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明細書 :廃ガラスの処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4535449号 (P4535449)
登録日 平成22年6月25日(2010.6.25)
発行日 平成22年9月1日(2010.9.1)
発明の名称または考案の名称 廃ガラスの処理方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
B01J  20/10        (2006.01)
FI B09B 3/00 304J
B01J 3/00 ZABA
B01J 20/10 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2005-504984 (P2005-504984)
出願日 平成16年2月12日(2004.2.12)
国際出願番号 PCT/JP2004/001483
国際公開番号 WO2004/071685
国際公開日 平成16年8月26日(2004.8.26)
優先権出願番号 2003037163
優先日 平成15年2月14日(2003.2.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年2月22日(2006.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】三由 洋
【氏名】赤井 智子
【氏名】陳 丹平
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
審査官 【審査官】小久保 勝伊
参考文献・文献 特開昭50-149711(JP,A)
特開昭52-044850(JP,A)
特開昭51-97612(JP,A)
特開2003-95763(JP,A)
調査した分野 B09B 3/00
C03C 25/66-25/70
C04B 18/16、38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリを添加することなく、SiOを30~80質量%含有する廃ガラスと、温度120~450℃且つ圧力0.2~101.3MPaの熱水蒸気又は熱水とを接触させて、該廃ガラスをナトリウム含有量の減少した多孔体とする方法によって処理された廃ガラスを、更に、水又は酸水溶液と接触させることによって処理した後、処理後の水又は酸水溶液から金属を回収する工程を含む廃ガラスの処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、廃ガラスの処理方法及び当該処理方法により得られる多孔体に関する。
【背景技術】

現在、製品として利用された後に回収される廃ガラスのうち、無色ガラス瓶、茶色ガラス瓶などは、カレットとして再溶融させて、新しいガラス製品の原料として用いられている。しかしながら、通常は、組成管理の面で、カレットのみをガラス原料として用いることはないため、回収された廃ガラスのすべてをカレットとして再溶融して利用することは困難である。
さらに、廃ガラスのうちで、コバルト、クロム等の金属元素を添加して着色等を行ったガラス製品、組成が明確ではない廃ガラス、工場内でガラスの製造時に生じる屑ガラス等は、カレットとして再溶融して利用することができず、廃棄処分されており、廃棄物処分場不足等の環境問題を引き起こしている。
このような再利用することなく廃棄されているガラスをリサイクルする技術としては、ガラス中の二酸化ケイ素以外の成分を除去する方法、他の成分を加えて加工する方法等が提案されている。
二酸化ケイ素以外の成分を除去する方法としては、水酸化ナトリウムを用いたアルカリ融解によって着色瓶から二酸化ケイ素を回収する方法(森英嗣,「水酸化ナトリウムを用いたアルカリ融解による産業廃棄ビンからの二酸化ケイ素の回収」,日本セラミックス協会2001年年会予稿集,日本セラミックス協会,平成13年,p.143)、廃ガラスを酸性ガスに接触させ、廃ガラス中のアルカリ成分とガス中の酸性成分との中和反応によって生じた塩を水洗し除去する方法(特開2002-284546号公報)等が報告されている。
これらの方法では、廃ガラス中の主成分である二酸化ケイ素を、汎用性のある資源として再利用できるが、酸性ガス、アルカリ等を高温で取り扱うめに危険性が高い。更に、高価な酸性ガス、アルカリなどを用いるためコストがかさみ実用化が難しい上、エネルギー消費や排水などの環境負荷が問題となる。
さらに、ホウ酸を添加して溶融させた後、酸処理して二酸化ケイ素に戻す方法も提案されている(赤井智子,外3名「イオン拡散・分相を利用した廃ガラスの再資源化方法」,第43回ガラス及びフォトニクス材料討論会予稿集,日本セラミックス協会,平成14年,p.28)。この方法は、比較的処理が容易な方法であるが、より一層のコスト削減が望まれている。
一方、他の成分を加えて加工する方法としては、ガラス屑にCaO、Ca(OH)の等のカルシウム原料を加えて調製した混合物を加圧成形した後、オートクレーブ等で加熱加圧処理して、水熱反応で硬化させて強固な水熱固化体とする方法が報告されている(特許第2748206公報)。また、同様にカルシウム原料を加えた水熱固化体の表面に吸水防止処理を施すことによって品質を向上させる方法が提案されている(特開2000-327397号公報)。これらの方法は、全般に安価であるという利点があるが、得られる製品の用途が限られており、汎用性のある資源として再利用することができない。また、水熱反応によって得られるケイ酸カルシウム水和物には、多量のナトリウム、有害な重金属等が残留しており、これらが時間の経過とともに溶出する可能性がある。例えば、水熱反応によって得られるケイ酸カルシウム水和物をセメント骨材に利用する場合は、溶出したナトリウムによってアルカリ骨材反応が生じて、強度の低下を招く。しかも、この方法では、廃ガラスの主成分である二酸化ケイ素を資源として繰り返し再利用することはできない。
【図面の簡単な説明】

図1は、実施例1で得られた白色固体の走査型電子顕微鏡写真、図2は、実施例3で得られたX線回折パターンを示す図面、図3は、実施例3で得られた走査型電子顕微鏡写真である。
【発明の開示】

本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、廃ガラスを汎用性のある資源として再利用できる処理方法であって、低コストで実施可能であり、しかも環境負荷が少ない方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、廃ガラスと熱水蒸気又は熱水とを加圧下で接触させる方法によれば、副原料を添加することなく、低コストで実施可能な処理方法によって、汎用性のある資源として再利用し得るケイ素酸化物の含有量の多い多孔体が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の廃ガラスの処理方法及び該処理方法によって得られる多孔体を提供するものである。
1.廃ガラスと、熱水蒸気又は熱水とを、加圧下で接触させることを特徴とする廃ガラスの処理方法。
2. 熱水蒸気又は熱水の温度が120~450℃であり、圧力が0.2~101.3MPaである上記項1に記載の方法。
3. 上記項1の方法によって処理された廃ガラスを、更に、水又は酸水溶液と接触させることを特徴とする廃ガラスの処理方法。
4. 上記項3の方法によって廃ガラスを処理した後、処理後の水又は酸水溶液から金属を回収する工程を含む廃ガラスの処理方法。
5. 上記項1の方法で得られる多孔体。
6. 上記項5の多孔体を含むセメント骨材。
7. 上記項3の方法で得られる多孔体。
本発明の廃ガラスの処理方法は、廃ガラスと熱水蒸気又は熱水とを加圧下において接触させる方法である。
処理対象とする廃ガラスの種類については特に限定的ではなく、ガラス製品として利用された後に回収される廃ガラス;工場内において発生する廃ガラス等を用いることができる。
これらの廃ガラスの内で、製品として利用された後に回収される廃ガラスとしては、無色ガラス瓶、茶色ガラス瓶、青色ガラス瓶、緑色ガラス瓶等のガラス瓶;自動車のフロントガラス、窓ガラス等の自動車用ガラス;ブラウン管用ガラス、液晶パネル用ガラス等の電化製品用ガラス;窓ガラス等の建材用ガラス等として利用した後の回収ガラスを例示できる。工場内において発生する廃ガラスとしては、工場におけるガラス製造時に色や組成を変更するときにフロート炉などで生じる屑ガラス等を例示できる。
本発明方法は、上記した廃ガラスの内で、大部分が廃棄されている青色ガラス瓶、緑色ガラス瓶等の着色ガラス瓶;組成が明確ではない廃ガラス;工場のフロート炉などで生じる屑ガラス等についても処理対象物とすることができる点で、非常に有用性が高い方法である。
廃ガラスの組成については特に限定的ではなく、組成が不明確な廃ガラス、各種の廃ガラスの混合物なども処理対象とすることができる。例えば、市販の多くのガラス製品ような、SiO含有量が30~80質量%程度の範囲のガラスを処理対象とすることができる。廃ガラス中の他の成分の含有量についても、特に限定的ではなく、例えば、酸化ナトリウムを10~20質量%程度という多量に含むガラスであっても、本発明方法によれば、ナトリウム含有量を大きく減少させて、各種用途に有用な材料とすることができる。
好ましい処理対象物の一例としては、SiO含有量が70~73重量%程度の市販のソーダ石灰ガラス瓶を挙げることができる。
また、廃ガラス中にラベルやキャップ等の不純物が含まれていても本発明の処理方法には影響がない。このため、処理後の二酸化ケイ素多孔体の用途によっては、ラベル、キャップ等の不純物が含まれる廃ガラスを原料とすることもできる。
本発明方法では、処理対象とする廃ガラスの大きさ、形状等については、特に限定的ではなく、廃ガラスの種類、処理条件等に応じて、適切な大きさ、形状等とすればよい。
例えば、廃棄された廃ガラスをそのまま用いても良いが、廃ガラスを粉砕して用いることによって、廃ガラスと熱水蒸気又は熱水との接触面積を大きくすることができる。その結果、ガラス中に水分子が浸入しやすくなり、処理時間を短縮することが可能となる。
廃ガラスの粉砕の程度については、処理温度、圧力、時間等に応じて適宜適切な範囲を決めればよい。通常、粒径10mm程度以下とすることがより好ましく、粒径1mm程度以下とすることがさらに好ましい。
廃ガラスを粉砕する方法については特に限定されるものではなく、例えば、市販されている工業用ミルを用いて粉砕する方法等、通常採用されている粉砕方法を適宜適用すればよい。
廃ガラスと、熱水蒸気又は熱水とを加圧下において接触させる方法については特に限定的ではなく、加圧下において熱水又は熱水蒸気のいずれかに廃ガラスを接触させることができる方法であればよく、平衡状態にある熱水と熱水蒸気に同時に接触させてもよい。例えば、圧力容器中に水と廃ガラスを入れて所定の温度及び圧力とする方法、廃ガラスを入れた容器中に所定の条件を満足する熱水又は熱水蒸気を流通させる方法などを例示できる。
具体的には、例えば、高温高圧に耐える反応装置を用いて、廃ガラスと熱水蒸気または熱水とを接触させればよい。この場合、温度と圧力を任意に変えることができるバッチ式の密閉型の処理装置を好ましく用いることができる。
また、温度と圧力を任意に変えることができる反応管の中を廃ガラスが移動しながら反応が進行するようなフロー式の処理装置を用いても良い。廃ガラスを固定して、水だけをフロー式で流通させる場合は、小さい装置に大量の水を導入できるため、ナトリウムなどの除去に有効である。
また、超臨界近くの水の圧力を減少させると、ナトリウム塩などの溶解度は減少するため、これを利用してナトリウムを分離除去して熱水を循環利用させるものであってもよい。かかる設備はエネルギーコストや排水が少なく非常に有効である。
廃ガラスと接触させる際の熱水蒸気又は熱水は、温度120~450℃程度、且つ圧力0.2~101.3MPa程度の範囲内とすることが好ましく、温度230~450℃程度、且つ圧力3.0~101.3MPa程度の範囲内とすることがより好ましい。この様な範囲内の温度及び圧力において、処理する廃ガラスの大きさ、組成、目的とする処理時間等に応じて処理条件を適宜選択すればよい。
具体的には、亜臨界域では、120℃以上の温度で、対応する温度の水の蒸気圧と同程度の圧力とすることが好ましく、超臨界域(374.1℃、22.1MPa以上)では、374.1℃~450℃、かつ22.1~101.3MPa程度とすることが好ましい。ここで、超臨界域とは、水の臨界点(374.1℃、22.1MPa)より上の温度及び圧力のもとにある状態をいい、亜臨界域とは、水の臨界点より下の温度及び圧力下にある状態をいう。
上記した範囲内において、例えば、酸化ナトリウム含有量が多い廃ガラスを処理対象とする場合には、比較的低い温度と低圧の条件下において処理を行うことができる。また、二酸化ケイ素含有量の多いガラスについては、水との反応性が劣るので、温度及び圧力を高く設定することが好ましい。
廃ガラスと、熱水蒸気又は熱水との接触時間については、廃ガラスの種類、量、大きさ、温度、圧力等に応じて変わり得るので、処理条件に応じて適切な範囲を決めればよい。
一般的には、廃ガラスの大きさ、量等が増加すれば、長い処理時間が必要となり、熱水溶液又は熱水が高温高圧であるほど短い処理時間でよい。通常、5分~10時間程度の処理時間とすればよいが、処理するガラスと温度・圧力の組み合わせによっては、この範囲内から外れてもよい。
熱水蒸気及び熱水の使用量についても、廃ガラスの種類、量、処理条件、得られる二酸化ケイ素多孔体の用途等に応じて適宜決めればよく、特に限定されるものではない。通常は、熱水蒸気及び熱水の量は、少なくとも廃ガラス全体に行き渡る程度、即ち、廃ガラスの見かけの体積と同程度以上であることが好ましい。また、エネルギーコストの面から考えて、廃ガラスの見かけ体積の200倍以下であることが好ましい。
一般的には、この様な範囲内において、エネルギーコストを削減するためには、熱水蒸気及び熱水の量を少なくすればよく、後述する後処理工程における酸の消費量を低減させるためには、熱水蒸気及び熱水の量を多くすればよい。
上記した処理方法によれば、アルカリ、酸等を添加することなく、廃ガラスと熱水蒸気または熱水とを加圧下で接触させるという簡単な方法によって、元の廃ガラスと比べてナトリウム含有量が大きく減少した結晶質又は非結晶質の多孔体を得ることができる。
本発明方法によってこの様な多孔体が得られる理由については明確ではないが、例えば、結晶質の多孔体が形成される場合については、以下の過程によってナトリウム含有量が大きく減少した多孔体に変換されるものと推測される。
即ち、高温では、ガラス中に浸入した水が、ガラスの内部まで拡散し易く、特に、高圧では、水分子がガラス中に浸入しやすくなる。このため、高温高圧で熱水又は熱水蒸気と接触させることによって、多量の水がガラス内部まで浸透する。そして、浸透した水によってSiO間の結合が寸断されるなどの理由でガラス構造が変化しやすくなる。ガラスの代表的な構造変化としては浸出、分相、結晶核生成、結晶成長などが知られている。なかでも結晶核生成および結晶成長が進行すると、ガラス構造は微細な結晶に変化し、結晶の間にはナトリウムなどを多く含む成分が取り残される。これらの成分は、熱水によって浸食されて、結晶間に空間が多く形成された多孔体となる。特に、拡散が非常に速い亜臨界或いは超臨界域の水は、結晶の隙間から迅速に内部に浸透するため、短時間で数mmの深さまで改質が進行する。
このように、高温高圧の水の特徴を利用することで、廃ガラスの構造が変化し、ナトリウム等が除去された多孔体が得られると考えられる。
特に、結晶質の多孔体が形成される場合には、カルシウム等の多価イオンを含有する廃ガラスを処理対象とすると、廃ガラスの処理が効率良く進行する。これは、カルシウム等の多価イオンを含む廃ガラスと熱水蒸気または熱水とを加圧下で接触させると、適当なサイズの多価イオンであるカルシウム等を含む安定な結晶ができるため、結晶核生成及び成長が進みやすくなることによるものと考えられる。この場合、廃ガラス中のカルシウムの含有量については、特に限定的ではないが、通常のソーダ石灰ガラスのように、5~20質量%程度であることが好ましい。
以上の通り、本発明によれば、アルカリ、酸等を添加することなく、高温高圧の水のみで廃ガラスを処理すればよい。このため、本発明の処理方法は、環境に対する悪影響が少なく、低コストで実施可能な方法である。
得られる多孔体は、原料とする廃ガラスの組成と比較すると、ナトリウムの含有量が大きく減少したものとなる。この様な多孔体は、アルカリ骨材反応の原因となるナトリウムの含有量が非常に少ないので、例えば、そのままでセメント骨材として用いることができる。
得られる多孔体の結晶構造については、原料として用いる廃ガラスの組成によって異なり、例えば、ソーダ石灰ガラスを処理対象とする場合には、ケイ酸カルシウムが一部形成される場合があり、例えば、アルミニウム及びカリウムを含む廃ガラスを処理対象とする場合には、長石が一部形成される場合がある。
上記した方法によって廃ガラスを処理した後、更に、必要に応じて、後処理として、形成された多孔体に、水又は酸水溶液を接触させても良い。この後処理により、該多孔体中に形成された微細な空間に水又は酸水溶液が浸入し、ケイ素酸化物以外の成分が除去されて、ケイ素分の含有量が非常に高い高純度の多孔体とすることができる。
特に、酸水溶液を用いることによって、より高純度の多孔体が得られる。
使用する酸水溶液の種類については、特に限定されないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸等の強酸の水溶液、酢酸等の弱酸の水溶液等を用いることができる。反応速度を速くするためには、強酸の水溶液を用いることが好ましい。特に、硝酸水溶液を用いることが好ましい。
酸水溶液の濃度については限定的ではなく、目的とする反応速度等に応じて適宜決めればよいが、一般的には、濃度を高くすることにより、反応速度を速くすることができ、廃液の量を少なくすることも可能である。硝酸を用いる場合、通常、取り扱いの面で0.5~16mol/l程度の濃度の酸水溶液が好ましく、1~4mol/l程度の濃度の酸水溶液がより好ましい。
また、火力発電所で排出される窒素酸化物等の低濃度であっても安価な酸が確保できるような場合等は、この様な酸を用いることによってコストを低減することができる。
廃ガラスを処理して得られる多孔体を、水または酸水溶液に接触させる方法については特に限定されない。例えば、水又は酸水溶液を該多孔体に滴下する方法、該多孔体を水又は酸水溶液に浸漬する方法等により行うことができる。
処理温度についても、特に限定されないが、通常、常温~100℃程度とすればよい。
処理時間は、酸水溶液の濃度、酸の種類、処理方法類等に応じて変わり得る。酸水溶液を滴下する方法では、内部まで確実に酸水溶液を浸透させることができる時間とすれば良く、例えば、1秒程度以上とすればよく、5秒程度以上とすることが好ましい。また、酸水溶液中に浸漬する方法では、酸濃度が低い場合や弱酸を用いる場合には、処理時間を長くする必要があるが、処理効率の点で5日程度以内の処理時間であることが好ましく、一日程度以内の処理時間であることがより好ましい。
多孔体と接触させた後の未反応の酸は、回収し、濃縮再利用することができる。
また、上記後処理工程で用いた水又は酸水溶液には、廃ガラス中の金属分が含まれるので、金属分を回収して再利用することができる。金属分を回収する方法としては、公知の方法を適宜適用できる。
水又は酸水溶液に含まれる金属については、処理対象の廃ガラスの種類によって異なり、例えば、青色ガラスの着色剤として用いられているコバルト、黄色ガラスの着色剤として用いられているセリウム、カドミウム等、青色、緑色等のガラスの着色剤として用いられている銅、緑色ガラスの着色剤として用いられているクロム、放射線遮蔽用の酸化鉛含有ガラスに用いられている鉛などが挙げられる。
これらの金属分の内で、例えば、コバルト等の高価な有用金属を回収することによって、高価な金属資源を有効利用できる。また、カドミウム、鉛等の有害金属等を回収することによって環境に対する悪影響を軽減することができる。
従って、本発明の処理方法は、廃ガラス中に含まれる有害金属の回収方法としても有用性が高い方法である。
酸水溶液又は水を用いた後処理を行うことによって、例えば、ナトリウムの含有量をより減少させることができ、更に、ガラス中に含まれるその他の金属分も取り除いて、ケイ素分の含有率をさらに増加させることができる。その結果、ケイ素分の含有量が、二酸化ケイ素に換算して80質量%程度以上、好ましくは90%質量以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上という高純度の多孔体を得ることができる。
また、得られる多孔体では、処理対象の廃ガラスと比べてナトリウム含有量が大きく減少する。具体的には、得られる多孔体中のナトリウム含有量は、処理条件に応じて、酸化ナトリウムに換算して10質量%以下とすることができ、5質量%以下、さらには、1質量%以下とすることができる。
得られる多孔体は、例えば、後述する実施施例1の図1に示すように、径が10nm程度~5μm程度の大きさの空孔部を有するものとなる。
この様に、上記した処理方法によって得られる多孔体は、ケイ素含有量が非常の多く、その他の成分の含有量が非常に少ない材料である。該多孔体は、例えば、ガラス原料、セラミック原料等、汎用性のある資源として有効に利用することができる。さらに、該多孔体は、吸着剤、触媒担体、断熱材等、一般的な多孔体の用途に用いることができる。
また、該多孔体は、ナトリウムの含有量が非常に少ないので、セメント骨材として用いる場合に、ナトリウムの溶出によるアルカリ骨材反応が発生しない。このためセメント骨材としても有用性が高い材料である。
以上の通り、本発明によれば、組成を保証できず現状では廃棄されている廃ガラスを原料として、副原料を添加することなく、低コストで実施できる処理方法によって、汎用性のある資源として再利用しうるケイ素含有量の高い多孔体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】

以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】

酸化ナトリウム(NaO)16質量%、酸化カルシウム(CaO)12質量%、酸化コバルト(CoO)0.5質量%及び二酸化ケイ素(SiO)71.5質量%よりなるガラスを1400℃で4時間溶融させた後、冷却して、直径約1mmの青色の棒状ガラスを作製した。これを廃ガラス試料として、下記の処理を行った。
まず、上記廃ガラス0.25gと水40gを内容積17mlのアルミナ管に入れ、このアルミナ管を、白金ライニングが施されたインコネル合金製のオートクレーブ(内容量100ml)に挿入した。廃ガラスは、水中に没した状態となった。
これを309℃に加熱し(圧力11MPa)、5時間後に加熱を止めて放置し、冷却したところ、白色の固体と溶液が得られた。
得られた白色固体を乾燥させて、走査型電子顕微鏡で観察した。走査電子顕微鏡写真を図1に示す。図1には、0.5μmのスケールバーを併記している。
図1の顕微鏡写真から明らかなように、白色固体の表面は、厚さ0.1μm程度、大きさ1μm程度の板状の結晶が積み重なった隙間の多い構造であった。このことから、均質なガラスが多孔体に変化したことが確認できた。該多孔体の孔径は、10nmから1μm程度であった。
更に、走査型電子顕微鏡に付属したX線分析装置EDSによって化学組成を分析した。EDS分析の結果を下記表1に示す。
JP0004535449B2_000002t.gif 表1の結果から明らかなように、処理後の多孔体では、ナトリウム含有量は酸化ナトリウムに換算して1質量%であり、処理前のガラスと比較して大幅に減少していた。尚、酸化カルシウムの比率は増加したが、これは、水に溶けやすいナトリウムが溶出したため相対的に増加したものである。
一方、得られた溶液を分析したところ、ナトリウムおよびケイ素が含まれており、薄い水ガラス溶液が得られたことが分かる。なお、廃ガラスに含まれていないアルミニウムが検出されているが、これは、容器の損傷を避けるために用いたアルミナ管に由来するものと思われる。
次いで、常温において、上記方法で得られた白色固体1重量部に対して、5倍希釈の市販の濃硝酸(濃度69%)20重量部を滴下し、固体全体を濡らして一日放置した。その後、ろ別及び水洗を行い、100℃で5時間乾燥した後、EDSで分析した。EDS分析の結果を下記表2に示す。
JP0004535449B2_000003t.gif 表2の結果から、硝酸水溶液による後処理によって、二酸化ケイ素に換算したケイ素含有量が98%という高純度の多孔体が得られたことが分かる。なお、EDSの分析精度、特性を考慮すると、二酸化ケイ素の含有量は100%に近いと考えられる。
また、得られた固体1重量部に、5重量部の市販の濃硝酸を滴下して、固体全体を濡らし、一日放置した。その後、ろ別及び水洗を行い、100℃で5時間乾燥して、EDSで分析した。
その結果、二酸化ケイ素に換算したケイ素含有量が99%という高純度の多孔体が得られたことが分かった。
また、白色固体1重量部を5重量部の濃硝酸で処理した後、この処理で得られた酸溶液の一部をICP(プラズマ発光)分析したところ、この後処理工程だけで、処理前の廃ガラスに含まれていたコバルトの少なくとも50%を除去することができたことが分かった。
硝酸による後処理をする前の二酸化ケイ素多孔体が白色あるいは半透明であることから、全工程で、95%程度のコバルトが回収できたと考えられる。
この酸廃液からは、沈殿などの既存の方法によって容易にコバルトを回収することができる。このことより、本発明の処理方法は、コバルト回収を目的とした処理として好適であることがわかる。
【実施例2】

酸化ナトリウム16質量%、酸化カルシウム12質量%、酸化コバルト0.1質量%及び二酸化ケイ素71.9質量%よりなるガラスを、1400℃で4時間溶融した後、冷却し、さらに焼きなまして、青色ガラスを得た。このガラスを0.42mmのふるいを通過する大きさとなるようにハンマーで粉砕した。これを廃ガラス試料として、以下の処理を行った。
まず、廃ガラス5.73gと水60gをグラファイト管に入れ、このグラファイト管を、白金ライニングが施されたインコネル合金製でのオートクレーブ(内容量100ml)に挿入した。廃ガラスは、水中に没した状態となった。
これを加熱したところ、温度359℃、圧力22MPaになったので、直ちに加熱を止めて放置し、冷却したところ、白色固体と溶液が得られた。
このようにして得られた白色の固体を乾燥させて、化学組成を分析した。
その結果、ナトリウム含有量が酸化ナトリウムに換算して9.7%に減少していた。
次いで、常温において、得られた白色固体1重量部に対して、5倍希釈の市販の濃硝酸(濃度69%)20重量部を滴下して、固体全体を濡らして一日放置した。その後、ろ別及び水洗を行い、100℃で5時間乾燥した後、JIS R3101及びR3105に準じて原子吸光法による化学分析を行った。
その結果、元素の重量%として、コバルト0.004%、カルシウム0.12%、ナトリウム0.14%であった。各元素の含有量を、コバルトで94%、ナトリウムで99%、カルシウムで99%低減できたことが分かった。
比較例1
実施例1で用いた廃ガラス試料を、大気圧下において、100℃の熱水に5時間にわたって接触させたが、目立った変化は肉眼では観察できなかった。
【実施例3】

SiO 53質量%、PbO 23質量%、KO 8質量%、NaO 6質量%、CaO 4質量%、MgO 2質量%及びAl 4質量%からなる直径0.5mmのガラス棒を廃ガラス試料として、下記の方法で処理を行った。この試料は、市販のカラーテレビCRTにおいてファンネル部分に用いられている、鉛を多量に含むガラスの組成を模したものである。
まず、廃ガラス試料を管状のオートクレーブに入れ、試料付近の温度が380℃になるように加熱した。ここで、一方の端からオートクレーブに加熱された水を送り込み、28MPaに加圧した。約7時間経過後、水を抜いて圧力を常圧に戻し、放冷したところガラス棒は鉛色になっていた。
この試料について、Cu-Kα線を用いて粉末X線回折を行った。X線回折パターンを図2に示す。図2から明らかなように、廃ガラス試料は結晶質に変化しており、正長石(Orthoclase(KAlSi))、還元されて生じたPb、及びそれ以外のピークが認められた。また、この試料の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図3から明らかなように、層状ケイ酸塩でよく見られる板状の微結晶が認められた。
上記試料を1.55規定の希硝酸中に浸漬し、100℃で15時間放置した後、水で洗浄した。その後、走査型電子顕微鏡に付属したEDSによって組成を分析した。結果を下記表3に示す。表中の数値は、酸化物に換算した重量%である。尚、酸処理後のMgO,NaO,CaO及びPbOの量は、EDSで精度よく定量できる下限値を下回っていると考えられるため、正確な値ではない。
JP0004535449B2_000004t.gif 表3から明らかなように、処理後の多孔体では、二酸化ケイ素に換算したケイ素含有量が大きく増加しており、有害な鉛についてはEDSの測定限界以下まで除去されていた。原子吸光法により化学分析を行った結果、鉛の残留量は元素の重量比で0.95%であった。この結果から、本発明の処理方法は、廃ガラスからの有害金属の除去方法として有用であることが確認できた。
図面
【図1】
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【図3】
1
【図2】
2