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明細書 :シミュレーション装置、およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4940433号 (P4940433)
登録日 平成24年3月9日(2012.3.9)
発行日 平成24年5月30日(2012.5.30)
発明の名称または考案の名称 シミュレーション装置、およびプログラム
国際特許分類 G06F  19/12        (2011.01)
FI G06F 19/12
請求項の数または発明の数 8
全頁数 33
出願番号 特願2007-517716 (P2007-517716)
出願日 平成17年11月24日(2005.11.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1.平成16年11月26日~27日 京都大学主催の「細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト 京都大学拠点 第2回国際シンポジウム」において文書をもって発表 2.平成17年4月25日 社団法人日本糖尿病学会発行の「第48回日本糖尿病学会年次学術集会プログラム・抄録集(第48巻臨時増刊号)」に発表
国際出願番号 PCT/JP2005/021528
国際公開番号 WO2006/126293
国際公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
優先権出願番号 2005150440
優先日 平成17年5月24日(2005.5.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年7月9日(2008.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】松岡 達
【氏名】藤本 新平
【氏名】濱田 輝基
個別代理人の代理人 【識別番号】100115749、【弁理士】、【氏名又は名称】谷川 英和
審査官 【審査官】岩間 直純
参考文献・文献 特開2004-154341(JP,A)
GIUGLIANO M. ET AL.,Insulin Release at the Molecular Level: Metabolic-Electrophysiological Modeling of the Pancreatic Beta-Cells,IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,米国,IEEE,2000年 5月,Vol. 47, No. 5,pp. 611 - 623
TAKEHIRO M. ET AL.,Chronic exposure to beta-hydroxybutyrate inhibits glucose-induced insulin release from pancreatic islets by decreasing NADH contents,AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY - ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM,米国,American Physiological Society,2005年 2月 1日,Vol. 288, No. 2,pp. E372 - E380,URL,http://ajpendo.physiology.org/content/288/2/E372.full
RADU R.G. ET AL.,Tacrolimus suppresses glucose-induced insulin release from pancreatic islets by reducing glucokinase activity,AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY - ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM,米国,American Physiological Society,2005年 2月 1日,Vol. 288, No. 2,pp. E365 - E371,URL,http://ajpendo.physiology.org/content/288/2/E365.full
松岡達,ほか,創薬研究における細胞機能シミュレーション,月刊薬事,日本,株式会社じほう,2004年 6月,Vol. 46, No. 7,pp. 33 - 40
岩倉敏夫,ほか,インスリン分泌のメカニズムとその異常,現代医療,日本,現代医療社,2000年 7月,Vol. 32, No. 7,pp. 1779-1784
調査した分野 G06F 19/10
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成部と、
前記インスリン生成部が生成したインスリン情報を出力する出力部とを具備し、
前記インスリン生成部は、
産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得手段と、
細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得するカルシウムイオン情報取得手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で生成されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成手段と、
前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成手段と、
を具備するシミュレーション装置。
【請求項2】
前記活性化インスリン情報生成手段は、
前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成し、当該第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成する請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成部と、
前記インスリン生成部が生成したインスリン情報を出力する出力部とを具備し、
前記受付部は、
前記グルコース情報と、投入するSU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付け、
前記インスリン生成部は、
前記グルコース情報と、前記SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するシミュレーション装置であり、
前記インスリン生成部は、
前記SU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成するカリウムイオン生成手段と、
前記カリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成するカルシウムイオン生成手段と、
産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成手段と、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成手段と、
前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成手段と、
を具備するシミュレーション装置
【請求項4】
前記出力部は、
SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を出力する請求項3記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記副作用情報は、
SU剤暴露時間に対応する細胞内のインスリン量を示す情報であるSU剤対応インスリン量情報を含む請求項4記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
コンピュータに、
グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成ステップと、
前記インスリン生成ステップで生成したインスリン情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラムであって、
前記インスリン生成ステップは、
産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得ステップと、
細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得するカルシウムイオン情報取得ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成ステップと、
前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成ステップと、を具備するプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成ステップと、
前記インスリン生成ステップで生成したインスリン情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラムであって、
前記受付ステップは、
前記グルコース情報と、投入するSU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付け、
前記インスリン生成ステップは、
前記グルコース情報と、前記SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するプログラムであって、
インスリン生成ステップは、
前記SU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成するカリウムイオン生成ステップと、
前記カリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成するカルシウムイオン生成ステップと、
産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で生成されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成ステップと、
前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成ステップと、
前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成ステップと、を具備するプログラム
【請求項8】
前記出力ステップは、
SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を出力する請求項7記載のプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、膵β細胞のインスリン分泌に関するシミュレーションを行ったり、SU剤の膵β細胞に対する薬理作用を予測したりできるシミュレーション装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスリンは、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞から血中に分泌されるホルモンの1つである。また、血糖値が上昇すると、膵β細胞はグルコーストランスポーターを介して細胞内にグルコースを取り込み、ミトコンドリアでATPを産生する。ATP濃度増加に伴い、KATPチャネルが閉じ、細胞膜が脱分極する。この脱分極によって電位依存性Ca2+チャネルが開き、Ca2+が細胞内に流入し、インスリン分泌を引き起こす。そして、インスリンは、体内の各細胞表面にあるインスリン受容体に結合すると、その細胞は血中のグルコースを取り込み、血糖値を低下させる。以上の動作により、インスリンは、血糖値を低下させる。
【0003】
また、SU剤は、膵β細胞のSU受容体に結合し、KATPチャネルを閉じることによってインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる薬剤である。
【0004】
かかる、グルコース受容からインスリン分泌に至るまでの概念を説明した概念図が図10である。
【0005】
以上のβ細胞内の動作をシミュレーションする、従来のシミュレーションモデルとして、膵β細胞外グルコース濃度依存的な細胞内ATP、ADP、Ca2+等のイオンの時間推移を数式化したモデルがある(非特許文献1参照)。
【0006】
また、Ca2+-uniporterモジュール、小胞体モジュール、ミトコンドリア、および小胞体の細胞内容積率を数式化したモデルがある(非特許文献2参照)。
【0007】
さらに、膵β細胞内のインスリン顆粒の位置・活性化情報を定性的に推定した仮説が存在する(非特許文献3参照)。
【0008】
なお、SU剤のKd値については非特許文献4に記載されている。また、関連する文献に、非特許文献5がある。

【非特許文献1】Magnus G., et al、Model ofβ-cell mitochondrial calcium handling and electrical activity. I. Cytoplasmic variables.、Am. J. Physiol.、米国、1998、274、C1158-C1173
【非特許文献2】CHRISTOPHER P. FALL , et al、Mitochondrial Modulation of Intracellular Ca2+ Signaling、J. Theor. Biol.、米国、2001、210、 151-165
【非特許文献3】Rorsman P.、The pancreatic beta-cell as a fuel sensor: an electrophysiologist's viewpoint、Diabetologia、米国、1997、40, 487-495
【非特許文献4】Schmid-Antomarchi, et al. 、The receptor for antidiabetic sulfonylureas controls the activity of the ATP-modulated K+ channel in insulin-secreting cells.、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、1987、262、15840-15844
【非特許文献5】Detimary P., et al.、Concentration dependence and time course of the effects of glucose on adenine and guanine nucleotides in mouse pancreatic islets.、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、1996, 271, 20559-20565
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のシミュレーションモデルにおいては、グルコース受容からインスリン分泌をシミュレーションできない、という課題があった。
【0010】
具体的には、非特許文献1、2,4に開示されている技術においては、インスリン分泌について扱っていない。
【0011】
また、非特許文献3に開示されている技術においては、その仮説は定性的であったため、シミュレーションに使用できなかった。
【0012】
また、SU剤の投入によるインスリン分泌をシミュレーションできない、という課題があった。
【0013】
さらに、SU剤の投入による副作用に関してシミュレーションできない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本第一の発明のシミュレーション装置は、グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成部と、前記インスリン生成部が生成したインスリン情報を出力する出力部と、を具備するシミュレーション装置である。
【0015】
かかる構成により、グルコース受容からインスリン分泌をシミュレーションできる。
【0016】
また、本第二の発明のシミュレーション装置は、第一の発明に対して、前記インスリン生成部は、産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得手段と、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得するカルシウムイオン情報取得手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成手段と、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成手段と、を具備するシミュレーション装置である。
【0017】
かかる構成により、インスリン生成部のモデル化ができ、その結果、グルコース受容からインスリン分泌を、精度高くシミュレーションできる。本モデルは、例えば、膵β細胞内におけるインスリン顆粒の位置・状態を4つの状態に分け、これらの関係を数式化することによってインスリン分泌を定量化した新規のモデルである。また、本モデルにおいて、例えば、インスリン顆粒の位置・状態間の速度を、細胞内ATP及びCa2+濃度に依存するようになっている。
【0018】
また、本第三の発明のシミュレーション装置は、第二の発明に対して、前記活性化インスリン情報生成手段は、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成し、当該第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成するシミュレーション装置である。
【0019】
かかる構成により、グルコース受容からインスリン分泌をシミュレーションでき、かつ、インスリン分泌速度という重要なシミュレーション結果を出力できる。
【0020】
また、本第四の発明のシミュレーション装置は、第一の発明に対して、前記受付部は、前記グルコース情報と、投入するSU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付け、前記インスリン生成部は、前記グルコース情報と、前記SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するシミュレーション装置である。
【0021】
かかる構成により、SU剤の投入によるインスリン分泌をシミュレーションできる。
【0022】
また、本第五の発明のシミュレーション装置は、第四の発明に対して、前記インスリン生成部は、前記SU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成するカリウムイオン生成手段と、前記カリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成するカルシウムイオン生成手段と、産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成手段と、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成手段と、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成手段と、を具備するシミュレーション装置である。
【0023】
かかる構成により、インスリン生成部のモデル化ができ、その結果、SU剤の投入によるインスリン分泌を、精度高くシミュレーションできる。
【0024】
また、本第六の発明のシミュレーション装置は、第四、第五いずれかの発明に対して、前記出力部は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を出力するシミュレーション装置である。
【0025】
かかる構成により、SU剤の投入による副作用に関してシミュレーションできる。
【0026】
また、本第七の発明のシミュレーション装置は、第六の発明に対して、前記副作用情報は、SU剤暴露時間に対応する細胞内のインスリン量を示す情報であるSU剤対応インスリン量情報を含むシミュレーション装置である。
【0027】
かかる構成により、SU剤の投入による副作用に関してシミュレーションでき、かつ、SU剤対応インスリン量情報という重要な情報を出力できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるシミュレーション装置によれば、インスリン分泌をシミュレーションできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、シミュレーション装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
【0030】
図1は、本実施の形態におけるシミュレーション装置のブロック図である。本シミュレーション装置は、受付部11、インスリン生成部12、出力部13を具備する。
【0031】
インスリン生成部12は、ATP情報取得手段121、カルシウムイオン情報取得手段122、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123、細胞膜付近インスリン情報生成手段124、リン酸化インスリン情報生成手段125、活性化インスリン情報生成手段126を具備する。
【0032】
受付部11は、グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける。グルコース情報とは、例えば、細胞外のグルコースの濃度である細胞外グルコース濃度や、細胞内に入力されるグルコースの量や、細胞内に存在するグルコースの量や濃度などである。グルコース情報の入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。受付部11は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。
【0033】
インスリン生成部12は、受付部11が受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する。インスリン情報とは、例えば、インスリン分泌速度や、インスリン分泌量などである。インスリン生成部12がインスリン情報を生成するアルゴリズムの具体例は、後述する。インスリン生成部12は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。インスリン生成部の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0034】
ATP情報取得手段121は、産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得する。ATP情報は、例えば、細胞内のATPの濃度である細胞内ATP濃度や、ATPの生成速度や、細胞内のATPの量などである。ATP情報取得手段121は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。ATP情報取得手段121の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0035】
カルシウムイオン情報取得手段122は、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得する。カルシウムイオン情報とは、細胞内のカルシウムイオンの濃度や、細胞内へのカルシウムイオンの流入速度や、細胞内のカルシウムイオンの量などの情報である。カルシウムイオン情報取得手段122は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。カルシウムイオン情報取得手段の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0036】
ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、ATP情報と、カルシウムイオン情報と、グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成する。ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123が第一インスリン情報を生成するアルゴリズムの例は後述する。ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0037】
細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、ATP情報と、カルシウムイオン情報と、第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する。細胞膜付近インスリン情報生成手段124が第二インスリン情報を生成するアルゴリズムの例は後述する。細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。細胞膜付近インスリン情報生成手段124の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0038】
リン酸化インスリン情報生成手段125は、ATP情報と、カルシウムイオン情報と、第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成する。リン酸化インスリン情報生成手段125が第三インスリン情報を生成するアルゴリズムの例は後述する。リン酸化インスリン情報生成手段125は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。リン酸化インスリン情報生成手段125の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0039】
活性化インスリン情報生成手段126は、カルシウムイオン情報と、第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する。活性化インスリン情報生成手段126は、カルシウムイオン情報と、第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成し、当該第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成しても良い。活性化インスリン情報生成手段126は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。活性化インスリン情報生成手段126の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0040】
出力部13は、インスリン生成部12が生成したインスリン情報を出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信等を含む概念である。出力部13のインスリン情報の出力例は後述する。出力部13は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部13は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0041】
次に、シミュレーション装置の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
【0042】
(ステップS201)受付部11は、グルコース情報を受け付けたか否かを判断する。グルコース情報を受け付ければステップS202に行き、グルコース情報を受け付けなければステップS201に戻る。
【0043】
(ステップS202)ATP情報取得手段121は、ATP情報を取得する。ATP情報を取得する技術については、上記の非特許文献1で開示されており、公知技術であるので、その詳細は省略する。
【0044】
(ステップS203)カルシウムイオン情報取得手段122は、カルシウムイオン情報を取得する。カルシウムイオン情報を取得する技術については、上記の非特許文献1で開示されており、公知技術であるので、その詳細は省略する。
【0045】
(ステップS204)ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、ステップS201で受け付けたグルコース情報に基づいて、インスリン生合速度を示す情報であるインスリン生合速度情報を生成する。
【0046】
(ステップS205)ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、ステップS202で取得したATP情報と、ステップS203で取得したカルシウムイオン情報と、ステップS201で受け付けたグルコース情報と、ステップS204で生成したインスリン生合速度情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成する。
【0047】
(ステップS206)細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、ステップS202で取得したATP情報と、ステップS203で取得したカルシウムイオン情報と、ステップS205で生成した第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する。
【0048】
(ステップS207)リン酸化インスリン情報生成手段125は、ステップS202で取得したATP情報と、ステップS203で取得したカルシウムイオン情報と、ステップS206で生成した第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成する。
【0049】
(ステップS208)活性化インスリン情報生成手段126は、ステップS203で取得したカルシウムイオン情報と、ステップS207で生成した第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成する。
【0050】
(ステップS209)活性化インスリン情報生成手段126は、ステップS208で生成した第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成する。
【0051】
(ステップS210)出力部13は、ステップS209で生成したインスリン情報を出力する。
【0052】
なお、図2のフローチャートにおいて、例えば、ステップS205からステップS208の処理を、一度に算出しても良い。
【0053】
また、図2のフローチャートにおいて、出力するインスリン情報は、インスリン分泌速度に関する情報でなくても良い。出力するインスリン情報は、例えば、インスリン分泌量でも良い。また、図2のフローチャートにおいて、出力部13は、インスリン情報以外の情報を出力しても良い。
【0054】
以下、本実施の形態におけるシミュレーション装置の具体的な動作について説明する。
【0055】
まず、受付部11は、グルコース情報を受け付ける。ここでは、グルコース情報は、例えば、細胞外グルコース濃度(glu)[単位:mM]である。
【0056】
次に、ATP情報取得手段121は、受付部11が受け付けたグルコース情報を利用して、ATP情報を取得し、所定のメモリ(変数)に一時格納する。ここでは、ATP情報は、細胞内ATP濃度(ATP)である。細胞内ATP濃度(ATP)を取得する技術は、非特許文献1に開示されている。
【0057】
次に、カルシウムイオン情報取得手段122は、受付部11が受け付けたグルコース情報を利用して、カルシウムイオン情報を取得し、所定のメモリ(変数)に一時格納する。ここでは、カルシウムイオン情報は、細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)である。細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)を取得する技術は、非特許文献1に開示されている。
【0058】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、細胞外グルコース濃度(glu)、インスリン生合成最大速度(Vmax)、インスリン生合成ミカエリス定数(K)、インスリン生合成ヒル係数(h)をパラメータとして、インスリン生合速度情報(Vsynthesis)を生成する。具体的には、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、受付部11が受け付けた細胞外グルコース濃度(glu)を読み出す。また、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、定数であるインスリン生合成最大速度(Vmax)、インスリン生合成ミカエリス定数(K)、インスリン生合成ヒル係数(h)を読み出す。そして、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、格納しているインスリン生合速度情報(Vsynthesis)の算出式(以下の数式1)に、読み出した細胞外グルコース濃度(glu)、インスリン生合成最大速度(Vmax)、インスリン生合成ミカエリス定数(K)、およびインスリン生合成ヒル係数(h)を代入し、インスリン生合速度情報(Vsynthesis)を算出する。
【数1】
JP0004940433B2_000002t.gif

【0059】
なお、ここで、インスリン生合速度情報(Vsynthesis)の単位は、[ng/islet/msec]である。また、インスリン生合成最大速度(Vmax)は、例えば、「2.43×10-5(ng/islet/msec)」である。また、インスリン生合成ミカエリス定数(K)は、例えば、「20(mM)」、インスリン生合成ヒル係数(h)は、例えば、「3.03」である。
【0060】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、ATP情報取得手段121が取得し、メモリ上に一時格納している細胞内ATP濃度(ATP)と、カルシウムイオン情報取得手段122が取得し、メモリ上に一時格納している細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)を読み出す。そして、細胞内ATP濃度(ATP)と、細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)と、受付部11が受け付けた細胞外グルコース濃度(glu)と、上記の数式1で生成したインスリン生合速度情報(Vsynthesis)に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成する。ここで、第一インスリン情報は、例えば、ゴルジ体付近のインスリン顆粒量D[単位:ng/iselet]である。ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、ゴルジ体付近のインスリン顆粒量Dをメモリ上に一時格納する。
【0061】
また、細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、メモリ上に一時格納されている細胞内ATP濃度(ATP)と、メモリ上に一時格納されている細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)と、ゴルジ体付近のインスリン顆粒量D(メモリ上に存在する)を読み出し、それらをパラメータとして、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する。ここで、第二インスリン情報は、例えば、細胞膜付近のインスリン顆粒量S[単位:ng/iselet]である。細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、細胞膜付近のインスリン顆粒量Sをメモリ上に一時格納する。
【0062】
また、リン酸化インスリン情報生成手段125は、メモリ上の細胞内ATP濃度(ATP)と、メモリ上の細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)と、メモリ上の細胞膜付近のインスリン顆粒量Sを読み出し、それらをパラメータとして、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成する。ここで、第三インスリン情報は、例えば、リン酸化されたインスリン顆粒量P[単位:ng/iselet]である。リン酸化インスリン情報生成手段125は、リン酸化されたインスリン顆粒量Pをメモリ上に一時格納する。
【0063】
また、活性化インスリン情報生成手段126は、メモリ上の細胞内カルシウムイオン濃度(Ca)と、メモリ上のリン酸化されたインスリン顆粒量Pを読み出し、それらをパラメータとして、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成する。ここで、第四インスリン情報は、例えば、活性化されたインスリン顆粒量A[単位:ng/iselet]である。活性化インスリン情報生成手段126は、活性化されたインスリン顆粒量Aをメモリ上に一時格納する。
【0064】
なお、上記のゴルジ体付近のインスリン顆粒量D、細胞膜付近のインスリン顆粒量S、リン酸化されたインスリン顆粒量P、活性化されたインスリン顆粒量Aは、それぞれ、数式2、数式3、数式4、数式5の微分方程式により算出できる。つまり、インスリン生成部12は、下記の数式2、数式3、数式4、数式5の微分方程式を示す情報を格納しており、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123、細胞膜付近インスリン情報生成手段124、リン酸化インスリン情報生成手段125、および活性化インスリン情報生成手段126は、ぞれぞれ下記の微分方程式の情報を読み出し、取得したパラメータを微分方程式に代入し、対応する情報(インスリン顆粒量D、S、P、A)を算出し、メモリ上に一時格納する。なお、微分方程式を解く手法は、公知技術であるので、詳細な説明は省略する。
【数2】
JP0004940433B2_000003t.gif
【数3】
JP0004940433B2_000004t.gif
【数4】
JP0004940433B2_000005t.gif
【数5】
JP0004940433B2_000006t.gif

【0065】
上記の数式において、α、およびαは、ATP・カルシウム依存的移動速度定数である。また、好ましくは、αは、「5.14×10-4(1/msec/mMATP/mMCa1.4)」である。また、好ましくは、αは、「1.05×10-4(1/msec/mMATP/mMCa)」である。
【0066】
また、βは、ATP依存的結合速度定数である。また、好ましくは、βは、「6.70×10-3(1/msec/mMATP)」である。
【0067】
また、βは、解離速度定数である。また、好ましくは、βは、「5.00×10-2(1/msec)」である。
【0068】
また、γは、カルシウム依存的結合速度定数である。また、好ましくは、γは、「2.31×10-1(1/msec/mM Ca)」である。
【0069】
さらに、γは、解離速度定数である。また、好ましくは、γは、「2.86×10-4(1/msec)」である。
【0070】
また、上記α、α、β、β、γ、γは、インスリン生成部12が予め格納しており、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123、細胞膜付近インスリン情報生成手段124、リン酸化インスリン情報生成手段125、および活性化インスリン情報生成手段126は、適宜、読み出して、上記微分方程式に代入して、利用する。
【0071】
なお、さらに具体的には、インスリン生成部12は、以下のように、コンピュータによる処理を行う。インスリン生成部12は、t=0の際のD(D)、S(S)、P(P)、A(A)の値を予め格納している。そして、例えば、tを「0.01秒」ごとに変化させ、dD(Dの増加量)、dS(Sの増加量)、dP(Pの増加量)、dA(Aの増加量)を算出する。例えば、インスリン生成部12は、「t=0.01」と取得し、最初のdDを「(Vsynthesis-α・D・ATP・Ca1.4+α・S・ATP・Ca)×0.01」により算出する。そして、インスリン生成部12は、0.01秒のD(D)を「D+dD」により算出する。さらに、2番目のdD(「t=0.02」の場合のdD)を「(Vsynthesis-α・D・ATP・Ca1.4+α・S・ATP・Ca)×0.01(dt)」により算出する。この場合、Sは、数式3の処理により既に求めている。そして、インスリン生成部12は、0.02秒のD(D)を「D+dD」により算出する。そして、インスリン生成部12は、tを0.01ずつ増加させながら、次々にdDを求め、D、D、D、・・・とDまで算出する。つまり、インスリン生成部12は、tを所定値ずつ増加させながら、ループ処理内で「(Vsynthesis-α・Dn-1・ATP・Ca1.4+α・Sn-1・ATP・Ca)×所定値」(nは、ループ処理回数)の演算を実行し、dDを算出し、Dを「Dn-1+dD」により算出する。かかる場合、Vsynthesis、α、Dn-1、ATP、Ca、α、Sn-1は、上記演算前には、メモリに一時格納されているので、読み出して、上記演算式に代入して、演算を実行する。インスリン生成部12は、Dの算出と同様のコンピュータ処理により、S、P、Aの算出を行う。
【0072】
なお、微分方程式のコンピュータにおける演算処理は、下記のように行う。つまり、(dX/dt=演算式)の場合、演算式を算出するためのパラメータの初期値(数式2で言うαやDやSなど)を予め格納している。そして、処理部(例えば、インスリン生成部12)は、パラメータの初期値を読み出し、かつdt(例えば、0.01)を取得し(dtは予め決められている)、dXを算出する。そして、格納しているXを読み出し、「X=X+dX」により、次の(t=0.01の時の)X(X)を算出する。そして、処理部は、同様に、演算式の一つ前のパラメータの値を用いて、次のdXを算出し、次のdXと前のXを加算し、次のXを算出する。以上の処理を繰り返すことにより、0.01(秒)ごとのXの値を得ることができる。以下に述べる微分方程式も、上記のループ処理により、コンピュータ内で結果が得られる。
【0073】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、活性化されたインスリン顆粒量Aをパラメータとして、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成する。ここで、インスリン情報は、インスリン分泌速度(Vsecretion)である。また、インスリン分泌速度の単位は、(ng/islet/msec)である。そして、具体的には、インスリン分泌速度(Vsecretion)は、数式6により算出できる。活性化インスリン情報生成手段126は、数式6に示す演算式の情報を格納しており、その演算式の情報を読み出し、メモリ上の活性化されたインスリン顆粒量A、および予め格納しているδを用いて、インスリン分泌速度(Vsecretion)を算出する。
【数6】
JP0004940433B2_000007t.gif

【0074】
なお、δは、インスリン分泌速度定数である。また、好ましくは、δは、「1.00×10-3(1/msec)」である。
【0075】
次に、出力部13は、インスリン分泌速度(Vsecretion)等を出力する。インスリン分泌速度(Vsecretion)等の出力例を図3に示す。図3において、受け付けたグルコース情報は、細胞外グルコース濃度「8.3mmol/L」であり、本シミュレーション装置を5分間、動作させたシミュレーションの結果を示す。図3において、横軸は、時間であり、縦軸はインスリン顆粒量またはインスリン分泌速度である。また、図3において、(a)は、累積インスリン分泌量、(b)は、インスリン分泌速度、(c)は、細胞膜付近のインスリン顆粒量、(d)は、活性化されたインスリン顆粒量、(e)は、ゴルジ体付近のインスリン顆粒量、(f)は、リン酸化されたインスリン顆粒量である。
【0076】
なお、出力部13は、インスリン分泌速度(Vsecretion)以外の情報を出力しても良い。かかる場合の出力例を図4に示す。図4において、細胞膜電位、イオン電流、チャネル開口確率、細胞質でのCa2+濃度、ATP濃度、ADP濃度、インスリン分泌、ミトコンドリアおよび小胞体でのCa2+濃度、インスリン分泌速度が出力されている。図4において、細胞膜電位等のインスリン情報以外の情報は、非特許文献1でシミュレーションできている情報であり、その出力方法の詳細の説明は省略する。
【0077】
以上、本実施の形態によれば、グルコース受容からインスリン分泌をシミュレーションできる。
【0078】
なお、本実施の形態によれば、上記の数式は、好適な数式であるが、インスリン分泌をシミュレーションできる他の数式でも良いことは言うまでもない。つまり、本シミュレーション装置は、グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成部と、前記インスリン生成部が生成したインスリン情報を出力する出力部と、を具備するシミュレーション装置であれば良い。例えば、上記の算出式のパラメータの一部が異なっていても良い。
【0079】
また、本実施の形態によれば、インスリン生成部は、上述したゴルジ体付近インスリン情報生成手段と、細胞膜付近インスリン情報生成手段と、リン酸化インスリン情報生成手段と、活性化インスリン情報生成手段を具備する構成が好適である。つまり、本シミュレーション装置は、4つのインスリンの状態をモデル化したことにより、精度高くインスリンの分泌に関してシミュレーションできるものである。本モデルを図5に示す。図5において、インスリンは、ゴルジ体付近のインスリン(D)、細胞膜付近のインスリン(S)、リン酸化したインスリン(P)、活性化したインスリン(A)と、その状態が変化する。なお、図5において、αなどのパラメータは、上記数式におけるパラメータと同じである。
【0080】
さらに、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD-ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。なお、本実施の形態におけるシミュレーション装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、グルコースに関する情報であるグルコース情報を受け付ける受付ステップと、前記受付ステップで受け付けたグルコース情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成ステップと、前記インスリン生成ステップで生成したインスリン情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラム、である。
【0081】
また、上記プログラムの前記インスリン生成ステップは、産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得ステップと、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得するカルシウムイオン情報取得ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成ステップと、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成ステップと、を具備することは好適である。
【0082】
さらに、前記活性化インスリン情報生成ステップは、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成し、当該第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度に関する情報であるインスリン情報を生成することは好適である。
(実施の形態2)
【0083】
図6は、本実施の形態におけるシミュレーション装置のブロック図である。本シミュレーション装置は、受付部61、インスリン生成部62、出力部63を具備する。
【0084】
インスリン生成部62は、カリウムイオン生成手段621、カルシウムイオン生成手段622、ATP情報取得手段121、カルシウムイオン情報取得手段623、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123、細胞膜付近インスリン情報生成手段124、リン酸化インスリン情報生成手段125、活性化インスリン情報生成手段126を具備する。
【0085】
受付部61は、グルコース情報と、SU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付ける。SU剤情報とは、例えば、SU剤のSURに対する解離定数(K)や、SU剤の細胞外濃度やSU剤の名称やIDである。受付部61は、入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。受付部61は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。なお、SU剤の一例として、トルブタミドがある。
【0086】
インスリン生成部62は、受付部61が受け付けたグルコース情報と、SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する。インスリン生成部62は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。インスリン生成部の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0087】
カリウムイオン生成手段621は、受付部61が受け付けたSU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成する。カリウムイオン生成手段621は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。カリウムイオン生成手段621の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0088】
カルシウムイオン生成手段622は、カリウムイオン生成手段621が生成したカリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成する。カルシウムイオン生成手段622は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。カルシウムイオン生成手段の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0089】
カルシウムイオン情報取得手段623は、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を取得する。カルシウムイオン情報取得手段623は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。カルシウムイオン情報取得手段623の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0090】
出力部63は、インスリン生成部62が生成したインスリン情報を出力する。また、出力部63は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を出力する。副作用情報は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である。副作用情報は、例えば、SU剤暴露時間に対応する細胞内のインスリン量を示す情報であるSU剤対応インスリン量情報を含む。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信等を含む概念である。出力部63は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0091】
次に、シミュレーション装置の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
(ステップS701)受付部61は、グルコース情報、およびSU剤情報を受け付けたか否かを判断する。グルコース情報等を受け付ければステップS702に行き、グルコース情報等を受け付けなければステップS701に戻る。
【0093】
(ステップS702)カリウムイオン生成手段621は、ステップS701で受け付けたSU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成する。
【0094】
(ステップS703)カルシウムイオン生成手段622は、ステップS702で生成したカリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成する。
【0095】
(ステップS704)カルシウムイオン情報取得手段623は、ステップS703で生成したカルシウムイオン情報を取得する。
【0096】
(ステップS705)出力部63は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報(例えば、SU剤対応インスリン量情報など)を取得する。
【0097】
(ステップS706)出力部63は、ステップS705で取得した副作用情報を出力する。処理を終了する。
【0098】
なお、図7のフローチャートにおいて、副作用情報の出力態様は、種々考えられる。副作用情報の出力態様の具体例は、後述する。
【0099】
また、図7のフローチャートにおいて、出力するインスリン情報は、インスリン分泌速度に関する情報でなくても良い。出力するインスリン情報は、例えば、インスリン分泌量でも良い。また、図7のフローチャートにおいて、出力部63は、インスリン情報、副作用情報以外の情報を出力しても良い。
【0100】
以下、本実施の形態におけるシミュレーション装置の具体的な動作について説明する。
【0101】
まず、受付部61は、グルコース情報、SU剤情報を受け付ける。ここでは、例えば、グルコース情報は、細胞外グルコース濃度(glu)[単位:mM]である。また、例えば、SU剤情報は、SU剤のSURに対する解離定数(K)や細胞外SU濃度(C)[単位:nM]である。解離定数(K)の単位は、[単位:nM]である。
【0102】
次に、カリウムイオン生成手段621は、受け付けた解離定数(K)に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成する。具体的には、例えば、カリウムイオン生成手段621は、数式7の算出式に基づいて、カリウムイオン情報を生成する。ここで、カリウムイオン情報は、細胞内のカリウムのKATPチャネル透過率(E)である。つまり、カリウムイオン生成手段621は、数式7の演算式の情報を格納している。また、カリウムイオン生成手段621は、受付部61が受け付けた解離定数(K)を取得する。また、カリウムイオン生成手段621は、格納している細胞内カリウムのKATPチャネル最大透過率「Emax」、細胞内カリウムのKATPチャネル透過ヒル係数「m」、細胞外SU剤濃度「C」、「K」と「K0.5」の変換係数「a」、「K」と「K0.5」の変換係数「b」を、それぞれ読み出す。そして、カリウムイオン生成手段621は、演算式の情報を読み出し、取得した値(K、Emax、m、C、a、b)を、当該演算式に代入し、細胞内のカリウムのKATPチャネル透過率(E)を算出する。なお、演算式の情報を格納しており、当該演算式の情報を読み出し、当該演算式の変数に値を代入し、結果を得る処理は公知技術である。
【数7】
JP0004940433B2_000008t.gif

【0103】
なお、数式7において、「Emax」は、細胞内カリウムのKATPチャネル最大透過率である。「Emax」は、具体的には、例えば、「1」である。
【0104】
また、数式7において、「m」は、細胞内カリウムのKATPチャネル透過ヒル係数である。mは、具体的には、例えば、「1」である。
【0105】
また、数式7において、「C」は、細胞外SU剤濃度である。Cの単位は、[nM]である。
【0106】
また、数式7において、「a」は、「K」と「K0.5」の変換係数であり、その値は、例えば、「0.828」である。
【0107】
さらに、「b」は、「K」と「K0.5」の変換係数であり、その値は、例えば、「0.725」である。
【0108】
次に、カルシウムイオン生成手段622は、生成したKATPチャネル透過率(E)に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成する。ここで、カルシウムイオン情報は、細胞内カルシウム濃度(Ca)である。具体的には、例えば、カルシウムイオン生成手段622は、以下の数式8から数式16により、細胞内カルシウム濃度(Ca)を算出する。カルシウムイオン生成手段622は、KATPチャネル最大コンダクタンスを予め格納している。そして、カルシウムイオン生成手段622は、KATPチャネル最大コンダクタンスの値を読み出し、当該読み出したKATPチャネル最大コンダクタンスの値と、生成したKATPチャネル透過率(E)を、数式8に代入し、KATPチャネルコンダクタンスを得る。
【0109】
なお、カルシウムイオン生成手段622は、予め数式8から数式16の演算式の情報を格納しており、それらを適宜読み出して、演算を行う。
【数8】
JP0004940433B2_000009t.gif

【0110】
なお、数式8において、KATPチャネルコンダクタンス、KATPチャネル最大コンダクタンスの単位は、[ns]であり、KATPチャネル最大コンダクタンスは、例えば、定数「70[ns]」である。
【数9】
JP0004940433B2_000010t.gif

【0111】
なお、数式9において、IKATPは、KATPチャネル透過電流である。また、OKATPは、KATPチャネル開口確率である。また、Vは、細胞膜電位である。さらに、Vは、カリウムチャネルのKイオンの逆転電位である。
【0112】
数式9は、以下の現象を示す。つまり、ある瞬間(時間Tとする)において、SU剤によってKATPチャネルコンダクタンスが減少すると、数式9によりKATPチャネル透過電流IKATPが減少する。カルシウムイオン生成手段622は、KATPチャネル開口確率(OKATP)、カリウムチャネルのKイオンの逆転電位(V)を格納しており、かかる値を読み出す。そして、カルシウムイオン生成手段622は、以下の数式10により細胞膜電位(V)を算出する。カルシウムイオン生成手段622は、算出したKATPチャネルコンダクタンス、細胞膜電位(V)、読み出したOKATP、Vを、数式9の演算式に代入し、KATPチャネル透過電流(IKATP)を得る。なお、カルシウムイオン生成手段622は、数式9の演算式の情報を読み出し、演算を行う。
【数10】
JP0004940433B2_000011t.gif

【0113】
なお、数式10において、Cは、定数であり、コンダクタンスである。また、IKdrは、遅延整流Kイオン電流である。また、ICafは、"速い(fast)"電位依存性Caチャネル透過電流である。また、ICasは、"遅い(slow)"電位依存性Caチャネル透過電流である。さらに、INSは、非選択性カチオン電流である。カルシウムイオン生成手段622は、「dV=(-(IKdr+IKATP+ICaf+ICas+INS)×dt)/C」によりdV(Vの変化分)を算出する。カルシウムイオン生成手段622は、dVを算出する場合に、前のIKdr、IKATP、ICaf、ICas、INSと、格納しているコンダクタンス(C)を用いて、上記の演算式に代入する。そして、「V=前のV+dV」により、次のVを算出する。
【0114】
また、IKdrおよびINSは、Vによって変化する変数であり、その算出方法は、非特許文献1に記載されている。
【0115】
数式10は、以下の現象を示す。つまり、IKATPが減少すると、膜電位変化速度dV/dtは増加する。なお、膜電位変化速度dV/dtが増加すると、脱分極が早く発生することとなる。
【0116】
そして、次の瞬間(時間T+dtとする)において、膜電位VはV+dVとなり、V自体が増加する。
【数11】
JP0004940433B2_000012t.gif
【数12】
JP0004940433B2_000013t.gif

【0117】
数式11、12より、Vが増加すると、"速い(fast)"電位依存性Caチャネル透過電流ICaf、"遅い(slow)"電位依存性Caチャネル透過電流ICasが増加する。
【0118】
なお、数式11、12において、(gcaバー)は、Caチャネルコンダクタンス、Fはファラデー定数、Vは細胞膜電位、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
【数13】
JP0004940433B2_000014t.gif

【0119】
なお、数式13において、fは、細胞質中非結合型Ca分率である。αは、Ca電流からCa膜透過速度への変換係数である。γは、ミトコンドリア内濃度から細胞質内濃度への変換係数である。Juniは、ユニポーターによる細胞質からミトコンドリアへのCa移動速度である。JNA+/Ca2+は、Na/Ca交換機転によるミトコンドリアから細胞質へのCa移動速度である。kCaは、細胞質内Ca除去速度定数である。
【0120】
数式13により、ICaf、ICasが増加すると、細胞内Ca濃度変化速度d[Ca2+/dtが増加する。
【0121】
さらに、次の瞬間(時間T+2dtとする)において、細胞内Ca濃度[Ca2+は[Ca2++d[Ca2+となり、[Ca2+自体が増加する。なお、添え字の「i」(fや[Ca2+のi)は、細胞内(internal)を意味する。
【0122】
また、数式11にある"速い"電位依存性Caチャネルの"開(open)"確率Oは、"閉(closed)"確率Cと"不活性(Ca-bound)"確率Bに左右される。さらに、数式12のOは、"遅い"電位依存性Caチャネルの"開(open)"確率である。
【0123】
ここで、Cは、数式14、15より、膜電位Vの変化に伴って変化する。Bは、数式15、16より、膜電位Vの変化に伴って変化する。また、数式12中のOsは数式17のとおり膜電位Vと"遅い"電位依存性Caチャネル不活性化率Jに左右される。また、Jは、数式18、19、20より、膜電位Vの変化に伴って変化する。
【数14】
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【数15】
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【数16】
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【数17】
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【数18】
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【数19】
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【数20】
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【0124】
なお、上記数式9から数式19は、上記の非特許文献1に記載されている。
【0125】
また、上記のK-1は、確率Ofから確率Cへの遷移速度定数である。K+1は、確率Cから確率Ofへの遷移速度定数である。K-2は、カルシウム結合型確率Oに対するカルシウム乖離速度定数である。K+2は、確率Oに対するカルシウム乖離速度定数である。K-3は、確率Bからカルシウム結合型確率Oへの遷移速度定数である。K+3は、カルシウム結合型確率Oから確率Bへの遷移速度定数である。
【0126】
また、上記数式20は、公知の算出式である。上記のTおよびTminは各々,"遅い(slow)"電位依存性Caチャネルの最大及び最小不活性化時間である。数値は、例えば、「T=50000msec」「Tmin=1500msec」」である。
【0127】
次に、カルシウムイオン情報取得手段623は、算出した細胞内カルシウム濃度(Ca)を取得する。
【0128】
次に、ATP情報取得手段121は、ATP情報を取得する。ここでは、ATP情報は、細胞内ATP濃度(ATP)である。
【0129】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、上記の数式1により、インスリン生合速度情報(Vsynthesis)を算出する。
【0130】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123、細胞膜付近インスリン情報生成手段124、リン酸化インスリン情報生成手段125、活性化インスリン情報生成手段126は、数式2、数式3、数式4、数式5の微分方程式により、それぞれの状態のインスリン顆粒量を算出する。
【0131】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、活性化されたインスリン顆粒量Aをパラメータとして、インスリン分泌速度(Vsecretion)を生成する。具体的には、活性化インスリン情報生成手段126は、インスリン分泌速度(Vsecretion)を、数式6により算出する。
【0132】
次に、出力部63は、インスリン分泌速度(Vsecretion)を出力する。インスリン分泌速度(Vsecretion)の出力例を図3に示す。なお、図3において、横軸は、時間である。
【0133】
なお、出力部63は、インスリン分泌速度(Vsecretion)以外の情報を出力しても良い。かかる場合の出力例を図4に示す。
【0134】
さらに、出力部63は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を取得する。ここで、副作用情報は、時間とともに変化している細胞内インスリン量の時系列の情報である。
【0135】
そして、出力部63は、取得した副作用情報を出力する。副作用情報の出力例を図8、図9に示す。図8は、インスリン分泌速度に対するSU剤濃度依存性を、様々なSU剤でシミュレーションしたイメージを示す。図8において、SU剤のSURに対する解離定数(Kd)が分かっている場合に、細胞外SU濃度に応じたインスリン分泌促進作用を予測できる可能性のあることを示す。また、図9は、SU剤暴露時のインスリン分泌速度及び、細胞内インスリン含量の時間推移を示す。図9において、SU剤を長時間暴露する場合に、最初はインスリン分泌が促進されるが細胞内インスリン含量の減少に伴ってインスリン分泌速度が低下し始めるような副作用が生じる可能性のあることを示す。
【0136】
以上、本実施の形態によれば、SU剤の投入によるインスリン分泌をシミュレーションできる。また、SU剤の投入による副作用に関してシミュレーションできる。
【0137】
また、本実施の形態によれば、SU剤情報(例えば、SU剤の濃度)と、グルコース情報(例えば、SU剤の受容体に対する解離定数)を入力すれば、細胞内の各種イオン変化・インスリン顆粒の状態推移・細胞外へのインスリン分泌に対するSU剤の効果をシミュレーションできる。これによって薬理試験の例数削減・SU剤によるインスリン枯渇等の副作用等を事前に予測可能となり、SU剤の開発上非常に有効なツールとなり得る。
【0138】
また、本実施の形態によれば、臨床現場での糖尿病患者へのSU剤投与の効果、およびSU剤の効果的な投与方法など、薬物による糖尿病の治療方針を決定するうえで参考となる有用な情報を提供できる。
【0139】
なお、本実施の形態によれば、受付部61が受け付けるSU剤情報は、SU剤のSURに対する解離定数や細胞外SU濃度であった。
【0140】
また、本実施の形態における上記の数式7から数式20の演算式は好適な例であり、SU剤の投入によるインスリン分泌をシミュレーションできれば、他の演算式でも良い。他の演算式は、例えば、数式7から数式20の演算式のパラメータを、若干、修正した式等である。つまり、本実施の形態において、シミュレーション装置は、グルコース情報と、投入するSU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付ける受付部と、前記グルコース情報と、前記SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成部と、前記インスリン生成部が生成したインスリン情報を出力する出力部と、を具備するシミュレーション装置であれば良い。
【0141】
さらに、本実施の形態によれば、出力部における出力態様は、図3、図4、図8、図9に限られないことは言うまでもない。
【0142】
さらに、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD-ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。なお、本実施の形態における情報処理装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、グルコース情報と、投入するSU剤に関する情報であるSU剤情報を受け付ける受付ステップと、前記グルコース情報と、前記SU剤情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成するインスリン生成ステップと、前記インスリン生成ステップで生成したインスリン情報を出力する出力ステップを実行させるためのプログラムである。
【0143】
また、上記プログラムにおいて、インスリン生成ステップは、前記SU剤情報に基づいて、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報を生成するカリウムイオン生成ステップと、前記カリウムイオン情報に基づいて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報を生成するカルシウムイオン生成ステップと、産生されるATPに関する情報であるATP情報を取得するATP情報取得ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記グルコース情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成するゴルジ体付近インスリン情報生成ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第一インスリン情報に基づいて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する細胞膜付近インスリン情報生成ステップと、前記ATP情報と、前記カルシウムイオン情報と、前記第二インスリン情報に基づいて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成するリン酸化インスリン情報生成ステップと、前記カルシウムイオン情報と、前記第三インスリン情報に基づいて、活性化されたインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する活性化インスリン情報生成ステップと、を具備する、ことは好適である。
【0144】
また、上記プログラムにおいて、前記出力ステップは、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報を出力する、ことは好適である。なお、前記副作用情報は、例えば、SU剤暴露時間に対応する細胞内のインスリン量を示す情報であるSU剤対応インスリン量情報を含む。
(実施の形態3)
【0145】
図1は、本実施の形態におけるシミュレーション装置のブロック図である。本シミュレーション装置において、具体的なシミュレーションを行った結果について、以下に述べる。
【0146】
まず、受付部11は、0~20mmol/Lの間を所定の値(例えば、1mmol/L)ごとに変化する細胞外グルコース濃度の情報(グルコース情報の一例)を、順次、受け付ける、とする。
【0147】
次に、インスリン生成部12は、受付部11が受け付けた細胞外グルコース濃度の情報に基づいて、分泌されるインスリンに関する情報であるインスリン情報を生成する。ここで、インスリン情報は、インスリン分泌速度である。
【0148】
以下、細胞外グルコース濃度の情報を受け付け、インスリン分泌速度を取得するまでの処理の詳細について述べる。
【0149】
まず、ATP情報取得手段121は、細胞内ATP濃度(ATP情報の一例)を取得し、所定のメモリ(変数)に一時格納する。また、図示しない手段によりADP濃度も取得し、所定のメモリ(変数)に一時格納する、とする。なお、ADP濃度を取得する技術は、公知技術(非特許文献1に記載)である。また、本実施の形態において、非特許文献1に記載されている近似式([細胞内ATP濃度]=2(mmol/L)-[細胞内ADP濃度])により、細胞内ADP濃度を取得している。
【0150】
次に、カルシウムイオン情報取得手段122は、細胞内に流入するCa2+の濃度であるカルシウムイオン濃度(カルシウムイオン情報の一例)を取得し、所定のメモリ(変数)に一時格納する。
【0151】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、実施の形態1で述べたように、数式1を用いて、細胞外グルコース濃度に基づいて、インスリン生合速度情報を生成する。そして、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、実施の形態1で述べたように、細胞内ATP濃度、カルシウムイオン濃度、細胞外グルコース濃度、インスリン生合速度情報を用いて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報を生成する。
【0152】
次に、細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、実施の形態1で述べたように、細胞内ATP濃度、カルシウムイオン濃度、第一インスリン情報を用いて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する。
【0153】
次に、リン酸化インスリン情報生成手段125は、実施の形態1で述べたように、細胞内ATP濃度、カルシウムイオン濃度、第二インスリン情報を用いて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成する。
【0154】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、実施の形態1で述べたように、カルシウムイオン濃度、第三インスリン情報を用いて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成する。
【0155】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、実施の形態1で述べたように、第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度を得る。
【0156】
そして、出力部13は、ATP情報取得手段121が取得した細胞内ATP濃度、図示しない手段が取得したADP濃度、カルシウムイオン情報取得手段122が取得したカルシウムイオン濃度、およびインスリン分泌速度を、細胞外グルコース濃度と対応付けてグラフ出力する。かかるグラフ出力した図が、図11である。
【0157】
図11(a)(b)において、横軸が細胞外グルコース濃度(mmol/L)である。また、図11(a)において、横軸に、細胞内ATP濃度、細胞内ADP濃度、およびインスリン分泌速度をとっている。図11(b)において、横軸に、細胞内カルシウムイオン濃度、およびインスリン分泌速度をとっている。
【0158】
また、図11(a)において、細胞内ATP濃度、細胞内ADP濃度は実線、インスリン分泌速度は破線で示される。また、図11(b)において、細胞内カルシウムイオン濃度は実線、およびインスリン分泌速度は破線で示される。
【0159】
図11によれば、インスリン分泌速度はグルコース濃度が6 mmol/L程度を境に変化していることが分かる。かかるシミュレーション結果は、上記、非特許文献5の文献データを良好に再現している。また、図11によれば、低濃度のグルコース条件下ではインスリン分泌はATPとCa2+に依存し,高濃度ではCa2+依存性が増加すると推定される。
【0160】
以上、本実施の形態によれば、本シミュレーション装置が実現する膵β細胞モデルのグルコース依存的インスリン分泌は妥当であると、考えられる。
(実施の形態4)
【0161】
図6は、本実施の形態におけるシミュレーション装置のブロック図である。本シミュレーション装置において、具体的なシミュレーションを行った結果について、以下に述べる。
【0162】
まず、受付部61は、10 mmol/Lの細胞外グルコース濃度の情報(グルコース情報の一例)と、50μmol/Lのトルブタミド濃度(SU剤情報の一例)を受け付ける、とする。
【0163】
次に、カリウムイオン生成手段621は、トルブタミド濃度(50μmol/L)に基づいて、実施の形態2で述べた処理により、細胞内に流入するKに関する情報であるカリウムイオン情報(ここでは、細胞内のカリウムのKATPチャネル透過率(E))を生成する。
【0164】
次に、カルシウムイオン生成手段622は、カリウムイオン情報を用いて、細胞内に流入するCa2+に関する情報であるカルシウムイオン情報(ここでは、細胞内カルシウム濃度(Ca))を生成する。
【0165】
次に、カルシウムイオン情報取得手段623は、生成したカルシウムイオン情報(細胞内カルシウム濃度(Ca))を取得する。
【0166】
そして、ATP情報取得手段121は、ATP情報(ここでは、細胞内ATP濃度(ATP))を取得する。
【0167】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、上記の数式1により、細胞外グルコース濃度に基づいて、インスリン生合速度を示す情報であるインスリン生合速度情報(Vsynthesis)を生成する。
【0168】
次に、ゴルジ体付近インスリン情報生成手段123は、実施の形態1で述べた処理により、ATP情報(細胞内ATP濃度)と、カルシウムイオン情報(カルシウムイオン濃度)と、グルコース情報(細胞外グルコース濃度)と、インスリン生合速度情報に基づいて、ゴルジ体付近で分泌されるインスリンに関する情報である第一インスリン情報(ゴルジ体付近のインスリン顆粒量D)を生成する。
【0169】
次に、細胞膜付近インスリン情報生成手段124は、実施の形態1で述べた処理により、細胞内ATP濃度、カルシウムイオン濃度、第一インスリン情報(ゴルジ体付近のインスリン顆粒量D)を用いて、細胞膜付近でのインスリンに関する情報である第二インスリン情報を生成する。
【0170】
次に、リン酸化インスリン情報生成手段125は、実施の形態1で述べた処理により、細胞内ATP濃度、カルシウムイオン濃度、第二インスリン情報を用いて、リン酸化されたインスリンに関する情報である第三インスリン情報を生成する。
【0171】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、実施の形態1で述べた処理により、カルシウムイオン濃度、第三インスリン情報を用いて、活性化されたインスリンに関する情報である第四インスリン情報を生成する。
【0172】
次に、活性化インスリン情報生成手段126は、実施の形態1で述べた処理により、第四インスリン情報に基づいて、インスリン分泌速度を得る。
【0173】
そして、出力部63は、例えば、図12(a)、(b)、(c)、(d)のグラフを出力する。
【0174】
図12(a)の「トルブタミド添加時」のグラフは、細胞外グルコース濃度が10 mmol/L、かつSU剤情報(トルブタミドが50μmol/L)が存在する場合(かかる情報を受付部61が受け付けた場合)のインスリン分泌速度(A)の20時間の中での変化を示すグラフである。また、図12(a)の「コントロール」のグラフは、受付部61が細胞外グルコース濃度「10mmol/L」を受け付け、かつSU剤情報(トルブタミドが0μmol/L)を受け付けた場合のインスリン分泌速度(A)の20時間の中での変化を示すグラフである。
【0175】
図12(b)の「トルブタミド添加時」のグラフは、細胞外グルコース濃度が10 mmol/L、かつSU剤情報(トルブタミドが50μmol/L)が存在する場合(かかる情報を受付部61が受け付けた場合)の細胞内インスリン量(B)の20時間の中での変化を示すグラフである。また、図12(a)の「コントロール」のグラフは、受付部61が、細胞外グルコース濃度「10mmol/L」を受け付け、かつSU剤情報(トルブタミドが0μmol/L)を受け付けた場合の細胞内インスリン量(B)の20時間の中での変化を示すグラフである。
【0176】
図12(c)の「トルブタミド前処理」のグラフは、20時間値を初期値とし、SU剤情報のトルブタミドを0μmol/L、細胞外グルコース濃度を0~20 mmol/Lに設定した時(受付部61が0~20の間の値を順次受け付けた時)のインスリン分泌速度(C)の変化を示すグラフである。図12(c)の「コントロール」のグラフは、20時間値を初期値とし、SU剤情報のトルブタミドを0μmol/L、細胞外グルコース濃度を0~20 mmol/Lに設定した時(受付部61が0~20の間の値を順次受け付けた時)のインスリン分泌速度(C)の変化を示すグラフである。
【0177】
図12(d)の「トルブタミド前処理」および「コントロール」のグラフは、図12(c)の「トルブタミド前処理」および「コントロール」のインスリン分泌速度(C)を、それぞれ、細胞内インスリン量(Bの20時間値)で補正したグラフである。
【0178】
なお、出力部63は、SU剤の投入に対する副作用に関する情報である副作用情報(例えば、SU剤対応インスリン量情報など)を取得し、出力しても良い。
【0179】
以上、本実施の形態のシミュレーション結果によれば、トルブタミド非存在下に比べ、存在下の膵ランゲルハンス島(ラ氏島)では初期の急激なインスリン分泌速度上昇とその後の緩やかな低下が認められ、細胞内インスリン量も徐々に減少する傾向にあることが分かった。また、シミュレーション開始20時間後の細胞内インスリン量については、実験データ(別途取得したデータ)を良好に再現した(図12(b))。次に、20時間後の細胞内インスリン量を初期値とし、トルブタミド濃度を0μmol/L、グルコース濃度を0~20 mmol/Lに設定した時のインスリン分泌速度をシミュレーションした(図12(c)(d)).図12(c)にはインスリン分泌速度そのものを,図12(d)にはインスリン分泌速度を初期値で補正した値を示した。その結果、トルブタミド処理によってグルコース濃度依存的なインスリン分泌は全体的に低下するが,グルコースが6 mmol/L程度を境に分泌速度が変化するパターンはほとんど同一であることが示された(図12(c))。また、これらの分泌速度は細胞内インスリン量に比例することが分かった(図12(d))。これらのシミュレーション結果についても、実験データ(別途取得したデータ)を良好に再現できた。
【0180】
以上、本実施の形態によれば、実験データだけでは不明であったトルブタミドによるインスリン分泌速度促進・細胞内インスリン量低下の時間変化を,膵β細胞モデルによって定量的に理解できた(図12(a)(b))。また、その後の、トルブタミド除去時のグルコース濃度依存的なインスリン分泌速度が細胞内インスリン量に比例するという実験結果をシミュレーションでも良好に再現できたことから(図12(c)(d))、本シミュレータの妥当性と有用性が確認できた。
【0181】
また、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0182】
なお、上記各実施の形態において、シミュレーション装置が複数の装置によって分散処理される場合の態様の一つとして、サーバ装置と、クライアント装置により実現される場合がある。クライアント装置が、ユーザから入力されたグルコース情報または、グルコース情報とSU剤情報をサーバ装置に送信し、サーバ装置がかかる情報を受信し(受け付け)、サーバ装置がシミュレーションを行って、その結果をクライアント装置に送信(出力)し、クライアント装置がシミュレーションの結果を受信し、表示する、という態様である。
【0183】
また、図13は、本明細書で述べたプログラムを実行して、上述した種々の実施の形態のシミュレーション装置を実現するコンピュータの外観を示す。上述の実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムで実現され得る。図13は、このコンピュータシステム340の概観図であり、図14は、コンピュータシステム340のブロック図である。
【0184】
図13において、コンピュータシステム340は、FD(Flexible Disk)ドライブ、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブを含むコンピュータ341と、キーボード342と、マウス343と、モニタ344とを含む。
【0185】
図14において、コンピュータ341は、FDドライブ3411、CD-ROMドライブ3412に加えて、CPU(Central Processing Unit)3413と、CPU3413、CD-ROMドライブ3412及びFDドライブ3411に接続されたバス3414と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM(Read-Only Memory)3415と、CPU3413に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶するとともに一時記憶空間を提供するためのRAM(Random Access Memory)3416と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するためのハードディスク3417とを含む。ここでは、図示しないが、コンピュータ341は、さらに、LANへの接続を提供するネットワークカードを含んでも良い。
【0186】
コンピュータシステム340に、上述した実施の形態のシミュレーション装置の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM3501、またはFD3502に記憶されて、CD-ROMドライブ3412またはFDドライブ3411に挿入され、さらにハードディスク3417に転送されても良い。これに代えて、プログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ341に送信され、ハードディスク3417に記憶されても良い。プログラムは実行の際にRAM3416にロードされる。プログラムは、CD-ROM3501、FD3502またはネットワークから直接、ロードされても良い。
【0187】
プログラムは、コンピュータ341に、上述した実施の形態のシミュレーション装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティープログラム等は、必ずしも含まなくても良い。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいれば良い。コンピュータシステム340がどのように動作するかは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0188】
また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0189】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0190】
以上のように、本発明にかかるシミュレーション装置等は、グルコース受容からインスリン分泌をシミュレーションできる、という効果を有し、シミュレーション装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】実施の形態1におけるシミュレーション装置のブロック図
【図2】同シミュレーション装置の動作について説明するフローチャート
【図3】同出力例を示す図
【図4】同出力例を示す図
【図5】同インスリンの状態変化のモデルを示す図
【図6】実施の形態2におけるシミュレーション装置のブロック図
【図7】同シミュレーション装置の動作について説明するフローチャート
【図8】同出力例を示す図
【図9】同出力例を示す図
【図10】グルコース受容からインスリン分泌に至るまでの概念を説明した概念図
【図11】実施の形態3における出力例を示す図
【図12】実施の形態4における出力例を示す図
【図13】同シミュレーション装置を構成するコンピュータシステムの概観図
【図14】同シミュレーション装置を構成するコンピュータのブロック図
【符号の説明】
【0192】
11、61 受付部
12、62 インスリン生成部
13、63 出力部
121 ATP情報取得手段
122、623 カルシウムイオン情報取得手段
123 ゴルジ体付近インスリン情報生成手段
124 細胞膜付近インスリン情報生成手段
125 リン酸化インスリン情報生成手段
126 活性化インスリン情報生成手段
621 カリウムイオン生成手段
622 カルシウムイオン生成手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図13】
4
【図14】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13