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明細書 :免疫刺激剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4850512号 (P4850512)
登録日 平成23年10月28日(2011.10.28)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
発明の名称または考案の名称 免疫刺激剤
国際特許分類 A61K  31/7125      (2006.01)
A61K  47/36        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
FI A61K 31/7125
A61K 47/36
A61P 37/04
請求項の数または発明の数 3
全頁数 19
出願番号 特願2005-506241 (P2005-506241)
出願日 平成16年5月13日(2004.5.13)
国際出願番号 PCT/JP2004/006793
国際公開番号 WO2004/100965
国際公開日 平成16年11月25日(2004.11.25)
優先権出願番号 2003136876
優先日 平成15年5月15日(2003.5.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年5月11日(2007.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】501190941
【氏名又は名称】三井製糖株式会社
発明者または考案者 【氏名】新海 征治
【氏名】水 雅美
【氏名】櫻井 和朗
【氏名】甲元 一也
【氏名】沼田 宗典
【氏名】松本 貴博
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】荒巻 真介
参考文献・文献 国際公開第02/072152(WO,A1)
国際公開第01/034207(WO,A1)
特表2001-503254(JP,A)
特表平10-506265(JP,A)
Yukihiko ARAMAKI,NADPH-Oxidase may Contribute to IL-12 Production in Macrophages Stimulated with CpG Phosphorothioate Oligodeoxynucleotides,Biol. Pharm. Bull.,2002年,Vol.25, No.3,p351-355
調査した分野 A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/48
A61P 37/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドとβ-1,3-結合を有する多糖類との複合体から成る免疫刺激剤であって、前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、非メチル化CpGモチーフを含み、該オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンが、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾されており、前記β-1,3-結合を有する多糖類が、β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシランである、免疫刺激剤。
【請求項2】
β-1,3-グルカンがシゾフィラン、カードラン、レンチナン、パーキマン、グリホラン、ラミナランまたはスクレログルカンから選ばれたものである、請求項1の免疫刺激剤。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドと多糖類との複合体が、水素結合と疎水性相互作用を介して形成される三重螺旋構造状のものである、請求項1の免疫刺激剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、免疫刺激剤(Immunostimulant:免疫賦活剤または免疫促進剤などとも呼ばれる)の技術分野に属し、特に、免疫性オリゴヌクレオチドを、新規なトランスフェクション剤と複合体化することにより得られる、安全で、薬効の高い免疫刺激剤を提供することに関する。
【背景技術】

免疫応答の刺激活性を有するオリゴヌクレオチド(以下、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、免疫刺激性核酸または免疫刺激性DNAと記述することがある)は、1984年にTokunagaらによりBCGの抗腫瘍性成分を検索する過程で発見された。そして、その活性化作用がシトシン・グアニン ジヌクレオチド(5’-CpG-3’:所謂CpG配列)を含む特定の塩基配列に起因するものであることが明らかにされた(Tokunaga,T.,et al.,J.Natl.Cancer Inst.,72,955(1984)(非特許文献1);Tokunaga,T.,et al.,J.Natl.Cancer Res.,79,682(1988)(非特許文献2)。
脊椎動物または植物以外のCpG配列をもつゲノムDNAにも同様の活性が認められている。免疫刺激活性にはCpGコアの前後の配列も重要と考えられ、特に、メチル化されてないCpGを有し、その前後に置換プリン(Pu)と置換ピリミジン(Py)が配列した5’-PuPuCpGPyPy-3’が、代表的な非メチル化CpGモチーフとしてコンセンサスを得ている(Krieg,A.,et al.,Nature,374,576(1995)(非特許文献3))。ここで、非メチル化CpGモチーフとは、よく知られているように、少なくとも1つのシトシン(C)-グアニン(G)配列を含む短いヌクレオチド配列(一般的には4~10個のヌクレオチドから成る配列)であって、該シトシン-グアニン配列におけるシトシンの5位がメチル化されていないものを指称する。なお、以下の説明において、CpGとは、特にことわらなり限り非メチル化CpGを意味する。
有用なCpGモチーフ(ヘキサマー)の例を以下に記載する(ただし、A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン、U:ウラシル)。
AACGTT、AGCGTT、GACGTT、GGCGTT、AACGTC、AGCGTC、GACGTC、GGCGTC、AACGCC、AGCGCC、GACGCC、GGCGCC、AACGCT、AGCGCT、GACGCT、およびGGCGCT
これらの配列を含む8~100個程度で構成されるオリゴヌクレオチドが免疫刺激活性を有するものである(特表2001-503254(特許文献1))。
以下の配列は、NK細胞の活性化に有効と報告されたCpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例である(下線部分がCpGモチーフを示し、また、大文字はチオール化DNAを表わす)(伊保澄子,山本三郎,Annual Review免疫2001,137-146(2002)(非特許文献4))。
JP0004850512B2_000002t.gif CpGモチーフ以外にも、免疫刺激性核酸として知られている幾つかの配列がある。例記すると、5’TTTT3’のようにチミジンに富むTリッチ核酸、5’GGGG3’のようにグアニジンに富むGリッチ核酸、チミジンとグアニジンの両方に富むTGリッチ核酸、シチジンに富むCリッチ核酸などが非CpG免疫刺激性核酸として最近注目されている(特表平08-500738(特許文献2);特表2002-512599(特許文献3);特表2003-510282(特許文献4);特表2003-510290(特許文献5))。
これらの免疫刺激性核酸の免疫系細胞に対する効果の大きな特徴は、抗原提示細胞を活性化することである。マウスやヒトの単球、マクロファージ、樹状細胞などに直接作用して、IL-6、TNF-α、IL-12、IFNα/β、IL-18、一酸化窒素などの免疫力増強作用をもつサイトカインを産生させる。
免疫性疾患に対する治療用の核酸ならびにDNAワクチンの組成物に関する特許出願が、最近、増えており、例えば、ザ ユニバーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーションの出願によるものは、ウイルス、細菌、真菌または寄生体の感染によって引き起こされる免疫系不全や、ガンにかかっているヒトや動物の処置、リポ多糖やエンドトキシンの暴露から生ずる気流の急性減少を起こした被験体のための治療的使用などのため、またはアジュバント用に多数のCpGモチーフ系の配列を提案している(特表平10-506265(特許文献6);特表2001-503267(特許文献7);特表2001-513776(特許文献8))。
CpGモチーフをDNAワクチンに使用する特許の出願で、魚介類に対するものも認められる(特開平9-285291(特許文献9))。
同様に、動物のパルボウイルスの感染予防の目的のためのものもある(特表2000-509976(特許文献10))。
また、特許文献1、11および12などにも、免疫刺激活性を有する類似の配列が多数記載されている(特表2002-517156(特許文献11);特表2002-526425(特許文献12))。
アンチセンスDNAを用いる遺伝子治療の場合と同様に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性化のために、ホスホジエステル結合の部分がホスホロチオエート結合に修飾されている例が多い。また、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの細胞との親和性を高める目的でリポソーム、カチオン脂質、コレステロールなどのトランスフェクション剤を併用する例も多く見られる。
遺伝子治療の際のアンチセンスDNAのトランスフェクション剤としては、当初、レトロウイルスまたはアデノウイルスがin vitroで極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が原因して、これらのin vivoおける使用は制限されている(Mulligan,Science,260,926-932(1993)(非特許文献5);Miller,Nature,357,455-460(1992)(非特許文献6);Crystal,Science,270,404-410(1995)(非特許文献7))。
天然由来の遺伝子のトランスフェクション剤の代替物として、ウイルス系よりも取り扱いが簡単であるのみならず、細胞へDNAを確実に効率良く集中させることが可能な人工材料の非ウイルス系キャリアーの使用が提示された(Tomlinson and Rolland,J.Contr.Rel.,39,357-372(1996)(非特許文献8))。
現在、非ウイルス性の人工キャリアーとしてよく検討されているのはポリエチレンイミン(PEI)である。多数の異なった付着細胞および浮遊細胞ライン中では、3次元的分岐構造のカチオンポリマーであるPEIは、ある場合には平均以上のトランスフェクション率を引き起こす結果になった(Boussif et al.,Gene Therapy,,1074-1080(1996)(非特許文献9))。
また、PEIと同様、窒素を含む置換基で修飾された、種々のカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などが遺伝子キャリアー、トランスフェクション剤、薬物担体などという名称で、最近、多数の特許が出願されるようになってきた。
しかしながら、PEIのようなカチオン性ポリマーの安全性についてはほとんど確認されていないのが現状である。カチオン性を付与するには、通常、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基を有する物質は生理活性が高く、体内毒性等の危険性が考えられる。事実、今まで検討されたいかなるカチオン性ポリマーも未だ実用に供されておらず、医薬品添加物辞典等に記載されていない(医薬品添加物辞典(非特許文献10);日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社(非特許文献11))。
一方、筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されている多糖類に、β-1,3-グルカンが存在する。この多糖は天然では三重螺旋構造をとっていることが古くから知られている(Theresa M.McIntire and David A.Brant,J.Am.Chem.Soc.,120,6909(1998)(非特許文献12))。
さらに、この多糖は、既に生体内での安全性が確認されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある(清水,陳,荷見,増淵,Biotherapy,,1390(1990)(非特許文献13);長谷川,Oncology and Chemotherapy,,225(1992)(非特許文献14))。
このようなβ-1,3-グルカンを、DNA等の生体材料とコンジュゲートし、遺伝子キャリアーに使用できることが知られている。この先行技術には、天然のβ-1,3-グルカン、すなわち、三重螺旋構造を有するβ-1,3-グルカンをそのまま使用し、これと生化学活性のある材料を、共有結合を介して、β-1,3-グルカン/生体材料のコンジュゲートを製造する方法が述べられている(PCT/US95/14800)(特許文献13)。
また、最近、本発明者らにより、β-1,3-結合を主鎖とする多糖類が、人工的に処理されることで、各種の核酸と新しいタイブの複合体を形成することが見出された(PCT/JP00/07875(特許文献14);PCT/JP02/02228(特許文献14);櫻井,新海,J.Am.Chem.Soc.,122,4520(2000)(非特許文献15);木村,甲元,櫻井,新海,Chem.Lett.,1242(2000)(非特許文献16))。
本発明の目的は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、安全でトランスフェクション効果の高い新タイプのキャリアーと複合体化し、免疫刺激剤として提供することにある。
【図面の簡単な説明】

第1図は、カチオン性官能基を導入する場合を例にして、本発明で用いられる修飾多糖の合成スキームの例を示す。
第2図は、本発明で用いられるペプチドR8およびRGDのアミノ酸配列を示す。
第3図は、本発明で用いられるペプチド修飾シゾフィラン(R8-SPGおよびRGD-SPG)の合成スキーム例を示す。
第4図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィラン、アミノ基修飾シゾフィラン、アルギニン修飾シゾフィラン、コレステロール修飾シゾフィラン、R8修飾シゾフィラン、およびRGD修飾シゾフィランとCpG DNAとの複合体化を示すアガロースゲル電気泳動パターンを示している。
第5図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来腹腔内マクロファージからのサイトカインIL-12産生量の増強効果の結果を示す。
第6図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(CpGモチーフを含まないオリゴヌクレオチド)によるマウス由来腹腔内マクロファージからのサイトカインIL-12産生効果の結果を示す。
第7図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来マクロファージ様細胞J774.A1からのサイトカインIL-12産生量の増強効果の結果を示す。
第8図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6産生量の増強効果の結果を示す。
第9図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-12産生量の増強効果の結果を示す。
第10図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNAによるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6産生効果の結果を示す。
第11図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNAによるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-12産生効果の結果を示す。
第12図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNA(PO)(ホスホジエステル結合を持つCpG DNA)の刺激によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6産生量の増強効果の結果を示す。
第13図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNA(PO)の刺激によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-12産生量の増強効果の結果を示す。
第14図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(PO)(ホスホジエステル結合を持ち、CpGモチーフを含まないオリゴヌクレオチド)によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6産生効果の結果を示す。
第15図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(PO)によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-12産生効果の結果を示す。
第16図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAによるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生効果の結果を示す。
第17図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNA(PO)によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生効果の結果を示す。
第18図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNAによるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生効果の結果を示す。
第19図は、本発明に従う免疫刺激剤のシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(PO)によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生効果の結果を示す。
【発明の開示】

本発明者は、β-1,3-結合を保有する多糖類をキャリアー(トランスフェクション剤)として用いることにより、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの作用を高め、免疫力増強に優れた安全な免疫刺激剤が得られることを見出した。
かくして、本発明に従えば、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとβ-1,3-結合を有する多糖類との複合体から成る免疫刺激剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】

本発明では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを主たる薬剤として使用する。ここで、本発明で用いられる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとは、免疫応答を刺激し免疫力の増強に活性を有するオリゴヌクレオチドであり、前記文献に記載されているような各種のオリゴヌクレオチドが例示されるが、それらに限定されるものではない。本発明において対象となる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、前記文献に記載されているような、各種の非メチル化CpGモチーフを含むものが好ましく使用される。また、同様に例示した、非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチド(非メチル化CpGモチーフ以外の免疫刺激性オリゴヌクレオチド)も使用することができる。非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独またはCpGモチーフと組み合わせて使用される。投与されるこれらのオリゴヌクレオチドはマクロファージなどの免疫細胞に作用し、サイトカインの産出等を介して免疫力を高める効果がある。
本発明で使用するオリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性を増すために、主鎖のホスホジエステル結合の部分をホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾したものが、通常、用いられるが、ホスホジエステル結合が一部または全部保持されたものでも差し支えない。
本発明の免疫刺激剤は、上述のような免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、β-1,3-結合を有する多糖類との複合体から、形成され、ここで該多糖類がトランスフェクション剤となる。ここで、本発明で用いられるβ-1,3-結合を有する多糖類として好ましいのは、β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシランである。中でも、シゾフィラン、レンチナン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホラン、またはラミナランから選ばれたβ-1,3-グルカンが好適であり、特に、シゾフィラン、レンチナンまたはスクレログルカンのように、1,6-グルコピラノシド分枝を多く含有する(側鎖率33~40%)β-1,3-グルカンが好ましい。
本発明で用いられる上記のごとき多糖類は、天然のままでも使用可能であるが、核酸結合性および/または細胞膜親和性官能基で修飾されたものがトランスフェクション能の点でより適当である。ここで、核酸結合性とは、核酸と相互作用して多糖類と当該核酸との結合を向上させる性質を指称する。また、細胞膜親和性とは、細胞膜タンパク質や細胞膜脂質(リン脂質)と親和性のあることを指称する。本発明においては、このような核酸結合性および細胞膜親和性のいずれか一方または両方の性質を発揮するような官能基で修飾した多糖類を用いることが好ましい。本発明で使用されるのに特に好適な核酸結合性および/または細胞膜親和性官能基の例として、カチオン性官能基、ステロイド性官能基、塩基性アミノ酸性官能基およびペプチド性官能基を挙げることができる。
カチオン性官能基とは正電荷を有する官能基であり(その具体例については後述の実施例2参照)、多糖類にカチオン性官能基が付与されることにより、DNAやRNAのような核酸の持つ負電荷と静電的相互作用により多糖と核酸との結合を高める。ステロイド性官能基(具体例については実施例4参照)は、ステロイド骨格にスペーサーを介して結合しているアミノ基の正電荷に因る核酸結合性と、ステロイド骨格のもつ細胞膜親和性との効果が期待されるものである。塩基性アミノ酸性官能基(具体例については実施例3参照)は、アミノ酸のアミノ基の正電荷に因る核酸結合性と、塩基性アミノ酸残基のもつ細胞膜親和性との効果が期待されるものである。ペプチド性官能基とは、例えば、後述の実施例5~7に示すR8やRGDのように、主として細胞膜親和性による効果で核酸のトランスフェクション能を促進するアミノ酸配列を含むペプチド鎖である。多糖類を修飾して、以上のような核酸結合性および/または細胞膜親和性官能基を付与する方法としては、通常の有機化学の手法であればよいが、一般的には、多糖の1,6-グルコピラノシド分枝を過ヨウ素酸酸化した後、還元的アミノ化を行うことにより該当する官能基を結合させる(第1図参照)。これらの事項については、本発明者らによるPCT/JP02/02228(特許文献15)にも詳述されているが、以下にその要旨を再説する。
既述のように、本発明の免疫刺激剤を構成する修飾多糖を得るために、核酸結合性官能基および/または細胞膜親和性官能基を多糖に付与するには、一般に、多糖の1,6-グルコピラノシド分枝を過ヨウ素酸化した後、還元的アミノ化を行なう。
したがって、本発明で用いられる修飾多糖を形成する核酸結合性官能基および細胞膜親和性官能基は、還元的アミノ化が適用されるような一級アミン、二級アミンまたはヒドラジンを有する化合物由来のものである。
例えば、本発明で用いられるのに好適なカチオン性官能基としては、下記に示すような1級もしくは2級のアミノ基を少なくとも1つ含む鎖状または環状の化合物由来のものであるが、無論これらに限定されるものではない。これらは、市販のアミノ基をもつ化合物から容易に合成することができる。
JP0004850512B2_000003t.gif 第1図は、核酸結合性官能基としてカチオン性官能基(上記(a)で示すもの)を導入する場合を例に、本発明で用いるカチオン性修飾多糖を得る方法を示す。図中(i)は過ヨウ素酸での酸化を示し、(ii)はシッフ塩基の形成を示し、(iii)はシッフ塩基の水素化ホウ素ナトリウムによる還元を示す。未反応の3位水酸基を含む側鎖を有するβ-1,3-グルカンの場合は、2.X、3.X、4.Xで表わされる反応物が得られる。5と6は、この反応が、側鎖の一部に起こることを示す。
また、本発明に従い、過ヨウ素酸酸化に引き続く還元的アミノ化により本発明の多糖の分枝に付加されるステロイド性官能基として好ましいのは、下記の式(2)で表わされる化合物のように、ステロイド骨格を有し、該ステロイド骨格にスペーサーを介してアミノ基が結合しているような構造の由来のものである。
JP0004850512B2_000004t.gif ここで、R、R、Rは水素または炭素、酸素、窒素もしくは水素を含む置換基である。また、Rはスペーサーであり、水素または炭素、酸素、窒素もしくは水素を含む環状または直鎖状の化合物由来のものである。Rがステロイド骨格に結合する位置はいずれでもよい。また、上記の一般式に当てはまらなくても、ステロイド骨格を有するものはいずれでも使用できる。例えば、コルチコステロン、コルチゾールの誘導体などである。
このようなステロイド性官能基は、ステロイド環に付加している水酸基にジアミンを結合させた後に、上述した方法に従って、還元的アミノ化法で、β-1,3-グルカンの分枝にステロイド性官能基を導入する。
本発明で用いられる修飾多糖を得るために、過ヨウ素酸酸化と還元的アミノ化により、多糖の分枝に導入される塩基性アミノ酸性官能基とは、下記の一般式(3)で表わされるアミノ酸由来のものである。
JP0004850512B2_000005t.gif ここで、Rはアミノ酸の側鎖である。この塩基性アミノ酸は、カルボキシル基および側鎖を保護してから、多糖の分枝に導入する。
本発明に従い免疫性刺激オリゴヌクレオチドと多糖類との複合体を調製するには、本発明者らによるPCT/JP02/02228(特許文献15)に詳細に記述されている方法に従うのが特に好ましい。すなわち、本来は、天然もしくは水中で三重螺旋として存在するβ-1,3-グルカン等の多糖を、極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)に溶解して1本鎖に解いた後、1本鎖の核酸を加え、溶媒を水に戻すこと(再生過程)によって、核酸1本と多糖2本とから成る、三重螺旋状の複合体として使用する(後述の実施例1参照)。この複合体は、ヌクレオチド1本鎖と多糖2本鎖が水素結合と疎水性相互作用を介して三重螺旋状にコンジュゲートした、非共有結合性のものと考えられる。複合体は、通常、水溶液として得られるので、限外ろ過法などの比較的簡単な方法で必要な純度に精製された後、治療用に使われる。
【実施例】

以下、具体的な免疫刺激剤としての調製法、得られた免疫刺激剤のキャラクタリゼーションおよびin vitro試験における投与の方法と評価に関して本発明の特徴を実施例において詳細に示すが、これらの実施例は本発明を制限するためのものではない。
【実施例1】

β-1,3-グルカン(シゾフィラン)および非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(CpG DNA)を複合体化した免疫刺激剤の調製 三重螺旋構造のシゾフィランを文献記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American Type Culture Collection)から入手したSchizophyllum commune.Fries(ATCC 44200)を、最小培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万の三重螺旋シゾフィランを得た。このシゾフィランをジメチルスルホキシド(以下、DMSOと表記)に溶解させて1本鎖にし、濃度を30mg/mlに調整し、この溶液1μlに、3μlの純水、10mMのトリス緩衝液(pH7.8)1μlおよび3mg/mlのCpG DNA溶液5μlを混合した。得られた溶液はすべて透明で、均一であった(Gregory G.Martin,et al.,Am.Chem.Soc.Polymer Prepr.38(1),253-254(1997);K.Tabata,et al.,Carbohydr.Res.,89,121-135(1981))。
使用したCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(固相合成品)は、塩基配列内に一箇所、シトシン・グアニン ジヌクレオチド(CpG)の配列を含みホスホロチオエート結合をもつTCC ATG ACG TTC CTG ATG CTの3’末端に40のdAをつけたシークエンス(配列番号1)をCpG DNAとした(Y.Akamaki,et al.Biol.Pharm.Bull.,25(3)351-355(2002))。
【実施例2】

カチオン性誘導体の合成(アミノ基修飾シゾフィラン)およびキャラクタリゼーション 第1図のスキームに従い、カチオン性誘導体(カチオン性官能基で修飾された多糖)を合成した。アミノ基の導入率の制御は過ヨウ素酸酸化に使用する過ヨウ素酸ナトリウムの当量数により制御することが可能である。従って、あらゆる導入率に対して合成法には相違は生じない。ここでは、シゾフィランへ4.6、17、20および36%のアミノ基を導入したカチオン修飾シゾフィランの合成例を示す。また、導入するアミノ基として2-アミノエタノールおよびスペルミンを使用した。アミノ基の導入率は側鎖グルコースに対する過ヨウ素酸ナトリウムの当量数によって制御することが可能であり、その実験結果は実施例3に示した。実施例1に記された方法にて分子量45万のシゾフィランを得た。このシゾフィラン100mgを水100mlに溶解させた。そこへ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(シゾフィラン側鎖グルコースに対して10%および40%、80%の当量数若しくは、過剰量である500%)をゆっくりと加え、4℃で2日間攪拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥した。得られた白色個体をジメチルスルホキシド20mlに溶解させ、2-アミノエタノールおよびスペルミン、2ml(大過剰、10000当量以上)を加え、室温で2日間攪拌を続けた。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを酢酸で失括させた後、反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析(酸性水溶液、塩基性水溶液、蒸留水)し、凍結乾燥することでカチオン性誘導体を調製した。
アミノ基の導入率の決定については元素分析による窒素の微量分析(検出下限0.05%)により行った。窒素の微量分析実験は全て3回の測定を行った結果を表1に示した。また、分子量についてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)および粘度測定から検酎し、原料と一致した分子量を示すことを明らかとした。
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【実施例3】

アミノ酸誘導体の合成(アルギニン修飾シゾフィラン)およびキャラクタリゼーション 第1図のスキームに従い、アミノ酸誘導体(アミノ酸性官能基で修飾された多糖)を合成した。アミノ酸の導入率の制御は実施例2と同様の方法で制御した。ここでは、シゾフィランへ4.6、17、20、および36%のアルギニンを導入したアルギニン修飾シゾフィランの合成例を示す。
実施例1に記された方法にて分子量45万のシゾフィランを得た。このシゾフィラン100mgを水100mlに溶解させた。そこへ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(シゾフィラン側鎖グルコースに対して10、40および70%の当量数)をゆっくりと加え、4℃で2日間攪拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥した。得られた白色個体をDMSO20mlに溶解させ、アルギニンメチルエステル2ml(大過剰、10000当量以上)を加え、室温で2日間攪拌を続けた。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを酢酸で失活させた後、反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析(酸性水溶液、塩基性水溶液、蒸留水)し、凍結乾燥することでアルギニン修飾シゾフィランを調製した。
アルギニンの導入率の決定は、元素分析による窒素の微量分析(検出下限0.05%)により行った。測定は全て3回ずつ行った。結果を表2に示した(M.Numata,et al.,Bioorg.Chem.,31,163-171(2003))。
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【実施例4】

コレステロール誘導体(コレステロール修飾シゾフィラン)の合成およびキャラクタリゼーション 第1図のスキームに従い、コレステロール誘導体(ステロイド性官能基で修飾された多糖)を合成した。コレステロールの導入率の制御は実施例2と同様の方法で制御した。ここでは、側鎖に対して4.5%のコレステロールを修飾したコレステロール修飾シゾフィランの合成法を示す。即ち、実施例1で調製したシゾフィラン100mgを水100mlに溶解させ、過ヨウ素酸ナトリウム1.65mg(側鎖グルコースに対して5mol%)を加え、遮光下、4℃で2日間撹拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析し、凍結乾燥した。
得られた白色固体をDMSOに懸濁させ、アミノ基末端を有するステロイド誘導体(ここでは、Ishiiらの文献に従って合成した3β-コレスト-5-エン-3-イルN-(2-アミノエチル)カルバメート)を加え、室温で2日撹拌を続けた。反応溶液に水素化ホウ素ナトリウム100mgを4時間間隔で2度加え、その後、室温で1日撹拌した。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを酢酸で失活させ、反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析し、凍結乾燥することでコレステロール修飾シゾフィランを得た(Tsutomu Ishii,Ritsuko Iguchi,Erwin Snip,Masato Ikeda and Seiji Shinkai,Langmuir,17,5825-5833(2001))。
コレステロールの導入率の決定は、元素分析による窒素の微量分析(検出下限0.05%)により行った。測定は全て3回ずつ行った。結果を表3に示した。
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【実施例5】

結合性官能基を含むペプチドの合成 ペプチド鎖(ペプチド性官能基)によるシゾフィランの化学修飾において、ペプチド鎖にはシゾフィランへの結合性官能基を有していることが必要である。結合性官能基およびスペーサーには特に制約はないが、ここでは、例としてマイケル付加反応によりマレインイミド基へ共有結合として固定化できるチオールを有するシステインを含むペプチド鎖の合成を以下に示す。
ペプチドの配列としては、細胞膜に対する親和性が高いことが知られているアルギニンオリゴマー(ここでは8量体を合成し、そのペプチド鎖をR8と表記する:配列番号2)、および、細胞接着因子が認識することで知られているアルギニン-グリシン-アスパラギン酸の配列(RGDと表記する:配列番号3)を含み、N末端にシステインを導入しているペプチド(第2図参照)をそれぞれ合成した。ペプチド鎖はFmoc法に従って合成し、精製はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて行った(精製条件:日立L-7100、ODSカラム(YMC社製)、溶離液はアセトニトリル/蒸留水(共に0.1vol%のトリフルオロ酢酸を含む)=5/95を40分かけて20/80にグラジエントした)。同定はMALDI-TOF MS(マトリックス支援イオン化-飛行時間型質量分析計)にて行い、同定結果は表4に示す(マトリックス:CHCA)(Fmoc法;「固相合成ハンドブック」、メルク株式会社)。
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【実施例6】

ペプチド修飾シゾフィランの合成 実施例5にて合成した、ペプチド鎖をシゾフィランへ導入するために第3図に示す合成スキームに従って合成した。反応は、過ヨウ素酸酸化、還元的アミノ化、スペーサーの導入、ペプチドの導入反応の4段階からなる。ペプチドの導入率は過ヨウ素酸酸化反応により制御することが可能である。2、4段階目では反応の進行を元素分析により評価した。結果は実施例7に示す。
実施例1で調製したシゾフィラン300mgを水300mlに溶解させ、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(9.87mg:シゾフィランの側鎖に対して0.1当量(10%))を加え、遮光下4℃で2日間撹拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥し、白色固体を得た。
得られた白色固体 100mgを極性有機溶媒のDMSO10ml、28%アンモニア水溶液10mlに溶解させ、シアノ水素化ホウ素ナトリウム200mg(大過剰)を加え、室温で4日間撹拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥し、白色固体を得た。
得られた白色固体をDMSO10mlに溶解させ、3-マレインイミドプロピオン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル100mg(大過剰)を加え、窒素気流下、室温で24時間撹拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥し、白色固体を得た。
得られた白色固体をDMSO5mlに溶解させた。また、実施例1にて得られたシステインを含むペプチド鎖(約50mg)を蒸留水に溶解させ、先のDMSO溶液と混合し、その溶液を室温で2日間撹拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析後、凍結乾燥し、ペプチド修飾シゾフィランを得た。
【実施例7】

ペプチド修飾シゾフィランのキャラクタリゼーション 実施例6にて得られた、ペプチド修飾シゾフィランのキャラクタリゼーション(各反応後の導入率の窒素元素分析による評価、分子量)を行った。表5には実施例6の各素反応における窒素の元素分析を元にした官能基の導入率(ペプチド修飾率)の変化を示している。また、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により評価したところ、ペプチドの修飾前後において分子量の大きな変化は起こらないことを確認している(T.Matsumoto,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1670,91-104(2004))。
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【実施例8】

カチオン化シゾフィランおよびアミノ酸修飾シゾフィラン、コレステロール修飾シゾフィランならびにペプチド修飾シゾフィランとCpG DNAとの複合体化免疫刺激剤の調製 17、20および36%のアミノ基修飾シゾフィラン(以下、N-SPGと表記)、4.6%のスペルミン修飾シゾフィラン(以下、SP-SPGと表記)、3.6、9.3および13.5%のアルギニン修飾シゾフィラン(以下、Arg-SPGと表記)、4.5%のコレステロール修飾シゾフィラン(以下、Chol-SPGと表記)、0.3および0.5%のR8修飾シゾフィラン(以下、R8-SPGと表記)、ならびに1.0および1.3%のRGD修飾シゾフィラン(以下、RGD-SPGと表記)をそれぞれDMSOに溶解させて1本鎖にし、濃度を30mg/mlに調整し、それぞれ溶液1μlに、純水3μl、10mMのトリス緩衝液(pH7.8)1μlおよび実施例1に記載のCpG DNA溶液(3mg/ml)5μlを混合した。得られた溶液はすべて透明で、均一であった。
以後、実施例2、3、4、および6にて合成したシゾフィラン類を総称して化学修飾シゾフィランと表記し、各化学修飾シゾフィランはR8(0.3)-SPGというようにかっこ内にその導入率を示す表記であらわす。
【実施例9】

CpG DNAとシゾフィラン類との複合体形成のゲル電気泳動法による確認CpG DNAは負に帯電したリン酸基が正電荷方向に電気泳動する。さらにゲルマトリックスの網目の隙間を泳動するためCpG DNAがシゾフィランと複合体を形成することにより分子量が大きくなるほど移動度は減少する。そこで、CpG DNAにシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランを添加して実施例1および8に記載の方法で複合体を形成させた後、MOPS緩衝液(20mM MOPS(pH7.0)、5mM酢酸ナトリウム、1mM EDTA、3%ジメチルスルホキシド)中で2%アガロースゲル用いて2V/cmで1時間電気泳動させ、Gel Star Nucleic Acids Stain(BMA)で染色後、トランスイルミネーター下でその移動度を評価した。
第4図に例示したアガロースゲル電気泳動の結果によると、シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランの添加に伴って、CpG DNAの移動度は減少しており、複合体の形成が確認された。
【実施例10】

シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来腹腔マクロファージからのサイトカインIL-12産生量の増強効果 マウス由来腹腔マクロファージの単離は、文献記載の定法で行った。すなわち8週齢の雌のBalb/cマウスの頚動脈を切断し脱血死させ、70%エタノールで消毒後に腹部外皮に切れ目を入れ外皮をはいで腹膜を露出させた。冷PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)を5ml腹部に注入し、よくマッサージしたのち液を回収した。ポリプロピレン製の遠心管を用いて1,000rpm、10分間、4℃で遠心した。上清を除き10%仔牛胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁した(日本生化学会編、新生化学実験講座12 分子免疫学I 免疫細胞・サイトカイン、東京化学同人(1989))。
96穴プレートに100μlの10%仔牛胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁した2×10個のマウス由来腹腔マクロファージを播種し37℃、5%CO下で2時間培養してプレートに細胞を接着後に、CpG DNAおよび実施例1と実施例8で調製したCpG DNAとシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランとの複合体を限外ろ過膜(排除限界3000)でろ過してDMSOを除去し濃度を再調整したものを添加し、37℃、5%CO下で24時間培養後に培養上清を回収した。
培養上清中に含まれるマウスの全IL-12量の測定は、Mouse Interleukin-12Total ELISA(ENDOGEN社製)を利用し、付属のプロトコールに従って測定した。その測定結果を第5図に示した。第5図に示したように、培養上清に含まれる全IL-12量は、CpG DNA単独投与よりもCpG DNAとシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランの複合体である本発明の免疫刺激剤の方が、多く含まれていた。この結果、本発明の免疫刺激剤投与により、マクロファージが産生するサイトカイン(IL-12)量の増加が確認された。
比較例1
シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(CpGモチーフを含まないオリゴヌクレオチド)によるマウス由来腹腔マクロファージからのサイトカインIL-12産生効果 実施例10で用いたCpG DNAの代わりに塩基配列内に、シトシン・グアニン ジヌクレオチド(CpG)の配列を含まない(免疫刺激効果を示さない)ホスホロチオエート結合をもつTCC ATG AGC TTC CTG ATG CTの3’末端に40のdAをつけたシークエンスのオリゴヌクレオチド(以下、non-CpG DNAと表記:配列番号4)を用いて、実施例10と同様の方法でマウス由来腹腔マクロファージからのサイトカインIL-12産生量を評価した。この結果を第6図に例示した(Y.Aramaki,et al.Biol.Pharm.Bull.,25(3)351-355(2002))。
第6図に示すように、non-CpG DNA単独投与およびシゾフィランまたは化学修飾シゾフィランとの複合体投与において、培養上清中のマウスの全IL-12量は増加しておらず、培地のみと比較してIL-12産生量にほぼ同じ程度であった。この結果、免疫刺激効果のないオリゴヌクレオチド(この例では、non-CpG DNA)との複合体形成物は、免疫刺激効果が無い(サイトカインのIL-12が産生されない)ことが示された。
【実施例11】

シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス由来マクロファージ様細胞J774.A1からのサイトカインIL-12産生量の増強効果 実施例10で用いたマウス由来腹腔マクロファージの代わりに、免疫刺激物質によってIL-12産生が増強されることが報告されているマウス由来マクロファージ様細胞J774.A1(ATCCより入手)を用いて、実施例10と同様の方法でマウス由来腹腔マクロファージからのサイトカインIL-12産生量を評価した。この結果を第7図に例示した(E.R.Kandimalla,et al.,Bioconjugate Chem.,13(5),966-974(2002))。
第7図に例示したように、培養上清に含まれる全IL-12量は、CpG DNA単独投与よりもCpG DNAとシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランの複合体である本発明の免疫刺激剤の方が、多く含まれていた。この結果、実施例10に例示したマウス由来腹腔マクロファージと同様に、本発明の免疫刺激剤投与により、マウス由来マクロファージ様細胞J774.A1からのサイトカイン(IL-12)産生量の増加が確認された。
【実施例12】

シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNAの刺激によるマウス脾臓細胞からのサイトカインIL-6およびIL-12産生量の増強効 実施例10で用いたマウス由来腹腔マクロファージの代わりに、免疫刺激物質によってIL-6およびIL-12産生が増強されることが報告されているマウス由来脾臓細胞(脾臓リンパ球)を用いて、マウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6およびIL-12産生量を評価した。マウス由来脾臓細胞の単離は、文献記載の定法で行った。すなわち8週齢の雌のBalb/cマウスを頚椎脱臼にて屠殺し、70%エタノールで消毒後、腹部外皮に切れ目をいれて外皮を剥いで腹膜を露出させる。腹膜を開き脾臓を回収した。脾臓をPBS中の網(200メッシュ)とピンセットでほぐした後、細胞塊を網でこす。細胞浮遊液をポリプロピレン製の遠心管を用いて1,000rpm、10分間、4℃で遠心した。上清を除き10%仔牛胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁した(日本生化学会編、新生化学実験講座12 分子免疫学I 免疫細胞・サイトカイン、東京化学同人(1989))。
96穴プレートに100μlの10%仔牛胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁した2.5×10個のマウス由来脾臓細胞を播種し、CpG DNAおよび実施例1と実施例8で調製したCpG DNAとシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランとの複合体を限外ろ過膜(排除限界3000)でろ過してDMSOを除去し濃度を再調整したものを添加し、37℃、5%CO下で24時間培養後に培養上清を回収した。
培養上清中に含まれるマウスのIL-6および全IL-12量の測定は、Mouse Interleukin-6 ELISAおよびMouse Interleukin-12 Total ELISA(ENDOGEN社製)を利用し、付属のプロトコールに従って測定した。その測定結果を第8図および第9図に示した。第8図と第9図に示したように、培養上清に含まれるIL-6と全IL-12量は、CpG DNA単独投与よりもCpG DNAとシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランの複合体である本発明の免疫刺激剤の方が、多く含まれていた。この結果、本発明の免疫刺激剤投与により、脾臓細胞(リンパ球)が産生するサイトカイン(IL-6とIL-12)量の増加が確認された(E.R.Kandimalla,et al.,Bioconjugate Chem.,13(5),966-974(2002))。
比較例2
シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNAによるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6とIL-12産生効果 実施例12で用いたCpG DNAの代わりにnon-CpG DNAを用いて、実施例12と同様の方法でマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6とIL-12産生量を評価した。この結果を第10図と第11図に例示した。
第10図と第11図に示すように、non-CpG DNA単独投与およびシゾフィランまたは化学修飾シゾフィランとの複合体投与において、培養上清中のマウスのIL-6と全IL-12量は増加しておらず、培地のみと比較してIL-6とIL-12産生量にほぼ同じ程度であった。この結果、免疫刺激効果のないオリゴヌクレオチド(この例では、non-CpG DNA)との複合体形成物は、免疫刺激効果が無いことが示された。
【実施例13】

β-1,3-グルカン(シゾフィラン)および化学修飾シゾフィランとホスホジエステル型CpG DNA(CpG DNA(PO))との複合体化免疫刺激剤の調製 シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランをそれぞれDMSOに溶解させて1本鎖にし、濃度を30mg/mlに調整し、この溶液1μl、純水3μl、10mMのトリス緩衝液(pH7.8)1μlと、実施例1に記載のCpG DNA溶液に代わり、CpG DNA(PO)溶液(3mg/ml)5μlを混合した。得られた溶液はすべて透明で、均一であった。
使用したCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(固相合成品)は、塩基配列内に一箇所、シトシン・グアニン ジヌクレオチド(CpG)の配列を含みホスホジエステル結合をもつTCC ATG ACG TTC CTG ATG CTの3’末端に40のdAをつけたシークエンス(配列番号5)をCpG DNA(PO)とした。
【実施例14】

シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNA(PO)の刺激によるマウス脾臓細胞からのサイトカインIL-6およびIL-12産生量の増強効果 実施例12で用いたCpG DNAに実施例13に記載のCpG DNA(PO)を用いて、実施例12と同様の方法でマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6およびIL-12産生量を評価した。この結果を第12図および第13図に例示した。
第12図および第13図に例示したように、培養上清に含まれるIL-6および全IL-12量は、CpG DNA(PO)単独投与よりもCpG DNA(PO)とシゾフィランおよび化学修飾シゾフィランの複合体である本発明の免疫刺激剤の方が、多く含まれていた。この結果、本発明の免疫刺激剤であるCpG DNA(PO)/シゾフィランおよびCpG DNA(PO)/化学修飾シゾフィラン投与により、マウス由来脾臓細胞からのサイトカイン(IL6およびIL-12)産生量の増加が確認された。
比較例3
シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたnon-CpG DNA(PO)によるマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6とIL-12産生効 実施例14で用いたCpG DNA(PO)の代わりに塩基配列内に、シトシン・グアニン ジヌクレオチド(CpG)の配列を含まない(免疫刺激効果を示さない)ホスホジエステル結合をもつTCC ATG AGC TTC CTG ATG CTの3’末端に40のdAをつけたシークエンスのオリゴヌクレオチド(以下、non-CpG DNA(PO)と表記:配列番号6)を用いて、実施例14と同様の方法でマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-6とIL-12産生量を評価した。この結果を第14図と第15図に例示した。
第14図と第15図に示すように、non-CpG DNA(PO)単独投与およびシゾフィランまたは化学修飾シゾフィランとの複合体投与において、培養上清中のマウスのIL-6と全IL-12量は増加しておらず、培地のみと比較してほぼ同じ程度の産生量であった。この結果、免疫刺激効果のないオリゴヌクレオチド、non-CpG DNA(PO)との複合体形成物は、免疫刺激効果が無い(サイトカインのIL-6とIL-12が産生されない)ことが示された。
比較例4
シゾフィランおよび化学修飾シゾフィランと複合体を形成させたCpG DNA若しくはCpG DNA(PO)、non-CpG DNA、non-CpG DNA(PO)の刺激によるマウス脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生効果
実施例12および実施例14と同様の方法でマウス由来脾臓細胞からのサイトカインIL-4産生量を評価した。この結果を第16図から第19図に例示した。
第16図から第19図に例示したように、CpG DNA若しくはCpG DNA(PO)、non-CpG DNA、non-CpG DNA(PO)単独投与およびシゾフィランまたは化学修飾シゾフィランとの複合体投与において、培養上清中のマウスのIL-4量は増加しておらず、培地のみと比較してほぼ同じ程度の産生量であった。免疫刺激効果のあるCpGモチーフは、IL-2やIL-12、TNF-α、IFN-γ等の細胞性免疫(I型免疫)系サイトカインのみを産生誘導し、IL-4やIL-5、IL-10、IL-13等の液性免疫(II型免疫)系サイトカインを抑制することが報告されている。この結果から、本発明の免疫刺激剤投与により、CpGモチーフによる免疫刺激効果により免疫増強していることが示された(Dennis M.Klinman,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,2879-2883(1996))。
【産業上の利用可能性】

本発明は、安全性の確認されたβ-1,3-グルカン等の多糖類をキャリアー(トランスフェクション剤)として用いる安全で優れた免疫増強作用を有し、免疫治療および遺伝子治療等の分野で利用される新しいタイプの免疫刺激剤である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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