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明細書 :コンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4731233号 (P4731233)
公開番号 特開2007-034421 (P2007-034421A)
登録日 平成23年4月28日(2011.4.28)
発行日 平成23年7月20日(2011.7.20)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
発明の名称または考案の名称 コンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
FI G06F 17/50 612H
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2005-213290 (P2005-213290)
出願日 平成17年7月22日(2005.7.22)
審査請求日 平成20年5月16日(2008.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】597118371
【氏名又は名称】長松 昭男
発明者または考案者 【氏名】長松 昭男
個別代理人の代理人 【識別番号】100091443、【弁理士】、【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
審査官 【審査官】西出 隆二
参考文献・文献 特開平10-124705(JP,A)
特開平06-148038(JP,A)
特開2001-305009(JP,A)
調査した分野 G06F 17/50
特許請求の範囲 【請求項1】
目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定することをコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法であって、
前記目標とする固有振動数に近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物について前記固有振動数Ω1rを演算する第1の工程と、
前記目標とする固有振動数Ω0rと前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する第2の工程と、
前記振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定し、前記振動数差dΩが前記設定値以下であれば、前記推定構造物を前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定し、前記振動数差dΩが前記設定値より大きければ、前記推定構造物は前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する第3の工程と、
前記推定構造物が複数の有限な要素によって構成されているものと仮定し、前記複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する第4の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、前記振動数差dΩと、前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rと、前記ひずみエネルギー密度U´と前記運動エネルギー密度T´とが、下記の関係にあることを前提にして、
dΩ/dV=(U´-T´)/2Ω1r
前記複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを演算する第5の工程と、
前記目標とする固有振動数に前記推定構造物の固有振動数を段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて前記複数の有限な要素のそれぞれについて演算した体積変化量dVを修正する第6の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第6の工程で修正した体積変化量dV´に基づいて、前記推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とする第7の工程とを実施し、
前記第3の工程で前記新たな推定構造物が前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、前記新たな推定構造物を用いて前記第1乃至第7の工程を繰り返すことにより前記目標とする固有振動数Ω0rを有する前記構造物の形状寸法を決定することを特徴とするコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項2】
前記第6の工程では、前記体積変化量dVを1以下の収斂指数αによって、(dV)αとなるように修正することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項3】
前記第6の工程では、前記体積変化量dVを1以下の収斂係数αによって、α(dV)となるように修正することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項4】
前記第7の工程では、前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第6の工程で修正した体積変化量dV´を発生させるのに必要な温度変化量を演算し、前記複数の有限な要素のそれぞれについて演算した温度変化量の温度分布に基づいて、前記推定構造物の形状及び寸法を変化させて前記新たな推定構造物を得る請求項1に記載のコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項5】
目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定することをコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法であって、
前記目標とする固有振動数に近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物について前記固有振動数Ω1rを演算する第1の工程と、
前記目標とする固有振動数Ω0rと前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する第2の工程と、
前記振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定し、前記振動数差dΩが前記設定値以下であれば、前記推定構造物を前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定し、前記振動数差dΩが前記設定値より大きければ、前記推定構造物は前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する第3の工程と、
前記推定構造物が複数の有限な要素によって構成されているものと仮定し、前記複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する第4の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、前記振動数差dΩと、前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rと、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´とが、下記の関係にあることを前提にして、
dΩ/dV=(U´-T´)/2Ω1r
前記複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを演算する第5の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第5の工程で演算した体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算する第6の工程と、
前記目標とする固有振動数に前記推定構造物の固有振動数を段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第6の工程で演算した温度変化量を修正する第7の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第7の工程で修正された温度変化量の温度分布に基づいて、前記推定構造物の形状及び寸法を変化させて前記新たな推定構造物を得る第8の工程とを実施し、
前記第3の工程で前記新たな推定構造物が前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、前記新たな推定構造物を用いて前記第1乃至第8の工程を繰り返すことにより前記目標とする固有振動数Ω0rを有する前記構造物の形状寸法を決定することを特徴とするコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項6】
目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定することをコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法であって、
前記目標とする固有振動数に近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物について前記固有振動数Ω1rを演算する第1の工程と、
前記目標とする固有振動数Ω0rと前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する第2の工程と、
前記推定構造物が複数の有限な要素によって構成されているものと仮定し、前記複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する第3の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、前記振動数差dΩと、前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rと、前記ひずみエネルギー密度U´と前記運動エネルギー密度T´とが、下記の関係にあることを前提にして、
dΩ/dV=(U´-T´)/2Ω1r
前記複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを演算する第4の工程と、
前記目標とする固有振動数に前記推定構造物の固有振動数を段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて前記複数の有限な要素のそれぞれについて演算した体積変化量dVを修正する第5の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第5の工程で修正した体積変化量dV´に基づいて、前記推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とする第6の工程と、
前記振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定し、前記振動数差dΩが前記設定値以下であれば、前記推定構造物を前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定し、前記振動数差dΩが前記設定値より大きければ、前記推定構造物は前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する第7の工程とを実施し、
前記第7の工程で前記新たな推定構造物が前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、前記新たな推定構造物を用いて前記第1乃至第7の工程を繰り返すことにより前記目標とする固有振動数Ω0rを有する前記構造物の形状寸法を決定することを特徴とするコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
【請求項7】
目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定することをコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法であって、
前記目標とする固有振動数に近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物について前記固有振動数Ω1rを演算する第1の工程と、
前記目標とする固有振動数Ω0rと前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する第2の工程と、
前記推定構造物が複数の有限な要素によって構成されているものと仮定し、前記複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する第3の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、前記振動数差dΩと、前記推定構造物の前記固有振動数Ω1rと、前記ひずみエネルギー密度U´と前記運動エネルギー密度T´とが、下記の関係にあることを前提にして、
dΩ/dV=(U´-T´)/2Ω1r
前記複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを演算する第4の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第4の工程で演算した体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算する第5の工程と、
前記目標とする固有振動数に前記推定構造物の固有振動数を段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第5の工程で演算した体温度変化量を修正する第6の工程と、
前記複数の有限な要素のそれぞれについて前記第6の工程で修正された温度変化量の温度分布に基づいて、前記推定構造物の形状及び寸法を変化させて前記新たな推定構造物を得る第7の工程と、
前記振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定し、前記振動数差dΩが前記設定値以下であれば、前記推定構造物を前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定し、前記振動数差dΩが前記設定値より大きければ、前記推定構造物は前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する第8の工程とを実施し、
前記第8の工程で前記新たな推定構造物が前記目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、前記新たな推定構造物を用いて前記第1乃至第8の工程を繰り返すことにより前記目標とする固有振動数Ω0rを有する前記構造物の形状寸法を決定することを特徴とするコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定することをコンピュータが実施する構造物の形状寸法決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有限要素法などによる構造物の動解析技術を用いて、構造物の形状と寸法を変えながら固有振動数を算出し、目標とする固有振動数を有する構造物の形状寸法を決定することが広く行われている。例えば、特開平10-124705号公報(特許文献1)には、有限要素法を用いて固有振動数を算出して、 長尺積層物を設計する技術が開示されている。

【特許文献1】特開平10-124705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の方法では、目標とする固有振動数を有する形状寸法に近い構造物の形状寸法を決定するまでに相当回数の演算を繰り返さなければならなかった。
【0004】
本発明の目的は、目標とする固有振動数を有する構造物の形状寸法を、従来の方法よりも簡単に且つより高い精度で決定することができる構造物の形状寸法決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1及び第2の発明では、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定するために、コンピュータが以下の第1乃至第5の工程を共通して実施する。
【0006】
第1の工程では、目標とする固有振動数Ω0rに近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物について固有振動数Ω1rを演算する。固有振動数Ω1rの演算は、公知の演算方法を用いて行えばよい。
【0007】
第2の工程では、目標とする固有振動数Ω0rと推定構造物の固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する。そして第3の工程では、振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定する。また第3の工程では、振動数差dΩが設定値以下であれば、推定構造物を目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定する。さらに第3の工程では、振動数差dΩが設定値より大きければ、推定構造物は目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する。本出願の第3及び第4の発明では、第1及び第2の発明の第3の工程を、最終工程で実施する。
【0008】
第4の工程では、推定構造物が複数の有限な要素によって構成されているものと仮定する。そして複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する。例えば、有限な要素が5000あれば、5000の有限要素すべてについて、エネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する。
【0009】
第5の工程では、複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、振動数差dΩと、推定構造物の固有振動数Ω1rと、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´とが、下記の関係にあることを前提にする。
【0010】
dΩ/dV=(U´-T´)/2Ω1r
そしてこの第5の工程では、複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを演算する。この体積変化量dVに着目したのが、本発明の重量なポイントである。従来の方法では、体積変化量dVに基づいて構造物の形状寸法を決定することは、まったく行われていない。
【0011】
第6の工程では、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて、複数の有限な要素のそれぞれについて演算した体積変化量dVを修正する。例えば、体積変化量dVを1以下の収斂指数αによって、(dV)αとなるように修正することができる。また体積変化量dVを1以下の収斂係数αによって、α(dV)となるように修正することもできる。この収斂指数または収斂係数を用いた体積変化量dVの修正を行うことにより、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを、段階的に収斂させることが容易に可能になる。収斂指数または収斂係数を具体的に1以下のどのような値にするかは、目標とする構造物の形状・寸法によって異なっている。実際上は、ある程度の予備試験を行って、好ましい収斂指数または収斂係数を決めることになる。
【0012】
第1の発明では、第7の工程で、複数の有限な要素のそれぞれについて第6の工程で修正した体積変化量dVに基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とする。新たな推定構造物を得る場合に用いる技術はいかなるものでもよい。例えば、複数の有限な要素のそれぞれについて第6の工程で修正した体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算し、複数の有限な要素のそれぞれについて演算した温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得るようにしてもよい。
【0013】
そして第3の工程で、新たな推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、新たな推定構造物を用いて第1乃至第7の工程を繰り返すことにより、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定する。
【0014】
このように第1の発明によれば、有限な要素のそれぞれについて、従来は誰も着目しなかった体積変化量dVを求めて、推定構造物の有限な要素の形状及び寸法を変更し、新たな推定構造物とすることにより、従来の方法よりも少ない演算回数でしかもより高い精度で構造物の形状・寸法を決定することができる。
【0015】
なお第2の発明では、第6の工程で、複数の有限な要素のそれぞれについて第5の工程で演算した体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算する。そして第7の工程で、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて複数の有限な要素のそれぞれについて第6の工程で演算した温度変化量を修正する。更に、第2の発明では、第8の工程で、複数の有限な要素のそれぞれについて第7の工程で修正された温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得る。第2の発明でも、第1の発明と同様に、第3の工程で新たな推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、新たな推定構造物を用いて第1乃至第8の工程を繰り返すことにより目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定する。第2の発明では、体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算し、修正された温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得るので、温度変化量を利用する既存技術を利用して簡単に新たな推定構造物を得ることができる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明における第3の工程を、第1の発明における第7の工程の後に実施する。すなわち修正した体積変化量dVに基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とした後に、推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であるか否かの判定を行い、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物が決定されるまで、第1乃至第7の工程を繰り返し実施する。第3の発明によれば、第1の発明と比べて、本発明を実施するために用いるプログラムの作成が容易になる。
【0017】
第4の発明は、第2の発明における第3の工程を、第2の発明における第8の工程の後に実施する。すなわち修正した温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とした後に、推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であるか否かの判定を行い、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物が決定されるまで、第1乃至第8の工程を繰り返し実施する。第4の発明によれば、第2の発明と比べて、本発明を実施するために用いるプログラムの作成が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、有限な要素のそれぞれについて、従来は誰も着目しなかった体積変化量dVを求めて、推定構造物の有限な要素の形状及び寸法を変更し、新たな推定構造物とすることにより、従来の方法よりも少ない演算回数でしかもより高い精度で構造物の形状・寸法を決定することができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の構造物の形状寸法決定方法に関する実施の形態を詳細に説明する。例えば、図1(A)及び(B)は本出願の第1の発明を用いて、片持梁1の形状と寸法を、目標とする固有振動数Ω0rとなる梁になるように設計する場合の説明に用いる図であり、図2は本出願の第1の発明を、コンピュータを用いて実施する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【0020】
第1の発明の一実施の形態では、まず図1(A)の構造物(一様な厚さの梁)の解析を行う。この解析は、図1(B)に示すように有限要素モデル(推定構造物)を用いて行うことができる。有限要素モデル(推定構造物)の各要素は、ソリッドタイプであり、厚さ方向も10分割している。図1(B)の有限要素モデルに基づいて公知の方法により推定構造物の固有振動数Ω1rを演算する(第1の工程)。演算した結果、このモデルの固有振動数は、80.5Hzであった。そして目標とする構造物の固有振動数Ω0rを75Hzとする。
【0021】
本実施の形態では、推定構造物の固有振動数80.5Hzと目標とする構造物の固有振動数75Hzの差をもとにして,目標を満たす構造変更量を体積変化量dVから計算する。具体的には、体積変化量dVに対応させて梁の厚さを変化させ,新しい梁の形状を得る。
【0022】
具体的には、図2のフローチャートでは、まず目標とする固有振動数Ω0rを設定する。この例では、75Hzを目標とする固有振動数として設定する。次に、目標とする固有振動数Ω0rに近い固有振動数Ω1rを有すると推定される推定構造物を考える。具体的には、梁の各部の厚みを経験則に基づいて変化させて推定構造物を考える。そしてステップST2では、この推定構造物について固有振動数Ω1rを演算する(第1の発明の第1の工程に該当)。固有振動数Ω1rの演算は、前述の有限要素モデルを考えて公知の演算方法により行う。前述のように、例えば、推定構造物の固有振動数が80.5Hzとする。
【0023】
次に、ステップST3で、目標とする固有振動数Ω0rと推定構造物の固有振動数Ω1rとの振動数差dΩ(=|Ω0r-Ω1r|)を演算する(第1の発明の第2の工程)。なおΩ0rは、n次までの固有振動数で、r=1~nである。またΩ1rは、n次までの変更前の推定構造物の固有振動数で、r=1~nである。n=1では、dΩ=80.5-75=5.5Hzである。
【0024】
そしてステップST4で、この振動数差dΩが予め定めた設定値以下か否かを判定する(第1の発明の第3の工程)。本実施の形態の場合、この設定値を、例えば、0.1とする。ステップST4(第1の発明の第3の工程)で、振動数差dΩが設定値以下であると判定すれば、推定構造物を目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であると決定して、ステップは終了する。また振動数差dΩが設定値より大きければ、推定構造物は目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物ではないと決定する。具体例では、5.5>0.1であるため、次のステップST5へと進む。
【0025】
ステップST5では、推定構造物が図1(B)に示すように、複数の有限な要素によって構成されているものと仮定して、複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する。例えば、有限な要素が5000個あれば、5000個の有限要素のすべてについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算する(第1の発明の第4の工程)。
【0026】
ひずみエネルギー密度U´及び運動エネルギー密度T´を演算するための式は、以下のように導き出される。
【0027】
不減衰,多自由度系の固有方程式は、以下のとおりである。
【0028】
(μr[M]-[K]){xr}={0}
ここで、
[M]は質量行列であり、
[K]は剛性行列であり、μrは r次固有値であり、
{xr}はr次固有ベクトルである。
【0029】
上式の両辺を設計変数γで微分し、{xr}が質量行列で正規化されており、かつ{xr}が設計変数γに関して不変であるとすれば、以下の式が得られる。
μr´={xr}T([K´]-μr[M´]){xr}
ここでμr=Ω1rの関係にあるから
Ω1r´={xr}T([K´]-Ω1r[M´]){xr}/(2Ω1r
となる。
【0030】
ここでU´={xr}T([K´]{xr}であり、V´={xr}T(Ω1r[M´]){xr}と置けば、U´とT´ は固有モード(各有限要素)ごとのひずみエネルギーと運動エネルギーの感度となる。上記の式を用いることにより、複数の有限な要素のそれぞれについて、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´を演算することができる。
【0031】
なお、上記式から、体積感度Ω1r´=dΩ/dV=(U´-T´)/(2Ω1r)={P}(ただしr=1~n)が導かれる。以下の式では,ベクトル{P}をPと書く。
【0032】
図2に戻って、ステップST6では、複数の有限な要素のそれぞれについての体積感度dΩ/dVと、振動数差dΩと、推定構造物の固有振動数Ω1rと、ひずみエネルギー密度U´と運動エネルギー密度T´とが、上記の関係にあることを前提にして、dΩ/dVを求める。そしてステップST7では、複数の有限な要素のそれぞれについて、体積変化量dVを下記の式で演算する(第1の発明の第5の工程)。
【0033】
{dV}=P[PT・P]-10r-Ω1r)
以下の式では、ベクトル{dV}をdVと書く。
【0034】
そしてステップST8では、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを段階的に収斂させるのに必要な収斂指数αまたは収斂係数αを用いて、複数の有限な要素のそれぞれについて演算した体積変化量dVを修正する(第1の発明の第6の工程)。例えば、体積変化量dVを1以下の収斂指数αによって、dV´=(dV)αとなるように修正する。また体積変化量dVを1以下の収斂係数αによって、α(dV)となるように修正することもできる。この収斂指数または収斂係数を用いた体積変化量dVの修正を行うことにより、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを、段階的に収斂させることが容易に可能になる。収斂指数または収斂係数を具体的に1以下のどのような値にするかは、目標とする構造物の形状・寸法によって異なっている。実際上は、ある程度の予備試験を行って、好ましい収斂指数または収斂係数を決めることになる。ちなみに図1に示したモデルでは、αを0.05~0.8の値としている。
【0035】
本実施の形態では、ステップST9(第1の発明における第7の工程)で、複数の有限な要素のそれぞれについてステップST8で修正した体積変化量dV´に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とする。なお新たな推定構造物を得る場合に用いる技術はいかなるものでもよい。例えば、変更後の形状と寸法を直接定義し直す方法や、熱変形量を計算して新しい形状と寸法を得る方法がある。
【0036】
複数の有限な要素のそれぞれについて、ステップST8で修正した体積変化量dV´を発生させるのに必要な温度変化量を演算する。そして複数の有限な要素のそれぞれについて演算した温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得るようにしている。このときの流れは、図3のフローチャートに示すとおりである。この方法を採用すると、変更後の形状と寸法を直接定義し直す方法と比べて、容易に形状や寸法を計算することができる。そのため処理を自動化しやすくなり、プログラム作成の面で有利である。
【0037】
そして本実施の形態では、ステップST4で、新たな推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、新たな推定構造物を用いてステップST2~ステップST9(第1の発明における第1乃至第7の工程)を繰り返すことにより、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定する。
【0038】
図1のモデルの計算例では、収斂係数をα=0.2としたときに、目標とする固有振動数75Hzを実現するまでに梁の形状を10回変更した。図4は、この目標とする固有振動数75Hzに至るまでの振動数の変化を示している。そして図5(A)は変更前の梁の厚さを示し、図5(B)は変更後の梁の厚さを模式的に示している。この計算結果からは、固定端側の厚さを減少して、固有振動数を低減させていることがわかる。
【0039】
このように第1の発明の実施の形態によれば、有限な要素のそれぞれについて、従来は誰も着目しなかった体積変化量dVを求めて、推定構造物の有限な要素の形状及び寸法を変更し、新たな推定構造物とすることにより、従来よりも少ない演算回数でしかもより高い精度で構造物の形状・寸法を決定することができることが分かる。
【0040】
なお第2の発明の実施の形態では、図6にそのステップの一部を示すように、図2のステップST7(前述の第5の工程)で演算した体積変化量dVを、次のステップST81(第2の発明における第6の工程)で、複数の有限な要素のそれぞれについてステップST7で演算した体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算する。そして次のステップST82(第2の発明における第7の工程)で、目標とする固有振動数Ω0rに推定構造物の固有振動数Ω1rを段階的に収斂させるのに必要な収斂指数または収斂係数を用いて複数の有限な要素のそれぞれについて温度変化量を修正する。更に、第2の発明では、ステップST83(第2の発明における第8の工程)で、複数の有限な要素のそれぞれについてステップST82で修正された温度変化量の温度分布に基づいて、熱変形の計算を行い、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得る(ステップST9)。第2の発明でも、第1の発明と同様に、第3の工程で新たな推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であることが決定されるまで、新たな推定構造物を用いて第1乃至第8の工程を繰り返すことにより目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物の形状寸法を決定する。第2の発明では、体積変化量dVを発生させるのに必要な温度変化量を演算し、修正された温度変化量の温度分布に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変化させて新たな推定構造物を得るので、温度変化量を利用する既存技術を利用して簡単に新たな推定構造物を得ることができる。
【0041】
本出願の第3の発明の実施の形態では、図7に示すように、第1の発明における第3の工程(図2のステップST4)を、第1の発明における第7の工程(図2のステップ9の後)に実施する。なお図7に示したステップST12及びステップST13は図2に示したステップST2及びステップST3と同じであり、ステップST14乃至ステップST18は図2に示したステップST5乃至ステップST9と同じであるので、説明を省略する。すなわち修正した体積変化量dVに基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とした後に、推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であるか否かを判定を行い、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物が決定されるまで、ステップST12~ステップST18を繰り返し実施する。第3の発明によれば、第1の発明と比べて、本発明を実施するために用いるプログラムの作成が容易になる。
【0042】
第4の発明の実施の形態では、第2の発明における第3の工程を、第2の発明における第8の工程の後(図6のステップST9の後)に実施する。すなわち第4の発明の実施の形態では、図7に示した第3の発明の実施の形態を実施するプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートのステップST17を図8に示すように変更する。すなわち、修正した温度変化量の温度分布(ステップST171及びステップST172)に基づいて、推定構造物の形状及び寸法を変更して新たな推定構造物とした後に(ステップST173,ステップST18)、推定構造物が目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物であるか否かの判定を行い(ステップST19)、目標とする固有振動数Ω0rを有する構造物が決定されるまで、ステップST12からステップST19(第1乃至第8の工程)を繰り返し実施する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)は推定構造物(一様な厚さの梁)を示す図であり、(B)は推定構造物の有限要素モデルを概念的に示す図である。
【図2】本出願の第1の発明の実施の形態をコンピュータを用いて実施する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】図2のステップの一部の詳細を示す図である。
【図4】図1のモデルの計算結果を示すグラフである。
【図5】(A)及び(B)は、変形前の梁のモデルの厚みと変更後の梁の厚みを模式的に示す図である。
【図6】第2の発明の実施の形態を実施する際に用いるアルゴリズムのフローチャートの一部を示す図である。
【図7】第3の発明の実施の形態をコンピュータを用いて実施する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図8】第4の発明の実施の形態を実施する際に用いるアルゴリズムのフローチャートの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 片持梁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7