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明細書 :環境中のアレルゲンの測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5558649号 (P5558649)
登録日 平成26年6月13日(2014.6.13)
発行日 平成26年7月23日(2014.7.23)
発明の名称または考案の名称 環境中のアレルゲンの測定方法及び装置
国際特許分類 C12Q   1/37        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C12Q 1/37
C12M 1/34 E
G01N 21/78 C
G01N 21/78 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2005-516358 (P2005-516358)
出願日 平成16年12月17日(2004.12.17)
国際出願番号 PCT/JP2004/018895
国際公開番号 WO2005/059166
国際公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
優先権出願番号 2003419346
優先日 平成15年12月17日(2003.12.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2012-008097(P2012-008097/J1)
審査請求日 平成19年5月7日(2007.5.7)
審判請求日 平成24年5月2日(2012.5.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】503464860
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 亜希
【識別番号】592187165
【氏名又は名称】鈴木 孝治
発明者または考案者 【氏名】本田 亜希
【氏名】鈴木 孝治
個別代理人の代理人 【識別番号】100088546、【弁理士】、【氏名又は名称】谷川 英次郎
参考文献・文献 特表2003-502641(JP,A)
特開2001-108685(JP,A)
特開平3-259096(JP,A)
特開平11-207118(JP,A)
特開平10-306025(JP,A)
Anal. Biochem.(1997) vol.252, no.1, p.71-77
調査した分野 C12Q 1/25-3/00
PubMed
JSTPlus(JDreamIII)
BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
環境中の生物由来アレルゲンの測定方法において、被測定物中のアレルゲンを、プロテアーゼの基質と接触させ、該アレルゲンのプロテアーゼ活性を測定することにより前記生物由来のアレルゲンを測定すること、かつ、前記基質が、酵素反応の結果、吸光度の変化をもたらす基質であって、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸又はオリゴペプチドがアミド結合した着色化合物であり、前記プロテアーゼ活性は、該基質の変色に基づき測定することを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記アレルゲンがダニ若しくはダニ由来物、又は花粉である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記花粉がスギ花粉である請求項2記載の方法。
【請求項4】
大気中、室内空気中、床、壁、窓、窓枠、敷物、寝具類、繊維製品、家具類、粉塵又はハウスダスト中のアレルゲンを測定する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基質が、支持体に担持され、被測定物を、該支持体と接触させる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記支持体が多孔性支持体である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記基質が、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸がアミド結合した着色化合物である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記着色色素がクレジルバイオレット、サフラニンO又はメチレンバイオレット3RAXである請求項7記載の方法。
【請求項9】
環境中の生物由来アレルゲンの測定器具であって、多孔性支持体中に、前記アレルゲンが有するプロテアーゼ活性の測定に用いられる該プロテアーゼの基質が担持されて成り、該基質が、酵素反応の結果、吸光度の変化をもたらす基質であって、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸又はオリゴペプチドがアミド結合した着色化合物である、請求項1記載の方法により環境中のアレルゲンを測定するための環境中のアレルゲン測定用器具。
【請求項10】
前記アレルゲンがダニ若しくはダニ由来物、又は花粉である請求項9記載の器具。
【請求項11】
前記基質が、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸がアミド結合した着色化合物である請求項9記載の測定器具。
【請求項12】
前記着色色素がクレジルバイオレット、サフラニンO又はメチレンバイオレット3RAXである請求項11記載の測定器具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中のアレルゲンの測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に含まれる花粉や、カーペットや布団等に含まれるダニ等がアレルゲンとなって、花粉症、アトピー、喘息等のアレルギー疾患を引き起こすことは広く知られている。これらのアレルゲンに対してアレルギー体質の人は、これらのアレルゲンとの接触を避けることがアレルギーの発症を避ける上で重要である。
【0003】
従来、アレルゲンの測定は、いずれも測定対象となるアレルゲンを対応抗原とする抗体を用いた免疫測定により行なわれていた(下記特許文献1~5)。
【0004】
しかしながら、抗体、とりわけ、測定精度を高めるために用いられるモノクローナル抗体は高価である。
【0005】
一方、花粉、ダニ、カビ、昆虫由来物質等、環境中に存在するアレルゲンには、プロテアーゼ活性を有するものがあることが知られている。例えば、スギ花粉(非特許文献1)、ブタクサ花粉(非特許文献2)、メスキトー花粉(非特許文献3)、カビの一種であるAspegillus fumigatus(非特許文献4)、ワモンゴキブリのアレルゲン(非特許文献5)、ダニ(Dermatophagoides farinae=コナヒョウダニ及びpteronyssinus=ヤケヒョウダニ)(非特許文献6~非特許文献13)がプロテアーゼ活性を有することが知られている。しかしながら、これらの文献では、プロテアーゼ活性を利用してアレルゲンを測定することについては開示も示唆もなく、また、アレルゲン量との間に定量関係があることについても開示も示唆もない。また、これらの文献では、アレルゲンを抽出、濃縮及び/又は精製してプロテアーゼ活性を測定しており、環境中のアレルゲンをこれらの前処理なしにそのまま簡便に測定できる点については開示も示唆もない。
【0006】

【特許文献1】特開平9-87298号公報
【特許文献2】特開平5-207892号公報
【特許文献3】特開平11-14511号公報
【特許文献4】特開2000-35428号公報
【特許文献5】特開平6-34518号公報
【非特許文献1】J Agric Food Chem. 2002 Jun 5;50(12):3540-3. Isolation and characterization of aminopeptidase (Jc-peptidase) from Japanese cedar pollen (Cryptomeria japonica). Noguchi Y, Nagata H, Koganei H, Kodera Y, Hiroto M, Nishimura H, Inada Y, Matsushima A.
【非特許文献2】Phytochemistry. 1998 Feb;47(4):593-8. Ragweed pollen proteolytic enzymes: possible roles in allergies and asthma. Bagarozzi DA Jr, Travis J.
【非特許文献3】Am J Respir Cell Mol Biol. 1995 Apr;12(4):441-8. Isolation and properties of an angiotensin II-cleaving peptidase from mesquite pollen. Matheson N, Schmidt J, Travis J.
【非特許文献4】J Investig Allergol Clin Immunol. 2002;12(4):257-62. Serine proteinases with gelatinolytic activity in an Aspergillus fumigatus allergenic extract. Iraneta SG, Duschak VG, Rodriguez SM, Alonso A.
【非特許文献5】J Investig Allergol Clin Immunol. 1999 Jul-Aug;9(4):235-40. Proteinase and gelatinolytic activities of house dust mite and cockroach extracts. Iraneta SG, Duschak VG, Rodriguez SM, Seoane MA, Albonico JF, Alonso A.
【非特許文献6】Ando T, Ino Y, Haida M, Honma R, Maeda H, Yamakawa H, Iwaki M, Okudaira H. Isolation of cysteine protease in the crude mite extract, Dermatophagoides farinae. Int Arch Allergy Appl Immunol. 1991;96(3):199-205.
【非特許文献7】Ando T, Homma R, Ino Y, Ito G, Miyahara A, Yamakawa H, Iwaki M, Okumura Y, Suko M, Haida M, et al. Is a trypsin-like protease of mites a Der f III allergen? Arerugi. 1992 Jun;41(6):704-7.
【非特許文献8】Ando T, Homma R, Ino Y, Ito G, Miyahara A, Yanagihara T, Kimura H, Ikeda S, Yamakawa H, Iwaki M, et al. Trypsin-like protease of mites: purification and characterization of trypsin-like protease from mite faecal extract Dermatophagoides farinae. Relationship between trypsin-like protease and Der f III. Clin Exp Allergy. 1993 Sep;23(9):777-84.
【非特許文献9】King C, Simpson RJ, Moritz RL, Reed GE, Thompson PJ, Stewart GA. The isolation and characterization of a novel collagenolytic serine protease allergen (Der p 9) from the dust mite Dermatophagoides pteronyssinus. J Allergy Clin Immunol. 1996 Oct;98(4):739-47.
【非特許文献10】Schulz O, Sewell HF, Shakib F. Related Articles, Links A sensitive fluorescent assay for measuring the cysteine protease activity of Der p 1, a major allergen from the dust mite Dermatophagoides pteronyssinus. Mol Pathol. 1998 Aug;51(4):222-4.
【非特許文献11】Yasueda H, Mita H, Akiyama K, Shida T, Ando T, Sugiyama S, Yamakawa H. Allergens from Dermatophagoides mites with chymotryptic activity. Clin Exp Allergy. 1993 May;23(5):384-90.
【非特許文献12】Heymann PW, Chapman MD, Aalberse RC, Fox JW, Platts-Mills TA. Antigenic and structural analysis of group II allergens (Der f II and Der p II) from house dust mites (Dermatophagoides spp). J Allergy Clin Immunol. 1989 Jun;83(6):1055-67.
【非特許文献13】Stewart GA, Ward LD, Simpson RJ, Thompson PJ. Related Articles, Links The group III allergen from the house dust mite Dermatophagoides pteronyssinus is a trypsin-like enzyme. Immunology. 1992 Jan;75(1):29-35.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、抗アレルゲン抗体を用いることなく、簡便に環境中のアレルゲンを測定することが可能な、アレルゲンの測定方法並びにそのための器具及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、ダニや花粉等の生物由来アレルゲンが有するプロテアーゼ活性を測定することにより、アレルゲンの抽出や濃縮等の前処理を行なわなくても、環境中の生物由来アレルゲンを簡便に測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、環境中の生物由来アレルゲンの測定方法において、被測定物中のアレルゲンを、プロテアーゼの基質と接触させ、該アレルゲンのプロテアーゼ活性を測定することにより前記生物由来のアレルゲンを測定すること、かつ、前記基質が、酵素反応の結果、吸光度の変化をもたらす基質であって、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸又はオリゴペプチドがアミド結合した着色化合物であり、前記プロテアーゼ活性は、該基質の変色に基づき測定することを特徴とする測定方法を提供する。また、本発明は、環境中の生物由来アレルゲンの測定器具であって、支持体に、前記アレルゲンが有するプロテアーゼ活性の測定に用いられる該プロテアーゼの基質が担持されて成り、該基質が、酵素反応の結果、吸光度の変化をもたらす基質であって、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸又はオリゴペプチドがアミド結合した着色化合物である、環境中のアレルゲン測定用器具を提供する。

【発明の効果】
【0010】
本発明により、抗アレルゲン抗体を用いることなく、環境中の生物由来アレルゲンを簡便に測定することが可能なアレルゲンの測定方法並びにそのための器具及び装置が初めて提供された。本発明の方法は、抗アレルゲン抗体を用いないので安価に行うことができる。また、本発明の方法は、アレルゲンの前処理を行なわなくても実施可能であるため、極めて簡便であり、熟練を要することなく行うことができる。また、本発明の生物由来アレルゲン測定用の器具及び装置は、構造が単純で、携帯可能であるため、各家庭や学校その他、アレルゲンを測定したいその場でアレルゲンの測定を簡便に行うことができる。従って、本発明は、アトピーや花粉症のようなアレルギー疾患の発症予防に大いに貢献するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の参考例に係る測定装置の1例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の参考例に係る測定装置の他の1例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の参考例に係る測定装置のさらに他の1例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の参考例に係る測定装置のさらに他の1例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の参考例に係る測定装置のさらに他の1例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の参考例に係る測定装置のさらに他の1例を模式的に示す図である。
【図7】本発明の参考例に係る測定装置のさらに他の1例を模式的に示す図である。
【図8】本発明の参考例において測定した、ダニ虫体濃度と蛍光強度との関係を示す図である。
【図9】本発明の参考例において測定した、ハウスダスト濃度と蛍光強度との関係を示す図である。
【図10】本発明の参考例において、カーペット、窓枠、床コーナー及びコントロール(被測定物なし)に粘着シートを貼り付け、剥がした状態を示す写真である。
【図11】図11に示す各粘着シートを本発明のアレルゲン測定用シート(ゲル)に転写した直後の蛍光像を示す写真である。
【図12】図11に示す各粘着シートを本発明のアレルゲン測定用シート(ゲル)に転写した直後の蛍光像を示す写真である。
【図13.1】本発明の参考例において、ダニ虫体にプロテアーゼ基質を添加したものの位相差顕微鏡像を示す。
【図13.2】本発明の参考例において、ダニ虫体にプロテアーゼ基質を添加したものの蛍光顕微鏡像を示す。
【図14.1】本発明の参考例において、ハウスダストにプロテアーゼ基質を添加したものの位相差顕微鏡像を示す。
【図14.2】本発明の参考例において、ハウスダストにプロテアーゼ基質を添加したものの蛍光顕微鏡像を示す。
【図15】本発明の参考例において測定した、掃除機回収粉塵濃度と吸光度との関係を示す図である。
【図16】本発明の参考例において2種類の基質を用いて測定した、スギ花粉量と蛍光強度との関係を示す図である。
【図17】本発明の参考例において2種類の基質を用いて測定した、スギ花粉抽出物量と蛍光強度との関係を示す図である。
【図18】本発明の参考例において5種類の基質を用いて測定した、ダニ抽出物量と蛍光強度との関係を示す図である。
【図19】クレジルバイオレットとロイシンのアミド結合体にアミドペプチダーゼMを作用させた場合の、酵素反応の前後及び中途における、出発物質又は反応混合物の吸光スペクトルである。
【図20】メチレンバイオレットとロイシンのアミド結合体にアミノペプチダーゼMを作用させた場合の、酵素反応の前後における、出発物質又は反応混合物の吸光スペクトルである。
【図21】サフラニン-Oとロイシンのアミド結合体にアミノペプチダーゼMを作用させた場合の、酵素反応の前後における出発物質又は反応混合物の吸光スペクトルである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法の測定対象となるものは、環境中の生物由来アレルゲンである。ここで、「環境中」とは、大気中及び室内空気中並びに室内空気中へのアレルゲンの供給源となり得る、床、壁、窓、窓枠、敷物(カーペット、絨毯、たたみ、マット、ござ等)、寝具類(布団、毛布、枕、マットレス等)、衣類等の繊維製品、家具類(椅子、ソファー等)、粉塵、ハウスダスト、河川水、井戸水等の内部及び外部を意味し、飲食品は含まれない(飲用水は含む)。また、生物由来アレルゲンとは、花粉、ダニや昆虫等の虫体、糞、それらの死骸及び破片、カビ及びその胞子等の、生物自体及び生物が生産する物質であって、アレルギーの原因物質となるものである。
【0013】
また、本発明の方法は、アレルゲンのプロテアーゼ活性を測定することによりアレルゲンを測定するものであるから、本発明の方法の測定対象となるものは、プロテアーゼ活性を有するアレルゲンである。好ましい例として、花粉、特にスギ花粉及びダニ(虫体、糞、死骸、破片)を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、カビ類等も対象になり得る。
【0014】
本発明の方法では、上記した環境中の生物由来アレルゲンのプロテアーゼ活性を測定する。環境中の生物由来アレルゲンがプロテアーゼ活性を有すること自体は上記の通り公知であるが、下記実施例において具体的に示されるように、プロテアーゼ活性とアレルゲン量の間に定量関係があり、プロテアーゼ活性を測定することによりアレルゲンを測定できることは知られていなかった。さらに、驚くべきことに、下記実施例で具体的に記載するように、環境中の生物由来アレルゲンは、抽出や濃縮、精製等の前処理を何ら行なわなくてもそのままプロテアーゼ活性を測定可能なことが本願発明者らによって見出された。従って、本発明の好ましい態様では、環境中の生物由来アレルゲンをそのまま、又は単に水若しくは緩衝液に溶解若しくは浮遊させるのみで、抽出や精製等の前処理なしに測定され、極めて簡便である。なお、「測定」には定量と検出の両者が包含される。
【0017】
なお、アレルゲンの種類により、プロテアーゼの基質特異性が異なるため、測定しようとするアレルゲンのプロテアーゼが反応する基質を選択して用いる。この選択は、単にルーチンな確認試験により行うことができる。ダニ(虫体、糞、死骸、破片)を測定する場合には、例えば、Boc-Val-Leu-Lys-MCA、Met-MCA, Boc-Gln-Ala-Arg-MCA, Boc-Val-Leu-Lys-MCA, Boc-Leu-Gly-Arg-MCA等を用いて測定可能であり、花粉を測定する場合には、例えばBz-DL-Arg-pNA.HCl、Leu-MCA, Z-Arg-pNA, Z-Gly-Arg-pNA, Tyr-MCA等を用いて測定可能である。また、アレルゲンの種類により、基質特異性が異なることを利用してアレルゲンを分別測定することができる。例えば、下記実施例に具体的に記載されるように、スギ花粉は、Leu-MCAやBz-DL-Arg-pNA.HClを基質として反応するが、Boc-Val-Leu-Lys-MCAとは反応しない。一方、ダニ抗原はBoc-Val-Leu-Lys-MCAを基質として反応する。従って、スギ花粉を測定する場合には、Leu-MCAやBz-DL-Arg-pNA.HClを基質として用い、ダニ抗原を測定する場合には、Boc-Val-Leu-Lys-MCAを用いることにより、スギ花粉とダニ抗原を区別して測定することが可能になる。さらに、プロテアーゼ阻害剤も公知であり、特定のアレルゲンのプロテアーゼ活性を阻害するプロテアーゼ阻害剤を、測定に用いる基質と共存させることにより、当該特定のアレルゲンのプロテアーゼ活性を除外して、対象とするアレルゲンのプロテアーゼ活性を選択的に測定することもできる。プロテアーゼ阻害剤の例としては、p-メタクリ安息香酸、ジイソプロピルフルオロリン酸、シトルフェニルアラニルクロロメチルケトン、ズブチリシンインヒビター、ロイペプチン、アンチパイン、ペプスタチン、エポキシコハク酸誘導体等を挙げることができる。このように、適切な基質を選択し、必要により、測定から除外したいアレルゲンのプロテアーゼに対する阻害剤を共存させることにより、測定されるアレルゲンの種類をかなり絞り込むことが可能になる。なお、本発明では、上記ペプチド又はアミノ酸が、後述する、プロテアーゼによる酵素反応により変色する色素に結合されたものを基質として用いる。
【0018】
さらに、本願発明者らは、プロテアーゼによる酵素反応により変色する色素を発明した。すなわち、本願発明者らは、少なくとも1個のアミノ基を有する着色色素のアミノ基のうち少なくとも1個のアミノ基に、アミノ酸又はオリゴペプチドがアミド結合した着色化合物にプロテアーゼが作用すると、上記アミド結合が切断され、変色することを見出した。ここで、「変色」とは、酵素反応の前後の両方において肉眼で色を見ることができ、かつ、その色が肉眼で見て変化することを意味する。変色は、励起光を必要とする蛍光よりも簡便に観察することができ、また、着色(無色のものに色がつく)に比べて微妙な変化でも判別しやすいので有利である。着色色素の好ましい例としては、クレジルバイオレット、サフラニンO及びメチレンバイオレット3RAX、ナイルブルーA、ダローレッド、アズレA,アズレC、ブリリアントクレジルブルー、ローダミン123、チオニンの様に共役系にアミノ基を有する色素を挙げることができ、特に好ましくは、下記化学構造を有するクレジルバイオレット、サフラニンO及びメチレンバイオレット3RAXを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化1】
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【0020】
クレジルバイオレットのように、着色色素が複数のアミノ基を有している場合には、そのうちの少なくとも1個がアミド化されていればよい。また、アミド化に供するアミノ酸は、アミノ酸分子1個でもよいし、オリゴペプチド(好ましくはアミノ酸数2~10程度)でもよい。アミノ酸又はオリゴペプチドの種類は上記と同様、プロテアーゼの種類に応じて適宜選択される。例えば、ダニ抗原であるDermatophagoides farinae抽出物またはDermatophagoides pteronyssinus抽出物Pの測定には、ロイシン、メチオニン又はリジン分子1個をアミド結合したものが好ましく、特に、クレジルバイオレットの1個又は2個のアミノ基をロイシンとアミド結合したものが好ましい。なお、アミノ酸1分子がアミド結合したものを切断する活性は、エンドペプチダーゼ活性であるが、ダニ抗原等のアレルゲンがエンドペプチダーゼ活性を有することは本願発明者によって初めて見出されたことである。
【0021】
着色色素とアミノ酸のアミド結合は、例えば、着色色素分子とアミノ基をBocで保護したアミノ酸を、カルボニルジイミダゾールを縮合剤として用いて、室温で1日塩化メチレン又はDMF中で反応させ、アミド結合を形成させた後、トリフルオロ酢酸を用いて脱保護することにより達成することができ、詳細な方法は下記実施例に記載されている。オリゴペプチドも同様な方法によりアミド結合することができる。
【0022】
基質は、溶液の状態で用いることもできるし、基質を支持体に担持して用いることもできる。溶液の場合、溶媒としては水及び水系緩衝液を好ましく用いることができる。支持体としては、担持する基質の量を多くできる多孔性支持体を好ましく用いることができ、多孔性支持体としては、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、シリカゲル等のゲルや、ガラス繊維等から成るろ紙、合成樹脂から成る多孔性フィルム等を挙げることができる。基質溶液を用いる場合、溶液中の基質濃度は、用いる基質の種類や、予測されるアレルゲンの量の範囲等に応じて適宜設定されるが、通常、10μM~50mM程度、好ましくは100μM~10 mM程度程度である。また、基質を支持体に担持させる場合も、用いる基質の種類や、予測されるアレルゲンの量の範囲等に応じて適宜設定されるが、支持体表面に塗布する場合は、通常、1cm2当り1 nmol~100 nmol程度、支持体に含浸させる場合は、通常、0.1μmol-100μmol程度である。基質溶液を用いる場合は、大気中や室内空気中のアレルゲンの測定や、粉塵、ハウスダスト等、溶液に懸濁可能な固体に付着又は含まれるアレルゲンの測定に適している。もっとも、電気掃除機で集められるゴミを溶液に懸濁して測定することもできるので、敷物等を先ず電気掃除機で掃除し、回収したゴミを溶液に懸濁して測定することにより、床、壁、窓、窓枠、敷物(カーペット、絨毯、たたみ、マット、ござ等)、寝具類(布団、毛布、枕、マットレス等)、衣類等の繊維製品、家具類(椅子、ソファー等)に付着又は含まれるアレルゲンの測定にも利用することができる。基質を支持体に担持して用いる場合には、大気中や室内空気中のアレルゲンの測定に加え、床、壁、窓、窓枠、敷物、寝具類、衣類等の繊維製品、家具類、粉塵、ハウスダスト等の固体に付着又は含まれるアレルゲンの測定に適している。基質を支持体に担持させた場合、携帯や保管に便利で、測定も簡便に行うことができ、各家庭や学校等での使用に特に適している。
【0023】
測定は、基質溶液を用いる場合には、溶液に大気や室内空気を接触させ、あるいは、粉塵、ハウスダスト、電気掃除機で回収したゴミ等を溶液に懸濁して、蛍光や吸光度を測定装置で測定するか、目視観察により測定することができる。支持体上に担持した基質を用いる場合には、支持体を、床、壁、窓、窓枠、敷物、寝具類、衣類等の繊維製品、家具類等に直接接触させ、又は、これらを粘着シートと接触させ、その粘着シートを支持体に接触させ、支持体上の蛍光や色の変化を測定装置で測定するか、目視により測定することができる。
【0024】
以下、必要により図面に基づいて、本発明の測定方法に適した器具及び装置の好ましい例並びにそれらの使用方法について説明する。
【0025】
最も単純な測定器具は、上記したように、支持体に基質を担持させたものであり、支持体としては、シート状のゲルやろ紙等が好ましい。このアレルゲン測定用シートは、床、壁、窓、窓枠、敷物、寝具類、衣類等の繊維製品、家具類等に直接接触させ、又は、これらを粘着シートと接触させ、その粘着シートをアレルゲン測定用シートに接触させ、アレルゲン測定シート上の色の変化を目視により観察する。あるいは、シート上に自由落下する大気中又は室内空気中のアレルゲンを同様に測定することも可能である。
【0026】
以下、参考例として、アレルゲンの機械測定についても説明する。アレルゲン測定用シートを利用して機械測定を行なうことも可能である。アレルゲン測定シートを利用した測定装置の1例を図1に模式的に示す。アレルゲン測定用シート10で、中空の箱状の装置本体12の上方開口部を覆う。装置本体12内には、蛍光の励起光を発する光源14が収容され、光源14でシート10の下表面を照射する。生じた蛍光は、装置本体12内に収容された検出器16で検出し、これに接続されるプロセッサー18で数値化する。ここで、シート10を多孔性シートとし、装置本体12内にポンプ(図示せず)を収容し、ポンプを作動させて装置本体12内を陰圧にし、シート10にトラップされるアレルゲンの量を増大させてもよい。この装置を部屋の隅や大気中に置いておき、アレルゲン測定用シート上に自由落下するアレルゲンを測定することができる。この場合には、測定用シートは透明の材料から形成されることが好ましい。あるいは、アレルゲン測定用シートを、床、壁、窓、窓枠、敷物、寝具類、衣類等の繊維製品、家具類等に直接接触させ、又は、これらを粘着シートと接触させ、その粘着シートをアレルゲン測定用シートに接触させた後、図1に示す測定装置の上方開口部を図示のように測定用シートで覆い、上記の通り機械測定してもよい。この場合には、アレルゲンと接触させた表面を下向きにして設置すると、通常、測定される蛍光量が大きくなるので好ましい。なお、この装置では、アレルゲン測定用シートに枠を設けたり、さらには枠に把手を設けたりして装置への取り付けや交換を簡単にすることもできる。
【0027】
また、アレルゲン測定用シートを利用し、さらにポンプを利用した装置として、図2及び図3に模式的に示す装置を挙げることができる。図2に示す装置では、装置本体32内に、アレルゲン測定用シート34が載置される。アレルゲン測定用シート34は、枠を設けたり、さらには枠に把手を設けたりしてカートリッジ化することが好ましく、カートリッジ化したシートをカートリッジホルダーに載置するようにすると、測定用シートの交換を簡便に行なうことが可能となり好ましい。シート34の上方には、検体となる、本体32の外側の空気をシートに導くための吸入管36が配置され、吸入管36には、外部の空気を引き込むためのポンプ38が取り付けられている。吸入管36の外部開口端には、フィルター40が取り付けられ、大きな粉塵が除去される。なお、フィルター40の孔は、アレルゲンが通過できる大きさである必要がある。ポンプ38を起動して外部の空気を吸入管36に吸入し、測定用シート34上に、空気中に含まれるアレルゲンを接触させた後、図1の装置と同様に、光源42から測定用シート34に光を照射し、蛍光又は吸光を検出器44で検出し、プロセッサー46で数値化する。
【0028】
図3に示す測定装置は、図2に示す測定装置とほぼ同じ構成を有しており、対応する部材には図2と同じ参照番号を付してある。図3に示す装置では、光源42を測定用シート34の斜め上方に配置して、測定用シート34を透過する光を検出器44で検出する。この場合には、測定用シート34は透明な材質で形成される。
【0029】
他の例として、上部を開放した容器内に、基質溶液をそのままで、又はスポンジ状のポリマーから成る吸収体等に吸収させた状態で収容したアレルゲン測定用容器を挙げることができる。この場合にも、上記した測定用シートと同様、溶液上に自由落下する大気中又は室内空気中のアレルゲンを目視観察により測定することができる。
【0030】
このようなアレルゲン測定用容器を利用したアレルゲン測定装置の1例を図4に示す。装置本体20内には、基質溶液24を収容した、透明なアレルゲン測定用容器22が収容されている。光源26からの光を溶液24に当て、吸光度を検出器28で測定し、プロセッサー30で数値化する。あるいは、光源26から蛍光の励起光を溶液24に当て、蛍光を検出器28で測定し、プロセッサー30で数値化する。
【0031】
アレルゲン測定用容器とポンプを利用した測定装置の1例を図5に模式的に示す。装置本体48内には、基質溶液52を収容したアレルゲン測定用容器50が載置される。測定用容器50は、管53を介して緩衝液を含む容器54と接続され、また、測定用容器50には、ポンプ56が取り付けられている。緩衝液容器54の内部にはフィルター58が取り付けられ、大きなゴミが測定用容器50に入らないようになっている。緩衝液容器54内の緩衝液は、図示しないスターラーで撹拌しても良い。緩衝液容器54の上部には、吸入管60が取り付けられ、ポンプ62を起動することにより、装置外部の空気が緩衝液容器54に導かれる。緩衝液容器54内の緩衝液に入ったアレルゲンは、ポンプ56を起動することにより、管53を介して測定用容器50に導かれ、緩衝液と共に基質溶液52に添加される。光源64から基質溶液52に光を照射し、透過光又は蛍光を検出器66で検出し、プロセッサー68で数値化する。あるいは、蛍光の場合には、光源64からの光の方向と直行する方向に発光される蛍光を検出器70で検出してプロセッサー72で数値化することもできる。なお、この装置では、測定用容器50に基質溶液を収容しておいてもよいが、容器の底部に粉末の基質を付着させておいても良い。この場合、緩衝液容器54からの緩衝液によりその場で基質溶液が作製される。
【0032】
緩衝液を用いた他の測定装置の例を図6に示す。装置本体74には、底部に基質76を載置した容器78が載置される。基質76は、支持体に担持させてアレルゲン測定用シートとし、このシートを容器78の底部に載置しても良いし、容器78の底部に粉末状等で付着させておくだけでもよい。容器78は、管80を介して緩衝液を蓄えた緩衝液容器82に連通している。緩衝液容器82にはスターラー84及びフィルター86が設けられている。緩衝液容器82は、上方に蓋90が開閉自在に設けられている。また、容器78にはポンプ88が接続されている。使用時には、蓋90を開け、所定時間、緩衝液容器82を開放する。空気中のアレルゲンが自由落下により、緩衝液内に入る。所定時間経過後、蓋90を閉め、スターラー84で緩衝液を撹拌した後、ポンプ88を起動して緩衝液を容器78に導入する。これによりアレルゲンを含む緩衝液が、基質と接触する。光源90から容器78内の溶液に光を照射し、透過光又は蛍光を検出器92で検出し、プロセッサー94で測定する。この測定装置によれば、例えば、「午前中、xxスキー場の総花粉量」というような測定を正確に行なうことができる。
【0033】
緩衝液を用い、複数種類の基質を用いて、同時に複数のアレルゲンの測定が可能な装置の1例が図7に模式的に示されている。装置本体96内には、異なる種類の基質98a、98b、98cをそれぞれ含む容器100a、100b、100cが載置される。基質98a、98b、98cは、異なる種類のアレルゲンを測定可能な、異なる種類の基質であることが好ましい。基質は、支持体に担持させてアレルゲン測定用シートとし、このシートを各容器100a、100b、100cの底部に載置しても良いし、各容器100a、100b、100cの底部に粉末状等で付着させておくだけでもよい。各容器100a、100b、100cは、管102a、102b、102cをそれぞれを介して緩衝液を蓄えた緩衝液容器104に連通している。緩衝液容器104にはフィルター106が設けられている。緩衝液容器104の上部には、吸入管110が取り付けられ、ポンプ108を起動することにより、装置外部の空気が緩衝液容器104に導かれ、空気中のアレルゲンが、緩衝液内に混入する。各容器100a、100b、100cは、また、ポンプ112に接続されている。ポンプ112を起動することにより、アレルゲンを含む緩衝液が各容器100a、100b、100c内に流入し、基質と接触する。各容器100a、100b、100cを照射する各光源114a、114b、114cで各容器を照射し、各検出器116a、116b、116cで蛍光又は吸光を検出し、プロセッサー118で数値化する。この装置によれば、複数種類のアレルゲンを同時に測定できる。
【0034】
また、箱型の本体内にポンプを収納し、上方開口部をフィルターで被覆し、本体に排気口を設けたものをアレルゲン収集装置として用いることができる。ポンプを起動してフィルターを介して本体内部に外気を吸入することにより、空気中のアレルゲンをフィルターに吸着させる。次いで、フィルターを基質溶液に漬けることによりアレルゲンを溶液中に放出し、又はフィルターを緩衝液で洗浄し、その洗浄液を基質若しくは基質溶液と混合し測定する。測定は、目視観察により行なうこともできるし、市販の分光光度計を利用して吸光度測定を行なったり、フルオロメーターを用いて蛍光測定すること等により行うことができる。
【0035】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
参考例1
ダニ抗原の定量
(1) 材料
ダニ凍結虫体(Mite dermatophagoides farinae)(エル・エス・エル社製)
プロテアーゼ基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA(株式会社ペプチド研究所製))
L-システイン
【0037】
(2) 方法及び結果
ダニ凍結虫体は200 mg/mlにリン酸緩衝液または水に懸濁し、適宜リン酸緩衝液で希釈を行なった。それぞれ180μLに対し100 mMのL-システイン20μL(測定対象であるシステインプロテアーゼの-SH基を還元状態にするために従来から一般的に添加されている)を加え37℃で10分間培養を行なった。ここから40μLを取出し、10 mMにジメチルスルフォキシド(DMSO)で溶解した基質10μLと混合し、さらに37℃で30分間培養した。反応を終了する為に10%酢酸溶液を100μL加えた。プレートリーダーを用いて波長355 nmで励起を行ない、460 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0038】
虫体濃度と蛍光強度の関係を図8に示す。この曲線はダニの個数をxとし、蛍光強度をyとすると以下の様に近似される。
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
A=3.4402, B=1.456, C=70590.62, D=0.08607963
このとき相関係数は0.996であった。この曲線から、本実施例の方法により、少なくとも、ダニ虫体濃度が約2 mg/mlないし200 mg/mlの範囲でダニ抗原の定量が可能であることがわかる。
【実施例2】
【0039】
参考例2
ハウスダスト中のダニ抗原の定量
(1) 材料
ハウスダスト(掃除機回収粉塵)
プロテアーゼ基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA(株式会社ペプチド研究所製))
【0040】
(2) 方法及び結果
掃除機回収粉塵は10mg/mlにリン酸緩衝液に懸濁し孔径1μmのろ紙で濾過を行なったろ液を用いた。ろ液は3倍ずつ6段階に希釈を行なった。それぞれ40μLに対し10mMにDMSOで溶解した基質2μLと混合し、37℃で30分間培養した。プレートリーダーを用いて波長355 nmで励起を行ない、460 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0041】
ハウスダストの濃度(mg/ml)と蛍光強度の関係を図9に示す。この曲線はハウスダストの濃度(mg/ml)をxとし、蛍光強度をyとすると以下の様に近似される。
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
A=1203.294, B=1.374, C=6.672, D=44792.84
この曲線から、本実施例の方法により、少なくとも、ハウスダスト濃度が約1mg/mlないし10 mg/mlの範囲でハウスダスト中のダニ抗原の定量が可能であることがわかる。
【実施例3】
【0042】
参考例3
床及びカーペット上のダニ抗原の可視化
(1) 材料
プロテアーゼ基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA(株式会社ペプチド研究所製))
L-システイン
アガロース、粘着シート、直径9 cmプラスチックプレート

試料
カーペット、窓枠周辺、床コーナーの粉塵(いずれも住宅室内において採取)
【0043】
(2) 方法及び結果
リン酸緩衝液18mlに対しアガロースを0.4 g加え、電子レンジで加熱溶解し、60℃まで溶液を冷却し、100mMのL-システインを2 ml加えた。これをプラスチックプレートに注いで冷まし固めた。ここに10mMにDMSOで溶解した基質20μLをコーンラージ棒を用いて塗布した。室内のカーペット、窓枠周辺、床コーナーに数センチ角の粘着シートを貼付し、粉塵を採取した(図10)。これらと、対照となる粉塵を採取していない粘着シートを上述のアガロースプレートに貼り付け、貼付直後及び37℃で30分間培養を行なったものをCCDカメラ励起波長365 nmで励起し得られた画像をUVイルミネーターで観察を行った。結果を図11及び図12に示す。いずれも目視においては無数の粉塵が採取されているにも関わらず、検出されているのはその内の一部であり、またその量はカーペット及び床コーナーにおいて多量、窓枠周辺においては少量が検出されていることが分る。窓枠周辺の粉塵は砂等、外気に由来するものが多く含まれていると考えられ、ダニ抗原を少量のみしか含まない結果は妥当である。この実施例においてはシステインプロテアーゼの定量に基づいたものであり、検出されているものは主にダニ抗原である。
【実施例4】
【0044】
参考例4
蛍光顕微鏡観察によるダニの観察
(1) 材料
プロテアーゼ基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA(株式会社ペプチド研究所製))
L-システイン

試料
ダニ凍結虫体(Mite dermatophagoides farinae)(エル・エス・エル社製)
【0045】
(2) 方法及び結果
微量のダニ凍結虫体または掃除機回収粉塵を観察用シャーレに採取し、36μLのリン酸緩衝液と4μLのL-システイン、及び5 μlの基質を加えたものを顕微鏡において位相差像または蛍光像(励起:Arレーザー、CFP用フィルター)を得た。結果を図13.1及び13.2に示す。位相差像(図13.1)と蛍光像(図13.2)の比較によるとダニ虫体のうちの特に消化器官において蛍光強度が高い。このことは本方法によりDerfIを含むアレルゲンが特異的に検出されていることを示唆する。
【実施例5】
【0046】
参考例5
ハウスダスト中のダニ抗原の可視化
(1) 材料
プロテアーゼ基質(Boc-Val-Leu-Lys-MCA(株式会社ペプチド研究所製))
L-システイン

試料
掃除機回収粉塵
【0047】
(2) 方法及び結果
掃除機回収粉塵を観察用シャーレに採取し、36μLのリン酸緩衝液と4μLのL-システイン、及び5μLの基質を加えたものを顕微鏡において位相差像または蛍光像(励起:Arレーザー、CFP用フィルター)を得た。図14.1及び14.2に示す。相差像(図14.1)と蛍光像(図14.2)の比較からは掃除機回収粉塵中の全てではなく、一部においてのみ蛍光が検出されている。主にダニ抗原が検出されているものと考えられる。
【実施例6】
【0048】
参考例6
ハウスダスト中のダニ抗原の目視及び吸光度による定量
(1) 材料
ハウスダスト(掃除機回収粉塵)
プロテアーゼ基質(Bz-DL-Arg-pNA.HCl)(株式会社ペプチド研究所製)
【0049】
(2) 方法及び結果
掃除機回収粉塵は10mg/mlにリン酸緩衝液に懸濁し孔径1μmのろ紙で濾過を行なったろ液を用いた。ろ液は3倍ずつ6段階に希釈を行なった。180μLに対し10mMにDMSOで溶解した基質20μLと混合し、37℃で一晩培養した。発色したプレートを下方からスキャナーにて取込んだところ、試料濃度が高いウェルにおいて目視にて黄色い発色が観察された。また、プレートリーダーによる405 nmにおける吸光度測定を行なった。結果を図15に示す。この曲線は掃除機回収ゴミ量をxとし、吸光度をyとすると以下の様に近似することができる。
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
A=0.061, B=1.398, C=5.059, D=0.575
この曲線から、本実施例の方法により、少なくとも、ハウスダスト濃度が約1mg/mlないし10 mg/mlの範囲でハウスダスト中のダニ抗原の定量が可能であることがわかる。
【実施例7】
【0050】
参考例7
スギ花粉の測定
(1) 材料
スギ花粉(Cedar Pollen-Cj Japanese Cedar)(エル・エス・エル社製)
プロテアーゼ基質としてLeu-MCA及びBoc-Val-Leu-Lys-MCA(いずれも株式会社ペプチド研究所製)
【0051】
(2) 方法及び結果
スギ花粉は1 mg/mlにリン酸緩衝液に懸濁し、適宜リン酸緩衝液で希釈を行なった。それぞれ45μLに対し10mMにDMSOで溶解した基質5μLと混合し、37℃で15分間培養した。プレートリーダーを用いて波長355nmで励起を行ない、460nmにおける蛍光強度を測定した。
【0052】
結果を図16に示す。スギ花粉量をx(μg/ml)、Leu-MCAを用いた場合の蛍光強度をyとすると、以下のような近似式が成立つ
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
A=3943.221, B=1.374, C=169.224, D=4939.37
またこのとき相関係数は0.997であった。
この曲線から、本実施例の方法により、少なくとも、スギ花粉濃度が約50μg/mlないし1000μg/mlの範囲でスギ花粉の定量が可能であることがわかる。
【0053】
さらに図16から明らかな様にBoc-Val-Leu-Lys-MCAを用いた場合は蛍光はスギ花粉量に依存することはない。このことより生物由来アレルゲンの種類によって、基質特異性は異なり、基質を使い分けることで特異的に生物由来アレルゲンの検出を行なえることがわかる。
【実施例8】
【0054】
参考例8
スギ花粉抽出物の定量
(1) 材料
スギ花粉抽出物(Cedar Pollen Extrace-Cj)(エル・エス・エル社製)
プロテアーゼ基質としてLeu-MCA及びBoc-Val-Leu-Lys-MCA(いずれも株式会社ペプチド研究所製)
【0055】
(2) 方法及び結果
スギ花粉抽出物はスギ花粉を0.125 M NaHCO3 (pH8)で16時間撹拌し、さらに軽くホモジェナイズしたものの遠心上澄画分である。これを666μg/mlに5 mM ホウ酸緩衝液(pH8.0)0.9% NaClに懸濁し、これをさらに適宜リン酸緩衝液で希釈を行なった。試料それぞれ45μLに対し10 mMにDMSOで溶解した基質5μLと混合し、37℃で15分間培養した。プレートリーダーを用いて波長355 nmで励起を行ない、460 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0056】
結果を図17に示す。スギ花粉抽出物量をx(μg/ml)Leu-MCAを用いた場合の蛍光強度をyとすると、以下のような近似式が成立つ。
y=((A-D)/(1+(x/C)^B))+D
A=3134.98, B=0.932, C=371.278, D=25315.2
【0057】
このとき相関係数は1であり、検出限界も花粉そのものを用いるよりも抽出物を用いた方が向上することが示される。また実施例7と同様に、Boc-Val-Leu-Lys-MCAを用いた場合には蛍光強度はスギ花粉抽出物量に依存することはなく、花粉が物理的に破砕されても特異性をもって検出が可能であることが示される。
【実施例9】
【0058】
参考例9
ダニ抗原の定量
(1) 材料
ダニ抽出物Df(Mite dermatophagoides farinae)(リン酸緩衝液で抽出し、可溶画分を凍結乾燥したもの)(エル・エス・エル社製)
プロテアーゼ基質(Met-MCA, Boc-Gln-Ala-Arg-MCA, Boc-Val-Leu-Lys-MCA, Bz-Arg-MCA, Glt-Ala-Ala-Phe-MCA(Gltはグルタリル)(いずれも株式会社ペプチド研究所製))
【0059】
(2) 方法及び結果
ダニ1 mg/mlにリン酸緩衝液または水に懸濁し、適宜リン酸緩衝液で希釈を行なった。それぞれ50μLに対し10 mMにジメチルスルフォキシド(DMSO)で溶解した基質5μLと混合し、さらに室温で一晩培養した。プレートリーダーを用いて波長355 nmで励起を行ない、460 nmにおける蛍光強度を測定した。
【0060】
ダニ抽出物濃度と蛍光強度の関係を図18に示す。これらの曲線から、本実施例の方法により、Met-MCA, Boc-Gln-Ala-Arg-MCA, Boc-Val-Leu-Lys-MCAのような基質を用いるとことにより有効にダニ抗原を測定することができることが示された。またBz-Arg-MCA, Glt-Ala-Ala-Phe-MCAのような基質はダニ抗原によってほとんど切断されず、基質が非特異的に切断されているのではないことが示された。
【実施例10】
【0061】
実施例1
ダニ抗原の定量
酵素切断により色変わりを起こす基質を合成した。クレジルバイオレット、サフラニンO、メチレンバイオレット3RAXのアミノ基に、以下の方法により、ロイシン、またはメチオニンをアミド結合により結合させた。すなわち、色素分子(終濃度0.1M)とアミノ基をBocで保護したアミノ酸(終濃度0.2M)を、カルボニルジイミダゾール(終濃度0.1M)を縮合剤として用いて、室温で1日塩化メチレン又はDMF中で反応させ、アミド結合を形成させた。反応後トリフルオロ酢酸(50%)/塩化メチレン(50%)を用いて脱保護した。


【0062】
クレジルバイオレットはアミノ基を2つ有するところ、上記合成より2つのアミノ基のうち両方がアミノ酸とのアミド結合に寄与しているもの(黄色、最大吸収波長:440 nm)またはそのうちの片方のみがアミド結合に寄与しているもの(オレンジ色、490 nm)が単離された。吸収波長はそれぞれプレートリーダー(SPECTRA Max)を用いて測定した。
【0063】
さらに、これらのロイシンとクレジルバイオレットのアミド結合化合物にアミノペプチダーゼMを加え、アミド結合を切断する実験を行った。すなわちN末端にアミド結合により結合しているアミノ酸を切断する酵素である、アミノペプチダーゼMを適宜PBSで希釈したものを50マイクロリットルと約10 mMにエタノールに溶解した基質を5マイクロリットル加え、30分放置し、96穴プレートでこれの吸収スペクトルを測定した。その結果一方のアミノ基のみがアミド結合に寄与していた基質は酵素消化により、オレンジ(最大吸収波長:490 nm)から紫(最大吸収波長:590 nm)に吸収スペクトルが変化し、両方のアミノ基がアミド結合に寄与していた化合物は、黄(最大吸収波長:450 nm)から緑、青を経て、紫(最大吸収波長:590 nm)を呈することが示された。質量分析の結果このうち青色を示す物質はクレジルバイオレットにロイシンがひとつ結合したものであることが確認された。また酵素消化により最終的に呈する紫色の吸光スペクトルはクレジルバイオレットそのものの吸光スペクトルと完全に一致し、薄相クロマトグラフィーの結果からも、クレジルバイオレットそのものであることが確認された。クレジルバイオレットにロイシンがひとつ結合した場合に青またはオレンジの2種類の色調を示すのはクレジルバイオレットの分子構造が対称構造ではなく、いずれのアミノ基が関与するかで吸収スペクトルが異なるためである。それぞれの吸光スペクトルを図19に示す。アミノ酸として、ロイシン以外にメチオニン、又はリジンを用いても同様の色調変化がおこることを確認した。
【0064】
メチレンバイオレット3RAXは、アミノ基を1個有しこれがアミノ酸とのアミド結合に寄与している場合は薄い紫色(最大吸収波長:550 nm及び590 nm)を呈し、これをアミノペプチダーゼMで消化すると、鮮やかな桃色(最大吸収波長:550 nm)を呈した。消化後の吸光スペクトルはメチレンバイオレット3RAXの吸光スペクトルと完全に一致する。メチレンバイオレット3RAXとロイシンのアミド結合体がアミノペプチダーゼMによりスペクトル変化する様子を図20に示す。なお、図20及び後述する図21において、「Apase」はアミノペプチダーゼMを意味する。
【0065】
サフラニン-Oとロイシンのアミド結合体はアミノ基を2個有し、これらとロイシンの結合体は赤色を示した。アミノペプチダーゼMで消化することによりオレンジ色の色調を呈した。消化後の吸光スペクトルはサフラニン-Oの吸光スペクトルと完全に一致する。サフラニンOとロイシンのアミド結合体がアミノペプチダーゼMによりスペクトル変化する様子を図21に示す。
【0066】
実際にクレジルバイオレットとロイシンのアミド結合物(CV-Leu)がハウスダスト中のダニ抗原量に応じて色変化することを確認した。すなわち、表1に示すa-gの試料について、室内アレルゲン測定用の市販のELISAキットを用い、添付のプロトコールにしたがって、Fダニ抗原量を定量した(表1)。これらのa-gの試料に上述のCV-Leuを加え、一晩おいたところ、a, bのサンプルについて、紫色の呈色が観察され、ダニ抗原の量が多いことが示された。この結果はELISAの結果と相互している。よって、CV-Leuを基質として用い、その変色によりダニ抗原を測定できることが明らかになった。
【0067】
【表1】
JP0005558649B2_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の方法並びに測定器具及び測定装置は、ダニや花粉等の環境中のアレルゲンを簡便に測定することを可能にするものであり、各種アレルギーの予防等に有用である。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図15】
9
【図16】
10
【図17】
11
【図18】
12
【図19】
13
【図20】
14
【図21】
15
【図10】
16
【図11】
17
【図12】
18
【図13.1】
19
【図13.2】
20
【図14.1】
21
【図14.2】
22