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明細書 :高ケイ酸ガラスの製造方法および高ケイ酸ガラス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4521831号 (P4521831)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
発明の名称または考案の名称 高ケイ酸ガラスの製造方法および高ケイ酸ガラス
国際特許分類 C03C  15/00        (2006.01)
C03B  20/00        (2006.01)
C03C   3/06        (2006.01)
FI C03C 15/00 G
C03B 20/00 E
C03B 20/00 F
C03C 3/06
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2005-503771 (P2005-503771)
出願日 平成16年3月19日(2004.3.19)
国際出願番号 PCT/JP2004/003810
国際公開番号 WO2004/083145
国際公開日 平成16年9月30日(2004.9.30)
優先権出願番号 2003078846
優先日 平成15年3月20日(2003.3.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年2月22日(2006.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】赤井 智子
【氏名】陳 丹平
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】藤代 佳
参考文献・文献 特開2003-313050(JP,A)
特開昭56-088819(JP,A)
特開昭57-205337(JP,A)
調査した分野 C03C15/00
C03C3/06
C03B20/00
特許請求の範囲 【請求項1】
マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅のうち何れかの元素を含んでなるホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する工程と、
分相された上記ホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属を溶出する酸処理工程と、
酸処理された上記ホウケイ酸塩ガラスを焼結する焼結工程とを含み、
上記ホウケイ酸塩ガラスは、上記元素の酸化物を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことを特徴とするホウ素を10ppm以上含み、厚さ1mmとした場合に、波長200nmの光を30%以上透過する高ケイ酸ガラスの製造方法。
【請求項2】
上記ホウケイ酸塩ガラスは、原料を加熱して溶融する溶融工程を2回実施して作製されたものであることを特徴とする請求の範囲1に記載の高ケイ酸ガラスの製造方法。
【請求項3】
上記ホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸は、2回実施される上記溶融工程のうちの第2回目の工程において添加されることを特徴とする請求の範囲2に記載の高ケイ酸ガラスの製造方法。
【請求項4】
上記ホウケイ酸塩ガラスがセリウムまたはクロムを含んでおり
上記酸処理工程と上記焼結工程との間で、上記ホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが繰り返し行われ、さらに、エチレンジアミン四酢酸を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることを特徴とする請求の範囲1ないし3の何れか1項に記載の高ケイ酸ガラスの製造方法。
【請求項5】
請求の範囲1ないし4の何れか1項に記載の高ケイ酸ガラスの製造方法により製造され、
ホウ素を10ppm以上含み、厚さ1mmとした場合に、波長200nmの光を30%以上透過することを特徴とする高ケイ酸ガラス。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、高い紫外線透過率を有し、エキシマレーザー基盤材料、透紫外線フィルタ、紫外光利用材料などに使用することができる高ケイ酸ガラスの製造方法、および高い紫外線透過率を有する高ケイ酸ガラスに関するものである。
【背景技術】

従来、紫外線透過材料としては石英ガラスが広く利用されている。この石英ガラスは、CVD法、溶融法などを利用して生産されているが、その生産方法は、コストが非常に高い、大型化が難しい、また、特に溶融法の場合は非常に高温(1900℃以上)にしなければならないなどといった欠点を有している。近年、紫外領域のレーザー、ランプなどの光源生産技術が確立し、赤外領域の光通信ファイバー以外の用途が増大していることによって、石英ガラスの様々な需要が増えており、より低コストで石英ガラスを製造する方法が嘱望されている。
また、ケイ酸を主成分として含む高ケイ酸ガラスを大量に生産する方法として、アルカリホウケイ酸塩系ガラスを熱処理によってSiOリッチの不溶相と、Bリッチの可溶相とに分相させた後に、酸で可溶相を溶出させることによって、SiOを主成分とする多孔質ガラスを作製し、次いでこの多孔質ガラスを焼成して生産するという方法が提案されている〔特許文献1(米国特許第2106774号明細書)参照〕。この方法は、バイコール法と呼ばれている。
しかしながら、上記バイコール法では、ガラス内にFeイオンや水分が残留するため、紫外光や赤外光の透過率を十分に向上させることができないという問題点を有している。そのため、バイコール法は石英ガラスの製法としては利用されていない。
従来のバイコール法によって製造されたバイコールガラスは、上述のように、短波長の紫外線を強く吸収するFeイオンが微量に存在するため、石英ガラスの紫外透過率と比べて低いことが知られている〔特許文献2(特開昭57-205337号公報(昭和57年12月16日公開))参照〕。そこで、特許文献2には、この高ケイ酸ガラスの紫外透過率を増加させるために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはその塩を含有する酸で多孔質ガラスを再度酸処理して、多孔質ガラス中に微量に存在するFeイオンを水溶性の錯塩として溶出した後、焼成して高ケイ酸ガラスを作製するという方法も開示されている。
しかしながら、この方法で作製されたガラスの吸収端は220nm付近であり、石英ガラスの吸収端が160nmであることから考えれば、その紫外透過率ははるかに低く、Feイオンを除去する効果がまだ十分とは言えない。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで大量に生産でき、各種光機能性イオンと複合化できるというバイコールガラスの利点を有しながら、なおかつFe濃度が低く、高い紫外線透過率を得ることのできる高ケイ酸ガラスの製造方法、およびその製造方法によって得られる高ケイ酸ガラスを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】

図1は、本実施例1においてMnOを含む原料から製造された高ケイ酸ガラスと、バイコールガラスそれぞれについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。
図2は、本実施例2において製造された高ケイ酸ガラスについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。なお、本図では、1回溶融で製造された場合と、2回溶融で製造された場合それぞれの結果を示す。
図3は、本実施例3において製造された高ケイ酸ガラスについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。
図4は、本実施例3において製造されたEDTAで酸処理された高ケイ酸ガラスについて、短波長300~115(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。
【発明の開示】

本願発明者等は、模擬緑ガラスにホウ酸を添加したアルカリホウケイ酸塩ガラス中では、遷移金属の分布が不均一となり、金属イオンがホウ酸相に濃縮されるため、酸によって浸出されるということに着目した〔非特許文献1(著者:赤井智子、陳丹平、増井大二、三由洋、矢澤哲夫、「新しい廃ガラスのリサイクル方法」、Journal of Ecotechnology Research、152-153頁、発行元:エコテクノロジー研究会、発行日:2002年12月5日)参照〕。そして、ホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施した場合に、ガラス中に含まれる低価数のFeイオンを高価数のFe3+の状態にすればホウ酸相に分散させることができ、さらに酸処理を施すことによってこのFe3+を除去することができると考えた。そして、原料となるホウケイ酸塩ガラスに重金属または希土類元素(好ましくは高価数の重金属または希土類イオン)を含ませることによって、溶融時にガラス中のFe2+をFe3+の状態にすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法は、上記の課題を解決するために、重金属または希土類元素を含んでなるホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する工程と、分相された上記ホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属を溶出する酸処理工程と、酸処理された上記ホウケイ酸塩ガラスを焼結する焼結工程とを含むことを特徴とするものである。
上記の高ケイ酸ガラスの製造方法は、上述のバイコール法を応用したものであり、ホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施すことによって、SiOを主成分とする不溶相(ケイ酸相)と、Bを主成分とする可溶相(ホウ酸相)に分相させることができる。本発明の製造方法では、上記ホウケイ酸塩ガラスに、重金属または希土類元素が含まれているため、この分相工程において、上記ホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe2+)をFe3+の状態にすることができる。
本願発明者等が見出した知見によれば、高価数の金属イオンはホウ酸相に濃縮されるため、上記ホウケイ酸塩ガラス中に含まれるFe3+の状態にされた低価数の鉄は、ホウ酸相に分散される。上記の高ケイ酸ガラスの製造工程においては、この分相工程の後に実施される酸処理工程によって、金属を溶出させることができるため、Fe3+も他の金属イオンとともに除去することができる。そして、上記酸処理工程の後にホウケイ酸塩ガラスの焼結を行えば、Fe濃度が低く、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを得ることができる。
すなわち、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法によれば、Fe濃度が低く、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを得ることができるとともに、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを低コストで大量に生産することが可能である。
なお、ここで上記「重金属または希土類元素」には、単体、化合物、イオンなど、元素が通常に存在する場合の種々の形態のものが含まれる。しかし、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法において、上記重金属または希土類元素は、酸化剤として作用することができる高価数の重金属または希土類イオンの状態で、ホウケイ酸ガラス中に存在することが好ましい。これによって、ホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe2+)を、より効果的にFe3+の状態に酸化することができる。
本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法において、上記ホウケイ酸塩ガラスは、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅の何れかの元素を含むことが好ましい。
上記の製造方法によれば、得られる高ケイ酸ガラス中のFe濃度をより低下させることがきるため、紫外線透過率をさらに向上させることが可能となる。それに加えて、上記の製造方法によれば、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを低コストで大量に生産することができる。
また、上記の高ケイ酸ガラスの製造方法において、上記ホウケイ酸塩ガラスは、上記元素(すなわち、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu))の何れか)の酸化物を、0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことが好ましい。
上記の製造方法によれば、得られる高ケイ酸ガラス中のFe濃度をより一層低下させることがきるため、紫外線透過率をさらに向上させることが可能となる。それに加えて、上記の製造方法によれば、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを低コストで大量に生産することができる。
なお、上記の高ケイ酸ガラスの製造方法において、上記元素を含む酸化物は、上記元素の高価数の酸化物であることが好ましい。これによって、ホウケイ酸塩ガラスに含有されている低価数の鉄イオン(Fe)を、より効果的にFe3+の状態に酸化することができる。
本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法において、上記ホウケイ酸塩ガラスは、原料となる各化合物を混合したガラス組成を加熱して溶融する溶融工程を2回実施して作製されたものであることが好ましい。
上記の製造方法によれば、1回溶融の場合と比較して、より紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを製造することができる。
本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法おいて、上記ホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸は、2回実施される上記溶融工程のうちの第2回目の工程において添加されることが好ましい。
上記の製造方法によれば、より紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを製造することができる。
本発明の高ケイ酸ガラス製造方法は、上記ホウケイ酸塩ガラスがセリウムまたはクロムを含む場合に、上記酸処理工程と上記焼結工程との間で、上記ホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが繰り返し行われ、さらに、エチレンジアミン四酢酸を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることが好ましい。
上記の製造方法によれば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、金属と錯塩を形成するため、得られる高ケイ酸ガラスにおいてFe濃度をさらに低下させることができる。これによって、波長185nm付近において、石英ガラスとほぼ同程度の紫外線透過率を有する高ケイ酸ガラスを得ることができる。
また、本発明の高ケイ酸ガラスは、上述の何れかの高ケイ酸ガラスの製造方法によって製造されることを特徴としている。
上記の高ケイ酸ガラスは、溶融法やCVD法などによって製造される石英ガラスと比較して、低コストで大量に製造することができるため、大型化が可能である。それに加えて、従来のバイコール法によって製造されるガラスよりも高く、石英ガラスとほぼ同程度の紫外線透過率を有しているため、紫外発光する光機能性イオンをドープし複合化することができる。
なお、本発明の高ケイ酸ガラスは、従来のバイコール法によって製造されたガラスと同様にシリカが多孔質であるため、透光性と高い表面積をあわせ持つことを活かして、光触媒担体や、新規な光機能性材料を作る複合化ガラス母材として利用することもできる。この場合、従来のバイコール法によって製造されたガラスよりも、紫外線透過率が高いため、励起源の短波長化やHgフリーランプで使用されるXe光(176nm)に対応させることが可能となり、種々の光関連材料として幅広く利用することができる可能性を有している。
また、上記高ケイ酸ガラスの製造方法において、焼結工程を実施する前に、希土類イオンなどの化学物質を上記シリカの細孔に含浸させて、細孔に埋め込み焼結を行ってもよい。
上記の方法によって製造された高ケイ酸ガラスは、紫外領域で石英ガラス並みの透過率を有するため、励起源の短波長化やHgフリーランプで使用されるXe光(176nm)に良く対応し、新しい光機能性材料の複合化ガラス母材として有効に利用することができる。
さらに、本発明の高ケイ酸ガラスは、ホウ素を10ppm以上含み、該高ケイ酸ガラスの厚さが1mmの場合に、波長200nmの光を30%以上透過することを特徴とするものである。
上記の高ケイ酸ガラスは、従来のバイコール法によって製造されたガラスよりも、高い紫外線透過率を有するため、紫外発光する光機能性イオンをドープし複合化することができる。それゆえ、種々の光関連材料として幅広く利用することができるという可能性を有している。
なお、上記高ケイ酸ガラスは、その厚さを仮に1mmとした場合に、波長200nmの光を30%以上の割合で透過するという性質を有するものであり、その厚さは1mmに限定されるものではない。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、次の説明によって明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】

本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法および高ケイ酸ガラスに関する実施の一形態について以下に説明する。なお、本発明はこの記載に限定されるものではない。
本発明に係る高ケイ酸ガラスは、酸化ケイ素(SiO)を主成分として作製されるガラスであり、その製造方法に特徴を有することで、バイコール法(特許文献1参照)などによって作製される従来の高ケイ酸ガラスと比較して、Feの含有濃度を低くし、高い紫外線透過率を呈することができるものである。
このような高ケイ酸ガラスを製造するために、本発明の製造方法は、重金属または希土類元素を含んでなるホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する工程と、分相された上記ホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属を溶出する酸処理工程と、酸処理された上記ホウケイ酸塩ガラスを焼結する焼結工程とを含むことを特徴としている。
本実施の形態では、上記の高ケイ酸ガラスの製造方法において、高ケイ酸ガラスの原料として、ガラス組成中にマンガン(Mn)、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)の何れかの酸化物を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むホウケイ酸塩ガラスを使用した場合について説明する。上記高ケイ酸ガラスの原料となるホウケイ酸塩ガラスの組成は、上記の条件以外は特に限定されることはなく、通常のホウケイ酸塩ガラスの原料に用いられる化合物を使用して、通常のホウケイ酸塩ガラスの組成に倣えばよい。
より具体的には、上記ホウケイ酸塩ガラスには、上述のMn、Ce、Cr、Co、Cu以外に、Si、O、B、Na、Al、Caなどの元素を含む化合物が適宜含まれればよく、上記ホウケイ酸塩ガラス中のSiOの割合は45~60重量%程度、Bの割合は24~36重量%程度であればよい。なお、上記Mn、Ce、Cr、Co、Cuについては、例えば、高価数の酸化物、すなわちMnO、CeO、Cr、Co、CuOなどのような形態で含まれることが好ましい。上記元素(Mn、Ce、Cr、Co、Cuの何れか)の高価数の酸化物は、酸化剤として機能するため、ホウケイ酸ガラス中の鉄を効果的にFeの状態にすることができる。
上記ホウケイ酸塩ガラスは、上述のような各化合物を適当量混合し、例えば、温度1350~1450℃で数時間程度の溶融を行った後に、冷却して作製することができる。
以上のようにして作製されたホウケイ酸塩ガラスには、熱処理が施され、SiOを主成分とする不溶相(ケイ酸相)と、Bを主成分とする可溶相(ホウ酸相)とに分相される。上記の熱処理は、温度550~650℃程度、時間20~80時間程度で実施すればよい。本実施の形態では、この工程を分相工程と呼ぶ。
上記ホウケイ酸塩ガラスは、Mn、Ce、Cr、Co、Cuの何れかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含むことによって、ホウケイ酸塩ガラス中に含まれるFeをFe3+の状態とし、上記分相工程においてホウ酸相に分散させることができる。
本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法では、上記分相工程の後に、分相されたホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施すことによって、ホウケイ酸塩ガラス中に含まれる金属イオンを溶出する酸処理工程が実施される。これによって、ホウ酸相に分散している鉄イオンを、ホウ素、ナトリウム、カルシウムなどのイオンとともに除去することができ、ホウケイ酸塩ガラスはFeの含有量の低い多孔質ガラスとなる。
そして続いて、上記ホウケイ酸塩ガラス(多孔質ガラス)を焼結する焼結工程が実施され、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスが製造される。上記焼結工程における温度は、1050~1200℃程度であることが好ましい。また、上記焼結工程は、空気中で行われてもよいし還元雰囲気中で行われてもよい。
なお、ホウケイ酸塩ガラスを熱処理した後に、酸処理を行って可溶相を溶出させ、さらに焼成するという本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法は、バイコール法に基づくものである。すなわち、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法は、原料となるホウケイ酸塩ガラス中にMn、Ce、Cr、Co、Cuの何れかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含有する点以外は、従来公知のバイコール法(特許文献1参照)と同様の方法で実施することができる。それゆえ、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法は、バイコール法を応用した方法であると言える。
上記の高ケイ酸ガラスの製造方法によれば、バイコール法によって作製された高ケイ酸ガラスと比較して、Fe濃度を低くすることができる。これによって、後述の実施例1にも示すように、波長200nm付近の紫外線を約60%程度透過可能な高ケイ酸ガラスを得ることができる(図1参照)。さらにそれに加えて、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、低コストで大量に高ケイ酸ガラスを生産することができる。
なお、上記ホウケイ酸塩ガラスは、Si、O、B、Na、Al等およびMn、Ce、Cr、Co、Cuの何れかの酸化物(好ましくは高価数の酸化物)を含む複数の化合物を原料として適宜混合した後、高温溶融して作製されるが、その溶融工程は、2回に分けて実施されることが好ましく、そして、上記ホウケイ酸塩ガラスに含まれるホウ酸(HBO)は、2回実施される溶融工程のうちの第2回目の溶融工程において添加されることが好ましい。これらによれば、後述の実施例にも示されるように、得られる高ケイ酸ガラスの紫外線透過率をより高くすることができる。
また、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法では、上述のように酸処理工程が行われた直後に焼結工程が実施されてもよいが、これ以外の方法として、上記酸処理工程と上記焼結工程との間で、熱処理と酸処理とがさらに繰り返し実施されてもよい。
さらに、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法では、上記ホウケイ酸塩ガラスがセリウム(Ce)またはクロム(Cr)を含む場合に、上記酸処理工程と上記焼結工程との間で、上記ホウケイ酸塩ガラスに対して、熱処理と酸処理とが複数回繰り返して行われた後、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する酸を用いてさらなる酸処理が施されることが好ましい。
これによれば、EDTAがホウケイ酸塩ガラス中の金属と錯塩を形成するため、製造される高ケイ酸ガラス中のFe濃度をさらに低下させることができ、波長185nm付近において、石英ガラスとほぼ同程度の紫外線透過率を有する高ケイ酸ガラスを得ることができる。
また、本発明の高ケイ酸ガラスは、上記の高ケイ酸ガラスの製造方法によって製造されたものである。すなわち、本発明の高ケイ酸ガラスは、重金属または希土類元素を含んでなるホウケイ酸塩ガラスを原料として、上記分相工程および酸処理工程を経た後に焼結して作製されたものである。また、本発明の高ケイ酸ガラスとしてより具体的なものは、その原料となるホウケイ酸塩ガラスに、マンガン、セリウム、クロム、コバルト、銅の何れかの元素の酸化物が0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含まれるものである。
上記高ケイ酸ガラスは、上述のような製造方法によって作製されたものであるため、酸処理によってホウケイ酸塩ガラス中に微量に含まれるFeが溶出され、Fe濃度が低くなっている。これによって、上記高ケイ酸ガラスは高い紫外線透過率を呈することができる。
したがって、本発明の高ケイ酸ガラスは、より短波長の光で励起することができるという利点を有する。そのため、例えば紫外発光するような光機能イオンを上記高ケイ酸ガラスにドープして、複合化するということも可能となる。このように、本発明の高ケイ酸ガラスは、蛍光材料などの光関連材料の開発に応用することができる。
また、上記高ケイ酸ガラスが、セリウムまたはクロムを含むホウケイ酸塩ガラスから作製される場合に、焼結工程の前にEDTAを含有する酸で酸処理が施されれば、波長185nm付近で石英ガラスとほぼ同程度の紫外線透過率を有することができる。この高ケイ酸ガラスは、石英ガラスとほぼ同じ紫外線透過率を有するにもかかわらず、石英ガラスよりも低コストで大量に生産できる。
さらに、本発明の高ケイ酸ガラスは、製造条件を適宜変更することによって、例えば、チューブ、板、ファイバー等といった種々の形状に成形することが可能であり、本発明の応用範囲をさらに拡大することができる。上記高ケイ酸ガラスの種々の形状に成形する具体的な方法としては、例えば、上記ホウケイ酸塩ガラスを溶融させた後に、種々の形状の金型に流し込んで冷却するという方法を挙げることができる。
本実施の形態において説明した高ケイ酸ガラスの製造方法では、その原料となるホウケイ酸塩ガラスに、Mn、Ce、Cr、Co、Cuの何れかの酸化物が0.1重量%以上2.0重量%以下の割合で含まれるものを例に挙げて説明したが、本発明は上記ホウケイ酸塩ガラスに他の重金属あるいは希土類元素が含まれるものであってもよい。
以下、添付した図面とともに実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】

実施例1では、市販の試薬:NaCO、HBO、SiO、Al(OH)、CaCO、MnOを用いて、NaO:7.7(wt%)、CaO:4.0(wt%)、Al:2.7(wt%)、MnO:0.7(wt%)、B:33.3(wt%)、SiO:51.7(wt%)のガラス組成となるように各試薬を秤量・混合し、白金坩堝を用いて、1400℃で4時間溶融してガラスを得た。
得られたガラスを研磨した後、590℃の熱処理炉で40時間熱処理を行い、分相させた。そして、分相させたガラスと1N硝酸とを密閉容器中に仕込み、90℃で24~72時間酸処理を行った。酸処理したガラスは、さらに1100℃で2時間、空気中で焼結された。このようにして製造された1.0mmの厚さの高ケイ酸ガラスについて、透過率の測定が行われた。
なお、実施例1の比較例として、従来のバイコール法によって、高ケイ酸ガラスを製造した。この従来法とは、具体的には、市販のバイコールガラス(岩城ガラス製)を用いて、上述の方法と同様の手順によって高ケイ酸ガラスを作製するという方法である。この方法によって製造された高ケイ酸ガラスについても、1.0mmの厚さの透過率を測定した。
その結果を図1に示す。図1は、実施例1においてMnOを含む原料から製造された高ケイ酸ガラスと、比較例として製造された高ケイ酸ガラス(図中ではバイコールガラスと記す)それぞれについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。図1において、実線で示すものが本発明に係る高ケイ酸ガラスの製造方法によってMnOを含む原料から製造された高ケイ酸ガラスの透過スペクトルであり、破線で示すものが比較例として製造された高ケイ酸ガラスの透過スペクトルである。
図1に示すように、本実施例1のMnOを含む原料から製造された高ケイ酸ガラスは、200nmの紫外線を約60%の割合で透過した。一方、比較例の高ケイ酸ガラスは、200nm以下の紫外線を全く透過しなかった。
【実施例2】

実施例2では、市販の試薬:NaCO、HBO、SiO、Al(OH)、CaCOを用いて、SiO:77.5(wt%)、NaO:11.5(wt%)、CaO:6.0(wt%)、Al:5.0(wt%)のガラス組成となるように、各試薬を秤量、混合し、白金坩堝を用いて1500℃で4時間溶融した。続いて、このガラスの100重量部に対して溶融後の組成で50重量部となるようにHBOを加え、1400℃で2回目の溶融を行ってガラスを得た。
得られたガラスを研磨した後、590℃の熱処理炉で40時間熱処理を行い、分相させた。そして、分相させたガラスと1N硝酸とを密閉容器に仕込み、90℃で24~72時間酸処理を行った。酸処理したガラスは、さらに1100℃で2時間、還元雰囲気中で焼結された。このようにして製造された1.0mmの厚さの高ケイ酸ガラスについて、透過率の測定が行われた。
なお、実施例2の比較例として、1回目の溶融時に上記実施例2と同じ割合となるようにHBOを加え、1回の溶融のみで高ケイ酸ガラスを製造し、これについて、1.0mmの厚さの透過率を測定した。なお、本比較例では、溶融回数が1回であるという点以外は、実施例2と同じ方法で高ケイ酸ガラスが製造された。
その結果を図2に示す。図2は、本実施例2とその比較例において製造された各高ケイ酸ガラスについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。なお、本図では、1回溶融で製造された場合を実線で、2回溶融で製造された場合を破線で示す。
図2に示すように、波長200nm付近の紫外線領域の透過率は、1回溶融のみの場合と比較して、2回溶融を行った製造した場合の方が、紫外線透過率が高くなることが確認された。
【実施例3】

実施例3では、市販の試薬:NaCO、HBO、SiO、Al(OH)、CaCO、CeOを用いて、SiO:77.5(wt%)、NaO:11.5(wt%)、CaO:6.0(wt%)、Al:4.0(wt%)、CeO:1.0(wt%)のガラス組成となるように、各試薬を秤量、混合し、白金坩堝を用いて1500℃で4時間溶融した。続いて、このガラス100重量部に対して溶融後の組成で重量部となるようにHBOを加え、1400℃で2回目の溶融を行ってガラスを得た。
得られたガラスを研磨した後、590℃の熱処理炉で40時間熱処理を行い、分相させた。そして、分相させたガラスと1N硝酸とを密閉容器中に仕込み、90℃で24~72時間酸処理を行った。
この酸処理によって得られた多孔質ガラスを、さらに300℃で15時間熱処理した後、3N硝酸とともに密閉容器中に仕込み、90℃で24時間酸処理を行った。酸処理したガラスは、1100℃で2時間、空気中あるいは還元雰囲気中で焼結された。その後、得られた1.0mmの厚さの高ケイ酸ガラスについて、透過率を測定した。
なお、本実施例3では、上記90℃で24~72時間酸処理を行った多孔質ガラスについて、さらに別の方法を用いて高ケイ酸ガラスが製造された。その方法を以下に説明する。
上記90℃で24~72時間酸処理を行った多孔質ガラスを、その後、300℃15時間で熱処理した後、3N硝酸とともに密閉容器中に仕込み、90℃で24時間酸処理を行った。この酸処理した多孔質ガラスについて、さらに300℃15時間で熱処理を行った。続いて、1%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する酸を用いて、この多孔質ガラスに対して90℃で24時間酸処理が実施された。
その後、この試料は、1100℃で2時間、還元雰囲気中で焼結された。この方法で得られた高ケイ酸ガラスについても、1.0mmの厚さの透過率の測定が実施された。
これらの結果を、図3に示す。図3は、実施例3において製造された3種類の高ケイ酸ガラスについて、各波長(nm)の光に対する透過率(%)を測定した結果を示すグラフである。図3において、実線で示すものは、空気中で300℃、15時間の熱処理と、酸処理とが実施された場合、破線で示すものは、還元雰囲気中で300℃、15時間の熱処理と、酸処理とが実施された場合、一点鎖線で示すものは、EDTAで酸処理された場合の結果である。
図3に示すように、空気中で熱処理が行われた場合(実線で示すもの)よりも、還元雰囲気中で熱処理が行われた場合(破線で示すもの)の方が紫外線透過率が増加することが確認された。また、EDTAで酸処理された場合(一点鎖線で示すもの)には、紫外線透過率はさらに増加することが確認された。しかしながら、実施例2と実施例3とを比較すれば分かるように、EDTAを使わない場合は、300℃15時間での熱処理と酸処理とを繰り返し行っても、それを行わない場合と比べて紫外線透過率はほとんど増加しなかった。また、このEDTAはMnOを含む原料から製造されたガラスには効果がなかった。
また、本実施例においてEDTAで酸処理された高ケイ酸ガラスについて、真空紫外分光光度計 試作機 PUV-100(日本分光製)を用いて、300nm~115nm間のより短波長の光に対する透過率を測定した。その結果を図4に示す。なお、比較のために、従来法で製造された石英ガラスについても同様に短波長の透過率を測定した。図4では、EDTAで酸処理された高ケイ酸ガラスの吸収スペクトルを実線で示し、石英ガラスの吸収スペクトルを破線で示す。
図4に示すように、EDTAで酸処理された高ケイ酸ガラスは、石英ガラスよりはやや劣るものの、300nm~115nmというより短波長の紫外光についても高い透過率を示すことが確認された。
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用の可能性】
以上のように、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法は、重金属または希土類元素を含んでなるホウケイ酸塩ガラスに熱処理を施して分相する工程と、分相された上記ホウケイ酸塩ガラスに酸処理を施して金属を溶出する酸処理工程と、酸処理された上記ホウケイ酸塩ガラスを焼結する焼結工程とを含むことを特徴とするものである。
上記の高ケイ酸ガラスの製造方法によれば、Fe濃度が低く、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを得ることができるという効果を奏する。さらに、従来のバイコール法と同様の方法を応用しているため、紫外線透過率の高い高ケイ酸ガラスを低コストで大量に生産することが可能となるという効果も奏する。
本発明の高ケイ酸ガラスは、本発明の高ケイ酸ガラスの製造方法を用いて製造されたものである。
上記の高ケイ酸ガラスは、溶融法やCVD法などによって製造される石英ガラスと比較して、低コストで大量に製造することができるため、大型化が可能であるという効果を奏する。それに加えて、従来のバイコール法によって製造されるガラスよりも高く、石英ガラスとほぼ同程度の紫外線透過率を有しているため、紫外発光する光機能性イオンをドープし複合化することができるという効果も奏する。
また、本発明の高ケイ酸ガラスは、従来のバイコール法によって製造されたガラスと同様にシリカが多孔質であるため、透光性と高い表面積をあわせ持つことを活かして、光触媒担体や、新規な光機能性材料を作る複合化ガラス母材として利用することもでき、幅広い応用が期待できる。
さらに、本発明の高ケイ酸ガラスは、ホウ素を10ppm以上含み、厚さ1mmとした場合に、波長200nmの光を30%以上透過することを特徴とするものである。
上記の高ケイ酸ガラスは、従来のバイコール法によって製造されたガラスよりも、高い紫外線透過率を有するため、紫外発光する光機能性イオンをドープし複合化することができるという効果を奏する。
本発明の高ケイ酸ガラスは、上述のように高い紫外線透過率を有するため、エキシマレーザー基盤材料、透紫外線フィルタ、紫外光利用材料などに利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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