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明細書 :光検出素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4296252号 (P4296252)
登録日 平成21年4月24日(2009.4.24)
発行日 平成21年7月15日(2009.7.15)
発明の名称または考案の名称 光検出素子
国際特許分類 H01L  31/0248      (2006.01)
FI H01L 31/08 ZNMH
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2005-511902 (P2005-511902)
出願日 平成16年7月15日(2004.7.15)
国際出願番号 PCT/JP2004/010428
国際公開番号 WO2005/008787
国際公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
優先権出願番号 2003199225
2004208456
優先日 平成15年7月18日(2003.7.18)
平成16年7月15日(2004.7.15)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成19年7月11日(2007.7.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】永宗 靖
【氏名】松本 和彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100078134、【弁理士】、【氏名又は名称】武 顕次郎
【識別番号】100093492、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 市郎
審査官 【審査官】濱田 聖司
参考文献・文献 国際公開第2004/013915(WO,A1)
国際公開第02/054505(WO,A1)
国際公開第01/044796(WO,A1)
特開2003-517604(JP,A)
特開2003-303978(JP,A)
特開2003-282924(JP,A)
R.Martel et al.,"Single- and multi-wall carbon nanotube field-effect transistors",Applied Physics Letters,Vol.73, No.17, 26 October 2000,pp.2447-2449
M.Shim et al.,"Photoinduced conductivity changes in carbon nanotube transistors",Applied Physics Letters,Vol.83, No.17, 27 October 2003,pp.3564-3566
調査した分野 H01L 31、51
特許請求の範囲 【請求項1】
光または電磁波の照射により内部にキャリアを発生する光伝導性物質と、カーボンナノチューブとを有し、光または電磁波の照射により前記光伝導性物質内にキャリアが発生し、そのキャリアが発する電束線を前記カーボンナノチューブの電気伝導の変化により検出することを特徴とする光検出素子。
【請求項2】
請求項1記載の光検出素子において、前記光伝導性物質として、異なった波長範囲に光伝導性を有する複数種類の光伝導性物質による単層構造または多層構造を有することを特徴とする光検出素子。
【請求項3】
請求項2記載の光検出素子において、前記多層構造が、光または電磁波の照射を受ける側にエネルギーギャップのより広い光伝導性物質からなる膜を形成するようになっていることを特徴とする光検出素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の光検出素子において、前記光伝導性物質とカーボンナノチューブの間に透明または半透明の絶縁膜が形成されていることを特徴とする光検出素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の光検出素子において、その光検出素子が電界効果トランジスタ構造または単電子トランジスタ構造を有することを特徴とする光検出素子。
【請求項6】
請求項5記載の光検出素子において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記光伝導性物質の下部にゲート電極を設けた構造であることを特徴とする光検出素子。
【請求項7】
請求項5記載の光検出素子において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記カーボンナノチューブの上部にゲート電極を設けた構造であることを特徴とする光検出素子。
【請求項8】
請求項5記載の光検出素子において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記カーボンナノチューブの近傍にゲート電極を設けた構造であることを特徴とする光検出素子。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の光検出素子において、前記カーボンナノチューブの両端に接続される電極を有し、その両電極が櫛形で互いに対向するように配置されて、その両電極間に前記カーボンナノチューブが多数並列に接続されていることを特徴とする光検出素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項記載の光検出素子において、前記光または電磁波が照射される側上に集光レンズが配置されていることを特徴とする光検出素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝導性物質とカーボンナノチューブを組み合わせた光検出素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光検出素子とは、光または電磁波のエネルギーを電気的なエネルギーに変換するもので、従来の光検出素子には、半導体を主材料とするフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトMOS、CCDセンサ、CMOSセンサや、光電効果を利用した光電子倍増管などがある。
【0003】
前者の半導体光検出素子は、光照射によって発生したキャリアすなわち電子または正孔を直接あるいは増幅して外部電流として取り出すものと、光照射によって発生した少数キャリアを所定箇所に蓄積し、それが作る局所電場により多数キャリアの流れを変調することで、外部出力として取り出すものがある。
【0004】
なお、カーボンナノチューブを用いた検出器の提案やカーボンナノチューブの光特性に関する報告として、下記のような特許文献ならびに非特許文献を挙げることができる。

【特許文献1】特開2003-517604号公報
【非特許文献1】J.Kong, N.R.Franklin, C. Zhou, M.G.Chapline, S.Peng, K.Cho, H.Dai, ‘Nanotube Molecular Wires as Chemical Sensors’, Science Vol.287(January 2000) P.622-625
【非特許文献2】P.G.Collins, K.Bradley, M.Ishigami, A.Zettl, ‘Extreme Oxygen Sensitivity of Electronic Propcrties of Carbon Nanotubes’, Science Vol.287(January 2000) P.1801-1804
【非特許文献3】I.A.Levitsky, W.B.Euler, ‘Photoconductivity of single-wall carbon nanotubes under continuous-wave near-infrared illumination’, Applied Physics Letters, Vol. 83 (September 2003) P.1857-1859
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来の光検出素子は、伝導層や蓄積層としてn型半導体やp型半導体あるいは金属や絶縁体を複雑に組み合わせた構造を用いねばならない。そのため作製が困難で、ドーピング条件等の最適条件が狭い範囲に制限されているため、歩留まりも悪く、コスト高になるという問題があった。
【0006】
さらに従来の半導体光検出素子は、材料の選択が限られているエピタキシャル成長で作製するため、狭い波長範囲でしか感度を有しないという欠点もあった。また後者の光電子倍増管は、真空容器を必要とするためアレイ化や小型化が困難である。
【0007】
前記特許文献1および非特許文献1,2に開示された内容はカーボンナノチューブを検出素子として用いた例ではあるが、ガスを検出するものであって、光検出素子として用いる内容ではない。また非特許文献3に開示されている内容は、カーボンナノチューブに照射された光によるカーボンナノチューブの光電流を測定した例であって、後述する本発明と動作原理が異なるばかりでなく、感度波長領域が狭く、感度も低い。
【0008】
本発明はこうした従来の実情に鑑み、望ましくはより広い波長範囲に対しても高感度を示し、高速応答を呈し、低消費電力を実現し、簡単に要部が構築できる構造原理を持つ製造コストの低い、新たな光検出素子を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、光または電磁波の照射により内部にキャリアを発生する例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、インジウムガリウム砒素、インジウム燐などの光伝導性物質と、その光伝導性物質と対応しても受けられたカーボンナノチューブとを有し、光または電磁波の照射により前記光伝導性物質内にキャリアが発生し、そのキャリアが発する電束線を前記カーボンナノチューブの電気伝導の変化により検出することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記光伝導性物質として、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、インジウムガリウム砒素、インジウム燐などのグループから選択された異なった波長範囲に光伝導性を有する複数種類の光伝導性物質による単層構造または多層構造を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、前記多層構造が、光または電磁波の照射を受ける側にエネルギーギャップのより広い光伝導性物質からなる膜を形成するようになっていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第4の手段は前記第1ないし第3の手段において、前記光伝導性物質とカーボンナノチューブの間に例えば酸化シリコンなどの透明または半透明の絶縁膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4の手段において、その光検出素子が電界効果トランジスタ構造または単電子トランジスタ構造を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記光伝導性物質の下部にゲート電極を設けた構造であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第7の手段は前記第5の手段において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記カーボンナノチューブの上部にゲート電極を設けた構造であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第8の手段は前記第5の手段において、前記電界効果トランジスタ構造が、前記カーボンナノチューブの近傍にゲート電極を設けた構造であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第9の手段は前記第1ないし第8の手段において、前記カーボンナノチューブの両端に接続される電極を有し、その両電極が櫛形で互いに対向するように配置されて、その両電極間に前記カーボンナノチューブが多数並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第10の手段は前記第1ないし第9の手段において、前記光または電磁波が照射される側上に集光レンズが配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は前述のような構成になっており、構造が単純で、簡単な方法で製作が可能で、広い波長範囲で高感度を有する光検出素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施形態を図とともに説明する。図1は、本発明の実施形態に係る光検出素子の光検出原理を説明するための図である。
【0021】
同図(a)に示すように、光伝導性物質1の近辺にカーボンナノチューブ2を設置する。この光伝導性物質1に対して光あるいは電磁波3を照射することにより、同図(b)に示すように光伝導性物質1内でキャリア4が発生する。そしてこのキャリア4が発する電束線5〔同図(c)参照〕がカーボンナノチューブ2の電気伝導に影響を与え、光伝導性物質1に照射された光あるいは電磁波3の存在あるいはその強度を、カーボンナノチューブ2の電気伝導の変化として検出することができる。
【0022】
従って、光あるいは電磁波3を照射した時に発生したキャリア4の数が少なくても、キャリア4が発する電束線5をカーボンナノチューブ2により検出するため、高感度の検出が可能となる。
【0023】
また、長距離に拡がる電束線5を検出するため、局所的にキャリアを蓄積する部分を必要とせず、そのための構造が簡単で、キャリアを蓄積するための余分な電力の消費がないという特長も有している。
【0024】
図2と図3は本発明の第1実施形態を説明するための図で、図2は光検出素子の斜視図、図3はその光検出素子の断面図である。
【0025】
この図に示すように、光伝導性物質1の上に絶縁層6を介してカーボンナノチューブ2を形成し、カーボンナノチューブ2の両端に適当な電圧を印加するための2つの電極7,7を設ける。
【0026】
本実施形態の場合、光伝導性を持つシリコン基板(光伝導性物質1)を用い、その上に酸化シリコンの絶縁層6を形成し、その上にカーボンナノチューブ2を配置した。
【0027】
なお、光伝導性物質1は、分子線エピタキシー装置(MBE装置)などの真空蒸着装置や有機金属気相成長装置(MOCVD)などの化学気相成長装置(CVD装置)を用い、結晶成長により作製することもできる。光伝導性物質1は、n型でも、p型でも、半絶縁性でも構わない。
【0028】
前記絶縁層6は、透明または半透明の材料が用いられる。そして図3に示すように、絶縁層6を通して光伝導性物質1に光あるいは電磁波3を照射することによって発生したキャリア4は、光伝導性物質1内に存在していればよく、カーボンナノチューブ2に流れ込む必要は必ずしもない。なお、光あるいは電磁波3の入射方向は、光検出素子の下面や側面からでも良い。
【0029】
図4は、本発明の第2実施形態を説明するための光検出素子の断面図である。本実施例の場合、異なった波長範囲に光伝導性を有する複数種類の光伝導性物質1a~1eの多層構造8を採用している。このようにすれば、それぞれの光伝導性物質1a~1eが持つ光感度波長範囲の全てにわたって感度を有する光検出素子を作製することができる。
【0030】
光伝導性物質1における光感度波長範囲の一例を示せば次の通りである。シリコン(Si):200~1100nm、ゲルマニウム(Ge):500~1500nm、ガリウム砒素(GaAs):200~900nm、インジウムガリウム砒素(InGaAs):650~2900nm、インジウム砒素(InAs):1300~3900nm。
【0031】
その他、例えばアルミニウム砒素(AlAs)、アルミニウムガリウム砒素(AIGaAs)、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)、ガリウム砒素燐(GaAsP)、インジウムガリウム砒素燐(InGaAsP)、インジウムアンチモン(InSb)、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)、鉛セレン(PbSe)、鉛硫黄(Pbs)、カドミウムセレン(CdSe)、カドミウム硫黄(CdS)、ガリウム窒素(GaN)、インジウムガリウム窒素(InGaN)、アルミニウム窒素(AlN)、シリコンカーバイト(SiC)などによる無数の組み合わせが可能である。
【0032】
各種光伝導性物質1の組み合わせ(組成比)により、感度波長が変化する。各層の膜厚は、数ナノメータから数ミクロンメータが適当である。膜厚は厚い方が感度波長領域が増えるが、余り厚くすると製膜に時間がかかるため、前述の範囲が適当である。
【0033】
図4に示すように、光あるいは電磁波3を上から照射する場合、光伝導性物質1の有効利用という観点から、エネルギーギャップの広いものほど上側に配置した方が効率は良い。例えば下側からインジウムガリウム砒素(InGaAs)膜、ガリウム砒素(GaAs)膜、アルミニウム砒素(AlAs)膜の順に積層される。但し、必ずしもこのように配置する必要はなく、必要な光応答特性や個々の材料の特性に応じて、積層する膜の順番や膜の厚さ、膜の数を適宜設定すれば良い。
【0034】
本実施形態では多層構造8としたが、異なった波長範囲に光伝導性を有する複数種類の光伝導性物質1を必要な光応答特性や個々の材料の特性に応じて適宜混合して構成した単層構造のものでも、それぞれの光伝導性物質1がもつ光感度波長範囲の全てにわたって感度を有する光検出素子を作製することができる。
【0035】
本発明に係る光検出素子は、非常に簡単な構造でありながら、光あるいは電磁波の照射によって発生したキャリアから発する電束線が、絶縁層を介して配置されたカーボンナノチューブの電気伝導に影響するような構成になっているから、高感度に光あるいは電磁波の照射を検出することができる。
【0036】
図5は、本発明の第3実施形態を説明するための光検出素子の断面図である。本実施形態の場合、光伝導性物質1の下部にゲート電極9を設けて、電界効果トランジスタ構造としている。
【0037】
図6は、本発明の第4実施形態を説明するための光検出素子の断面図である。本実施形態の場合、カーボンナノチューブ2の上部に絶縁層6を介してゲート電極9を設けて、電界効果トランジスタ構造としている。
【0038】
図7は、本発明の第5実施形態を説明するための光検出素子の斜視図である。本実施形態の場合、絶縁層6の上部でカーボンナノチューブ2の近傍にゲート電極9を設けて、電界効果トランジスタ構造としている。
【0039】
前述実施形態のように、光伝導性物質1またはカーボンナノチューブ2にゲート電極9を形成して、電界効果トランジスタ構造とすることで、光あるいは電磁波の照射によってカーボンナノチューブ2に流れる電流の変化を大きくすることができる。
【0040】
また、カーボンナノチューブとして、カーボンナノチューブ内を流れるキャリアの数を1個単位に制限するカーボンナノチューブ単電子トランジスタを用いることにより、暗電流を下げてより高感度となり、単一フォントの測定までも可能となる。
【0041】
光伝導性物質はカーボンナノチューブの下に在っても良いが、上に在っても良く、塗布による形成方法を採用すれば、簡便に光検出素子を作製できる。この場合、光伝導性物質を樹脂などと一緒に塗布すれば、光検出素子の作製がより容易である。前述の樹脂はバインダーとして機能するので、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂などの透明な樹脂が好適である。また光伝導性物質1の層を着色することにより、感度波長域を制限する色フィルターの機能を持たせることも可能である。
【0042】
図8は、前記第1実施形態に係る光検出素子(図2、図3参照)の室温における波長感度特性例を示す図である。ここでは、光伝導性物質1としてシリコンを、絶縁層6として酸化シリコンをそれぞれ用い、絶縁層6の上にカーボンナノチューブ2を形成し、カーボンナノチューブ2の両端に作製した2つの電極7,7間に適当な電圧(本実施形態ではドレイン電圧2V)を印加した。そしてそのときにカーボンナノチューブ2に流れる電流変化から求められる光感度を、光伝導性物質1に照射した光の波長に対して示している。
【0043】
この図に示す光感度波長はシリコンのものであり、波長600nm付近で光強度は15A/Wに達しており、従来のシリコンフォトダイオードの約20倍という非常に高い光感度を有している。
【0044】
図9は、この光検出素子の温度感度特性例を示す図である。この時の測定条件は、ドレイン電圧を2Vとし、波長600nmの光を使用し、各温度における光感度を測定した。
【0045】
同図に示すように、この光検出素子の測定温度を調整することにより高い光感度が得られ、測定温度を175~250Kの範囲に調整することにより光感度を60A/W以上に高めることができ、特に測定温度を200~220Kの範囲に調整することにより80A/Wまで光感度を上げることができる。なお、図2と図3において、カーボンナノチューブに完全に光が当たらないようにして同様な測定をしても、同様な結果が得られた。
【0046】
また図2と図3において、その他の構造は同一としてカーボンナノチューブ2のみを作製しない構造では、電気伝導が見られないだけでなく、光検出素子としての動作を示さなかった。
【0047】
本発明の光検出素子において、例えば図6または図7に示すようにカーボンナノチューブの付近にゲート電極を形成し、電界効果トランジスタ構造とすることで、光伝導性物質やカーボンナノチューブ内の電子数を制御し、ドレイン電流や光電流を調整することで、光検出素子の感度調整をすることができる。
【0048】
図10は、電界効果トランジスタ構造を有する光検出素子において、ゲート電圧を変化させたときの室温におけるドレイン電流ならびに光電流の変化を示す特性図である。この図から明らかなように、電界効果トランジスタ構造を有する光検出素子のゲート電圧を調整することにより、光電流の高い強度を得ることができ、感度を高くできる。
【0049】
本発明の光検出素子は容易に複数個直列あるいは並列に接続することができるので、出力をさらに大きくすることができる。図11は、本発明の第6実施形態を説明するための光検出素子の平面図である。本実施形態の場合、絶縁層6の上に櫛形の2つの電極7,7を対向するように設けて、電極7,7間にカーボンナノチューブ2を多数並列に接続している。このようにすることにより、光検出素子の出力を大きくすることができる。
【0050】
図12は、本発明の第7実施形態を説明するための光検出デバイスの断面図である。本実施形態は前記実施形態の光検出素子を用いたより具体的な構造を示しており、光検出素子をステム11上に接着固定する。このステム11には外部回路に接続するための複数本のリード電極12a~12cが支持されており、光検出素子の電極7とリード電極12a,12bがリード線14を介して電気的に接続されている。ステム11上の光検出素子は、窓15を接着剤16で固定した保護用のキャップ17で覆われ、キャップ17の下部はステム11に溶接または接着固定されている。
【0051】
この窓15付きのキャップ17とステム11で囲まれた空間を真空状態(減圧状態)にするか、あるいは窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスで満たすことにより、光検出素子の耐久性を増し、安定化を図ることができる。
【0052】
本実施形態の場合、下部にゲート電極9を有する光検出素子が用いられ、そのゲート電極9が導電性ペースト10により金属製のステム11に固定され、そのステム11にはリード電極12cが直接固定されているから、ゲート電極9は導電性ペースト10と金属製ステム11を介してリード電極12cに電気的に接続されている。本実施形態の場合、金属製ステム11と前記リード電極12a,12bは絶縁碍子13で電気的に絶縁されている。
【0053】
図13は、本発明の第8実施形態を説明するための光検出デバイスの断面図である。本実施形態は、前記窓15の一部あるいは全部をレンズ体18で構成している。なお、レンズ体18の凸部は下面でも構わないし、上下両面にあってもよい。
【0054】
図14は、本発明の第9実施形態を説明するための光検出デバイスの断面図である。本実施形態は、ステム11上の光検出素子を透明な合成樹脂で封入し、その形状をレンズ体18としている。このようなレンズ体18を用いれば、光検出素子の受光部により多くの光3を集めて、光感度を上げることができる。また光検出素子を合成樹脂で封入することにより、光検出素子の耐久性を増し、安定化を図ることができる。
【0055】
本発明の光検出素子は容易に複数個直列あるいは並列に接続することができるので、1次元、2次元あるいは3次元のイメージセンサとして使用することもできる。
【0056】
さらに出力電流が大きくとれるため図15に示すように、本発明の光検出素子19に電導線20を介して発光ダイオードなどの発光素子21と電源22を接続するだけで、増幅器を介さず、発光素子21を直接駆動することもできる。
【0057】
この際、光出力24を光入力23よりも大きくすることができるので、暗視カメラとして用いたり、図16に示すような2次元の光増幅器あるいはイメージ増幅器や光メモリとしてアナログやデジタルの光信号処理回路への応用も可能である。図16において、25は多数の光検出素子19を2次元に配列したイメージセンサ、26はイメージセンサ25(光検出素子19)に電導線20で接続されたディスプレイである。
【0058】
本発明の光検出素子において、光伝導性物質を任意に選択することにより、任意の波長の光または電磁波に応答する光検出素子を構成することができる。また、カーボンナノチューブの大きさ、数または長さを任意に制御することにより、任意の倍増率を有する光検出素子を構成することができる。
【0059】
前記実施形態ではカーボンナノチューブを面内に形成したが、カーボンナノチューブを埋め込む形で垂直型構造にすることも可能で、その場合、他の素子との積層化が容易にできる。
【0060】
またカーボンナノチューブは、素子の中央部に設ける必要はなく、端に寄っていても構わない。カーボンナノチューブの形状も直線状である必要はなく、例えば波状あるいは螺旋状などのように曲がっていても構わない。
【0061】
またカーボンナノチューブを多数並列に並べれば、感度が上がるだけでなく、全体の抵抗値が小さくなるため、流し得る電流を大きくすることができる。この際、カーボンナノチューブは互いに交叉したり枝分かれしていてもよい。
【0062】
前記実施形態ではシリコン上に酸化シリコンを介してカーボンナノチューブを形成した場合について示したが、シリコンやゲルマニウムなどの単元素の他、ガリウム砒素やインジウムガリウム砒素あるいはインジウム燐などの化合物を用いたもの、あるいはそれらを量子井戸構造またはヘテロ接合構造で形成した単層構造や多層構造を基本とするもの、あるいは他の物質と組み合わせたものなど、光または電磁波の照射により内部にキャリアを発生する光伝導性物質であれば、それが絶縁体、磁性体、あるいはn型またはp型の半導体であっても、同様の素子を作製することができる。
【0063】
特に図4に示す実施形態のように、感度波長領域の異なる複数種類の光伝導性物質を多層にした構造を採用すれば、一個の光検出素子で広い波長範囲の検出が可能である。
【0064】
なお、多層構造にする場合、エピタキシャル成長の必要がないため、材料の選択範囲が拡がる。従って、光伝導性物質の多層構造化が容易であるばかりでなく、光伝導性物質を多結晶化したりアモルファス化したりすることで、キャリアの緩和速度を速くすれば、高速動作が可能となる。
【0065】
多層構造は水平に設置する必要はなく、垂直配置でも構わない。また必ずしも層構造である必要はなく、多重構造であれば立体構造にしても構わない。
【0066】
前記実施形態において、絶縁層6は必ずしも必要でないが、絶縁層6を設けることにより、暗電流を少なくする効果がある。前記実施形態では絶縁層6として酸化シリコンを用いたが、その他、窒化シリコンや透明または半透明のガラスや樹脂なども使用可能である。また、ノンドープガリウム砒素、ノンドープアルミニウム砒素などの不純物を実質的に含まない半導体材料も薄ければ使用可能である。
【0067】
前記実施形態において、外部と接続するための電極7はカーボンナノチューブ2と接していればよく、必ずしも光伝導性物質1と電気的に接続する必要はない。
【0068】
本発明は、例えば高感度光検出素子、光スイッチング素子、アレイ化による一次元、二次元あるいは三次元のイメージセンサやそれを用いた精密計測装置、高感度カメラ、暗視カメラ、発光素子との組み合わせによるフォトカプラやフォトインタラプタなどの位置検出素子、光演算回路用の光増幅器など各種技術分野への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る光検出素子の光検出原理を説明するための図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光検出素子の斜視図である。
【図3】その光検出素子の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光検出素子の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る光検出素子の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る光検出素子の断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る光検出素子の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光検出素子の波長感度特性例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る光検出素子の温度感度特性例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る光検出素子のゲート電圧特性例を示す図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る光検出素子の平面図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る光検出デバイスの断面図である。
【図13】本発明の第8実施形態に係る光検出デバイスの断面図である。
【図14】本発明の第9実施形態に係る光検出デバイスの断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る光検出素子を用いた光信号処理回路の概略構成図である。
【図16】本発明の実施形態に係る光検出素子をイメージセンサに用いた例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1、1a~1e:光伝導性物質、
2:カーボンナノチューブ、
3:光あるいは電磁波、
4:キャリア、
5:電束線、
6:絶縁層、
7:電極、
8:多層構造、
9:ゲート電極、
10:導電性ペースト、
11:ステム、
12a~12c:リード電極、
13:絶縁碍子、
14:リード線、
15:窓、
16:接着剤、
17:キャップ、
18:レンズ体、
19:光検出素子、
20:電導線、
21:発光素子、
22:電源、
23:光入力、
24:光出力、
25:イメージセンサ、
26:ディスプレイ。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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