的な六方晶系構造の概略図であり、図中、重要な平面およびその軸を特定して示す。
【図2】鋸歯形状を示す従来のa面GaN成長膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態によるプロセスの工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明に記載の技術を使用して成長させたa面窒化ガリウム膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図5】ハイドライド気相成長法(HVPE)によって成長させた典型的なa面GaN膜の顕微鏡写真であり、図5(a)は光学顕微鏡によるコントラスト像、図5(b)は表面下の内部ひび割れ断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図6】a面GaN膜の典型的な原子間力顕微鏡写真(AFM)である。
【図7】a面GaN膜の透過電子顕微鏡写真(TEM)の平面図であり、図7(a)はその第1例、図7(b)はその第2例を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6