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明細書 :妊娠状態における薬物代謝予測法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4721752号 (P4721752)
公開番号 特開2006-288211 (P2006-288211A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月13日(2011.7.13)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 妊娠状態における薬物代謝予測法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12Q 1/68 A
C12N 15/00 F
C12N 15/00 A
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 21
出願番号 特願2005-109369 (P2005-109369)
出願日 平成17年4月6日(2005.4.6)
審査請求日 平成20年1月31日(2008.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
発明者または考案者 【氏名】三高 俊広
【氏名】大栄 秀和
【氏名】今 純子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
【識別番号】100089048、【弁理士】、【氏名又は名称】浅野 康隆
【識別番号】100101317、【弁理士】、【氏名又は名称】的場 ひろみ
【識別番号】100134935、【弁理士】、【氏名又は名称】大野 詩木
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 特表2002-503696(JP,A)
国際公開第2002/088332(WO,A1)
国際公開第2001/096866(WO,A1)
調査した分野 C12Q 1/00
C12N 15/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
被験薬物、エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質の存在下に小型肝細胞を培養し、薬物代謝関連酵素発現の変動を測定することを特徴とする、妊娠状態における被験薬物の薬物代謝予測法。
【請求項2】
薬物代謝関連酵素発現の変動をDNAチップで測定する請求項1記載の薬物代謝予測法。
【請求項3】
薬物代謝関連酵素発現の変動が、エストロゲン作用物質及び/又はプロゲステロン作用物質が非存在下の場合と存在下の場合とを対比するものである請求項1又は2記載の薬物代謝予測法。
【請求項4】
薬物代謝関連酵素が、
Cytochrome P450, subfamily I、
Flavin-containing monooxygenase 1、
Hydroxysteroid dehydrogenase, 11 beta type 2、
Lysyl oxidase、
Monoamine oxidase B、
gluthathione-S-transferase、
Rat alcohol dehydrogenase (ADH)、
Rat cytochrome P-450j、
Rat hydroxysteroid sulfotransferase、
Rattus norvegicus 4-trimethylaminobutyraldehyde dehydrogenase (Tmabadh)、
Rattus norvegicus liver cytochrome c oxidase subunit VIII (COX-VIII)、
7-dehydrocholesterol reductase、
Glutathione-S-transferase, mu type 2 (Yb2)、
Aldehyde dehydrogenase 1 (phenobarbitol inducible)、
Glutathione-S-transferase, alpha type (Yc2)、
Glutathione S-transferase, pi 2、
Platelet-activating factor acetylhydrolase beta subunit (PAF-AH beta)、
Plasma glutathione peroxidase precursor、
Rat NADPH-cytochrome P-450 oxidoreductase、
Acyl-coA oxidase、
Rat glutathione S-transferase、及び
Rat microsomal aldehyde dehydrogenase
から選ばれるものである請求項1~3のいずれか1項記載の薬物代謝予測法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、妊娠中における薬物の代謝を簡便かつ正確に予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における薬物代謝は、新薬開発における毒性評価、既存薬物の毒性評価、副作用の予測等の点で極めて重要であり、特に新薬開発にあたっては必須の評価項目である。ところで、妊娠期間中は、通常の状態と相違し、エストロゲンとプロゲステロンの血中濃度が高い状態が長期間続くというホルモン異常状態である。従って、妊娠期間中の薬物代謝を評価することは、妊娠時の薬剤投与により母体がどのような影響を受けるかを評価するうえで極めて重要である。
【0003】
しかしながら、従来、妊娠期間中の薬物代謝についての検討はほとんどなされていない。これは、ヒトの妊娠期間は約9ヶ月あるものの、催奇形性等、安全面で問題があるためであり、実験動物のラットやマウスの妊娠期間は21日と極めて短く、薬剤の感受性や代謝機序の解析が不可能だったことに起因する。かかる観点から、胎児に対する催奇形性について調べることが義務づけられており、医学的に初期3ヶ月以内のいかなる薬剤投与も禁忌とされている。しかし、妊娠中期以降の安定期における薬剤服用は一般的には行われていると思われる。例えば、風邪やアレルギー症状緩和、不眠時における薬剤の服用等の場合が考えられる。しかしながら、妊娠時における薬物投与は注意しながらの医師による投与という根拠のない処方が多くなされているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、妊娠中における薬物の代謝を、細胞を用いた実験で簡便かつ正確に予測する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、小型肝細胞の機能及び培養の容易性に着目し、種々検討した結果、小型肝細胞をエストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質の存在下に培養する系に、被験薬物を添加して培養し、薬物代謝関連酵素発現の変動を観察すれば、妊娠状態における被験薬物の肝代謝が正確に予測できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、被験薬物、エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質の存在下に小型肝細胞を培養し、薬物代謝関連酵素発現の変動を測定することを特徴とする、妊娠状態における被験薬物の薬物代謝予測法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細胞を用いた実験系で簡便且つ正確に妊娠中における薬物代謝、ひいては妊娠中に投与された薬物が母体に及ぼす影響を予測できる。本発明は、ヒトでは臨床試験ができない妊娠状態を人為的に作り出して、薬物の反応を推定する方法であり、他に代替する方法が無い画期的な発明であり、薬剤の副作用を未然に防ぐ可能性がある重要な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の薬物代謝予測法においては、小型肝細胞を用いる。小型肝細胞は肝組織中に存在する肝幹細胞の一種で肝細胞としての機能を持ちながら、非常に高い増殖活性を持っている。また長期間凍結保存した後、再培養を行ってもその能力を失わない。また、小型肝細胞は培養経過とともに薬物代謝酵素の活性が低下することはなく、成熟化を誘導するとその活性も成熟肝細胞に近づく。従って、小型肝細胞は、薬物代謝酵素誘導能の高い状態を長期間に渡って維持することができる特性を有している。
【0009】
小型肝細胞の由来は、ヒト、サルが最も好ましいが、入手可能な動物の中では、ラット、マウス等のげっ歯類由来がよく、ウサギ、ヒツジ、ブタでもよいが、ラット由来が特に好ましい。最近ヒトの小型肝細胞の培養法が報告されているので、これを用いることもできる(特開平10-179148号)。
【0010】
小型肝細胞は、例えばラットの肝臓よりコラゲナーゼ灌流法によって採取された細胞懸濁物から、遠心操作を繰り返すことによって単離することができる。又、同細胞懸濁物から小型肝細胞特異的抗原に対する特異抗体(CD44、BRI3、D6.1A等)やヒアルロン酸を付着した担体などにより分離することができる。
【0011】
得られた小型肝細胞は、凍結保存することができるので、長期保存可能である。
【0012】
小型肝細胞の培養にあたっては、被験薬物以外に、エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質を共存させる。エストロゲン作用物質としては、17-βエストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール等が挙げられる。また、プロゲステロン作用物質としては、(遊離型又は結合型)プロゲステロン、プレグナンジオール、メドロキシプロゲステロン、ノルエチステロン、デソゲストレル等が挙げられる。エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質を添加することにより、小型肝細胞を疑似妊娠状態にすることができ、妊娠状態特有の薬物代謝酵素を誘導することができる。培養液中のエストロゲン作用物質の濃度は、10-10~10-4M、さらに10-8~10-5M、特に10-5~10-6Mが好ましい。プロゲステロン作用物質の濃度は10-10~10-4M、さらに10-8~10-5M、特に10-5~10-6Mが好ましい。小型肝細胞は、30~50個の細胞よりなるコロニーを形成する培養7~20日目(より好ましくは、8日~14日、特に好ましくは10~12日)に一旦培養皿より剥がして新しい培養皿に再播種するか、凍結保存した小型肝細胞コロニーを500~10000コロニー/60-mm 培養皿(より好ましくは、1000~5000コロニー/60-mm 培養皿、特に好ましくは2000~4000コロニー/60-mm 培養皿)の濃度で播種し、培養する。

【0013】
培養は、コラーゲンをコートしたディシュ上で行うのが好ましい。また、培地としては、DMEM培地、William’s Medium E培地、RPMI1640培地等を用いることができる。さらに培地中にはFBS、アスコルビン酸、DMSO、ニコチンアミド、上皮細胞増殖因子(EGF, epidermal growth factor)、デキサメタゾン、インスリンを添加することができる。増殖因子としては、EGFの他に、肝細胞増殖因子[HGF, hepatocyte growth factor]、腫瘍増殖因子[TGF-alpha, Transforming growth factor-alpha]、線維芽細胞増殖因子[FGF, fibroblast growth factor]などが挙げられる。培養は、通常35±5℃、3~7%CO2インキュベーター内の条件で行うのが好ましい。
【0014】
小型肝細胞を被験薬物の存在下(エストロゲン作用物質及び/又はプロゲステロン作用物質非存在下)に培養した場合には、通常の状態の薬物代謝酵素が誘導される。一方、小型肝細胞を、被験薬物、エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質の存在下に培養した場合には、妊娠状態下特有の薬物代謝酵素が誘導される。従って、エストロゲン作用物質及び/又はプロゲステロン作用物質が非存在下の薬物代謝関連酵素発現と、エストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質存在下の薬物代謝関連酵素発現とを対比すれば、妊娠状態における薬物代謝が予測できる。
【0015】
薬物代謝関連酵素の発現は、当該遺伝子の発現、例えば通常のハイブリダイゼーション法により測定できるが、多くの遺伝子を同時に測定できる点から、DNAチップ(マイクロアレイ)で測定するのが好ましい。ここで、測定対象とできる遺伝子として例えば、チトクロームP450(CYP)遺伝子群を含む第一相及び第二相薬物代謝酵素群、転写因子、各種の受容体などが挙げられる。
【0016】
DNAチップの構成としては、各種薬物代謝関連酵素遺伝子(cDNAまたは合成オリゴDNA)を固定化したものが好ましい。細胞から採取したRNAを用いて標識cDNAを合成し、DNAチップ上でハイブリダイズさせ、標識体を検出する。標識としては、蛍光色素、酵素、ラジオアイソトープ等が挙げられるが、検出の容易性、感度の点から蛍光色素が好ましい。
【0017】
薬物代謝酵素発現の変動は、被験薬物非添加時の薬物代謝酵素発現用標識体と、被験薬物添加時の薬物代謝酵素発現用標識体とを、それぞれ異なる標識体を用い、それらの発現量の比を求める。そして、それらの比がエストロゲン作用物質及び/又はプロゲステロン作用物質非添加時に対してエストロゲン作用物質及びプロゲステロン作用物質添加時にどの程度変動したかを検出すれば判定できる。
【0018】
得られた薬物代謝関連酵素遺伝子の変動結果から、通常のヒトにおける薬物の肝代謝と妊娠状態における薬物の肝代謝の相違が検出できる。従って、妊娠時の薬剤投与による母体に対する作用、例えば薬剤の副作用、薬剤の効果の遷延の可能性、肝毒性の可能性等が判定できる。その結果、薬剤の投与量、投与間隔の加減、肝庇護剤との併用、妊娠時に投与可能な薬剤の選択等が可能となる。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
A:試験方法
1)凍結小型肝細胞の調製
メスのラットの肝臓をコラゲナーゼを含む溶液で灌流し、得られた細胞をハンクス緩衝液(表1)に懸濁し50×g、1min、4℃で遠心して上清を回収する。この操作を3回繰り返す。
50×g、5min、4℃で遠心し、沈殿をハンクス緩衝液に懸濁する。この操作を3回繰り返す。
150×g、5min、4℃で遠心し、沈殿をハンクス緩衝液に懸濁する。
150×g、5min、4℃で遠心し、沈殿をDMEM/FBS(表2)に懸濁する。
50×g、5min、4℃で遠心し、沈殿をDMEM/FBSに懸濁する。
生細胞数を数え、6×104生細胞/mlになるようDMEM/FBSで調製する。
【0021】
【表1】
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【0022】
【表2】
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【0023】
100-mm 培養皿(CORNING)に9mlずつ分注し、CO2インキュベーター(37℃,5%CO2,湿度95%)で10日間培養する。この間、2日に1回培地をDMEM/FBSで交換する。培養皿から培地を除き6mlのPBSで2回洗浄した後、2mlの0.02%EDTAを含むPBSを加えて軽く攪拌し、液を除く。37℃に温めたCell dissociation solution(SIGMA)を2ml加え、CO2インキュベーター内で5min静置する。DMEMを1ml加えて小型肝細胞コロニーを回収、50×g、5minで遠心し、4培養皿分の沈殿を1mlのセルバンカー(三菱化学ヤトロン)に懸濁する。-30℃で30min凍結したのち、-80℃で保存する。
【0024】
2)成熟肝細胞の調製
メスのラットの肝臓をコラゲナーゼを含む溶液で灌流し、得られた細胞懸濁液を50×g、1min、4℃で遠心し、沈殿を回収する。
ハンクス緩衝液に懸濁し、50×g、1min、4℃で遠心、この操作を3回繰り返す。
細胞を25mlのハンクス緩衝液に懸濁し、21.6ml パーコール(Amersham)、2.4ml 10×ハンクス緩衝液に加えて転倒混合する。50×g、15min、4℃で遠心し、上清を除く。細胞をPBSで懸濁し、50×g、1min、4℃で遠心、沈殿を回収する。
【0025】
3)コラーゲンコート培養皿の調製
ラットの尾から調製したコラーゲン液(5mg/ml)を0.1% 酢酸で100倍に希釈し、60-mm 培養皿(CORNING)に3mlずつ分注する。室温で1hr静置してからコラーゲン液を除き、クリーンベンチ内で一晩乾燥させたのち、紫外線を1hr照射して滅菌、3mlのPBSを加えて37℃で30minインキュベートする。その後PBSを除き、細胞を播種する。
【0026】
4)凍結小型肝細胞の培養
凍結小型肝細胞を37℃インキュベーター内で解凍し、37℃に温めたDMEM/FBS培地10mlに加えて50×g、1min遠心する。上清を除き、37℃に温めたDMEM/FBS培地3mlに沈殿した細胞を懸濁してコラーゲンコート培養皿に播種する。CO2インキュベーター(37℃,5%CO2,湿度95%)で培養し、24時間後培地を無血清培地(DMEM/DMSO、表3)に交換し、以後2日に1回培地をDMEM/DMSOで交換する。擬似妊娠状態として培養する場合には、女性ホルモンを添加した培地を細胞播種及び培地交換に用いる。17-βエストラジオール(SIGMA)及びプロゲステロン(SIGMA)はDMSOに溶解し、それぞれが10-5Mの濃度になるよう培地に添加し、培地に含まれるDMSO濃度が1%以下になるよう調製する。
培養21日目から培地に薬剤を添加し、培養を続ける。フェノバルビタール(SIGMA)、アセトアミノフェン(SIGMA)はDMSOに溶解し、それぞれ2mM、5mMになるよう培地に添加し、培地に含まれるDMSO濃度が1%以下になるよう調製する。薬剤添加培地を毎日交換して4日間培養したのちに、細胞からのRNA抽出あるいはタンパク質抽出を行う。
【0027】
【表3】
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【0028】
5)蛋白質の抽出とウェスタンブロッティング
解凍後25日間培養した小型肝細胞を3mlのPBSで2回洗浄を行い、1mlのリシス緩衝液(10mM Tris-HCl pH7.4,5mM EDTA,150mM NaCl,5μg/mlペプスタチンA,5μg/mlロイペプチン)を加えて4℃で1hr静置する。緩衝液に細胞を懸濁させて回収し、氷上で超音波処理(Sonifier,50%duty,output1,30sec)を行った後、1,200×g、5min、4℃で遠心して上清を回収し、蛋白質溶液とする。溶液はBCAプロテインアッセイキット(PIERCE)でタンパク濃度を測定し、濃度標準はBSAを用いる。
【0029】
SDS-PAGEは以下の条件で行う。
スタッキングゲルは、5% アクリルアミド、0.1% SDS、125mM Tris-HCl(pH6.8)。
ランニングゲル、10% アクリルアミド、0.1% SDS、375mM Tris-HCl(pH8.8)。
調製した溶液に3/200量の10% 過硫酸アンモニウム(和光純薬工業)、1/100量のTEMED(関東化学)を加えて重合した。
サンプルは等量のサンプル緩衝液(62.5mM Tris-HCl(pH6.8)、10% グリセロール、2% SDS、5% 2-メルカプトエタノール、25μg/mlブロモフェノールブルー(関東化学)と混合し95℃で2min熱変性してから20μgタンパク/レーンでアプライする。
分子量マーカーは、Precision Protein marker(BIO-RAD)を用いた。
【0030】
泳動後ゲルを10mMCAPS 緩衝液で10min×2回洗浄し、ウェット式転写装置でメンブレン(PROTRAN,Schleicher&Schuell)に転写(1hr,4℃)する。
転写後メンブレンはブロックエース(大日本製薬)中で室温、1hr振とうしてブロッキングしてから一次抗体と反応させる。
抗ラットCYP1A2抗体(Rabbit,第一化学薬品)、抗ラットCYP2E1抗体(Goat、第一化学薬品)は1% ブロックエース(in PBS)で希釈し、それぞれの抗体を含むPBSにメンブレンを浸して室温で1hr振とうする。
メンブレンを0.05% Tween20(in PBS)で5min×3回洗浄し、1%ブロックエース(in PBS)で1万倍希釈した二次抗体(AP標識)液に浸して室温で1hr振とうする。
メンブレンを0.05% Tween20 (in PBS)で5min×3回洗浄し、SuperSignal West Dura Extended Duration Substrate(PIERCE)で発色、検出を行う。
【0031】
6)妊娠ラット肝及び培養細胞からのRNAの抽出
解凍後25日間培養した小型肝細胞を3mlのPBSで2回洗浄し、1mlのISOGEN(ニッポンジーン)を加えて室温で5min静置して細胞溶解液を回収する。成熟肝細胞はPBSに懸濁したのち50×g、1minで遠心して回収し1mlのISOGEN(ニッポンジーン)を加えて室温で5min静置して細胞溶解液を回収する。細胞溶解液に0.2mlのクロロホルムを加えて15sec激しく攪拌後、室温で3min静置する。12,000×g、15min、4℃で遠心して水層を回収し、0.5mlの2-プロパノールを加えて攪拌。室温で10min静置して12,000×g、10min、4℃で遠心、沈殿を75%エタノールでリンスしてから風乾、DEPC処理水に溶解してRNAサンプルとする。濃度は260nmの吸光度により測定し、OD=1のとき40μg/mlとする。
【0032】
7)マイクロアレイによる解析
CyScribe Post-Labelling Kit (Amersham)を用いてRNAから標識cDNAを合成する。
Total RNA30μgにAnchored oligo (dT)を2μl加え、ヌクレアーゼフリーH2Oで11μlにメスアップしてから70℃で5min熱変性したのち室温で10min静置する。
5×CyScribe Buffer 4μl、0.1M DTT 2μl、ヌクレオチドミックス 1μl、アミノアリル-dUTP 1μl、CyScribe reverse transcriptase 1μlを加えて攪拌、42℃で90minインキュベートする。
2μlの2.5M NaOHを加えて攪拌し、37℃で15minインキュベートする。
10μlの2M HEPESを加えて攪拌し、さらに3μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)、75μlのエタノールを加えて攪拌、-80℃で1時間静置する。
12,000×g、30min、25℃で遠心して上清を除き、1mlの75%エタノールを加えてさらに12,000×g、15min、25℃で遠心、上清を除き沈殿を風乾させてから15μlのヌクレアーゼフリーH2Oに溶解する。
15μlの0.1M NaHCO3(pH9.0)に溶解したCyDyeを加えて攪拌、遮光した。室温で1時間静置後、15μlの4M ヒドロキシルアミンHClを加えて攪拌し15min静置する。
CyScribe GFX Purification Kitを用いて標識cDNAを精製した。Cy5標識cDNA溶液、及びCy3標識cDNA溶液を各45μlずつ混合し、500μlのキャプチャー緩衝液を加えて攪拌してからスピンカラムにアプライする。
13,800×g、30sec、25℃で遠心し、溶出液を廃棄する。
カラムに600μlの洗浄緩衝液(80%EtOH)をアプライし13,800×g、30sec、25℃で遠心し、溶出液を廃棄する。この操作を計3回繰り返す。
もう一度13,800×g、30sec、25℃で遠心して溶出液を廃棄する。
50℃に保温した溶出緩衝液を60μlアプライし室温で遮光して5min静置後、13,800×g、30sec、25℃で遠心して溶出液を回収する。この操作を計2回繰り返す。
回収した溶液を遠心エバポレーターで7.5μlに濃縮し、95℃で2min熱変性してから氷上に静置する。CyScribe Post-Labelling Kit(Amersham)付属の4×ハイブリダイゼーション緩衝液を2.5μl加えて攪拌する。
TaKaRa IntelliGene Rat Toxicology CHIP ver.1.0(http://bio.takara.co.jp/catalog/catalog_d.asp?C_ID=C1416)を用いて解析を行う。(表4、表5)アレイ上にギャップ付カバーグラスをかぶせ、標識cDNA液をアプライする。ハイブリチャンバー(TaKaRa)内にH2Oを100μl滴下してからアレイをセットし、60℃にセットしたウォーターバスにチャンバーを沈め、18時間ハイブリダイゼーションを行う。
アレイは以下の手順で洗浄を行う。洗浄液は全てアレイ1枚あたり50mlで、50ml Falconチューブ中で洗浄を行う。2×SSC、10min→2×SSC、0.2%SDS、55℃、10min振とう×3回→0.06×SSC、10sec。
アレイをスピンドライヤーで1min遠心して水分を飛ばし、GenePix4000B(AXON)により解析を行う。
データはマーカーの蛍光値により補正を行って均一化し、バックグラウンドを除いたMedian値を採用してCy5/Cy3値を算出する。
【0033】
【表4】
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【0034】
【表5】
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【0035】
8)オリジナルアレイを用いた解析
薬剤代謝酵素を中心に143遺伝子の塩基配列を乗せたアレイを作成した。(図1、表6、表7、表8、表9)60merの合成DNAをスライドグラス上に固定化し、スーパーアルデヒドコートでブロッキングした。
アレイの解析は基本的に7)の方法と同様だが、以下の点で異なる。
RNAにPanorama Armored RNA E.coli-B1444(Sigma Genosys)を1μl加えてcDNAを合成し、同配列を載せたスポットの蛍光強度で標準化を行う。
アレイにcDNA溶液をハイブリさせる前に、スライドグラスに以下の前処理を行う。
0.2%SDS、2min×2→H2O、2min→H2O、boil、3min→dry up→25% Ethanol、0.1%NaBH4(in PBS)、5min→0.2%SDS、1min×2→H2O、1min→H2O、boil、5sec→dry up
【0036】
【表6】
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【0037】
【表7】
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【0038】
【表8】
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【0039】
【表9】
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【0040】
B:実験結果
(1)図2に、オリジナルアレイを用いた、妊娠ラットにおける薬物代謝酵素遺伝子の発現解析結果を示す。図2中、Cy3標識(緑色、モノクロではグレー)はメスの正常ラットの成熟肝細胞からのcDNA、Cy5標識(赤色、モノクロでは白色)は妊娠19日目ラットの成熟肝細胞からのcDNAである。この結果、in vitro妊娠ラット肝細胞では薬剤代謝に関わる多くの遺伝子が発現低下していることが確認された(表10)。
【0041】
【表10】
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【0042】
(2)図3に、in vitro疑似妊娠状態における薬物代謝酵素の発現(ウェスタンブロッティング)結果を示す。図3から明らかなように、in vitroでは、女性ホルモン存在下(妊娠ラットにおけるホルモン濃度に近い状態を作る)で小型肝細胞を培養し、CYP遺伝子の発現を調べた結果、CYP1A2、CYP2E1はin vivoと同様に発現低下することを確認した。
【0043】
(3)図4に、TaKaRa IntelliGene Rat Toxicology CHIP ver.1.0による解析結果を示す。
図4の、左側中、Cy5標識は、妊娠19日目ラットの成熟肝細胞からのcDNAであり、Cy3標識は正常ラットの成熟肝細胞からのcDNAである。
右側中、Cy5標識は女性ホルモン添加培養した小型肝細胞からのcDNAであり、Cy3標識は女性ホルモン非添加培養した小型肝細胞からのcDNAである。
この結果、妊娠ラットで発現低下する薬剤代謝に関わる遺伝子のいくつかが、in vitro妊娠状態で培養した小型肝細胞でも同様に発現低下していることがわかった(表11)。
【0044】
【表11】
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【0045】
(4)図5にアセトアミノフェン添加による薬物代謝酵素の発現を示す。図5中、Cy5標識は、5mMアセトアミノフェン添加培養4日後の小型肝細胞からのcDNAであり、Cy3標識は、コントロールである。左側は、女性ホルモン添加(10-5M 17-βエストラジオール+10-5M プロゲステロン)、右側は女性ホルモン非添加である。アセトアミノフェン添加時の薬物代謝酵素の発現変動を示す。表12中の数値はCy5/Cy3値(normal:女性ホルモン非添加、Preg:女性ホルモン添加)である。
【0046】
【表12】
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【0047】
(5)図6にフェノバルビタール添加による薬物代謝酵素の発現を示す。図6中、Cy5標識は、2mMフェノバルビタール添加培養4日後の小型肝細胞からのcDNAであり、Cy3標識は、コントロールである。左側は女性ホルモン添加(10-5M 17-βエストラジオール+10-5M プロゲステロン)、右側は女性ホルモン非添加である。フェノバルビタール添加時の薬物代謝酵素の発現の変動を示す。表13中の数値はCy5/Cy3値(normal:女性ホルモン非添加、Preg:女性ホルモン添加)である。
【0048】
【表13】
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【0049】
アレイの結果から、薬剤代謝酵素のデータを抽出し、さらに通常の培養条件と妊娠状態での発現変動が異なる遺伝子を抽出した。表12及び表13より妊娠状態において薬剤を添加することにより、幾つかの薬剤代謝酵素が通常とは異なる発現変動を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】オリジナルアレイのスポット図及びスポットされた遺伝子の分類を示す。ColumnとRowの番号は表6、表7、表8、表9の番号に一致する。
【図2】オリジナルアレイを用いた、妊娠ラットにおける薬物代謝酵素遺伝子の発現解析結果を示す。
【図3】in vitro疑似妊娠状態における薬物代謝酵素の発現(ウェスタンブロッティング)結果を示す。
【図4】タカラ社DNAチップによる解析結果を示す。画像は全スポット領域のうち左上(Block1)の領域である。
【図5】アセトアミノフェン添加による薬物代謝酵素の発現を示す。画像は全スポット領域のうち左上(Block1)の領域である。
【図6】フェノバルビタール添加による薬物代謝酵素の発現を示す。画像は全スポット領域のうち左上(Block1)の領域である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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