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明細書 :高分子固定化パラジウム触媒及びその製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4904556号 (P4904556)
公開番号 特開2007-061669 (P2007-061669A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 高分子固定化パラジウム触媒及びその製法
国際特許分類 B01J  31/06        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
C07D 213/127       (2006.01)
C07D 213/16        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/06 Z
B01J 37/02 101C
B01J 37/16
C07D 213/127
C07D 213/16
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2005-247062 (P2005-247062)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
審査請求日 平成20年8月19日(2008.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】杉浦 正晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
【識別番号】100102130、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 尚人
審査官 【審査官】磯部 香
参考文献・文献 特開2005-060335(JP,A)
国際公開第2004/024323(WO,A1)
特開2004-330059(JP,A)
M. T. REETZ, J. G. DE VRIES,Ligand-free Heck reactions using low Pd-loading,Chem. Comm.,英国,2004年 7月21日,p.1559-1563
調査した分野 B01J 31/06
B01J 37/02
B01J 37/16
C07D 213/127
C07D 213/16
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
芳香族側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子、2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩を、当該架橋性高分子を溶解する溶媒中で溶解または分散させ、これを60~200℃に加熱し、冷却後当該架橋性高分子に対する貧溶媒を加えることにより析出物を生じさせ、当該析出物中の架橋基を架橋反応させることから成り、該アルカリ金属塩が、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムである高分子固定化パラジウム触媒の製法。
【請求項2】
前記架橋性高分子が更に親水性側鎖を有する請求項1に記載の製法。
【請求項3】
前記2価のパラジウム塩が、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、シアン化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム、若しくはパラジウムアセチルアセトナート、又はこれらの混合物である請求項1~2のいずれか一項に記載の製法。
【請求項4】
前記2価のパラジウム塩が、酢酸パラジウムである請求項3に記載の製法。
【請求項5】
前記架橋性高分子が更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有する請求項1~のいずれか一項に記載の製法。
【請求項6】
前記架橋性高分子が、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基を有する側鎖を含む請求項1~のいずれか一項に記載の製法。
【請求項7】
前記架橋性高分子が、更に、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基又はチオール基を含む側鎖を少なくとも一種有する請求項に記載の製法。
【請求項8】
前記架橋性高分子が、スチレンを含む重合性モノマーの共重合体である請求項1~のいずれか一項に記載の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2価のパラジウムを原料として、芳香族高分子に0価のパラジウムをナノサイズクラスターとして固定した高分子固定化パラジウム触媒の製法、その製法により製造された触媒及びその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウムのナノサイズクラスターは環境、エネルギー、医療、化学工業などの分野で重要な役割を担う材料として注目され、これまでに多種多様なナノサイズパラジウムクラスターの製造方法が報告されている。一般に金属クラスターはサイズが小さいほど、材料としての機能は高いが、不安定で凝集しやすい。また、材料として利用する場合、ナノサイズクラスターとしての機能を損なわない形でのコンポジット化が必要である。この目的のために、様々な素材がナノサイズパラジウムクラスターの担体として検討されているが、有機高分子もその一つである(非特許文献1、特許文献1)。有機高分子にパラジウムクラスターを固定する場合、多くは配位性の官能基を介しての固定、又は物理的な封入による固定が行われるが、一般に強い固定化によると微小クラスターとしての機能が低下し、弱い固定によると、機能は低下しにくいものの担体からの解離やクラスター同士の凝集が起こり易い。
【0003】
近年、マイクロカプセル化法を用いたパラジウムの高分子への固定が開発された(非特許文献2~3)。この手法によりパラジウムは、スチレン系高分子のベンゼン環との弱い配位によってサブナノメートルサイズのクラスターとして固定され、非常に高い触媒活性を示した。その後本手法は、架橋やミセル化の手法を導入することで高活性を保持しつつ、より安定性の向上した高分子固定化パラジウム触媒へと発展している(非特許文献4~7、特許文献2、3)。
【0004】
マイクロカプセル化法では、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)など0価のパラジウムを原料として、配位子交換によりパラジウムを芳香族高分子に固定した。その結果、得られた高分子固定化パラジウム中には0価のパラジウムがホスフィンフリーの状態で存在し、これが小さなクラスターサイズとともに触媒としての高活性の一因と考えられる。しかしながら、Pd(PPh3)4は比較的高価であり、より安価なパラジウム原料からの製造法の確立が望まれている。
チオールや界面活性剤などがナノサイズ金属クラスターの安定化に有効であり、また4級アンモニウム塩には溶液中の金属触媒を分散させる効果があることが知られている(非特許文献8~9)。4級アンモニウム塩を用いてマイクロカプセル化を行うことにより、通常のマイクロカプセル化の手法では固定できない酢酸パラジウム(II)を原料としても、芳香族高分子に0価のパラジウムを固定できる(非特許文献10)。
一方、酢酸パラジウム(II)が還元剤非共存下、温和な熱処理により分解・還元されて、0価のパラジウムを生成することが報告されている(非特許文献11)。
【0005】

【特許文献1】WO99/41259
【特許文献2】特開2002-66330
【特許文献3】特開2002-253972
【非特許文献1】Uozumi, Y. Topics in Current Chemistry, 242, 77 (2004).
【非特許文献2】Akiyama, R. 他 Angew. Chem., Int. Ed. 40, 3469 (2001).
【非特許文献3】Akiyama, R. 他 J. Am. Chem. Soc. 125, 3412 (2003).
【非特許文献4】Kobayashi, S. 他 Chem. Commun. 2003, 449.
【非特許文献5】Okamoto, K. 他 J. Org. Chem. 69, 2871 (2004).
【非特許文献6】Okamoto, K. 他 Org. Lett. 6, 1987 (2004).
【非特許文献7】Okamoto, K. 他 J. Am. Chem. Soc. 127, 2125 (2005).
【非特許文献8】Reetz, M. T. 他 Chem. Commun. 1996, 1921.
【非特許文献9】Reetz, M. T. 他 Adv. Mater., 11, 773 (1999).
【非特許文献10】萩尾浩之 他 日本薬学会第125会年会要旨集4,108頁 (2005)
【非特許文献11】Reetz, M. T. 他 Chem. Commun. 2004, 1559.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、原料として安価なパラジウム(II)化合物を用い、芳香族高分子にナノサイズのパラジウムクラスターが安定に担持された、高分子固定化パラジウム触媒、その製造方法、及びその触媒を用いた反応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酢酸パラジウム(II)の加熱による還元(非特許文献11)を芳香族高分子の共存下で行うことにより、0価のパラジウムを芳香族高分子中に取り込むことが可能ではないかと考え検討を行った。
その結果、芳香族側鎖を有する高分子を含む溶液中で、2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩を加熱処理することにより、パラジウムが還元され、芳香族高分子にナノサイズパラジウムクラスターを担持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、まず、芳香族側鎖を有する高分子、2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩を、当該高分子を溶解する良溶媒中で混合する。次にこの溶液を60℃以上で適宜加熱する。この操作によりパラジウム(II)は0価に還元されていると考えられる。更に、この溶液に高分子に対する貧溶媒を徐々に加えることにより相分離状態を生じさせ、この操作により0価のパラジウムを微小クラスターとして高分子中に取り込むことができる。
即ち、本発明は、芳香族側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子、2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩を、当該架橋性高分子を溶解する溶媒中で溶解または分散させ、これを60~200℃に加熱し、冷却後当該架橋性高分子に対する貧溶媒を加えることにより析出物を生じさせ、当該析出物中の架橋基を架橋反応させることから成り、該アルカリ金属塩が、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムである高分子固定化パラジウム触媒の製法である

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の高分子固定化パラジウム触媒の製法においては、芳香族側鎖を有する高分子、2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩を、当該高分子を溶解する良溶媒中、60℃以上に加熱し、その後、この溶液に高分子に対する貧溶媒を徐々に加えて相分離させることにより高分子固定化パラジウム触媒を得る。
【0010】
本発明で用いられる高分子は、芳香族側鎖を有することを要し、その分子量は5千~30万、好ましくは2万から10万である。分子量が小さいと溶剤に対する溶解性が増し、固定化触媒としての長所である回収・再使用が困難となる、或いは貧溶媒を加えた際に相分離しない場合が生ずる。また、分子量が大きすぎる高分子は、その合成や触媒調整時の溶解が困難になる。また、当該芳香族側鎖を有する高分子は更に架橋基を有することが好ましい。即ち、前記の相分離操作により得られた高分子固定化パラジウムを高分子間で架橋することにより、耐溶剤性を向上し、様々の溶媒中での使用が可能となる。さらに、当該芳香族側鎖を有する高分子は疎水性基としての芳香族基を有するが、さらに親水性基を付与することにで両親媒性となり、貧溶媒を加えて相分離させる際に高分子ミセルを形成することが可能である。高分子ミセル内に固定されたパラジウムクラスターは、ミセルを形成していない場合に比べて安定性が向上する場合が多い。高分子ミセルを形成させた後に高分子間を架橋することにより、さらに安定性を向上させることができる。
【0011】
芳香族側鎖としては、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6~10、好ましくは6のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アラルキル基としては、通常炭素数7~12、好ましくは7~9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環はアルキル基、アリール基、アラルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0012】
芳香環が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~20、好ましくは1~12のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0013】
芳香環が有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、上記した如き芳香族基としてのアリール基及びアラルキル基と同様なものが挙げられる。
これら芳香環が有していてもよい置換基は、アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環に通常1~5個、好ましくは1~2個置換していてもよい。
【0014】
以上の中でも、高分子調整の簡便さ、価格などを考慮すると、この芳香族高分子として、スチレンを含む重合性モノマーの共重合体が好ましい。
【0015】
架橋基として、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、チオール基が挙げられる。この架橋基としてエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びチオイソシアネート基が好ましく、これらに更に、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基又はチオール基を含んでもよい。
これらの架橋基は必要に応じて単独又は組み合わせて用いてもよく、モノマーの重合、或いはパラジウム(II)の加熱による還元の際には保護しておくことも可能である。さらに、高分子内の官能基と結合する複数の官能基を有する架橋剤を相分離後に添加して高分子間で架橋することも可能である。この例としては、水酸基を有する芳香族高分子と架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの組み合わせを挙げられる。
【0016】
高分子中の架橋基の位置に特に制限はなく、芳香環に結合、主鎖に直接結合、或いは炭化水素基などのスペーサーを介して主鎖と結合していても良い。架橋基の数は高分子の分子量にもよるが、モノマー成分の0.2~20%(モル比)、好ましくは1~5%である。
【0017】
本高分子固定化パラジウム触媒は様々な触媒反応に用いられる可能性があることから、架橋基は架橋反応後に安定であり、パラジウム触媒反応を阻害しない構造であることが好ましい。このような性質を有する単独の架橋基、或いは架橋基の組み合わせとしては、エポキシ基のみ、及びエポキシ基と水酸基の組み合わせが好ましい。これらは加熱により架橋し、エーテル結合を形成する。この場合の加熱条件としては、80~180℃、好ましくは110~150℃で、反応時間は0.5~24時間、好ましくは1~5時間で実施される。反応温度が低いと架橋が不十分、或いは長時間の加熱が必要となり、反応温度が高いと高分子鎖の切断や官能基の分解が起こる場合がある。
【0018】
また、架橋性高分子として架橋基や親水性基を有するコポリマーや、疎水基と親水性基とを併せ持つモノマーの重合体からなるホモポリマーを用いてもよい。
親水性基としては、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、アミノ基、及びアミド基を用いることが可能である。この場合も官能基の安定性と触媒反応に対する影響を考慮すると、最も好ましい親水性基は水酸基及びエーテル基である。これらの親水性基の疎水性基に対する割合は高分子のタイプ、例えばホモポリマーかコポリマーか、或いはランダムコポリマーかブロックコポリマーか、などにより適宜調整される。コポリマーの場合、総モノマーに対する親水性モノマーの割合は3~50%、好ましくは5~20%である。ホモポリマーの場合は、モノマー中の酸素原子の数として1~5個、好ましくは1~3個である。親水性基の結合位置に特に制限はなく、芳香環に結合、主鎖に直接結合、或いは炭化水素基などのスペーサーを介して主鎖と結合していても良いが、主鎖に直接結合した場合がポリマーミセルを形成し易い。
【0019】
本発明の架橋性高分子は更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有してもよい。
芳香族側鎖以外の疎水性側鎖としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0020】
本発明の架橋性高分子は更に親水性側鎖を有してもよい。
親水性側鎖としては、比較的短いアルキル基、例えば、炭素数が1~6程度のアルキレン基に-R(Rは-OH又は低級アルコキシ基、好ましくは-OHを表す。)が結合したものであってもよいが、-R(OR)、-R(COOR)又は-R(COOR)(OR)(式中、Rは上記と同様であり、Rは共有結合又は炭素数1~6のアルキレン基、好ましくは共有結合又は炭素数1~2のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2~4、好ましくは2のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)で表されるものが好ましい。より好ましい親水性側鎖として、-CH(OC)OHや-(COOC)OH等が挙げられる。
【0021】
本発明の高分子固定化パラジウム触媒は、上記架橋性高分子と2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩とを、当該高分子を溶解する良溶媒中で加熱処理し、その後高分子に対する貧溶媒を徐々に加えて相分離させ、更に架橋反応に付すことにより得られる。
【0022】
2価のパラジウム塩として、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、シアン化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム、若しくはパラジウムアセチルアセトナート、又はこれらの混合物が挙げられ、この中で酢酸パラジウム及び硝酸パラジウムが好ましく、酢酸パラジウムがより好ましい。
2価のパラジウム塩として酢酸パラジウムを用いた場合、アルカリ金属を添加しない場合でもパラジウムは高分子に固定されるが、パラジウムの導入量や導入率は低い。これに対し、酢酸パラジウムにアルカリ金属塩を併用するとパラジウムの導入率や導入量が大きく向上する。一方、酢酸パラジウム以外のパラジウム塩を用いる場合には、アルカリ金属の酢酸塩の併用が必須である。
【0023】
アルカリ金属の塩としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの硝酸塩又はハロゲン化物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられるが、本願発明においては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムである

【0024】
このような架橋性高分子と2価のパラジウム塩及びアルカリ金属塩とを、架橋性高分子を溶解する溶媒(良溶媒)に溶解又は分散させ、加熱処理する。良溶液中のパラジウム塩の濃度は0.01~0.2M程度である。良溶液中のアルカリ金属の酢酸塩の濃度は0.02~0.4M程度である。
この加熱処理の条件は、60~200℃、好ましくは65~80℃で、2~10時間、好ましくは3~5時間である。加熱温度が65℃以下の場合には、パラジウムの還元反応が進行しないか遅くなる場合があり、パラジウム(0)の高分子への固定が不十分となる。架橋基としてエポキシドを用いた場合、80℃以上でパラジウム(II)の還元を行うと高分子間の架橋反応による不溶化が起こり、パラジウムは微小クラスターとしては高分子に固定されない。また、加熱時間が短い場合にも還元が不十分となり、長すぎる場合には架橋反応が進行する。
2価のパラジウムはマイクロカプセル化法では固定できない点、及び加熱処理に続くマイクロカプセル化で得られた触媒が、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどの0価のパラジウムを出発原料としてマイクロカプセル化法により固定した触媒と類似の触媒活性、電子顕微鏡による観察で類似の形態を示す点などから、この加熱処理の結果、2価のパラジウムは0価のパラジウムに還元されるものと考えられる(非特許文献11)。
【0025】
その後、この溶液又は分散液を室温程度にまで冷却し、適当な貧溶媒を加えて相分離を起こすことにより、パラジウムはポリマー凝集物又はミセル様集合体に取り込まれる。
その方法は、例えば、a)適当な極性の良溶媒に溶解させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、b)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えてパラジウム担持ミセル様集合体を形成させ、更に極性の貧溶媒で凝集させる、c)適当な非極性の良溶媒に溶解させた後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、d)非極性の良溶媒に溶解した後適当な極性溶媒を加えてパラジウム担持ミセル様凝集体を形成させ、更に非極性の貧溶媒で凝集させる、ことにより行われる。この場合、a)及びb)の方法では、形成されたミセル様凝集体の内方向に疎水性側鎖が、外方向に親水性側鎖が位置することになり、c)及びd)の方法では、形成されたミセル様凝集体の外方向に疎水性側鎖が内方向に親水性側鎖が位置することになる。この際、パラジウム超微粒子は夫々のミセル様集合体又はポリマー凝集物に於いて芳香族側鎖との相互作用により担持される。
【0026】
極性の良溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、DMF、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメトキシエタン(DME)など、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコール、アミルアルコール、ジエチルエーテルなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。また、良溶媒及び貧溶媒としてこれらの混合溶媒を用いてもよい。
【0027】
良溶媒中のポリマーの濃度は約1~100 mg/ml、パラジウム化合物の量はポリマーに対して0.01~0.5(w/w)、貧溶媒の量は良溶媒に対して0.2~10(v/v)用いられ、貧溶媒の添加時間は通常10分~2時間かけて行われる。相分離の際の温度は特に制限はないが、通常0℃~室温で行われる。
【0028】
次に、このような処理の結果生じたパラジウム含有架橋性高分子の架橋基を架橋反応させる。
架橋反応は、架橋性官能基の種類により、加熱や紫外線照射により反応させることができる。架橋反応は、これらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、縮合剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。
架橋基としてエポキシドと水酸基とを加熱により架橋させる際の温度は、通常80~180℃、好ましくは110~150℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.5~24時間、好ましくは1~5時間である。
【0029】
このようにして得られた高分子固定化パラジウム触媒は、パラジウムがポリマー中の芳香環との相互作用により超微粒子として担持された形態を有していると考えられ、各種の反応、例えば、Heck反応や鈴木-宮浦カップリング反応などに対して高い触媒活性を示す。
Heck反応は、塩基の存在下、パラジウム(0)を触媒として、ハロゲン化アリール又はハロゲン化ビニルを末端オレフィンとクロスカップリングさせて置換オレフィンを合成する反応である。
【0030】
鈴木-宮浦カップリング反応は、塩基の存在下、パラジウム触媒を用いて、有機ホウ素化合物とハロゲン化アリール若しくはハロゲン化ビニル又はアリールトリフラート若しくはビニルトリフラートとをクロスカップリング反応させることによりビアリール化合物、アルキルアリール化合物又は置換オレフィン類を製造することができる。
この反応により、例えば、RB(OR若しくは(RB(式中、Rはアリール基、ビニル基又はアルキル基、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)とRX(式中、Rはアリール基又はビニル基、Xはハロゲン原子又はトリフラート基((OTf)3)を表す。)とを反応させ、ビアリール化合物、アルキルアリール化合物、アルケニルアリール化合物又はジエン化合物を製造することができる。
このアリール基としては、通常炭素数6~10、好ましくは6のものが挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またこのビニル基は適宜置換基を有していてもよい。
【0031】
この際、使用する触媒量は、0.01~10mol%、好ましくは0.1~5mol%である。ハロゲン化アリール又はハロゲン化ビニルのハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素を用いることができるが、中でも臭素又はヨウ素が好ましい。反応溶媒としては水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができ、有機溶媒としてはトルエンなどの炭化水素が好ましく、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類が好ましく、必要に応じてエタノールのようなアルコールなどを添加することもできる。添加する塩基はアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩などが好適である。反応温度は70℃~150℃、好ましくは100℃前後であり、例えばトルエン/水系では還流温度が簡便である。反応時間は基質にも拠るが1時間~24時間、通常は数時間で反応が終了する。
【0032】
この反応においては、アリルホスフィン配位子及びアルカリ金属の炭酸塩又はリン酸塩などの塩基を外部添加することを要する。このような配位子として、例えば、ジメチルフェニルホスフィン(P(CH3)2Ph)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dPPf)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、トリフェノキシホスフィン(P(OPh)3)、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン等が挙げられる。
反応後の後処理は、濾過により高分子固定化触媒を除去・回収し、濾液を抽出、濃縮、及び精製操作により目的物を得ることができる。一方、回収した固定化触媒は洗浄・乾燥することにより再使用が可能である。
【0033】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
過tert-ブチルアルコールのデカン溶液(5~6 M, 12.5 ml)を(50 ml)に希釈し、二酸化セレン(111 mg, 1.0 mmol)、酢酸(90.1 mg, 1.5 mmol)を加え室温下にて30分間攪拌した。次いで2-フェニルプロペン(6.5 ml, 50 mmol)を加えて72時間攪拌した後、反応混合物を減圧濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって生成したところ、目的とする3-ヒドロキシ-2-フェニルプロペン(3.98 g, 59 %)を得た。
1H NMR : 1.27 (s, 1H), 4.55 (s, 2H), 5.36 (s, 1H), 5.48 (s, 1H), 7.28-7.40 (m, 3H), 7.42-7.50 (m, 2H).
13C NMR : 65.0, 112.6, 126.0, 127.9, 128.5, 138.4, 147.2.
【0034】
3-ヒドロキシ-2-フェニルプロペン(3.94 g, 29.4 mmol)にs-コリジン(3.84 g, 31.7 mmol)及び塩化リチウム(1.25 g, 29.4 mmol)のジメチルホルムアミド溶液を加え0℃に冷却した。得られた懸濁液にメタンスルホニルクロリド(2.45 ml, 31.7 mmol)をゆっくり滴下した。反応混合物を8時間かけて室温まで昇温し、ジエチルエーテルで希釈した後、水をゆっくり加えて反応を停止した。有機層を分離した後、水層をジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を合わせて水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し有機層を減圧濃縮してえら得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成して3-クロロ-2-フェニルプロペンを(3.53 g, 79 %)を得た。
1H NMR : 4.50 (s, 2H), 5.49 (s, 1H), 5.60 (s, 1H), 7.30-7.60 (m, 5H).
13C NMR : 46.5, 116.7, 126.1, 128.2, 128.5, 137.6, 143.9.
【0035】
製造例2
水素化ナトリウム(60 %, 1.82 g, 45.4 mmol)を石油エーテルにて3回洗浄した後減圧乾燥した。そこにテトラヒドロフラン(70 ml)を加えた後、氷浴にて冷却した。次いで、テトラエチレングリコール(8.81 g, 45.4 mmol)のテトラヒドロフラン(10 ml)溶液を攪拌下でゆっくり加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、製造例1で得た3-クロロ-2-フェニルプロペン(3.46 g, 22.7 mmol)のテトラヒドロフラン(10 ml)溶液を加え、さらに12時間攪拌した。反応混合物を冷却しジエチルエーテルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくり加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、有機層を減圧濃縮して得られた組成性物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成して、テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニル エーテル(4.52 g, 64 %)を得た。
1H NMR : 2.72 (s, 1H), 3.58-3.74 (m, 16H), 4.42 (s, 2H), 5.34 (d, 1H, J=1.2 Hz), 5.53 (d, 1H, J=0.5 Hz), 7.25-7.36 (m, 3H), 7.44-7.52 (m, 2H).
13C NMR : 61.7,, 69.2, 70.3, 70.5, 70.6, 72.4, 73.1, 114.4, 126.1, 127.7, 128.3, 138.7, 144.0.
【0036】
製造例3
2-フェニルプロペン(22.4 g, 190 mmol)、N-ブロモスクシンイミド(NBS、23.7 g, 133 mmol)及びブロモベンゼン(76 ml)を混合し、160℃のオイルバスでNBSが溶解するまで急速に加熱した。室温まで冷却後、析出物を濾過で除きクロロホルムで洗浄した。濾液を蒸留(b.p. 80-85 / 3 mmHg)したところ、3-ブロモ-2-フェニルプロペンが1-ブロモ-2-フェニルプロペンとの混合物として得られた(純度78%、収率 46%)。
1H NMR :4.39 (s, 2H), 5.49 (2, 1H), 5.56 (s, 1H), 7.33-7.51 (m, 5H).
13C NMR : 34.2, 117.2, 126.1, 128.3, 137.6, 144.2.
【0037】
水素化ナトリウム(60 %, 1.6 g, 40 mmol)のDMF(75 ml)懸濁液にグリシドール(7.4 g, 100 mmol)のDMF(5 ml)溶液を0℃でゆっくり加えた。次いで上記で得た3-ブロモ-2-フェニルプロペン(78 % purity, 5.05 g, 20 mmol)のDMF(10 ml)溶液を加えた後、室温で24時間攪拌した。反応混合物を氷冷しジエチルエーテルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくりと加えて反応を停止した。有機層を分離後、水層をジエチルエーテルで2回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧濃縮し、得られた組生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2-[(2-フェニルアリルオキシ)メトキシ]オキシラン(2.66 g, 70%)を得た。
1H NMR :2.59 (dd, 1H, J=2.7, 5.1Hz), 2.78 (dd, 1H, J=4.2, 5.1 Hz), 3.13-3.17 (m, 1H), 3.46 (dd, 1H, J=5.8, 11.5 Hz), 3.77 (dd, 1H, J=3.2, 11.5 Hz), 4.41 (ddd, 1H, J=0.7, 1.2, 12.9 Hz), 4.48 (ddd, 1H, J=0.5, 1.2, 12.9 Hz), 5.34-5.36 (m, 1H), 7.45-7.48(m, 5H).
13C NMR : 44.3, 50.8, 70.5, 73.2, 114.6,, 126.0, 127.8, 128.4, 138.6, 143.9.
【0038】
製造例4
製造例3で得た2-[(2-フェニルアリルオキシ)メトキシ]オキシラン(2.85 g, 15 mmol)、製造例2で得たテトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニル エーテル(4.66 g, 15 mmol)、スチレン(12.5 g, 120 mmol)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(172 mg, 1.05 mmol)をクロロホルム(19 ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で48時間還流した。反応液を室温まで冷却した後、冷メタノール中にゆっくり滴下した。沈殿を濾過により集め、少量のテトラヒドロフランに溶解しメタノールに滴下して再沈殿させた。再び濾過に集めた沈殿をメタノールで洗浄し、室温減圧下で24時間乾燥した。コポリマー(1)を白色粉末として得た(12.0 g, 収率60%)。Mw:31912。Mn:19468。Mw/Mn=1.64(GPC)。NMRで測定した結果、得られたコポリマー中の各モノマー比は91:5:4であった(以下「コポリマー(1)」という。)。コポリマー(1)を下式に示す。
【化1】
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【0039】
実施例1
コポリマー(1)(200 mg)、酢酸ナトリウム(21.7 mg, 0.26 mmol)及び硝酸パラジウム(30.4 mg, 0.13 mmol)をテトラヒドロフラン(3.0 ml)に室温で溶解し1時間攪拌後、66℃で3時間攪拌した。室温まで放冷し、ヘキサン(20 ml)をゆっくりと滴下した後、室温で12時間放置した。上澄みをデカンデーションで除き、ヘキサンで数回洗浄した後、室温減圧下で24時間乾燥した。得られた固体を粉砕し、無溶媒条件下120℃で2時間加熱することにより高分子を架橋させた。テトラヒドロフラン、水で洗浄後、乾燥して高分子固定化パラジウム(PI Pd)を得た(169 mg)(以下「PI Pd A」という。)。反応を下式に示す。
【化2】
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【0040】
得られたPI Pd AをTEMで観察した結果、パラジウムは約1.5nm径のナノサイズクラスターとして架橋高分子中に固定されていた。
得られたPI Pd A(26.0 mg)に濃硫酸(1.0 ml)を加え180℃で30分間加熱した。このものに室温で硝酸(0.5 ml)を加え、再び180℃で60分間加熱することにより高分子を分解した。水(10 ml)を加えた後、再度180℃に加熱して均一溶液とし、このものを蛍光X線分析することによりパラジウム含量を決定した(0.44 mmol / g)。原料パラジウムに対する固定されたパラジウムの回収率は57%であった。
【0041】
実施例2,5~7、比較例3,4
表1に示すように原料パラジウム塩(II)と酢酸ナトリウム(添加剤)を変えて、実施例1と同様に触媒(PI Pd)を作製し、高分子への固定化を検討した。結果を表1に示す。
比較例1
原料として硝酸パラジウムを用い、添加剤(酢酸ナトリウム等)を加えずに、実施例1と同様に触媒(PI Pd)を作製し、高分子への固定化を検討した。結果を表1に示す。
比較例2
原料として酢酸パラジウムを用い、添加剤(酢酸ナトリウム等)を加えずに、実施例1と同様に触媒(PI Pd)を作製し、高分子への固定化を検討した。結果を表1に示す。
【表1】
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【0042】
硝酸パラジウムを用いてアルカリ金属の酢酸塩を添加すると、比較的良好な回収率でパラジウムは高分子に固定された(実施例1、2、6、7)。この場合、アルカリ金属の種類及び添加する量によってパラジウムの回収率に差異が認められた。
原料として酢酸パラジウムを単独で用いた場合、高分子固定化パラジウム(比較例2、PI Pd H)は得られたが、パラジウムの回収率は低かった。
原料として酢酸パラジウムを用いた場合、アルカリ金属塩の添加により無添加の場合(比較例2)に比べてパラジウムの回収率が向上した(比較例3、4、実施例5)。添加剤を加えずに原料として硝酸パラジウムを用いた場合、パラジウムは高分子に全く固定されなかった(比較例1)。これは、硝酸パラジウムから0価のパラジウムが生成しなかったためと考えられる。




【0043】
実施例9
PI Pd A (0.025 mmol)、ヨードベンゼン(56μl, 0.50 mmol)、アクリル酸エチル(81μl, 0.75 mmol)及び炭酸カリウム(196 mg, 1.0 mmol)にN-メチル-2-ピロリドン(NMP, 3 ml)を加えた。混合物を120℃で1時間攪拌したのち冷却し、続いてヘキサンを加えた。ガラスフィルターで濾過し、不溶物をテトラヒドロフラン、塩化メチレン、水で順次洗浄した。有機層をガスクロマトグラフィー(内部標準物質:ナフタレン)により分析した結果、トランス桂皮酸エチルが92%生成していた。また、水層と有機層を合わせて濃縮し、残渣をアセトニトリルに溶解して蛍光X線による分析を行った。その結果、パラジウムは検出されなかった(検出限界=0.94%)ことから、反応中及び後処理中に高分子からパラジウムは漏出していないと考えられる(表2)。本反応(Heck反応)を下式に示す。
【化3】
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【0044】
実施例10
反応時間を1時間から2時間に延長して、実施例9と同様の反応を実施した。結果を表2に示す。収率が若干向上した(94%、表2)。
【0045】
実施例11、14~16、参考例12、13
PI Pd A に代えてPI Pd BG を用いて実施例9と同様の反応を行った。その結果を表2に示す。目的物であるアクリル酸エチルの収率はPI Pd の製造方法によって31%~定量的(quant.)の間でばらつきが認められたが、いずれの場合も触媒からのパラジウムの漏出は認められなかった。

【0046】
参考例17
PI Pd Aに代えてPI Pd Hを用いて実施例9と同様の反応を行った。結果を表2に示す。PI Pd Hは製造時の回収率は低かったが(比較例2)、PI Pd Hを用いた場合の反応生成物の収率は83%と良好であった。
【表2】
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【0047】
実施例18
次に、PI Pd A を用いて鈴木-宮浦カップリング反応の検討を行った。反応を下式に示す。
【化4】
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【0048】
PI Pd A (0.0025 mmol)、2-ブロモトルエン(60μg, 0.50 mmol)、フェニルボロン酸(91.4 mg, 0.75 mmol)、トリ(o-トリル)ホスフィン(8.8 mg, 0.025 mmol)及びリン酸カリウム(106 mg, 0.5 mmol)をアルゴン雰囲気下、トルエン-水(4 / 1, 5 ml)の混合溶媒中で4時間還流した。
室温まで放冷し、続いてヘキサンを加え、ガラスフィルターで濾過した。不溶物をテトラヒドロフラン、水、塩化メチレンで順次洗浄した。濾液を合わせて濃縮し、残渣にアセトニトリルを加えて5mlとして蛍光X線による分析を行った。その結果、パラジウムは検出されなかった(検出限界=0.94%)。このアセトニトリル溶液を再度濃縮し、粗生成物を調整用シリカゲル薄層クロマトグラフィーにより生成したところ2-メチルビフェニルが得られた(90.4 mg, 収率95%)。
1H NMR : 2.26 (s, 3H), 7.21-7.42(m, 9H).
13C NMR : 20.4, 125.7, 126.7, 127.2, 128.8, 129.2, 129.8, 130.3, 135.3, 141.9, 141.9.
溶剤で洗浄後、乾燥したPI Pd A を用いて同じ反応を更に2回繰り返したところ、いずれも高収率で対応するビアリール化合物が得られ、パラジウムの漏出も認められなかった。結果を表3に示す。
【表3】
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【0049】
実施例19~24
PI Pdを用いた鈴木-宮浦カップリング反応の基質一般性を検討するために、各種のハロゲン化アリールとアリールボロン酸を用いて実施例18と同様の反応を行った。結果を表4に示す。いずれの場合も良好な収率でビアリール化合物が得られ、触媒からのパラジウムの漏出は認められなかった。
【表4】
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