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明細書 :被覆型ヘテロ芳香環化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4505568号 (P4505568)
公開番号 特開2006-248945 (P2006-248945A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 被覆型ヘテロ芳香環化合物
国際特許分類 C07F   7/18        (2006.01)
C08G  61/12        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  21/3205      (2006.01)
H01L  23/52        (2006.01)
FI C07F 7/18 CSPW
C08G 61/12
H01L 29/28
H01L 21/88 M
請求項の数または発明の数 15
全頁数 16
出願番号 特願2005-065947 (P2005-065947)
出願日 平成17年3月9日(2005.3.9)
審査請求日 平成17年3月16日(2005.3.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】安蘇 芳雄
【氏名】家 裕隆
【氏名】韓 愛鴻
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】関 美祝
参考文献・文献 国際公開第2006/095631(WO,A1)
特開平06-100669(JP,A)
調査した分野 C07F 7/18
C08G 61/12
H01L 29/28
H01L 21/88
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【化1】
JP0004505568B2_000009t.gif
式(I)中、
1~Y6は、それぞれ独立に、酸素原子であるか、または存在せず、
1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2~18の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基であり、
Zは、下記式(i)~(vii)のいずれかで表される原子または原子団であり、
【化2】
JP0004505568B2_000010t.gif
7は、水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基、または炭素数2~6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基であり、
1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはメルカプト基であり、
nは正の整数である。
【請求項2】
1~R6が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2~6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基である請求項1に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項3】
1~R6が、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基であり、
7が、水素原子またはメチル基である、
請求項1または2に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項4】
下記式(II)で表される請求項1~3のいずれかに記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【化3】
JP0004505568B2_000011t.gif
式(II)中、X1、X2およびnは、それぞれ請求項1に記載の前記式(I)におけるX1、X2およびnと同じである。
【請求項5】
nが1~96である請求項1~4のいずれかに記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項6】
nが2の倍数である請求項5に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項7】
nが1、2、4、6、8、12または16である、請求項5に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項8】
1およびX2が水素原子であり、n=1である請求項1に記載の式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を製造する方法であり、X1およびX2が水素原子であり、n=1である請求項1に記載の式(I)で表される化合物が下記式(VI)で表される化合物であり、下記式(III)~(V)で表される化合物のカップリング反応により下記式(VI)で表される化合物を製造する工程を含む製造方法。
【化4】
JP0004505568B2_000012t.gif
式(III)~(VI)中、
1~Y6、R1~R6およびZは、それぞれ請求項1に記載の前記式(I)におけるY1~Y6、R1~R6およびZと同じであり、Hal1およびHal2は、それぞれ独立に、塩素、臭素またはヨウ素である。
【請求項9】
請求項8に記載の前記式(VI)で表される化合物を重合させる工程を含む、請求項1に記載の式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を製造する方法。
【請求項10】
前記重合工程により得られた生成物をさらに重合させる工程を含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記重合が、有機リチオ化剤を用いた酸化的重合である、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩からなる分子集合体であり、前記分子集合体中における前記化合物分子の重合度nが均一である分子集合体。
【請求項13】
下記式(VII)で表される骨格の電気的性質を測定するための、請求項12に記載の分子集合体。
【化5】
JP0004505568B2_000013t.gif
式(VII)中、Zおよびnは、それぞれ請求項1に記載の前記式(I)におけるZおよびnと同じである。
【請求項14】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、または請求項13に記載の分子集合体を含む、電子材料。
【請求項15】
請求項1~7のいずれかに記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、または請求項13に記載の分子集合体を含む、半導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆型ヘテロ芳香環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
チオフェン環等のヘテロ芳香環は、重合させてπ電子共役系を拡張することで、重合度に応じた特徴的な性質を示す。そのため、特に、チオフェン環の重合構造を含むオリゴチオフェンおよびその誘導体が、電子材料への適用等の観点から盛んに研究されている。
【0003】
オリゴチオフェンおよびその誘導体を電子材料に適用するための研究においては、まず、オリゴチオフェン構造の重合度に応じた電気的性質を明らかにするために、オリゴチオフェン単分子の電気的性質、例えば導電性等の計測が重要である。その観点から、オリゴチオフェン構造を嵩高い置換基で被覆する研究が盛んに行なわれている(非特許文献1~5等)。これは、そのように被覆することで、オリゴチオフェン構造の平面性が保たれるとともに、分子間のπ-スタッキング相互作用等が阻害され、オリゴチオフェン構造中のπ電子共役が効果的に保たれると考えられるからである。また、このようにオリゴチオフェン構造中のπ電子共役を効果的に保つことで、いわゆる分子エレクトロニクスのナノレベル分子ワイヤに応用することも研究されている。
【0004】
しかし、現在に至るまで、有効共役長を損なうことなく、かつ、共役鎖を効果的に被覆したオリゴチオフェン、およびその他のオリゴヘテロ環化合物の製造は困難な状況である。
【0005】

【非特許文献1】Aso, Y. ; Otsubo, T. et al. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5286.
【非特許文献2】Otsubo, T. ; Ueno, S. ; Takimiya, K. ; and Aso, Y. Chemistry Letters 2004, 33(9), 1154.
【非特許文献3】Tanaka, S. and Yamashita, Y. Synthetic Metals 1999, 101, 532.
【非特許文献4】Tanaka, S. and Yamashita, Y. Synthetic Metals 2001, 119, 67.
【非特許文献5】Wakamiya, A. ; Yamazaki, D. ; Nishinaga, T. ; Kitagawa, T. and Komatsu, K. J. Org. Chem. 2003, 68, 8305.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、ヘテロ環が効果的に被覆され、電子材料等に適した被覆型ヘテロ芳香環化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の被覆型ヘテロ芳香環化合物(以下、単に「本発明の化合物」と記すことがある)は、下記式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩である。
【0008】
【化11】
JP0004505568B2_000002t.gif

【0009】
式(I)中、
1~Y6は、それぞれ独立に、酸素原子であるか、または存在せず、
1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2~18の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基であり、
Zは、下記式(i)~(vii)のいずれかで表される原子または原子団であり、

【0010】
【化12】
JP0004505568B2_000003t.gif

【0011】
7は、水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基、または炭素数2~6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基であり、
1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはメルカプト基であり、
nは正の整数である。

【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物は、前記式(I)で表される構造を有することで、ヘテロ環が効果的に被覆され、電子材料等に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明についてより具体的に説明する。
【0014】
本発明の化合物は、前記式(I)に示す通り、重合体であっても良いが、モノマーであっても良い。なお、重合体には「ポリマー」と「オリゴマー」があり、両者の区別は必ずしも明確ではない。しかし、本発明では、重合度が均一な分子集合体として単離可能な分子を「オリゴマー」と呼び、重合度が均一な分子集合体として単離できない分子を「ポリマー」と呼ぶ。本発明の化合物は、重合体の場合はオリゴマーでもポリマーでも良いが、重合度に応じて電気的性質等を自在に設計できる等の観点から、オリゴマーが好ましい。
【0015】
また、前記式(I)で表される化合物に互変異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の化合物に含まれる。さらに、前記式(I)の化合物またはその異性体が塩を形成し得る場合は、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば酸付加塩でも塩基付加塩でも良く、さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸および、ヨウ化水素酸等が挙げられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等が挙げられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等が挙げられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。前記本発明の化合物の塩の製造方法も特に限定されず、例えば、本発明の化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0022】
また、前記式(I)中、R1~R6が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2~6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基であり、R7が、水素原子またはメチル基であることが好ましい

【0023】
なお、本発明で「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。また、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基および2-ブテニル基等が挙げられる。
【0024】
また、前記式(I)中、R1~R6が、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、または9-アントリル基であり、R7が、水素原子またはメチル基であることが一層好ましい。
【0025】
前記式(I)中、例えば、下記式(II)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩が特に好ましい。
【0026】
【化16】
JP0004505568B2_000004t.gif

【0027】
式(II)中、X1、X2およびnは、それぞれ前記式(I)と同じである。式(II)で表される化合物は、
共役鎖に対して垂直に配置されたtert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS基)により剛直性が保持されるため、有効共役長を損なわない。さらに、TBDPS基は立体的に嵩高いため、共役鎖を効果的に外界から被覆することが可能である。
【0028】
なお、X1およびX2は、水素原子でも良いが、メルカプト基であると、例えば、分子ワイヤとして電極に接合させる際に効果的である。

【0031】
また、前記式(I)中、重合度nは、特に限定されないが、例えば2の倍数が好ましく、また、例えば1~96が好ましく、例えば1、2、4、6、8、12または16であることが特に好ましい。なお、本発明の化合物は、前述の通り、モノマーでも重合体でも良く、重合体の場合はオリゴマーでもポリマーでも良いが、オリゴマーが好ましい。「ポリマー」と「オリゴマー」の定義は前述の通りである。
【0032】
次に、本発明の分子集合体は、前記式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩からなる分子集合体であり、前記分子集合体中における前記化合物分子の重合度nが均一である分子集合体である。
【0033】
本発明の化合物からなる分子集合体は、例えば、前記化合物分子の重合度が均一でなくても、電子材料等に好ましく用いることができる。しかし、前記のように重合度nが均一である分子集合体は、重合度に応じた特徴的な性質を示すため、電気的性質を重合度に応じて自在に設計できる等の観点から好ましい。
【0034】
また、前記化合物分子の重合度nが均一である前記本発明の分子集合体は、例えば、下記式(VII)で表される骨格の電気的性質、例えば導電性等を測定するために好ましく用いることができる。
【0035】
【化18】
JP0004505568B2_000005t.gif

【0036】
式(VII)中、Zおよびnは、それぞれ前記式(I)と同じである。
【0037】
前述の通り、オリゴチオフェンおよびその誘導体を電子材料に適用するための研究においては、まず、オリゴチオフェン構造の重合度に応じた電気的性質を明らかにするために、オリゴチオフェン単分子の電気的性質、例えば導電性等の計測が重要である。このことは、チオフェンを他のヘテロ芳香環に置き換えても同様である。この観点から、重合度nが均一である前記本発明の分子集合体は、オリゴヘテロ環化合物の重合度に応じた電気的性質を明らかにするための研究用ツールとしても有用である。
【0038】
また、本発明の電子材料または半導体は、前記式(I)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、または前記本発明の分子集合体を含むことにより、優れた電気的性質を示す。特に、重合度nが均一である前記本発明の分子集合体を含むことで、電気的性質を重合度に応じて自在に設計できる。
【0039】
次に、本発明の化合物の製造方法について説明する。
【0040】
本発明の化合物を製造する方法は、特に限定されず、どのような方法でも良いが、以下に説明する本発明の製造方法が好ましい。すなわち、まず、本発明の製造方法は、前記式(I)で表される化合物[ただし、X1およびX2が水素原子であり、n=1である]、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を製造する方法であり、下記式(III)~(V)で表される化合物のカップリング反応により下記式(VI)で表される化合物を製造する工程を含む。

【0041】
【化10】
JP0004505568B2_000006t.gif



【0042】
【化20】
JP0004505568B2_000007t.gif

【0043】
式(III)~(VI)中、
1~Y6、R1~R6およびZは、それぞれ前記式(I)と同じであり、Hal1およびHal2は、それぞれ独立に、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0044】
前記カップリング反応の条件は特に限定されず、例えば、公知のアルコールとシリルハライドのカップリング反応の条件を参考にして適宜選択しても良い。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド溶媒、または非プロトン性溶媒中、イミダゾール等の塩基を共存させ、前記式(III)~(V)で表される化合物をカップリング反応させても良い。反応温度も特に限定されず、原料(前記式(III)~(V)で表される化合物)の種類等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば-20℃~200℃、好ましくは0℃~100℃である。また、溶媒、試薬等も、前記のものに限定されず、適宜選択可能である。
【0045】
次に、式(I)で表される化合物の本発明の製造方法は、前記式(VI)で表される化合物を重合させる工程を含むことが好ましく、また、例えば、前記重合工程により得られた生成物をさらに重合させる工程を含むことがより好ましい。このように重合工程を利用し、重合度を自在に制御することができる。

【0046】
前記重合は、特に限定されず、例えば、ヘテロ環の重合の反応として公知である反応を適宜用いることが可能である。その中で、例えば、有機リチオ化剤を用いた酸化的重合が好ましい。反応条件、試薬等も特に限定されず、例えば、従来公知の酸化的重合反応を参考にして適宜選択可能である。例えば、有機リチオ化剤としては、特に限定されないが、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、iso-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。また、必要に応じて溶媒を用いても良い。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)等のエーテルが挙げられる。さらに、必要に応じてその他の試薬を用いても良く、前記試薬も特に限定されないが、例えば、鉄アセチルアセトナート等のアセチルアセトナト錯体、FeCl3、CuCl2、CuBr2等のハロゲン化物塩、Fe(ClO4)3等の過ハロゲン酸塩等が挙げられる。反応温度も特に限定されないが、例えば-100℃~200℃、好ましくは0℃~100℃である。
【0047】
なお、前記重合において、本発明の化合物は、重合度が異なる重合体の混合物として得られる場合がある。この場合、重合度が均一な分子集合体を得るためには、前記混合物を分離する必要がある。この分離方法も特に限定されず、例えば、カラムクロマトグラフィー、GPC等の公知の方法を用いることができる。また、重合後、または重合後さらに分離精製した後、置換基X1およびX2を必要に応じて導入しても良い。この導入方法も特に限定されず、例えば、公知の方法を適宜応用しても良い。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0049】
本実施例では、下記スキーム1に従い、縮環したシクロペンタン環を介して2つのtert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS基)を導入したチオフェン(1T)、および、(1T)を基本単位とする被覆型オリゴチオフェンを製造(合成)した。なお、下記スキーム1を含む本実施例中で、化合物(nT)は、前記式(II)中、X1およびX2がいずれも水素原子である化合物に相当する。化合物(nT)におけるnは、前記式(II)中のnと同じく、重合度を表す。なお、スキーム1に示す(1T)、(2T)、(4T)、(8T)および(16T)の他、(3T)、(6T)および(12T)も合成し、物性値を測定した。
【0050】
【化11】
JP0004505568B2_000008t.gif

【0051】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN-270(1H測定時270MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、PerSeptive Biosystems社製Voyager Linear DE-H(商品名)を用い、MALDI-TOF法により測定した。紫外可視吸収スペクトル(UV-VIS)は、株式会社島津製作所製UV-3100PC(商品名)を用い、溶液法により測定した。測定値(波長)はnmで表している。赤外線吸収スペクトル(IR)はKBr法により測定した。測定値(波数)はcm-1で表している。サイクリックボルタンメトリーは、ビー・エー・エス株式会社製CV-50W(商品名)を用いて測定した。融点は、株式会社柳本製作所製の微量融点測定器を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silica gel 60N(40~50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、またはシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入した。
【0052】
まず、以下のように、1,3-ジブロモ-5,5-ビス(エトキシカルボニル)シクロペンタ[c]チオフェンを合成し、さらにそれを還元し、スキーム1の出発原料である5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c] チオフェンとした。なお、この5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c] チオフェンの合成は、非特許文献1(Aso, Y. ; Otsubo, T. et al. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5286.)の記載を参照して行なった。
【0053】
(1,3-ジブロモ-5,5-ビス(エトキシカルボニル)シクロペンタ[c]チオフェン)
まず、水素化ナトリウム60%含有オイル(9.5g, 0.238 mol)を含むトルエン(293mL)およびDMF(29mL)混合溶媒を調製した。次に、それを60℃に加熱し、マロン酸ジエチル(17.4g, 0.108mol)および2,5-ジブロモ-3,4-ビス(ブロモメチル)チオフェン(45.0g, 0.105mol)の無水トルエン(225mL)溶液を、窒素雰囲気下、30分間かけて滴下した。この混合物を、60℃でさらに30分間攪拌した後、室温まで冷却し、水(20mL)を注意深く加え、そして、不溶固形物をセライトによる濾過で除去した。得られた濾液から有機層を分離し、水層はジクロロメタン(200mL×3)で抽出した。前記有機層および抽出液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製し、ヘキサンから再結晶し、1,3-ジブロモ-5,5-ビス(エトキシカルボニル)シクロペンタ[c]チオフェンの無色板状結晶を得た(収量25.5g、収率56%)。以下に、この化合物の機器分析データを示す。
【0054】
1,3-ジブロモ-5,5-ビス(エトキシカルボニル)シクロペンタ[c]チオフェン:
融点82~83℃; 1HNMR(270MHz, CDCl3) δ1.27 (t, 6H, J=7.3Hz, CH3), 3.28 (s, 4H, CH2), 4.22 (q, 4H, J=7.3Hz, CH2); 13CNMR(100MHz, CDCl3) δ13.9, 36.1, 62.0, 64.6, 101.8, 144.5, 170.3; IR(KBr) ν1730, 1252cm-1(COO), MS(DI)m/z 424, 426, 428(M+); 元素分析:C13H14O4Br2Sに基く計算値: C,36.64; H,3.31%. 実測値:C,36.67; H,3.32%
【0055】
(5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c]チオフェン)
まず、水素化リチウムアルミニウム(2.85g, 75.1mmol)の無水THF(120mL)溶液を調製した。次に、これを氷浴で冷却し、窒素雰囲気下、1,3-ジブロモ-5,5-ビス(エトキシカルボニル)シクロペンタ[c]チオフェン(8.0g, 18.8mmol)の無水THF(30mL)溶液を緩やかに滴下した。この混合溶液を20時間還流させた後、氷浴で冷却しながら、酢酸エチル(30mL)、水(6mL)および1N(1mol/L)塩酸(6mL)を、この順番で連続的に加えた。そして、不溶固形物を濾過により除去し、さらにアセトン(100mL×3)で洗浄した。前記濾液および洗浄液を合わせ、減圧下で濃縮した。得られた固形物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)で精製し、酢酸エチルとクロロホルムの1:4混合溶媒から再結晶し、5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c]チオフェンの無色針状結晶を得た(収量3.07g, 収率89%)。以下に、この化合物の機器分析データを示す。
【0056】
5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c]チオフェン:
分解点139~141℃;1HNMR(270MHz, CDCl3) δ2.23 (t, 2H, J=4.8Hz, OH), 2.62 (s, 4H, CH2), 3.77 (d, 4H, J=4.8Hz, CH2), 6,79 (s, 2H, ArH); 13CNMR(100MHz, CDCl3) δ32.8, 55.9, 69.5, 115.4, 145.9; IR(KBr) ν3000-3600cm-1(OH), MS(DI)m/z 184(M+); 元素分析:C9H12O2Sに基く計算値: C,58.67; H,6.56%. 実測値:C,58.55; H,6.74%
【0057】
[5,5-ビス(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)シクロペンタ[c] チオフェン(1T)の合成]
以下のようにして、出発原料5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c] チオフェンから5,5-ビス(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)シクロペンタ[c] チオフェン(1T)を合成した。すなわち、まず、 5,5-ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタ[c] チオフェン(1.35g, 7.3mmol)とイミダゾール (2.01g, 29.6mmol)のジメチルホルムアミド溶液(25mL)を調製した。次に、これにtert-ブチルジフェニルシリルクロライド(5mL, 19.5mmol)を室温で滴下し、4時間撹拌した。このようにして得られた反応液に水を加え酢酸エチルで抽出した。そして、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濾過して不溶物を除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/クロロホルム (3:1))で単離精製し、化合物 (1T)を無色固体として得た(収量4.69g, 収率97%)。以下に、この化合物(1T)の機器分析データを示す。
【0058】
5,5-ビス(tert-ブチルジフェニルシリルオキシ)シクロペンタ[c] チオフェン(1T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 1.03 (s, 18H), 2.60 (s, 4H), 3.74 (s, 4H), 6.69 (s, 4H), 7.26-7.42 (m, 12H), 7.60-7.64 (m, 8H). 13CNMR(CDCl3): δ19.48, 26.94, 32.74, 57.95, 66.25, 114.67, 127.53, 129.44, 133.45, 135.50, 146.58.
【0059】
[化合物(2T)の合成]
まず、化合物(1T) (823 mg, 1.24mmol)のテトラヒドロフラン溶液(14mL)を調製した。次に、この溶液を0℃に冷却し、その温度でn-ブチルリチウム (1.9mL, 1.6Mヘキサン溶液)を滴下し、1時間撹拌した。さらに、鉄アセチルアセトナート(888 mg, 2.51mmol)を加え、80℃まで昇温させた後、一晩還流させた。反応終了後、得られた反応液を室温まで冷却し、水にあけ、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濾過して不溶物を除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム (2:1))で単離精製を行い、化合物(2T)を黄色固体として得た(収量700mg, 収率86%)。以下に、この化合物(2T)の機器分析データを示す。
【0060】
化合物(2T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 1.03 (s, 36H), 2.60 (s, 4H), 2.73 (s, 4H), 3.76 (s, 8H), 6.59 (s, 2H), 7.21-7.36 (m, 24H), 7.60-7.65 (m, 16H). 13CNMR(CDCl3): δ19.48, 26.99, 33.06, 34.05, 57.98, 66.35, 113.13, 127,53, 127.56, 133.30, 133.43, 135.49, 135.51, 141.88, 146.85. MS (m/z) : 1326.1 (M+).
【0061】
なお、上記(2T)の合成反応における副生成物として、化合物(3T)も単離精製し、物性値を測定した。
【0062】
[化合物(4T)の合成]
原料として、化合物(1T)に代えて(2T)を用いること、および、反応温度を0℃に代えて-78℃とすること以外は、化合物(2T)の合成と同様の方法で反応および精製を行ない、化合物(4T)を合成した。(収量737mg, 収率60%)。以下に、この化合物(4T)の機器分析データを示す。
【0063】
化合物(4T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 0.89 (s, 36H), 0.90 (s, 36H), 2.47 (s, 4H), 2.59 (s, 4H), 2.64 (s, 8H), 3.67 (s, 8H), 3.73 (s, 8H), 6.48 (s, 2H), 7.03-7.25 (m, 24H), 7.46-7.57 (m, 16H). 13CNMR(CDCl3): δ19.41, 26.93, 26.97, 33.64, 34.09, 34.78, 57.88, 57.97, 66.16, 113.23, 125.99, 126.07, 127.49, 127.53, 127.56, 129,42, 133.04, 133.07, 133.38, 133.49, 135.46, 135.50, 141.36, 141.83, 142.56, 147.21. MS (m/z) : 2643.5 (M+).
【0064】
また、上記(4T)の合成反応における副生成物として、化合物(6T)を単離精製し、物性値を測定した。以下に、機器分析データを示す。
【0065】
化合物(6T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 0.89 (s, 36H), 0.93 (s, 36H), 1.00 (s, 36H), 2.53 (s, 4H), 2.63 (s, 12H), 2.66 (s, 4H), 2.68 (s, 4H), 3.72 (s, 8H), 3.78 (s, 16H), 6.55(s, 2H), 7.04-7.32 (m, 72H), 7.49-7.62 (m, 48H). MS (m/z) : 3963.3 (M+).
【0066】
[化合物(8T)の合成]
原料として、化合物(1T)に代えて(4T)を用いること、および、反応温度を0℃に代えて-78℃とすること以外は、化合物(2T)の合成と同様の方法で反応および精製を行ない、化合物(8T)を合成した。(収量176mg, 収率30%)。以下に、この化合物(8T)の機器分析データを示す。
【0067】
化合物(8T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 0.87 (s, 72H), 0.93 (s, 36H), 0.95 (s, 36H), 2.54-2.66 (m, 32H), 3.63 (m, 32H), 6.56 (s, 2H), 7.03-7.25 (m), 7.46-7.57 (m). MS (m/z) : 5270.7 (M+).
【0068】
また、上記(8T)の合成反応における副生成物として、化合物(12T)を単離精製し、物性値を測定した。以下に、機器分析データを示す。
【0069】
化合物(12T):
1HNMR(CDCl3-TMS) : δ 0.84-0.94 (m), 2.59 (m), 3.76 (m), 6.56 (s), 7.06-7.33 (m), 7.51-7.59 (m). MS (m/z) : 7758.1 (M+).
【0070】
さらに、化合物(8T)を原料に用いる以外は化合物(4T)および(8T)の合成と同様に反応および精製を行ない、化合物(16T)も合成した。
【0071】
このように、まずチオフェンモノマーユニット(1T)を合成し、さらに、酸化的重合を繰り返し、オリゴマー(2T)~(16T)を合成することができた。
【0072】
(分子構造および電気的性質)
上記の通り合成した本実施例の化合物について、分子構造および電気的性質を測定した。
【0073】
すなわち、まず、化合物(2T)、(3T)、(4T)、(6T)、(8T)および(12T)について、紫外可視吸収スペクトル(UV-VIS)測定により電子吸光度を調べた。図1に、その結果を示す。同図において、横軸は光の波長であり、縦軸は電子吸光係数(ε)である。見易さのため、(2T)においてはεを2倍に、(3T)においてはεを1.5倍に、それぞれ拡大して示している。図示の通り、本実施例の化合物における吸収のピーク波長は、重合度の増加に応じて長波長側に整然と移動している。このことは、オリゴチオフェン構造中のπ電子共役が効果的に保たれていることを示す。その要因は、おそらく、オリゴチオフェン構造すなわちπ-共役骨格を嵩高いtert-ブチルジフェニルシリル基により被覆したため、前記π-共役骨格の平面性が保たれるとともに、分子間のπ-スタッキング相互作用等が阻害されたためと考えられる。
【0074】
また、サイクリックボルタンメトリーにおける還元電位からも、π電子共役が効果的に保たれていることを確認した。さらに、化合物(4T)等についてX線結晶構造解析を行ない、オリゴチオフェン構造すなわちπ-共役骨格の平面性が良好に保たれていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明した通り、本発明の化合物は、ヘテロ環が効果的に被覆され、電子材料等に適する。本発明の化合物によれば、まず、ヘテロ環が効果的に被覆されているため、従来のオリゴチオフェン等では達成困難であった、オリゴチオフェン等のオリゴヘテロ環化合物単分子の導電度測定を行う事が可能となる。この観点から、本発明の化合物は、オリゴヘテロ環化合物の重合度に応じた電気的性質を明らかにするための研究用ツールとしても有用である。また、本発明の化合物は、被覆によりπ電子共役を効果的に保つことで、分子エレクトロニクス素子において重要な分子ワイヤへの適用も可能である。さらに、本発明の化合物の用途はこれらに限定されず、あらゆる用途に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例の化合物の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
図面
【図1】
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