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明細書 :光パルス圧縮装置、光パルス発生装置及び光パルス圧縮方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4327126号 (P4327126)
公開番号 特開2006-171677 (P2006-171677A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月9日(2009.9.9)
公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
発明の名称または考案の名称 光パルス圧縮装置、光パルス発生装置及び光パルス圧縮方法
国際特許分類 G02F   1/365       (2006.01)
FI G02F 1/365
請求項の数または発明の数 11
全頁数 22
出願番号 特願2005-145493 (P2005-145493)
出願日 平成17年5月18日(2005.5.18)
優先権出願番号 2004336067
優先日 平成16年11月19日(2004.11.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年12月13日(2005.12.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】小関 泰之
【氏名】五十嵐 浩司
【氏名】井上 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】山村 浩
参考文献・文献 国際公開第2004/49054(WO,A1)
特開2004-117590(JP,A)
特開2001-69080(JP,A)
特開2001-222037(JP,A)
調査した分野 G02F 1/365
特許請求の範囲 【請求項1】
ビート光を入力し、当該ビート光の時間幅を圧縮して光パルスを発生する光パルス圧縮装置において、
入力端から出力端の方向に異常分散値が減少し、前記ビート光をアップチャープパルスに変換する変換部と、
入力端から出力端の方向の位置に比例して異常分散値が減少し、前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮する圧縮部と、
を備えることを特徴とする光パルス圧縮装置。
【請求項2】
前記圧縮部では、入力端における分散長の4倍~6倍の距離で異常分散値が半減することを特徴とする請求項1に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項3】
前記変換部及び/又は前記圧縮部は、分散減少ファイバであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項4】
前記変換部及び/又は前記圧縮部は、非線形ファイバと線形ファイバを交互に接続したコム状プロファイルファイバであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項5】
前記コム状プロファイルファイバは、入力端に配置される非線形ファイバの長手方向の長さが、その次に配置される非線形ファイバよりも短いことを特徴とする請求項4に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項6】
ビート光を発生するビート光発生部と、請求項1~5の何れか一項に記載の光パルス圧縮装置を備えることを特徴とする光パルス発生装置。
【請求項7】
ビート光を発生し、
入力端から出力端の方向に異常分散値が減少する変換器を用いて前記ビート光をアップチャープパルスに変換し、
入力端から出力端の方向の位置に比例して異常分散値が減少する圧縮器を用いて前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮することを特徴とする光パルス圧縮方法。
【請求項8】
入力端における分散長の4倍~6倍の距離で異常分散値が半減する圧縮器を用いて、前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮することを特徴とする請求項7に記載の光パルス圧縮方法。
【請求項9】
前記変換器及び/又は前記圧縮器は、分散減少ファイバであることを特徴とする請求項7又は8に記載の光パルス圧縮方法。
【請求項10】
前記変換器及び/又は前記圧縮器は、非線形ファイバと線形ファイバを交互に接続したコム状プロファイルファイバであることを特徴とする請求項7又は8に記載の光パルス圧縮方法。
【請求項11】
前記コム状プロファイルファイバは、入力端に配置される非線形ファイバの長手方向の長さが、その次に配置される非線形ファイバよりも短いことを特徴とする請求項10に記載の光パルス圧縮方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスを圧縮する光パルス圧縮装置、光パルス圧縮装置を備える光パルス発生装置及び光パルス圧縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いた光パルス圧縮装置は広く用いられてきた。光ファイバの特徴として、その低損失性に起因する高効率な非線形媒質であること、かつ分散の制御性に優れることが挙げられており、これらの特徴を活用した様々な光パルス圧縮装置が提案されている。
【0003】
これらの中でも、非特許文献1に示されるように、異常分散性を有し、その分散値の絶対値を長手方向に対して徐々に減少させる分散減少ファイバ(DDF:Dispersion Decreasing Fiber)は、比較的高品質な光パルスを発生可能な手段として知られている。
【0004】
また、特許文献1に示されるように、非線形性の高いファイバと分散性の高いファイバを適切な長さを以って交互に接続したコム状プロファイルファイバ(CPF:Comb-like Profiled Fiber)も、DDFと同様に比較的高品質な光パルスを発生可能な手段として知られている。更に、特許文献2に示されるように、DDFは、超広帯域光の発生にも使用可能であることが知られている。

【特許文献1】特開2004-117590号公報
【特許文献2】特開平10-90737号公報
【非特許文献1】S. V. Chernikov, E. M. Dianov, D. J. Richardson and D. N. Payne, “Soliton pulse compression in dispersion-decreasing fiber,” Opt. Lett., vol. 18, no. 7, pp. 476-478, 1993.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、DDF及びCPFによる光パルス圧縮装置は、比較器高品質な光パルスを発生可能であることが知られている。しかしながら、これらDDF及びCPFは、入力パルス及び出力パルスのパラメータに合わせた分散値及び長さの設計が必要であるが、これらの分散値の長手分布が最適ではない場合、光パルスの品質が低下してしまうという問題があった。例えば、分散値の変動が急激である場合には、圧縮された光パルスに、ペデスタルと呼ばれる非圧縮成分が付随する。一方、分散値の変動が緩やかである場合には、より長いファイバが必要であるために、分散効果が累積し、タイミングジッタ等を増加させてしまう。
【0006】
本発明の課題は、光パルスを圧縮するファイバの分散プロファイル(分散分布)を最適化し、高品質な圧縮パルスを発生可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ビート光を入力し、当該ビート光の時間幅を圧縮して光パルスを発生する光パルス圧縮装置において、入力端から出力端の方向に異常分散値が減少し、前記ビート光をアップチャープパルスに変換する変換部と、入力端から出力端の方向の位置に比例して異常分散値が減少し、前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮する圧縮部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光パルス圧縮装置において、前記圧縮部では、入力端における分散長の4倍~6倍の距離で異常分散値が半減することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光パルス圧縮装置において、前記変換部及び/又は前記圧縮部は、分散減少ファイバであることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光パルス圧縮装置において、前記変換部及び/又は前記圧縮部は、非線形ファイバと線形ファイバを交互に接続したコム状プロファイルファイバであることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光パルス圧縮装置において、前記コム状プロファイルファイバは、入力端に配置される非線形ファイバの長手方向の長さが、その次に配置される非線形ファイバよりも短いことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、ビート光を発生するビート光発生部と、請求項1~5の何れか一項に記載の光パルス圧縮装置を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、ビート光を発生し、入力端から出力端の方向に異常分散値が減少する変換器を用いて前記ビート光をアップチャープパルスに変換し、入力端から出力端の方向の位置に比例して異常分散値が減少する圧縮器を用いて前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮することを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光パルス圧縮方法において、入力端における分散長の4倍~6倍の距離で異常分散値が半減する圧縮器を用いて、前記アップチャープパルスの時間幅を圧縮することを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の光パルス圧縮方法において、前記変換器及び/又は前記圧縮器は、分散減少ファイバであることを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7又は8に記載の光パルス圧縮方法において、前記変換器及び/又は前記圧縮器は、非線形ファイバと線形ファイバを交互に接続したコム状プロファイルファイバであることを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の光パルス圧縮方法において、前記コム状プロファイルファイバは、入力端に配置される非線形ファイバの長手方向の長さが、その次に配置される非線形ファイバよりも短いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ビート光をアップチャープパルスに変換し、このアップチャープパルスの時間幅を圧縮することにより、ペデスタル発生が抑制され、ジッタの少ない圧縮パルスを得ることができるため、圧縮される光パルスの品質を高めることができる。
【0019】
また、ビート光を種光として用いることにより、超高周波信号を容易に作成することができ、超高周波信号を活用する光パルス発生が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第3の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1~図12を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
まず、第1の実施形態における構成について説明する。図1に、第1の実施形態に係る光パルス発生装置100の構成を示す。光パルス発生装置100は、図1に示すように、ビート光発生部1、光パルス圧縮装置2により構成される。光パルス圧縮装置2は、変換部(変換器)2及び圧縮部(圧縮器)4により構成される。
【0022】
ビート光発生部1は、周波数の異なる2つのレーザ光を重ね合わせることによって、両レーザ光の差周波数で強度変化するビート光を生成し、生成されたビート光を光増幅器(図示略)により増幅させ、光パルス圧縮装置2の変換部3に出力する。ビート光の使用による利点は、100GHz以上の超高周波信号を容易に生成できる点である。例えば、2台の半導体レーザを用いてビート光を発生させる場合には、これらの半導体レーザへの注入電流及び温度を介してレーザ光の波長を適切に制御することによって周波数を自在に制御することができる。
【0023】
変換部3は、入力端から出力端に向けた長手方向に異常分散値が減少するDDF(Dispersion Decreasing Fiber)により構成され、ビート光発生部1から入力されたビート光をアップチャープパルスに変換し、このアップチャープパルスを圧縮部4に出力する。
【0024】
圧縮部4は、異常分散値が長手方向の位置(距離)zに比例して減少するDDF(図2参照)により構成され、変換部3から入力されたアップチャープパルスの時間幅を圧縮し、光パルス列として出力する。
【0025】
以下、圧縮部4の分散プロファイルと、変換部3の分散プロファイルについて詳細に説明する。
【0026】
<圧縮部の分散プロファイル>
まず、DDF中のソリトン圧縮についての一般的な解釈を説明する。光パルスの光ファイバ伝搬に伴う波形変化は、式(1)の非線形シュレーディンガー方程式で良く記述できることが知られている。
【数1】
JP0004327126B2_000002t.gif
式(1)において、A(z,t)は光パルスの複素電界であり、β2及びγは、それぞれ、光ファイバの分散値、非線形定数である。
【0027】
ここで、DDFの入力端(z=0)における光パルスの光電界A(0,t)を、式(2)に示すようなソリトン波形と仮定する。
【数2】
JP0004327126B2_000003t.gif
式(2)において、Pは光パルスのピークパワーであり、T0はパルス幅(パルスの時間幅)である。このとき、ソリトン次数Nは式(3)のように表される。
【数3】
JP0004327126B2_000004t.gif
ソリトンは、ファイバ伝搬と共にN=1を保つようにT0及びPを変化させる性質を有する。|β2|が長手方向に減少する場合、ソリトンはパルス幅T0を|β2|に比例して減少させるとともに、ピークパワーPをT0に反比例して高める。このようにして、DDF中で光パルス圧縮が生ずる。
【0028】
DDFの異常分散値をソリトンの伝播距離zに対して直線的に変化させることにより、ソリトンに作用する分散減少の割合を一定に保つことができる。以下にその詳細を示す。
【0029】
ソリトンの伝搬距離zの基準が分散長LD(z)=T02(z)/β2(z)であることを考慮すると、ソリトンに作用する分散減少の割合が一定であるという条件は式(4)で表される。
【数4】
JP0004327126B2_000005t.gif
式(4)においてSは、分散減少の割合を表す定数(スロープ)である。式(4)の微分方程式を解くことにより、式(5)に示すように、DDFの分散値β2(z)が得られる。
【数5】
JP0004327126B2_000006t.gif
式(5)は、β2(0)<0、S>0である場合、図2に示すように、-β2(z)(又は|β2(z)|)が入力端から出力端に向けた長手方向に直線的に減少する分散プロファイルであることを示している。このようにして、直線プロファイルにおいて圧縮パルスに作用する分散減少の割合が一定に保たれることがわかる。
【0030】
また、式(4)を満たす分散プロファイルを有するDDF中においては、以下に示すように自己相似圧縮パルスが存在する。自己相似圧縮パルスとは、式(4)の分散プロファイルを有するDDF中で自己相似性を保ったまま伝搬可能なパルスである。自己相似圧縮パルスを圧縮部4の入力パルスとして用いることによって、ペデスタル発生のない光パルス圧縮が可能となる。自己相似の関係は、数学的には式(6)のように表される。
【数6】
JP0004327126B2_000007t.gif
ここで、A(t)及びA’(t)は、それぞれ、圧縮前、圧縮後の複素光電界であり、Rは光パルスの圧縮率、φは圧縮に伴う位相変化である。
【0031】
DDF中を伝播する自己相似圧縮パルスは、平均化法を用いた数値計算により求めることが可能である。図3に、平均化法のフローチャートを示す。
【0032】
まず、初期パルスがA(t)に設定される(ステップS1)。次いで、式(1)のシュレーディンガー方程式を解くことにより、DDFによる圧縮後のパルス波形A1(t)が算出される(ステップS2)。
【0033】
次いで、A(t)とA1(t)の位相を合わせるために、A1(t)exp[-i{argA1(0)}]が、新たにA1(t)に設定される(ステップS3)。そして、A(t)+R-1/21(R-1t)が、新たにA(t)に設定される(ステップS4)。
【0034】
次いで、A(t)のエネルギーを一定に保つために、ステップS4で設定されたA(t)の振幅が調整される(ステップS5)。次いで、ステップS1に戻り、ステップS5で振幅が調整されたA(t)が初期パルスとして設定され(ステップS1)、ステップS2~S5の処理が繰り返される。図3に示した処理は、ステップS3で設定されたA1(t)を圧縮後の複素光電界A’(t)として、圧縮前の光電界A(t)と、圧縮後の光電界A’(t)の関係が、式(6)の関係を満たすまで繰り返される。
【0035】
図4に、図3の平均化法で求めたDDF中の自己相似圧縮パルスの伝播の様子を示す。図4では、ここでの説明を一般化するため、伝播距離として規格化伝播距離ξ=z/LD(0)を用い、非線形定数をγ=1/W/km、z=0における分散値をβ2(0)=-1ps2/km、スロープをS=1/10に設定し、パルスエネルギーを2pJに設定している。図4(a)は、規格化伝播距離、時間、強度の関係を表す波形を示しており、図4(b)は、規格化伝播距離、周波数、スペクトルの関係を表す波形を示している。図4の場合、異常分散値は、式(5)より、-β2(ξ)=1-Sξ=1-ξ/10となる。従って、ξ=5における異常分散値及びパルス幅T0は、ξ=0におけるこれらの値の半分となる。
【0036】
このようにして圧縮部4のDDFにより圧縮された光パルスA’(t)は、入力パルスA(t)と式(6)に示すような自己相似の関係にある。従って、圧縮前の自己相似圧縮パルスが本来有するペデスタル量と比較して、圧縮後のペデスタル量が増大することはない。一方、ソリトン波形の入力パルスを圧縮部4のDDF中で伝播させてパルス圧縮を行う場合には、圧縮に伴って非ソリトン成分が残留するため、ペデスタル発生は避けられない。
【0037】
式(5)における最適なSの範囲を求めるため、様々なSの値で得られる自己相似圧縮パルスを算出した結果を図5に示す。図5(a)は、時間、強度(実線)及び瞬時周波数(点線)の関係を表す波形を示し、図5(b)は、対数軸における時間及び強度の関係を表す波形を示し、図5(c)は、周波数とスペクトルの関係を表す波形を示す。
【0038】
図5に示した算出結果より、以下の知見が得られる。
[1] 図5(a)の瞬時周波数(点線)より、自己相似圧縮パルスはアップチャープを有するパルスである。
[2] Sが小さくなるほど(即ち、分散減少の割合が小さくなるほど)、自己相似圧縮パルスはソリトン波形に近づく。
[3] S<1/8の場合の自己相似圧縮パルスは、線形なアップチャープを有するソリトンパルスで良く近似でき、またスペクトル形状が滑らかである。なお、Sが小さいほどこれらの特徴が強いようであるが、S<1/12の場合には判別できるほどの変化はない。
[4] 1/8<S<1/6の場合、図5(b)から明らかなように、強度波形はペデスタルを有する。また、図5(a)及び(c)より、それぞれ、チャープが線形でないことと、スペクトルに大きな歪みが存在することが見てとれる。従って、1/8<S<1/6における自己相似圧縮パルスを用いる場合、ペデスタル発生は避けられない。
[5] S>1/6の場合、自己相似圧縮パルスは非常に不安定であるか、又は存在できない。
【0039】
以上の点から、S<1/8のDDF及び自己相似圧縮パルスを用いることにより、ペデスタル発生が抑制された高品質なパルス圧縮が可能であることがわかる。一方で、Sを小さくしすぎると、DDFの総分散量(即ち、|β2(z)|を長手方向に積分して得られる値)が増大する。このようなファイバを用いてパルス圧縮を行うと、パルスのタイミングジッタが増大することが知られている。このことは、下記の文献に示されている。
K. Tamura and M. Nakazawa, “Timing jitter of solitons compressed in dispersion-decreasing fibers,” Opt. Lett., vol. 23, no. 17, pp. 1360-1362, 1998.
【0040】
以上の理由から、圧縮部4を構成するDDFの設計における最適条件は、1/12<S<1/8であるといえる。式(5)より、圧縮部4におけるDDFの異常分散値が、入力端(z=0)の分散長LD(0)の1/2S倍の距離で半減することを考慮すると、この最適条件は、入力端の分散長の4倍から6倍の距離を以って異常分散値が半減することを意味する。
【0041】
なお、図5に示す数値計算は、特定の非線形定数γ、分散値β2(0)、パルスエネルギーに基づいて行ったものであるが、上記の結果はスケーリングによって他のパラメータの場合にも適用可能である。また、Sが無次元量であることに注意すれば、上記のSに関する議論はスケーリングによらない一般的な議論である。
【0042】
次に、圧縮部4のDDFによるパルス圧縮においてアップチャープパルスの使用が有効な理由について、図6及び図7を参照して説明する。
【0043】
図6(a)に、自己相似圧縮パルスを用いた場合の時間-強度波形、周波数-スペクトル波形を示し、図6(b)に、ソリトンパルスを用いた場合の時間-強度波形、周波数-スペクトル波形を示す。図6に示すように、DDFの入力パルスとしてチャープの無い(即ち、瞬時周波数が一定の)ソリトンパルスを用いる場合、DDFから出力されるパルスにペデスタルが発生する。以下、ペデスタルが発生する原因を定性的に説明する。
【0044】
光ファイバ中でのパルス形状の変化は分散効果によってもたらされる。パルス波形が圧縮されるためには、入力された光パルスがアップチャープを有し、そのアップチャープが異常分散で補償される必要がある。
【0045】
一方、入力パルスとしてチャープの無い光パルスを用いる場合、図7の曲線aに示すように、DDFの入力端においては圧縮が生じない。光パルスの入力後、光パルスが伝播するにつれてカー効果による過剰なアップチャープが生じ、そのアップチャープが異常分散で補償されることによってパルス圧縮が生じる。即ち、異常分散値の減少に対してパルス圧縮の遅れが生じる。このときの過剰なカー効果が、ペデスタル発生の原因となる。従って、入力パルスに予めアップチャープを付加することによって、図7の曲線b(異常分散値に比例してパルス幅が減少する直線)に示すように、DDFの入力端からパルス圧縮を生じさせることができる。
【0046】
入力パルスが過剰なアップチャープを有する場合、図7の曲線cに示すように、DDFの入力端において過剰なパルス圧縮が生じる。即ち、異常分散値の減少に対してパルス圧縮の進みが生じ、この場合もペデスタルが発生する。
【0047】
以上のように、入力パルスのアップチャープの値には最適値がある。このアップチャープの最適値は、図3に示した平均化法によって求められる自己相似圧縮パルスにより得られる。
【0048】
なお、上述の[3]で示したように、S<1/8の場合の自己相似圧縮パルスは、式(7)に示すようなリニアチャープソリトン波形で良くフィッティングできる。
【数7】
JP0004327126B2_000008t.gif
ここで、A、T、Cは、それぞれ、ピーク振幅、時間幅、チャープパラメータを表す。自己相似圧縮パルスは、SとCがほぼ等しい値を取るという性質を有する。従って、S<1/8の圧縮部4に入力するパルスとして、Sと等しいCを有するリニアチャープソリトンパルスを使用することもできる。
【0049】
<変換部の分散プロファイル>
本発明のように、ビート光を種光として用い、光パルス圧縮装置により短パルスを発生する場合には、ビート光を圧縮部4のDDFへの入力光として用いることはできない。これは、ビート光の強度時間波形は正弦波であり、自己相似圧縮パルスの強度時間波形と大きく異なることによる。このため、ビート光を圧縮部4のDDFに入力すると、非圧縮成分が残留し、ペデスタルが発生する。従って、ビート光を種光とする光パルス圧縮装置2においては、変換部3により、ビート光発生部1から入力されたビート光を自己相似圧縮パルスに一旦変換する必要がある。
【0050】
なお、ビート光をアップチャープパルスに変換する変換部の有用性については、特許文献1に記載されているが、本発明の変換部では、特許文献1よりも高精度のDDFの設計を提供する。
【0051】
第1の実施形態では、ビート光を自己相似圧縮パルスに変換する変換部3を構成するDDFの分散プロファイルを見出すため、逆方向伝搬のアプローチをとることにする。図8に、このアプローチの模式図を示す。変換部3の最適化されたDDFは、図8(a)に示すように、ビート光を自己相似圧縮パルス列に変換するが、本アプローチでは、図8(b)に示すように、自己相似圧縮パルス列をビート光に変換する分散プロファイルを探す。
【0052】
以下、変換部3のDDFの分散プロファイルを最適化する手順を説明する。
まず、変換部3のDDFの分散プロファイルを式(8)のように、伝播距離z’のn次の多項式で表す。
【数8】
JP0004327126B2_000009t.gif
式(8)では、図8(b)に示すように、伝播距離z’をDDFの出力端から入力端の方向に定義している。
【0053】
次に、式(8)の分散プロファイルを有するDDF中を、逆方向(出力端から入力端の方向)に伝播する光パルスA(z’,t)を、自己相似圧縮パルスを入力パルスA(0,t)として、式(1)の非線形シュレーディンガー方程式により求め、ビート光との誤差の発展を求める。ここでの誤差とは、逆方向に伝播している光パルスとビート光との、複素電界の差の絶対値の2乗を時間積分し、この積分値を光パルスのエネルギーで規格化することによって求められる値である。
【0054】
逆方向伝播している光パルスとビート光との誤差は、ある伝搬距離において極小値をとる。式(8)の分散プロファイルのm次の係数amのみを微小に変化させ、逆方向伝播する光パルスとビート光との誤差の極小値を求める。このプロセスを0からnまでの各次数に対して行うことによって、ビート光との誤差が小さくなるようにamを変化させることにより、最適な分散プロファイルを求めることができる。
【0055】
図9に、逆方向伝搬法を用いて最適化された分散プロファイルと、逆方向伝播する光パルスとビート光との誤差の発展を示す。但し、入力パルスは、S=1/10の直線プロファイルを有するDDFにおいて平均化法により求めた自己相似圧縮パルスであり、この自己相似圧縮パルスを16ps間隔で互いに逆位相に配置させたものを、逆方向伝搬における入力パルスとしている。この場合、図9に示すように、最適な分散プロファイルにおいては、伝播距離z’=z0’=11.9kmにおいて、逆方向伝播する光パルスとビート光との誤差が最小(~2×10-5)となり、この伝播距離で、自己相似圧縮パルスのエネルギーの99.998%がビート光に変換される。図10に、最適化された分散プロファイルにおける光パルス強度波形の発展の様子を示す。図10より、自己相似圧縮パルスが逆方向に伝播するにつれ、ビート光に変換されていくことがわかる。
【0056】
このように、逆方向伝搬法を用いて最適化された分散プロファイルでは、自己相似圧縮パルスがビート光に変換される。従って、この最適化された分散プロファイルを順方向に用いることによって、ビート光を自己相似圧縮パルスに変換することが可能となる。
【0057】
逆方向伝播法を用いて最適化された分散プロファイルは、スケーリングによって様々な繰り返し周波数、エネルギーの光パルスに対しても適用可能である。一例として、図11に、繰り返し周波数160 GHzのビート光を自己相似圧縮パルスに変換するための分散プロファイルを示す。図11では、変換部3のDDFの非線形定数γを20 /W/km、ビート光の強度を250 mWに設定した場合を示している。また、図11では、変換部3のDDFで変換された自己相似圧縮パルスを更に圧縮する圧縮部4のDDFの分散プロファイル(線形プロファイル)も示している。
【0058】
図11に示した構成では、変換部3の出力端における分散値及び分散値の勾配と、圧縮部4の入力端における分散値及び分散値の勾配がそれぞれ等しくなっている。この理由は以下のように説明できる。変換部3ではビート光をソリトンに変換しつつ、同時にパルスの圧縮も行っている。従って、変換部3の出力端から圧縮部4の入力端にかけて、分散値や分散値の勾配が不連続であると、図7のa、cに示されるような圧縮の遅れや進みが生じ、ペデスタルが発生する。従って、図11の構成では、変換部3の出力端における分散値及び分散値の勾配と、圧縮部4の入力端における分散値及び分散値の勾配がそれぞれ等しくなっている。このようにすることにより、変換部3での圧縮と圧縮部4での圧縮が連続的に生じ、ペデスタルの発生を抑制できる。
【0059】
図12(a)に、図11に示した変換部3及び圧縮部4の分散プロファイルを用いて得られる圧縮パルスの強度波形を示す。図12(a)に示すように、主パルスの周辺にサテライトパルスが付随するが、その強度は主パルスと比較して50db程度抑圧されており、ペデスタル発生がほとんど無いことがわかる。比較のため、変換部3を使用せずに圧縮部4のみで得られる圧縮パルスの強度波形を図12(b)に示す。圧縮部4に入力されるビート光が自己相似圧縮パルスと異なるために分散波が発生し、圧縮パルスの周辺にペデスタルとして残留する。結果として、ピーク・ペデスタル比は28db程度しか実現できない。
【0060】
以上のように、第1の実施形態の光パルス発生装置100によれば、異常分散値が長手方向に減少するDDFを用いてビート光を自己相似圧縮パルスに変換し、この自己相似圧縮パルスの時間幅を、異常分散値がDDFの長手方向の位置に比例して減少するDDFにより圧縮することにより、ペデスタル発生が抑制され、ジッタの少ない圧縮パルスを得ることができるため、圧縮される光パルスの品質を高めることができる。
【0061】
また、ビート光を種光として用いることにより、超高周波信号を容易に作成することができ、超高周波信号を活用する光パルス発生が実現可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態では、第1の実施形態の変換部3及び圧縮部4を構成するDDFの代わりに、非線形ファイバと線形ファイバを交互に接続したCPF(Comb-like Profiled Fiber)を用いるものであり、第1の実施形態で示したDDFに近い特性が得られるようにCPFを設計するものである。
【0063】
なお、第2の実施形態及び後述する第3の実施形態においては、非線形ファイバ及び線形ファイバを以下のように定義する。下記では、非線形定数をγ、分散値をβ2としている。
非線形ファイバ:γ>5 /W/km (典型値:γ~15 /W/km)、
-3<β2<3 ps2/km(典型値:β2 ~-1ps2/km);
線形ファイバ:γ<5 /W/km (典型値:γ~1 /W/km)、
β2<-3 ps2/km (典型値:β2~-22 ps2/km).
【0064】
まず、第2の実施形態における構成について説明する。図13に、第2の実施形態に係る光パルス発生装置200の構成を示す。なお、図13の光パルス発生装置200において、第1の実施形態において図1に示した光パルス発生装置100と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能説明を省略する。
【0065】
光パルス発生装置200は、図13に示すように、ビート光発生部1、光パルス圧縮装置5により構成される。光パルス圧縮装置5は、変換部(変換器)6及び圧縮部(圧縮器)7により構成される。
【0066】
変換部6は、非線形ファイバと線形ファイバを長手方向に交互に配置したCPFにより構成され、ビート光発生部1から入力されたビート光をアップチャープパルスに変換し、このアップチャープパルスを圧縮部7に出力する。変換部6のCPFは、第1の実施形態における光パルス発生装置100の変換部3のDDFに類似した分散特性を有するように設計される。
【0067】
圧縮部7は、変換部6と同様に、非線形ファイバと線形ファイバを長手方向に交互に配置したCPFにより構成され、変換部6から入力されたアップチャープパルスの時間幅を圧縮し、光パルス列として出力する。圧縮部7のCPFは、第1の実施形態における光パルス発生装置100の圧縮部4のDDFに類似した分散特性を有するように設計される。
【0068】
以下、変換部6及び圧縮部7を構成するCPFの設計法について説明する。
まず、第1の実施形態の光パルス発生装置100において設計されたDDFの分散値をβ2(z)、非線形定数をγ、DDFの長手方向の長さをL、光パルスの圧縮率をRとする。次に、このDDFをN個のセクションに分割し、m番目のセクションの長さをLmとする。各セクションのファイバ長Lmの決定方法は後述する。
【0069】
まず、DDFの各セクションの長さLmが設定されていると仮定して、各セクションに対応するCPFの非線形ファイバと線形ファイバの長さを決定する方法について説明する。第2の実施形態におけるCPFは、図14に示すように非線形ファイバと線形ファイバのペア(対)を複数接続した構成を有する。以下では、CPFのm番目の非線形ファイバ及び線形ファイバの長さを、それぞれ、LNL,m、LL,mとする。また、CPFのm番目の非線形ファイバの非線形定数、分散値を、それぞれ、γNL、β2,NLとし、CPFのm番目の線形ファイバの非線形定数、分散値を、それぞれ、γL、β2,Lとする。
【0070】
第2の実施形態では、DDFのm番目のセクションと、対応するCPFの非線形ファイバ及び線形ファイバとの関係が、式(9)及び式(10)を満たすように、LNL,m及びLL,mを決定する。
【数9】
JP0004327126B2_000010t.gif
【数10】
JP0004327126B2_000011t.gif
式(9)において、zmは、DDFのm番目のセクションの開始位置であり、式(11)のように定義される。
【数11】
JP0004327126B2_000012t.gif

【0071】
式(9)は、CPFの非線形ファイバと線形ファイバにおける分散効果の総和が、対応するDDFのセクションの分散効果に一致する条件を表す。また、式(10)は、CPFの非線形ファイバと線形ファイバにおける非線形効果の総和が、対応するDDFのセクションの非線形効果に一致する条件を表す。式(9)及び式(10)を全てのセクション(m=1,…,N)について連立させると、2N個の連立一次方程式となり、各セクションに対応するLNL,m及びLL,mを容易に算出することができる。
【0072】
次に、DDFの各セクションの長さLmの決定方法について説明する。
まず、DDFを分割する際、各セクションにおける光パルスへの作用を均等にするように、各セクションにおいて、パルス幅とセクションの長さの関係が同一である方が好ましい。その理由は以下のように考えられる。
【0073】
DDFのあるセクションの長さが短い場合には、そのセクションに対応するCPFの非線形効果及び線形効果は小さいため、伝播する光パルスには両効果の平均が作用する。その結果として、CPFとDDFは略同一の特性を示し、高品質なパルス圧縮が可能となる。一方、DDFのあるセクションのみを長くしてしまうと、そのセクションに対応するCPFの非線形効果及び線形効果が増大してしまい、非線形効果及び線形効果がそれぞれ独立して光パルスに作用するため、CPFとDDFが異なる特性を示してしまう。その結果として圧縮後の光パルスの品質が低下する。従って、光パルスの伝搬距離の基準となるファイバ長が分散長であることを考慮すれば、各セクションの長さLmは、パルス圧縮に伴って短くする方がよい。
【0074】
更に、第1の実施形態に従って設計されるDDFにおいては、光パルスの圧縮過程全体において、光パルスの自己相似性が保たれるため、DDFの各セクションも自己相似的に分割することができる。従って、各セクションの長さは式(12)のように、光パルスの圧縮率Rを用いて等比数列で表される。
【数12】
JP0004327126B2_000013t.gif

【0075】
更に、DDFの各セクションの長さLmの和がDDFの全長Lに等しいという条件を用いると、各セクションの長さLmは、式(13)のように表される。
【数13】
JP0004327126B2_000014t.gif

【0076】
上述の説明では、光損失の影響を考慮せずにCPFの設計を行う場合を示した。しかしながら、実際のCPFの設計に際しては、光損失の影響を考慮する必要がある。即ち、ファイバ中の伝搬損失及び異種ファイバの接続損失のために、CPFの各セクションにおける光強度は異なってしまう。光損失の影響を補償するためには、式(10)を下記の式(14)のように変更すればよい。
【数14】
JP0004327126B2_000015t.gif
式(14)において、PNL,mはCPFのm番目の非線形ファイバを伝播する光の強度、PL,mはCPFのm番目の線形ファイバを伝播する光の強度であり、PmはDDFのm番目のセクションを伝播する光の強度である。式(9)及び式(14)を満たすようにCPFを設計することにより、光損失の影響を排除することができる。
【0077】
以上のように、第2の実施形態の光パルス発生装置200によれば、第1の実施形態の光パルス発生装置100を構成するDDFと同様の性質を有するCPFを設計するため、CPFにおいても、高品質な圧縮パルスを得ることができる。
【0078】
(第3の実施形態)
次に、図15~図17を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0079】
上述の第2の実施形態においては、CPFを構成する非線形ファイバと線形ファイバのペア数を増大させるにつれて、CPFの特性はDDFの特性に近付く。一方で、非線形ファイバと線形ファイバのペア数が少なくなるにつれて、非線形ファイバにおける非線形効果及び線形ファイバにおける線形効果は増加せざるを得ない。その結果として、CPF中では、非線形効果及び線形効果が、各々独立して光パルスに作用するため、CPFの特性はDDFの特性と異なるものとなり、光パルスの品質が低下してしまう。即ち、非線形ファイバと線形ファイバのペア数と、光パルスの品質の間にトレードオフの関係がある。第3の実施形態では、第2の実施形態で示したCPFにおける線形ファイバと線形ファイバのペア数を維持したまま、発生するペデスタル量を低減することが可能なCPFを設計する。
【0080】
第3の実施形態では、入力端(1番目(m=1)のセクションの開始位置)に配置される非線形ファイバの長さを、その次(m=2)に配置される非線形ファイバの長さよりも短くするようにCPFを設計する。このようにすると、実質的に1番目のセクションは、非線形ファイバの長さを短くした分だけ、次のセクションに配置される非線形ファイバを含むのと等価になる。
【0081】
このようにして設計されたCPFは、各セクション内で見た場合、図15(a)に示すように、同一セクション内で、最初に配置されている非線形ファイバの一部(図中のα)が線形ファイバの後ろ(図中のα’)に配置されることによって、同一セクション内で、線形ファイバの両側に非線形ファイバが配置されることになる。この場合、図15(a)に示すように、長手方向の分散プロファイルが、同一セクション内で対称性の良い形状を有するため、以後、これを対称型CPFと呼ぶことにする。また、第2の実施形態におけるCPFは、各セクション内で見た場合、図15(b)に示すように、非線形ファイバに続いて線形ファイバが配置され、長手方向の分散プロファイルは、同一セクション内で非対称な形状となるため、以後、これを非対称型CPFと呼ぶことにする。
【0082】
次に、第3の実施形態に係る対称型CPFによる効果を説明する。あるセクション内での光パルスへの作用を考えると、非対称型CPFでは、必ず非線形効果が線形効果よりも先に光パルスに作用する。このため、非線形効果と線形効果のバランスが崩れてしまう。一方、対称型CPFでは、あるセクション内で、非線形効果が線形効果よりも先に光パルスに作用するが、先に作用する非線形ファイバ長は短くなっているため、続けて線形効果が作用した後、更に非線形効果が作用する構成となる。このため、同一セクション内で光パルスに作用する非線形効果と線形効果のバランスを、非対称型CPFよりも高めることが可能である。
【0083】
対称型CPFは、例えば、第2の実施形態に従って設計されるペア数(セクションの数)NのCPFにおいて、入力端の非線形ファイバの長さLNL,1を、2番目に配置される非線形ファイバの長さLNL,2の半分にすることにより得ることができる。
【0084】
図16に、変換部6においてペア数N=50のCPFを使用し、繰り返し周波数が160 GHzビート光を、パルス幅が100fsのパルス列に圧縮する場合のシミュレーション結果を示す。図16(a)は、対称型CPFを使用した場合の圧縮パルスの強度波形を示し、図16(b)は、非対称型CPFを使用した場合の圧縮パルスの強度波形を示す。図16により、対称型CPFを用いると、非対称型CPFを用いる場合より、光パルスの周辺のペデスタルが減少することがわかる。
【0085】
図17に、様々なペア数Nの値に対して、対称型CPFを用いた場合と非対称型CPFを用いた場合のピーク・ペデスタル比(ペデスタル/ピーク)を調べた結果を示す。図17により、ペア数が同一の対称型CPFと非対称型CPFを比べると、対称型CPFを用いた場合の方が、ペデスタルが約6db減少することがわかる。
【0086】
また、ペデスタル量が同一であるとき、非対称型CPFより対称型CPFを用いたときの方が、CPFのペア数Nが少ない。対称型CPFを用いた場合のペア数の低減率をrとすると、ペア数Nの非対称型CPFと、ペア数rNの対称型CPFのペデスタル量が等しいことから、図17より、22.5-35log10(N)=16.5-35log10(rN)が成り立つ。この条件を満たす低減率rの値は約0.67となる。従って、対称型CPFを用いた場合、非対称型CPFを用いた場合よりも、CPFのペア数は2/3に低減できる。
【0087】
なお、第2の実施形態及び第3の実施形態の光パルス圧縮装置5を構成するCPFに入力されるビート光は、しばしば、ビート光発生部1内の光増幅器中の増幅過程において、非線形効果及び線形効果を受けている。これらの効果を考慮せずにCPFを設計すると、CPF中の圧縮過程が影響を受け、ペデスタル等が増加する場合がある。この影響を排除するためには、ビート光発生部1内の光増幅器をCPFの1番目(入力端)の非線形ファイバとみなしてCPFを設計すればよい。
【0088】
以上のように、第3の実施形態によれば、第2の実施形態の光パルス圧縮装置5を構成するCPFの入力端(m=1)の非線形ファイバの長さを、その次(m=2)に配置される非線形ファイバの長さよりも短く(例えば、半分の長さ)設計することにより、ペデスタルの発生が一層低減され、より高品質な圧縮パルスを得ることができる。
【0089】
(第4の実施形態)
次に、図18~図20を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。
第4の実施形態では、第1~第3の実施形態に基づいて設計されるCPFを使用して行う光パルス発生実験について説明する。
【0090】
図18に、第4の実施形態のパルス発生装置におけるビート光発生部10及び変換部11の構成を示す。ビート光発生部10は、2台のDFB-LD(分布帰還型レーザダイオード)12、13と、偏波保持カプラ14と、EDFA(エルビウム添加ファイバ増幅器)15により構成される。
【0091】
ビート光発生部10では、DFB-LD12及び13からが出力される連続光を、偏波保持カプラ14によって合波し、合成された光をEDFA15によって増幅してビート光を発生する。ビート光の繰返し周波数、中心波長、平均パワーは、それぞれ、160GHz、1555nm、500mWである。
【0092】
変換部11は、高非線形性ファイバ(HNLF)とシングルモードファイバ(SMF)を交互に配置したCPFにより構成され、ビート光発生部10から入力されたビート光をアップチャープパルスに変換する。第4実施形態で適用されるCPFは、40ペアのHNLFとSMFから構成される。
【0093】
図19に、第4の実施形態におけるCPFの分散プロファイル(上段)と非線形プロファイル(下段)を示す。このCPFのHNLFの非線形定数γは14.2/W/kmであり、分散β2の平均値は0.32ps/kmである。第4の実施形態におけるCPFの設計に際しては、第1の実施形態で得られた分散プロファイル(図11参照)を、第2及び第3の実施形態の指針に基づいてCPFによって模擬するように各ファイバの長さが決定される。このCPFの総長、光損失は、それぞれ684m、4.1dBである。
【0094】
図20に、第4の実施形態におけるCPFの出力パルスの測定結果を示す。図20(a)により、強度自己相関波形は、半値全幅324fsのsechパルスを仮定するフィッティング曲線に合致する。ピーク・ペデスタル比の測定値は測定系により制限され、21dBである。図20(b)より、スペクトルは帯域幅1.0THzのsech曲線に良く一致し、スペクトルの歪が発生しないことが判る。なお、時間帯域幅積は0.32である。
【0095】
以上の第4の実施形態によれば、第1~第3の実施形態の指針に基づいて設計されるCPFを使用することによって、極めて純度の高い光ソリトン列を得ることができる。
【0096】
(第5の実施形態)
次に、図21~図24を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。
第5の実施形態では、第1~第3の実施形態に基づいて設計されるCPFを使用して行うテラヘルツ繰り返し光パルス発生実験について説明する。
【0097】
図21に、第5の実施形態のパルス発生装置におけるビート光発生部20及び変換部21の構成を示す。ビート光発生部20は、2台のDFB-LD(分布帰還型レーザダイオード)22、23と、2台のOBPF(Optical Band Pass Filter)24、25と、偏波保持カプラ26と、EDFA(エルビウム添加ファイバ増幅器)27により構成される。
【0098】
ビート光発生部20では、DFB-LD22及び23によってそれぞれ出力される連続光から、OBPF24、25によって特定の波長の光を抽出し、抽出された2つの光を偏波保持カプラ26によって合波し、合成された光をEDFA27によって増幅してビート光を発生する。ビート光の繰返し周波数、中心波長、平均パワーは、それぞれ、1.0THz、1550nm、1.25Wである。
【0099】
変換部21は、HNLFとSMFを交互に配置したCPFにより構成され、ビート光発生部20から入力されたビート光をアップチャープパルスに変換する。図22に、HNLF及びSMFのファイバ数とファイバ長との関係を示す。図22において、LHNLFはHNLFのファイバ長を示し、LSMFはSMFのファイバ長を示す。第5実施形態で適用されるCPFは、15ペアのHNLFとSMFから構成される。HNLFの非線形定数は14/W/kmであり、また分散の平均値は0.54ps/kmである。各ファイバの長さの決定方法は、第4の実施形態と同様である。このCPFの総長、光損失は、それぞれ、115m、1.9dBである。
【0100】
図23及び図24に、第5の実施形態におけるCPFの出力パルスの測定結果を示す。図23(a)は、スキャン範囲5psの強度自己相関波形を示し、図23(b)、(c)は、それぞれ、当該強度自己相関波形の一波形の中心部分の拡大図と、その対数プロット図を示す。図23に示す強度自己相関波形は、半値全幅97fsのsechパルスを仮定するフィッティング曲線によく一致する。図24の上段は、繰り返し周波数1.0THzのビート光のスペクトルを示し、図24の下段は、CPFの出力パルスのスペクトルを示す。図24の下段に示すように、CPFの出力パルスのスペクトルは100nm以上に亘って広がり、その半値全幅は3.5THzである。時間帯域幅積は0.34である。
【0101】
以上の第5の実施形態によれば、第1~第3の実施形態で示したCPFの設計指針は、テラヘルツ繰り返し超短光ソリトン列の発生にも適用可能であり、極めて純度の高い光ソリトン列を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光パルス発生装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の圧縮部(DDF)の分散プロファイルを示す図。
【図3】平均化法を用いて自己相似圧縮パルスを算出する処理を示すフローチャート。
【図4】自己相似圧縮パルスのDDFにおける伝播の数値計算結果を示す図。
【図5】様々なS(分散の長手方向におけるスロープ)に対する自己相似圧縮パルスを示す図。
【図6】自己相似圧縮パルスの時間-強度波形及び周波数-スペクトル波形(a)と、ソリトンパルスの時間-強度波形及び周波数-スペクトル波形(b)を示す図。
【図7】光パルスの伝播距離と、異常分散値及びパルス幅の関係を示す図。
【図8】図1の変換部(DDF)における順方向伝播(a)及び逆方向伝播(b)を示す図。
【図9】逆方向伝播法によって最適化された分散プロファイル及び自己相似圧縮パルスとビート光との誤差の発展を示す図。
【図10】逆方向伝播(自己相似圧縮パルス→ビート光)の様子を示す図。
【図11】第1の実施形態の変換部及び圧縮部の分散プロファイルを示す図。
【図12】第1の実施形態の変換部を用いて得られるパルスの強度(a)と、距離に対して線形に分散値が減少する分散プロファイルを有するDDFを用いて得られるパルスの強度(b)を示す図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る光パルス発生装置の構成を示すブロック図。
【図14】第1の実施形態のDDFと、第2の実施形態のCPFの模式図。
【図15】対称型CPFの異常分散値(a)と非対称型CPFの異常分散値(b)を示す図。
【図16】対称型CPFを用いた場合の圧縮パルス(a)と、非対称型CPFを用いた場合の圧縮パルス(b)を示す図。
【図17】CPFにより圧縮されたパルスのピーク・ペデスタル比のペア数依存性を示す図。
【図18】第4の実施形態のパルス発生装置におけるビート光発生部及び変換部の構成を示す図。
【図19】第4の実施形態におけるCPFの分散プロファイル(上段)と非線形プロファイル(下段)を示す図。
【図20】第4の実施形態におけるCPFの出力パルスの測定結果を示す図。
【図21】第5の実施形態のパルス発生装置におけるビート光発生部及び変換部の構成を示す図。
【図22】第5の実施形態における高非線形性ファイバ(HNLF)及びシングルモードファイバ(SMF)のファイバ数とファイバ長との関係を示す図。
【図23】第5の実施形態におけるCPFの出力パルスの測定結果を示す図。
【図24】第5の実施形態におけるCPFの出力パルスの測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0103】
1,10,20 ビート光発生部
2,5 光パルス圧縮装置
3 変換部(DDF)
4 圧縮部(DDF)
6,11,21 変換部(CPF)
7 圧縮部(CPF)
100,200 光パルス発生装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23