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明細書 :n型トランジスタ、n型トランジスタセンサ及びn型トランジスタ用チャネルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4891550号 (P4891550)
公開番号 特開2006-222279 (P2006-222279A)
登録日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
発明の名称または考案の名称 n型トランジスタ、n型トランジスタセンサ及びn型トランジスタ用チャネルの製造方法
国際特許分類 H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
H01L  29/06        (2006.01)
G01N  27/414       (2006.01)
H01L  21/318       (2006.01)
FI H01L 29/78 618B
H01L 29/78 617V
H01L 29/78 619A
H01L 29/78 625
H01L 29/28 250E
H01L 29/06 601N
G01N 27/30 301V
G01N 27/30 301W
G01N 27/30 301K
H01L 21/318 B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 28
出願番号 特願2005-034476 (P2005-034476)
出願日 平成17年2月10日(2005.2.10)
審査請求日 平成19年10月15日(2007.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松本 和彦
【氏名】小島 厚彦
【氏名】長尾 哲
個別代理人の代理人 【識別番号】100092978、【弁理士】、【氏名又は名称】真田 有
審査官 【審査官】棚田 一也
参考文献・文献 特開2003-017508(JP,A)
特開2004-064059(JP,A)
調査した分野 H01L 29/786
G01N 27/414
H01L 21/318
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 51/05
特許請求の範囲 【請求項1】
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
該ソース電極及び該ドレイン電極の間に設けられたカーボンナノチューブで形成されたn型のチャネルと、
該チャネル上に熱CVD法により直接形成された窒素化合物の膜とを備え
該n型チャネルが窒素化合物膜形成時にp型からn型に転換されたチャネルである
ことを特徴とする、n型トランジスタ。
【請求項2】
該窒素化合物膜形成時の温度が、温度200℃以上1600℃以下である
ことを特徴とする、請求項1記載のn型トランジスタ。
【請求項3】
該窒素化合物膜形成時の酸素濃度が、1体積%以下である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のn型トランジスタ。
【請求項4】
該窒素化合物が、窒化シリコンである
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のn型トランジスタ。
【請求項5】
該ゲート電極が、該窒素化合物の膜を介して該チューブ上に形成されたトップゲートである
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のn型トランジスタ。
【請求項6】
ソース電極と、
ドレイン電極と、
該ソース電極及び該ドレイン電極の間に設けられたカーボンナノチューブで形成されたn型のチャネルと、
該チャネル上に熱CVD法により直接形成された窒素化合物の膜とを備え、
該チャネルが窒素化合物膜形成時にp型からn型に転換されたチャネルであり、
検出対象を該チャネルを流れる電流の変化として検知する
ことを特徴とする、n型トランジスタセンサ。
【請求項7】
該窒素化合物膜形成時の温度が、温度200℃以上1600℃以下である
ことを特徴とする、請求項6記載のn型トランジスタ。
【請求項8】
該窒素化合物膜形成時の酸素濃度が、1体積%以下である
ことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載のn型トランジスタ。
【請求項9】
p型半導体的な特性を示すカーボンナノチューブに、酸素濃度1体積%以下、温度200℃以上1600℃以下の条件下、窒素を含有する原料化合物と、窒素とともに窒素化合物を構成する原子を含有する原料化合物とからなる窒素化合物の原料ガスの存在下において、熱CVD法により窒素化合物の膜を直接に形成させる工程を有する
ことを特徴とする、n型トランジスタ用チャネルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブ状構造体をn型のチャネルとして備えたn型トランジスタ及びn型トランジスタセンサ、並びに、n型トランジスタ用チャネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタは、ゲートに入力される電圧信号を、ソース電極あるいはドレイン電極から出力される電流信号に変換する素子である。ソース電極とドレイン電極との間に電圧を加えると、両者の間に形成されたチャネルに存在する荷電粒子がソース電極とドレイン電極との間を電界方向に沿って移動し、ソース電極あるいはドレイン電極から電流信号として出力される。この際、出力される電流信号の強さは荷電粒子の密度に比例する。したがって、絶縁体を介してチャネルの上方、側面、あるいは下方などに設置したゲートに電圧を加えると、チャネルに存在する荷電粒子の密度が変化するため、これを利用して、ゲート電圧を変化させることにより電流信号を変化させることができる。
【0003】
また、近年、高密度集積回路(LSI)等の更なる高集積化のために、ナノスケールのナノチューブ状構造体を用いたトランジスタが注目されている。ナノチューブ状構造体の中でも特にカーボンナノチューブを用いた技術に注目すると、一般に、カーボンナノチューブをチャネルに用いたトランジスタは、大気中ではp型半導体的な特性を示す。このp型半導体的な特性は、カーボンナノチューブ或いはカーボンナノチューブとソース電極又はドレイン電極との界面付近に吸着した酸素によるものと考えられている。詳しくは、前者は酸素によりカーボンナノチューブへホール(正孔)がドーピングされるため、また、後者はソース電極あるいはドレイン電極とカーボンナノチューブとのショットキーバリアが酸素の吸着により変調されるためと考えられている。
【0004】
将来的なデバイス応用を考える上で、大気中で安定したn型半導体的な特性を示すカーボンナノチューブトランジスタを作製することが強く望まれている。そこで現在、n型のカーボンナノチューブトランジスタを作製するための技術が種々提案されている。その例を挙げると、カリウムや有機分子などをカーボンナノチューブにドーピングする方法、有機固体電解質をソース電極、ドレイン電極及びカーボンナノチューブチャネル上にコーティングする方法、真空中や窒素雰囲気あるいは水素雰囲気中で200℃以上の温度で熱処理を行なうことで酸素を脱離させ、その後、酸化シリコンや酸化ジルコニウム等でキャップする方法などが挙げられる(非特許文献1~7)。
【0005】

【非特許文献1】S. J. Wind, J. Appenzeller, R. Martel, V. Derycke and P. Avouris: Appl. Phys. Lett. 80 (2002) 3817-3819.
【非特許文献2】S. Heinze, J. Tersoff, R. Martel, V. Derycke, J. Appenzeller and P. Avouris: Phys. Rev. Lett. 89 (2002) 106801-1-4.
【非特許文献3】V. Derycke, R. Martel, J. Appenzeller and P. Avouris: Appl. Phys. Lett. 80(2002)2773-2775.
【非特許文献4】J. Kong and H. Dai: J. Phys. Chem. B 105(2001)2890-2893
【非特許文献5】C. Lu, Q. Fu, S. Huang and J. Lie: Nano Lett. 4 (2004) 623-627.
【非特許文献6】A. Bachtold, P. Hadley, T. Nakanishi and C. Dekker: Science 294 (2001)1317-1320.
【非特許文献7】A. Javey, H. Kim, M. Brink, Q. Wang, A. Ural, J. Guo, P. Mcintyre, P. Mceuen, M. Lundstrom and H. Dai: Nature Mater. 1 (2002) 241-246.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1~7に記載のような、従来のカーボンナノチューブをチャネルに用いたn型のトランジスタの性能は未だ十分ではなく、更なる改良が望まれていた。例えば、カリウムをカーボンナノチューブにドーピングする場合、酸化シリコン等へのカリウムによる汚染の虞がある。また、有機分子をドーピングしたカーボンナノチューブは耐熱性が低下する場合があると考えられる。
さらに、有機電解質をカーボンナノチューブにコーティングした場合、固体電界質は、耐熱性が低く、トランジスタの耐熱性が十分でなくなる虞がある。
また、熱処理をしてからキャップする場合には、熱処理の手間がかかる。更に、酸化シリコンを成膜する場合には、低温化のためにプラズマ化学気相堆積法(p-CVD)を用いる場合が一般的であるが、プラズマと酸素とによりカーボンナノチューブがダメージを受ける場合がある。
【0007】
また、チャネルとして他のナノチューブ状構造体を用いた場合も、同様にn型のトランジスタの性能は十分ではなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、ナノチューブ状構造体をチャネルに用いたトランジスタにおいて、従来とは異なる新たなn型トランジスタ及びそれを用いたn型トランジスタセンサ、並びに、n型トランジスタ用チャネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、p型の半導体特性を示すナノチューブ状構造体をチャネルに用いたトランジスタに、所定の温度条件下で窒素化合物の膜を形成させることにより、n型のトランジスタを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、該ソース電極及び該ドレイン電極の間に設けられたカーボンナノチューブで形成されたn型のチャネルと、該チャネル上に熱CVD法により直接形成された窒素化合物の膜とを備え、該n型チャネルが窒素化合物膜形成時にp型からn型に転換されたチャネルであることを特徴とする、n型トランジスタに存する(請求項1)。これにより、カーボンナノチューブをチャネルに用いた新たなn型トランジスタを得ることができる。
【0010】
このとき、該窒素化合物膜形成時の温度が、温度200℃以上1600℃以下であることが好ましい(請求項2)。
また、該窒素化合物膜形成時の酸素濃度が、1体積%以下であることが好ましい(請求項3)。
また、該窒素化合物は、窒化シリコンであるであることが好ましい(請求項)。
さらに、該ゲート電極は、該窒素化合物の膜を介して該チューブ上に形成されたトップゲートであることが好ましい(請求項)。
【0011】
さらに、本発明の別の要旨は、ソース電極と、ドレイン電極と、該ソース電極及び該ドレイン電極の間に設けられたカーボンナノチューブで形成されたn型のチャネルと、該チャネル上に熱CVD法により直接形成された窒素化合物の膜とを備え、該チャネルが窒素化合物膜形成時にp型からn型に転換されたチャネルであり、検出対象を該チャネルを流れる電流の変化として検知することを特徴とする、n型トランジスタセンサに存する(請求項)。これにより、ナノチューブ状構造体をn型チャネルとして用いた高感度なトランジスタセンサを得ることができる。
このとき、該窒素化合物膜形成時の温度が、温度200℃以上1600℃以下であることが好ましい(請求項7)。
また、該窒素化合物膜形成時の酸素濃度が、1体積%以下であることが好ましい(請求項8)。
【0012】
また、本発明の更に別の要旨は、p型半導体的な特性を示すカーボンナノチューブに、酸素濃度1%以下、温度200℃以上1600℃以下の条件下、窒素を含有する原料化合物と、窒素とともに窒素化合物を構成する原子を含有する原料化合物とからなる窒素化合物の原料ガスの存在下において、熱CVD法により窒素化合物の膜を直接に形成させる工程を有することを特徴とするn型トランジスタ用チャネルの製造方法に存する(請求項)。これにより、カーボンナノチューブをチャネルに用いた新たなn型トランジスタ用チャネルを、従来よりも簡単に得ることができる。また、これにより、カーボンナノチューブをチャネルに用いた新たなn型トランジスタも、従来よりも簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のn型トランジスタ並びにn型トランジスタの製造方法によれば、従来とは異なる新たなn型トランジスタを得ることができる。
また、本発明のn型トランジスタセンサによれば、ナノチューブ状構造体をn型チャネルとして用いた高感度なトランジスタセンサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について実施の形態を示して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に組み合わせて実施することができる。
【0015】
[I.n型トランジスタ]
図1は、本発明のn型トランジスタの一実施形態について、その概要を模式的に表わす断面図である。
図1に示すように、本実施形態のn型トランジスタ1は、ソース電極2と、ドレイン電極3と、ゲート電極4と、ナノチューブ状構造体で形成されたn型の半導体的特性を示すチャネル(以下適宜、「n型チャネル」という)5と、n型チャネル5上に直接形成された窒素化合物の膜(以下適宜、「窒素化合物膜」という)6とを備える。また、通常、これらは基板7に設けられる。
【0016】
(1.基板)
基板7は、絶縁性を有する基板であれば任意の素材で形成された基板を用いることができるが、通常は、絶縁性基板、又は、絶縁された半導体基板を用いる。なお、本明細書において絶縁性という場合には、特に断らない限り電気絶縁性のことを指し、絶縁体という場合には、特に断らない限り電気絶縁体の事を指す。
【0017】
絶縁性基板は、絶縁体で形成された基板である。絶縁性基板を形成する絶縁体の具体例としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウム、アクリル樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)等が挙げられる。なお、絶縁体は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、半導体基板は、半導体で形成された基板である。半導体基板を形成する半導体の具体例としては、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、酸化亜鉛、インジウム燐、炭化シリコン等が挙げられる。なお、半導体は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0018】
さらに、半導体基板を絶縁する方法は任意であるが、通常は、絶縁体で被覆して絶縁することが望ましい。半導体基板の上に絶縁膜を形成して絶縁する場合、被覆に用いる絶縁体の具体例としては、上記の絶縁性基板を形成する絶縁体と同様のものが挙げられる。
また、基板7として絶縁した半導体基板を用いる場合には、この半導体基板は、ゲート電極(バックゲート)としても機能させることも可能である。ただし、絶縁した半導体基板をゲート電極に用いる場合、その基板7は電気抵抗が小さいことが望ましく、例えば、高濃度にドナーあるいはアクセプタが添加され、抵抗率が低く金属的伝導性を示す半導体を用いた半導体基板が望ましい。
さらに、基板7の形状は任意であるが、通常は平板状に形成する。また、その寸法についても特に制限は無いが、基板7の機械的強度を保つため100μm以上であることが好ましい。なお、図1では絶縁性基板を基板1として用いる例を示している。
【0019】
(2.ソース電極、ドレイン電極)
ソース電極2は、本実施形態のn型トランジスタ1のキャリアを供給できる電極であれば他に制限は無い。また、ドレイン電極3は、本実施形態のn型トランジスタ1のキャリアを受け取ることができる電極であれば、他に制限は無い。よって、ソース電極2及びドレイン電極3は公知のものを任意に用いることができる。ただし、本実施形態のn型トランジスタ1を、後述する本発明のn型トランジスタ用チャネルの製造方法を用い、窒素化合物膜形成工程を経て製造する場合には、当該製造方法での窒素化合物膜6の形成時の温度条件よりも高い耐熱性を備えるようにすることが好ましい。また、ソース電極2及びドレイン電極3は、通常、同一の基板7上に設けられる。
【0020】
また、ソース電極2及びドレイン電極3はそれぞれ任意の導体で形成することができ、具体例としては、金、白金、チタン、クロム、炭素、炭化チタン、タングステン、モリブデン、クロムケイ化タングステン、窒化タングステン、多結晶シリコンなどが挙げられる。また、ソース電極2、ドレイン電極3を形成する導体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、ソース電極2及びドレイン電極3の寸法、形状、形成方法も任意である。ただし、本実施形態のn型トランジスタ1の性能を向上させるためには、先端(チャネルに接続された部分)の形状が急峻な形状であることが望ましい。
【0021】
(3.ゲート電極)
ゲート電極4は、本実施形態のn型トランジスタ1のn型チャネル5にゲート電圧を印加することができ、ソース電極2、ドレイン電極3及びn型チャネル5と電気的に絶縁されているものであれば他に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。
したがって、ゲート電極4を構成する導体は任意であり、例えば、金、白金、チタン、炭化チタン、タングステン、ケイ化タングステン、窒化タングステン、アルミニウム、モリブデン、クロム、多結晶シリコンなどで形成することができる。なお、ゲート電極4の材料である導体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0022】
また、ゲート電極4の形状も任意である。
さらに、ゲート電極4を形成する位置も任意である。ただし、通常は、ゲート電極4は、対応するソース電極2及びドレイン電極3が設置された基板7に対し、n型チャネル5と反対の面に固定されたゲート電極4であるバックゲート、n型チャネル5と同一の面でn型チャネル5の近傍に形成されたゲート電極7であるサイドゲート、並びに、窒素化合物膜6を介してn型チャネル5上に形成されたトップゲートのいずれかとして形成される。
【0023】
なかでも、ゲート電極4はトップゲートとして形成することが好ましい。ナノチューブ状構造体をn型チャネル5として用いたn型トランジスタは、製造プロセスが容易であることから、通常は、ゲート電極4として基板7裏面からゲート電圧を印加するバックゲート型が主流である。しかし、バックゲート型では、同一基板7上に2以上のn型トランジスタ1を形成した場合に基板7上の全てのn型トランジスタに同時にゲート電圧を印加してしまう。このことから、将来的な集積化等を考える上では、n型トランジスタ1のn型チャネル5の一つ一つに電圧を印加できるトップゲート型のn型トランジスタが望まれるためである。
【0024】
また、本実施形態のn型トランジスタ1においては、ゲート電極4をトップゲートとして形成することにより、本実施形態のn型トランジスタ1をセンサに用いた場合のセンシング能力を向上させることができる点からも、ゲート電極4はトップゲートとして形成することが好ましい。なお、上記のセンシング能力の向上は、絶縁膜を薄くし、また、絶縁膜として高誘電率の膜を用いることによって、相互コンダクタンス(ゲート電圧に対するドレイン電流の変化率)が向上し、ゲート絶縁膜表面での電荷密度による電位の変化を高感度に検出できるようになったために得られるものと推察される。図1においても、ゲート電極4はトップゲートとして構成されているものとする。
【0025】
ただし、本実施形態のn型トランジスタ1を、例えばイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)などのセンサとして用いる場合は、通常、n型トランジスタ1にはゲート電極4を設けず絶縁膜(例えば、窒素化合物膜6など)に検体液を直接接触させ、参照電極(図示省略)を用いて検体液を介してn型チャネル5に電圧を印加するようにする。金属のように自由電子密度が大きいもので形成した部材(ここでは、ゲート電極4)が検体に接触すると、センシング能力を十分に発揮できなくなる虞があるためである。
【0026】
また、ゲート電極4の形成は、窒素化合物膜6を形成する前後のどちらで行なってもよいが、ゲート電極4をトップゲート又はバックゲートとして形成する場合、通常は、n型チャネル5及び窒素化合物膜6の形成後にゲート電極形成を行なうことが好ましい。一方、ゲート電極4をサイドゲートとして形成する場合、通常は、チャネル(p型、n型とも含む)5及び窒素化合物膜6の形成前にゲート電極形成を行なうことが好ましい。これらは、ゲート電極4の形成を簡単に行なうためである。
【0027】
さらに、ゲート電極4の寸法および形状は任意である。ただし、ゲート電極4はできるだけn型チャネル5に近い位置に設置することが好ましい。
また、ゲート電極4は、1個のみを単独で設けても良く、2個以上設けてもよい。したがって、例えばゲート電極4として、トップゲート、サイドゲート及びバックゲートのうちの2個以上を組み合わせて用いることも可能である。
さらに、ゲート電極4の形成方法も任意であるが、通常は、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより形成する。
【0028】
(4.n型チャネル)
一般に、トランジスタにおいて、チャネルは、ソース電極2及びドレイン電極3の間に設けられ、ソース電極2及びドレイン電極3の間の電流の通路となりうるようにものである。本実施形態のn型トランジスタ1においては、n型チャネル5として、その半導体特性がn型を示すナノチューブ状構造体を用いる。ここで、ナノチューブ状構造体とは、ナノスケールのチューブ状の構造体のことを言い、通常、その長手方向に直交する断面の直径が0.4nm以上50nm以下のものをいう。
【0029】
ナノチューブ状構造体は電荷輸送体として用いることができ、直径が数ナノメートルの一次元量子細線構造を有するため、これをn型トランジスタ1のn型チャネル5に用いた場合には、従来のトランジスタに比べてそのゲート容量が著しく低減する。したがって、後述する本発明のn型トランジスタセンサなどのセンサに本実施形態のn型トランジスタ1を適用した場合、特定物質及び検出対象物質の間の相互作用により生じるゲート電圧の変化は極めて大きくなり、n型チャネル5に存在する荷電粒子の密度の変化は著しく大きくなる。
【0030】
ナノチューブ状構造体の具体例としては、カーボンナノチューブ、ボロンナイトライドナノチューブ、チタニアナノチューブ等が挙げられる。従来の技術では、半導体微細加工技術を用いても、10nm級のチャネルの形成は困難であったが、これらのナノチューブ状構造体を用いることにより、従来よりも微細なn型チャネル5を形成することができる。
また、ナノチューブ状構造体の具体的な形状に特に制限は無いが、例えば、構造体の長手方向の長さと、これに垂直な方向のうち最も長い一方向の長さとの比が10以上10000以下の範囲にある形状が挙げられる。また、ロッド状(断面形状が略円形)、リボン状(断面形状が扁平な略方形)等の各形状を含む。
【0031】
さらに、n型チャネル5は、室温においてソース電極2及びドレイン電極3の間に弛んだ状態で設けられていることが好ましい。これにより、温度変化によってn型チャネル5が破損する可能性を小さくすることができる。
また、n型チャネル5の数は任意であり、1本でも、2本以上であってもよい。さらに、n型チャネル5と組み合わせて、p型チャネルも用いるようにしても良い。
【0032】
また、本実施形態のn型トランジスタ1においては、n型チャネル5はn型の半導体的特性を示す。ここで、チャネル5がn型の半導体的特性を示すということは、室温大気中でゲート電圧を-5Vから+5Vまでスイープさせながら印加し、ソース電極2とドレイン電極3と間にドレイン電圧を0.1V印加した時にチャネル5に流れるドレイン電流がゲート電圧の増加に伴い増加するか減少するかの判定を行なうことにより確認することができる。具体的には、上記操作の結果、ドレイン電流が増加すればn型の半導体的特性、減少すればp型の半導体的特性を当該チャネル5が示しているものと確認できる。
【0033】
n型の半導体的特性を示すn型チャネル5を備えることにより、本実施形態のn型トランジスタ1は、p型の半導体特性を示すチャネルを用いたp型トランジスタと組み合わせて相補型回路を作製できる。この相補型回路はエネルギー効率がよく、低消費電力で集積化には欠かせない回路である。また、p-n接合(ダイオード)を作製することもできるようになる。
【0034】
ところで、一般に、チャネル(n型チャネル5を含む)の構成によって、トランジスタは電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとに分けられる。両者の違いは、チャネルが量子ドット構造を有しているかに応じて区別され、チャネルが量子ドット構造を有していないトランジスタは電界効果トランジスタとなり、チャネルが量子ドット構造を有しているトランジスタは単一電子トランジスタとなる。したがって、n型チャネル5を形成する場合には、本実施形態のn型トランジスタ1を電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとのいずれにするかに応じて、形成するn型チャネル5を選択することが好ましい。
【0035】
以下、電界効果トランジスタのチャネル(以下適宜、「FETチャネル」という)と、単一電子トランジスタのチャネル(以下適宜、「SETチャネル」という)とについて、それぞれ説明する。なお、FETチャネルとSETチャネルとを区別しないで指す場合、単に「チャネル」という。また、上述のように電界効果トランジスタと単一電子トランジスタとはチャネルによって区別することができるため、FETチャネルを有するトランジスタは電界効果トランジスタであり、SETチャネルを有するトランジスタは単一電子トランジスタと認識すべきである。
【0036】
FETチャネルは、電界効果トランジスタにおいて、電流の通路として機能することになる。
なお、ナノチューブ状構造体は、そのカイラリティに応じて半導体的な電気的性質及び金属的な電気的性質の両方を示すが、本実施形態のn型トランジスタのn型チャネルをFETチャネルにする場合、ナノチューブ状構造体は、その電気的性質として半導体的性質を有することがより望ましい。なお、ナノチューブ状構造体が金属的か半導体的かを確認する手法の例としては、ラマン分光法でカーボンナノチューブのカイラリティを決定することにより確認する手法や、走査トンネル顕微鏡(STM)分光法を用いてカーボンナノチューブの電子状態密度を測定することにより確認する手法が挙げられる。
【0037】
一方、SETチャネルもFETチャネルと同様、単一電子トランジスタにおいて電流の通路として機能することになる。
ただし、FETチャネルと異なり、SETチャネルは量子ドット構造を有する。したがって、SETチャネルは量子ドット構造を有する物質で形成することになる。このため、ナノチューブ状構造体の中でも、量子ドット構造を有するナノチューブ状構造体でSETチャネルを形成する。その具体例を挙げると、欠陥を導入したカーボンナノチューブをSETチャネルとして用いることができる。詳しくは、欠陥と欠陥との間に通常0.1nm以上50nm以下の量子ドット構造を有するカーボンナノチューブをSETチャネルとして用いることができる。
【0038】
前記の量子ドット構造を有するカーボンナノチューブに制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、欠陥を有さないカーボンナノチューブに、水素、酸素、アルゴンなどの雰囲気ガス中での加熱、あるいは酸溶液等中での煮沸などの化学的処理を施すことによって欠陥を導入して作製したものなどを用いることができる。
【0039】
ナノチューブ状構造体に欠陥を導入することにより、ナノチューブ状構造体内に欠陥と欠陥との間に領域が数ナノメートルの大きさの量子ドット構造が形成され、さらにゲート容量は低減する。量子ドット構造を有するナノチューブ状構造体においては、量子ドット構造内への電子の流入が制限されるクーロンブロッケイド現象が生じるため、そのようなナノチューブ状構造をn型チャネルに用いれば単一電子トランジスタが実現される。
【0040】
また、SETチャネルがFETチャネルと異なるもう一つの点としては、ナノチューブ状構造体をSETチャネルとして用いる場合、それらは電気的特性として金属的性質を有することが好ましい。なお、ナノチューブ状構造体が金属的か半導体的かを確認する手法の例としては、FETチャネルの説明において上述したものと同様の手法を用いることができる。
【0041】
(5.窒素化合物膜)
窒素化合物膜6は、n型チャネル5上に直接形成された窒素化合物の膜である。
窒素化合物膜6を形成する窒素化合物は窒素を含有する絶縁性の化合物であれば他に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、窒化ボロン、窒化アルミニウム、窒化シリコンを用いることができる。なかでも、窒化シリコンが好ましい。なお、窒素化合物は1種を単独で用いても良い、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0042】
さらに、窒素化合物膜6は、n型トランジスタ1の高性能化の観点からは、可能な限り比誘電率が高い材料で形成されることが好ましい。具体的には、比誘電率が通常3以上、好ましくは7以上であることが望ましい。これにより、窒素化合物膜6を絶縁層として機能させることが可能となる。
【0043】
また、窒素化合物膜6の厚みに特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、窒素化合物膜6は、n型トランジスタ1の高性能化のためには、チャネル上の窒素化合物膜は、リーク電流が問題にならない範囲でなるべく薄く形成することが望ましい。ただし、あまり薄すぎるとトンネル電流等によるリーク電流が著しく増大する虞があるので、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上とすることが望ましい。
【0044】
さらに、窒素化合物膜6は、他の膜を介さずに直接n型チャネル5表面に形成されるようにする。この際、n型チャネル5表面の少なくとも一部に直接形成することができればよいが、n型チャネル5表面全体に直接、窒素化合物膜6を形成することがより好ましい。これにより、n型チャネル5を酸素から保護され安定したn型のチャネルにすることができる。また、窒素化合物膜6は、ソース電極2やドレイン電極3の絶縁膜として、これらの両電極の表面の一部又は全部にも形成するようにしてもよい。
【0045】
また、窒素化合物膜6には、窒素化合物以外の成分が含有されていても良い。これらの他の成分としては、例えば、炭素、水素、アンモニア、塩素、酸素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。これらが窒素化合物膜6に含有されていることにより、窒素化合物膜6の誘電率の制御が可能となるという利点がある。ただし、窒素化合物膜6は主に窒素化合物により形成されていることが好ましく、具体的には、窒素化合物膜6の通常50原子%以上、好ましくは80原子%以上、より好ましくは90原子%以上が窒素化合物により形成されるようにすることが望ましい。
【0046】
さらに、窒素化合物膜6は絶縁性を備えているため絶縁膜として用いることができ、これにより、n型チャネル5がトップゲート4や配線等に接触して短絡が生じることを防止することができる。
なお、窒素化合物膜6は、n型チャネル5表面のみならず、基板7、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極4の表面などに対しても、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意に形成するようにしてもよい。
【0047】
(6.その他の部材)
本実施形態のn型トランジスタ1には、上記のソース電極2、ドレイン電極3、ゲート電極4、n型チャネル5及び窒素化合物膜6以外にも、他の部材、膜などを設けるようにしても良い。
例えば、基板7の表面や、窒素化合物膜6の表面に、その他の絶縁膜を形成するようにしても良い。これらの絶縁膜は、チャネル5や各電極2,3,4などを保護したり、チャネル5により確実に電流を流れるようにしたりするためのものである。このような絶縁膜は絶縁性の任意の材料で形成することができるが、例えば、フォトレジスト(感光性樹脂)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、テフロン(登録商標)などの高分子材料、アミノプロピルエトキシシランなどの自己組織化膜、PER-フルオロポリエーテル、フォンブリン(商品名)などのルブリカント、フラーレン類化合物、あるいは酸化シリコン、弗化ケイ酸塩ガラス、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)、MLQ(Methyl Lisesquioxane)、多孔質シリカ、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、弗化カルシウム、ダイヤモンド薄膜などの無機物質を用いることができる。また、これらは1種を単独で用いても良く、また、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0048】
(7.効果)
本実施形態のn型トランジスタ1によれば、ナノチューブ状構造体をn型チャネル5に用いた新たなn型トランジスタを提供することができる。
また、本実施形態のn型トランジスタ1は、空気中で安定であるため、経時的に空気中の酸素によってn型チャネル5がp型の半導体的特性を示すようになることを抑制することができる。なお、ここで大気中で安定というのは、温度26℃、相対湿度26%の大気中に、窒素化合物膜6の形成後、通常1週間以上、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは1年以上、さらに好ましくは10年以上放置した後に、バックゲートを作製し、その半導体特性を評価してもn型の半導体的特性を示すことをいう。
【0049】
さらに、本実施形態のn型トランジスタは、従来よりも耐熱性に優れている。従来、有機分子や固体電解質を用いてn型トランジスタを製造していた場合には、有機分子や固体電解質は耐熱性が十分でないためn型トランジスタも十分な耐熱性を備えていなかった。しかし、本実施形態のn型トランジスタ1は、そのn型チャネル表面を覆う窒化シリコンなどの窒素化合物が耐熱性に優れるため、例えば1200℃程度までの優れた耐熱性を発揮することができるのである。
【0050】
また、本実施形態のn型トランジスタ1においては、従来用いられてきたような酸素を含有する保護膜を用いず、窒素化合物からなる窒素化合物膜6を用いてn型チャネル5を保護するようにしているため、種々の利点を得ることも可能である。
例えば、窒素化合物膜6中に酸素が存在しない、若しくは、所定値以下しか存在しないことにより、n型チャネル5のn型の半導体的特性を安定した状態で保持できるという利点を得ることができる。このように、本実施形態のn型トランジスタ1を、ソース電極2と、ドレイン電極3と、ゲート電極4と、該ソース電極2及びドレイン電極3の間に設けられたナノチューブ状構造体で形成されたn型のチャネル5と、該チャネル5上に直接形成された酸素を所定値以下しか含有しない絶縁体の膜(即ち、窒素化合物膜)6とを備えて構成するようにすることは、多くの利点を得ることができる優れた技術である。
【0051】
[II.製造方法]
本発明のn型トランジスタ用チャネルの製造方法では、p型半導体的な特性を示すチャネルであるナノチューブ状構造体に、酸素濃度1%以下、温度200℃以上1600℃以下の条件下、窒素化合物の原料ガスの存在下において、窒素化合物の膜を直接に形成させる工程(窒素化合物膜形成工程)を行なうにより、上記のp型半導体的な特性を示すナノチューブ状構造体の半導体的な特性をn型に変えると共に、ナノチューブ状構造体の表面に本発明に係る窒素化合物膜を形成して、n型トランジスタ用チャネルを得ることができる。
【0052】
したがって、上記の窒素化合物膜形成工程を経ることによって、p型半導体的な特性を有するナノチューブ状構造体を有する、トランジスタ又はその製造途中の素子(基板にソース電極、ドレイン電極、ゲート電極のうちの一部を備えたもの、等)から、n型チャネルを備えたトランジスタを製造することができる。この方法を、以下適宜、「本発明のn型トランジスタの製造方法」という。
以下、本発明のn型トランジスタ用チャネルの製造方法とともに、本発明のn型トランジスタの製造方法について、一実施形態を示して説明する。
【0053】
[1.p型のチャネルの用意]
本実施形態のn型トランジスタを製造するには、まず、p型の半導体的特性を示すナノチューブ構造体のチャネル(以下適宜、「p型チャネル」という)を備えたトランジスタ又はその製造途中の素子を用意する。具体的方法は任意であるが、例えば、p型チャネルを形成するナノチューブ状構造体としてカーボンナノチューブを用いる場合には、以下に示す工程により用意することができる。
【0054】
[1-1.p型チャネルの形成]
図2(a),(b)は、カーボンナノチューブを用いたチャネルの作製方法の各工程における操作を説明するための模式的な断面図である。なお、図2(a),(b)において、図1と実質的に同様のものを表わす符号は、図1と同様のものを用いることとする。
チャネルの形成方法に制限は無く任意であるが、n型チャネル5として使用するカーボンナノチューブは、通常、その位置と方向とを制御して形成する。このため、通常はフォトリソグラフィー法などによりパターニングした触媒(成長触媒)8を利用して、カーボンナノチューブの成長位置と方向とを制御して作製する。具体的には、例えば、以下の工程(1)~(4)を行ない、カーボンナノチューブからなるp型チャネルを形成することができる。なお、図2(a),(b)においては、p型チャネルとカーボンナノチューブとは同じものを表わしているため、両者を同様の符号5′で示す。
【0055】
工程(1):基板7上にフォトレジスト(図示省略)をパターニングする。
工程(2):金属の触媒8を蒸着する。
工程(3):リフトオフを行ない、触媒8のパターンを形成する。{図2(a)}
工程(4):原料ガスを流して、熱CVD法により触媒8間にカーボンナノチューブ5′を形成する。{図2(b)}
以下、各工程について説明する。
【0056】
まず、工程(1)において、カーボンナノチューブ5′を形成しようとする位置及び方向に応じて形成するパターンを決定し、そのパターンに合わせて基板7上にフォトレジストでパターニングを行なう。
次に、工程(2)において、パターニングを行なった基板7の表面に、触媒8となる金属を蒸着する。触媒8となる金属の例としては、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属、あるいはそれらの合金などが挙げられる。
【0057】
続いて、工程(3)において、図2(a)に示すように、触媒8の蒸着後、リフトオフを行なう。リフトオフにより、フォトレジストは基板7から除去されるため、フォトレジスト表面に蒸着された触媒もともに基板7から除去される。これにより、工程(1)で形成したパターンに合わせて触媒8のパターンが形成される。
最後に、工程(4)において、図2(b)に示すように、CVD炉で、高温においてメタンガスやアルコールガスなどのナノチューブ用原料ガスを流し、触媒8と触媒8との間にカーボンナノチューブ5′を形成する。高温においては、触媒8は直径数nmの微粒子状になり、これを核としてカーボンナノチューブ5′が成長する。なお、ここで高温とは、300℃以上1200℃以下を指す。
【0058】
以上のように、工程(1)~工程(4)によってカーボンナノチューブ5′を形成することができる。
また、本実施形態のn型トランジスタ1を単一電子トランジスタとして製造する場合には、この後の工程において、カーボンナノチューブ5′に酸化処理によって欠陥を導入し、量子ドットを作製するようにしても良い。これにより、SETチャネルを作製することができる。
形成されたカーボンナノチューブ5′は、この段階では、通常、チャネルとして用いた場合にp型の半導体的特性を示すp型チャネル5′として機能するようになっている。
【0059】
[1-2.ソース電極及びドレイン電極の形成]
次に、図3に示すように、カーボンナノチューブ5′の両端にオーミック電極等を用いてソース電極2及びドレイン電極3を形成する。
ソース電極2やドレイン電極3の形成には公知の方法を任意に用いることができるが、一般的には、フォトリソグラフィー法を用いる。この際、ソース電極2やドレイン電極3はカーボンナノチューブ5′の先端に取り付けてもよいし、側面に取り付けてもよい。また、ソース電極2やドレイン電極3の電極形成の際に、よりよい電気的接続を目的として、300℃~1000℃の範囲の熱処理を行なうようにしても良い。
なお、図3は本実施形態のn型トランジスタの製造方法を説明するため、ソース電極及びドレイン電極の形成時の様子を説明するための模式的な断面図である。また、図3において、図1及び図2と実質的に同様のものを表わす符号は、図1及び図2と同様のものを用いることとする。
【0060】
[1-3.ゲート電極の形成]
また、適宜、後述する窒素化合物膜形成工程の前又は後に、ゲート電極4を形成する。ゲート電極4の形成方法は任意であるが、例えば、ソース電極2やドレイン電極3の形成方法と同様にして形成することができる。
【0061】
[2.窒素化合物膜形成工程]
窒素化合物膜形成工程では、用意したp型チャネル5′に、所定の条件下、窒素化合物の原料ガスの存在下において、p型チャネル5′の表面に窒素化合物膜6を直接に形成し、これにより、n型の半導体的な性質を示すn型チャネル5を得る。
ここで、窒素化合物膜6を形成する対象であるp型チャネル5′の状態は、基板7上にp型チャネル5′だけが形成されている状態の素子でもよく、p型チャネル5′にソース電極2及びドレイン電極3の一方又は両方が形成されている状態の素子でも良く、さらに、p型チャネル5′、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極4を備えた状態の素子(即ち、p型のトランジスタ)であってもよい。通常は、基板7上にp型チャネル5′を形成しその両端にソース電極2及びドレイン電極3両方が形成されている状態、又は、基板7上にp型チャネル5′、ソース電極2、ドレイン電極3及びゲート電極4を備えた状態の素子に対して窒素化合物膜6の形成を行なう。
【0062】
ただし、本実施形態においては、窒素化合物膜6を形成する際、系内は不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気にするようにする。具体的な雰囲気の条件については、窒素化合物膜6の種類や組成などに応じて適宜設定すれば良いが、具体的には、系内の酸素濃度を、通常1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下、より好ましくは0.001体積%以下とする。この範囲の上限を上回ると酸素によりp型チャネル5′やn型チャネル5がダメージを受けたり、p型チャネル5′がn型チャネル5にならなかったりする虞がある。
なお、通常用いられる熱CVD法においては、窒素化合物膜6の形成の際には系内に窒素化合物の原料となる気体(以下適宜、「原料ガス」という)を充満又は流通させ、系内では原料ガスの基板表面での気相化学反応(熱分解、還元、置換反応など)によって窒素化合物生成反応を行なわせることになる。したがって、熱CVD法では、窒素化合物膜6を形成する時点においては系内に原料ガス及び適宜用いられる不活性ガス、還元性ガス、キャリアガス等が充満又は流通し、特別な制御を行なわなくても系内雰囲気を上記の酸素濃度以下とさせることが可能となる。よって、上記のように雰囲気中の酸素濃度を制御して不活性雰囲気或いは還元性雰囲気とするのは、熱CVD法を用いる場合には、通常は、窒素化合物膜6形成前後の温度調整工程、即ち、昇温工程及び降温工程において行なうようにすることが望ましい。
【0063】
さらに、窒素化合物膜6の形成の際には、窒素化合物膜6を形成する対象となるp型チャネル5′の温度を、温度200℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは700℃以上、また、通常1600℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下とする。この範囲を外れると、良質な窒素化合物膜6を成膜できなくなる虞がある。なお、上記p型チャネル5′の温度は、通常はp型チャネル5′を設けた基板7の温度と同様であるため、通常は、この基板7の温度が上記範囲内であればよい。
【0064】
上記の条件を満たす限り、窒素化合物膜6を形成する際の反応条件は本発明の効果を著しく損なわない範囲内において任意である。
例えば、系内には不活性ガスや還元性ガスを充填又は流通させるようにしてもよい。これにより、酸素濃度を確実に低下させ、窒素化合物膜6を形成する系内を確実に不活性雰囲気とすることができる。ここで不活性ガスとは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどが挙げられる。また、還元性ガスとしては、水素などが挙げられる。
【0065】
また、圧力条件は任意であるが、通常、圧力条件は常圧又は減圧下において行なう。具体的には、通常1Pa以上、好ましくは10Pa以上、また、通常1.013MPa以下、好ましくは1kPa以下とすることが望ましい。圧力条件をこの範囲内とすることにより、原料ガスの平均自由工程が長くなるため均一な膜が得やすくなる。
【0066】
また、窒素化合物膜6をp型チャネル5′の表面に直接形成するには、上記の温度条件及び酸素濃度条件下に設定された系内において、窒素化合物の原料を気体状態で存在させ、その原料(以下適宜、「原料ガス」という)を、p型チャネル5′表面を含む素子表面で反応させて、p型チャネル5′表面に本実施形態の窒素化合物膜6を直接に形成させるようにする。この方法で表面に窒素化合物膜6が形成されると、p型チャネル5′はn型の半導体的特性を示すn型トランジスタ用チャネル(n型チャネル)5になる。なお、この方法は、通常、熱CVD法で行なわれる。
【0067】
窒素化合物の原料ガスに制限は無く、上記の環境下においてp型チャネル5′表面で反応して窒素化合物膜6を形成することができれば任意である。通常は、窒素を含有する原料化合物と、窒素とともに窒素化合物を構成する原子を含有する原料化合物とを系内に共存させるようにする。
窒素を含有する原料化合物は、窒素化合物膜6を形成する窒素化合物に応じて選択するが、例えば、アンモニアや窒素などが挙げられる。なお、窒素は不活性ガスとしても機能する。また、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
一方、窒素とともに窒素化合物を構成する原子を含有する原料化合物も、窒素化合物膜6を形成する窒素化合物に応じて選択するが、例えば、モノシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素、ジメチルジクロロシラン、三塩化ボロン、三塩化アルミニウムなどが挙げられる。なお、これらも1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0068】
また、上記の不活性ガス、還元性ガス、原料ガスのほか、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の気体を系内に導入しても良い。例えば、本発明の効果を著しく損なわない限り、キャリアガスを系内に導入するようにしてもよい。キャリアガスは、成膜時に原料ガスとともに流すガスであり、成膜時に原料ガスを系内に送り込むためのものである。このキャリアガスとしては、例えば、上記の不活性ガス及び還元性ガス、並びにそれらを組み合わせたものと同様なものなどを用いることができる。
【0069】
キャリアガスの機能はその種類に応じて様々である。成膜時に原料ガスを系内に送り込む機能のほか、例えば、水素ガスは下記の反応式のような還元反応により塩化物からなる原料ガスを分解する機能を有する。また、水素ガスは、チャネル上に存在する酸素を除去する機能も有していると推察される。
SiCl4 + 2H2 → Si + 2HCl
さらに、キャリアガスには、気化しにくい液体原料にキャリアガスを通じてバブリングを行なうことによって、液体原料を気化させ輸送する機能もある。例えば、液体状態の四塩化ケイ素にキャリアガスによるバブリングを行なえば、四塩化ケイ素の気化を促進させることが可能となる。
このように、塩化物系の原料ガスなどを用いる場合には、還元性ガスをキャリアガスとして用いることで、成膜が円滑に進行させることができるようになる場合がある。
【0070】
膜形成に用いる原料ガスやキャリアガスの具体例を挙げると、例えば、窒素化合物膜6を窒化シリコンで形成する場合には、「モノシラン、アンモニア及び窒素の組み合わせ」、「モノシラン、アンモニア、窒素及び水素の組み合わせ(但し、窒素及び水素はキャリアガスとして機能すると推察される)」、「ジクロロシラン及びアンモニアの組み合わせ」、「四塩化ケイ素、窒素及び水素の組み合わせ(但し、窒素は原料ガス及びキャリアガスとして機能し、水素はキャリアガスとして機能すると推察される)」などの組み合わせを用いることができる。
【0071】
次に、図を用いて、本工程において通常用いられる熱CVD法について具体的に説明する。図4(a),(b)は、熱CVD法により窒素化合物膜6の形成を行なう場合に用いる装置の一例として大気圧型熱CVD装置を用い、窒素化合物膜6を形成する場合の様子を説明する模式的な概略図である。ただし、図4(a),(b)に示す装置はあくまで例示物であって本発明を限定するものではなく、また、図4(a),(b)の構成は本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形することができる。さらに、図4(a),(b)において、図1~図3と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図3と同様のものを用いることとする。なお、図4(a)は窒素化合物膜6の形成前の様子を表わし、図4(b)は窒素化合物膜6の形成後の様子を表わす。
【0072】
図4(a)に示す熱CVD装置9は、窒素化合物膜6の形成のための系を形成する炉10と、加熱用ヒータ11とを備え、供給系から原料ガス及び適宜用いられる不活性ガス、還元性ガス、キャリアガス等を炉10の内部の系に供給され、炉10の内部の系の気体を排気系から排出するようになっている。ここで、炉10は、その内部に窒素化合物膜6を形成するための系を有するものである。また、加熱用ヒータ11は、炉10の内部を加熱するものである。
【0073】
このような熱CVD装置9を用いて窒素化合物膜形成工程を行なう場合、まず、窒素化合物膜6を形成する対象となる素子12を炉10内に設置すると共に、炉10内に不活性ガスや還元性ガスを導入する等をして炉10内を不活性雰囲気又は還元性雰囲気にする。そして、炉10内を上記の温度条件に調整する。この工程は、通常は炉10内を加熱する昇温工程であり、この際には、上記のように系内の酸素濃度を小さくするようにすることが望ましい。なお、図4(a),(b)の構成では、素子12として、基板7上にp型チャネル5′を形成しその両端にソース電極2及びドレイン電極3両方が形成されている状態の素子12を用いているものとする。
【0074】
炉10内の温度が上記の温度条件を満たす温度となったら、供給系から原料ガス、並びに、適宜用いる不活性ガス、還元性ガス、キャリアガス等のガスを供給する。これにより、図4(b)に示すように、炉10内において原料ガスが熱によって分解して、素子12表面で反応し、素子12表面(チャネル5表面も含む)に窒素化合物膜6が形成される。また、上記の窒素化合物膜6を形成することにより、素子12に形成されていたp型チャネル5′の半導体的特性は、n型に変化し、これによりn型チャネル5を得ることができる。なお、この窒素化合物膜6の形成工程においては、系内に上記の原料ガスなどを供給するようにするため、通常は、特別な制御を行なわなくとも系内の酸素濃度は上記範囲内に収めることができる。
【0075】
窒素化合物膜6の厚さが所望の厚さになったら、原料ガスの供給を停止する。そして、冷却後、炉10から素子12を取り出す。なお、上記のようにこの冷却時(降温工程)においても雰囲気を不活性雰囲気又は還元雰囲気にするようにすべきであることから、降温工程においては不活性ガスや還元性ガスを流通させながら冷却を行なうことが望ましい。また、冷却時に不活性ガス又は還元性ガスを流しながら冷却を行なうようにすると、速やかに冷却を行なうことができる。
熱CVD法を用いる場合、以上のようにして窒素化合物膜6を形成することができる。
【0076】
また、上記のように原料ガスを系内に流通させて窒素化合物膜6を形成する場合には、その原料化合物の流通速度、並びに、供給する原料ガスの濃度及び組成などは本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0077】
ただし、窒素化合物膜6は、上記の温度条件及び酸素濃度条件下において原料ガスが存在していれば形成される。したがって、図4(a),(b)の装置9のように外部から原料ガスを供給しない場合でも、窒素化合物膜6は形成可能である。例えば、系内を閉鎖して膜形成を行なうようにしてもよい。なお、外部から原料ガスを供給しない場合の原料ガスの濃度や原料ガスの組成などの具体的な反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。
【0078】
なお、熱CVD法については、下記の文献1及び文献2を参照できる。
文献1:麻蒔立男著、日刊工業新聞社、「微細加工の基礎-電子デバイスプロセス技術-第2版」、ISBN4-526-04812-7
文献2:K. L. Choy: Progress in Materials Science 48(2003)57-170, Chemical vapor deposition of coatings.
【0079】
[3.その他の工程]
窒素化合物膜6の形成後、当該素子(トランジスタを含む)12には、適宜、その他の工程を行なうようにしてもよい。
例えば、形成した窒素化合物膜6に対してエッチングを行なうようにしてもよい。このエッチングは、窒素化合物膜6の下の電極2,3に電圧印加用の配線を接続する目的や、あるいは、パターニングなどを行なう目的で行なわれる。エッチングには、ウェットエッチングや反応性イオンエッチング(RIE)などの公知のものを任意に用いることができる。なお、ウェットエッチングの場合のエッチャントおよびRIEのエッチャントには、公知のものを任意に用いることができる。
【0080】
[4.効果]
本発明に係る上記の方法、即ち、本発明のn型トランジスタ用チャネルの製造方法や本発明のn型トランジスタの製造方法によれば、窒素化合物膜形成工程を経ているため、ナノチューブ状構造体をチャネルに用いた新たなn型トランジスタ用チャネルを従来よりも簡単に得ることができ、さらに、ナノチューブ状構造体をチャネルに用いた新たなn型トランジスタも、従来よりも簡単に得ることができる。
【0081】
中でも、従来、ドーピングや酸素の脱離などを行なった上で保護膜を設け、これにより、n型チャネルを得るようにしていた技術に比べると、本発明に係る上記の方法を用いれば、ドーピングや酸素の脱離などの操作を行なうことなく、単に窒素化合物膜6を形成することにより、ナノチューブ状構造体で形成されたn型チャネル5を得ることができる。即ち、従来よりも少ない工程で、ナノチューブ状構造体をチャネルに用いたn型トランジスタ用チャネル5及びn型トランジスタ1を得ることができるようになるのである。したがって、本発明に係る上記の方法によれば、n型トランジスタ1及びn型チャネル5の量産性を向上させることも可能である。
【0082】
ここで、上記の温度条件及び酸素濃度条件下、原料ガスの存在下において窒素化合物膜6を直接p型チャネル5′表面に形成させることにより、当該p型チャネル5′の半導体特性がn型に変化することは驚くべきことである。この半導体特性の変化が生じるメカニズムは定かでは無いが、次のようなメカニズムが推察される。
即ち、上記の温度条件及び酸素濃度条件下において窒素化合物膜6の形成を行なうことにより、p型チャネル5′、若しくは、p型チャネル5′、ソース電極2及びドレイン電極3それぞれの界面から酸素が脱離され、これにより、p型チャネル5′の半導体特性がn型へと変化したものであると推察される。
また、上記の半導体特性の変化には、原料ガスによるドーピングが関与している可能性もある。例えば、原料ガスとしてアンモニアを用いた場合、p型チャネル5′に対して電子のドーピングが行なわれ、これにより、p型チャネル5′の半導体特性がn型に変化したとも推察される。
【0083】
さらに、従来の保護膜の形成方法で用いられてきたプラズマなどはチャネルを構成するナノチューブ状構造体に対してダメージを与えていたが、本発明に係る上記の方法では、ナノチューブ状構造体に従来のようなダメージをほとんど与えることなく保護膜(窒素化合物膜)を形成することができる。その結果、本発明に係る上記の方法で製造されたナノチューブ状構造体のn型チャネル5、及び、そのn型チャネル5を用いたトランジスタ1は、高い確率で大気中でも安定なn型半導体的な特性を示す。したがって、n型チャネル5、及び、n型チャネル5を用いたトランジスタ1を高収率に製造できる。
【0084】
ここで、ダメージをほとんど与えることがない、とは、窒素化合物膜6を形成する前のp型チャネル5′及び形成した後のn型チャネル5を用いたトランジスタを用いた以下の試験において確認される。即ち、ダメージをほとんど与えることがない、とは、窒素化合物膜6を形成する前に、室温大気中において、ゲート電圧を-5Vから+5Vまでスイープさせながら印加し、ソース電極2とドレイン電極3との間にドレイン電圧を0.1Vだけ印加した時にチャネル5′に流れるドレイン電流が100pA以上であったトランジスタのうち、窒素化合物膜6を形成した後にチャネル5に流れるドレイン電流が100pAより小さくなったトランジスタの数の割合が2割以下であるこという。
【0085】
また、高い確率で大気中でも安定なn型半導体的な特性を示す、とは、窒素化合物膜6を形成する前にp型半導体的特性を示していたチャネル5′のうちの、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上が、窒素化合物膜6の形成後にn型半導体的な特性を示すようになったことをいう。
【0086】
また、窒素化合物膜形成工程によりチャネル5′は、上述したとおり、その半導体特性がn型へ変化すると共に、窒素化合物膜6によって表面を覆われるため、大気中の酸素から保護される。これにより、n型チャネル5は大気中の酸素から保護され、安定なn型半導体的特性を示す。したがって、このn型チャネル5を用いたトランジスタ1も、安定してn型の半導体的特性を示すようになる。
【0087】
さらに、良質の保護膜を容易に得ることができることも、本発明に係る上記の方法の利点の一つである。即ち、従来は、酸素を所定値以上含有するような、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムなどをチャネルの保護膜として用いられていた。このうち、酸化シリコンは、誘電率が約3.9と低く、また、成膜の際にn型チャネル5にダメージを与える虞があった。また、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等はn型チャネル5にダメージを与えずに良質な保護膜を形成するためには大きなコストを要した。さらに、酸化チタンは、通常はTi膜を大気中に放置することにより自然酸化膜として作製されるので、トランジスタに用いた場合にリーク電流が大きくなる虞があり、また、成膜の安定性が不十分となる虞があった。しかし本発明に係る上記の方法によれば、チャネル5を保護する良質の保護膜、又は、チャネル5、ソース電極2及びドレイン電極3とゲート電極4とを絶縁する良質の絶縁膜として、窒素化合物膜6を簡単に形成することができる。
【0088】
[III.n型トランジスタセンサ]
本発明のn型トランジスタは、化学センサやバイオセンサなどとして使用されるトランジスタセンサとして用いることができる。この場合、本発明のn型トランジスタを用いた本発明のn型トランジスタセンサは、ソース電極と、ドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極の間に設けられたn型チャネルと、n型チャネル上に直接形成された本発明に係る窒素化合物膜とを備えて構成される。
【0089】
本発明のn型トランジスタセンサの具体的な構成に制限は無く、トランジスタセンサとして公知の構成を任意に適用することができる。例えば、図5に示すように、本実施形態のn型トランジスタ1のゲート電極(例えば、トップゲート)4に、検出すべき物質(検出対象)13と選択的に相互作用する特定物質14を固定化することにより、本実施形態のn型トランジスタセンサ15を構成することができる。このセンサ15の場合、使用時には、検体液をゲート電極4に接触させることができるように液溜め16を設け、液溜め16内の検体液をゲート電極4に接触させる。検出すべき物質13とゲート電極4に固定化された特定物質14とが相互作用すればゲート電極4上の表面電荷の変化により、ゲート電極4にかかる電位が変化するため、n型チャネル5を流れるドレイン電流は変化する。したがって、電流計等の読取部(検知部)により、上記のゲート電極4の電位変化により生じるドレイン電流の変化をソース電極2又はドレイン電極3から読み取ることによって、検出すべき物質13を検知することができる。
なお、図5は本発明のn型トランジスタセンサの一実施形態の構成を模式的に示す断面図であり、図1~図4と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図4と同様のものを用いることとする。
【0090】
また、ゲート電極4を設けず、ソース電極2、ドレイン電極3、n型チャネル5及び窒素化合物膜6を用いてn型トランジスタセンサを構成することも可能である。例えば、窒素化合物として窒化シリコンを用いた場合、窒化シリコン膜はpH感応膜となることから、図5の構成においてゲート電極4を設置しないようにすれば、本実施形態のn型トランジスタ1を用いてpHセンサを構成することができる。また、この構成は、シリコン製の電界効果トランジスタにより作製された既存のイオン感応型電界効果トランジスタ(ISFET)を用いた化学センサと同様の構成が利用できる。
【0091】
さらに、ISFETで知られているように、その表面に検出物質に対応する感応膜を設置することにより、イオン、酵素、タンパク質等の検出対象を検出できる化学センサやバイオセンサも構成できる。
感応膜の固定化方法あるいは測定方法も、ISFETで知られている方法を任意に用いることが出来る。また、図5を用いて説明したのと同様、トップゲートとしてゲート電極4を設けた場合でも、そのゲート電極4上に検出物質に対応する感応膜を固定化することにより、同様のセンサを構成できる。
【0092】
なお、本実施形態にかかるn型トランジスタ1やn型チャネル5をセンサに適用する場合、下記文献3~5に記載されたセンサにこれらを適用することも可能である。
文献3:軽部征夫 監修、シーエムシー出版、「バイオセンサー」、ISBN4-88231-759-1
文献4:大森豊明 監修、(株)フジ・テクノシステム、「普及版センサ技術」、ISBN4-938555-64-6
文献5:P. Bergveld: Sensors and Actuators B 88(2003)1-20, Thirty years of ISFETOLOGY
【0093】
[IV.その他]
以上、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
例えば、上記n型トランジスタを集積して用いても良い。
さらに、例えば、上記実施形態で説明したものはそれぞれ任意に組み合わせて実施するようにしても良い。
また、例えば、上述したn型トランジスタ用チャネルの製造方法で製造したナノチューブ状構造物を、トランジスタ以外の用途に用いることも可能である。
さらに、上記n型トランジスタは、p型トランジスタと組み合わせて相補型回路を作製することも可能である。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0095】
[実施例1]
[窒化シリコンを窒素化合物膜とする、バックゲート型のカーボンナノチューブトランジスタ]
[1.カーボンナノチューブトランジスタの作製]
図6(a)~(d)はいずれも、実施例1について、チャネルにカーボンナノチューブを用いたナノチューブトランジスタの作製工程について説明する模式的な断面図である。なお、図6(a)はチャネル形成用の触媒パターニング直後の状態を表わし、図6(b)はカーボンナノチューブ形成直後の状態を表わし、図6(c)はソース電極及びドレイン電極形成直後の状態を表わし、図6(d)はバックゲート形成直後の状態を表わす。また、以下の説明において、本発明のn型トランジスタの作製途中の状態の素子を、適宜「試料」と呼ぶ。さらに、図6(a)~(d)において、図1~図5と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図5と同様のものを用いることとする。なお、以下の説明において、符号はカッコ「〔〕」内に示すものとする。
【0096】
(1)基板の用意
導電性n型シリコン単結晶{Si単結晶の面方位:(100)}の基板〔7〕を、体積比が硫酸:過酸化水素=4:1となるように混合した酸に5分間浸して表面を酸化した後、流水で5分間すすぎ、その次に、体積比がフッ化水素酸:純水=1:4となるように混合した酸で酸化膜を除去し、最後に、流水で5分間すすぎ、基板〔7〕の表面を洗浄した。洗浄した基板〔7〕の表面を1100℃、5時間、酸素流量3L/minの条件で熱酸化し、基板〔7〕の表面に厚さ約400nmの酸化シリコンの絶縁膜〔17〕を成膜した。
【0097】
(2)チャネルの形成
続いて、以下の方法により酸化シリコンの絶縁膜の表面に、カーボンナノチューブ(ナノチューブ状構造体)成長用の触媒〔8〕を作製した。
まず、フォトリソグラフィー法を用いてカーボンナノチューブ〔5′〕を架橋させたい場所にフォトレジストをパターニングした。フォトリソグラフィーは次のように行なった。まず、酸化シリコンの絶縁膜〔17〕の上に、ヘキサメチルジシラザンを500rpmで10秒間、4000rpmで30秒間の条件でスピンコートし、その上にフォトレジスト(シプレイ・ファーイースト社製microposit S1818)を同条件でスピンコートした。
【0098】
フォトレジストをスピンコートした後、基板〔7〕をホットプレート上に置き90℃、1分間の条件でベーク(加熱)した。ベーク後、モノクロロベンゼン中に、上記のフォトレジストをコートした基板〔7〕を5分間浸し、窒素ブローで乾燥させた後、オーブンに入れ85℃、5分間の条件でベークした。ベーク後、アライナー(露光機)を用い触媒パターンを露光し、現像液{クラリアント社製 AZ300MIFデベロッパー(2.38%)}中で3分間現像した後、流水で3分間すすぎし、窒素ブローで乾燥させた。
【0099】
上記のようにフォトレジストをパターニングした試料上に、電子ビーム(EB)真空蒸着法を用いてシリコン、モリブデン及び鉄の順に、それぞれ10nm、10nm、3nmの膜厚で成膜し、触媒〔8〕とした。
次に、煮沸したアセトンに試料を浸しながらフォトレジストをリフトオフし、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間試料を洗浄し、窒素ブローで乾燥させ、カーボンナノチューブ〔5′〕の成長用の触媒〔8〕をパターニングした試料を作製した{図6(a)}。
【0100】
触媒〔8〕をパターニングした試料を炉に設置し、炉内に、アルゴンガスを用いてバブリングしたエタノールを750mL/min、及び、水素ガスを500mL/minをそれぞれ流しながら、900℃、10分間の条件で、CVD法によりカーボンナノチューブ〔5′〕を触媒〔8〕間に成長させた{図6(b)}。昇温および降温は、アルゴンガスを1000mL/minの速さで流しながら行なった。
【0101】
(3)ソース・ドレイン電極の作製
次に、カーボンナノチューブ〔5′〕の両端にソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕を作製するために、上述したフォトリソグラフィー法により、フォトレジストをパターニングした。
パターニング後、EB真空蒸着法により、クロム及び金の順に、それぞれ20nm、200nmの膜厚で成膜した。次に、煮沸したアセトンに試料を浸しながらフォトレジストをリフトオフし、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間試料を洗浄し、窒素ブローで乾燥させ、ソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕を作製した{図6(c)}。この際、ソース電極〔2〕とドレイン電極〔3〕との最短間隔は4μmであった。また、図6(c)には示していないが、ソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕はそれぞれカーボンナノチューブのチャネル〔5′〕から引出されており、また、それぞれコンタクト用パッドを有している。なお、コンタクト用パッドとは、電極配線の先端にあるプローブを接触させるための大き目の正方形の電極(パッド)を指す。
【0102】
ソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕という上部電極のパターニング後、素子を保護するために、試料の表面にヘキサメチルジシラザンを500rpmで10秒間、4000rpmで30秒間の条件でスピンコートし、その上に前述したフォトレジストを同条件でスピンコートした。その次に、オーブンにて110℃、30分間の条件でフォトレジストをベークし、素子保護用のレジスト膜を形成した。
【0103】
(4)バックゲートの作製
基板〔7〕の裏面の酸化シリコンの絶縁膜〔17〕を、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いてドライエッチングし除去した。このとき、使用したエッチャントは六フッ化硫黄ガスで、RF出力100Wのプラズマ中で6分間エッチングを行なった。裏面の酸化シリコンの絶縁膜〔17〕を除去した後、EB真空蒸着法によりチタン及び金の順に、それぞれ10nm、100nmの膜厚で成膜し、バックゲート〔4′〕を作製した。
次に基板〔7〕の表面に形成した仮保護膜を、煮沸したアセトン、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間洗浄除去し、窒素ブローにより乾燥させた{図6(d)}。
【0104】
(5)窒化シリコン膜の成膜
窒化シリコンの保護膜(窒素化合物膜)〔6〕の形成に用いた装置〔9〕の要部構成を、図7に模式的に示す。なお、図7において、図1~図6と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図6と同様のものを用いることとする。
窒素化合物である窒化シリコンの成膜は、図7に示すように、石英炉〔10〕中に試料を設置して熱CVD法を用いて行なった。試料は抵抗加熱ヒータ〔11〕を備える回転式のステージ〔18〕上に設置した。成膜はアルゴンガスで希釈した3体積%モノシランガス(原料ガス)を20mL/min、アンモニアガス(原料ガス)を1000mL/min、及び、窒素ガス(原料ガス,不活性ガス)を3000mL/minで流しながら、大気圧下で800℃、5分間でステージを回転させながら行なった。また、昇温および降温は、窒素ガスを3000mL/min流しながら行なった。得られた窒化シリコンの保護膜〔6〕(図8参照)の膜厚は200nmであった。
【0105】
(6)コンタクト用ホールの作製
次に、前述したソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕のコンタクトパッド上の窒化シリコンの保護膜〔6〕にコンタクト用(配線接続用)のホール(孔)を作製するため、フォトリソグラフィー法を用いて窒化シリコンの保護膜〔6〕の表面にコンタクト用のホールをフォトレジストでパターニングした。具体的には、窒化シリコンの保護膜〔6〕の表面にフォトレジストをスピンコートし、次いで、ホールとなる部分のレジストをパターニングにより除去した。その後、オーブンにて110℃、30分間の条件でフォトレジストをベークした。続いて、「(4)バックゲートの作製」と同様にして、RIEを用いてソース電極〔2〕及びドレイン電極〔3〕上の窒化シリコンの保護膜〔6〕をエッチングし、コンタクト用のホール(図示省略)を作製した。
次に、煮沸したアセトン、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間洗浄し、フォトレジストを除去し、窒素ブローにより乾燥させた。
以上の工程で製造した窒化シリコンの保護膜〔6〕を有する、バックゲート型カーボンナノチューブトランジスタ(n型トランジスタ)〔1′〕の模式的な概略図を図8に示す。なお、図8において、図1~図7と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図7と同様のものを用いることとする。
【0106】
[2.特性測定]
本実施例で作製したカーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕の電気特性評価は、Agilent社製 4156A半導体パラメータアナライザを用いて、室温大気中で行なった。具体的には、ソース電極〔2〕を基準とし、ドレイン電極〔3〕にドレイン電圧VDS=0.1Vを印加し、バックゲートへはゲート電圧VGSを-5から+5Vまで20mVステップでスイープさせながら印加した時のドレイン電流IDSを測定した。
なお、特性測定は、窒化シリコンの保護膜〔6〕の成膜前と、窒化シリコンの保護膜〔6〕を成膜しコンタクト用ホールを作製した後とのそれぞれにおいて、同じカーボンナノチューブトランジスタを用いて行なった。
【0107】
図9に、窒化シリコンの保護膜を成膜する前後におけるドレイン電流IDS-ゲート電圧VGS特性について示す。この図9に示すように、カーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕は、窒化シリコンの保護膜〔6〕を成膜する前は、ゲート電圧VGSの増加に伴いドレイン電流IDSが減少するp型半導体的な特性を示したが、窒化シリコンの保護膜〔6〕を成膜した後では、ゲート電圧VGSの増加に伴いドレイン電流IDSが増加するn型半導体的な特性を示すようになった。これにより、上記の製造方法により、ナノチューブ状構造体の1種であるカーボンナノチューブで形成されたp型のチャネルをn型にして、p型のトランジスタからn型のトランジスタを製造することができることが確認された。
【0108】
また、一つの基板〔7〕上に上記操作と同様の操作によって31個のトランジスタ〔1′〕を形成し、上記と同様に電気的特性評価を行なったところ、成膜前に100pA以上のドレイン電流IDSが計測された素子(トランジスタ)のうちの全てにおいて、成膜後においても100pAのドレイン電流IDSが計測された。したがって、上記の製造方法では、従来のp-CVD法とは異なり、チャネル〔5〕の受けるダメージが非常に小さく、安定してn型トランジスタを製造することができることが確認された。
【0109】
さらに、製造したカーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕を、窒化シリコンの保護膜〔6〕を成膜した後に、大気中(温度26℃、相対湿度25%)に1週間放置し、その後同様に電気特性評価を行なったところ、n型の半導体的特性を保持していた。これにより、本実施例で成膜した窒化シリコンの保護膜〔6〕がカーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕の特性の安定化のための保護膜として非常に有用であることが示された。また、上記の方法で製造されたn型トランジスタ〔1′〕が大気中において安定であることが確認された。
【0110】
[実施例2]
[窒化シリコンを窒素化合物膜とする、トップゲート型のカーボンナノチューブトランジスタ]
[1.カーボンナノチューブトランジスタの作製]
上記[実施例1]の、「(3)ソース・ドレイン電極の作製」の工程においてクロムの代わりにチタンを用い、また、金の代わりに白金を用い、さらに、それぞれの膜厚を10nm、90nmとし、「(5)窒化シリコン膜の成膜」の工程において窒化シリコンの絶縁膜(実施例1の保護膜に相当)〔6〕の膜厚を50nmとし、「(4)バックゲートの作製」の工程を「(6)コンタクト用ホールの作製」の工程の後に行なった以外は、実施例1と同様にして、窒化シリコンの絶縁膜(保護膜,ゲート絶縁膜)〔6〕を有するバックゲート構造のカーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕を作製した。
【0111】
(7)トップゲートの作製
次に、以下の方法により、前述したカーボンナノチューブトランジスタ〔1′〕のチャネル〔5〕直上の窒化シリコンの絶縁膜〔6〕の表面に、トップゲート〔4〕を作製した。
上記の[実施例1]のフォトリソグラフィー法と同様にして、窒化シリコンの絶縁膜〔6〕表面に塗布したレジストをパターニングした。次に、EB真空蒸着法により、チタンおよび金の順にそれぞれ10nm、100nmの膜厚で成膜した。煮沸したアセトンに試料を浸しながらリフトオフし、アセトン、エタノール、流水の順に各3分間試料を洗浄し、窒素ブローで乾燥させトップゲート〔4〕を作製した。トップゲート〔4〕もソース電極〔2〕およびドレイン電極〔3〕と同様に、チャネル〔5〕から引出した構造をしておりコンタクト用パッド(図示省略)を有している。
以上の工程により作製した窒化シリコンの絶縁膜(ゲート絶縁膜)〔6〕を有するトップゲート型のカーボンナノチューブトランジスタ〔1″〕の断面の模式的な概略図を図10に示す。なお、図10において、図1~図8と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図8と同様のものを用いることとする。
【0112】
[2.特性測定]
本実施例で作製したトップゲート型カーボンナノチューブトランジスタ〔1″〕の電気特性評価は、上記[実施例1]と同様の装置と環境で行なった。図11に、バックゲート〔4′〕を用いた場合、及び、トップゲート〔4〕を用いた場合それぞれのゲート電圧VGS-ドレイン電流IDS特性を示す。ドレイン電圧VDSはどちらのゲート電極〔4〕,〔4′〕を用いた場合も0.1Vにした。また、バックゲート〔4′〕を用いる場合は、トップゲート〔4〕をフローティングにし、トップゲート〔4〕を用いる場合はバックゲート〔4′〕をソース電極〔2〕と同電位にした。さらに、ゲート電圧VGSは-5Vから5Vまで20mVステップでスイープさせた。
【0113】
この結果、いずれの場合でも、ゲート電圧VGSの増加に伴いドレイン電流IDSが増加するn型の半導体的特性を示した。これにより、上記の製造方法により、ナノチューブ状構造体の1種であるカーボンナノチューブで形成されたp型のチャネルをn型にして、p型のトランジスタからn型のトランジスタを製造することができることが確認された。
【0114】
また、窒化シリコンの絶縁膜〔6〕は50nmの膜厚であったが、トップゲート〔4〕とソース電極〔2〕あるいはドレイン〔3〕間のリーク電流は3pA程度と非常に小さかった。このことから、窒化シリコンの絶縁膜〔6〕は絶縁膜としても非常に優れていることが確認された。
【0115】
さらに、図11で示すように、ゲート電圧VGSに対しドレイン電流IDSを指数プロットしたときに、ドレイン電流IDSがゲート電圧VGSに対し線形に増加する領域(弱反転膜領域)においてその傾きを求め評価した。具体的には、図11において、破線で示す線分の傾きをバックゲートの弱反転膜領域の傾きとし、実線で示す線分の傾きをトップゲートの弱反転膜領域の傾きとして測定した。
この電界効果トランジスタの弱反転膜領域においてドレイン電流IDSを1桁変化させるのに必要なゲート電圧VDSはサブスレッショルド係数Sと定義され、電界効果トランジスタのスイッチング特性を表すパラメータであり、小さい値であることが望ましい。また、サブスレッショルド係数Sは、ゲート容量が大きい程小さくなる。
【0116】
図11より、バックゲートからゲート電圧VGSを印加した場合でサブスレッショルド係数Sは650mV/decade、トップゲートからゲート電圧VGSを印加した場合でサブスレッショルド係数Sは450mV/decadeとトップゲートの方がバックゲートと比較して小さくなっている。したがって、本実施形態で製造したトランジスタ〔1″〕は、トップゲートを用いた場合のほうがバックゲートを用いた場合よりもスイッチング特性に優れているのである。これは窒化シリコンの絶縁膜〔6〕が基板〔7〕の酸化シリコン絶縁膜〔17〕と比較して、誘電率が1.8倍近く大きく薄いためであると考えられる。これより、本実施例で用いた窒化シリコンの絶縁膜〔6〕がトップゲート〔4〕の絶縁膜として優れていることが示された。
【0117】
[実施例3]
[窒化シリコンの絶縁膜を有するトップゲート型のカーボンナノチューブトランジスタのバイオセンサへの応用例]
[1.センサ作製]
上記の[実施例2]で、基板〔7〕を酸化シリコン絶縁膜〔17〕を有するシリコン単結晶基板〔7〕から絶縁性のアルミナ単結晶基板に代え、「(5)窒化シリコン膜の成膜」の工程で、原料ガスをアルゴンで希釈した3%のモノシランガスから、アルゴンで希釈した0.3%のモノシランガスに代え、また、原料ガスの流量を20mL/minから50mL/minに代え、さらに、窒化シリコンの絶縁膜(実施例1の保護膜や実施例2の絶縁膜に相当)〔6〕の膜厚を37nmにした以外は、[実施例2]と同様にして、トップゲート型のカーボンナノチューブトランジスタ〔1″〕を作製した。
【0118】
次に、トップゲート〔4〕のコンタクトパッド以外の部分のトランジスタ〔1″〕表面を保護する目的で、[実施例1]と同様にフォトリソグラフィー法を用いてレジストをパターニングし、トランジスタ〔1″〕の上面の、コンタクトパッド以外の部位にレジスト膜〔19〕を形成した。このようにして、トップゲート〔4〕のコンタクトパッド上に、ホール〔20〕を形成した。即ち、コンタクトパッドに対応する部分にホール〔20〕が形成されるようにした。次に、オーブンにて120℃、1時間の条件でフォトレジストをベークし硬化させた。こうして作製されたトランジスタセンサ〔15′〕を図12及び図13に示す。なお、図12はトランジスタセンサ〔15′〕の模式的な上面図であり、図13は図12のトランジスタセンサ〔15′〕をA-A面で切った断面について、そのチャネル〔5〕近傍を拡大して模式的に示す断面図である。また、図12及び図13において、図1~図8及び図10と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図8及び図10と同様のものを用いることとする。
【0119】
[2.特性測定]
次いで、図14に示すような検出装置を組み立てた。即ち、上記のトランジスタセンサ〔15′〕の上面にシリコーンでウェル〔21〕を設け、トップゲート〔4〕のコンタクトホール〔20〕を通じてトップゲート〔4〕表面をpH7.4の10mMのリン酸緩衝液(PB)に浸した。また、Agilent社製 4156A半導体パラメータアナライザ〔22〕を用いて、ソース電極〔2〕、ドレイン電極〔3〕及びバックゲート〔4′〕の電圧を制御するようにした。なお、図14において、図1~図8、図10、図12及び図13と実質的に同様のものを表わす符号は、図1~図8、図10、図12及び図13と同様のものを用いることとする。
【0120】
電気特性は、ドレイン電圧VDSを0.1V、バックゲート電圧VBGSを0V、また、銀/塩化銀参照電極(R.E.)〔23〕を用い、ウェル〔21〕内のPBを介してトップゲート〔4〕にトップゲート電圧VTGSを0Vの一定電圧を印加し、ドレイン電流IDSを時間の関数として測定した。また、測定時には、タンパク質にはブタ血清アルブミン(PSA)を用い、PSAのPB溶液を適宜ウェルに滴下した。
図15に、PSAのPB溶液をウェル〔21〕に滴下した時のドレイン電流IDSの時間変化のグラフを示す。測定開始後180sで、10μLの同濃度のPBを滴下したが、ドレイン電流ISDに大きな変化が見られなかった。また、測定開始後300s後にウェル〔21〕内のPSA濃度が0.3μg/mLになるようにPSAのPB溶液を滴下すると、ドレイン電流IDSが測定開始後1200sにおいて約1.5nA減少した。
【0121】
上記のように、PBを滴下してもドレイン電流IDSに変化がなく、PSAのPB溶液を滴下した後ドレイン電流IDSが減少したことから、このドレイン電流IDSの減少は、pH7.4で負電荷を有するPSAがトップゲート〔4〕上に吸着した結果、トップゲート〔4〕がR.E.〔23〕に対して負の電位になったためであると考えられる。この結果から、本実施例で作製したトランジスタセンサ〔15′〕が、高感度な化学物質検出能力を有していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は産業上の任意の分野で広く用いることができ、例えば、集積回路などに用いられるほか、化学センサ、バイオセンサなどの分析分野にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の一実施形態としてのn型トランジスタの概要を模式的に表わす断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としてのn型トランジスタの製造方法について示すもので、(a),(b)はそれぞれカーボンナノチューブを用いたチャネルの作製方法の各工程における操作を説明するための模式的な断面図である。
【図3】本実施形態のn型トランジスタの製造方法を説明するため、ソース電極及びドレイン電極の形成時の様子を説明するための模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態としてのn型トランジスタ用チャネルの製造方法について説明するもので、(a),(b)はそれぞれ、熱CVD法により窒素化合物膜の形成を行なう場合に用いる装置の一例として大気圧型熱CVD装置を用い、窒素化合物膜を形成する場合の様子を説明する模式的な概略図である。
【図5】本発明の一実施形態としてのn型トランジスタセンサの構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施例1について説明するもので、(a)~(d)はいずれも、チャネルにカーボンナノチューブを用いたナノチューブトランジスタの作製工程について説明する模式的な断面図である。
【図7】本発明の実施例1について説明するもので、窒化シリコンの保護膜(窒素化合物膜)の形成に用いた装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施例1で製造した、窒化シリコンの保護膜を有するバックゲート型カーボンナノチューブトランジスタの模式的な概略図である。
【図9】本発明の実施例1において、窒化シリコンの保護膜を成膜する前後におけるドレイン電流IDS-ゲート電圧VGS特性について示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2で製造した、窒化シリコンの保護膜(ゲート絶縁膜)を有するトップゲート型のカーボンナノチューブトランジスタの断面の模式的な概略図である。
【図11】本発明の実施例2において、バックゲートを用いた場合、及び、トップゲートを用いた場合それぞれのゲート電圧-ドレイン電流特性を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例3で製造したトランジスタセンサの模式的な上面図である。
【図13】本発明の実施例3で製造したトランジスタについて説明するもので、図12のトランジスタセンサをA-A面で切った断面について、そのチャネル近傍を拡大して模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の実施例3で用いた検出装置の概要を模式的に示す図である。
【図15】本発明の実施例3において、ブタ血清アルブミンの溶液をウェルに滴下した時のドレイン電流の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0124】
1,1′,1″ n型トランジスタ
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4,4′ ゲート電極
5 チャネル(ナノチューブ状構造体,n型チャネル)
5 チャネル(ナノチューブ状構造体,p型チャネル)
6 窒素化合物の膜
7 基板
8 触媒
9 熱CVD装置
10 炉(石英炉)
11 ヒータ
12 素子
13 検出すべき物質(検出対象)
14 特定物質
15,15′ n型トランジスタセンサ
16 液溜め
17 絶縁膜
18 ステージ
19 レジスト膜
20 ホール
21 ウェル
22 半導体パラメータアナライザ
23 銀/塩化銀参照電極
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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