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明細書 :修飾化バロシン含有タンパク質に対する抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4546929号 (P4546929)
登録日 平成22年7月9日(2010.7.9)
発行日 平成22年9月22日(2010.9.22)
発明の名称または考案の名称 修飾化バロシン含有タンパク質に対する抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
G01N  33/532       (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI C07K 16/18
G01N 33/532 A
C07K 14/47 ZNA
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2005-516396 (P2005-516396)
出願日 平成16年12月20日(2004.12.20)
国際出願番号 PCT/JP2004/019477
国際公開番号 WO2005/058964
国際公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
優先権出願番号 2003422365
優先日 平成15年12月19日(2003.12.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年7月13日(2006.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】垣塚 彰
【氏名】大泉 宏
【氏名】堀 清次
【氏名】前田 良太
【氏名】野口 昌克
【氏名】小池 雅昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 米国特許第06274312(US,B1)
国際公開第00/034470(WO,A1)
J. Immunol.,1994年,Vol.153, No.12,p.5465-5472
J. Biol. Chem.,1994年,Vol.269, No.15,p.11435-11441
調査した分野 C07K 16/00-16/46
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列において、8位、18位、20位、45位、60位、62位、63位、109位、112位、148位、164位、190位、211位、217位、231位、236位、251位、277位、288位、295位、312位、315位、336位、386位、389位、425位、426位、486位、502位、505位、512位、524位、529位、543位、565位、584位、614位、658位、663位、668位、677位、696位および754位のLys残基から選択される1以上のLys残基アセチル化された修飾化バロシン含有タンパク質を認識する抗体。
【請求項2】
配列番号1の一部連続配列からなる修飾化ペプチドを抗原として調製された請求項1の抗体。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸配列において、8位、18位、20位、45位、60位、62位、63位、109位、112位、148位、164位、190位、211位、217位、231位、236位、251位、277位、288位、295位、312位、315位、336位、386位、389位、425位、426位、486位、502位、505位、512位、524位、529位、543位、565位、584位、614位、658位、663位、668位、677位、696位および754位のそれぞれのLys残基が個別にアセチル化された修飾化バロシン含有タンパク質を個別に認識する抗体のセット。
【請求項4】
配列番号1の495位Tyr残基がリン酸化した修飾化バロシン含有タンパク質を認識する標識化抗体と、請求項3記載の抗体セットを構成する各抗体を標識化した標識化抗体を含むキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】

この出願の発明は、修飾化バロシン含有タンパク質を認識する抗体に関するものである。
【背景技術】

バロシン含有タンパク質(valosin-containing proteoin:以下「VCP」と記載することがある。)はATP結合タンパク質ファミリーのメンバーであり、小胞の輸送や融合、26Sプロテアソーム機能、ペリオキシゾームの集合化等に関している(非特許文献1)。またこのVCPは、神経変性疾患患者の神経系組織、あるいは癌患者の腫瘍組織においての発現亢進が報告され(例えば非特許文献2-4)、その発現レベルの検出は神経変性疾患における変性の程度、または腫瘍の悪性度を判定するための有効な手段となりうると考えられている。
しかしながら、大腸菌等で発現させた組換えVCPはほとんどATPase活性を持たないことから、VCPがその機能を発揮するためには、何からの修飾が必要と考えられている。VCPの修飾については、はじめにチロシン(Tyr)がリン酸化されていることが報告され(非特許文献5)、その後、そのリン酸化Tyrの部位が同定されている(非特許文献6)。
[非特許文献]
1:Pleasure,I.T.et al.Nature365(6445),459-462(1993)
2:Yamamoto,S.,et al.J.Clin.Oncol.21(3),447-452(2003)
3:Kobayashi,T.,et al.J.Biol.Chem.277(49),47358-47365(2002)
4:Asai,T.,et al.Jpn.J.Cancer Res.93(3),296-304(2002)
5:Egerton M.et al.EMBO J.11(10),3533-40(1992)
6:Egerton M.and Samelson L.E.J Biol Chem.269(15),11435-41,(1994)
【図面の簡単な説明】

図1は、実施例5のELISA分析の結果を示すグラフである。縦軸は吸光度、横軸は抗体希釈倍率である。黒丸は修飾化ペプチド(I)、白四角は非修飾化ペプチド、黒三角はコントロール修飾化ペプチド(V)のそれぞれに対するマウス抗血清(I)の抗体力価を示す。
図2は、実施例6のELISA分析の結果を示すグラフである。縦軸は吸光度、横軸は抗体希釈倍率である。黒四角は修飾化ペプチド(II)、白四角は非修飾化ペプチドに対するウサギ抗血清(II)の抗体力価を示す。
図3は、実施例7のELISA分析の結果を示すグラフである。縦軸は吸光度、横軸は抗体希釈倍率である。黒丸は修飾化ペプチド(III)、白丸は非修飾化ペプチドに対するウサギ抗血清(III)の抗体力価を示す。
図4は、実施例8のELISA分析の結果を示すグラフである。縦軸は吸光度、横軸は抗体希釈倍率である。黒丸は修飾化ペプチド(IV)、白丸は非修飾化ペプチドに対するウサギ抗血清(IV)の抗体力価を示す。
図5は、実施例9のウェスタン・ブロット分析の結果である。
図6は、実施例10のウェスタン・ブロット分析の結果である。
図7は、実施例11のウェスタン・ブロット分析の結果である。
【発明の開示】

前記のとおり、VCPはそのアミノ酸修飾によって機能を発揮すると考えられているが、VCP機能の多様性を考慮すると、報告されているようなTyr残基のリン酸化修飾といった単独の修飾化が全ての機能に対応するとは考えられない。
これに対してこの出願の発明者らは、VCPがそのセリン(Ser)残基および/またはスレオニン(Thr)残基の1以上がリン酸化修飾を受け、またリジン(Lys)残基の1以上がアセチル化修飾を受けることによってVCPが様々な機能を発揮することを見出した。さらには、従来はそのリン酸化修飾が報告されていない1個のチロシン(Tyr)残基の修飾もその機能にとって重要であることを見出した。
この出願の発明は、以上のとおりのVCP修飾に関する新規な知見を基礎とするものであって、修飾化VCPの発現レベルの測定等に有用な抗体を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下の(1)~(5)の発明を提供する。
(1)配列番号1のアミノ酸配列において:
(a)3位、7位、13位、37位、40位、42位、73位、78位、101位、197位、276位、282位、284位、326位、352位、444位、457位、459位、511位、541位、555位、581位、612位、652位、664位、683位、702位、705位、718位、746位、748位、765位および770位のSer残基から選択される1以上のSer残基のリン酸化;
(b)14位、56位、76位、168位、249位、262位、316位、330位、347位、385位、436位、448位、467位、475位、509位、525位、549位、606位、613位、679位、688位、715位および761位のThr残基から選択される1以上のThr残基のリン酸化;
(c)8位、18位、20位、45位、60位、62位、63位、109位、112位、148位、164位、190位、211位、217位、231位、236位、251位、277位、288位、295位、312位、315位、336位、386位、389位、425位、426位、486位、502位、505位、512位、524位、529位、543位、565位、584位、614位、658位、663位、668位、677位、696位および754位のLys残基から選択される1以上のLys残基のアセチル化;
(d)495位のTyr残基のリン酸化、
からなる群より選択される1以上のアミノ酸修飾を有する修飾化ペプチドを抗原として調製された抗体であって、リン酸化Ser残基、リン酸化Thr残基、アセチル化Lys残基および/またはリン酸化Tyr残基を有する修飾化バロシン含有タンパク質を認識する抗体。
(2)配列番号1の一部連続配列からなる修飾化ペプチドを抗原として調製された前記発明(1)の抗体。
(3)前記発明(2)の抗体とは異なる修飾化アミノ酸残基を認識する抗体。
(4)それぞれに異なるリン酸化Ser残基、リン酸化Thr残基、アセチル化Lys残基および/またはリン酸化Tyr残基を有する修飾化バロシン含有タンパク質を個別に認識する抗体のセット。
(5)識化した前記発明(1)から(3)の抗体、または標識化した前記発明(4)の抗体セットを含むキット。
なお、この発明において「抗体」とは、広義の意味で使用されるものであってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメントおよび誘導体も表すものであり、F(ab’)、Fab’およびFabといったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原またはエピトープ(epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、または、例えばクワドローム(quadrome)、トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには公知の細胞融合またはハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体を包含する。
この発明における用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。またこの発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis,in Molecular Cloning-A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1989;Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y,1995等に記載されている。なお、用語は基本的にはIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるものであり、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【発明を実施するための最良の形態】

発明(1)の抗体は、配列番号1のアミノ酸配列(ヒトVCPのアミノ酸配列)において:
(a)3位、7位、13位、37位、40位、42位、73位、78位、101位、197位、276位、282位、284位、326位、352位、444位、457位、459位、511位、541位、555位、581位、612位、652位、664位、683位、702位、705位、718位、746位、748位、765位および770位のSer残基から選択される1以上のSer残基のリン酸化;
(b)14位、56位、76位、168位、249位、262位、316位、330位、347位、385位、436位、448位、467位、475位、509位、525位、549位、606位、613位、679位、688位、715位および761位のThr残基から選択される1以上のThr残基のリン酸化;
(c)8位、18位、20位、45位、60位、62位、63位、109位、112位、148位、164位、190位、211位、217位、231位、236位、251位、277位、288位、295位、312位、315位、336位、386位、389位、425位、426位、486位、502位、505位、512位、524位、529位、543位、565位、584位、614位、658位、663位、668位、677位、696位および754位のLys残基から選択される1以上のLys残基のアセチル化;
(d)495位のTyr残基のリン酸化、
からなる群より選択される1以上のアミノ酸修飾を有する修飾化ペプチドを抗原として調製された抗体である。
従って、この抗体は、抗原として使用した修飾化ペプチドの修飾アミノ酸残基に応じて、それらと同一の修飾Ser残基、Thr残基および/またはLys残基を有するVCPを認識する。なお、VCPはヒト、マウス、ラットで全く同一のアミノ酸配列(配列番号1)を有しているため、この発明の抗体は、ヒト、マウスおよびラットの修飾化VCPを等しく認識することができる。
この発明の抗体作成に用いるペプチド抗原は、修飾化アミノ酸残基を含み、かつ全長VCPと同一サイズのペプチドであってもよく、あるいは修飾化アミノ酸残基を含む部分ペプチドであってもよい。すなわち、配列番号1のアミノ酸配列における1以上のSer残基、Thr残基および/またはLys残基がそれぞれ修飾された7~15、15~30、31~50、51~80、81~150連続アミノ酸配列からなる修飾化ペプチドである。なお、短鎖ペプチドを抗原とする抗体については、例えば、Biochem.J.,1990,Vol.266,p.497-504(Ser-Glu-Asn-Tyr-Lys-Asp-Asnからなるペプチドを抗原して作成した抗cytochrom P-450IA2抗体)、Biochem.J.,1992,Vol.288,p.195-205(Lys-Lys-Asn-Gly-Arg-Ile-Leu-Thr-Leu-Pro-Arg-Ser-Asn-Pro-Serを抗原として作成した抗インスリンβ-サブユニットモノクローナル抗体)等が知られている(その他にも、Molecular and Cellular Biology,1988,Vol.8,p.2159-2163、Cell,1989,Vol.58,p.945-953)。従って、配列番号1における前記範囲の連続配列を選択し、修飾化されたアミノ酸残基を含む部分ペプチドを抗原とすることによって、対応する修飾化アミノ酸残基を有するVCPを認識する抗体が、当業者であれば格段の困難性なく作成される。
また、この修飾化ペプチドは、アミド結合(ペプチド結合)によって直線的配列で互いに結合した7個以上のアミノ酸残基の直線的配列から構成された分子を意味し、天然のアミド結合以外の残基連結からなるものであってもよい。天然のアミド結合以外の残基連結は、例えばグルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2官能マレイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等の化学結合またはカップリング手段を例示することができる。また、ペプチド結合の代替となり得る連結基は、例えばケトメチレン(例えば、-C(=O)-CH-に対する-C(=O)-NH-)、アミノメチレン(CH-NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH2-O)、チオエーテル(CH-S)、テトラゾール(CN-)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、またはエステルを含む(例えば、Spatola(1983)in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.7,pp267-357,“Peptide Backbone Modifications,”Marcell Dekker,NYを参照)。
この発明の抗体作成に使用する修飾化ペプチドは、例えばペプチド合成機を使用して、例えばFmoc-bop法(Merrifield,R.B.J.Solid phase peptide synthesis I.The synthesis of tetrapeptide.J.Amer.Chem.Soc.85,2149-2154,1963;Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis.A Practical Approach.Chan,W.C.and White,P.D.,Oxford University Press,2000)等によって合成することができる。また、ペプチド合成の材料として使用するリン酸化Ser残基、リン酸化Thr残基、アセチル化Lys残基およびリン酸化Tyr残基は、それぞれ市販品を使用することもでき、あるいは公知の方法によって各アミノ酸残基を所望の形態に修飾化することによって作成することもできる。すなわち、リン酸化Ser残基およびThr残基は、SerおよびThrにセリン/スレオニンキナーゼを作用させ、またリン酸化Tyr残基はTyrにチロシンキナーゼを作用させ、それらのヒドロキシ基にリン酸基を付加することによって作成することができる。またアセチル化Lys残基は、Lysにアセチラーゼを作用させてそのアミノ基にアセチル基を付加することによって作成することができる。
また修飾化ペプチドのN末端にはシステインを導入してもよい。合成したペプチドはμBondasphere、C18カラム(Waters)などを用いた高速液体クロマトグラフィーなどにより精製して免疫抗原として使用する。また、修飾化ペプチドの修飾部位や修飾の種類等は、Mass Spectrometry解析によって正確に判定することもできる。
この発明の抗体は、例えばポリクローナル抗体の場合には、修飾化ペプチドを免疫原として動物を免役した後、血清から得ることができる。動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、ニワトリなどが用いられる
抗原ペプチドによる動物の免疫は公知の方法(例えば、村松繁、他編、実験生物学講座14、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座12、分子免疫学III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載された方法)に準じて行うことができる。例えば、一般的方法としては、抗原ペプチドを哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより免疫化を行うことができる。抗原ペプチドはウシアルブミン、ニワトリオボアルブリン、軟体動物由来ヘモシアニンなどの適当なキャリヤータンパク質に、マレイミド、カルボジイミドなどを用いて化学的に結合させた後に免疫しても良い。また、抗原ペプチドをアジュバントと共に投与してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全(または不完全)アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。
ポリクローナル抗体を含む抗血清は、免疫された動物を所定の期間飼育した後、その動物から採血した血液から調製することができる。
また、モノクローナル抗体は、公知のモノクローナル抗体作製法(「単クローン抗体」、長宗香明、寺田弘共著、廣川書店、1990年;”Monoclonal Antibody”James W.Goding,third edition,Academic Press,1996;Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.79-97,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987など)に従い作製することができる。
具体的には、修飾化ペプチドを用いて哺乳動物を免疫し、必要に応じて適宜に追加免疫して動物を充分に感化する。次いでこの動物から抗体産生細胞(リンパ細胞または脾臓細胞)を摘出し、これとミエローマ(骨髄腫)細胞株との融合細胞を得る。そして、これらの融合細胞株から、目的とするモノクローナル抗体を産生する細胞を選択し、培養することによって、ハイブリドーマ細胞を得ることができる。そして、このハイブリドーマ細胞の培養物から、あるいはハイブリドーマ細胞を注射した動物の腹水から採取するなどしてモノクローナル抗体を得ることができる。
このモノクローナル抗体の作成において使用する被免疫動物としては、公知のハイブリドーマ作製法に用いられる哺乳動物を使用することができる。具体的には、たとえばマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ等である。ただし、摘出した抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性等の観点からは、マウスまたはラットを被免疫動物とするのが好ましい。また、実際に使用するマウスおよびラットの系統は特に制限はなく、マウスの場合には、たとえば各系統A、AKR、BALB/c、BDP、BA、CE、C3H、57BL、C57BR、C57L、DBA、FL、HTH、HTl、LP、NZB、NZW、RF、RIII、SJL、SWR、WB、129等が、またラットの場合には、たとえば、Low、Lewis、Spraque、Daweley、ACI、BN、Fischer等を用いることができる。このうち、後述のミエローマ細胞との融合適合性を勘案すれば、マウスではBALB/c系統が、ラットではlow系統が被免疫動物として特に好ましい。なお、これらマウスまたはラットの免疫時の週齢は5~12週齢が好ましい。
免疫原の投与スケジュールは被免疫動物の種類、個体差等により異なるが、一般には、抗原投与回数1~6回、複数回の場合は投与間隔1~2週間が好ましい。また免疫原である修飾化ペプチドの投与は、初回免疫としては100~200μg程度、2次免疫以降は50~100μgを動物の皮内または腹腔内に投与することによって行うことができる。
上記の投与スケジュールの最終免疫日から1~5日後に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞またはリンパ細胞を無菌的に取り出す。これらの脾臓細胞またはリンパ細胞からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法に従って行うことができる。
次いで、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合する。このミエローマ細胞には特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜に選択して用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考慮して、その選択手続が確立しているHGPRT(Hpoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが好ましい。すなわち、マウス由来のX63-Ag8(X63)、NS1-Ag4/1(NS-1)、P3X63-Ag8.U1(P3U1)、X63-Ag8.653(X63.653)、SP2/0-Ag14(SP2/0)、MPC11-45.6TG1.7(45.6TG)、FO、8149/5XXO,BU.1等、ラット由来の210.RSY3.Ag.1.2.3(Y3)等、ヒト由来のU266AR(SKO-007)、GM1500・GTG-A12(GM1500)、UC729-6、LICR-LOW-HMy2(HMy2)、8226AR/NIP4-1(NP41)等である。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件下で適宜実施することができる。そのような方法は、例えば、ポリエチレングリコール等の高濃度ポリマー溶液中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法等を用いることができる。
融合細胞と非融合細胞の選択は、例えば、公知のHAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法により行うのが好ましい。この方法は、アミノプテリン存在下で生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用いて融合細胞を得る場合に有効である。すなわち、未融合細胞および融合細胞をHAT培地で培養することにより、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせた融合細胞のみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。
目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞のスクリーニングは、公知の酵素免疫検定法(EIA:Enzyme Immunoassay)、放射線免疫測定法(RIA:Radio Immunoassay)、蛍光抗体法等により行うことができる。またスクリーニング後のハイブリドーマ細胞は、メチルセルロース法、軟アガロース法、限界希釈法等の公知の方法によりクローニングし、抗体産生に用いる。
以上の通りの方法によって得たハイブリドーマ細胞は、液体窒素中または-80℃以下の冷凍庫中に凍結状態で保存することができる。そして、培養したハイブリドーマ細胞、またはハイブリドーマ細胞を腹腔内注射して動物の腹水から、目的のモノクローナル抗体を得ることができる。
この発明のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、必要に応じてそれをより精製された形態のものとして使用される。抗体を精製・単離する手法としては、従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などを採用することができる。好ましくは、抗血清、モノクローナル抗体を含有する腹水などは、硫安分画した後、DEAE-セファロースの如き、陰イオン交換ゲルおよびプロテインAカラムのようなアフィニティーカラムなどで処理し精製分離することができる。特に好ましくは抗原ペプチドを固定化したアフィニティークロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが挙げられる。
この発明の抗体は、前記の方法により得られた抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab、Fab’、F(ab’)といった抗体フラグメントであってもよい。抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接および間接サンドイッチ検定、あるいは免疫沈降検定等に使用することができる(例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158,CRC Press,Inc.,1987等を参照)。
この発明の抗体には、標識物質によって標識化されたものも含まれる。標識としては、酵素、酵素基質、酵素阻害物質、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子(例えば金コロイドなど)、非金属元素粒子(例えばセレンコロイドなど)、放射性物質などを挙げることができる。特に、酵素、放射性同位体または蛍光色素をふくむ化学物質が好ましい。酵素は、turnover numberが大であること、抗体と結合させても安定であること、基質を特異的に着色させる等の条件を満たすものであれば特段の制限はなく、通常のEIAに用いられる酵素を使用できる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いること(例えば、酵素的サイクリングの利用)もできる。酵素標識などは、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。また標識は、複数の異なった種類の標識物質を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にする。
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β-D-ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース-6-リン酸化脱水素酵素、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどを例示することができる。
また酵素標識した場合の基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することができ、4-メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体などが挙げられ、例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジシンを、また酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトロフェノール等を用いることができる。また標識シグナルの形成に4-ヒドロキシフェニル酢酸、o-フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンジジン(TMB)、5-アミノサリチル酸、3,3-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAB)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、チラミン、ルミノール、ルシゲニンルシフェリンおよびその誘導体、Pholad luciferinなどと西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、ルミジェンPPD、(4-メチル)ウンベリフェリル-リン酸、p-ニトロフェノール-リン酸、フェノール-リン酸、ブロモクロロインドリルリン酸(BCIP)、AMPAKTM(DAKO)、AmpliQTM(DAKO)などとアルカリフォスファターゼ、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシドといったウンベリフェリルガラクトシド、o-ニトロフェノール-β-D-ガラクトシドといったニトロフェニルガラクトシドなどとβ-D-ガラクトシダーゼ、グルコース-6-リン酸・デヒドロゲナーゼ、ABTSなどとグルコースオキシダーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
放射性同位体としては、32P、125I、14C、35S、H等の通常のRIAで用いられているものを使用することができる。蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネートアイソマーR(TRITC)などのローダミン誘導体、7-アミノ-4-クマリン-3-酢酸、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。蛍光色素としては、通常の蛍光抗体法に用いられるものを使用することができる。発色、螢光などを含めた生成するシグナルを検知するには、視覚によることもできるが、公知の装置を使用することもでき、例えば螢光光度計、プレートリーダーなども使用できる。また、放射性同位体(アイソトープ)などの出すシグナルを検知するには、公知の装置(例えばガンマーカウンター、シンチレーションなど)を使用することができる。
抗体を標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができる。また縮合剤(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’-ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、N-スルホスクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N-スクシンイミジル 4-(1-マレイミドフェニル)ブチレート、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS)、イミノチオラン、S-アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル-3-(4’-ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル-4-メルカプトブチリルイミデート、メチル-3-メルカプトプロピオンイミデート、N-スクシンイミジル-S-アセチルメルカプトアセテートなど)を用いることもできる。
さらにまた、この出願は、それぞれに異なるリン酸化Ser残基、リン酸化Thr残基、アセチル化Lys残基および/またはリン酸化Tyr残基を有する修飾化VCPを個別に認識する抗体のセット(発明(4))を提供する。すなわちこの発明(4)の抗体セットは、それぞれ異なる修飾化アミノ酸残基を有する修飾化VCPを個別に認識する少なくとも2種類の抗体からなるセットである。
またこの出願は、発明(5)として、前記発明(1)から(3)のいずれか、および/または発明(4)の抗体セットを含むキットを提供する。この発明(5)のキットは、抗体または抗体セットのそれぞれの抗体が液相系にキット化されたものであってもよく、あるいは抗体が固相単体に結合されたものであってもよい。また、標識物質が酵素の場合には、その基質を含んでもよい。さらに、固相単体に抗体が結合したものの場合には、非結合抗体を洗浄するための溶液を含むようにしてもよい。またさらに、1次抗体と2次抗体を含むキット(例えばELISAキット)であってもよい。
なお、固相担体としては、例えばガラス、例えばアミノアルキルシリルガラスなどの活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ-アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン-メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン-エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、シリコンガムなど、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
これら担体への抗体との結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
この発明によって提供される抗体や抗体セット、あるいは抗体キットは、当該分野で特定のタンパク質量を検知測定するために知られた手法(例えばin situハイブリダイゼーション、ウェスタンブロッティング、各種の免疫組織学的方法など)によって修飾化VCPを同定するために使用することができる。これらの一般的な技術手段の詳細については、例えば、入江 寛編、「続ラジオイムノアッセイ」、講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編、「酵素免疫測定法」(第3版)、医学書院,昭和62年発行;H.V.Vunakis et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.70(Immunochemical Techniques,Part A),Academic Press,New York(1980);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.73(Immunochemical Techniques,Part B),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.74(Immunochemical Techniques,Part C),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.84(Immunochemical Techniques,Part D:Selected Immunoassays),Academic Press,New York(1982);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.92(Immunochemical Techniques,Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods),Academic Press,New York(1983);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.178(Antibodies,Antigens,and Molecular Mimicry),Academic Press,New York(1989);M.Wilchek et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.184(Avidin-Biotin Technology),Academic Press,New York(1990);J.J.Langone et al.(ed.),”Methods in Enzymology”,Vol.203(Molecular Design and Modeling:Concepts and Applications,Part B:Anibodies and Antigens,Nucleic Acids,Polysaccharides,and Drugs),Academic Press,New York(1991)等の記載、あるいはそこで引用された文献中にある記載を参考に行うことができる。
【実施例】

以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
[実施例1]
修飾化ペプチドの合成
修飾化ペプチド(I)、(II)、(III)および(IV)を、文献(Merrifield,R.B.J.Solid phase peptide synthesis I.The synthesis of tetrapeptide.J.Amer.Chem.Soc.85,2149-2154,1963;Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis.A Practical Approach.Chan,W.C.and White,P.D.,Oxford University Press,2000)に記載の方法に従い、Rainin Symphony 12-channel合成機を用いて合成した。
修飾化ペプチド(I)は、配列番号2(配列番号1の691-704アミノ酸配列に相当)のアミノ酸配列からなり、その6番目(配列番号1の696番目)Lys残基がアセチル化している(H-CQRACK(Ac)LAIRESIE-NH2)。修飾化ペプチド(II)は配列番号3(N末端のCys残基以降が、配列番号1の487-502アミノ酸配列に相当)のアミノ酸配列からなり、その10番目(配列番号1の495番目)Tyr残基がリン酸化している(H-CRELQELVQY(PO3H2)PVEHPDK-NH2)。修飾化ペプチド(III)は、配列番号4(N末端のCys残基以降が、配列番号1の756-770アミノ酸配列に相当)のアミノ酸配列からなり、その7番目(配列番号1の761番目)Thr残基がリン酸化している(H-CEMFAQT(PO3H2)LQQSRGFGS-NH)。修飾化ペプチド(IV)は、配列番号4(N末端のCys残基以降が、配列番号1の756-770アミノ酸配列に相当)のアミノ酸配列からなり、その11番目(配列番号1の765番目)Ser残基がリン酸化している(H-CEMFAQTLQQS(PO3H2)RGFGS-NH2)。
また、コントロールとして、配列番号5(N末端のCys残基以降が、配列番号1の662-673アミノ酸配列に相当)の8番目(配列番号1の668番目)Lys残基がアセチル化している修飾化ペプチド(V)(H-CRKSPVAK(Ac)DVDLE-NH2)を合成した。
1:材料と合成
修飾化ペプチド(I)(V)は、Fmoc-Glu(OtBu)-O-樹脂上で、また修飾化ペプチド(II)(III)(IV)はFmoc-Amide樹脂上でそれぞれ合成した。保護されたアミノ酸は、Fmoc-Ala、Fmoc-Arg(Pbf)、Fmoc-Asp(OtBu)、Fmoc-Cys(Trt)、Fmoc-Gln(Trt)、Fmoc-Glu(OtBu)、Fmoc-Ile、Fmoc-Leu、Fmoc-Lys(Boc)、Fmoc-Pro、Fmoc-Ser(tBu)、Fmoc-Valである。またリン酸化SerはFmoc-Ser[P(Obzl)O2H]、リン酸化TyrはFmoc-Tyr[P(Obzl)O2H]、リン酸化ThrはFmoc-Thr[P(Obzl)O2H]、アセチル化LysはFmoc-Lys(Ac)として合成に用いた(なお、「Fmoc」は9-Fluorenylmethylloxycarbonyl、「Pbf」は2,2,4,6,7-pentamethyldihydrobenzofuran-5-sulphonyl、「tBu」はtert butyl ester or ether、「Trt」はTriphenylmethyl、「Boc」はtert-buthloxycarbonnyl、「Ac」はAcethyl、「Bzl」はBenzylをそれぞれ示す)。
2:側鎖の脱保護と分離
合成および最終Fmoc除去の後、ペプチドの側鎖脱保護を行い、さらに87.5% TFA(trifluoroacetic acid)/5% フェノール/5% 水/2.5% トリイソプロピル生理食塩水(TIS)中、室温で樹脂から分離した。2.5~3時間振盪することによって反応を促進させた。ペプチド樹脂を含むTFAを濾過し、ペプチド樹脂を純TFAで洗浄した。濾液に冷エーテル(-20~20℃)を加え、4℃で1時間静置した。このペプチド懸濁液を10分間遠心し、その上清を分取し、得られたペレットをエーテルで3回洗い、そして真空乾燥下のデシケーター内に静置した。次いで、乾燥ペレットをアセトニトリル/水/氷酢酸中に溶解し、凍結乾燥した。この得られた粗ペプチドを計量し、窒素下で保存した。
3:精製
粗ペプチドを、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて精製した。固定相としてC18由来のシリカを用いた。
すなわち、203mgの粗乾燥ペレットを0.1%TFA/水+DTEに溶解し、以下の条件でカラムに通液し、精製した。
装置:Waters Delta Prep Preparative HPLC System
溶媒A:0.1% TFA/水
溶媒B:0.1% TFA/ACN
勾配と流量:
修飾化ペプチド(I)
・0-15%溶媒Bで5分間、流量45ml/分
・15-25%溶媒Bで60分間、流量45ml/分
修飾化ペプチド(II)-(IV)
・1-10%溶媒Bで5分間、流量35ml/分
・10-20%溶媒Bで60分間、流量35ml/分
検出:215nm
純ペプチドを含む画分を凍結乾燥し、保存した。
4:分析
得られた精製ペプチドを、RP-HPLCおよび質量分析機を用いて分析し、目的のアミノ酸残基が目的の修飾を受けている修飾化ペプチドを単離した。
(1)RP-HPLC分析
精製乾燥ペプチドを水に溶解し、分析用カラムに通液し、以下の条件で分析した。
装置:Beckman Gold,Nouveau System
溶媒A:0.1% TFA/水
溶媒B:0.1% TFA/ACN
勾配と流量:5-55%溶媒Bで25分間、流量1.0ml/分
検出:215nm
(2)質量分析法
精製ペプチドを水に溶解し、Waters Alliance HPLCシステムを連結したFinnigan MAT-LCQ mass spectrometerを用いて分析した。
以上のRP-HPLC分析および質量分析法によって、所定のアミノ酸が修飾された目的の修飾化ペプチド(I)-(IV)を得た。
[実施例2]
ウサギ抗血清の作成
免疫動物は、1抗原当たり2匹のウサギ(Kbl:JW)を用いた。初回免疫は、1匹当たり800μgの各修飾化ペプチド(I)-(IV)をキャリヤータンパク質(Keyhole Lymphet Hemocyanin:KLHやオボアルブミンなど)と結合させた後、フロイント完全アジュバント(FCA)と等量混合し、背部皮下20箇所に投与した。追加免疫は、1匹当たり400μgの各修飾化ペプチド(I)-(IV)を前記キャリヤータンパク質と結合させ、フロイント不完全アジュバント(FIA)に混合し、2、4、6週目に皮下投与した。7週目に測定採血を行い、8週目に全採血を行った。測定採血は耳静脈から2mlを、全採血は頸動脈から可能な限りの血液を採取した。測定採血から得られた血清の抗体力価をELISAにより測定した。得られた血液を遠心分離(3000rpm、20分間)して血清を得、NaNを0.05%添加し、4℃で保存した。以上の手続により、修飾化ペプチド(I)-(IV)のそれぞれを抗原とするウサギ抗血清(I)-(IV)を作成した。
[実施例3]
マウス抗血清の作成
免疫動物は、1抗原当たり4匹の雌性マウス(Balb/c)を用いた。初回免疫は、1匹当たり100-200μgの各修飾化ペプチド(I)-(IV)を前記キャリヤータンパク質と結合させ、FCAと等量混合し、背部および腹部皮下、足裏10箇所に投与した。追加免疫は、1匹当たり50-100μgの各修飾化ペプチド(I)-(IV)を前記キャリヤータンパク質と結合させてFIAに混合し、2、4、6週目に投与した。7週目に測定採血を行い、8週目に全採血を行った。測定採血は眼窩静脈叢から0.5mlを、全採血は腋下静脈または心室から可能な限りの血液を採取した。測定採血から得られた血清の抗体力価をELISAにより測定した。得られた血液を遠心分離(3000rpm、20分間)して血清を得、NaNを0.05%添加し、4℃で保存した。以上の手続により、修飾化ペプチド(I)-(IV)のそれぞれを抗原とするマウス抗血清(I)-(IV)を作成した。
[実施例4]
マウス・モノクローナル抗体の作成
実施例3と同様のマウスおよび抗原溶液を用いて免疫を行った。2週間に1回免疫を行い、十分な力価の上昇が見られたら、KLHに化学的に結合させた抗原ペプチドをPBSまたは生理食塩水に溶解し、腹腔内または静脈に注射して最終免疫を行った。最終免疫から3日後に全採血および脾臓抽出を行った。脾臓から脾細胞を調製し、ポリエチレングリコール処理によってマウスミエローマ細胞(P3U1 X63Ag8.653)と融合させた。HAT選択培地を使用して増殖能を有する抗体産生細胞を選択した。抗体産生はELISAにより確認した。以上の手続により、修飾化ペプチド(I)-(IV)のそれぞれを抗原とするマウス・モノクローナル抗体(I)-(IV)を作成した。
[実施例5]
ELISA法
修飾化ペプチド(I)(H-CQRACK(Ac)LAIRESIE-OH)、その非修飾化ペプチド(H-CQRACKLAIRESIE-NH2)、およびコントロール修飾化ペプチド(V)(H-CRKSPVAK(Ac)DVDLE-NH2)、の溶液を96穴プレートの各ウエルに100μlずつ分注し、37℃で2時間、または4℃で10時間放置することによって、抗原を固定した後、0.05% Tween20/PBSで3回洗浄した。0.2%ゼラチン/PBSを各ウエルに300μl加え、37℃で1時間、または4℃で10時間以上放置してブロッキングを行った後、0.05% Tween 20/PBSで3回洗浄した。次いで、実施例2、3で作成した抗血清(ポリクローナル抗体)、または実施例4で作成したモノクローナル抗体の溶液50μlを各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05% Tween 20/PBSで3回洗浄した。さらに、酵素標識した抗免疫グロブリン抗体(抗IgG抗体)の溶液100μlを各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05% Tween 20/PBSで3回洗浄した。最後に、基質溶液100μlを各ウエルに添加し、37℃で7分間反応させて発色させた後、1.5%シュウ酸溶液100μlを各ウエルに添加して発色反応を停止させ、ELISA用マイクロプレート分光光度計を用いて415nmおよび486nm(コントロール)の吸光度を測定した。
図1は、実施例3で作成したマウス抗血清(I)を用いたELISA分析の結果である。コントロールの非修飾化ペプチドおよび修飾化ペプチド(V)に比べ、修飾化ペプチド(I)に対して、マウス抗血清(I)は高い抗体力価を示すことが確認された。
[実施例6]
ELISA法
修飾化ペプチド(II)(H-CRELQELVQY(PO3H2)PVEHPDK-NH2)およびその非修飾化ペプチド(H-CRELQELVQYPVEHPDK-NH2)を用いて、実施例5と同様ELISA法により、実施例2で作成したウサギ抗血清(II)の特異性を確認した。
結果は図2に示したとおりである。ウサギ抗血清(II)は、非修飾化ペプチドに比べ、修飾化ペプチド(II)に対して高い抗体力価を示すことが確認された。
[実施例7]
ELISA法
修飾化ペプチド(III)(H-CEMFAQT(PO3H2)LQQSRGFGS-NH2)およびその非修飾化ペプチド(H-CEMFAQTLQQSRGFGS-NH2)を用いて、実施例5と同様ELISA法により、実施例2で作成したウサギ抗血清(III)の特異性を確認した。
結果は図3に示したとおりである。ウサギ抗血清(III)は、非修飾化ペプチドに比べ、修飾化ペプチド(III)に対して高い抗体力価を示すことが確認された。
[実施例8]
ELISA法
修飾化ペプチド(IV)(H-CEMFAQTLQQS(PO3H2)RGFGS-NH2)およびその非修飾化ペプチド(H-CEMFAQTLQQSRGFGS-NH2)を用いて、実施例5と同様ELISA法により、実施例2で作成したウサギ抗血清(IV)の特異性を確認した。
結果は図4に示したとおりである。ウサギ抗血清(IV)は、非修飾化ペプチドに比べ、修飾化ペプチド(IV)に対して高い抗体力価を示すことが確認された。
[実施例9]
ウェスタン・ブロット法
実施例6で抗原特異性を確認した抗体(ウサギ抗血清(II))が実際にヒト子宮頸部癌由来細胞(HeLa細胞)でリン酸化されているVCPを認識しているかどうかを、ウェスタンブロット法により確認した。
定法により培養したHeLa細胞を界面活性剤を含む緩衝液で溶解し、LaemmliのSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法に従って分子量ごとに分離した。その後、電気的にpolyvinylidene fluoride(PVDF)膜に移行させた。タンパク質を吸着したPVDF膜は、定法により5%スキムミルクを含む緩衝液で非特異的結合を抑制した後に、目的とする抗体を希釈した液を加え室温で1時間または4℃で14時間インキュベートした。結合しなかった抗体を洗浄後、定法に従いパーオキシデース標識した抗ウサギ抗体と室温で1時間インキュベートし、再び洗浄した後に、化学発光法により抗体が特異的に結合するタンパク質をX線フィルムで検出した。
結果は図5に示したとおりである。培養細胞でチロシンリン酸化されているタンパク質はチロシンフォスファターゼで除去されるが、この脱リン酸化酵素の阻害剤である1mM H2O2+1mM Vanadateで処理すると、VCPの特異的なチロシンリン酸化が検出された。
[実施例10]
ウェスタン・ブロット法
実施例9と同様にウェスタン・ブロット法で、実施例6および9で用いた抗体(ウサギ抗血清(II))が、ラット副腎髄質褐色腫由来細胞(PC12細胞)でのVCPを認識するかを確認した。この細胞は神経成長因子(NGF)の存在下で神経細胞様に分化することが知られている。
結果は図6に示したとおりである。この培養細胞では定常状態でもある程度のVCPが495番目のアミノ酸残基でチロシンリン酸化されていることが分かるが、NGF処理でわずかに分子量の大きいリン酸化VCPのシグナルが現れた。こうした分子量のわずかな変化はリン酸化の昂進に伴ってしばしば観察される現象である。こうした神経細胞への分化に伴うリン酸化の変化が、神経細胞の健全性と関連していることが確立すれば、この抗体は診断薬として有用である。
[実施例11]
ウェスタン・ブロット法
実施例9と同様にウェスタン・ブロット法で、実施例7および8で用いた抗体(それぞれウサギ抗血清(III)および(IV))が、ヒト子宮頸部癌由来細胞(HeLa細胞)でのVCPを認識するかを確認した。
結果は図7に示したとおりである。この培養細胞では定常状態でも761番目のスレオニン(Thr)はわずかに、765番目のセリン(Ser)は著しくリン酸化を受けていることが分かる。こうした定常状態で見られるリン酸化の変化が癌細胞の悪性度と関連していることが確立すれば、この抗体は診断薬として有用である。
【産業上の利用可能性】

以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、様々なアミノ酸残基が修飾されたVCPを、その修飾化アミノ酸の違いに応じて認識することのできる抗体が提供される。この抗体の使用によって、VCP発現レベルが関与する神経変性疾患や悪性腫瘍の診断、予後判定等が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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